JP2016130024A - 印刷物 - Google Patents

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【課題】印刷画像の色彩を鮮明に表示することができ、印刷画像の視認性を向上させることが可能な印刷物の提供を主目的とする。【解決手段】基材と、前記基材上に印刷層とを有する印刷物であって、前記印刷物の前記印刷層側の最表面は、複数の溝部を有し、波長領域380nm〜780nmの光を8°の入射角で照射したときの最大反射率が2.0%以下である、印刷物を提供することにより、上記課題を解決する。【選択図】図5

Description

本発明は、表面に多数の溝部を備える印刷物に関する。
広告、雑誌、ポスター等の種々の印刷物においては、近年、ますます高精細で鮮明な印刷画像の表示が求められており、印刷技術分野においては、印刷媒体への画像データの出力方法や、印刷媒体に用いられる材料およびインキの材料等の選択方法等のあらゆる印刷技術を用いることが検討されている。
しかしながら、上述した種々の印刷技術を用いて印刷媒体上に高精細かつ鮮明な印刷画像が印刷されたとしても、印刷物の表面において光の一部が反射されることで、観察者からは実際の印刷画像の色彩に比べて白っぽく観察されてしまい、文字や模様の判読を妨げるといった問題があった。
また、印刷物の表面に照射される光の強度や照射方向、さらには観察者が印刷物を観察する方向によっては、印刷物の表面からの反射光により印刷画像の視認性が低下したり、目視が困難となる可能性があるといった問題があった。
このような問題に対して、表面での光の反射を低減させて印刷画像の視認性を向上させる目的で、印刷物の表面に加工が施された印刷物が提案されている。例えば、特許文献1および2では、表面にモスアイと呼ばれる多数の微細凹凸が形成された印刷物が開示されている。このような印刷物は、表面に微細凹凸が形状および配置に規則性を有して形成されていることで、モスアイ構造の原理により入射光に対する屈折率の急激な変化がなくなり、物質界面での不連続な屈折率変化に起因する光の反射を抑制することができる。これにより、印刷物表面での光の反射が低減され、印刷画像の視認性を向上させることが可能である。
特開2012−152987号公報 特開2014−71220号公報
しかし、印刷物の表面に微細凹凸を有することで、反射率低減効果を得ることが可能であるものの、個々の凸部(突起部)および凹部(溝部)の形状および配置に規則性があるため、反射率の低減に波長選択性を示し、波長領域によっては微細凹凸による十分な反射率低減効果が得られず、また、印刷物の印刷画像の鮮明さや視認性が十分ではない場合がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、印刷画像の色彩を鮮明に表示することができ、印刷画像の視認性を向上させることが可能な印刷物を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、基材と、上記基材上に形成された印刷層とを有する印刷物であって、上記印刷物の上記印刷層側の最表面には、多数の溝部が形成されており、上記溝部は、上記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、上記溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、一の上記溝部と、上記一の溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の上記溝部と、の重心間距離の平均が500nm以下であり、上記重心間距離の分散が8000以上であることを特徴とする印刷物を提供する。
本発明によれば、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の溝部が印刷物の印刷層側の最表面に形成されていることから、溝部において光を多数回反射させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。さらに、上記溝部においては、光の多数回反射による光の吸収に加えて、ミー散乱による印刷物内への光の吸収も起こるため、反射率を低下させることができる。さらにまた、多数の上記溝部が形成された層は、ミー散乱が生じることで高ヘイズ値を示すことから、溝部が形成された表面や印刷物内の積層界面における全反射を防ぐことができ、印刷物の色調に係る光以外の光の吸収率をさらに高めることができる。
これにより、本発明の印刷物は、所定のばらつきを有する多数の溝部により広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することができ、印刷画像の視認性を向上させることが可能となる。また、印刷物に入射する光、中でも印刷物の色調に係る光以外の光の反射率が低減され、印刷物内への光の吸収率が高くなることから、印刷層における印刷画像の発色性が向上し、色彩を鮮明に表示することが可能となる。
上記発明においては、多数の上記溝部が、上記印刷層上に形成された透明低反射層の表面に形成されていることが好ましい。透明低反射層により印刷層が保護されるため、耐久性の高い印刷物とすることができるからである。
上記発明の場合、上記透明低反射層が、透明基材と、上記透明基材の一方の面側に形成され、透明樹脂を含む低反射樹脂層とを有し、上記低反射樹脂層の上記透明基材と接する表面と対向する表面上に多数の上記溝部が形成されていることが好ましい。透明基材の一方の面側に低反射樹脂層を有する透明低反射層を、印刷層の位置に合わせて配置することができることから、印刷画像の視認性を向上させることが可能となり、製造時のハンドリング性が向上するからである。また、印刷層が曲面である、印刷物との密着性が悪い等の理由から、印刷層上に直接、透明低反射層を形成することが困難な場合であっても、所望の印刷物とすることができるからである。
また、上記発明の場合、上記透明低反射層が、透明樹脂により形成され、上記印刷層上に直に形成されていることが好ましい。透明低反射層が透明樹脂により形成された単層であり、透明低反射層内に積層界面が形成されないため、透明低反射層内において積層界面での光の反射を防止することができるからである。
上記発明においては、多数の上記溝部が、上記印刷層の表面に形成されていることが好ましい。本発明の印刷物を構成する層の数を少なくすることができ、積層界面での光の反射を防止することができるからである。また、上記印刷物を薄厚とすることができることから、加工性の高い印刷物とすることができるからである。
本発明の印刷物は、最表面に形成された多数の溝部が形状および配置位置に所定のばらつきを有することで、広波長域の光に対して反射率低減効果が発揮されることから、印刷画像の視認性を向上させることができ、また、印刷画像の色彩を鮮明に表示することが可能であるといった作用効果を奏する。
本発明における溝部を説明する説明図である。 本発明における溝部を説明する説明図である。 本発明の印刷物における溝部を有する表面の平面SEM画像である。 本発明の印刷物の一例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の第2態様における印刷層を説明する説明図である。
以下、本発明の印刷物について詳細に説明する。
本発明の印刷物は、基材と、上記基材上に形成された印刷層とを有する印刷物であって、上記印刷物の上記印刷層側の最表面には、多数の溝部が形成されており、上記溝部は、上記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、上記溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、一の上記溝部と、上記一の溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の上記溝部と、の重心間距離(以下、最近接重心間距離と称する場合がある。)の平均が500nm以下であり、上記重心間距離の分散が8000以上であることを特徴とするものである。
本発明によれば、印刷物の印刷層側の最表面に形成される多数の溝部が、形状および配置位置に所定のばらつきを有することで、上記溝部により広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することができる。
すなわち、多数の溝部が形状および配置位置に所定のばらつきを有することで、溝部に入射した光を多数回反射させて、溝部が形成された層内に吸収させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
さらに、多数の溝部が所定のばらつきを有することで、上記溝部、中でも印刷物の最表面内に位置し、溝部側面により囲まれた領域である溝口部においては、多数回反射により溝部が形成された層内へ光が吸収されるのに加えて、溝部の形状により光をミー散乱させることで、溝部が形成された層内への光の吸収量をさらに増加させることができ、反射率をより低減させることが可能となる。これは、ミー散乱が「前方散乱が強い」、「波長依存性が小さい」といった特長を有することによるものである。つまり、ミー散乱は前方散乱が強いため、溝部に入射した光は溝部が形成された層内で散乱されることとなり、散乱光を溝部が形成された層内へ吸収させることができるからである。また、ミー散乱は波長依存性が小さいため、可視光領域380nm〜780nmの全域の光を散乱させることができ、散乱光を溝部が形成された層内へ吸収させることが可能となるからである。
このように、多数の溝部が所定のばらつきを有することにより、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することが可能となり、上記多数の溝部が最表面に形成された印刷物は、反射光の低減により印刷画像の視認性を向上することができる。
また、印刷物は、通常、減色混合により印刷画像を表示するものであり、印刷物に入射した光のうち、一部の光が印刷物内に吸収され、印刷物に吸収されずに反射した光の色調が印刷画像の色調となる。印刷物表面での光の反射率が低くなるとは、すなわち印刷物への光の吸収率が高くなること、中でも印刷物の色調に係る光以外の光の吸収率が高くなることを意味する。
本発明によれば、多数の溝部のばらつきにより奏される反射率低減効果により、広波長域の光が印刷物内へ吸収されることとなる。加えて、多数の上記溝部が形成された層は、ミー散乱が生じてヘイズ値が高くなることから、溝部が形成された表面や印刷物内の積層界面における全反射を防ぐことができ、印刷物の色調に係る光以外の光の吸収率をさらに高めることができる。
このように、印刷物に入射する光、中でも印刷物の色調に係る光以外の光の反射が低減され、印刷物内への吸収率が高くなるため、本実施形態の印刷物は、印刷層における印刷画像の発色性が向上し、色彩を鮮明に表示することが可能となる。
さらにまた、本発明の印刷物は、表面に溝部を有することで、構造的な耐久性が高いという特長も有する。表面にモスアイのような突起部を有する場合、外部衝撃により突起部が破損、変形してしまうと、反射率低減効果が低下することが予想される。これに対し、本発明によれば、印刷物の最表面に凹型となる溝部が形成されることから、溝部の破損や変形等が発生しにくく、長期にわたり高い反射率低減効果を発揮することができる。このため、本発明の印刷物は、長期間にわたり高い視認性を有し、また、色彩を鮮明に表示することが可能となる。
以下、本発明の印刷物について、本発明の印刷物が有する溝部、および本発明の印刷物の実施形態に分けて説明する。
I.溝部
本発明における溝部は、印刷物の印刷層側の最表面に多数形成され、その形状および配置位置に所定のばらつきを有するものである。
本発明における溝部について、図を参照して説明する。図1は本発明の印刷物における溝部を説明する説明図である。図2(a)は本発明における溝部を説明するための概略斜視図であり、図2(b)は図2(a)の概略平面図である。
図1に例示するように、本発明の印刷物10の最表面に備わる多数の溝部1は、形状および配置位置に所定のばらつきを有する。
ここで、多数の溝部が有する所定のばらつきとは、3つのパラメータを定量化することで規定される。
第1のパラメータは、溝部の側面により囲まれた領域である溝口部(以下、単に溝口部と称する場合がある。)の大きさによる。図2(a)に示すように、溝部1および1’は、側面により囲まれた領域である溝口部dおよびd’を、印刷物10の最表面内に有している。本発明において多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、図2(b)に示すように、溝部1および1’の溝口部dおよびd’を、平面視形状を八角形に近似したときの面積SおよびS’の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であることをいう。
第2のパラメータは、上記溝口部の形状による。本発明において多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、溝口部の平面視形状を図2(b)に示すように八角形に近似したときの、最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であることをいう。
第3のパラメータは、隣接する溝部の位置関係による。本発明において多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、図2(b)で示すように、一の溝部1と、一の溝部1の溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oに最も近接した位置に、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心O’を有する他の溝部1’と、の重心間距離(最近接重心間距離)Lの平均が500nm以下であり、上記重心間距離Lの分散が8000以上であることをいう。
すなわち、多数の溝部が「所定のばらつきを有する」とは、第1〜第3の3つのパラメータが上述の所定の範囲内(以下、所定値と称する場合がある。)を示すことを意味する。
本発明においては、多数の溝部が有するばらつきの程度により、溝部による反射率低減効果が決定され、多数の溝部が所定のばらつきを有することで、上記反射率低減効果による本発明の効果を奏することができる。
溝部の形状および配置位置のばらつきは、「溝口部の大きさ」、「溝口部の形状」、および「隣接する溝部の位置関係」の3つのパラメータを定量化することで規定され、各パラメータが上述の所定値を示すことで、多数の上記溝部は所定のばらつきを有することができる。
以下、各パラメータの定量化方法、および上記定量化方法により規定される各パラメータの値について説明する。
A.パラメータの定量化方法
本発明における溝部の形状および配置位置のばらつきは、印刷物の印刷層側の最表面上に備わる多数の溝部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。
溝部の抽出は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)等を用い、倍率10000倍、視野範囲を縦4μm×横4μmとして印刷物の溝部を有する面側から平面視観察を行い、上記視野範囲における溝部の面内配列を画像で検出し、その中から所望の点数を抽出する方法を用いる。
本発明における各パラメータは、1つの視野範囲あたりの溝部の最低抽出点数を30点として算出する。溝部の抽出点数は多いほど好ましく、抽出点数は30点以上、中でも50点以上であることが好ましい。また、溝部の抽出を行うための上記視野範囲の検出数は、印刷物の溝部を備える面の単位面積(2500mm)当たり3箇所以上、中でも5箇所以上、特に10箇所以上であることが好ましい。
抽出点数および視野範囲の検出数を上記範囲で規定することで、3つのパラメータをより高い精度で定量化することができ、溝部の形状および配置位置のばらつきを正確に規定することができるからである。
各パラメータは、以下の手順により定量化される。
(1)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて溝部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の溝部を抽出し、各溝部について、溝部側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を検出する。上記溝口部の平面視形状は、SEM像では白黒のコントラストから、AFM像では色の明暗のコントラストから検出することができる。
上記溝口部の平面視形状の具体的な検出方法については、特に限定されないが、例えば、画像内のコントラストの1次微分で勾配を計算することでエッジの強さを計算し、上記勾配の方向からエッジの局所的な変化を予測し、その方向の勾配が局所的に極大となる箇所を探すことで検出することができる。
(2)続いて、SEM画像やAFM画像から、各溝部について得られた溝口部の平面視形状を八角形に近似する。この際、部分的に途切れている線は補完する。補完方法としては、例えば、ある閾値を設けて閉空間を作る方法を用いることができる。
溝口部の平面視形状の近似方法は、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、上記方法については特に限定されないが、例えば、テンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。
テンプレートマッチングは、予め形状を表現したテンプレートを準備し、画像認識の対象となる画像データに対してテンプレートを移動させながら相関係数等の類似度の指標を調べることによって画像データに含まれる形状を認識する技術である。テンプレートマッチングによる画像近似手法については、例えば、「中田崇行、包躍、藤原直史:“三次元環境におけるLog-Polar変換を用いた図形認識”,電気情報通信学会論文誌(D-II), Vol.88, No.6, pp.985-993(2005.6)」、「斎藤文彦:“部分ランダム探索と適応型探索による半導体チップ画像テンプレートマッチング”, 精密工学会誌, Vol.61, No.11, pp.1604-1608(1995.11)」に開示される。
また、一般化ハフ変換は、無限に存在する直線の中から画像データ内の特徴点を最も多く通る直線を決定するハフ変換を一般化して曲線に応用したものであり、この一般化ハフ変換によっても、事前に用意した参照用のテーブルを利用して画像データの形状認識を行うことができる。一般化ハフ変換による画像近似手法については、例えば、「Ballad,D.H.:“GENERALIZING THE HOUGH TRANSFORM TO DETECT ARBITRARY SHAPES”, Pattern Recognition, Vol.13, No.2, pp.111-122(1981)」や、「木村彰男,渡辺孝志:“アフィン変換に不変な任意図形検出法として拡張された一般化ハフ変換”, 電気情報通信学会誌(D-II), Vol. J84-D-II, No. 5, pp.789-798(2001.5)」に開示される。
Douglas-Peucker法は、折れ線近似によって形状認識を行う手法である。Douglas-Peucker法による画像近似手法については、例えば、「Wu,S.T, M.R.G:“A non-self-intersection Douglas-Peucker Algorithm”, Proceeding of Sixteenth Brazilian Symposium on Computer Graphics and Image Processing, IEEE, pp.60-66(2003)」に開示される。
(3)次に、各溝部について、八角形に近似された溝口部の平面視形状の面積(以下、溝口部の面積と称する場合がある。)を算出する。溝口部の面積は、画像のスケールのピクセルサイズと八角形に含まれるピクセル数との対比から算出することができる。算出された上記面積を統計処理して平均値および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。なお、上記面積の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝口部の面積−溝口部の面積の平均値)/標準偏差
(4)次に、各溝部について、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角(以下、溝口部の最大内角と称する場合がある。)を抽出して、統計処理により平均および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用する。また、上記最大内角の分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝口部の最大内角−溝口部の最大内角の平均値)/標準偏差
(5)次に、各溝部について、八角形に近似された上記溝口部の平面視形状の重心(以下、溝口部の重心と称する場合がある。)を算出し、溝部の位置を規定する。溝口部の重心は、以下の方法により規定される。まず、先に述べたように溝口部の平面視形状を八角形に近似し、八角形の1つの頂点から対角線を結び6つの三角形に分割して、各々の三角形の重心を求める。次に、6つの三角形の各重心を結び六角形とし、同様の方法で六角形の1つの頂点から対角線を結び4つの三角形に分割して、各々の三角形の重心を求める。次に4つの三角形の各重心を結び、四角形とする。続いて、四角形を1つの対角線で2つの三角形に分割し、2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結び、同様に、四角形を別の対角線で2つの三角形に分割して2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。2本の直線の交点が八角形の重心、すなわち溝口部の重心となる。
(6)続いて、各溝部の溝口部の重心の位置を座標化する。座標の原点、軸は任意の方向にとることができる。例えば、SEM画像またはAFM画像中の左下を原点として、上記原点からシート面の長さ方向と平行する右方向をx軸、x軸に直交する上方向(シート面の幅方向)をy軸とする。このように画像を座標平面とすることで、溝部の溝口部の重心の位置を座標化することができる。
各溝部の溝口部の重心の位置の座標から、特定の一の溝部と隣接する複数の溝部との溝部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は以下の計算式によって算出することができる。算出される重心間距離のうち、最小の距離を「最近接重心間距離」と規定する。
重心間距離={(x−x+(y−y1/2
なお、式中のxおよびyは、特定の一の溝部の重心位置を示すx座標およびy座標である。また、xおよびyは、上記特定の一の溝部に隣接する溝部の重心位置を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像またはAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
(7)上記の方法で各溝部の最近接重心間距離を抽出し、既存の表計算ソフトで統計処理することにより、最近接重心間距離の平均値および分散を計算する。なお、最近接重心間距離の平均値および分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝部の最近接重心間距離−最近接重心間距離の平均値)/標準偏差
各パラメータの定量化において算出される分散の値は、一般に平均値から算出される値、すなわち測定値と測定値の平均値との差の二乗平均の和を抽出点数で割ることで算出される値である。
B.パラメータ
次に、本発明における溝部の形状および配置位置のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
1.溝口部の大きさ
溝口部の大きさは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積(溝口部の面積)により規定される。溝口部の面積とは、図2(b)や図3(a)においてSやS’で示す部分である。なお、図3は本発明の印刷物における溝部を有する表面の平面SEM画像であり、図3について説明しない符号については、図1および図2と同様とする。
本発明においては、溝口部の面積の平均が、94000nm以上131000nm以下の範囲内であればよく、中でも99000nm以上121000nm以下の範囲内であることが好ましい。
球形粒子では幾何光学散乱が支配する直径は数μm以上であるが、溝口部での散乱は異なる挙動を示し、本発明においては、溝口部が上記範囲内に面積を有することで、ミー散乱が支配的になると推測されるからである。溝口部の面積の平均が上記範囲よりも大きいと、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になるため、前方散乱が起こりにくくなり、溝部が形成された層内への光の吸収が小さくなり、所望の反射率低減効果が得られない場合がある。一方、溝口部の面積の平均が上記範囲よりも小さいと、レイリー散乱が支配的になるため、前方散乱が起こりにくくなり、溝部が形成された層内への光の吸収が小さくなる場合がある。
溝口部の面積の平均が上記範囲内にあるとき、上記溝口部の面積の分散は、4.08E+9以上1.06E+10以下の範囲内であることが好ましい。干渉により特定の波長の光の強度が強まるのを抑制できるからである。溝口部の面積の分散の単位は(nmとなる。
2.溝口部の形状
溝口部の形状は、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の大きさにより規定される。溝口部の最大内角とは、例えば図3(b)中のθmaxで示す部分をいう。
溝口部の平面視形状は、最大内角が大きいほど形状のばらつきが大きくなり、一方、最大内角が小さいほど正八角形に近い形状となることから、形状のばらつきが小さくなる。したがって、抽出された各溝部について算出される最大内角の分散が大きいほど、溝部ごとの溝口部の平面視形状の形状もばらつきが大きくなる。
本発明においては、溝口部の最大内角の分散が、600以上1020以下の範囲内であればよく、中でも640以上980以下の範囲内、特に640以上810以下の範囲内であることが好ましい。溝口部の最大内角の分散が上記範囲よりも大きいと、製造上、溝部の設計が困難となる場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと干渉によって特定の波長の光の強度が強まる場合があるからである。溝口部の最大内角の分散の単位は度(°)となる。
このとき、溝口部の最大内角の平均は、200°以上230°以下の範囲内であることが好ましい。溝口部の最大内角の平均が上記範囲よりも大きいと、製造上、溝部の設計が困難となる場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと干渉により特定の波長の光の強度が強まる場合があるからである。
3.隣接する溝部の位置関係
溝部の位置とは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心(溝口部の重心)の位置をいい、図2や図3においてOやO’で示す部分である。
隣接する溝部の位置関係は、一の溝部と、上記一の溝部の溝口部の重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の溝部と、の重心間距離、すなわち最近接重心間距離の平均により規定される。
ここで、最近接重心間距離は、先に説明した方法で算出され定量化されるが、さらに図を示して説明する。最近接重心間距離は、図3(c)で示すように、溝部1Aに隣接する溝部のうち、溝部1Aの溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oと最も近い位置に、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oを有する溝部1Bを抽出し、その重心間距離L1を最近接重心間距離として算出する。次に、溝部Bに隣接する溝部のうち、溝部1Bの溝口部の重心Oと最も近い位置に、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oを有する溝部1Cを抽出し、その重心間距離L2を最近接重心間距離として算出する。最近接重心間距離の平均は、上記操作を繰り返し行い、溝部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出される。
本発明においては、上記最近接重心間距離の平均は、500nm以下であればよく、中でも420nm以下の範囲内、特に410nm以下の範囲内であることが好ましい。最近接重心間距離の平均が上記範囲よりも大きいと、隣接する溝部が密接しておらず、溝部が形成されない平坦な領域(以下、非溝部領域と称する場合がある。)が多く存在することとなり、非溝部領域において生じる光の反射により、反射率低減効果が低下する場合がある。
最近接重心間距離の平均の下限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば330nm以上であることが好ましい。
最近接重心間距離の平均が上記範囲内にあるときの、上記最近接重心間距離の分散は、8000以上であればよく、中でも11000以上、特に12000以上であることが好ましい。最近接重心間距離の分散が上記範囲よりも小さいと、多数の溝部が均等なピッチ幅で配置されることとなり、干渉により特定の波長の光の強度が強まり、所望の反射率低減効果が発揮されにくい場合があるからである。
上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば20000以下であることが好ましい。最近接重心間距離の分散の単位はnmとなる。
C.その他
上記溝部の深さは、上述の3つのパラメータが所定値となることが可能な大きさであれば特に限定されないが、例えば、100nm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも300nm〜1μmの範囲内が好ましい。溝部の深さが上記範囲よりも小さい場合、溝口部の曲率が大きくなるため、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり、前方散乱が起こりにくくなるため、溝部が形成された層内への光の吸収が小さくなる可能性がある。一方、溝部の深さが上記範囲よりも大きい場合、所望の溝部の形状に製造することが困難となる可能性がある。
溝部の深さは、溝部が形成された層の表面から溝底の先端までの長さの平均をいい、図1においてhで示す部分である。
溝部の深さは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて、各溝部の深さの極大点および極小点を検出し、検出した極大点から、特定の基準位置(例えば溝口部を面内に含む印刷層の最表面位置を「深さ=0」とする。)からの各極大点位置の相対的な深さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化される値である。極大点および極小点の検出は、例えば、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法等、種々の手法を適用することができる。
また、溝部の深さが上記範囲内にあるとき、溝口部の平面視形状の最大径に対する深さのアスペクト比としては、所望の反射率低減効果を発揮することが可能な比であればよく、例えば、0.3〜30の範囲内が好ましく、中でも0.8〜3の範囲内が好ましい。アスペクト比が上記範囲よりも小さいと、溝部内において光の反射が起こりにくくなり反射率低減効果が十分に発揮されない場合がある。一方、アスペクト比が上記範囲よりも大きいと、賦形が困難となり溝部が所望の形状とならない場合がある。
溝口部の平面視形状の最大径は、上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときに最も広幅の箇所、すなわち上記溝口部の重心を通る最大幅をいう。
溝部は、凹型の錐状構造体を成している。このため、本発明の印刷物は、溝部の形状を精度良く賦型することが可能であり、生産性が向上するという製造上の利点を有する。
一般に、溝部が規則的に配置された印刷物においては、反射率低減効果を向上させるために、溝底の形状を先端が分岐した多溝形状とし、表面積を大きくする方法が用いられる。しかし、このような形状は、精度良く賦型できない場合がある。
一方、本発明においては、溝部に所定のばらつきをもたせることで反射率低減効果を奏することから、溝部を多溝形状とする必要がなく、個々の溝部を精度良く賦型することが可能となる。
溝部の溝底の先端は、尖っていてもよく、曲率を有していてもよい。中でもミー散乱による溝部が形成された層内への光の吸収が大きくなることから、先端が尖っていることが好ましい。
溝口部の平面視形状は、八角形に近似が可能な形状であれば特に限定されず、例えば円、楕円等の丸形状の他、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形形状等を挙げることができる。
また、溝部の側面形状は、直線状であってもよく、曲線状であってもよい。さらに、溝部の側面形状が多段状であってもよい。中でも溝部の側面が多段状であることが好ましい。溝部において多数回反射およびミー散乱がより起こりやすくなるからである。
II.実施形態
次に、本発明の印刷物の実施態様について説明する。
本発明の印刷物は、印刷物の印刷層側の最表面に上述の「I.溝部」の項で説明した所定のばらつきを有する多数の溝部が形成されたものであればよく、多数の上記溝部が、上記印刷層上に形成された透明低反射層の表面に形成されている第1態様と、多数の上記溝部が、上記印刷層の表面に形成されている第2態様と、を挙げることができる。
以下、各態様について説明する。
A.第1態様
本発明の印刷物の第1態様(以下、この項において、本態様とする場合がある。)について説明する。本態様の印刷物は、多数の上記溝部が、上記印刷層上に形成された透明低反射層の表面に形成されているものである。具体的には、本態様の印刷物は、基材と、基材上に形成された印刷層と、印刷層上に形成された透明低反射層とを有し、透明低反射層の表面に多数の溝部が所定のばらつきを有するように形成されている。
本態様においては、通常、透明低反射層が、印刷物の印刷層側の最表面に位置する。
本態様の印刷物について図面を参照しながら説明する。図4は本態様の印刷物の一例を示す概略断面図である。図4に示すように、本態様の印刷物10は、基材2、基材2上に形成され、印刷画像を構成する印刷層3、および印刷層3上に形成された透明低反射層4を有するものである。透明低反射層4の表面上には、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の溝部1を備える。
図4に例示する本態様の印刷物においては、透明低反射層4は、透明基材11と、透明樹脂を含む低反射樹脂層12とが積層された層構成を有し、最表層である低反射樹脂層12の、透明基材11と接する表面と対向する表面上に多数の溝部1が所定のばらつきを有して形成されている。透明低反射層4は、接着層13を介して印刷層3上に形成されている。
多数の溝部が有する所定のばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。多数の溝部が所定のばらつきを有するための3つのパラメータおよびその所定値については、上述の「I.溝部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様においては、透明低反射層により印刷層が保護されるため、耐久性の高い印刷物とすることができる。
以下、本態様の印刷物の各構成について説明する。
1.透明低反射層
本態様における透明低反射層は、表面に多数の溝部が所定のばらつきを有して形成されている。
透明低反射層の表面に形成された溝部の詳細については、上述の「I.溝部」で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記透明低反射層は、可視光の全波長域に対して低い反射率を示すことが好ましい。具体的には、上記透明低反射層の可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.5%以下であることが好ましい。
透明低反射層の最大反射率を上述の上限値以下とすることで、可視光の全波長域に対して低い反射率を示すことができ、溝部による反射率低減効果が十分に発揮されるため、印刷画像の視認性を向上させることが可能となる。また、溝部による反射率低減効果により、印刷物への光の吸収率が高くなることから、印刷画像の発色性が向上し、色彩を鮮明に表示することが可能となる。
最大反射率は、計測装置としてScanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)を用い、8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射を測定することで得られる。透明低反射層の最大反射率は、例えば後述する印刷層を黒色印刷層として、測定することができる。
透明低反射層はヘイズ値が高いことが好ましい。ヘイズ値が高い程、溝部の形状および配置位置のばらつきが大きくなることから、透明低反射層全体として優れた反射率低減効果を奏することができ、印刷物における印刷画像の発色性や視認性を向上させることができるからである。
また、透明低反射層のヘイズ値が高い程、ミー散乱による光の散乱が増大し、溝部が形成された表面や印刷物内の積層界面における全反射を防ぐことができる。これにより、印刷物の色調に係る光以外の光は、反射が低減されて印刷物内への吸収率が高くなるため、印刷層における印刷画像の発色性がさらに向上し、色彩をより鮮明に表示することが可能となるからである。
透明低反射層のヘイズ値は、70%以上であればよく、中でも80%以上であることが好ましい。また、ヘイズ値の上限としては95%以下であることが好ましい。ヘイズ値が上記範囲よりも小さいと、溝部が形状および配置位置に所定のばらつきを有しておらず、光の多数回反射およびミー散乱による透明低反射層への光の吸収が起こりにくくなり、反射率低減効果が発揮されない場合があるからである。一方、ヘイズ値が上限よりも大きいと、所望の溝部の形状に製造することが困難となる場合があるからである。
ヘイズ値は、透明低反射層の溝部が形成された領域での値であり、ヘイズメーター(東洋精機製作所製 商品名:ヘイズガード)を用いてJIS K7361に準拠した方法により測定される。
本態様における透明低反射層は、表面に多数の溝部が上述のばらつきを有して形成され、所望の最大反射率およびヘイズ値を示すことが可能な層であれば特に限定されるものではないが、以下の2つの仕様に大別することができる。
すなわち、本態様における透明低反射層は、図4に例示したように、透明低反射層4が、透明基材11と、透明基材11の一方の面側に形成され、透明樹脂を含む低反射樹脂層12とを有し、低反射樹脂層12の透明基材11と接する表面と対向する表面上に多数の溝部1が形成された仕様(以下、透明低反射層の第1仕様とする。)と、図5に例示するように、透明低反射層4が、透明樹脂により形成された単層である仕様(以下、透明低反射層の第2仕様とする。)と、に大別することができる。
以下、透明低反射層の各仕様について説明する。
(1)透明低反射層の第1仕様
透明低反射層の第1仕様(以下、この項において、本仕様とする場合がある。)は、透明基材と、上記透明基材の一方の面側に形成され、上記透明樹脂を含む低反射樹脂層とを有し、上記低反射樹脂層の上記透明基材と接する表面と対向する表面上に多数の上記溝部が形成されている。
本仕様の透明低反射層は、透明基材上に低反射樹脂層を形成した後、印刷層上に貼付して印刷物とすることができる。このため、印刷層の位置に合わせて本仕様の透明低反射層を配置することができ、ハンドリング性が向上するという製造上の利点を有する。
また、本仕様の透明低反射層は、印刷層が曲面である、印刷物との密着性が悪い等の理由から、印刷層上に直接、透明低反射層を形成することが困難な場合であっても、所望の印刷物を形成することが可能である点で有効である。
(a)低反射樹脂層
低反射樹脂層は、透明樹脂により形成される。溝部が所望の反射率低減効果を発揮するためには、上述の「I.溝部」で説明した3つのパラメータの定量化により規定される所定のばらつきを有する必要があるところ、透明樹脂により形成された低反射樹脂層上に溝部を形成することにより、溝部ごとの形状の精度を高くなり、所定のばらつきを示すことが可能である。
低反射樹脂層を構成する透明樹脂は、上述の所定のばらつきを有する多数の溝部を賦形することが可能なものであれば特に限定されず、例えばアクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料、および各種硬化形態の賦型用樹脂を使用することができる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
低反射樹脂層は、必要に応じて任意の材料を含んでいてもよい。任意の材料としては、例えば屈折率調整剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。屈折率調整剤としては、例えば特開2013−142821号公報に開示される低屈折率材が挙げられる。
低反射樹脂層の厚みは特に限定されず、使用する材料、要求される強度等を考慮して適宜設定することができ、例えば3μm〜200μmの範囲内が好ましく、中でも5μm〜100μmの範囲内が好ましい。
低反射樹脂層の厚みは、低反射樹脂層と透明基材との界面から低反射樹脂層の溝部が形成された表面までの長さの平均をいう。
低反射樹脂層は、下層に位置する印刷層における印刷画像の視認を可能とするために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、低反射樹脂層の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が、80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。なお、本明細書内において光透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計 U−4100により測定された値である。
低反射樹脂層の屈折率は、後述する透明基材との屈折率差が所望の範囲内となる大きさであることが好ましく、選択する透明樹脂の種類にもよるが、1.20〜2.40の範囲内が好ましく、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。なお、本明細書における屈折率は、株式会社島津製作所製 精密分光計GMR−1DA型により測定される。
(b)透明基材
透明基材は、一方の表面上に上述の低反射樹脂層を有する。
透明基材に用いられる材料は、上述した光透過性を示し、所望の屈折率を有する透明基材を得ることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の樹脂を用いることができる。
具体的には、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン等を挙げることができる。
また、透明基材の材料として、ガラス、セラミックス等の無機材料を用いても良い。
透明基材は、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
透明基材は、板状、シート状、フィルム状等の各種態様のものを用いることができる。
透明基材の厚みは、低反射樹脂層を支持することができ、所望の光透過性を示すことが可能な厚みであれば特に限定されないが、例えば0.025mm〜20mmの範囲内が好ましい。
透明基材は、下層に位置する印刷層における印刷画像の視認を可能とするために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、透明基材の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が、80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。
透明基材の屈折率は、低反射樹脂層の屈折率と同程度であることが好ましい。低反射樹脂層と透明基材との屈折率差が大きいと、低反射樹脂層および透明基材の界面に屈折率の不連続界面が形成され、上記不連続界面において光が反射することで溝部による反射率低減効果が損なわれて、印刷画像の視認性が低下するからである。
低反射樹脂層と透明基材との屈折率差(絶対値)は、0〜0.5の範囲内、中でも0〜0.2の範囲内、特に0〜0.1の範囲内であることが好ましい。
なお、透明基材の屈折率は、上述した低反射樹脂層の屈折率との関係において決定されるが、1.20〜2.40の範囲内であることが好ましく、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。
(c)その他
本仕様の透明低反射層は、透明基材上に低反射樹脂層が積層形成されていてもよく、透明基材および低反射樹脂層の樹脂を共押し出しして形成されていてもよい。
本仕様の透明低反射層は、印刷層上に接着層を介して形成されてもよく、印刷層上に熱ラミネート等により直に形成されてもよい。
上記接着層に用いられる接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱熔融型接着剤等の公知の接着剤が挙げられる。また、これら接着剤の材料としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ゴム等の公知の樹脂が挙げられる。
接着層の厚みは、透明低反射層と印刷層とを所望の強度で貼合することができ、印刷層における印刷画像の視認性等を阻害しない厚みであれば特に限定されず、例えば1μm〜1000μmの範囲内とすることが好ましい。
上記接着層は、下層に位置する印刷層における印刷画像の視認を可能とするために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、接着層の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。
上記接着層は、その屈折率が透明基材の屈折率および印刷層の屈折率と同程度であることが好ましい。その理由については、上述した透明基材と低反射樹脂層との屈折率差を小さくする理由と同様である。
接着層と透明基材および印刷層との屈折率差(絶対値)は、0〜0.5の範囲内、中でも0〜0.2の範囲内、特に0〜0.1の範囲内であることが好ましい。
接着層の屈折率の値は、透明基材および印刷層の屈折率との関係において決定されるが、1.20〜2.40の範囲内、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。
(2)透明低反射層の第2仕様
透明低反射層の第2仕様(以下、この項において、本仕様とする場合がある。)は、透明樹脂により形成され、印刷層上に直に形成される。すなわち、本仕様の透明低反射層は、透明樹脂により形成された単層である。
本仕様の透明低反射層は、印刷層側に位置する表面と対向する表面上に、多数の溝部が所定のばらつきを有して形成されている。
本仕様の透明低反射層は、上述の第1仕様の透明低反射層とは異なり単層であることから、透明低反射層内に積層界面が形成されない。したがって、透明低反射層内において積層界面での光の反射を防止することができる。
本仕様の透明低反射層を構成する透明樹脂としては、上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の項で説明した透明樹脂と同様とすることができる。また、本仕様の透明低反射層は、必要に応じて、上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の項で説明した任意の材料を含んでいても良い。
本仕様の透明低反射層の厚みは、上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の厚みと同等とすることができる。
また、本仕様の透明低反射層の光透過率および屈折率は、上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の項で説明した内容と同様とすることができる。
本仕様の透明低反射層の形成方法としては、例えば、印刷層上に直接、透明低反射層を構成する透明樹脂を塗布し、賦型して表面に多数の溝部を形成する方法等が挙げられる。
2.印刷層
本態様における印刷層は、基材上に形成される。
上記印刷層は、減法混色により単色、多色ないしフルカラーで表示される印刷画像が印刷された層である。
上記印刷層の材料としては、減色混合により色表示が可能な所望の印刷画像を印刷できる材料であれば特に限定されず、例えば、バインダ樹脂および着色剤を含む樹脂インキ等が挙げられる。
上記樹脂インキに含まれるバインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの公知のバインダ樹脂の中から、要求される物性、印刷適性などに応じて適宜選択することができる。例えば、セルロース系樹脂、アクリル樹脂のほか、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの単体またはこれらを含む混合物を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
上記樹脂インキに含まれる着色剤としては、無機顔料、有機顔料または染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
また、上記樹脂インキは、材料に応じて、架橋剤、安定材、可塑剤、硬化剤等の任意の材料を含んでいてもよい。
上記印刷層の厚みは、印刷層の印刷法により適宜選択されるが、具体的には、0.01μm〜2000μmの範囲内、中でも0.3μm〜800μmの範囲内、特に0.8μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。印刷層の厚みが上記範囲よりも厚いと、印刷物が厚膜化するため、印刷物の加工性が低下する場合があり、一方、上記範囲よりも薄いと、印刷層を基材上に均質に形成することが困難となり、擦れやムラを生じやすくなる場合があるからである。
上記印刷層における印刷画像としては、例えば、絵柄、写真、文字、数字、模様、稿図、標章等が挙げられる。
上記印刷層は、基材の一方の表面の全域に形成されていてもよく、一方の表面の一部に形成されていてもよい。
上記印刷層は、一般的な印刷法を用いて形成することが可能であり、印刷層の形成に使用される材料の種類等に応じて適宜選択することができる。具体的には、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェットプリントなどの公知の印刷法を挙げることができる。
3.基材
本態様における基材は、印刷層を形成することが可能な程度の自己支持性を有するものであれば特に限定されず、一般的な印刷法に用いられる紙基材、金属基材、樹脂基材、布、セラミック等を用いることができる。
上記基材は、遮光性が高いことが好ましい。印刷物の基材側から入射する光により、印刷画像のヘイズが高くなり、視認性が低下する場合があるからである。
上記基材の遮光性としては、印刷物の仕様や用途、印刷層における印刷画像の表現色等にもよるが、可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)であることが望ましい。
上記基材は、印刷層との密着性を向上させるために表面処理が施されていてもよい。基材の材料によっては、表面に直に印刷画像を印刷して印刷層を形成する際にインキをはじいてしまい、印刷層の形成が困難となる場合があるからである。
上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、およびグラフト化処理等の、公知の表面改質技術を適用することができる。
4.その他の構成
本態様の印刷物は、上述した透明低反射層、印刷層、および基材を有するものであれば特に限定されず、必要に応じて任意の層を有することができる。任意の層としては、例えば、透明低反射層と印刷層との間に形成されるプライマー層(密着安定層)、印刷物を被着体に貼り合せるための印刷用粘着層または印刷用接着層等を挙げることができる。
5.その他
本態様の印刷物において、多数の溝部は少なくとも印刷層と平面視上重なる位置に形成されていればよく、中でも印刷層が形成された基材表面の全域と平面視上重なる位置に多数の溝部が形成されていることが好ましい。
本態様の印刷物は、可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.5%以下であることが好ましい。その理由については、上述の「1.透明低反射層」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
6.用途
本態様の印刷物は、広告、ポスター、雑誌、書籍、カタログ、化粧板、自動車内装材等に用いることができる。
7.製造方法
本態様の印刷物の製造方法は、印刷層が形成された基材上に透明低反射層を形成することができ、透明低反射層の表面に所定のばらつきを有する多数の溝部を形成することが可能な方法であれば、特に限定されず、透明低反射層の仕様に応じて適宜選択することができる。
(1)製造方法の第1例
本態様の印刷物は、例えば、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に凹型錐状構造体が形成された第1ソフトモールドを形成し、上記第1ソフトモールドを用いて凸型錐状構造体を備えた第2ソフトモールドを形成する転写版準備工程、上記第2ソフトモールドの上記凸型錐状構造体が形成された表面に透明低反射層用組成物を塗布する塗布工程、および、塗布層上に印刷層が形成された基材の印刷層側表面を配置して、上記塗布層を硬化した後、上記第2ソフトモールドを剥離する賦型工程を経ることにより、形成することができる。
上述の各工程を経て形成される本態様の印刷物は、第2仕様の透明低反射層を有し、上記溝部の形状および配置位置のばらつきは、上記転写原版の凸型錐状構造体の反転形状および配置位置のばらつきと対応する。
(a)転写版準備工程
本工程は、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に凹型錐状構造体が形成された第1ソフトモールドを形成し、上記第1ソフトモールドを用いて凸型錐状構造体を備えた第2ソフトモールドを形成する工程である。
まず、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を準備する。上記凸型錐状構造体は、上述の「I.溝部」の項で説明した溝部の反転形状に相当し、3つのパラメータの定量化により規定された所定のばらつきを有するものとする。
上記転写原版の材質は、所定のばらつきを有する凸型錐状構造体の形成が可能なものであれば特に限定されず、金属、樹脂等が挙げられるが、中でも金属が好ましい。
また、上記転写原版の製造方法としては、形状および配置位置に所定のばらつきを有する凸型錐状構造体を表面に賦形可能な方法であれば特に限定されない。上記転写原版は、例えば、ステンレス板の表面をブラスト加工し、ステンレス板の加工表面に対して、段階的に電流値を小さくしながら電解めっき処理を施すことにより形成することができる。電解めっき処理としては、例えば、電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解スズめっき等による処理が挙げられる。
このときブラストの表面粗さを調整することにより、凸型錐状構造体の大きさや配置間隔、頂部の方向性を調整することができる。また、段階的に電流値を小さくする割合を調整することにより、凸型錐状構造体の高さを調整できる。
次に、得られた転写原反の上記凸型錐状構造体が形成された面上に、硬化性樹脂を含む第1ソフトモールド形成用組成物を塗布し、塗布層を硬化して第1ソフトモールドを転写形成する。このとき、上記第1ソフトモールドの一方の表面には、凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体が形成される。
第1ソフトモールド形成用組成物に含まれる硬化性樹脂は、転写原版の凸型錐状構造体の形状を精度良く転写することが可能な樹脂であればよく、例えば、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が用いられる。また、必要に応じて上述の「1.透明低反射層」の項で説明した任意の材料を含んでいてもよい。
第1ソフトモールド形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、一般に樹脂製原版の形成の際に用いられる方法と同様とすることができる。
次に、上記第1ソフトモールドの凹型錐状構造体が形成された面上に、硬化性樹脂を含む第2ソフトモールド形成用組成物を塗布し、塗布層を硬化して第2ソフトモールドを転写形成する。このとき、第2ソフトモールドの一方の表面には、第1ソフトモールドの凹型錐状構造体の反転形状である凸型錐状構造体が形成される。
第2ソフトモールドは、第1ソフトモールドの凹型錐状構造体の形状を精度良く転写することが可能な樹脂であればよく、第1ソフトモールドと同一のソフトモールド形成用組成物を用いて形成してもよく、組成の異なるソフトモールド形成用組成物を用いて形成してもよい。
後述する塗布工程にて用いる透明低反射層用組成物が、光硬化性または電子線硬化性樹脂を含む場合、第2ソフトモールドは光透過性を有することが好ましい。透明低反射層用組成物の塗布層上に印刷層が形成された基材を配置する場合に、第2ソフトモールド側から光や電子線等の照射を行い、上記塗布層を硬化することができるからである。
(b)塗布工程
本工程は、第2ソフトモールドの凸型錐状構造体が形成された表面に透明低反射層用組成物を塗布する工程である。
透明低反射層用組成物は、上述の「1.透明低反射層 (2)透明低反射層の第2仕様」の項で説明した透明樹脂を含むものである。
透明低反射層用組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知の塗布方法を適用することができる。
(c)賦型工程
本工程は、塗布工程により形成された透明低反射層用組成物の塗布層上に印刷層が形成された基材の印刷層側表面を配置して、上記塗布層を硬化した後、上記第2ソフトモールドを剥離する工程である。
基材上の印刷層と第2ソフトモールド上の塗布層とが接するようにして配置した状態で、上記塗布層を光や熱等により硬化することにより、上記基材上に形成された印刷層上に、所定のばらつきを有する多数の溝部を備える透明低反射層を形成することができる。
塗布層の硬化方法および硬化条件については、透明低反射層用組成物に含有される透明樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。透明樹脂が電離放射線硬化性樹脂の場合、紫外線硬化法や電子線硬化法等を挙げることができ、透明樹脂が熱硬化性樹脂の場合、加熱硬化法や常温硬化法等を挙げることができる。また、透明樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法等も挙げられる。
(2)製造方法のその他の例
本態様の印刷物の他の製造方法としては、透明低反射層を別途製造し、透明低反射層と印刷層が形成された基材とを貼合させる方法がある。この方法により、第1仕様の透明低反射層を有する印刷物を製造することができる。
具体的には、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した塗布工程において、上記第2ソフトモールドの上記凸型錐状構造体が形成された面上に、低反射樹脂層用組成物を塗布する。次に、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した賦型工程において、上記低反射樹脂層用組成物の塗布層上に透明基材を配置して上記塗布層を硬化し、上記第2ソフトモールドを剥離する。これにより、表面に所定のばらつきを有する多数の溝部を有する低反射樹脂層が上記透明基材の一方の面側に形成された透明低反射層が得られる。低反射樹脂層用組成物は、上述の「1.透明低反射層 (1)透明低反射層の第1仕様」の項で説明した透明樹脂を含むものである。
続いて、貼合工程として、得られた透明低反射層を、基材上に形成された印刷層上に接着層を介して貼合させる。これにより、第1仕様の透明低反射層を有する印刷物を製造することができる。
また、本態様の第2仕様の透明低反射層を有する印刷物の他の製造方法として、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した転写版準備工程後、得られた上記第2ソフトモールドをロールに巻きつけて転写ロールを準備する転写ロール準備工程、および、基材上に形成された印刷層表面に透明低反射層用組成物を塗布し、上記転写ロールで塗布層を押圧すると同時に上記塗布層を硬化して透明低反射層を成形する賦形工程、を有する方法を用いることも可能である。
さらに、本態様の第2仕様の透明低反射層を有する印刷物の他の製造方法として、円筒形のシリンダーの表面をめっきすることで、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体が表面に形成されたロール原版を準備する転写版準備工程、基材上に形成された印刷層表面に透明低反射層用組成物を塗布する塗布工程、および、上記ロール原版で塗布層を押圧するとと同時に上記塗布層を硬化して透明低反射層を成形する賦型工程、を有する方法を用いることも可能である。ロール原版の準備方法は、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した転写原版の準備方法と同様とすることができる。
上述の各製造方法において、押圧と同時に行う透明低反射層用組成物の硬化方法としては、透明低反射層用組成物に適した硬化方法であればよく、組成等に応じて適宜選択することができる。例えば、透明低反射層用組成物が紫外線硬化性樹脂を含む場合、紫外線照射による硬化方法を用いることができる。
B.第2態様
次に、本発明の印刷物の第2態様(以下、この項において、本態様とする場合がある。)について説明する。
本態様の印刷物は、多数の上記溝部が、上記印刷層の表面に形成されている。
具体的には、本態様の印刷物は、基材と、基材上に形成された印刷層とを有し、上記印刷層の表面に上述した多数の溝部が所定のばらつきを有して形成されている。本態様においては、通常、印刷層が、印刷物の印刷層側の最表面に位置する。
本態様の印刷物について図を参照して説明する。図6は本態様の印刷物の一例を示す概略断面図である。図6に示すように、本態様の印刷物10は、基材2と基材2上に形成された印刷層3とを有し、印刷層3の表面には、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の溝部1を備える。
本態様の印刷物において、多数の溝部が有する所定のばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。多数の溝部が所定のばらつきを有するための3つのパラメータおよびその所定値については、上述の「I.溝部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様においては、印刷物を構成する層の数を少なくすることができ、積層界面での光の反射を防止することができる。また、上記印刷物を薄厚とすることができることから、加工性の高い印刷物とすることができる。
以下、本態様の印刷物について説明する。なお、本態様における基材、その他の構成の詳細、本態様の印刷物の物性、および用途等の詳細については、上述した「A.第1態様」の項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
1.印刷層
本態様における印刷層は、基材上に形成されており、表面に多数の溝部が所定のばらつきを有して形成されている。
本態様における印刷層は、減法混色により単色、多色ないしフルカラーで表示される印刷画像が印刷された層である。
(1)印刷層の構造
本態様における印刷層は、通常、表面に多数の溝部を有する。印刷層の表面に形成された溝部の詳細については、上述した「I.溝部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本態様の印刷層は、図7で例示するように、多数の溝部1を支持する基底部5を有することが好ましい。なお、図7は本態様における印刷層を説明する説明図であり、図6のP部分の拡大図である。
上記基底部の厚みは、形状およびばらつきを有する多数の溝部を支持することができ、かつ所望の印刷画像を構成することが可能であれば特に限定されないが、例えば0.3μm〜100mmの範囲内、中でも6μm〜30mmの範囲内、特に9μm〜15mmの範囲内であることが好ましい。基底部の厚みが上記範囲に満たないと、印刷層上に所定のばらつきを有するように多数の溝部を形成することが困難である場合や、印刷層により所望の印刷画像を構成することが困難である場合があるからである。一方、基底部の厚みが上記範囲を超えると、印刷物全体の厚みが厚くなり、加工性が低下する場合や、印刷層においては割れが生じやすくなるためである。
基底部の厚みは、印刷層の基材と接する面から溝部の溝底の先端までの長さ(図7中のhで示す部分の長さ)の平均値をいい、接触式膜厚計(テスター産業株式会社製 フィルム用厚み測定器 H−102)を用いて印刷層の基材と接する面から溝部の溝口部を有する面までの高さ(h+h)を計測した後、溝部の深さhを差し引いて算出することができる。
(2)印刷層の材料
本態様における印刷層の材料は、減色混合により色表示が可能な所望の印刷画像を印刷することができ、且つ、表面に所定のばらつきを有する多数の溝部を形成可能な材料であればよく、中でも、バインダ樹脂および着色剤を含む樹脂インキが好ましい。
上記樹脂インキに含まれるバインダ樹脂としては、印刷物の基材表面に印刷画像を構成する印刷層を形成することができ、かつ、形成される印刷層の表面に多数の溝部が所定のばらつきを有するように賦型可能な樹脂材料であれば、特に限定されない。中でも、上記バインダ樹脂が硬化性樹脂であることが好ましい。印刷層表面に所望の溝部を精度良く形成することが可能となるからである。
上記硬化性樹脂としては、例えば、上述した「A.第1態様 1.透明低反射層 (1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の項で記載した硬化性樹脂が挙げられる。
上記着色剤としては、上述した「A.第1態様 2.印刷層」の項で説明した着色剤と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
上記樹脂インキには、上述した「A.第1態様 1.透明低反射層 (1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」および「A.第1態様 2.印刷層」の項で挙げた任意の材料を含有していてもよい。
(3)その他
上記印刷層における印刷画像については、上述した「A.第1態様」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様における印刷層の厚みは、上述した溝部の深さおよび基底部の高さを備えることが可能な厚みであればよく、適宜設計することができる。
本態様における印刷層の形成方法は、印刷層表面に形成される溝部の形状、印刷層の材料、および印刷物の用途等により適宜選択することができ、例えば、後述する「4.製造方法」の項で説明する方法を用いて形成することができる。
2.その他の構成
本態様の印刷物は、多数の溝部が所定のばらつきを有するようにして形成された印刷層、および基材を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて、印刷物を被着体に貼り合せるための印刷用粘着層または印刷用接着層等の任意の層を有することができる。
3.その他
本態様の印刷物において、印刷層は、図6で例示するように、基材の片面全域に形成されていてもよく、図示はしないが、基材表面の一部に形成されていてもよい。
本態様の印刷物の最大反射率は、上述の「A.第1態様」の項で説明した印刷物と同様であるため、ここでの説明は省略する。
4.製造方法
本態様の印刷物の製造方法は、印刷層の表面に多数の溝部を所定のばらつきを有するように賦型可能な方法であれば特に限定されない。
例えば、上述の「A.第1態様 7.製造方法 (1)製造方法の第1例 (a)転写版準備工程」の項で説明した転写版準備工程、基材上に樹脂インキを含む印刷層用組成物を印刷して印刷層を形成する印刷工程、および、上記基材上の上記印刷層に上記第2ソフトモールドの上記凸型錐状構造体が形成された面を押し当てて圧力を負荷し、上記印刷層を硬化した後、上記第2ソフトモールドを剥離する賦型工程、を経ることにより、本態様の印刷物を製造することができる。
転写版準備工程および賦型工程については、上述の「A.第1態様 7.製造方法 (1)製造方法の第1例」の項で説明した内容と同様とすることができる。
印刷工程において、印刷層用組成物を印刷する方法としては、基材上に所望の印刷画像を構成することが可能な印刷層を形成することができ、かつ、賦型工程において表面に所望の溝部を形成可能な層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。例えば上述の「A.第1態様 2.印刷層」の項で説明した方法を用いることができる。
印刷層用組成物に含まれる材料は、上述した「1.印刷層」の項で説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
1.単色印刷物の作成
以下の方法により、単色印刷物を得た。
[実施例1−1]
(転写原版の作製)
ステンレス板にブラスト加工し、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さ(以下、Saとする。)が0.35μmとなるように仕上げた。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Aを版面に有した転写原版Aを得た。なお、凸型錐状構造体Aの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物表面に賦形された溝部Aの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
以下の組成を含有するめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、電流密度を80A/dmから1分毎に3.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
<<めっき浴の組成>>
・塩化クロム:200g/dm(0.75mol/dm
・塩化アンモニウム:30g/dm(0.56mol/dm
・シュウ酸:3g/dm(0.024mol/dm
・炭酸バリウム:5g/dm(0.025mol/dm
・ホウ酸:30g/dm(0.49mol/dm
・フッ化バリウム:10g/dm(0.057mol/dm
(第1ソフトモールドの作製)
転写原版Aの凸型錐状構造体Aが形成された版面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型のソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚み0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をした。転写原版Aの凸型錐状構造体Aを転写し、ソフトモールド形成用組成物を硬化させた後、転写原版Aを剥離して第1ソフトモールドを得た。
<ソフトモールド形成用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
(第2ソフトモールドの作製)
第1ソフトモールドの、凸型錐状構造体Aの反転形状が形成された面上に、第1ソフトモールドと同じソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚み0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をして硬化させた。その後、第1ソフトモールドを剥離して、表面に凸型錐状構造体Aと同形状の凸型錐状構造体A’が形成された第2ソフトモールドを得た。
(単色印刷物の作製)
樹脂基材上にグラビア印刷法を用いて、全面がカラーコードNo.582の黒色印刷層から構成される絵柄を印刷画像として、印刷層を形成した。なお、印刷層の色は、DIC社製カラーコードを指定した。後述する多色印刷物についても同様とする。
得られた第2ソフトモールドの凸型錐状構造体A’が形成された面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型の透明低反射層用組成物を塗布し、塗布面上に黒色印刷層が配置されるように、黒色印刷層が形成された樹脂基材を配置した。
第2ソフトモールドのPCフィルム面側から、波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をして透明低反射層用組成物を硬化し、その後、第2ソフトモールドを剥離して、最表面に多数の溝部Aを備える単色印刷物を得た。
<透明低反射層用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
[実施例2−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Bを版面に有した転写原版Bを得た。なお、凸型錐状構造体Bの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Bの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に2.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Bを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Bを備える単色印刷物を得た。
[実施例3−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Cを版面に有した転写原版Cを得た。なお、凸型錐状構造体Cの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Cの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.5A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Cを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Cを備える単色印刷物を得た。
[実施例4−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Dを版面に有した転写原版Dを得た。なお、凸型錐状構造体Dの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Dの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Dを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Dを備える単色印刷物を得た。
[実施例5−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Eを版面に有した転写原版Eを得た。なお、凸型錐状構造体Eの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Eの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に2.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Eを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Eを備える単色印刷物を得た。
[実施例6−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Fを版面に有した転写原版Fを得た。なお、凸型錐状構造体Fの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Fの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に0.5A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Fを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Fを備える単色印刷物を得た。
[実施例7−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Gを版面に有した転写原版Gを得た。なお、凸型錐状構造体Gの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Gの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に5.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Gを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Gを備える単色印刷物を得た。
[比較例1−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Hを版面に有した転写原版Hを得た。なお、凸型錐状構造体Hの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Hの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に0.4A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Hを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Hを備える単色印刷物を得た。
[比較例2−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Iを版面に有した転写原版Iを得た。なお、凸型錐状構造体Iの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Iの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に6.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Iを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Iを備える単色印刷物を得た。
[比較例3−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Jを版面に有した転写原版Jを得た。なお、凸型錐状構造体Jの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Jの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に2.0A/dmずつ小さくして、最終的に10A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Jを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Jを備える単色印刷物を得た。
[比較例4−1]
ステンレス板にブラスト加工し、Sa=0.5μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Kを版面に有した転写原版Kを得た。なお、凸型錐状構造体Kの反転形状およびばらつきと、得られる印刷物における溝部Kの形状およびばらつきとは対応するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.8A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aに換えて、転写原版Kを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部Kを備える単色印刷物を得た。
2.多色印刷物の作成
以下の方法により多色印刷物を作成した。
[実施例1−2]
樹脂基材上にグラビア印刷法を用いて以下の印刷画像を有する印刷層を形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の溝部を備える多色印刷物を得た。
(印刷層)
印刷層の印刷画像は、背景がカラーコードNo.582の黒色印刷層から構成され、白抜き、カラーコードNo.125の黄色印刷層、カラーコードNo.564の赤色印刷層、カラーコードNo.649の緑色印刷層、カラーコードNo.578の青色印刷層を用いて大きさ20ptでアルファベットAからZまでが表示されている絵柄とした。
[実施例2−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Bを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Bを備える多色印刷物を得た。
[実施例3−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Cを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Cを備える多色印刷物を得た。
[実施例4−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Dを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Dを備える多色印刷物を得た。
[実施例5−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Eを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Eを備える多色印刷物を得た。
[実施例6−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Fを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Fを備える多色印刷物を得た。
[実施例7−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Gを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Gを備える多色印刷物を得た。
[比較例1−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Hを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Hを備える多色印刷物を得た。
[比較例2−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Iを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Iを備える多色印刷物を得た。
[比較例3−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Jを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Jを備える多色印刷物を得た。
[比較例4−2]
転写原版Aに換えて、転写原版Kを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の溝部Kを備える多色印刷物を得た。
[評価1]
実施例1〜7、比較例1〜4で得られた単色印刷物および多色印刷物について、以下の条件にてSEM観察を行った。印刷物表面に形成された多数の溝部の中から表1に示す点数を抽出し、平面視SEM像から溝口部の面積、溝口部の最大内角、および隣接する溝部の最近接重心間距離について平均および分散を求めた。なお、平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化については、上述の「I.溝部」の項で説明した方法を用いた。
(条件)
・SEM:電界放出形走査電子顕微鏡 S-4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)
・観察方法:Top−View(溝部を有する面側から)
・前処理:Pt−Pdスパッタ
・観察倍率:×10k
・視野範囲:縦4μm×横4μm
[評価2]
実施例1−1〜7−1、比較例1−1〜4−1で得られた単色印刷物を用い、以下の条件にて最大反射率を計測した。
(条件)
・計測装置:Scanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)
・計測方法:8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射
[評価3]
実施例1−2〜7−2、比較例1−2〜4−2で得られた多色印刷物の色彩を目視で確認し、印刷画像の視認性を評価した。評価方法は、比較例の多色印刷物の色彩の鮮明さを基準(△)とし、実施例の多色印刷物の色彩が基準と対比して鮮明であるかを、以下の基準で判定した。
◎ … 基準に比べて色彩が非常に鮮明であり、視認性が非常に良好。
○ … 基準に比べて色彩が鮮明であり、視認性が良好。
△ … 基準。
評価1〜3の結果を表1に示す。表1中のμは平均、σは分散を示す。
上記の結果により、所定のばらつきを有する溝部を印刷物の最表面に形成することで、色彩が鮮明になり、印刷画像の視認性を向上させることができた。
1 … 溝部
2 … 基材
3 … 印刷層
4 … 透明低反射層
10 … 印刷物
11 … 透明基材
12 … 低反射樹脂層

Claims (5)

  1. 基材と、
    前記基材上に印刷層と
    を有する印刷物であって、
    前記印刷物の前記印刷層側の最表面は、複数の溝部を有し、
    波長領域380nm〜780nmの光を8°の入射角で照射したときの最大反射率が2.0%以下である、印刷物。
  2. 前記印刷層上に透明低反射層を有し、
    前記透明低反射層の表面に複数の前記溝部を有する、請求項1に記載の印刷物。
  3. 前記透明低反射層は、透明基材と、前記透明基材の一方の面側に低反射樹脂層とを有し、
    前記低反射樹脂層は、透明樹脂を有し、
    前記低反射樹脂層の前記透明基材と接する表面と対向する表面に複数の前記溝部を有する、請求項2に記載の印刷物。
  4. 前記透明低反射層は、透明樹脂を有し、
    前記透明低反射層と前記印刷層とが接触している、請求項2に記載の印刷物。
  5. 前記印刷層の表面に複数の前記溝部を有する、請求項1に記載の印刷物。
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