JP6631282B2 - 車両用内装材および車両用内装材用フィルム - Google Patents

車両用内装材および車両用内装材用フィルム Download PDF

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Description

本発明は、車両の車室内等に配置される内装材および内装材用フィルムに関するものである。
一般に、自動車の内装部品において、スピードメーター等の計器、オーディオ、エアコン、デフロスター等の操作盤を配置するインストルメントパネル等の樹脂成形品は、質感、見栄え等の品質を向上させるために、表面に凹凸形状等の表面加工が施されている。
従来、このように自動車等の車両の内装部品は、意匠性に加えて低反射性も重視されることから、意匠性と低反射性とを共に有する車両用内装材が求められている。
例えば、ロール・エンボス加工又はフラット・エンボス加工によって模様状紋をインストルメントパネルの表面に形成し、模様状紋の凸部面に突状を形成することで、見栄えを良くし、さらに、インストルメントパネルの表面に入射した光を乱反射させ、模様状紋をフロントガラスに映りにくくし、運転に支障が生じないようにしたインストルメントパネルが公知である。
しかしながら、上述したインストルメントパネルでは、模様状紋の凸部面に形成する突状の形状および配置間隔によっては、太陽光や後続車両のヘッドライトの光を反射して眩しく煩わしいことがある(特許文献1および2)。
特開2010−253982号公報 特開2014−234141号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射を抑制し、運転中に反射光にて眩しさを感じることがなく、窓に内装材等の映像や模様等が映り込むことを防ぐことが可能な車両用内装材を提供することを主目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、所定の形状を有する低反射構造部を車両用内装材の表面に有することにより、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射を抑制し、反射による眩しさ、および、窓への内装材等の映り込みを防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する車両用内装材であって、上記突起部の底面は、上記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部の重心間距離の平均が400nm以下であり上記重心間距離の分散が10000nm以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とする車両用内装材を提供する。
なお、本明細書内において、多数の突起部が上記の所定のパラメータ値を有して備わる低反射構造部のことを、「所定の低反射構造部」と称する場合がある。
本発明によれば、車両用内装材の表面に所定の低反射構造部を有することで、上記低反射構造部を構成する突起部において光を多数回反射させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
このため、本発明の車両用内装材は、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を奏することができ、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することができる。
上記発明においては、着色樹脂基体と、上記着色樹脂基体上に形成された透明フィルム層と、を有し、上記透明フィルム層の表面に上記低反射構造部を有することが好ましい。表面に所定の低反射構造部を有する透明フィルム層が着色樹脂基体上に形成されていることで、上記着色樹脂基体の色彩および明度によらず、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を奏することができるからである。
上記発明においては、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であり、かつ、最大反射率が2.0%以下であることが好ましい。本発明の車両用内装材の形状により視認する角度が大きく異なる場合であっても、優れた反射率低減効果を奏することが可能となるからである。
上記発明においては、上記車両用内装材がインストルメントパネルであることが好ましい。車両用内装材の中でも特に、インストルメントパネルは、運転者の目の前に配置されており、太陽光および後続車のヘッドライトによる光の反射が運転者の視界に最も影響を及ぼすものである。したがって、本発明の車両用内装材をインストルメントパネルに適用することにより、優れた反射率低減効果を奏することができ、インストルメントパネル表面からの反射光を低減し、フロントガラスへのインストルメントパネル像の映り込みを防止することができるからである。
また、本発明は、透明樹脂層の少なくとも一方の表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する車両用内装材用フィルムであって、上記突起部の底面は、上記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部の重心間距離の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000nm以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とする車両用内装材用フィルムを提供する。
本発明によれば、車両用内装材用フィルムの表面に所定の低反射構造部を有することで、上記低反射構造部を構成する突起部において光を多数回反射させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
このため、本発明の車両用内装材用フィルムは、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を奏することができ、本発明の車両用内装材用フィルムを車両用内装材の表面に配置することにより、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することができる。
上記発明においては、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であり、かつ、最大反射率が2.0%以下であることが好ましい。本発明の車両用内装材用フィルムを車両用内装材の表面に配置した際に、上記車両用内装材の形状により視認する角度が大きく異なる場合であっても、優れた反射率低減効果を奏することが可能となるからである。
本発明の車両用内装材は、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することが可能であるといった作用効果を奏する。
本発明の車両用内装材の一例を示す概略斜視図である。 図1のA−A線における概略断面図である。 本発明の車両用内装材における突起部の頂部の方位角を説明する説明図である。 本発明の車両用内装材の低反射構造部を有する面の平面SEM画像である。 本発明の車両用内装材の第1態様の一例を示す概略断面図である。 本発明の車両用内装材の第2態様の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の車両用内装材および車両用内装材用フィルムについて詳細に説明する。
A.車両用内装材
本発明の車両用内装材は、表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する車両用内装材であって、上記突起部の底面は、上記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部の重心間距離(以下、最近接重心間距離と称する場合がある。)の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000nm以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とするものである。
本発明の車両用内装材について、図を参照して説明する。図1は、本発明の車両用内装材の一例を示す概略斜視図であり、図2は、図1のA−A線における概略断面図である。
図1および図2に例示するように、本発明の車両用内装材10は、表面に、多数の突起部2を備える低反射構造部3を有する。
図2で示すように、低反射構造部3において、多数の突起部2、2A、2Bは、形状および配置位置に所定のばらつきを有している。多数の突起部が有する形状および配置位置の所定のばらつきについては、後述する。
本発明によれば、車両用内装材の表面に所定の低反射構造部を有することで、上記低反射構造部を構成する突起部において光を多数回反射させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
このため、本発明の車両用内装材は、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を奏することができ、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することができる。
本発明の車両用内装材は、通常、少なくとも着色樹脂基体により構成されており、上記着色樹脂基体表面に上記低反射構造部を有する第1態様、および、上記着色樹脂基体と、上記着色樹脂基体上に形成された透明フィルム層と、有し、上記透明フィルム層の表面に上記低反射構造部を有する第2態様、に大別される。
以下、本発明の車両用内装材のそれぞれの態様について説明する。
I.第1態様
本発明の車両用内装材の第1態様(以下、この項において本態様と称する場合がある。)は、着色樹脂基体表面に上記低反射構造部を有するものである。
本態様においては、上記低反射構造部が、上記着色樹脂基体の表面に直接形成されている。
先に説明した図1および図2は、本態様の車両用内装材を例示したものであり、車両用内装材10を構成する着色樹脂基体1の表面に、多数の突起部2を備える低反射構造部3を有している。低反射構造部3は、着色樹脂基体1の表面に直接形成されている。
本態様によれば、着色樹脂基体表面に所定の低反射構造部を有することにより、上記低反射構造部を構成する突起部において光を多数回反射させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
このため、本態様の車両用内装材は、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を奏することができ、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することができる。
以下、本態様の車両用内装材における各構成および製造方法について説明する。
1.低反射構造部
本態様における低反射構造部は、多数の突起部を備えるものである。上記多数の突起部は、形状および配置位置に所定のばらつきを有する。
また、上記低反射構造部は、着色樹脂基体表面に有するものである。後述するように、本態様における上記着色樹脂基体が、表皮層、中間層、および芯材から構成される場合、上記低反射構造部は、上記着色樹脂基体の表皮層の表面に形成される。
以下、本態様における低反射構造部の詳細について説明する。
(1)突起部
本態様における突起部は、形状および配置位置に所定のばらつきを有するものである。多数の突起部の形状および配置位置のばらつきのことを、単に「(突起部の)ばらつき」と称する場合がある。
多数の突起部が有するばらつきは、以下の3つのパラメータを定量化することにより規定される。
第1のパラメータは、突起部の大きさによるものである。多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図2に示すように、突起部2の底面の重心Gを通る最大幅Rの平均が250nm以上500nm以下の範囲内であることをいう。
第2のパラメータは、隣接する突起部の位置関係によるものである。多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図2に示すように、一の突起部2Aおよび一の突起部2Aの底面の重心Gに最も近接した位置に底面の重心Gを有する他の突起部2Bの重心間距離、すなわち、最近接重心間距離Lの平均が400nm以下であり、最近接重心間距離Lの分散が10000nm以上である。
第3のパラメータは、突起部の頂部が示す方向によるものである。多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図3に示すように、突起部2が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において突起部2の底面の重心Gからの突起部2の頂部Tの位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、突起部2の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たす。
図3は突起部の頂部の方位角を説明する説明図であり、図3(a)は突起部の概略斜視図であり、図3(b)は図3(a)のz軸方面、すなわち、突起部の頂部側から見た概略平面図であり、突起部の頂部の位置および方位角を説明する説明図である。
すなわち、多数の突起部が「所定のばらつきを有する」とは、上記の第1〜第3の各パラメータが上述の所定の範囲内(以下、所定値と称する場合がある。)を示すことを意味する。
本態様においては、「突起部の大きさ」、「隣接する突起部の位置関係」、および「突起部の頂部が示す方向」の3つのパラメータにより規定されるばらつきの程度により、多数の突起部により低反射構造部において奏される反射率低減効果が決定される。そして、各パラメータが上述の所定値を示すことで、多数の突起部が所定のばらつきを有し、低反射構造部において所望の効果を奏することができる。
以下、突起部の形状および配置位置のばらつきを規定するためのパラメータの定量化方法、および、具体的なパラメータについて説明する。
(a)パラメータの定量化方法
上記突起部の形状および配置位置のばらつきは、本態様の車両用内装材の表面に有する低反射構造部に備わる多数の突起部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。
突起部の抽出は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:以下、SEMと称する。)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:以下、AFMと称する。)等を用い、倍率10000倍、視野範囲を縦4μm×横4μmとして、上記車両用内装材の低反射構造部を有する面(以下、低反射構造部賦形面と称する場合がある。)側から平面視観察を行い、上記視野範囲における突起部の面内配列を画像で検出し、その中から所望の点数を抽出する方法を用いる。
各パラメータは、1つの視野範囲あたりの突起部の最低抽出点数を30点として算出する。突起部の抽出点数は多いほど好ましく、抽出点数は30点以上、中でも50点以上であることが好ましい。また、突起部の抽出を行うための上記視野範囲の検出数は、低反射構造部賦形面の所望の単位面積(2500mm)当たり3箇所以上、中でも5箇所以上、特に10箇所以上であることが好ましい。
抽出点数および視野範囲の検出数を上記範囲で規定することで、3つのパラメータをより高精度で定量化することができ、突起部の形状および配置位置のばらつきを正確に規定することができるからである。
各パラメータは、以下の手順により定量化される。
(i)まず、SEMやAFMを用いて突起部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の突起部を抽出し、各突起部の高さの極大点および極小点を検出する。極大点および極小点を求める方法は、例えば、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法等、種々の手法を適用することができる。このとき得られた極大点を「突起部の頂部」とする。
(ii)次に、SEM画像やAFM画像から、極大点を囲む極小点の集合を突起部の根元とし、根元の形状を決定するために上記根元の形状を所望の形状に近似する。根元の形状とは、根元の輪郭の平面視形状(輪郭形状)であり、上記輪郭により囲まれた領域が「突起部の底面」となる。上記根元の形状の近似の際、部分的に途切れている線は補完する。補完する方法は、例えば、ある閾値を設けて閉空間を作る方法を取ることができる。近似された根元の輪郭形状は、各パラメータを特定可能な形状であれば特に限定されず、例えば円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等とすることができる。得られた突起部の根元の近似形状を「突起部の底面の形状」とする。
突起部の根元の形状の近似方法は、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、特に限定されないが、例えば、テンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。
テンプレートマッチングは、予め形状を表現したテンプレートを準備し、画像認識の対象となる画像データに対してテンプレートを移動させながら相関係数等の類似度の指標を調べることによって画像データに含まれる形状を認識する技術である。テンプレートマッチングによる画像近似手法については、例えば、「中田崇行、包躍、藤原直史:“三次元環境におけるLog-Polar変換を用いた図形認識”,電気情報通信学会論文誌(D-II), Vol.88, No.6, pp.985-993(2005.6)」、「斎藤文彦:“部分ランダム探索と適応型探索による半導体チップ画像テンプレートマッチング”, 精密工学会誌, Vol.61, No.11, pp.1604-1608(1995.11)」に開示される。
また、一般化ハフ変換は、無限に存在する直線の中から画像データ内の特徴点を最も多く通る直線を決定するハフ変換を一般化して曲線に応用したものであり、この一般化ハフ変換によっても、事前に用意した参照用のテーブルを利用して画像データの形状認識を行うことができる。一般化ハフ変換による画像近似手法については、例えば、「Ballad.D.H: “GENERALIZING THE HOUGH TRANSFORM TO DETECT ARBITRARY SHAPES”, Pattern Recognition, Vol.13, No.2, pp.111-122(1981)」や、「木村彰男,渡辺孝志:“アフィン変換に不変な任意図形検出法として拡張された一般化ハフ変換”, 電気情報通信学会誌(D-II), Vol. J84-D-II, No. 5, pp.789-798(2001.5)」に開示される。
Douglas-Peucker法は、折れ線近似によって形状認識を行う手法である。Douglas-Peucker法による画像近似手法については、例えば、「Wu. S.T, M.R.G:“A non-self-intersection Douglas-Peucker Algorithm”, Proceeding of Sixteenth Brazilian Symposium on Computer Graphics and Image Processing, IEEE, pp.60-66(2003)」に開示される。
(iii)次に、上記突起部の底面の形状から、突起部の底面の重心を特定する。突起部の底面の重心は、一般的な線形代数の計算で求めることができる。例えば、突起部の底面の形状が正円である場合、円周上の3点を結ぶ三角形を描き、三角形のうち二辺の垂直2等分線をそれぞれ引いた交点を円の重心とすることができる。また、突起部の底面の形状が楕円である場合、楕円の外周上の2点を結ぶ2本の線分を平行となるように引き、平行する2本の線分の各中点を結び、結んだ線分の中点を重心とすることができる。
さらに突起部の底面の形状が多角形である場合、突起部の底面の重心は、以下の操作を行うことで特定することができる。
操作1:まず、多角形の1つの頂点から、上記1つの頂点に隣接する2つの頂点を除く他の各頂点へ対角線を結び、複数の三角形に分割する。
操作2:分割された各三角形の重心を求める。
操作3:次に、各三角形の重心を結び多角形を形成する。
操作4:突起部の底面の形状が奇数角形の場合、操作3において形成される多角形が三角形となるまで、操作1〜3を繰り返す。一方、突起部の底面の形状が偶数角形の場合、操作3において形成される多角形が四角形となるまで、操作1〜3を繰り返す。
操作5:上述の操作1〜4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が三角形となる場合、上記三角形の重心が突起部の底面の重心となる。一方、上述の操作1〜4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が四角形となる場合、以下の方法で上記四角形の重心を求める。まず、上記四角形を1つの対角線で2つの三角形に分割し、2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。次に、四角形を別の対角線で2つの三角形に分割して2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。2本の直線の交点が突起部の底面の重心となる。
(iv)次に、突起部の底面の重心を通る最大幅(以下、「突起部の底面の最大幅」と略する場合がある。)を決定し、突起部の大きさを規定する。上記最大幅は、突起部の底面の重心を通り、上記底面の形状の外周上の2点を結ぶ線分の長さのうち、最も幅広の線分をいう。具体的には、突起部の底面の形状が正円の場合では、上記最大幅とは正円の直径をいい、突起部の底面の形状が楕円の場合では、上記最大幅とは楕円の重心を通過して外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。また、突起部の底面の形状が多角形の場合では、上記最大幅とは、多角形の重心を通過して多角形の外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。
突起部の底面の最大幅の長さは、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出して決定することができる。
算出した上記最大幅を統計処理することで、突起部の底面の最大幅の平均値および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。なお、上記最大幅の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最大幅−最大幅の平均値)/標準偏差
(v)次に、隣接する突起部の位置関係を規定する。まず、各突起部の位置を座標化する。突起部の位置とは、「突起部の底面の重心(以下、単に突起部の重心と称する場合がある。)の位置」を意味する。上記座標化は以下の方法で行う。まず、SEM画像やAFM画像内の所望の位置に原点を設定する。例えば、SEM画像やAFM画像中の左下を原点とする。次に、上記原点から、上記画像内において突起部が形成された面内の長さ方向に相当する一方向をx軸、x軸に直交し、幅方向に相当する一方向をy軸と規定する。このように画像を座標平面とすることで、各突起部の重心を座標化することができる。
突起部の重心の座標から、特定の一の突起部と隣接する複数の突起部との突起部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は以下の計算式によって算出され、特定の一の突起部について算出される重心間距離のうち最小の距離を、特定の一の突起部についての「最近接重心間距離」とする。
重心間距離={(x−x+(y−y1/2
なお、式中のxおよびyは、特定の一の突起部の重心を示すx座標およびy座標である。また、xおよびyは、上記特定の一の突起部に隣接する突起部の重心を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
上記の方法で各突起部の最近接重心間距離を抽出し、既存の表計算ソフトで統計処理することにより、最近接重心間距離の平均値および分散を計算する。なお、最近接重心間距離の平均値および分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最近接重心間距離−最近接重心間距離の平均値)/標準偏差
(vi)次に、突起部の底面の重心から頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂点が示す方向を規定する。方位角φは、突起部の位置を座標化した際に設定した座標平面の平面視上において、x軸に対して突起部の重心および頂部を結ぶ辺が成す角度で規定される。
抽出した各突起部について方位角φを決定し、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値を算出する。この算出は既存の表計算ソフトを使用することができる。
本発明において各パラメータの定量化において算出される分散の値とは、統計学において一般に用いられる、平均値から算出する分散の算出式から算出される値である。つまり、各パラメータにおける分散の値は、測定値xと測定値の平均値mとの差(x−m)の二乗(x−m)の和を抽出点数nで割ることで算出することができる。算出には既存の表計算ソフトを使用することができ、分散の単位は、通常、平均値の単位の二乗で表わすことができる。
(b)パラメータ
次に、本態様における突起部の形状および配置位置のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
(i)突起部の大きさ
突起部の大きさは、突起部の底面の重心を通る最も幅広な部分の長さで規定される。
突起部の底面の最大幅は、例えば図2や図4(a)においてRで示す部分である。図4は本態様の車両用内装材の低反射構造部賦形面の平面SEM画像である。図4(a)中のTは突起部の頂部を、Gは突起部の底面の重心を示す。
突起部の底面の最大幅の平均は、250nm以上500nm以下の範囲内であればよく、中でも300nm以上400nm以下の範囲内であることが好ましい。球形粒子では幾何光学散乱が支配する直径は数μm以上であるが、突起形状での散乱は異なる挙動を示す。突起部の底面が上記範囲内に最大幅を有する形状とすることで、突起部においてミー散乱が支配的に生じることが推測される。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも大きいと、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり前方散乱が起こりにくくなるため、突起部において光の反射が生じやすくなり、所望の反射率低減効果が得られない場合があるからである。また、突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも大きいと、車両用内装材表面の単位面積あたりの突起部の個数が減少するため多数回反射が生じにくくなり、反射率を低減させることが困難となる場合がある。
一方、突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも小さいと、レイリー散乱が支配的になるため、波長選択性が生じ、反射光に色味が生じる可能性があるからである。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲内にあるとき、上記突起部の底面の最大幅の分散は、10000以上であることが好ましい。干渉により特定の波長の光の強度が強まる不具合を抑制できるからである。上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば18000以下であることが好ましい。突起部の底面の最大幅の分散の単位はnmとなる。
(ii)隣接する突起部の位置関係
突起部の位置とは、突起部の底面の重心の位置をいい、図2〜図4においてG、G、G、Gで示す部分である。
隣接する突起部の位置関係は、一の突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の突起部の重心間距離、すなわち最近接重心間距離の平均および分散により規定される。最近接重心間距離は、図2、図4(b)においてL、LGa、またはLGbで示す部分である。
最近接重心間距離は先に説明した方法で算出され定量化されるが、算出方法についてさらに図を示して説明する。最近接重心間距離は、図4(b)で示すように、突起部2Aに隣接する突起部のうち、突起部2Aの重心Gと最も近い位置に重心Gを有する突起部2Bを抽出し、その重心間距離を突起部2Aについての最近接重心間距離LGaとして算出する。次に、突起部2Bに隣接する突起部のうち、突起部2Bの重心Gと最も近い位置に重心Gを有する突起部2Cを抽出し、その重心間距離を突起部2Bについての最近接重心間距離LGbとして算出する。
最近接重心間距離の平均は、上記操作を繰り返し行い、突起部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出される。
最近接重心間距離の平均は、400nm以下であればよく、中でも360nm以下、特に350nm以下であることが好ましい。最近接重心間距離の平均が上記範囲よりも大きいと、隣接する突起部が密接しておらず、突起部が形成されない平坦な非突起部領域が多く存在することとなり、上記非突起部領域において生じる光の反射により、反射率低減効果が低下する場合がある。
最近接重心間距離の平均の下限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば280nm以上であることが好ましい。
最近接重心間距離の平均が上記範囲内にあるとき、上記最近接重心間距離の分散は、10000以上であればよく、中でも11000以上、特に12000以上であることが好ましい。最近接重心間距離の分散が上記範囲よりも小さいと、多数の突起部が均等なピッチ幅で配置されることとなり、干渉により特定の波長の光の強度が強まり、所望の反射率低減効果が発揮されにくい場合があるからである。
上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば14000以下であることが好ましい。なお、最近接中心間距離の分散の単位はnmとなる。
(iii)突起部の頂部が示す方向
突起部の頂部が示す方向とは、突起部の底面の重心に対して突起部の頂部が位置する方向をいう。図3に示すように、突起部2が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において突起部の底面の重心Gからの突起部2の頂部Tの位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂部が示す方向が規定される。方位角φは、先に説明した方法により規定される。
多数の突起部の頂部が示す方向のばらつきは、突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向と規定し、平面視上における上記突起部の頂部の位置を方位角φで示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたとき、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち|Σ(k=1〜n)cosφ/n|)、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち|Σ(k=1〜n)sinφ/n|)の値により、規定することが可能である。
ここで、多数の突起部の頂部が同一方向を向いて配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は大きくなる。一方、多数の突起部がそれぞれ異方向を向いてランダムに配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は小さくなる。
本態様においては、多数の突起部が|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことで、多数の突起部の頂部が、光の入射角度に因らず反射率の低減が可能となるように、ランダムな方向に向くこととなる。中でも多数の突起部が、|(Σ(k=1〜n)cosφ)/n|≦0.15、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.15の関係を満たすことが好ましく、特に|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.10、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.10の関係を満たすことが好ましい。|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値が上記範囲よりも大きいと、多数の突起部の各頂部が同一方向を向き、高い規則性を有して配置されることになる。このため、特定の角度から入射される光に対しては、高い反射率で反射してしまい、光の入射角度に応じて反射率の低減の程度に差が生じる場合がある。
なお、抽出点数nは30点以上であればよく、より好適な点数については既に説明した抽出点数と同様である。
(c)その他
突起部の高さは、上述の3つのパラメータが所定値を備えることが可能な大きさであれば特に限定されないが、例えば、100nm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも300nm〜1μmの範囲内が好ましい。突起部の高さが上記範囲よりも小さい場合、突起部の頂部の曲率が大きくなるため、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり、前方散乱が起こりにくくなるため、突起部において光の反射が生じる可能性がある。一方、突起部の高さが上記範囲よりも大きい場合、所望の突起部の形状に製造することが困難となる可能性がある。
突起部の高さは、突起部が形成された面から突起部の頂部までの長さをいい、図2においてhで示す部分である。突起部の高さは、上述の「(a)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により検出した極大点から、特定の基準位置(例えば突起部の根元位置を高さ=0とする。)からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化した値である。
また、突起部の高さが上記範囲内にあるとき、突起部の底面の最大幅に対する突起部の高さのアスペクト比(図2中のh/R)は、所望の反射率低減効果を発揮することが可能となる比であればよく、例えば0.3〜30の範囲内が好ましく、中でも0.8〜3の範囲内が好ましい。上記アスペクト比が上記範囲よりも小さいと、突起部において光の反射が起こりにくくなるため、突起部による反射率低減効果が十分に発揮されない場合ある。一方、アスペクト比が上記範囲よりも大きいと、賦形が困難となり突起部が所望の形状とならない場合がある。
突起部は、凸型の錐状構造を成しており、着色樹脂基体表面に上記突起部の形状を精度良く賦形することができるため、生産性が向上するという製造上の利点を有する。光の反射を低減する構造としては、一般に、モスアイと呼ばれる微細凹凸構造が知られているが、上記微細凹凸構造による反射率低減効果を向上させるために、上記微細凹凸構造を構成する突起部の形状を、頂部が分岐した多峰形状とすることで表面積を大きくする必要がある。しかし、このような形状の突起部は、精度良く賦形できない場合がある。一方、本態様では、多数の突起部に所定のばらつきをもたせることで、低反射構造部において反射率低減効果を奏することが可能となるから、突起部を多峰形状とする必要がなく、個々の突起部を精度良く賦形することが可能となるのである。
突起部の頂部の先端は、尖っていてもよく、曲率を有していてもよい。中でも、ミー散乱により突起部での光の前方散乱が起こりやすくなり、光の吸収が高まることから、先端が尖っていることが好ましい。
突起部の底面の形状は、近似により上述したパラメータの特定が可能な形状であれば特に限定されず、例えば円、楕円等の丸形状の他、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等を挙げることができる。
また、突起部の側面形状は、突起部の縦断面において直線状であってもよく、曲線状であってもよい。さらに、突起部の側面形状が多段状であってもよい。中でも突起部の側面が多段状であることが好ましい。突起部において多数回反射およびミー散乱がより起こりやすくなるからである。
(2)低反射構造部における光学特性
本態様において、上記低反射構造部は、以下の光学特性を示すことが好ましい。
(a)5°正反射率と65°反射率との差
本態様においては、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が小さいことが好ましい。視認する角度による低反射性の変化が少なくなり、角度依存の少ない低反射構造部となるからである。
具体的には、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であることが好ましく、中でも1.4%以下であることが好ましく、特に1.3%以下であることが好ましい。5°正反射率と65°反射率との差を上述の上限値以下にすることにより、視認する角度が大きく異なる場合でも、上記低反射構造部において可視光の全波長域に対して低い反射率を示すことができる。これにより、本態様の車両用内装材の形状により視認する角度が大きく異なる場合であっても、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することができるからである。
上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差とは、検出角を5°に固定し、5°および65°入射光の可視光領域380nm〜780nmにおける絶対反射スペクトルを測定し、5°正反射率および65°反射率(ΔY(%)およびΔY65(%))を求め、それらの差分反射率((ΔY65−ΔY)(%))を求めたものである。
ここで、5°正反射率(ΔY(%))は、本態様の車両用内装材における低反射構造部の5°正反射率から標準黒色板の5°正反射率の差分にて求められる。また、65°反射率(ΔY65(%))も5°正反射率(ΔY(%))と同様に、標準黒色板の65°反射率との差分にて求められる。
なお、上記5°正反射率および65°反射率は、計測装置として、紫外可視近赤外分光光度計 V−7100(日本分光(株)製)を用い、検出角を5°に固定し、5°および65°入射光の可視光領域380nm〜780nmにおける絶対反射スペクトルを測定することにより得られる。
(b)最大反射率
本態様においては、上記低反射構造部における最大反射率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.9%以下であることが好ましく、特に1.8%以下であることが好ましい。上記低反射構造部における最大反射率を上述の上限値以下とすることで、可視光の全波長域に対して低い反射率を示すことができるため、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することが可能となるからである。
上記最大反射率とは、低反射構造部に可視光領域380nm〜780nmの波長の光を8°にて入射させた際の全方向の積算反射率を求め、その中で最も反射率の高い波長のものをいう。
最大反射率は、計測装置として、紫外可視近赤外分光光度計 UV−3100PC((株)島津製作所製)を用い、8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全方向の積算反射率を測定することで得られる。
(c)好適な光学特性
上記低反射構造部においては、上述した5°正反射率と65°反射率との差、および、最大反射率を、同時に満たすことが好ましく、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であり、かつ、最大反射率が2.0%以下であることが好ましい。本態様の車両用内装材の形状により視認する角度が大きく異なる場合であっても、上記低反射構造体において優れた反射率低減効果を奏することが可能となるからである。
2.車両用内装材
本態様の車両用内装材は、着色樹脂基体の表面に、上述の「1.低反射構造部」の項で説明した低反射構造部を有する。
本態様においては、上記低反射構造部は、通常、着色樹脂基体の表面に直に形成されるが、低反射構造部を有する着色樹脂基体と同色の部材(以下、低反射構造部部材と称する場合がある。)を着色樹脂基体の表面に設けて、上記低反射構造部部材を着色樹脂基体の表面の一部として擬してもよい。
図5は、本態様の車両用内装材の一例を示す概略断面図である。図5に例示するように、本態様の車両用内装材10は、芯材11と、芯材11の一方の表面に形成された中間層12と、中間層12の芯材11と接する面と対向する面側に形成された表皮層13と、を有する着色樹脂基体1から構成されており、低反射構造部3が表皮層13の表面、すなわち着色樹脂基体1の表面に直に形成されている。
以下、本態様の車両用内装材を構成する着色樹脂基体について説明する。
(1)着色樹脂基体
車両用内装材を構成する着色樹脂基体は、一般に、汚れが目立つのを防ぐ目的、および意匠上の観点から、濃彩色に着色されている場合が多い。
ここで、濃彩色とは、黒、チャコールグレイ、焦茶、ワインレッド、紺色等の色をいう。より具体的には、濃彩色とは、純粋な黒色(真黒)、灰色系の色(墨、鉄黒、ランプブラック、チャコールグレイ、煤竹色)、茶色系の色(黒茶、焦茶、灰茶、セピア、褐色、茶色、バーントアンバー、ローアンバー、ブロンズ、代赭、黄茶、ボルドー、紅海老茶、鳶色、弁柄色、海老茶、赤茶、赤錆色、赤橙、柿色、樺色、煉瓦色、錆色、桧皮色、栗色、黄赤、バーントシェンナ、チョコレート、ココアブラウン、ローシェンナ)、黄色系の色(橙色、蜜柑色、山吹色、鬱金色、向日葵色、芥子色)、緑色系の色(鶯茶、鶯色、オリーブ、オリーブグリーン、苔色、草色、アイビーグリーン、松葉色、萌黄、深緑、萌葱色、常盤色、ビリヤードグリーン、ビリジアン、ボトルグリーン、マラカイトグリーン、フォレストグリーン、千歳緑、若竹色)、青色系の色(鉄色、青緑、浅葱、納戸色、ピーコックグリーン、ピーコックブルー、マリンブルー、セルリアンブルー、コバルトブルー、藍鼠、サックスブルー、青、藍色、濃藍、縹色、紺青、瑠璃色、瑠璃紺、紺色、杜若色、勝色、群青色、鉄紺、アイアンブルー、プルシアンブルー、ミッドナイトブルー、ネイビーブルー、ウルトラマリンブルー、オリエンタルブルー、桔梗色、紺藍、パンジー、青紫、菫色、菖蒲色、江戸紫、古代紫、茄子紺、紫紺、牡丹色、マゼンタ)、赤色系の色(赤、紅色、紅赤、臙脂、茜色、紅樺色、躑躅色、薔薇色、蘇芳、コチニールレッド、ルビーレッド、ワインレッド、バーガンディー、ストロベリー、ローズレッド、ローズ、ポピーレッド、シグナルレッド、カーマイン、トマトレッド、ヴァーミリオン、スカーレット)などの有彩色で黒っぽい色、および鮮やかな色、も含むものとする。本明細書内における「濃彩色」とは、上述した色をいうものとする。
本態様においては、低反射構造部が上述した濃彩色に近い色であるほど、上記低反射構造部において可視光領域の波長の光を吸収しやすいといった特徴を有する。したがって、本態様における上記着色樹脂基体は、反射率低減効果をより発揮できる観点から、黒、チャコールグレイ、焦茶、ワインレッド、紺色等の濃彩色を呈することが好ましい。着色樹脂基体表面にて吸収される光の量が増えるため、本態様の車両用内装は、光の反射をより効率よく低減することが可能となるからである。
上記着色樹脂基体は、一般に車両用内装材として用いられる汎用のものを用いることができ、例えば、1種以上の樹脂に着色剤が配合されてなる単体であってもよく、複数の樹脂基体からなり、少なくとも最外となる上記樹脂基体が着色された複合体であってもよい。
上記複合体としては、表皮層、中間層、および芯材から構成されるものが一般的であるが、これに限定されない。
中でも本態様においては、上記着色樹脂基体が表皮層、中間層、および芯材から構成されることが好ましい。高い反射率低減効果が求められる用途として、インストルメントパネル等の車両用内装材は、上記の複合体で構成される場合が多いことから、本態様の車両用内装材を形成する着色樹脂基体を上記の構成とすることで、これらの用途に好適に用いることが可能となるからである。
以下、上記着色樹脂基体の各構成について説明する。
(a)表皮層
上記表記層は、一般に、車両用内装材の最表面に形成されており、上記車両用内装材に、色彩、模様、質感等の意匠性を付与するものである。着色樹脂基体が呈する色は、通常、表皮層の呈する色である。
本態様においては、車両用内装材が表皮層を有する構成の場合は、上記表皮層は、表面に上述の低反射構造部が形成された表皮層単層からなるものであってもよく、表面に上述の低反射構造部が形成された着色賦形フィルムと表皮層用基材との2層からなるものであってもよい。表皮層用基材は、通常、車両用内装材の所望の形状に成形されている。
上記表皮層の材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合合成樹脂)等の樹脂およびこれらの混合樹脂等が挙げられる。本態様においては、中でも、ABS樹脂およびABS・ポリカーボネート混合樹脂が好適である。触感や中間層との接着性、低反射構造部の形成性等の観点からである。
上記表皮層が着色賦形フィルムと表皮層用基材との2層からなる場合、上記表皮層用基材が上述の材料により形成される。
また、上記表皮層が着色賦形フィルムと表皮層用基材との2層からなる場合、上記着色賦形フィルムの材料としては、例えば後述する「II.第2態様 1.透明フィルム層」の項で説明する電離放射線硬化性樹脂等が硬化した硬化樹脂が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂を挙げることができる。
上記表皮層は、顔料等の従来公知の着色剤を含有していてもよい。上記着色剤は、本態様の車両用内装材の意匠性や着色樹脂基体により呈する色に応じて適宜選択することができる。
上記表皮層が着色賦形フィルムと表皮層用基材との2層からなる場合、上記着色剤は、少なくとも上記着色賦形フィルムに含有されることが好ましい。
上記表皮層は、難燃剤、抗酸化剤、充填剤、滑剤等の、一般に表皮材に含有される任意の材料を含んでいてもよい。
(b)中間層
上記中間層は、表皮層と芯材との間に形成される。上記中間層は、車両用内装材に良質な触感性、衝撃を吸収する緩衝性および吸音性等を付与するものである。
上記中間層を構成する材料としては、車両用内装材に用いられる中間層として従来から慣用されている材料を用いることができ、例えば、発泡性樹脂が好ましく用いられる。上記発泡性樹脂としては、具体的に、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の発泡体が挙げられる。
また、上記材料として、例えば、ポリエステル、ナイロン等の繊維にバインダー樹脂を添加して圧縮固化した繊維複合体を用いることも可能である。
(c)芯材
上記芯材は、車両用内装材の基本骨格(フレーム)を形成するものであり、高い剛性および軽量性等が求められる部材である。
上記芯材の材料は、特に限定されるものではなく、車両用内装材に用いられる芯材として従来から慣用されている材料から芯材の形成方法に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、アルミニウム等の金属、オレフィン系樹脂、AS樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂を硬化した硬化樹脂、不織布などの繊維を固めたもの等が挙げられる。
3.製造方法
本態様の車両用内装材の製造方法は、着色樹脂基体の表面に直に低反射構造部を形成できる方法であれば特に限定されない。
本態様の車両用内装材が、表皮層、中間層、および芯材を有する着色樹脂基体から構成される場合は、上記低反射構造部は、通常、上記着色樹脂基体の上記表皮層の表面に形成される。
したがって、上記の場合の製造方法としては、表面に低反射構造部が形成された表皮層を別途準備し、その表皮層を用いて着色樹脂基体を形成して、本態様の車両用内装材を製造する方法を用いることができる。具体的には、表面に低反射構造部が形成され、所望の形状に予備賦形された表皮層を準備し、上記表皮層と芯材とを発泡樹脂注入用金型内にセットし、上記表皮層と上記芯材との間の空間に中間層として発泡樹脂を注入する方法を用いることができる。
低反射構造部を有する表皮層の形成方法は、表面に所定のばらつきを有する多数の突起部から構成される低反射構造部を形成することが可能な方法であれば、特に限定されず、一般的な車両用内装材の表皮層の形成方法に準じた方法を用いることができる。
また、上記形成方法は、表皮層の仕様に応じて適宜選択することができ、例えば、表皮層表面に直に上記低反射構造部を形成する方法(直接賦形法)であってもよく、上記低反射構造部を有する着色賦形フィルムを表皮層用基材の表面に貼合する方法(貼合法)であってもよい。
(1)直接賦形法
直接賦形法による低反射構造部を有する表皮層の形成方法としては、例えば、押圧成形法を用いた形成方法、射出成形法を用いた形成方法等が挙げられる。
押圧形方法を用いた上記形成方法としては、例えば、樹脂および着色剤を含む着色樹脂シートを準備する準備工程、および、加熱軟化した上記着色樹脂シートを、低反射構造部の反転形状を版面に有する真空成形型にセットして押圧成形する押圧成形工程を有する方法が挙げられる。上記着色樹脂シートは、上述の「2.車両用内装材 (1)着色樹脂基体 (a)表皮層」の項で説明した表皮層の樹脂材料および着色剤を含む表皮層用組成物を用いて形成することができる。
また、射出成形法を用いた上記形成方法としては、例えば、低反射構造部の反転形状を表面に有する射出成形用金型を準備する準備工程、および、加熱溶融した表皮層用組成物を上記射出成形用金型内に射出注入して射出成形し、表皮層を成形すると同時に上記表皮層の表面に低反射構造部を形成する賦形工程を有する方法が挙げられる。表皮層用組成物は、上述の「2.車両用内装材 (1)着色樹脂基体 (a)表皮層」の項で説明した樹脂材料および着色剤を含む。
低反射構造部の反転形状を表面に有する真空成形用金型や射出成形用金型(以下、総じて金型と称する場合がある。)は、例えば上記金型の表面に直接メッキ処理を施すことで形成することができる。具体的には、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に凹型錐状構造体が多数形成された第1ソフトモールドを形成し、上記第1ソフトモールドを用いて、表面に凸型錐状構造体が多数形成された第2ソフトモールドを形成した後、上記第2ソフトモールドを用いて電鋳版を作成し、上記電鋳版を上記金型に賦すことで形成することができる。
これにより、上記金型の表面には、多数の凹型錐状構造体が形成され、上記多数の凹型錐状構造体の集合体の形状が、低反射構造部の反転形状に相当する。
(2)貼合法
低反射構造部を有する表皮層の貼合法による形成方法としては、例えば、上記低反射構造部を有する着色賦形フィルムを作製する着色賦形フィルム準備工程と、所望の車両用内装材の形状に成形した表皮層用基材を準備する表皮層用基材準備工程と、上記表皮層用基材の表面に上記着色賦形フィルムを貼合する貼合工程と、を有する方法が挙げられる。
上記着色賦形フィルム準備工程において、反射構造部を有する着色賦形フィルムを作製する方法としては、例えば、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に多数の凹型錐状構造体が形成されたソフトモールドを形成する転写版準備工程、上記ソフトモールドの上記凹型錐状構造体が形成された表面に着色賦形フィルム用組成物を塗布する塗布工程、および、塗布層を冷却し硬化した後、上記ソフトモールドを剥離して、低反射構造部を有する着色賦形フィルムとする賦形工程を有する方法を用いることができる。上記転写原版の多数の凸型錐状構造体の集合体と、着色賦形フィルムに賦形された低反射構造部とが、対応関係にある。また、上記転写原版の凸型錐状構造体と、着色賦形フィルムに賦形された低反射構造部における突起部とは、形状および配置位置のばらつきが対応する。
転写原版の製造方法については、後述の「II.第2態様 1.透明フィルム層 (4)透明フィルム層の製造方法」の項で説明する。
上記表皮層用基材準備工程において、表皮層用基材を成形する方法としては、所望の車両用内装材の形状に成形可能な方法であればよく、従来公知の車両用内装材の成形方法と同様の方法を用いることができる。
上記貼合工程において、上記着色賦形フィルムは、例えば、真空成形法、TOM成形法等の各種方法により上記表皮層用基材の表面に貼合することができる。
4.用途
本態様の車両用内装材の用途としては、例えば、インストルメントパネル、ドアリム、リヤシェルフ、アームレスト、サンバイザ、フロアスペーサ等が挙げられる。
中でも、本態様の車両用内装材がインストルメントパネルであることが好ましい。インストルメントパネルは、運転者の目の前に配置されており、太陽光および後続車のヘッドライトによる光の反射が運転者の視界に最も影響を及ぼすものである。したがって、本態様の車両用内装材をインストルメントパネルに適用することにより、優れた反射率低減効果を奏することができ、インストルメントパネル表面からの反射光を低減し、フロントガラスへのインストルメントパネル像の映り込みを防止することができるからである。
また、インストルメントパネルは、一般に、濃彩色を呈するものが多いところ、本態様の車両用内装材は、着色樹脂基体が濃彩色に近い色であるほど、表面への光の吸収率が高まり、高い反射率低減効果が得られることから、本態様の車両用内装材をインストルメントパネルとして用いることで、本発明の効果をより発揮することができるからである。
インストルメントパネルとは、フロントガラス下に運転席前方から助手席前方にかけて配置される車両用内装材(計器および操作盤を除く)全てを指すものとする。後述する車両用内装材の第2態様においても同様とする。
II.第2態様
本発明の車両用内装材の第2態様(以下、この項において本態様と称する場合がある。)は、着色樹脂基体と、上記着色樹脂基体上に形成された透明フィルム層と、を有し、上記透明フィルム層の表面に上記低反射構造部を有することを特徴とするものである。
本態様の車両用内装材について図面を参照しながら説明する。図6は、本態様の車両用内装材の一例を示す概略断面図である。図6に例示するように、本態様の車両用内装材10は、芯材11と、芯材11の一方の表面に形成された中間層12と、中間層12の芯材11と接する面と対向する表面上に形成された表皮層13とから構成される着色樹脂基体1、および、着色樹脂基体1の表皮層13上に形成された透明フィルム層5を有するものである。透明フィルム層5は、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の突起部を備える低反射構造部3を表面に有している。
本態様によれば、表面に所定の低反射構造部を有する透明フィルム層が着色樹脂基体上に形成されていることで、上記低反射構造部を構成する突起部において光を多数回反射させて透明フィルム層内に吸収させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
さらに、本態様においては、上記低反射構造部を構成する多数の突起部が所定のばらつきを有することで、上記突起部、中でも、突起部の頂部において、多数回反射により透明フィルム層内への光の吸収量を増加させるのに加えて、突起部の形状により入射光をミー散乱させることで、透明フィルム層内への光の吸収量をさらに増加させて、反射率をより低減させることが可能となる。
これは、ミー散乱が「前方散乱が強い」、「波長依存性が小さい」といった特徴を有することによるものである。つまり、ミー散乱は前方散乱が強いため、突起部に入射した光は透明フィルム層内で散乱されることになり、散乱光を透明フィルム層内へ吸収させることができるからである。また、ミー散乱は波長依存性が小さいため、可視光領域380nm〜780nmの全域の波長の光を散乱させることができ、上記領域の波長の散乱光を透明フィルム層内に吸収させることが可能となるからである。
このように、上記低反射構造部では、所望のばらつきを有する多数の突起部により、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することが可能となることから、上記低反射構造部を有する上記透明フィルム層を着色樹脂基体上に形成することにより、上記透明フィルム層と上記着色樹脂基体との境界面における全反射を低減することができる。
また、本態様の車両用内装材は、上記透明フィルム層における上記低反射構造部が、上述したように入射した光をミー散乱させる構造を有することから、入射した光の後方散乱が少なくなり、上記着色樹脂基体表面への光の吸収率を高めることができる。このため、本態様の車両用内装材は、発色性を向上することができる。
したがって、本態様の車両用内装材は、表面に所定の低反射構造部を有する透明フィルム層が着色樹脂基体上に形成されていることで、上記着色樹脂基体の色彩および明度によらず、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を奏することができる。このため、本発明の車両用内装材は、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することができる。
以下、本態様の車両用内装材における各構成について説明する。
1.透明フィルム層
本態様における透明フィルム層は、着色樹脂基材上に形成され、表面に低反射構造部を有する。
(1)低反射構造部
上記低反射構造部は、透明フィルム層の表面に形成されており、多数の突起部を備えるものである。上記多数の突起部は、形状および配置位置に所定のばらつきを有する。
上記低反射構造部は、透明フィルム層の表面に形成されていることで、上述の「I.第1態様 1.低反射構造部」の項で説明した機能や効果に加え、入射光を上記透明フィルム層内でミー散乱させて、光の吸収量を増加させることができるという利点を有する。
本態様において、低反射構造部に備わる多数の突起部が有する所定のばらつき、ならびに、上記所定のばらつきを規定するためのパラメータおよびその定量化方法等については、上述の「I.第1態様 1.低反射構造部 (1)突起部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本態様における低反射構造部および突起部の、その他詳細については、上述の「I.第1態様 1.低反射構造部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)透明フィルム層の仕様
上記透明フィルム層は、一方の表面に上記低反射構造部を有する低反射構造部層単層からなる第1仕様であってもよく、透明基材と、上記透明基材上に形成され、一方の表面に上記低反射構造部を有する低反射構造部層と、を有する第2仕様であってもよい。
以下、本態様における透明フィルム層について、仕様ごとに説明する。
(a)第1仕様
上記透明フィルム層の第1仕様(以下、この項においては「本仕様」と称する場合がある。)は、一方の表面に上記低反射構造部を有する低反射構造部層単層からなるものである。
上記低反射構造部層の材料は、表面に上述の「I.第1態様 1.低反射構造部」の項で説明した低反射構造部を形成することが可能なものであればよく、例えばアクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂の硬化物、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂の硬化物、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料、および各種硬化形態の賦形用樹脂の硬化物等を使用することができる。
なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
上記低反射構造部層は、必要に応じて任意の材料を含んでいてもよい。任意の材料としては、例えば屈折率調整剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。屈折率調整剤としては、例えば特開2013−142821号公報等に開示される低屈折率材が挙げられる。
上記低反射構造部層の厚さは特に限定されず、使用する材料、要求される強度等を考慮して適宜設定することができ、例えば3μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも5μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
上記低反射構造部層の厚さは、突起部が形成されていない側の表面から上記突起部の頂部のうち最も高い位置までの長さの平均をいう。
上記低反射構造部層は、着色樹脂基体表面に配置した際に上記着色樹脂基体の色彩を鮮明に視認可能とするために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が80%以上であることが好ましく、中でも85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
本明細書内において光透過率は、分光光度計 U−4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)により測定された値である。
(b)第2仕様
上記透明フィルム層の第2仕様(以下、この項においては「本仕様」と称する場合がある。)は、透明基材と、上記透明基材上に形成され、一方の表面に上記低反射構造部を有する低反射構造部層と、を有する。上記低反射構造部は、低反射構造部層の上記透明基材側とは反対側の面に有する。
本仕様における低反射構造部層については、上述の「(a)第1仕様」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本仕様における透明基材の材料は、所望の光透過性を示し、所望の屈折率を有する透明基材を得ることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂等が硬化した硬化樹脂等が挙げられる。
具体的には、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン等を挙げることができる。
上記透明基材は、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
上記透明基材は、可撓性を有する板状、シート状、フィルム状等の各種態様のものを用いることができる。
上記透明基材は、可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が、上述の「(a)第1仕様」の項で説明した低反射構造部層の光透過率と同様の範囲にあることが好ましい。上記透明基材が上述した光透過性を有することにより、本仕様の透明フィルム層に取り込まれた光が着色樹脂基体表面に吸収され、上記着色樹脂基体の色彩および模様等の視認性を高めることができるからである。
上記透明基材の屈折率は、上記透明基材上に形成される上記低反射構造部層の屈折率と同程度であることが好ましい。上記低反射構造部層と上記透明基材との屈折率が大きいと、上記低反射構造部層および上記透明基材の界面に屈折率の不連続界面が形成されることになり、上記不連続界面において光が反射されることで、上記低反射構造部層による反射率低減効果が損なわれて、車両用内装材の色彩および模様等の視認性が低下するからである。
上記低反射構造部層と上記透明基材との屈折率差(絶対値)は、0〜0.5の範囲内であることが好ましく、中でも0〜0.2の範囲内であることが好ましく、特に0〜0.1の範囲内であることが好ましい。
(3)透明フィルム層の光学特性
上記透明フィルム層の、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差、および、最大反射率は、上述の「I.第1態様 1.低反射構造部 (2)低反射構造部における光学特性」の項で説明した5°正反射率と65°反射率との差、および、最大反射率と同様の範囲内とすることができる。中でも、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であり、かつ最大反射率が2.0%以下であることが好ましい。上記車両用内装材の形状により視認する角度が大きく異なる場合であっても、所定の低反射構造部を有する透明フィルム層により優れた反射率低減効果を奏することが可能となるからである。
また、上記透明フィルム層は、ヘイズ値が70%以上95%以下の範囲内であることが好ましい。具体的には、ヘイズ値が70%以上であることが好ましく、中でも80%以上であることが好ましい。上記透明フィルム層のヘイズ値が高いほど、上記透明フィルム層内において光の散乱を増大させることが可能となり、上記透明フィルム層と上記着色樹脂基体表面との境界面における全反射を防ぐことができるからである。また、これにより、本態様の車両用内装材において、着色樹脂基体表面の模様の視認性や着色樹脂基体が呈する色の発色性が向上するからである。
上記ヘイズ値は、透明フィルム層としての値であり、ヘイズメーター(ヘイズガード (株)東洋精機製作所製)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
(4)透明フィルム層の製造方法
上記透明フィルム層の製造方法は、一方の表面に所定のばらつきを有する多数の突起部を備える低反射構造部を形成することが可能な方法であれば、特に限定されず、上記透明フィルム層の仕様に応じて適宜選択することができる。以下、本態様における透明フィルム層の製造方法の例を説明する。
(a)製造方法の第1例
本態様における透明フィルム層の製造方法は、例えば、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に多数の凹型錐状構造体が形成されたソフトモールドを形成する転写版準備工程、上記ソフトモールドの上記凹型錐状構造体が形成された表面に低反射構造部層用組成物を塗布し、塗布層を形成する塗布工程、および、上記塗布層上に透明基材を配置して上記塗布層を硬化した後、上記ソフトモールドを剥離して、上記透明基材上に、低反射構造部を有する低反射構造部層を形成する賦形工程を有することができる。
上記製造方法により、第2仕様の透明フィルム層を得ることができる。
(a)転写版準備工程
本工程は、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に多数の凹型錐状構造体が形成されたソフトモールドを形成する工程である。
まず、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を準備する。上記凸型錐状構造体は、上述の「I.第1態様 1.低反射構造部 (1)突起部」の項で説明した突起部の形状に対応し、上記の項で説明した3つのパラメータの定量化により規定された所定のばらつきを有する。
また、多数の凸型錐状構造体の集合体と、低反射構造部層の表面に形成される低反射構造部とが対応関係にある。
上記転写原版の材質は、所定のばらつきを有する凸型錐状構造体の形成が可能なものであれば特に限定されず、例えば、金属、樹脂等が挙げられるが、中でも耐久性の観点から金属が好ましい。
上記転写原版の製造方法は、形状および配置位置に所定のばらつきを有する凸型錐状構造体を表面に賦形可能な方法であれば特に限定されない。上記転写原版は、例えば、ステンレス板の表面をブラスト加工し、ステンレス板の加工表面に対して、段階的に電流値を小さくしながら電解めっき処理を施すことにより形成することができる。電解めっき処理は、例えば電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解スズめっき等による処理が挙げられる。
このときブラスト加工によりステンレス板の表面粗さを調整することで、上記凸型錐状構造体の大きさ、配置間隔、および頂部の方向性を調整することができる。また、電解めっき処理時に、段階的に電流値を小さくする割合を調整することにより、上記凸型錐状構造体の高さを調整することができる。
次に、得られた転写原版の上記凸型錐状構造体が形成された面上に、硬化性樹脂を含むソフトモールド形成用組成物を塗布し、塗布層を硬化してソフトモールドを転写形成する。このとき、上記ソフトモールドの一方の表面には、上記凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体が多数形成される。
上記ソフトモールド形成用組成物に含まれる硬化性樹脂は、上記転写原版の凸型錐状構造体の形状を精度良く転写することが可能な樹脂であればよく、例えば、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が用いられる。また、必要に応じて上述の「(2)透明フィルム層の仕様 (a)第1仕様」の項で挙げた任意の材料を含んでいてもよい。
上記ソフトモールド形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、一般に樹脂製原版の形成の際に用いられる方法と同様とすることができる。
(b)塗布工程
本工程は、上記ソフトモールドの上記凹型錐状構造体が形成された表面に低反射構造部層用組成物を塗布し、塗布層を形成する工程である。
上記低反射構造部層用組成物は、上述した「(2)透明フィルム層の仕様 (a)第1仕様」の項で説明した低反射構造部層の材料を含む。上記低反射構造部層用組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知の樹脂組成物の塗布方法を適用することができる。
塗布層の厚さは、硬化後厚さが所望の低反射構造部層の厚さとなるように適宜設計することができる。
(c)賦形工程
本工程は、上記塗布層上に透明基材を配置して上記塗布層を硬化した後、上記ソフトモールドを剥離して、上記透明基材上に、低反射構造部を有する低反射構造部層を形成する工程である。
本工程により、一方の表面に所定のばらつきを有する多数の突起部を備える低反射構造部を有する低反射構造部層が、上記透明基材上に形成される。上記突起部は、上記転写原版の凸型錐状構造体と、形状および配置位置のばらつきが対応する。
上記塗布層の硬化方法および硬化条件は、上記低反射構造部層用組成物に含有される材料の種類に応じて適宜選択することができる。上記低反射構造部層用組成物が電離放射線硬化性樹脂を含む場合であれば、例えば、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、熱硬化性樹脂を含む場合であれば、例えば、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記低反射構造部層用組成物が熱可塑性樹脂を含む場合であれば、例えば、冷却ロールなどを接触させる冷却法等が挙げられる。
(2)製造方法の第2例
本態様における透明フィルム層の製造方法の例としては、例えば、上述の転写版準備工程で得たソフトモールドをロールに巻きつけて転写ロールとし、上記転写ロールで、透明基材上に形成された低反射構造部層用組成物の塗布層を押圧すると同時に上記塗布層を硬化して、上記透明基材上に上記低反射構造部層を形成する方法を用いることができる。
塗布層の硬化方法は特に限定されず、例えば、上記低反射構造部層用組成物が紫外線硬化性樹脂を含む場合は、押圧と同時に紫外線を照射して硬化することができる。
上記製造方法により、第2仕様の透明フィルム層を製造することができる。
2.着色樹脂基体
本態様における着色樹脂基体は、一般に車両用内装材として用いられる汎用のものを用いることができ、例えば、1種以上の樹脂に着色剤が配合されてなる単体であってもよく、複数の樹脂基体からなり、少なくとも最外となる上記樹脂基体が着色された複合体であってもよい。
上述の「I.第1態様 2.車両用内装材」の項で説明したように、車両用内装材の着色樹脂基体は、通常、上述した濃彩色を呈するが、本態様においては、上記着色樹脂基体は、濃彩色であってもよく、淡彩色であってもよい。
上記着色樹脂基体が淡彩色を呈する場合、濃彩色に比べて着色樹脂基体表面での光の反射が特に問題となりやすい。しかし、本態様においては、上記低反射構造部を有する透明フィルム層が上記着色樹脂基体の表面に配置されていることで、上述の理由から、上記透明フィルム層と上記着色樹脂基体との境界面における全反射を低減することができ、淡彩色の着色樹脂基体であっても、優れた反射率低減効果を奏することができる。このため、本態様においては、濃彩色から淡彩色までに至る幅広い色彩を着色樹脂基体の色として適用することができるのである。
ここで、淡彩色とは、シルバーグレイ、アイボリー、桜色、肌色、若葉色、ライラック、水色等の色をいう。より具体的には、淡彩色とは、純粋な白色(純白)、スノーホワイト、黄みの白である黄白色(卵色、クリームイエロー、レグホーン、ネープルスイエロー、カナリーイエロー、中黄、蒲公英色、刈安色、黄檗色)、赤みの白である赤白色(桃色、鴇色、桜色、珊瑚色、ベビーピンク、シェルピンク、ネールピンク、ピーチ)、青みの白である青白色(白群、甕覗き、水色、空色、勿忘草色、ホライゾンブルー、ベビーブルー)、緑みの白である緑白色(白緑、アップルグリーン、ミントグリーン、抹茶色、若葉色、シャトルーズグリーン、シーグリーン)、紫みの白である紫白色(ヒヤシンス、藤色、藤紫、ライラック、オーキッド)、茶色みの白である茶白色(黄成色、象牙色、アイボリー、砂色、肌色、エクルベージュ、ベージュ、芥子色)、黒みの白である灰色(銀鼠、鼠色、パールグレイ、シルバーグレイ、スカイグレイ)、銀色みの白である銀白色、金色みの白である金白色などの有彩色で白っぽい色、および無彩色で白っぽい色、も含むものとする。本明細書内における「淡彩色」とは、上述した色をいうものとする。
本態様における着色樹脂基体については、上述の「I.第1態様 2.車両用内装材」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様において、上記着色樹脂基体が、表皮層、中間層、および芯材から構成されることが好ましい。その理由については、上記項で説明した理由と同様である。また、着色樹脂基体を構成する表皮層、中間層、および芯材については、上記項で説明した各部材と同様である。
本態様における着色樹脂基体が、表皮層、中間層、および芯材から構成される場合、上記表皮層は、表皮層単層からなるものであってもよく、着色フィルムと表皮層用基材との2層からなるものであってもよい。
なお、本態様における着色樹脂基体を構成する表皮層は、表面に低反射構造部が直接形成されない点が、上述の「I.第1態様 2.車両用内装材」の項で説明した表皮層と相違する。
上記着色樹脂基体の製造方法は、公知の車両用内装材の製造方法と同様とすることができる。
3.その他
本態様の車両用内装材は、透明フィルム層および着色樹脂基体の他に、必要に応じて、意匠層や、消音、赤外線反射、放熱等の機能性層を有していてもよい。これらの層は、着色樹脂基体と透明フィルム層の間に形成されることが好ましい。上記透明フィルム層が有する上記低反射構造部の効果を十分に発揮することができるからである。
4.製造方法
本態様の車両用内装材の製造方法は、着色樹脂基体表面に、低反射構造部を有する透明フィルム層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。
上記製造方法としては、例えば、低反射構造部を形成した透明フィルム層を車両用内装材成形用の射出成形用金型にインサートし、着色樹脂基体を射出成形すると同時に上記透明フィルム層を上記着色樹脂基体の表面に配置する方法、車両用内装材成形用の射出成形用金型を用いて所望の形状に着色樹脂基体を成形し、上記着色樹脂基体の表面に、低反射構造部を形成した透明フィルム層を貼合する方法等が挙げられる。
上記着色樹脂基体の製造方法は、一般的な車両用内装材の製造方法と同様とすることができる。上記着色樹脂基体の表面に低反射構造部を有している場合は、「I.第1態様 3.製造方法」の項で説明した方法を用いることができる。
5.用途
本態様の車両用内装材の用途は、「I.第1態様 4.用途」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本態様の車両用内装材は、濃彩色を呈する場合だけでなく淡彩色を呈する場合であっても、表面に低反射構造部を有する透明フィルム層により、優れた反射率低減効果を奏するとともに、上記車両用内装材の色彩や模様等の視認性を向上することができる。よって、本態様の車両用内装材は濃彩色だけでなく、それ以外の幅広い色彩の呈色が要求される用途にも、好適に用いることが可能である。
B.車両用内装材用フィルム
本発明の車両用内装材用フィルムは、透明樹脂層の少なくとも一方の表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する車両用内装材用フィルムであって、上記突起部の底面は、上記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部の重心間距離(以下、最近接重心間距離と称する場合がある。)の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000nm以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とするものである。
本発明の車両用内装材用フィルムは、例えば、図6で例示した透明フィルム層5と同様の構造とすることができる。
本発明によれば、車両用内装材用フィルムの表面に所定の低反射構造部を有することで、上記低反射構造部を構成する突起部において光を多数回反射させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
このため、本発明の車両用内装材用フィルムは、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を奏することができ、本発明の車両用内装材用フィルムを車両用内装材の表面に配置することにより、太陽光および後続車のヘッドライト等の光の反射による眩しさを低減し、窓への内装材等の映り込みを防止することができる。
加えて、本発明の車両用内装材用フィルムは、上述の「A.車両用内装材 II.第2態様 1.透明フィルム層」の項で説明した透明フィルム層と同様の機能を有することができる。
すなわち、本発明の車両用内装材用フィルムは、上述の低反射構造部により、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することが可能となることから、車両用内装材の表面に配置することにより、上記車両用内装材との境界面における全反射を低減することができる。
また、本発明の車両用内装材用フィルムは、上述の「A.車両用内装材 II.第2態様 1.透明フィルム層」の項で説明したように、上記低反射構造部が、上述したように入射した光をミー散乱させる構造を有する。これにより、入射した光の後方散乱が少なくなり、車両用内装材の表面への光の吸収率を高めることができる。このため、本発明の車両用内装材用フィルムは、上記車両用内装材の発色性を向上させることができる。
本発明の車両用内装材用フィルムは、上述の「A.車両用内装材 II.第2態様 1.透明フィルム層」の項で説明した透明フィルム層と同様とすることができる。
本発明の車両用内装材用フィルムにおける低反射構造部の詳細については、上述の「A.車両用内装材 I.第1態様 1.低反射構造部」および「A.車両用内装材 II.第2態様 1.透明フィルム層 (1)低反射構造部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の車両用内装材用フィルムは、一方の表面に上記低反射構造部を有する透明樹脂層単層からなる第1仕様であってもよく、透明基材と、上記透明基材上に形成され、一方の表面に上記低反射構造部を有する透明樹脂層と、を有する第2仕様であってもよい。
各仕様における透明樹脂層および透明基材については、上述の「A.車両用内装材 II.第2態様 1.透明フィルム層 (2)透明フィルム層の仕様」の項で説明した低反射構造部層および透明基材と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の車両用内装材用フィルムの光学特性については、上述の「A.車両用内装材 II.第2態様 1.透明フィルム層 (3)透明フィルム層の光学特性」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
中でも、本発明の車両用内装材用フィルムは、上記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であり、かつ、最大反射率が2.0%以下であることが好ましい。本発明の車両用内装材用フィルムを車両用内装材の表面に配置した際に、上記車両用内装材の形状により視認する角度が大きく異なる場合であっても、優れた反射率低減効果を奏することが可能となるからである。
本発明の車両用内装材用フィルムは、低反射構造部を有する面と対向する面側に接着層を有していてもよい。
本発明の車両用内装材用フィルムの製造方法は、上述の「A.車両用内装材 II.第2態様 1.透明フィルム層 (4)透明フィルム層の製造方法」の項で説明した製造方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明の車両用内装材用フィルムは、車両用内装材の表面に配置することにより、優れた反射率低減効果を奏することができる。上記車両用内装材として、具体的には、上述の「A.車両用内装材 I.第1態様 4.用途」および「A.車両用内装材 II.第2態様 5.用途」の項で説明したものが挙げられる。
さらに、本発明の車両用内装材用フィルムは、フロントガラス等の車両用窓ガラスの内面(車室内側に位置する面)に貼合して反射防止フィルムとして使用することもできる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1〜4]
以下の方法で、車両用内装材(第1態様)を得た。
(転写原版A〜Dの作製)
ステンレス板にブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表1に示す各値となるように仕上げた。次に、下記の組成を含有するめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表1に示す条件で、電流密度を開始値(A/dm)から終了値(A/dm)まで1分毎のステップで所定値(A/dm)ずつ小さくして、ステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、上記加工面上に黒色クロムめっき膜を形成した。これにより、多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版A〜Dをそれぞれ得た。
なお、転写原版Aにおける多数の凸型錐状構造体は、転写原版Aを元に形成される低反射構造部部材Aにおける多数の突起部の形状およびそのばらつきと、対応関係にあった。転写原版B〜Dについても同様であった。
(めっき浴の組成)
・塩化クロム:200g/dm(0.75mol/dm
・塩化アンモニウム:30g/dm(0.56mol/dm
・シュウ酸:3g/dm(0.024mol/dm
・炭酸バリウム:5g/dm(0.025mol/dm
・ホウ酸:30g/dm(0.49mol/dm
・フッ化バリウム:10g/dm(0.057mol/dm
(第1ソフトモールドa〜dの作製)
転写原版A〜Dを用い、各転写原版の上記版面上に下記の組成から成る紫外線硬化型のソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚さ0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(パンライト(登録商標)フィルム 帝人化成(株)製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射して硬化した後、転写原版を剥離した。これにより、転写原版の凸型錐状構造体の反転形状である多数の凹型錐状構造体を版面に有する第1ソフトモールドa〜dをそれぞれ得た。
<ソフトモールド形成用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
(第2ソフトモールドa〜dの作製)
第1ソフトモールドa〜dを用い、各第1ソフトモールドの上記版面上に、同一組成の上記ソフトモールド形成用組成物を塗布し、上記PCフィルムで挟んで上記PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をして硬化した後、第1ソフトモールドを剥離した。これにより、第1ソフトモールドの凹型錐状構造体の反転形状である多数の凸型錐状構造体を版面に有する第2ソフトモールドa〜dをそれぞれ得た。
第2ソフトモールドaの凸型錐状構造体は、元となる転写原版Aの凸錐状構造体と対応した。第2ソフトモールドb〜dについても同様であった。
(電鋳版A’〜D’の作製)
第2ソフトモールドa〜dを用い、各第2ソフトモールドの上記版面上に、下記組成を含有するめっき浴を用い、陽極として精錬ニッケル電極を用いて、下記の条件で電解めっき処理を施し、第2ソフトモールドの凸型錐状構造体の反転形状である多数の凹型錐状構造体を版面に有するニッケル電鋳版(厚み約3mm)A’〜D’をそれぞれ得た。
<電解めっき処理条件>
・温浴の温度:45±5℃
・平均電流密度:5A/dm
・通電時間:約50時間
<めっき浴の組成>
・スルファミン酸ニッケル:450g/dm
・ホウ酸:40g/dm
・ラウリル硫酸ナトリウム:0.15g/dm
・フッ化バリウム:10g/dm
(黒色低反射構造部部材A〜Dの作製)
得られたニッケル電鋳版A’〜D’を用い、各ニッケル電鋳版を射出成形用金型に賦し、下記の組成から成る低反射構造部用組成物を射出して、表面に多数の突起部を備える黒色低反射構造部部材A〜Dをそれぞれ得た。上記黒色低反射構造部部材は、後述するインストルメントパネルに付すことで、車両用内装材の第1態様における低反射構造部と擬した。
<黒色低反射構造部用組成物>
・ABS樹脂(デンカ透明ABS樹脂 電気化学工業(株)製) … 99質量%
・カーボンブラック(三菱カーボンブラック#970 三菱化学(株)製) … 1質量%
(透明低反射構造部部材(評価用サンプル)A〜Dの作製)
ヘイズ値測定用の評価用サンプルとして、黒色低反射構造部部材A〜Dの作製に使用した上記射出成形用金型に、ABS樹脂のみを射出して、表面に多数の突起部を備える透明低反射構造部部材A〜Dをそれぞれ得た。
(第1態様の車両用内装材A〜Dの作製)
黒色低反射構造部部材A〜Dをそれぞれ、プジョー207 ベースグレード(2007年型)と同型のインストルメントパネルの計器盤の上部を覆う部分に配置し、セメダイン(登録商標)超多用途接着剤 スーパーXクリア AX−041を用いて貼付して、表面に低反射構造部を有するインストルメントパネルA〜Dをそれぞれ得た。
[比較例1〜3]
以下の方法で、車両用内装材(第1態様)を得た。
(転写原版E〜Gの作製)
ステンレス板にブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表1に示す各値となるように仕上げた。次に、実施例1と同様の方法により、多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版E〜Gをぞれぞれ得た。
なお、転写原版Eにおける多数の凸型錐状構造体は、転写原版Eを元に形成される低反射構造部部材Eにおける多数の突起部の形状およびそのばらつきと、対応関係にあった。転写原版F〜Gについても同様であった。
(第1ソフトモールドe〜gおよび第2ソフトモールドe〜gの作製)
転写原版Aにかえて、転写原版E〜Gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多数の凹型錐状構造体を版面に有する第1ソフトモールドe〜gをそれぞれ得た。
また、第1ソフトモールドaにかえて、第1ソフトモールドe〜gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多数の凸型錐状構造体を版面に有する第2ソフトモールドe〜gをそれぞれ得た。
第2ソフトモールドeの凸型錐状構造体は、元となる転写原版Eの凸錐状構造体と対応した。第2ソフトモールドf〜gについても同様であった。
(電鋳版E’〜G’の作製)
第2ソフトモールドaにかえて、第2ソフトモールドe〜gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多数の凹型錐状構造体を版面に有するニッケル電鋳版(厚み約3mm)E’〜G’をそれぞれ得た。
(黒色低反射構造部部材E〜Gの作製)
ニッケル電鋳版A’にかえて、ニッケル電鋳版E’〜G’を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、表面に多数の突起部を備える黒色低反射構造部部材E〜Gをそれぞれ得た。上記黒色低反射構造部部材は、後述するインストルメントパネルに付すことで、車両用内装材の第1態様における低反射構造部と擬した。
(透明低反射構造部部材(評価用サンプル)E〜Gの作製)
ヘイズ値測定用の評価用サンプルとして、黒色低反射構造部部材E〜Gの作製に使用した射出成形用金型に、ABS樹脂のみを射出して、表面に多数の突起部を備える透明低反射構造部部材E〜Gをそれぞれ得た。
(第1態様の車両用内装材E〜Gの作製)
黒色低反射構造部部材E〜Gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面に低反射構造部を有するインストルメントパネルE〜Gを得た。
[実施例5〜11]
以下の方法で、車両用内装材(第2態様)を得た。
(転写原版H〜Nの作製)
ステンレス板にブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表3に示す各値となるように仕上げた。次に、転写原版Aの作製時に用いためっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表3に示す条件で、電流密度を開始値(A/dm)から終了値(A/dm)まで1分毎のステップで所定値(A/dm)ずつ小さくして、ステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、上記加工面上に黒色クロムめっき膜を形成した。これにより、多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版H〜Nをそれぞれ得た。
転写原版Hにおける多数の凸型錐状構造体は、転写原版Hを元に形成される透明フィルム層Hにおける多数の突起部の形状およびそのばらつきと、対応関係にあった。転写原版I〜Nについても同様であった。
(ソフトモールドh〜nの作製)
転写原版Aにかえて、転写原版H〜Nを用いたこと以外は、実施例1における第1ソフトモールドの作製と同様にして、転写原版の凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体が多数形成された版面を有するソフトモールドh〜nをそれぞれ得た。
(透明フィルム層H〜Nの作製)
得られたソフトモールドh〜nを用い、各ソフトモールド上記版面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型の低反射構造部層用組成物を塗布し、塗布面上に二軸延伸ポリエステルフィルム(アクリプレン(登録商標) HBA002 三菱レイヨン(株)製)を配置した。上記フィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をして、上記低反射構造部層用組成物を硬化した。その後、上記ソフトモールドを剥離した。これにより、表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する透明フィルム層H〜Nをそれぞれ得た。
得られた透明フィルム層は、本発明の車両用内装用フィルムに相当した。
<低反射構造部層用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
(第2態様の車両用内装材H〜Nの作製)
透明フィルム層H〜Nをそれぞれ、プジョー207 ベースグレード(2007年型)と同型のインストルメントパネルの計器盤の上部を覆う部分に配置し、実施例1で用いたセメダインを用いて貼付して、表面に低反射構造部を有するインストルメントパネルH〜Nを得た。
[比較例4〜7]
以下の方法で、車両用内装材(第2態様)を得た。
(転写原版O〜Rの作製)
ステンレス板にブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表3に示す各値となるように仕上げた。次に、実施例5と同様の方法により、多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版O〜Rをぞれぞれ得た。
転写原版Oにおける多数の凸型錐状構造体は、転写原版Oを元に形成される透明フィルム層Oにおける多数の突起部の形状およびそのばらつきと、対応関係にあった。転写原版P〜Rについても同様であった。
(ソフトモールドo〜rの作製)
転写原版Hにかえて、転写原版O〜Rを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、転写原版の凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体が多数形成された版面を有するソフトモールドo〜rをそれぞれ得た。
(透明フィルム層O〜Rの作製)
ソフトモールドhにかえて、ソフトモールドo〜rを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する透明フィルム層O〜Rをそれぞれ得た。
(第2態様の車両用内装材O〜Rの作製)
透明フィルム層O〜Rをそれぞれ、プジョー207 ベースグレード(2007年型)と同型のインストルメントパネルの計器盤の上部を覆う部分に配置し、実施例1で用いたセメダインを用いて貼付して、表面に低反射構造部を有するインストルメントパネルO〜Rを得た。
[評価1]
実施例1〜4および比較例1〜3で得た黒色低反射構造部部材A〜DおよびE〜G、ならびに、実施例5〜11および比較例4〜7で得た透明フィルム層H〜NおよびO〜Rについて、以下の条件にてSEM観察を行い、平面視SEM像から突起部の底面の最大幅の平均および分散、突起部の最近接重心間距離の平均および分散、ならびに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|値および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|値を求めた。
各パラメータの定量化は、実施例1〜4および比較例1〜3で得られた黒色低反射構造部部材については、表面に形成された多数の突起部の中から表1に示す点数を抽出して行った。また、実施例5〜11および比較例4〜7で得られた透明フィルム層については、表面に形成された多数の突起部の中から表3に示す点数を抽出して行った。
平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化は、上述の「I.第1態様 1.低反射構造部 (1)突起部 (a)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により行い、突起部の根元の近似形状は八角形とした。
(SEM観察条件)
・SEM:電界放出形走査電子顕微鏡 S−4500((株)日立ハイテクノロジーズ製)
・観察方法:Top−View(突起部を有する面側から)
・前処理:Pt−Pdスパッタ
・観察倍率:×20k
・視野範囲:縦4μm×横4μm
・アングル:0°,30°
[評価2]
実施例1〜4および比較例1〜3で得た黒色低反射構造部部材A〜DおよびE〜G、ならびに、実施例5〜11および比較例4〜7で得た透明フィルム層H〜NおよびO〜Rについて、以下の条件にて最大反射率を計測した。実施例5〜11および比較例4〜7については、黒色層を下に配置した状態で測定を行った。
(条件)
・計測装置:紫外可視近赤外分光光度計 UV−3100PC((株)島津製作所製)
・計測方法:8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全方向の積算反射率
[評価3]
実施例1〜4および比較例1〜3で得た透明低反射構造部部材A〜DおよびE〜G、ならびに、実施例5〜11および比較例4〜7で得た透明フィルム層H〜NおよびO〜Rについて、以下の条件にてヘイズ値を計測した。
(条件)
・計測装置:ヘイズメーター HM−150((株)村上色彩技術研究所製)
・計測方法:JIS K7136に準拠した方法
[評価4]
実施例1〜4および比較例1〜3で得た黒色低反射構造部部材A〜DおよびE〜G、ならびに、実施例5〜11および比較例4〜7で得た透明フィルム層H〜NおよびO〜Rについて、以下の条件にて5°正反射率および65°反射率を計測した。
(条件)
・計測装置:紫外可視近赤外分光光度計 V−7100(日本分光(株)製)
・計測方法:検出器側の角度を5°に固定し、5°および65°の入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する5°正反射率および65°反射率を計測
[評価5]
実施例1〜11および比較例1〜7で得たインストルメントパネルについて、以下の方法により、ヘッドライトの反射光による防眩性を評価した(防眩性評価1)。
(評価方法)
トヨタ クラウン GRS200(2013年型)用のヘッドライトを、インストルメントパネルから15mの位置に配置して照射した。被験者(5名)は運転時を想定してインストルメントパネルに向かって座り、目視により低反射構造部の有無による防眩性を比較評価した。
参照例として、低反射構造部および透明フィルム層を付す前のインストルメントパネル(プジョー207 ベースグレード(2007年型)と同型のインストルメントパネル)を用いて、同様の方法で防眩性を確認し、このときの防眩性を基準(△)とした。
実施例1〜11および比較例1〜7で得たインストルメントパネルの防眩性について、上記基準と対比し、以下の項目で判定した。
◎ … 基準に比べて眩しさを全く気にすることなく、防眩性が非常に良好。
○ … 基準に比べて眩しさを気にすることなく、防眩性が良好。
△ … 基準並み。
[評価6]
実施例1〜11および比較例1〜7で得たインストルメントパネルについて、以下の方法により、ヘッドライトの反射光によるフロントガラスへのインストルメントパネル像の映り込みを評価した(防眩性評価2)。評価に際し、フロントガラスの代わりに透明アクリル板を配置した。
(評価方法)
トヨタ クラウン GRS200(2013年型)用のヘッドライトを、インストルメントパネルから15mの位置に配置して照射した。被験者(5名)は運転時を想定してインストルメントパネルに向かって座り、目視により、透明アクリル板へのインストルメントパネル像の映り込みを確認した。
参照例として、低反射構造部および透明フィルム層を付す前のインストルメントパネル(プジョー207 ベースグレード(2007年型)と同型のインストルメントパネル)を用いて、同様の方法で透明アクリル板へのインストルメントパネル像の映り込みを確認し、このときの映り込みの程度を基準(△)とした。
実施例1〜11および比較例1〜7で得たインストルメントパネルを用いた場合の、透明アクリル板へのインストルメントパネル像の映り込みについて、上記基準と対比し、以下の項目で判定した。
◎ … 基準に比べて映り込みを全く気にすることなく、非常に良好。
○ … 基準に比べて映り込みを気にすることなく、良好。
△ … 基準並み。
評価1〜評価3の結果を、実施例1〜4および比較例1〜3については表1に示し、実施例5〜11および比較例4〜7については表3に示す。
また、評価4〜評価6の結果を、実施例1〜4および比較例1〜3については表2に示し、実施例5〜11および比較例4〜7については表4に示す。
表中のμは平均、σは分散を示す。また、表中の◎/○/△は、目視評価における◎、○および△の人数を順に示す。
1 … 着色樹脂基体
2 … 突起部
3 … 低反射構造部
5 … 透明フィルム層
10 … 車両用内装材
11 … 芯材
12 … 中間層
13 … 表皮材

Claims (6)

  1. 表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する車両用内装材であって、
    前記突起部の底面は、前記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、
    一の前記突起部および前記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の前記突起部の重心間距離の平均が400nm以下であり、前記重心間距離の分散が10000nm以上であり、
    前記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において前記突起部の底面の重心からの前記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、前記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、
    |Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ
    |Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすこと
    を特徴とする車両用内装材。
  2. 着色樹脂基体と、
    前記着色樹脂基体上に形成された透明フィルム層と、を有し、
    前記透明フィルム層の表面に前記低反射構造部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材。
  3. 前記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であり、かつ、最大反射率が2.0%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用内装材。
  4. 前記車両用内装材がインストルメントパネルであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の車両用内装材。
  5. 透明樹脂層の少なくとも一方の表面に多数の突起部を備える低反射構造部を有する車両用内装材用フィルムであって、
    前記突起部の底面は、前記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、
    一の前記突起部および前記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の前記突起部の重心間距離の平均が400nm以下であり、前記重心間距離の分散が10000nm以上であり、
    前記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において前記突起部の底面の重心からの前記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、前記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、
    |Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ
    |Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすこと
    を特徴とする車両用内装材用フィルム。
  6. 前記低反射構造部における5°正反射率と65°反射率との差が1.5%以下であり、かつ、最大反射率が2.0%以下であることを特徴とする請求項5に記載の車両用内装材用フィルム。
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