JP2017072664A - 意匠性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】反射特性が異なる2つの領域間の反射光のコントラストが高く、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することが可能な意匠性フィルムを提供する。【解決手段】表面に多数の突起部が形成された低反射領域Aと、表面が平坦面である高反射領域Bと、を備える反射制御層1を少なくとも有し、突起部の底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の突起部と、一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の突起部と、の重心間距離の平均が400nm以下であり、重心間距離の分散が10000以上であり、突起部が形成された平面視上において突起部の底面の重心からの突起部の頂部の位置を方位角φで示し、突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφk/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφk/n|≦0.25の関係を満たす意匠性フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、反射特性が異なる2つの領域を有する意匠性フィルムに関する。
光の反射特性を利用して領域ごとに異なる意匠性を発現させる技術としては、例えば、反射光を低減する構造を有する低反射領域と、上記構造を有さない高反射領域とを設け、領域ごとに反射光量の差を利用して異なる意匠性を発現させる技術が知られている。例えば、特許文献1では、金属基材の一部をブラスト処理により粗面化した低反射領域を設けることで、上記低反射領域では反射光の低減によりマット調の意匠を発現し、粗面化されていない高反射領域では、反射光によりメタリック調の意匠を発現する金属装飾体が開示されている。このように、領域ごとに反射特性を変化させることで、視覚効果の違いを利用して物品全体の意匠性の向上を図ることが可能である。
また、反射光を低減する構造として、多数の微小突起が反射防止を図る光の波長域の最短波長以下の間隔で規則正しく配置されてなる凹凸構造が知られている。上述の構造はモスアイ構造と呼ばれ、入射光に対する屈折率を厚さ方向に連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることで、光の反射を防止するものであり、ブラスト処理等による粗面化よりも、優れた反射光低減効果を発揮することができる。
このような反射光を低減する構造が表面に賦形されたフィルムは、単体で、または、他の意匠層との併用により、意匠性フィルムとして用いることができる。例えば、特許文献2では、透明なモスアイフィルムのモスアイ構造面上の一部もしくはその対向面上の一部に、絵柄層が設けられた意匠性フィルムが開示されている。
特許文献2に開示される意匠性フィルムは、上記モスアイ構造により入射した光の反射が低減されることで、反射光が絵柄層の絵柄に重畳することがないため、絵柄層を鮮明に表示することができる。また、上記意匠性フィルムでは、絵柄層が設けられていない領域は、反射光の低減により視認されにくいことから、絵柄層が設けられた領域とそれ以外の領域との視覚効果を利用して、絵柄層の絵柄を立体的に表示することができるとされる。
このように、反射光を低減する構造を有する意匠性フィルムは、単体での意匠性、もしくは意匠層との併用による意匠性を向上させることができる。
特開平6−88252号公報 特開2014−71220号公報
しかし、意匠性フィルムとして、モスアイ構造を有する低反射領域とモスアイ構造を有さない高反射領域とを設け、領域ごとに異なる意匠性を発現させようとする場合、領域間での反射光のコントラストが十分に得られにくいという問題がある。このため、領域ごとに発現される意匠性の違いが顕著に認識されず、領域ごとの視認効果の違いによる意匠性フィルム全体の意匠性の向上が十分に図れないという課題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、反射特性が異なる2つの領域間の反射光のコントラストが高く、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することが可能な意匠性フィルムを提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、低反射領域として表面にモスアイ構造を付した意匠性フィルムにおいて、反射特性が異なる2つの領域間での反射光のコントラストが低い要因が、モスアイ構造特有の規則的な突起配列により、低反射領域での反射光低減効果が十分ではないためであると知見した。
また、モスアイフィルムを意匠層等の被貼付物に貼付して意匠性フィルムとする場合に、被貼付物表面との境界面において光の全反射が生じることも、意匠性フィルムにおける上記2つの領域間の反射光のコントラストを低下させる要因であることを見出した。
そこで、本発明者等が更に鋭意検討を行った結果、反射特性が異なる2つの領域を有する意匠性フィルムにおいて、低反射領域での表面構造を、モスアイ構造に変えて、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の突起部または溝部からなる構造とすることで、モスアイ構造よりも高い反射光低減効果が得られ、領域間の反射光のコントラストが向上することを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
すなわち本発明は、表面に多数の突起部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を少なくとも有し、上記突起部の底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部と、上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部と、の重心間距離の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とする意匠性フィルムを提供する。
本発明によれば、反射制御層の低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の突起部が表面に形成されていることで、上記低反射領域に入射した光の反射を高効率で低減することができる。また、上述の表面構造を有する低反射領域では、ヘイズ値が高くなるため層内での光の散乱が増大し、反射制御層の突起部賦形面と対向する面に他の層が配置される場合に、上記反射制御層の低反射領域と上記他の層との積層界面での光の全反射を低減することができる。これにより、上記低反射領域では、モスアイ構造よりも高い反射光低減効果を発揮することができ、反射光が抑えられた意匠を発現することができる。一方、反射制御層の高反射領域では、表面が平坦面であるため、上記平坦面の表面平滑性に応じて光を高反射させることができる。これにより、上記高反射領域では、反射光を利用した意匠を発現することができる。
このように、本発明の意匠性フィルムは、反射制御層の低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上するため、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができ、視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性の向上を図ることができる。
上記発明においては、上記反射制御層の、上記突起部が形成された側の面と反対側の面上に、機能層を有していてもよい。反射制御層の低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域ごとに機能層の表示仕様を変化させることができるからである。
また、本発明は、表面に多数の溝部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を少なくとも有し、上記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、上記溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、一の上記溝部と、上記一の溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の上記溝部と、の重心間距離の平均が500nm以下であり、上記重心間距離の分散が8000以上であることを特徴とする意匠性フィルムを提供する。
本発明によれば、反射制御層の低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の溝部が表面に形成されていることで、上記低反射領域に入射した光の反射を高効率で低減することができる。また、上述の表面構造を有する低反射領域では、ヘイズ値が高くなるため層内での光の散乱が増大し、反射制御層の溝部賦形面と対向する面に他の層が配置される場合に、上記反射制御層の低反射領域と上記他の層との積層界面での光の全反射を低減することができる。これにより、上記低反射領域では、モスアイ構造よりも高い反射光低減効果を発揮することができ、反射光が抑えられた意匠を発現することができる。一方、反射制御層の高反射領域では、表面が平坦面であるため、上記平坦面の表面平滑性に応じて光を高反射させることができる。これにより、上記高反射領域では、反射光を利用した意匠を発現することができる。
このように、本発明の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上するため、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができ、視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性の向上を図ることができる。
上記発明においては、上記反射制御層の、上記溝部が形成された側の面と反対側の面上に、機能層を有していてもよい。反射制御層の低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域ごとに機能層の表示仕様を変化させることができるからである。
本発明の意匠性フィルムは、反射制御層の低反射領域と高反射領域との反射特性の違いにより、領域間の反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができるという効果を奏する。
本発明の第1態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図である。 図1のC部分の拡大図である。 突起部の頂部の方位角φを説明する説明図である。 本発明の第1態様の意匠性フィルムにおける低反射領域の平面SEM画像である。 本発明の第1態様の意匠性フィルムの他の例を示す概略断面拡大図である。 本発明の第2態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図である。 図6のC部分の拡大図である。 溝部の形状を説明するための説明図である。 本発明の第2態様の意匠性フィルムにおける低反射領域の平面SEM画像である。 本発明の第2態様の意匠性フィルムの他の例を示す概略断面拡大図である。 本発明の意匠性フィルムの他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明の意匠性フィルムについて詳細に説明する。
本発明の意匠性フィルムは、低反射領域と高反射領域とを備える反射制御層を少なくとも有するものであり、上記低反射領域の表面構造に応じて、2つの態様に大別される。
以下、本発明の意匠性フィルムの各態様について説明する。
I.第1態様
本発明の意匠性フィルムの第1態様(以下、この項においては、「本態様」と称する場合がある。)は、表面に多数の突起部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を少なくとも有し、上記突起部の底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部と、上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部と、の重心間距離(以下、この項においては、「最近接重心間距離」と称する場合がある。)の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とするものである。
本態様の意匠性フィルムについて、図を参照して説明する。図1は、本態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図であり、図2は図1のC部分の拡大図である。また、図3(a)は突起部の側面図、図3(b)は図3(a)のz軸方向から見たときの、すなわち突起部の頂部側からの平面視における突起部の頂部の位置を説明する説明図である。
本態様の意匠性フィルム10は、表面に多数の突起部11が形成された低反射領域Aと、表面が平坦面である高反射領域Bと、を備える反射制御層1を少なくとも有する。低反射領域Aにおいて、多数の突起部11は、形状および配置位置に所定のばらつきをもって形成されている。なお、図2においてPは、反射制御層1において突起部11の根元が位置する面を示す。
なお、多数の突起部の形状および配置位置のばらつきのことを、単に「(突起部の)ばらつき」と称する場合がある。
ここで、反射制御層の低反射領域に形成された多数の突起部が有するばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。
第1のパラメータは、突起部の大きさによるものである。本態様において、多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図2に示すように、突起部11の底面の重心Oを通る最大幅Lの平均が250nm以上500nm以下の範囲内であることをいう。
第2のパラメータは、隣接する突起部の位置関係によるものである。本態様において、多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図2に示すように、一の突起部11Aと、一の突起部11Aの底面の重心Oに最も近接した位置に底面の重心Oを有する他の突起部11Bと、の重心間距離(最近接重心間距離)Lの平均が400nm以下であり分散が10000以上であることをいう。
第3のパラメータは、突起部の頂部が示す方向によるものである。本態様において、多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図3に示すように、突起部11が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において突起部11の底面の重心Oからの突起部11の頂部Tの位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、突起部11の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことをいう。
すなわち、多数の突起部が「所定のばらつきを有する」とは、第1〜第3の各パラメータが上述の所定の範囲内(以下、所定値と称する場合がある。)を示すことを意味する。
本態様の意匠性フィルムは、反射制御層の低反射領域が位置する領域が、「意匠性フィルムの低反射領域」となり、反射制御層の高反射領域が位置する領域が、「意匠性フィルムの高反射領域」となる。後述する本発明の意匠性フィルムの第2態様についても同様である。
本態様の意匠性フィルムによれば、反射制御層の低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の突起部が表面に形成されていることで、上記低反射領域に入射した光の反射を高効率で低減することができる。また、上述の表面構造を有する低反射領域では、ヘイズ値が高くなるため層内での光の散乱が増大し、反射制御層の突起部賦形面と対向する面に他の層が配置される場合に、反射制御層の低反射領域と上記他の層との積層界面での光の全反射を低減することができる。これにより、上記低反射領域では、モスアイ構造よりも高い反射光低減効果を発揮することができ、反射光が抑えられた意匠を発現することができる。
一方、反射制御層の高反射領域では、表面が平坦面であるため、上記平坦面の表面平滑性に応じて光を反射させることができる。これにより、上記高反射領域では、反射光を利用した意匠を発現することができる。
このように、本態様の意匠性フィルムは、反射制御層の低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上するため、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができ、視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性の向上を図ることができる。
本態様の意匠性フィルムにおける各領域の反射特性、および、それにより発現される各領域での意匠性について、さらに詳しく説明する。
本態様の意匠性フィルムの低反射領域では、反射制御層の表面に多数の突起部が所定のばらつきを有して形成されているため、上記突起部に入射した光を多数回反射させて、突起部から反射制御層内に吸収させることができる。また、上記突起部が所定のばらつきを有することで、干渉により特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。さらに、多数の突起部が所定のばらつきを有することで、上記突起部、中でも突起部の頂部においては、多数回反射により突起部から反射制御層内へ光が吸収されるのに加えて、突起部の形状により光がミー散乱することで光の吸収量をさらに増加させることができ、反射をより低減させることが可能となる。これは、ミー散乱が「前方散乱が強い」、「波長依存性が小さい」といった特長を有することによるものである。
つまり、ミー散乱は前方散乱が強いため、突起部に入射した光は突起部内で散乱されることとなり、散乱光を突起部から反射制御層内へ吸収させることができる。また、ミー散乱は波長依存性が小さいため、可視光領域380nm〜780nmの全域の光を散乱させることができ、散乱光を突起部から反射制御層内へ吸収させることが可能となる。このため低反射領域では、表面の突起部により広波長域の光の反射を低減することができる。
加えて、低反射領域の表面が上述の構造を有することで、低反射領域でのヘイズ値が高くなり、層内において光の散乱が増大する。そして、本態様の意匠性フィルムにおいて、反射制御層の突起部賦形面と対向する面に他の層が配置される場合、反射制御層の低反射領域と上記他の層との積層界面での光の全反射を生じにくくすることができる。これにより、上記低反射領域では、従来公知のモスアイ構造が付された層よりも、高い反射光低減効果を奏することができる。
一方、本態様の意匠性フィルムの高反射領域では、反射制御層の表面が平坦面であり、その表面平滑性に応じて光が反射されるため、低反射領域よりも高反射性を示すことができる。
このように、本態様の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域間で反射特性が大きく異なるため、領域間での反射光のコントラストが高くなる。
そして、本態様の意匠性フィルムに光を当てると、低反射領域では、反射光が抑えられたヘイズがかったマット調の意匠を発現することができる。一方、高反射領域では、周囲の低反射領域との反射光のコントラストにより、反射光の輝度が際立ったキラキラと光る意匠を発現することができる。
このように、本態様の意匠性フィルムは、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することから、視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性の向上を図ることができる。
本態様の意匠性フィルムは、反射制御層単体であっても、領域ごとの反射特性に応じて上述した異なる意匠性を発現することが可能であるが、反射制御層の突起部賦形面と対向する面に機能層を設けた意匠性フィルムとすることで、低反射領域および高反射領域の反射特性の違いを利用して領域ごとに上記機能層の表示仕様を変化させることができる。
例えば、機能層として印刷層を用い、上記印刷層の表面に透明性を有する上記反射制御層を設けた本態様の意匠性フィルムは、低反射領域では、反射制御層および印刷層への散乱光の吸収が高くなることから、印刷層の発色性が向上し、印刷層の色みや絵柄を鮮明に表示することができる。また、低反射領域では、反射光の低減により、光沢が抑えられた表示とすることができる。一方、反射制御層の高反射領域では、表面で生じる反射光により、印刷層の色みや絵柄を高輝度且つ高光沢を帯びて表示することができる。
また、機能層として金属層を用い、金属層の表面に透明性を有する上記反射制御層を設けた本態様の意匠性フィルムは、低反射領域では、表面での反射光が低減されるため、金属層を金属光沢が抑えられたマット調に表示することができ、一方、高反射領域では、平坦面および金属層表面にて生じる反射光により、金属層を金属光沢が強いメタリック調に表示することができる。
以下、本態様の意匠性フィルムについて詳細に説明する。
A.反射制御層
本態様における反射制御層は、表面に多数の突起部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える。
1.低反射領域
低反射領域では、表面に形成された多数の突起部が形成されており、多数の上記突起部が所定のばらつきを有することにより、光の反射を低減し、反射光の低減効果による意匠性を発現することができる。また、低反射領域は、表面に上述の構造を有することから、高ヘイズ値を示すことができ、領域内での光の散乱が増大する。
(1)突起部
上記突起部は、その形状および配置位置に所定のばらつきを有するものであり、多数の突起部が示すばらつきの程度により、低反射領域における反射光低減効果が決定される。
ここで、突起部のばらつきとは、突起部の大きさ、隣接する突起部の位置関係、突起部の頂点が示す方向、の3つのパラメータを定量化することで規定され、各パラメータが上述の所定値を示すことで、多数の上記突起部は所定のばらつきを有することができる。
以下、突起部のばらつきを規定するためのパラメータの定量化方法、および上記定量化方法により規定される各パラメータについて説明する。
(a)パラメータの定量化方法
突起部の形状および配置位置のばらつきは、反射制御層の低反射領域に備わる多数の突起部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。
突起部の抽出は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)等を用い、倍率10000倍、視野範囲を縦4μm×横4μmとして反射制御層の突起部が形成された側の面側から平面視観察を行い、上記視野範囲における突起部の面内配列を画像で検出し、その中から所望の点数を抽出する方法を用いる。
各パラメータは、1つの視野範囲あたりの突起部の最低抽出点数を30点として算出したものである。突起部の抽出点数は多いほど好ましく、抽出点数は30点以上、中でも50点以上であることが好ましい。また、突起部の抽出を行うための上記視野範囲の検出数は、低反射領域における表面の所望の単位面積(2500mm)当たり3箇所以上、中でも5箇所以上、特に10箇所以上であることが好ましい。
抽出点数および視野範囲の検出数を上記範囲で規定することで、3つのパラメータをより高い精度で定量化することができ、突起部の形状および配置位置のばらつきを正確に規定することができるからである。
各パラメータは、以下の手順により定量化することができる。
(i)まず、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて突起部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の突起部を抽出し、各突起部の高さの極大点および極小点を検出する。なお、極大点および極小点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法等、種々の手法を適用することができる。このとき得られた極大点を「突起部の頂部」とする。
(ii)次に、SEM画像やAFM画像から、極大点を囲む極小点の集合を突起部の根元とし、根元の形状を決定するために上記根元の形状を所望の形状に近似する。根元の形状とは、根元の輪郭の平面視形状(輪郭形状)であり、上記輪郭により囲まれた領域である。近似の際、部分的に途切れている線は補完する。補完する方法としては、例えばある閾値を設けて、閉空間を作る方法を取ることができる。近似された根元の輪郭形状としては、各パラメータを特定可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等とすることができる。得られた突起部の根元の近似形状を「突起部の底面の形状」とする。
突起部の根元の形状の近似方法としては、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、特に限定されないが、例えば、テンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。
テンプレートマッチングは、予め形状を表現したテンプレートを準備し、画像認識の対象となる画像データに対してテンプレートを移動させながら相関係数等の類似度の指標を調べることによって画像データに含まれる形状を認識する技術である。テンプレートマッチングによる画像近似手法については、例えば、「中田崇行、包躍、藤原直史:“三次元環境におけるLog-Polar変換を用いた図形認識”,電気情報通信学会論文誌(D-II), Vol.88, No.6, pp.985-993(2005.6)」、「斎藤文彦:“部分ランダム探索と適応型探索による半導体チップ画像テンプレートマッチング”, 精密工学会誌, Vol.61, No.11, pp.1604-1608(1995.11)」に開示される。
また、一般化ハフ変換は、無限に存在する直線の中から画像データ内の特徴点を最も多く通る直線を決定するハフ変換を一般化して曲線に応用したものであり、この一般化ハフ変換によっても、事前に用意した参照用のテーブルを利用して画像データの形状認識を行うことができる。一般化ハフ変換による画像近似手法については、例えば、「Ballad.D.H: “GENERALIZING THE HOUGH TRANSFORM TO DETECT ARBITRARY SHAPES”, Pattern Recognition, Vol.13, No.2, pp.111-122(1981)」や、「木村彰男,渡辺孝志:“アフィン変換に不変な任意図形検出法として拡張された一般化ハフ変換”, 電気情報通信学会誌(D-II), Vol. J84-D-II, No. 5, pp.789-798(2001.5)」に開示される。
Douglas-Peucker法は、折れ線近似によって形状認識を行う手法である。Douglas-Peucker法による画像近似手法については、例えば、「Wu. S.T, M.R.G:“A non-self-intersection Douglas-Peucker Algorithm”, Proceeding of Sixteenth Brazilian Symposium on Computer Graphics and Image Processing, IEEE, pp.60-66(2003)」に開示される。
(iii)次に、突起部の底面の形状から、突起部の底面の重心を特定する。突起部の底面の重心は、一般的な線形代数の計算で求めることができる。例えば、突起部の底面の形状が正円である場合、円周上の3点を結ぶ三角形を描き、三角形のうち二辺の垂直2等分線をそれぞれ引いた交点を円の重心とすることができる。また、突起部の底面の形状が楕円である場合、楕円の外周上の2点を結ぶ2本の線分を平行となるように引き、平行する2本の線分の各中点を結び、結んだ線分の中点を重心とすることができる。
さらに突起部の底面の形状が多角形である場合、突起部の底面の重心は、以下の操作を行うことで特定することができる。
操作1:まず、多角形の1つの頂点から、上記1つの頂点に隣接する2つの頂点を除く他の各頂点へ対角線を結び、複数の三角形に分割する。
操作2:分割された各三角形の重心を求める。
操作3:次に、各三角形の重心を結び多角形を形成する。
操作4:突起部の底面の形状が奇数角形の場合、操作3において形成される多角形が三角形となるまで、操作1〜操作3を繰り返す。一方、突起部の底面の形状が偶数角形の場合、操作3において形成される多角形が四角形となるまで、操作1〜操作3を繰り返す。
操作5:上述の操作1〜操作4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が三角形となる場合、上記三角形の重心が突起部の底面の重心となる。一方、上述の操作1〜操作4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が四角形となる場合、以下の方法で上記四角形の重心を求める。まず、上記四角形を1つの対角線で2つの三角形に分割し、2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。次に、四角形を別の対角線で2つの三角形に分割して2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。2本の直線の交点が突起部の底面の重心となる。
(iv)次に、突起部の底面の重心を通る最大幅(以下、単に、突起部の底面の最大幅と略する場合がある。)を決定し、突起部の大きさを規定する。突起部の底面の最大幅の長さの決定は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出して行うことができる。上記最大幅は、突起部の底面の重心を通り、上記底面の形状の外周上の2点を結ぶ線分の長さのうち、最も幅広の線分をいう。
具体的には、突起部の底面の形状が正円の場合では、上記最大幅とは正円の直径をいい、突起部の底面の形状が楕円の場合では、上記最大幅とは楕円の重心を通過して外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。また、突起部の底面の形状が多角形の場合では、上記最大幅とは、多角形の重心を通過して多角形の外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。
算出した最大幅を統計処理することで、突起部の底面の最大幅の平均値および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。なお、上記最大幅の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最大幅−最大幅の平均値)/標準偏差
(v)次に、各突起部の位置を座標化する。突起部の位置とは、上述した突起部の底面の重心の位置(以下、単に、突起部の重心と称する場合がある。)を意味する。
突起部の底面の重心の位置は、以下の方法により座標化することができる。まず、SEM画像やAFM画像内の所望の位置に原点を設定する。例えば、SEM画像やAFM画像中の左下を原点とする。次に、上記原点から、上記画像内において反射制御層の突起部が形成された面内の長さ方向に相当する一方向をx軸、x軸に直交し、幅方向に相当する一方向をy軸と規定する。このように画像を座標平面とすることで、各突起部の重心を座標化することができる。
突起部の重心の座標から、特定の一の突起部と隣接する複数の突起部との突起部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は以下の計算式によって算出され、特定の一の突起部について算出される重心間距離のうち、最小の距離を「最近接重心間距離」とする。
重心間距離={(x−x+(y−y1/2
なお、式中のxおよびyは、特定の一の突起部の位置を示すx座標およびy座標である。また、xおよびyは、上記特定の一の突起部に隣接する突起部の位置を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
上記の方法で各突起部の最近接重心間距離を抽出し、既存の表計算ソフトで統計処理して最近接重心間距離の平均値および分散を計算することで、隣接する突起部の位置関係を規定する。なお、最近接重心間距離の平均値および分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最近接重心間距離−最近接重心間距離の平均値)/標準偏差
(vi)次に、突起部の底面の重心から頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂点が示す方向を規定する。方位角φは、突起部の位置を座標化した際に設定した座標平面の平面視上において、x軸に対して突起部の重心および頂部を結ぶ辺が成す角度で規定される。
抽出した各突起部について方位角φを決定し、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値を算出する。この算出は既存の表計算ソフトを使用することができる。
各パラメータの定量化において算出される分散の値とは、一般に平均値から算出される値、すなわち測定値と測定値の平均値との差の二乗平均の和を抽出点数で割ることで算出される値である。後述する「II.第2態様」においても同様とする。
(b)パラメータ
次に、突起部のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
(i)突起部の大きさ
突起部の大きさは、突起部の底面の重心を通る最大幅で規定される。突起部の底面の最大幅は、図2、図4(a)においてRで示す部分である。なお、図4は低反射領域の平面SEM画像であり、図4(a)中のTは突起部の頂部を示す。
突起部の底面の最大幅の平均は、250nm以上500nm以下の範囲内であればよく、中でも300nm以上400nm以下の範囲内であることが好ましい。
球形粒子では幾何光学散乱が支配する直径は数μm以上であるが、突起形状での散乱は異なる挙動を示す。本発明においては、突起部の底面が上記範囲内に最大幅を有する形状とすることで、突起部においてミー散乱が支配的に生じることが推測されるからである。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも大きいと、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり前方散乱が起こりにくくなるため、低反射領域において反射制御層への光の吸収が小さくなり、所望の反射光低減効果が得られない場合がある。
また、低反射領域における単位面積あたりの突起部の個数が減少するため多数回反射が生じにくくなり、反射率を低減させることが困難となる場合がある。
一方、突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも小さいと、レイリー散乱が支配的になるため、前方散乱が起こりにくくなり、低反射領域において反射制御層への光の吸収が小さくなる場合がある。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲内にあるとき、上記突起部の底面の最大幅の分散は、10000以上であることが好ましい。干渉によって特定の波長光の強度が強まる不具合を抑制できるためである。上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば18000以下であることが好ましい。突起部の底面の最大幅の分散の単位はnmとなる。
(ii)隣接する突起部の位置関係
隣接する突起部の位置関係は、一の突起部と、上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の突起部と、の重心間距離(最近接重心間距離)の平均により規定される。突起部の位置とは、突起部の底面の重心の位置をいい、図2〜図4においてOで示す部分である。
最近接重心間距離は、先に説明した方法で算出され定量化されるが、さらに図を示して説明する。最近接重心間距離は、図4(b)で示すように、突起部11Aに隣接する突起部のうち、突起部11Aの重心Oと最も近い位置に重心Oを有する突起部11Bを抽出し、その重心間距離L1を最近接重心間距離として算出する。次に、突起部Bに隣接する突起部のうち、突起部11Bの重心と最も近い位置に重心Oを有する突起部11Cを抽出し、その重心間距離L2を最近接重心間距離として算出する。
最近接重心間距離の平均とは、上記操作を繰り返し行い、突起部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出することができる。
最近接重心間距離の平均は、400nm以下であればよく、中でも360nm以下、特に350nm以下であることが好ましい。最近接重心間距離の平均が上記範囲よりも大きいと、隣接する突起部が密接しておらず、低反射領域において突起部が形成されない非突起部領域が多く存在することとなり、上記非突起部領域において生じる光の反射により、低反射領域における反射光低減効果が低下する場合がある。
最近接重心間距離の平均の下限は、特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば280nm以上であることが好ましい。
また、最近接重心間距離の平均が上記範囲内にあるときの、上記最近接重心間距離の分散、10000以上であればよく、中でも11000以上、特に12000以上であることが好ましい。最近接重心間距離の分散が上記範囲よりも小さいと、多数の突起部が均等なピッチ幅で配置されることとなり、干渉により特定の波長光の強度が強まり、低反射領域において所望の反射光低減効果が発揮されにくい場合があるからである。
上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば14000以下であることが好ましい。なお、最近接中心間距離の分散の単位はnmとなる。
(iii)突起部の頂点が示す方向
突起部の頂点が示す方向は、反射制御層の低反射領域の表面において、突起部の底面の重心に対して突起部の頂点が位置する方向で規定される。
すなわち、図3に示すように、反射制御層の低反射領域の面内の長さ方向および幅方向を、それぞれx軸方向およびy軸方向で規定し、突起部の頂部側からの平面視上において、突起部の底面の重心Oからの頂部Tの位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂点が示す方向が規定される。方位角φの規定方法は、先に説明した通りである。
多数の突起部の頂部が示す方向のばらつきは、反射制御層の低反射領域の面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向と規定し、平面視上における上記突起部の頂部の位置を方位角φで示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたとき、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|)、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち、|Σ(k=1〜n)sinφ/n|)の値により規定することが可能である。
ここで、複数の突起部の頂点が同一方向を向いて配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は大きくなる。一方、複数の突起部がそれぞれ異方向を向いてランダムに配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は小さくなる。
本態様においては、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことで、複数の突起部の頂点が、光の入射角度に因らず反射率の低減が可能となるように、ランダムな方向に向くこととなる。中でも|(Σ(k=1〜n)cosφ)/n|≦0.15、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.15の関係を満たすことが好ましく、特に|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.10、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.10の関係を満たすことが好ましい。|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値が上記範囲よりも大きいと、複数の突起部の各頂点が同一方向を向き、高い規則性を有して配置されることになる。このため、特定の角度から入射される光に対しては、高い反射率で反射してしまい、光の入射角度に応じて、低反射領域における反射光低減の程度に差が生じる場合があるからである。
なお、抽出点数nは30点以上であればよく、より好適な点数については既に説明した抽出点数と同様である。
(c)その他
突起部の高さは、上述の3つのパラメータが所定値となることが可能な大きさであれば特に限定されないが、例えば、100nm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも300nm〜1μmの範囲内が好ましい。突起部の高さが上記範囲よりも小さい場合、突起部の頂部の曲率が大きくなるため、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり、前方散乱が起こりにくくなるため、反射制御層への光の吸収が小さくなる可能性がある。一方、突起部の高さが上記範囲よりも大きい場合、所望の突起部の形状に賦形することが困難となる可能性がある。
突起部の高さは、突起部の根元から頂点までの長さをいい、図2においてhで示す部分である。突起部の高さは、上述の「(a)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により検出した極大点から、特定の基準位置(例えば、突起部の根元位置を高さ=0とする。)からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化した値とすることができる。
また、突起部の高さが上記範囲内にあるとき、突起部の底面の最大幅に対する高さのアスペクト比(図2におけるh/R)は、低反射領域において所望の反射光低減効果を発揮することが可能な比であればよく、例えば、0.3〜30の範囲内が好ましく、中でも0.8〜3の範囲内が好ましい。上記アスペクト比が上記範囲よりも小さいと、突起部での光の反射自体が起こりにくくなり、低反射領域において反射光低減効果が十分に発揮されない場合がある。一方、アスペクト比が上記範囲よりも大きいと、賦形が困難となり突起部が所望の形状とならない場合がある。
突起部は、凸型の錐状構造を成しており、反射制御層の表面に上記突起部の形状を精度良く賦形することが可能であるため、生産性が向上するという製造上の利点を有する。
一般に、モスアイ構造のように、突起部を規則的に配置して反射率の低減を図る場合、反射光低減効果を向上させるために、突起部の形状を頂部が分岐した多峰形状とし、表面積を大きくする方法が用いられる。しかし、このような形状は、精度良く賦形できない場合がある。一方、本態様においては、多数の突起部に所定のばらつきをもたせることで反射を低減することができるため、突起部を多峰形状とする必要がなく、反射制御層の表面に個々の突起部を精度良く賦形することが可能となる。
突起部の頂部の先端は、尖っていてもよく、曲率を有していてもよい。中でも低反射領域において、ミー散乱による反射制御層への光の吸収が多くなることから、先端が尖っていることが好ましい。
突起部の底面形状は、近似により上述のパラメータの規定が可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等を挙げることができる。
また、突起部の側面形状は、突起部の縦断面において直線状であってもよく、曲線状であってもよい。さらに、突起部の側面形状が多段状であってもよい。中でも突起部の側面が多段状であることが好ましい。突起部において多数回反射およびミー散乱がより起こりやすくなるからである。
(2)その他
低反射領域はパターン状に形成することができる。上記低反射領域のパターン形状は、特に限定されず、例えば、ストライプ状、格子状、ドット状、幾何学形状等が挙げられる。また、低反射領域のパターン形状を意匠パターンとすることで、低反射領域のパターン形状に応じた高輝度かつ高光沢な意匠を表示することができる。上記意匠パターンとしては、例えば、文字、記号、数字、模様、標章等を表わすパターンが挙げられる。
低反射領域は、表面に形成された多数の突起部が所定のばらつきを有することから、低反射率を示すことができる。低反射領域の反射率は、高反射領域より低ければよく、例えば、可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.5%以下であることが好ましい。低反射領域の最大反射率が上述の上限値以下であることで、可視光の全波長域に対して低い反射率を示し、反射光を十分に低減することができ、その効果を目視で確認できるからである。
低反射領域の最大反射率は、計測装置としてScanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)を用い、低反射領域の突起部賦形面を光の入射面として8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射を測定した値である。具体的には、可視光領域380nm〜780nmの波長の光を8°にて入射させた際の全方向の積算反射率を求め、その中で最も高い反射率とすることができる。後述する高反射領域の最大反射率も同じ方法で測定される。
反射制御層が光透過性を有する場合は、裏面に黒テープ等の黒色層を配置して測定される。また、反射制御層の各領域の最大反射率の測定に際し、透明基材上に反射制御層を積層し、裏面に黒色層を配置した状態で測定し、このときの最大反射率を反射制御層の各領域の最大反射率とすることもできる。
また、低反射領域は、表面に形成された多数の突起部が所定のばらつきを有することから、高ヘイズ値を示すことができる。これにより、低反射領域においては、層内で光を散乱させる等により反射光を低減することができるため、高反射領域との反射光のコントラストを向上させることができる。
上記低反射領域のヘイズ値は、高反射領域よりもヘイズ値が高いことが好ましく、70%以上であることが好ましく、中でも80%以上であることが好ましい。また、ヘイズ値の上限は95%以下であることが好ましい。
低反射領域のヘイズ値が上記範囲よりも小さいと、上記低反射領域において多数の突起部が所定のばらつきを有していないこととなり、光の多数回反射およびミー散乱による光の吸収が起こりにくくなり、反射光の低減が図れない場合があるからである。また、低反射領域内において光が十分に散乱されず、本態様の意匠性フィルムが反射制御層と機能層との積層体である場合に、反射制御層の低反射領域と機能層との界面での全反射を十分に抑えることができない場合があるからである。一方、上記ヘイズ値が上限値よりも大きいと、反射制御層表面の所望の位置に突起部の形状を賦形することが困難となる場合があるからである。
ヘイズ値は、ヘイズメーター(東洋精機製作所製 商品名:ヘイズガード)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定される。反射制御層の各領域のヘイズ値は反射制御層単層での値である。なお、反射制御層の各領域のヘイズ値の測定に際し、低ヘイズ値(例えば1%以下)を示す透明基材上に反射制御層を積層した状態で測定し、このときのヘイズ値を、反射制御層の各領域のヘイズ値とすることができる。
2.高反射領域
高反射領域では、平坦面を有することから、低反射領域よりも高い反射率で光を反射することができ、上記反射光による意匠性を発現することができる。
高反射領域の表面粗さは、低反射領域の表面粗さよりも低ければよく、上記高反射領域に要求される反射率や意匠性等に応じて適宜設定することができる。
高反射領域の反射率は、低反射領域よりも高ければよく、例えば、可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が1%以上であることが好ましく、中でも1.5%以上であることが好ましい。高反射領域の最大反射率が上述の範囲内にあることで、低反射領域との反射光のコントラストが高くなり、高反射領域で発現される意匠の輝度を際立たせることができるからである。
また、高反射領域は、低反射領域よりもヘイズ値が低いことが好ましい。高反射領域内での光の散乱を生じにくくすることで、低反射領域との反射光のコントラストを向上させることができるからである。高反射領域のヘイズ値は、反射制御層を構成する材料の選択により、適宜設定することができるが、例えば、10%以下であることが好ましく、中でも0.5%以下であることが好ましい。
高反射領域はパターン状に形成することができる。高反射領域のパターン形状の例については、低反射領域のパターン形状の例と同様とすることができる。また、高反射領域のパターン形状が意匠パターンであってもよい。
また、高反射領域では、平坦面上に絵柄部を有していてもよい。絵柄部の絵柄としては、後述する「III.任意の部材」の項で説明する印刷層の絵柄と同様とすることができる。
絵柄部は、従来公知の印刷法により形成することができる。
高反射領域における平坦面は、図2で示すように、低反射領域Aの突起部11の根元が位置する面Pと同等の位置にあってもよく、図5(a)で示すように、低反射領域Aの突起部11の根元が位置する面Pよりも低い位置していてもよく、図5(b)で示すように、低反射領域Aの突起部11の頂部の位置と同等またはそれよりも高い位置にあってもよい。
3.その他
反射制御層を構成する材料は、表面に低反射領域を構成する突起部の賦形が可能なものであればよく、通常は、樹脂が用いられる。上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を硬化させた硬化樹脂であってもよく、各種硬化形態の賦形用樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
反射制御層は、必要に応じて任意の材料を含んでいてもよい。例えば、着色剤、屈折率調整剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。屈折率調整剤としては、例えば特開2013−142821号公報等に開示される低屈折率材が挙げられる。
反射制御層の厚さは特に限定されず、使用する材料、要求される強度等を考慮して適宜設定することができ、例えば3μm〜200μmの範囲内、中でも5μm〜100μmの範囲内が好ましい。
なお、反射制御層の厚さとは、反射制御層の突起部が形成された側の面と反対側の面から、平坦面または突起部の頂部のうちいずれか高い方までの長さの平均をいい、図5(a)または図5(b)においてhで示す部分である。
反射制御層は、透明性を有していてもよく不透明であってもよい。上記反射制御層が「透明性を有する」とは、反射制御層を介して対向側がある程度以上ないしは完全に透けて見える状態をいい、「透明」および「半透明」の概念を含む。
本態様の意匠性フィルムにおいて、後述する機能層の有する色や絵柄を表示して意匠性を発現する場合、反射制御層は透明性を有することが好ましい。各領域での反射特性の違いを利用して、機能層の色みや光沢感、輝度等を、反射制御層の領域ごとに変化させて表示することができ、領域間で異なる意匠性を発現することができるからである。
反射制御層が透明性を有する場合の光透過率は、上記反射制御層を介して下層の意匠を視認できればよく、所望の意匠性に応じて適宜設定することができる。
また、反射制御層は、無色であってもよく、有色であってもよい。
反射制御層が有色かつ透明性を有する場合、上記反射制御層の色は特に限定されないが、本態様の意匠性フィルムが反射制御層と機能層との積層体の場合であれば、反射制御層の色が機能層の色よりも明色であることが好ましい。機能層よりも反射制御層を明色とすることで、領域毎に生じる意匠のコントラストが明瞭に視認されやすくなるからである。
一方、反射制御層が不透明である場合、上記反射制御層の呈する色は特に限定されず、明色でも暗色でもよい。中でも、可視光を吸収する色が好ましく、暗色がより好ましい。暗色は可視光吸収能が高いため、低反射領域において、突起部による光の吸収に加えて反射制御層の暗色による光の吸収により、反射光低減効果を高めることができるからである。暗色とは、黒色度が高い色をいい、例えば、黒、グレー、濃褐色等が挙げられる。
反射制御層は、低反射領域および高反射領域間の最大反射率差が大きいことが好ましい。低反射領域および高反射領域間の反射光のコントラスト、および各領域において発現される意匠の視認効果を高めることができるからである。低反射領域および高反射領域間の最大反射率差は、上述の効果を得ることが可能な大きさであればよく、例えば2%以上が好ましく、中でも10%以上であることが好ましい。なお、反射制御層における低反射領域および高反射領域間の最大反射率差は、上述の方法で測定される各領域の最大反射率の差値である。
反射制御層の屈折率は特に限定されないが、本態様の意匠性フィルムが、後述する機能層上に反射制御層が積層された層構成を有する場合、上記反射制御層と機能層との屈折率差が小さいことが好ましい。反射制御層と機能層との屈折率差が大きいと、積層界面に屈折率の不連続界面が形成されることになり、上記不連続界面において光が反射されることで、反射制御層における反射光低減効果が損なわれる場合があるからである。
反射制御層の具体的な屈折率は、選択する材料にもよるが、例えば1.2〜2.4の範囲内が好ましく、中でも1.2〜1.8の範囲内が好ましい。なお、屈折率は、株式会社島津製作所製 精密分光計GMR−1DA型により測定される。
B.任意の層
本態様の意匠性フィルムは、上述の反射制御層の他に、反射制御層の突起部賦形面と対向する面に機能層を有することができる。機能層については、後述する「III.任意の部材」の項で説明する。
C.製造方法
本態様の意匠性フィルムの製造方法は、上述の反射制御層の形成が可能な方法であれば特に限定されず、例えば、転写法を用いることができる。
転写法による製造方法としては、例えば、反射制御層に賦形する突起部の形状およびばらつきと対応する多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面を有する平坦領域と、が形成された転写原版を準備する準備工程、上記転写原版の上記賦形領域と上記平坦領域とが形成された面上に、硬化性樹脂を含むソフトモールド用組成物を塗布し硬化して、ソフトモールドを転写形成するソフトモールド形成工程、および、機能層上に反射制御層用組成物を塗布し、塗布層上に上記ソフトモールドの賦形面を押圧しながら上記塗布層を硬化して、反射制御層を形成する反射制御層形成工程を経る方法を用いることができる。
反射制御層形成工程においては、上記ソフトモールドの賦形面上に反射制御層用組成物を塗布し、塗布層上に機能層を配置した状態で上記塗布層を硬化してもよい。また、反射制御層形成工程として、機能層上に反射制御層用組成物を塗布し、上記ソフトモールドをロールに巻きつけた転写ロールを用いて、塗布層を押圧しながら上記塗布層を硬化してもよい。
上記転写原版の材質は、上述の「A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部」の項で説明した所定のばらつきを有する凸型錐状構造体を形成することが可能なものであれば特に限定されず、金属、樹脂等が挙げられるが、中でも金属が好ましい。
上記転写原版の凸型錐状構造体は、例えばステンレス板の表面をブラスト加工し、ステンレス板の加工表面に対して、段階的に電流値を小さくしながら電解めっき処理を施すことにより形成することができる。電解めっき処理としては、例えば、電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解スズめっき等による処理が挙げられる。このとき、ブラストの表面粗さを調整することにより、凸型錐状構造体のばらつきを調整できる。また、段階的に電流値を小さくする割合を調整することにより、凸型錐状構造体の高さを調整できる。
上記転写原版の製造に際し、パターン状にブラスト加工および電解めっき処理を施すことで、多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面を有する平坦領域と、を形成することができる。具体的には、ステンレス板の表面に、所望の反射制御層の領域パターンに相当するパターンとなるようにマスクを形成し、上記マスクを介して上記ステンレス板へのブラスト加工および電解めっき処理を行い、最後に上記マスクを除去する方法が用いられる。
ソフトモールド用組成物は、転写原版の賦形領域および平坦領域の形状を精度良く転写可能なものであればよく、一般に樹脂製原版の形成に用いられる樹脂が選択可能である。ソフトモールド用組成物は必要に応じて任意の添加剤を含んでいてもよい。ソフトモールド用組成物の塗布方法は、特に限定されず、一般的な塗布方法を適宜選択することができる。
反射制御層用組成物に含まれる樹脂が光硬化性または電子線硬化性樹脂である場合、ソフトモールドは光透過性を有することが好ましい。ソフトモールド側から光や電子線等の照射を行い、上記塗布層を硬化することができるからである。
反射制御層用組成物は、上述の「A.反射制御層」の項で説明した材料を含むものであり、その塗布方法については、従来公知の方法を適用することができる。反射制御層用組成物の硬化方法および硬化条件は、含有される樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
II.第2態様
本発明の意匠性フィルムの第2態様(以下、この項においては、「本態様」と称する場合がある。)は、表面に多数の溝部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を少なくとも有し、上記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、上記溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、一の上記溝部と、上記一の溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の上記溝部と、の重心間距離(以下、この項においては、「最近接重心間距離」と称する場合がある。)の平均が500nm以下であり、上記重心間距離の分散が8000以上であることを特徴とするものである。
本態様の意匠性フィルムについて、図を参照して説明する。図6は、本態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図であり、図7は図6のC部分の拡大図である。また、図8溝部の形状を説明するための説明図であり、図8(a)は溝部の概略斜視図、図8(b)は溝部の概略平面図である。
本態様の意匠性フィルム10は、表面に多数の溝部12が形成された低反射領域Aと、表面が平坦面である高反射領域Bと、を備える反射制御層1を少なくとも有する。低反射領域Aにおいて、多数の溝部12は、形状および配置位置に所定のばらつきをもって形成されている。なお、図7においてPは、反射制御層1において溝部12の側面により囲まれた領域である溝口部dが位置する面を示す。
なお、多数の溝部の形状および配置位置のばらつきのことを、単に「(溝部の)ばらつき」と称する場合がある。
ここで、反射制御層の表面に形成された多数の溝部が有するばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。
第1のパラメータは、溝口部の大きさに因るものである。溝部は反射制御層の表面内に溝口部を有している。本態様において、多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、図8(b)で示すように、溝部12Aおよび12Bの溝口部dの平面視形状を八角形に近似したときの面積Sの平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であることをいう。
第2のパラメータは、溝口部の形状によるものである。本態様において、多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、溝口部の平面視形状を図8(b)に示すように八角形に近似したときの、最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であることをいう。
第3のパラメータは、隣接する溝部の位置関係によるものである。本態様において、多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、図8(b)で示すように、一の溝部12Aと、一の溝部12Aの溝口部dの平面視形状を八角形に近似したときの重心Oに最も近接した位置に、溝口部dの平面視形状を八角形に近似したときの重心Oを有する他の溝部12Bと、の重心間距離(最近接重心間距離)Lの平均が500nm以下であり分散が8000以上であることをいう。
すなわち、多数の溝部が「所定のばらつきを有する」とは、第1〜第3の各パラメータが上述の所定の範囲内(以下、所定値と称する場合がある。)を示すことを意味する。
本態様の意匠性フィルムによれば、反射制御層の低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の溝部が表面に形成されていることで、上述の「I.第1態様」の項で述べた理由と同様の理由から、モスアイ構造よりも高い反射光低減効果を発揮することができ、反射光が抑えられた意匠を発現することができる。一方、反射制御層の高反射領域では、平坦面の表面平滑性に応じて光を高反射させることができ、反射光を利用した意匠を発現することができる。
これにより、低反射領域と高反射領域との反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上するため、本態様の意匠性フィルムは、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができ、視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性向上を図ることができる。
上記低反射領域の表面構造による具体的な作用効果については、上述の「I.第1態様」の項で説明した理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様の意匠性フィルムにおける各領域の反射特性の詳細については、上述の第1態様の意匠性フィルムの低反射領域において、反射制御層表面の突起部により奏される反射特性が、本態様においては反射制御層表面の溝部により奏される点を除いて、上述の「I.第1態様」の項で説明した内容と同様である。
本態様の意匠性フィルムにおいては、上記反射制御層の低反射領域の表面に多数の溝部が所定のばらつきを有して形成されていることから、上記溝部が上述の「I.第1態様」の項で説明した突起部と同様の機能を発揮することにより、低反射領域での反射率を低下させることができ、干渉により特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。また、上記溝部、中でも溝口部においては、多数回反射により反射制御層内への光吸収に加えて、溝部の形状による光のミー散乱が生じるため、上述の「I.第1態様」の項で説明したように、反射制御層内への光の吸収量がさらに増加し、反射率をより低減させることが可能となる。
本態様の意匠性フィルムにより発現される意匠性、および機能層を備えることによる効果については、上述の「I.第1態様」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様においては、反射制御層に溝部が形成されることで、構造的な耐久性が高いという特長も有する。反射制御層において突起部が形成される場合、外部衝撃により突起部が破損、変形すると、反射光の低減効果が低下することが予想される。これに対し、溝部は、外部衝撃による破損や変形等が発生しにくく、長期にわたり、反射制御層による高い反射光低減効果を発揮することができる。
以下、本態様の意匠性フィルムについて詳細に説明する。なお、本態様の意匠性フィルムは、反射制御層の低反射領域に、多数の突起部にかえて多数の溝部が所定のばらつきを有して形成されていること以外は、上述の「I.第1態様」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
A.反射制御層
本態様における反射制御層は、表面に多数の溝部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える。
1.低反射領域
低反射領域では、表面に形成された多数の溝部が形成されており、多数の上記溝部が所定のばらつきを有することにより、光の反射を低減し、反射光の低減効果による意匠性を発現することができる。また、低反射領域は、表面に上述の構造を有することから、高ヘイズ値を示すことができ、領域内での光の散乱が増大する。
(1)溝部
溝部は、その形状および配置位置に所定のばらつきを有するものであり、多数の溝部が有するばらつきの程度により、低反射領域における反射光低減効果が決定される。
ここで、溝部の形状および配置位置のばらつきは、「溝口部の大きさ」、「溝口部の形状」、および「隣接する溝部の位置関係」の3つのパラメータを定量化することで規定され、各パラメータが上述の所定値を示すことで、多数の上記溝部は所定のばらつきを有することができる。
以下、溝部のばらつきを規定するためのパラメータの定量化方法、および上記定量化方法により規定される各パラメータについて説明する。
(a)パラメータの定量化方法
溝部の形状および配置位置のばらつきは、反射制御層上に備わる多数の溝部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。溝部の抽出方法、1つの視野範囲あたりの溝部の最低抽出点数、および、溝部の抽出を行うための上記視野範囲の検出数については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した突起部の抽出方法等と同様とすることができる。
各パラメータは、以下の手順により定量化することができる。
(i)まず、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて溝部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の溝部を抽出し、各溝部について溝部側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を検出する。溝口部の平面視形状は、SEM画像では白黒のコントラストから、AFM画像では色の明暗のコントラストから検出することができる。
平面視形状の具体的な検出方法は特に限定されないが、例えば、画像内のコントラストの1次微分で勾配を計算することでエッジの強さを計算し、上記勾配の方向から上記エッジの局所的な変化を予測して、その方向の勾配が局所的に極大となる箇所を探す方法を用いることができる。
続いて、SEM画像やAFM画像から、各溝部について溝口部の平面視形状を八角形に近似する。この際、部分的に途切れている線は補完する。補完方法としては、例えば、ある閾値を設けて閉空間を作る方法を用いることができる。
溝口部の平面視形状の近似は、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、特に限定されないが、例えばテンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。各方法の詳細については、「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
(ii)次に、各溝部について、八角形に近似された溝口部の平面視形状の面積(以下、単に、溝口部の面積と称する場合がある。)を算出し、溝口部の大きさを規定する。溝口部の面積は、画像のスケールのピクセルサイズと八角形に含まれるピクセル数との対比から算出することができる。算出された上記面積を統計処理することで、平均値および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。
なお、溝口部の面積の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝口部の面積−溝口部の面積の平均値)/標準偏差
(iii)次に、各溝部について、八角形に近似された溝口部の平面視形状の最大内角(以下、単に溝口部の最大内角と称する場合がある。)を抽出して、統計処理により分散を求めることで、溝口部の形状を規定する。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。また、上記最大内角の分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝口部の最大内角−溝口部の最大内角の平均値)/標準偏差
(iv)次に、隣接する溝部の位置関係を規定する。まず、各溝部について、八角形に近似された溝口部の平面視形状の重心(以下、単に、溝口部の重心と称する場合がある。)を特定し、溝部の位置を規定する。溝口部の重心は、溝口部の平面視形状を八角形に近似し、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した突起部の底面の重心の特定方法と同様の方法により特定することができる。
(v)続いて、各溝口部の重心の位置を座標化する。溝口部の重心の位置は、SEM画像やAFM画像を座標平面とすることで座標化することができる。画像の座標化は、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法と同様の方法を用いることができる。
各溝部の溝口部の重心の位置の座標から、特定の一の溝部と、それに隣接する複数の溝部との溝部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した隣接突起部間の重心間距離の算出方法と同様の方法で算出することができる。算出される重心間距離のうち、最小の距離を「最近接重心間距離」とする。
なお、隣接溝部間の重心間距離の算出に際し、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した隣接突起部間の重心間距離の算出式中の、xおよびyは、特定の一の溝部の溝口部の重心の位置を示すx座標およびy座標とする。また、xおよびyは、上記特定の一の溝部に隣接する溝部の溝口部の重心の位置を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
(vi)上記の方法で各溝部の最近接重心間距離を抽出し、既存の表計算ソフトで統計処理をして最近接重心間距離の平均値および分散を計算することで、隣接する溝部の位置関係を規定する。なお、最近接重心間距離の平均値および分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値の算出方法は、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した隣接突起部間の最近接重心間距離の平均値および分散を求める際の算出方法と同様である。
(b)パラメータ
次に、溝部の形状および配置位置のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
(i)溝口部の大きさ
溝口部の大きさは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積、すなわち溝口部の面積により規定される。溝口部の面積とは、図8(b)、図9(a)においてSで示す部分である。なお、図9は低反射領域の平面SEM画像である。
溝口部の面積の平均は、94000nm以上131000nm以下の範囲内であればよく、中でも99000nm以上121000nm以下の範囲内であることが好ましい。溝口部の面積の平均を上記範囲内とすることで、上記溝口部においてミー散乱が支配的に生じることが推測されるからである。また、溝口部の面積の平均が上記範囲内にあるとき、溝口部の面積の分散は、4.08E+9以上1.06E+10以下の範囲内であることが好ましい。
溝口部の面積の平均および分散を上記範囲内とすることの理由については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (b)パラメータ (i)突起部の大きさ」の項で説明した、突起部の底面の最大幅の平均および分散の好適範囲の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。溝口部の面積の分散の単位は(nmとなる。
(ii)溝口部の形状
溝口部の形状は、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の大きさにより規定される。溝口部の最大内角とは、図9(b)においてθmaxで示す部分をいう。
溝口部の平面視形状は、最大内角が大きいほど形状のばらつきが大きくなり、一方、最大内角が小さいほど、溝口部の平面視形状は正八角形に近い形状となり、形状のばらつきが小さくなる。したがって、抽出された各溝部について算出された最大内角の分散が大きいほど、溝部ごとの溝口部の平面視形状の形状もばらつきが大きくなる。
溝口部の最大内角の分散は、600以上1020以下の範囲内であればよく、中でも640以上980以下の範囲内、特に640以上810以下の範囲内であることが好ましい。溝口部の最大内角の分散が上記範囲よりも大きいと、製造上、溝部の設計が困難となる場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと干渉によって特定の波長光の強度が強まる場合があるからである。溝口部の最大内角の分散の単位は度(°)となる。
またこのとき、溝口部の最大内角の平均は、200°以上230°以下の範囲内であることが好ましい。その理由については、溝口部の最大内角の分散の好適範囲の規定理由と同様である。
(iii)隣接する溝部の位置関係
隣接する溝部の位置関係は、一の溝部と、上記一の溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に溝口部の重心を有する他の溝部と、の重心間距離(最近接重心間距離)の平均により規定される。
溝部の位置とは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心の位置をいい、図8、図9(b)、(c)においてOで示す部分である。
最近接重心間距離は、先に説明した方法で算出され定量化されるが、さらに図を示して説明する。最近接重心間距離は、図9(c)で示すように、溝部12Aに隣接する溝部のうち、溝部12Aの溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oと最も近い位置に、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oを有する溝部12Bを抽出し、その重心間距離L1を最近接重心間距離として算出する。次に、溝部12Bに隣接する溝部のうち、溝部12Bの溝口部の重心Oと最も近い位置に溝口部の重心Oを有する溝部12Cを抽出し、その重心間距離L2を最近接重心間距離として算出する。
最近接重心間距離の平均は、上記操作を繰り返し行い、溝部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出される。
最近接重心間距離の平均は500nm以下であればよく、中でも420nm以下の範囲内、特に410nm以下の範囲内であることが好ましい。その理由については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域」の項で説明した隣接突起部の最近接重心間距離の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。
最近接重心間距離の平均の下限は、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば330nm以上であることが好ましい。
また、最近接重心間距離の平均が上記範囲内にあるときの、上記最近接重心間距離の分散は、8000以上であればよく、中でも11000以上、特に12000以上であることが好ましい。その理由については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (b)パラメータ (ii)隣接する突起部の位置関係」の項で説明した隣接突起部の最近接重心間距離の分散の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。
最近接重心間距離の分散の上限は、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば20000以下であることが好ましい。最近接重心間距離の分散の単位はnmとなる。
(c)その他
溝部の深さは、上述の3つのパラメータが所定値となることが可能な大きさであれば特に限定されず、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (c)その他」の項で説明した突起部の高さと同様とすることができる。溝部の深さとは、溝口部が形成された反射制御層の面から溝底の先端までの長さをいい、図7においてhで示す部分である。
溝部の深さは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて、各溝部の深さの極大点および極小点を検出し、検出した極大点から、特定の基準位置(例えば溝口部が位置する面の位置を「深さ=0」とする。)からの各極大点位置の相対的な深さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化した値とすることができる。
極大点および極小点の検出方法については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域」の項で説明した方法を用いることができる。
また、溝部の深さが上記範囲内にあるとき、溝口部の平面視形状の最大幅に対する深さのアスペクト比は、所望の反射光低減効果を発揮することが可能な比であればよく、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (c)その他」の項で説明した突起部の底面の最大幅に対する高さのアスペクト比と同様とすることができる。
溝口部の平面視形状の最大幅とは、上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときに重心を通る最大幅をいう。
溝部は、凹型の錐状構造を成しているため、溝部の形状を精度良く賦形することが可能であり、生産性が向上するという製造上の利点を有する。上記利点を有する理由については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (c)その他」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
溝部の溝底の先端形状としては、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (c)その他」の項で説明した突起部の頂部の先端形状と同様とすることができる。
溝口部の平面視形状は、八角形に近似が可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等を挙げることができる。
また、溝部の側面形状は、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (c)その他」の項で説明した突起部の側面形状と同様とすることができる。
(2)その他
本態様の低反射領域の、溝部以外の詳細については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (2)その他」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.高反射領域
高反射領域については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 2.高反射領域」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
高反射領域における平坦面は、図10(a)で示すように、低反射領域Aの溝部12の溝口部が位置する面Pと同等の位置にあってもよく、図10(b)で示すように、低反射領域Aの溝部12の溝口部が位置する面Pとよりも高い位置もしくは低い位置にあってもよい。
3.その他
反射制御層のその他の詳細については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、本態様における反射制御層の厚さとは、反射制御層の溝口部が形成された側の面と反対側の面から、平坦面もしくは溝口部が位置する面のうち高い方までの長さの平均をいう。
B.任意の層
本態様の意匠性フィルムは、上述の反射制御層の他に、反射制御層の溝部賦形面と対向する面に機能層を有することができる。機能層については、後述する「III.任意の部材」の項で説明する。
C.製造方法
本態様の意匠性フィルムの製造方法は、上述した反射制御層の形成が可能な方法であれば特に限定されない。反射制御層の形成方法としては、例えば、転写法を用いることができる。
転写法による製造方法としては、例えば、反射制御層に賦形する溝部の反転形状およびばらつきに応じた多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面を有する平坦領域と、が形成された転写原版を準備する準備工程、上記転写原版の上記賦形領域と上記平坦領域とが形成された面上に、硬化性樹脂を含む第1ソフトモールド用組成物を塗布し硬化して第1ソフトモールドを転写形成する第1ソフトモールド形成工程、上記第1ソフトモールドの賦形面上に、硬化性樹脂を含む第2ソフトモールド形成用組成物を塗布し硬化して、第2ソフトモールドを転写形成する第2ソフトモールド形成工程、および、機能層上に反射制御層用組成物を塗布し、塗布層上に上記第2ソフトモールドの賦形面を押圧しながら上記塗布層を硬化して反射制御層を形成する反射制御層形成工程を経る方法を用いることができる。
準備工程における転写原版の凸型錐状構造体は、上述の「A.反射制御層 1.低反射領域 (1)溝部」の項で説明した溝部の反転形状に対応し、上記凸型錐状構造体の反転形状は、上記項で説明した3つのパラメータの定量化により規定された所定のばらつきを有する。また、第1ソフトモールド形成工程では、転写原版の凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体が賦形された第1ソフトモールドが得られ、第2ソフトモールド形成工程では、第1ソフトモールドの凹型錐状構造体の反転形状である凸型錐状構造体が賦形された第2ソフトモールドが得られる。
反射制御層形成工程においては、上記第2ソフトモールドの賦形面上に反射制御層用組成物を塗布し、塗布層上に機能層を配置した状態で上記塗布層を硬化してもよい。
また、反射制御層形成工程として、機能層上に反射制御層用組成物を塗布し、上記第2ソフトモールドをロールに巻きつけた転写ロールを用いて、塗布層を押圧しながら上記塗布層を硬化してもよい。
上記転写原版の材質およびその形成方法、ならびにソフトモールド形成用組成物については、上述の「I.第1態様 C.製造方法」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、第1および第2ソフトモールドは、同一のソフトモールド形成用組成物を用いて形成してもよく、組成の異なるソフトモールド形成用組成物を用いて形成してもよい。
III.機能層
本発明の意匠性フィルムは、上記反射制御層の、上記突起部または上記溝部が形成された側の面と反対側の面上に、機能層を有していてもよい。反射制御層の低反射領域および高反射領域での反射特性の違いを利用して、領域ごとに機能層の表示仕様を変化させることができるからである。
図11(a)は、反射制御層1と機能層2とを有する本発明の意匠性フィルム10の一例を示す概略断面図である。
A.機能層の例
機能層は、透明性を有していてもよく不透明であってもよい。上記機能層が「透明性を有する」とは、機能層を介して対向側がある程度視認可能である状態、ないしは完全に透けて見える状態をいい、「透明」および「半透明」の概念を含む。
また、上記機能層は、無色であってもよく有色であってもよい。機能層の透明性の有無や光透過率、着色の有無等については、選択する機能層の種類に応じて適宜設定することができる。機能層の具体的な光学特性については、後述する。
機能層は、単層であってもよく、異なる機能を有する2以上の機能層からなる多層であってもよい。
以下、機能層として想定される層について説明する。
1.基材層
基材層は、反射制御層を支持し、本発明の意匠性フィルムの機械的強度を向上させることができる。
基材層の材料は、透明性の有無に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂材料や、ガラス、セラミック、金属等の無機材料等を用いることができる。基材層の材料として金属を用いる場合は、上記基材層は反射層としての機能も有することができる。
基材層の形態は、特に限定されず、板状、シート状、フィルム状等が挙げられる。
基材層の厚さは、反射制御層を支持することが可能であれば特に限定されず、例えば0.025mm〜20mmの範囲内とすることができる。
基材層の一方の面に他の機能層を有する場合、上記基材層の透明性の有無や光透過率、着色の有無は、上記他の機能層の種類や配置位置に応じて適宜選択することができる。
例えば、他の機能層が基材層の反射制御層側の面と反対側の面に位置し、上記他の機能層の有する色や絵柄等を表示させて意匠性フィルムの意匠性を発現する場合、上記基材層は、透明性を有することが好ましい。また、基材層が有色であり、基材層が有する色により本発明の意匠性フィルムの意匠性を発現する場合、基材層は可視光に対する遮光性が高いことが好ましい。
基材層の透明性や遮光性については、後述する「B.光学特性」の項で説明する。
2.印刷層
印刷層は、色や絵柄により、本発明の意匠性フィルムの意匠性を向上させることができる。
印刷層の材料は、従来公知の材料を用いることができ、例えば、バインダ樹脂および着色剤を含む樹脂インキ等が挙げられる。
バインダ樹脂は、樹脂インキに含まれる従来公知のバインダ樹脂の中から、要求される物性、印刷適性などに応じて適宜選択することができる。例えば、セルロース樹脂、アクリル樹脂のほか、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの単体またはこれらを含む混合物を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
また、着色剤は、樹脂インキに含まれる従来公知の着色剤の中から、要求される物性、印刷適性などに応じて適宜選択することができる。例えば、無機顔料、有機顔料や染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
着色剤として金属顔料やパール顔料等の光反射性の高い顔料を用いた樹脂インキは、高輝度インキとして用いることができ、上記高輝度インキにより形成される印刷層は、反射層としての機能も有することができる。
樹脂インキは、架橋剤、安定剤、可塑剤、硬化剤等の任意の材料を含んでいてもよい。
印刷層の厚さは特に限定されず、使用するインキや印刷層の形成方法、本態様の意匠性フィルムの用途等に応じて適宜設定される。
印刷層は、反射率が低いことが好ましい。反射制御層の低反射領域と印刷層との界面での光の反射が抑えられ、印刷層へ光が吸収されることで、意匠性フィルムの低反射領域において、印刷層の色彩を鮮明かつマット調に表示することが可能になり、領域間での視認効果の違いが顕著になるからである。
また、印刷層は可視光に対する遮光性が高いことが好ましい。印刷層において、より多くの光を吸収することができるからである。具体的な反射率および遮光性については、後述する「B.光学特性」の項で説明する。
印刷層は、反射制御層の突起部または溝部が形成された側の面と反対側の面上に直接形成されてもよく、他の機能層上に形成されていてもよい。例えば、図11(b)で示すように、印刷層22が反射制御層1と基材層21との間に形成されていてもよく、図11(c)で示すように、印刷層21が基材層21を介して反射制御層1上に形成されていてもよい。印刷層が反射制御層と他の機能層との間に形成される場合は、反射制御層が透明性を有していればよく、他の機能層の光学特性については特に限定されない。一方、印刷層が、他の機能層を介して反射制御層の突起部または溝部が形成された側の面と反対側の面上に形成される場合は、反射制御層および他の機能層は透明性を有する。
印刷層は、反射制御層もしくは他の機能層の一方の表面の全域を覆うようにして印刷された着色層であってもよく、上記表面上に所望の絵柄が描かれることで形成される絵柄層であってもよく、その両方であってもよい。印刷層が絵柄層である場合、絵柄としては、写真、文字、記号、数字、模様、稿図、標章等が挙げられる。
印刷層は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェットプリントなどの、従来公知の印刷法を用いて形成することができる。
3.反射層
反射層は、従来公知のものを用いることができ、例えば、金属箔や金属蒸着膜等の金属層等が挙げられる。
金属層に用いられる金属材料は、一般的な加飾に使用される金属材料であれば特に限定されず、金属層の種類やその形成方法に応じて適宜選択することができる。例えば、鉄、銅、金、白金、アルミニウム等の金属を挙げることができる。
反射層の厚さは特に限定されず、反射層の種類や材料等に応じて適宜設定される。
反射層は、反射制御層の低反射領域よりも反射率が高いことが好ましい。本発明の意匠性フィルムの高反射領域において、反射制御層表面での光の反射に加え、反射層での光の反射により、メタリック調の意匠を明瞭に発現することができるからである。
また、反射層は、可視光に対する遮光性が高いことが好ましい。より多くの光を反射層で反射することができるからである。反射層の反射率や遮光性については、後述する「B.光学特性」の項で説明する。
反射層の形成位置は、上述の「2.印刷層」の項で説明した印刷層の形成位置と同様とすることができる。
また、反射層の形成方法は、使用する材料の種類にもよるが、例えば蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化合気相成長)法などの真空薄膜法を用いることができる。
4.その他の機能層
その他の機能層としては、例えば、粘着層、遮蔽層、凹凸賦型層、布地(フェルトなど)、光選択吸収層、光選択反射層等が挙げられる。これらの各層については、従来公知のものと同様とすることができる。
また、これらの各層の形成位置は、上述の「2.印刷層」の項で説明した印刷層の形成位置と同様とすることができる。
B.光学特性
機能層が透明性を有する場合、上記機能層の光透過率は、反射制御層が透明性を有する場合の光透過率と同等とすることができる。
また、機能層が遮光性を有する場合、可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する機能層の光透過率が3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)であることが望ましい。機能層の光透過率が上記範囲を超える場合、領域間のコントラスト差が十分に得られず、本発明による効果が十分に発揮することができず、各領域の意匠の見た目上問題になるからである。
機能層が複数層からなる場合、各層の機能に応じて透明性や遮光性を規定することができる。
機能層は、反射制御層との屈折率差が小さいことが好ましい。その理由については、上述の「I.第1態様 A.反射制御層」の項で説明した理由と同様である。機能層の屈折率は、上述の反射制御層の屈折率と同様とすることができる。
機能層の最大反射率は、機能層の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が1%以上であることが好ましい。機能層の最大反射率が上述の範囲内にあることで、低反射領域と高反射領域との反射光のコントラストが高くなるため、高反射領域にて発現される意匠の輝度を際立たせることができるからである。また、高反射領域において、機能層の有する意匠を高輝度かつ高光沢感を有する意匠として表示することができるからである。
機能層の最大反射率は、反射制御層の各領域の最大反射率と同様の方法で測定することができる。機能層が多層からなる場合、上記機能層の最大反射率は、各機能層の種類等や用いられる材料や層表面の反射率等により複合的に決まる。中でも、複数層から成る機能層のうち、反射制御層と接する最表層での反射率が最も寄与することから、上記最表層の最大反射率が上記範囲内であることが好ましい。
IV.その他
本発明の意匠性フィルムは、領域間の反射光のコントラストの向上により、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現できるという特長に加え、低反射領域において光源が映り込みにくいという特長も有する。これは、上述したように、反射制御層の低反射領域においてヘイズ値が高いことによるものである。
すなわち、低反射領域としてモスアイ構造を備える従来の意匠性フィルムでは、モスアイ構造の構造的特徴に起因して、上記低反射領域のヘイズ値が低いという特長がある。このため、上記低反射領域は、光源からの入射光を十分に散乱することができず、光源が映り込みやすい。よって、視認者が上記低反射領域上の意匠を視認する際に、映り込む光源の輝度により視認が阻害されやすくなる。
一方、本発明の意匠性フィルムでは、反射制御層の低反射領域は、表面に上述した特徴的な形状を有することで高いヘイズ値を示すことから、光源からの入射光を、上記反射制御層の低反射領域内で十分に散乱させることができる。これにより、低反射領域への光源の映り込みを抑制することができ、視認者が上記低反射領域上の意匠を視認する際に、光源の映り込みによる視認の阻害が生じにくく、上記意匠を明瞭に視認することが可能となるのである。
V.用途
本発明の意匠性フィルムは、反射制御層における低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することが可能であることから、例えば、壁紙、ウィンドウフィルム、ポスター、什器等に用いられる加飾フィルム等とすることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1〜7]
以下の方法により、第1態様の意匠性フィルムを得た。
(転写原版A1〜G1の作製)
ステンレス板の表面上に、所望の反射制御層の領域パターン(5cm角の格子パターン)に相当するパターンでマスクし、上記マスクを介して上記表面をブラスト加工して、加工面の三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表1に示す各値となるように仕上げた。次に、下記の組成を含有するめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表1に示す条件で電流密度を開始値(A/dm)から終了値(A/dm)まで1分(1ステップ)毎に所定値(A/dm)ずつ小さくして、ステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、黒色クロムめっき膜を形成した。最後に上記マスクを除去することで、多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面である平坦領域と、がパターン状に形成された版面を有する転写原版A1〜G1を得た。
<めっき浴の組成>
・塩化クロム:200g/dm(0.75mol/dm
・塩化アンモニウム:30g/dm(0.56mol/dm
・シュウ酸:3g/dm(0.024mol/dm
・炭酸バリウム:5g/dm(0.025mol/dm
・ホウ酸:30g/dm(0.49mol/dm
・フッ化バリウム:10g/dm(0.057mol/dm
(ソフトモールドA1’〜G1’の作製)
転写原版A1〜G1のそれぞれに対し、上記版面上に下記の組成から成る紫外線硬化型のソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚さ0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をして硬化させた。その後、上記転写原版を剥離して、多数の凹型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面である平坦領域と、がパターン状に形成された版面を有するソフトモールドA1’〜G1’を得た。
<ソフトモールド形成用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
ソフトモールドA1’〜G1’のそれぞれに対し、上記版面上に下記の組成から成る紫外線硬化型の反射制御層用組成物を塗布し、塗布面上に透明基材としてPETフィルム(コスモシャインA4100 東洋紡株式会社製、ヘイズ値(カタログ値)=0.9%)を配置した。PETフィルム面側から紫外線(波長365nm、照射エネルギー170mJ/cm)を照射して塗布層を硬化し、その後、ソフトモールドを剥離して、多数の突起部が形成された低反射領域と、平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を有する意匠性フィルムa1〜g1を得た。意匠性フィルムa1〜g1の低反射領域における多数の突起部は、転写原版A1〜G1の多数の凸型錐状構造体と、形状およびばらつきが一致した。
<反射制御層用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
[比較例1〜4]
以下の方法で作製した転写原版H1〜K1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして意匠性フィルムh1〜k1を得た。意匠性フィルムh1〜k1の低反射領域における多数の突起部は、使用した転写原版H1〜K1の多数の凸型錐状構造体と、形状およびばらつきが一致した。
(転写原版H1〜K1の作製)
ステンレス板の表面上に、所望の反射制御層の領域パターンに相当するパターンでマスクし、上記マスクを介してブラスト加工をして、加工面の三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表2に示す各値となるように仕上げた。実施例1と同様の組成のめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表2に示す各条件でステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、黒色クロムめっき膜を形成した。最後に上記マスクを除去することで、多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面である平坦領域と、がパターン状に形成された版面を有する転写原版H1〜K1を得た。
[実施例8〜14]
以下の方法により、第2態様の意匠性フィルムを得た。
(転写原版A2〜G2の作製)
ステンレス板の表面上に、所望の反射制御層の領域パターンに相当するパターンでマスクし、上記マスクを介してブラスト加工をして、加工面の三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表3に示す各値となるように仕上げた。実施例1と同様の組成のめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表3に示す各条件でステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、黒色クロムめっき膜を形成した。最後に上記マスクを除去することで、多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面である平坦領域と、がパターン状に形成された版面を有する転写原版A2〜G2を得た。
(第1および第2ソフトモールドの作製)
転写原版A2〜G2のそれぞれに対し、実施例1におけるソフトモールドの作製方法と同様の方法で、多数の凹型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面である平坦領域と、がパターン状に形成された版面を有する第1ソフトモールドを得た。
得られた第1ソフトモールドのそれぞれに対し、上記版面上に実施例1で用いたソフトモールド形成用組成物を塗布し、PCフィルムで挟み、実施例1と同条件でUV照射してソフトモールド形成用組成物を硬化させた後、第1ソフトモールドを剥離した。これにより、多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面である平坦領域と、がパターン状に形成された版面を有する第2ソフトモールドA2’〜G2’をそれぞれ得た。
第2ソフトモールドA2’〜G2’のそれぞれに対し、実施例1と同様にして上記版面上に反射制御層用組成物を塗布し、塗布面上にPETフィルムを配置した後、塗布層を硬化させて第2ソフトモールドを剥離した。これにより、多数の溝部が形成された低反射領域と、平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を有する意匠性フィルムa2〜g2を得た。意匠性フィルムa2〜g2の低反射領域における多数の溝部は、転写原版A2〜G2の多数の凸型錐状構造体の反転形状と、形状およびばらつきが一致した。
[比較例5〜8]
以下の方法で作製した転写原版H2〜K2を用いたこと以外は、実施例8と同様にして意匠性フィルムh2〜k2を得た。意匠性フィルムh2〜k2の低反射領域における多数の溝部は、使用した転写原版H2〜K2の多数の凸型錐状構造体の反転形状と、形状およびばらつきが一致した。
(転写原版H2〜K2の作製)
ステンレス板の表面上に、所望の反射制御層の領域パターンに相当するパターンでマスクし、上記マスクを介してブラスト加工をして、加工面の三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表4に示す各値となるように仕上げた。実施例1と同様の組成のめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表4に示す各条件でステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、黒色クロムめっき膜を形成した。最後に上記マスクを除去することで、多数の凸型錐状構造体を有する賦形領域と、平坦面である平坦領域と、がパターン状に形成された版面を有する転写原版H2〜K2を得た。
[評価1]
実施例1〜14、比較例1〜8で得られた意匠性フィルムについて、以下の条件にてSEM観察を行った。
実施例1〜7および製造比較例1〜4で得られた意匠性フィルムについては、反射制御層表面上の突起部の中から表1および表2に示す点数を抽出し、平面視SEM画像から突起部の底面の最大幅の平均および分散、突起部の最近接重心間距離の平均および分散、ならびに|Σ(k=1〜n)cosφ/n|値および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|値を求めた。
平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化は、上述の「I.第1態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により行い、突起部の根元の近似形状は八角形とした。
また、実施例8〜14、製造比較例5〜8で得られた意匠性フィルムについては、反射制御層表面上の溝部の中から表3および表4に示す点数を抽出し、平面視SEM画像から溝口部の面積、溝口部の最大内角、および隣接する溝部の最近接重心間距離について平均および分散を求めた。
平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化は、「II.第2態様 A.反射制御層 1.低反射領域 (1)溝部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により行った。
(条件)
・SEM:電界放出形走査電子顕微鏡 S-4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)
・観察方法:Top−View(反射制御層の賦形面側から)
・前処理:Pt−Pdスパッタ
・観察倍率:×10k
・視野範囲:縦4μm×横4μm
[評価2]
実施例1〜14、比較例1〜8で得られた意匠性フィルムの低反射領域および高反射領域について、以下の条件にて最大反射率を計測した。測定に際し、背面にカラーコード(DIC社製、以下同じ。)No.582の黒色印刷層を設けて測定した。
(条件)
・計測装置:Scanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)
・計測方法:8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射
[評価3]
実施例1〜14、比較例1〜8で得られた意匠性フィルムの低反射領域および高反射領域について、以下の条件にてヘイズ値を計測した。
(条件)
・計測装置:ヘイズメーター HM−150((株)村上色彩技術研究所製)
・計測方法:JIS K7136に準拠した方法
各評価結果を表1〜4に示す。表中のμは平均値、σは上記平均値から算出される分散を示す。
[実施例15〜21および比較例9〜12]
機能層として、以下の方法で形成した印刷層を用い、印刷層上に、実施例1で用いた反射制御層用組成物を塗布し、塗布層上に実施例1〜7および比較例1〜4で得たソフトモールドを用いて、それぞれの版面を押圧した。実施例1と同じ条件で紫外線を照射して塗布層を硬化後、ソフトモールドを剥離して、意匠性フィルムを得た。
(印刷層)
厚さ0.2mmの紙の片面上全域に、グラビア印刷法を用いて印刷層を形成した。印刷層は、背景がカラーコードNo.582の黒色印刷層であり、白抜き、カラーコードNo.125の黄色印刷層、カラーコードNo.564の赤色印刷層、カラーコードNo.649の緑色印刷層、およびカラーコードNo.578の青色印刷層を用いて、大きさ20ptでアルファベットAからZまでが表示された絵柄からなる印刷画像を有した。
[実施例22〜28および比較例13〜16]
実施例8〜14および比較例5〜8で得た第2ソフトモールドを用いたこと以外は、実施例15と同様にして意匠性フィルムを得た。
[評価3]
実施例1〜28および比較例1〜16で得た意匠性フィルムについて、高反射領域での意匠(印刷層)の見え方と低反射領域での意匠(印刷層)の見え方との違いについて、5名の被験者による目視での官能評価を行った。官能評価の基準は、以下の通りである。
◎…領域間で意匠の見え方の違いがはっきり認識できる。
○…領域間で意匠の見え方に違いがあることが認識できる。
×…領域間で意匠の見え方に違いがあることが認識できない。
表1〜4中の官能評価の欄に、◎、○、および×の人数を示す。
実施例1〜28の意匠性フィルムでは、低反射領域にて形成された多数の突起部または多数の溝部は、3つのパラメータが全て所定の範囲内にあり、所定のばらつきを有していることから、領域間での意匠性の違いを視認することができ、視認効果は良好だった。一方、比較例1〜16の意匠性フィルムでは、低反射領域にて形成された多数の突起部または多数の溝部が、3つのパラメータの少なくとも1つが所定の範囲内になく、所定のばらつきを有していないことから、領域間での意匠性の違いが視認しにくく、視認効果が十分に得られていなかった。
1 … 反射制御層
2 … 機能層
10 … 意匠性フィルム
11、11A、11B、11C… 突起部
12、12A、12B、12C… 溝部
A … 低反射領域
B … 高反射領域

Claims (4)

  1. 表面に多数の突起部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を少なくとも有し、
    前記突起部の底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、
    一の前記突起部と、前記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の前記突起部と、の重心間距離の平均が400nm以下であり、前記重心間距離の分散が10000以上であり、
    前記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において前記突起部の底面の重心からの前記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、前記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、
    |Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ
    |Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすこと
    を特徴とする意匠性フィルム。
  2. 前記反射制御層の、前記突起部が形成された側の面と反対側の面上に、機能層を有することを特徴とする請求項1に記載の意匠性フィルム。
  3. 表面に多数の溝部が形成された低反射領域と、表面が平坦面である高反射領域と、を備える反射制御層を少なくとも有し、
    前記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、
    前記溝部の前記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、
    一の前記溝部と、前記一の溝部の前記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に前記溝口部の前記重心を有する他の前記溝部と、の重心間距離の平均が500nm以下であり、前記重心間距離の分散が8000以上であること
    を特徴とする意匠性フィルム。
  4. 前記反射制御層の、前記溝部が形成された側の面と反対側の面上に、機能層を有することを特徴とする請求項3に記載の意匠性フィルム。
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