JP6696114B2 - 低反射シート - Google Patents
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Description
光透過性を有する低反射シートは、例えば画像表示装置の出光面上に配置することで、表示装置の画面における日光等の外光反射を低減し、画像視認性を向上させることができる(特許文献1)。また、低反射シートの微細凹凸が形成された面上に酸化インジウム錫(ITO)等の透明導電層が設けられた透明導電性積層体は、タッチパネルに用いられるタッチパネル電極として用いることで、タッチパネル電極および隣接する各種部材間での光の反射を防止することができる(特許文献2)。
一方、遮光性を有する低反射シートは、例えば合成皮革として用いることで、表面のマット感がより鮮明となり、外観や質感、意匠性を向上させることができる。また、デジタルカメラなどの光学機器用のシャッター羽根表面に上記低反射シートを用いることで、撮像素子への外光照射を抑止することができる。
このため、本発明の低反射シートは、優れた反射率低減効果を発揮することができる。
本発明の低反射シートは、着色基材の少なくとも一方の面側に、多数の溝部を備える低反射樹脂層を有し、上記溝部の開口の平面視外形を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm2以上131000nm2以下の範囲内であり、上記溝部の開口の平面視外形を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、一の上記溝部および上記一の溝部の開口の平面視外形を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に開口の重心を有する他の上記溝部の重心間距離(以下、最近接重心間距離と称する場合がある。)の平均が500nm以下であり、上記重心間距離の分散が8000以上であることを特徴とするものである。
図1に例示するように、本発明の低反射シート10は、着色基材1の少なくとも一方の面側に低反射樹脂層2を有するものである。また、図1および図2に例示するように、低反射樹脂層2は、その表面のうち着色基材1と接する面に対向する面上に、形状および配置位置に所望のばらつきを有する多数の溝部3を備える。
ここで、多数の溝部が有する所望のばらつきとは、3つのパラメータを定量化することで規定される。
第1のパラメータは、溝部の開口の大きさに因るものである。
ここで、溝部の開口および溝部の開口の平面視外形とは、図3(a)、(b)で示すように、溝部の側面により囲まれた領域である開口部d、および開口部dの平面視形状のことをいう。「溝部の開口」のことを「溝口部」、「溝部の開口の平面視外形」のことを「溝口部の平面視形状」と表記する場合がある。
溝部の開口の大きさに因るとは、すなわち、図3(b)で示すように、溝部3Aおよび3Bの溝口部dの平面視形状を八角形に近似したときの面積Sの平均が94000nm2以上131000nm2以下の範囲内である。
第2のパラメータは、溝部の開口の形状によるものである。すなわち、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内である。
第3のパラメータは、隣接する溝部の位置関係によるものである。すわなち、図3(b)で示すように、一の溝部3Aと、一の溝部3Aの溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oに最も近接した位置に、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oを有する他の溝部3Bと、の重心間距離Lの平均が500nm以下であり、重心間距離Lの分散が8000以上である。
しかし、本発明者が上記問題について更に鋭意検討を重ねた結果、以下の理由から単に凹凸形状を微細化しただけでは、反射率低減効果が十分に得られないことを知得した。
すなわち、一般に低反射シートの表面に付される微細凹凸は、個々の凸部(突起部)および凹部(溝部)の形状や配置に規則性を有し、面全体として所望の表面粗さを有するものである。しかし、上記微細凹凸の有する上記規則性によっては、光が干渉し合うことで特定の波長光の強度が強まり、干渉縞が発生する等といった不具合が生じてしまう。このため、上記不具合の発生により反射率低減効果が阻害されるものと推量される。
また、多数の溝部が所望のばらつきを有することで、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
さらに、多数の溝部が所望のばらつきを有することで、上記溝部、中でも溝口部においては、多数回反射により低反射樹脂層へ光が吸収されるのに加えて、溝部の形状により光をミー散乱させることで、低反射樹脂層への光の吸収量をさらに増加させることができ、反射率をより低減させることが可能となる。これは、ミー散乱が「前方散乱が強い」、「波長依存性が小さい」といった特長を有することによるものである。
すなわち、ミー散乱は前方散乱が強いため、溝部に入射した光は低反射樹脂層内で散乱されることとなり、散乱光を低反射樹脂層へ吸収させることができるからである。また、ミー散乱は波長依存性が小さいため、可視光領域380nm〜780nmの全域の光を散乱させ、その散乱光を低反射樹脂層に吸収させることが可能となるからである。
これにより、本発明の低反射シートは優れた反射率低減効果を発揮することができる。
本発明における低反射樹脂層は、着色基材の少なくとも一方の面側に有し、多数の溝部を備えるものである。
また、低反射樹脂層が備える溝部は、その形状および配置位置に所望のばらつきを有するものである。
溝部は、その形状および配置位置に所望のばらつきを有するものであり、多数の溝部が有するばらつきの程度により、本発明の低反射シートの反射率低減効果が決定される。
ここで、溝部の形状および配置位置のばらつきは、溝口部の大きさ、溝口部の形状、および隣接する溝部の位置関係の3つのパラメータを定量化することで規定される。
以下、各パラメータの定量化方法、および上記定量化方法により規定される各パラメータについて説明する。
本発明における溝部の形状および配置位置のばらつきは、低反射樹脂層上に備わる多数の溝部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。
溝部の抽出は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)等を用い、倍率10000倍、視野範囲を縦4μm×横4μmとして低反射シートの溝部を有する面側から平面視観察を行い、上記視野範囲における溝部の面内配列を画像で検出し、その中から所望の点数を抽出する方法を用いる。
抽出点数および視野範囲の検出数を上記範囲で規定することで、3つのパラメータをより高い精度で定量化することができ、溝部の形状および配置位置のばらつきを正確に規定することができるからである。
(a)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて溝部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の溝部を抽出し、各溝部について溝部側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を検出する。溝口部の平面視形状は、SEM像では白黒のコントラストから、AFM像では色の明暗のコントラストから検出することができる。
具体的な検出方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法を用いることができる。まず、画像内のコントラストの1次微分で勾配を計算することでエッジの強さを計算する。次に勾配の方向からエッジの局所的な変化を予測し、その方向の勾配が局所的に極大となる箇所を探すことで溝口部の平面視形状が検出される。
続いて、SEM画像やAFM画像から、各溝部について溝口部の平面視形状を八角形に近似する。この際、部分的に途切れている線は補完する。補完方法としては、ある閾値を設けて閉空間を作る方法を用いることができる。
溝口部の平面視形状の近似は、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、上記方法については特に限定されないが、具体的な方法としては、例えば、テンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。
テンプレートマッチングは、予め形状を表現したテンプレートを準備し、画像認識の対象となる画像データに対してテンプレートを移動させながら相関係数等の類似度の指標を調べることによって画像データに含まれる形状を認識する技術である。テンプレートマッチングによる画像近似手法については、例えば、「中田崇行、包躍、藤原直史:“三次元環境におけるLog-Polar変換を用いた図形認識”,電気情報通信学会論文誌(D-II), Vol.88, No.6, pp.985-993(2005.6)」、「斎藤文彦:“部分ランダム探索と適応型探索による半導体チップ画像テンプレートマッチング”, 精密工学会誌, Vol.61, No.11, pp.1604-1608(1995.11)」に開示される。
また、一般化ハフ変換は、無限に存在する直線の中から画像データ内の特徴点を最も多く通る直線を決定するハフ変換を一般化して曲線に応用したものであり、この一般化ハフ変換によっても、事前に用意した参照用のテーブルを利用して画像データの形状認識を行うことができる。一般化ハフ変換による画像近似手法については、例えば、「Ballad,D.H.: “GENERALIZING THE HOUGH TRANSFORM TO DETECT ARBITRARY SHAPES”, Pattern Recognition, Vol.13, No.2, pp.111-122(1981)」や、「木村彰男,渡辺孝志:“アフィン変換に不変な任意図形検出法として拡張された一般化ハフ変換”, 電気情報通信学会誌(D-II), Vol. J84-D-II, No. 5, pp.789-798(2001.5)」に開示される。
Douglas-Peucker法は、折れ線近似によって形状認識を行う手法である。Douglas-Peucker法による画像近似手法については、例えば、「Wu,S.T, M.R.G:“A non-self-intersection Douglas-Peucker Algorithm”, Proceeding of Sixteenth Brazilian Symposium on Computer Graphics and Image Processing, IEEE, pp.60-66(2003)」に開示される。
なお、溝口部の面積の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝口部の面積−溝口部の面積の平均値)/標準偏差
標準化得点=(個々の溝口部の最大内角−溝口部の最大内角の平均値)/標準偏差
溝口部の重心の位置の座標から、特定の一の溝部と、それに隣接する複数の溝部との溝部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は以下の計算式によって算出される。算出される重心間距離のうち、最小の距離が「最近接重心間距離」と定義される。
重心間距離={(x1−x2)2+(y1−y2)2}1/2}
なお、式中のx1およびy1は、特定の一の溝部の溝口部の重心の位置を示すx座標およびy座標である。また、x2およびy2は、上記特定の一の溝部に隣接する溝部の溝口部の重心の位置を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像またはAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出する。
標準化得点=(個々の溝部の最近接重心間距離−最近接重心間距離の平均値)/標準偏差
次に、本発明における溝部の形状および配置位置のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
溝口部の大きさは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積、すなわち溝口部の面積により規定される。溝口部の面積とは、図3および図4(a)中のSで示す部分である。
なお、図4は本発明の低反射シートにおける溝部を有する表面の平面SEM画像であり、図4について説明しない符号については、図1等と同様とする。
溝口部の面積の平均が上記範囲よりも大きいと、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になるため、前方散乱が起こりにくくなり、低反射樹脂層への光の吸収が小さくなり、所望の反射率低減効果が得られない場合があるからである。これは、球形粒子では幾何光学散乱が支配する直径は数μm以上であるが、溝口部での散乱は異なる挙動を示し、本発明においては、溝口部が上記範囲内に面積を有する形状である場合、ミー散乱が支配的になると推測されるからである。一方、溝口部の面積の平均が上記範囲よりも小さいと、レイリー散乱が支配的になるため、前方散乱が起こりにくくなり、低反射樹脂層への光の吸収が小さくなる場合があるからである。
溝口部の面積の分散の単位は(nm2)2となる。
溝口部の形状は、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の大きさにより規定される。溝口部の最大内角とは、図4(b)においてθmaxで示す部分をいう。
本発明においては、溝口部の最大内角の分散は600以上1020以下の範囲内であればよく、中でも640以上980以下の範囲内、特に640以上810以下の範囲内であることが好ましい。溝口部の最大内角の分散が上記範囲よりも大きいと、製造上、溝部の設計が困難となる場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと干渉によって特定の波長の光の強度が強まる場合があるからである。
溝口部の最大内角の分散の単位は度(°)となる。
溝部の位置とは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心(「(溝口部の)重心」と称する場合がある。)の位置をいい、図3、図4においてOで示す部分である。
本発明においては、隣接する溝部の位置関係は、一の溝部および上記一の溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に溝口部の重心を有する他の溝部の重心間距離の平均により規定される。
最近接重心間距離の平均は、上記操作を繰り返し行い、溝部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出される。
なお、最近接重心間距離の平均の下限については特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば330nm以上であることが好ましい。
上記分散の上限については特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば20000以下であることが好ましい。
なお、最近接重心間距離の分散の単位はnm2となる。
溝部の深さとしては、上述のパラメータを備えることが可能な大きさであれば特に限定されないが、例えば、100nm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも300nm〜1μmの範囲内が好ましい。溝部の深さが上記範囲よりも小さい場合、溝口部の曲率が大きくなるため、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり、前方散乱が起こりにくくなるため低反射樹脂層への光の吸収が小さくなる可能性がある。一方、溝部の高さが上記範囲よりも大きい場合、所望の溝部の形状に製造することが困難となる可能性がある。
なお、溝部の深さとは、溝部が形成された低反射樹脂層の表面から溝底の先端までの長さをいい、図2においてh1で示す部分である。溝部の深さは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて、各溝部の深さの極大点および極小点を検出し、検出した極大点から、特定の基準位置(例えば溝口部を面内含む低反射樹脂層の最表面位置を「深さ=0」とする。)からの各極大点位置の相対的な深さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化される。極大点および極小点の検出は、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法等、種々の手法を適用することができる。
なお、溝口部の平面視形状の最大径とは、上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときに最も広幅の箇所、すなわち溝口部の平面視形状において重心を通る最大幅をいう。
溝部の溝底の先端は、尖っていてもよく、曲率を有していてもよい。中でもミー散乱による低反射樹脂層への光の吸収が大きくなることから、先端が尖っていることが好ましい。
また、溝部の側面形状としては、溝部の縦断面において直線状であってもよく、曲線状であってもよい。さらに、溝部の側面形状が多段状であってもよい。中でも溝部の側面が多段状であることが好ましい。溝部において多数回反射およびミー散乱がより起こりやすくなるからである。
本発明においては、所望の反射率低減効果を発揮するために、多数の溝部が上述のパラメータの定量化により規定されるばらつきを有する必要がある。本発明においては、樹脂組成物の硬化物からなる低反射樹脂層上に溝部が形成されていることで、溝部ごとの形状の精度が高く、所望のばらつきを示すことが可能である。
中でも、本発明の低反射シートを遮光シートとして用いる場合は、硬度、耐傷性、平面性に優れるといった観点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。また、本発明の低反射シートを合成皮革等の表皮材や意匠シートとして用いる場合は、柔軟性、触感等の観点からポリウレタン樹脂が好ましい。
低反射樹脂層に含有可能な着色剤としては特に限定されず、後述する「B.着色基材」の項で説明する着色剤等を用いることができる。
なお、低反射樹脂層に含有される着色剤の平均粒径としては、溝部のばらつきによる反射率低減効果に影響を及ぼさない大きさであればよい。
なお、低反射樹脂層の厚さとは、低反射樹脂層の溝部が形成されていない面から溝部が形成された面における最も高い位置までの長さをいい、図2においてh2で示す部分である。
ヘイズ値が上記範囲よりも小さいと、低反射シート表面に形成された溝部が形状および配置位置に所望のばらつきを有しておらず、光の多数回反射およびミー散乱による低反射樹脂層への光の吸収が起こりにくくなり、本発明の低反射シートによる反射率低減効果が発揮されない場合があるからである。一方、ヘイズ値が上限よりも大きいと、所望の溝部の形状に製造することが困難となる場合があるからである。
なお、ヘイズ値は、ヘイズメーター(東洋精機製作所製 商品名:ヘイズガード)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
本発明における着色基材は、少なくとも一方の面側に、多数の溝部を備える低反射樹脂層を有するものである。
着色基材の色については特に限定されず、本発明の低反射シートの用途に応じて適宜選択することができ、例えば黒色、白色等の無彩色、赤色、青色、黄色、緑色、灰色等の有彩色等が挙げられる。中でも、本発明の低反射シートを遮光シートとして用いる場合は、可視光の全波長域に対する反射率低減効果をより高める観点から、黒色または黒色に準ずる暗色が好ましい。暗色とは、例えば濃灰色、褐色、紺色、深緑色、臙脂色、濃紫色等の、低明度で国際照明委員会CIEによる標準光源Cを用いたYxy表色系でのY値が10%以下を示す色が挙げられる。一方、本発明の低反射シートを合成皮革等の表皮材や意匠シートとして用いる場合は、無彩色でもよく有彩色でもよい。
なお、無彩色及び有彩色とは、JIS Z8102:2001における定義に準じる。
なお、着色基材の上記光学濃度は、例えば、サカタインクスエンジニアリング株式会社製X-Rite 361T(V)で計測することができる。
例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等を挙げることができる。また、「A.低反射樹脂層」の項で説明した低反射樹脂層を構成する樹脂と同じものを用いてもよい。
具体的には、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、アニリンブラック等の有機顔料;染料;アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。これらは、1種または2種以上を選ぶことができる。
着色布としては、上述した着色樹脂基材に用いられる樹脂に上述の着色剤を含有させて不織布としたもの等が挙げられる。
本発明の低反射シートは、着色基材の少なくとも一方の面側に上述の低反射樹脂層を有していればよいが、基材の両面に上述の低反射樹脂層を有していてもよく、用途に応じて積層態様を選択することができる。例えば、本発明の低反射シートを遮光シートとして用いる場合は、両面の遮光性、平坦性が求められることから、基材の両面に低反射樹脂層を有する態様が好ましい。一方、本発明の低反射シートを合成皮革等の表皮材や意匠シートとして用いる場合は、通常、基材の一方の面側に低反射樹脂層を有する態様とする。
着色基材および低反射樹脂層を一体化した単一層とする場合の樹脂材料については、上述した「A.低反射樹脂層」の項で説明した樹脂材料が用いられる。また、上記単一層に用いられる着色剤およびその含有量については、「B.着色基材」の項で例示した着色剤およびその含有量と同様とすることができる。
なお、着色基材および低反射樹脂層を一体化した単一層とする場合、上記単一層の厚さとしては、上述した着色基材の厚さと同等とすることができる。
なお、最大反射率は、計測装置としてScanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)を用い、8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射を測定することで得られる。
本発明の低反射シートの製造方法としては、着色基材上に、少なくとも形状および配置に所望のばらつきを有する溝部を有する低反射樹脂層を形成可能な方法であれば特に限定されず、例えば以下の方法により製造することができる。
まず、多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を準備する。上記凸型錐状構造体は、「A.低反射樹脂層」の項で説明した3つのパラメータの定量化により規定された形状および配置位置のばらつきを有するものとする。次に、上記転写原版の上記凸型錐状構造体が形成された面上に、硬化性樹脂を含む第1ソフトモールド形成用組成物を塗布し、塗布層を硬化して第1ソフトモールドを転写形成する。このとき、第1ソフトモールドの一方の表面には、凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体が形成される。続いて、第1ソフトモールドの凹型錐状構造体が形成された面上に、硬化性樹脂を含む第2ソフトモールド形成用組成物を塗布し、塗布層を硬化して第2ソフトモールドを転写形成する。このとき、第2ソフトモールドの一方の表面には、第1ソフトモールドの凹型錐状構造体の反転形状である凸型錐状構造体が形成される。続いて、第2ソフトモールドの凸型錐状構造体が形成された面上に、低反射樹脂層形成用組成物を塗布し、塗布層上にさらに着色基板を配置した状態で上記塗布層を硬化する。これにより、着色基材の一方の面側に多数の溝部を備える低反射樹脂層を有する低反射シートを得ることができる。なお、上記溝部は、上記転写原版の凸型錐状構造体の反転形状と、形状および配置位置のばらつきが対応する。
さらに、他の製造方法として、円筒形のシリンダーの表面をめっきすることで、所望のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体が表面に形成されたロール原版を準備し、着色基材上に低反射樹脂層形成用組成物を塗布した後、上記ロール原版で押圧し、押圧と同時に低反射樹脂層形成用組成物に適した硬化方法を適用して低反射樹脂層を成形する方法を用いることも可能である。
また、上記転写原版の製造方法としては、形状および配置位置に所望のばらつきを有する凸型錐状構造体を表面に有することができる方法であれば特に限定されないが、例えばステンレス板の表面をブラスト加工し、ステンレス板の加工表面に対して、段階的に電流値を小さくしながら電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解スズめっき等の電解めっき処理を施すことにより形成することができる。
このときブラストの表面粗さを調整することにより、凸型錐状構造体の距離や方向性等のばらつきを調整できる。また、段階的に電流値を小さくする割合を調整することにより、凸型錐状構造体の高さを調整できる。
ソフトモールド形成用組成物に含まれる硬化性樹脂は、転写原版の凸型錐状構造体の形状を精度良く転写することが可能な樹脂であればよく、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が用いられる。また、必要に応じて「A.低反射樹脂層」の項で説明した任意の材料を含むものであっても良い。
なお、ソフトモールド形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、一般に樹脂製原版の形成の際に用いられる方法と同様とすることができる。
低反射樹脂層形成用組成物の硬化方法および硬化条件については、含有される樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、低反射樹脂層形成用組成物が紫外線硬化性樹脂を含む場合、第2ソフトモールドを介して紫外線照射を行うこと硬化させることができる。
本発明の低反射シートは、反射率の低減が求められる用途に使用することができるが、中でも着色基材を有することから、高遮光性が要求され、光透過性が要求されない用途への使用が好ましい。
例えば、本発明の低反射シートが黒色または暗色で且つ光学濃度の高いものである場合、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのレンズシャッターなどのシャッター羽根または絞り羽根、カメラ付き携帯電話や車載モニターのレンズユニット内の固定絞り、プロジェクターの光量調整モジュールの絞り羽根等に用いることができる。
また、本発明の低反射シートは、反射率を低減することで表面にマット感を出すことができるため、外観性向上や意匠性付与を目的として、合成皮革等の表皮材や意匠シートとして用いることができる。
さらに、本発明の低反射シートは、分析機器や光学機器の迷光防止部材等に用いることができる。
以下の方法により、低反射シートを得た。
ステンレス板にブラスト加工し、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さ(以下、Saと略する。)が0.35μmとなるように仕上げた。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Aを版面に有した転写原版Aを得た。なお、錐状構造体Aの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Aの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
以下の組成を含有するめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、電流密度を80A/dm2から1分毎に3.0A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
<<めっき浴の組成>>
・塩化クロム:200g/dm3(0.75mol/dm3)
・塩化アンモニウム:30g/dm3(0.56mol/dm3)
・シュウ酸:3g/dm3(0.024mol/dm3)
・炭酸バリウム:5g/dm3(0.025mol/dm3)
・ホウ酸:30g/dm3(0.49mol/dm3)
・フッ化バリウム:10g/dm3(0.057mol/dm3)
転写原版Aの錐状構造体Aが形成された面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型のソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚さ0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cm2でUV照射をした。転写原版Aの錐状構造体Aを転写し、ソフトモールド形成用組成物を硬化させた後、転写原版Aを剥離して第1ソフトモールドを得た。
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
第1ソフトモールドの錐状構造体Aの反転形状が形成された面上に、第1ソフトモールドと同じソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚さ0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cm2でUV照射をした。ソフトモールド形成用組成物を硬化させた後、第1ソフトモールドを剥離して、表面に錐状構造体Aと同形状の錐状構造体A’が形成された第2ソフトモールドを得た。
得られた第2ソフトモールドの、錐状構造体A’が形成された面上に、下記組成から成る紫外線硬化型の低反射樹脂層形成用組成物を塗布し、塗布面上に厚さ2.0mmの黒色アクリル板(アクリライトL 三菱レイヨン株式会社製)を配置した。第2ソフトモールドのPCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cm2でUV照射をして、低反射樹脂層形成用組成物を硬化させた。その後、第2ソフトモールドを剥離することで、表面に多数の溝部Aを備える低反射樹脂層を黒色アクリル板上に有する低反射シートを得た。
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Bを版面に有した転写原版Bを得た。なお、錐状構造体Bの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Bの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に2.0A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Cを版面に有した転写原版Cを得た。なお、錐状構造体Cの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Cの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に1.5A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Dを版面に有した転写原版Dを得た。なお、錐状構造体Dの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Dの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に1.0A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Eを版面に有した転写原版Eを得た。なお、錐状構造体Eの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Eの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に2.0A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Fを版面に有した転写原版Fを得た。なお、錐状構造体Fの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Fの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に0.5A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Gを版面に有した転写原版Gを得た。なお、錐状構造体Gの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Gの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に5.0A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Hを版面に有した転写原版Hを得た。なお、錐状構造体Hの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Hの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に0.4A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Iを版面に有した転写原版Iを得た。なお、錐状構造体Iの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Iの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に6.0A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.3μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Jを版面に有した転写原版Jを得た。なお、錐状構造体Jの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Jの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に2.0A/dm2ずつ小さくして、最終的に10A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
ステンレス板にブラスト加工しSa=0.5μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型の錐状構造体Kを版面に有した転写原版Kを得た。なお、錐状構造体Kの反転形状およびばらつきと、得られる低反射シートにおける溝部Kの形状およびばらつきとは、対応するものであった。
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dm2から1分毎に1.8A/dm2ずつ小さくして、最終的に20A/dm2とし、ステンレス板上に電解めっきにより黒色クロムめっき膜を形成した。
実施例1〜7、比較例1〜4で得られた低反射シートについて、以下の条件にてSEM観察を行った。実施例ごとに低反射樹脂層上の多数の溝部の中から表1に示す点数を抽出し、平面視SEM像から溝部の開口(溝口部)の面積、溝部の開口(溝口部)の最大内角、および隣接する溝部の最近接重心間距離について平均および分散を求めた。なお、平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化については、先に説明した方法を用いた。
(条件)
・SEM:電界放出形走査電子顕微鏡 S-4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)
・観察方法:Top−View(溝部を有する面側から)
・前処理:Pt−Pdスパッタ
・観察倍率:×10k
・視野範囲:縦4μm×横4μm
実施例1〜7、比較例1〜4で得られた低反射シートについて、以下の条件にて最大反射率を計測した。
(条件)
・計測装置:Scanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)
・計測方法:8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射
実施例1〜7、比較例1〜4で得られた低反射シートにおける低反射樹脂層のヘイズ値を以下の方法により測定した。
(測定方法)
実施例1〜7、比較例1〜4において、黒色アクリル板に換えてPCフィルムを用い、PCフィルム上に低反射樹脂層を形成し、評価用サンプルを作製した。ヘイズメーター(東洋精機製作所製 商品名:ヘイズガード)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により各評価用サンプルのヘイズ値を測定した。
一方で比較例1〜4の低反射シートを光学計測機の遮光シートとして使用したところ、迷光の除去は不十分であった。
2 … 低反射樹脂層
3、3A、3B、3C … 溝部
10 … 低反射シート
Claims (2)
- 着色基材の少なくとも一方の面側に、多数の溝部を備える低反射樹脂層を有し、
前記溝部の開口の平面視外形を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm2以上131000nm2以下の範囲内であり、
前記溝部の開口の平面視外形を八角形に近似したときの最大内角の分散が600(°) 2 以上1020(°) 2 以下の範囲内であり、
一の前記溝部および前記一の溝部の開口の平面視外形を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に開口の重心を有する他の前記溝部の重心間距離の平均が500nm以下であり、前記重心間距離の分散が8000(nm) 2 以上であることを特徴とする低反射シート。 - 前記着色基材および前記低反射樹脂層が一体化した単一層であることを特徴とする請求項1に記載の低反射シート。
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