JP6805902B2 - 加飾成形品及びその製造方法、並びに転写シート - Google Patents

加飾成形品及びその製造方法、並びに転写シート Download PDF

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Description

本発明は、図柄を有する成形体が、光透過性を有し、かつ、マット部分を有する加飾フィルムで加飾された加飾成形品及びその製造方法、並びにこれに用いられる転写シートに関する。
家庭用電化製品や自動車内装品、雑貨品等の分野において、加飾フィルムを用いて、パネル等の物品の表面に装飾を施して、加飾成形品を得る場合がある。加飾フィルムを用いた加飾方法の1つとして、転写法が知られている。
転写法は、離型シート上に、所望の図柄や機能のパターンを備えた転写層を積層した転写シートを用いる方法である。具体的には、転写シートの転写層側の面を加飾対象の成形体の表面に密着させた後、離型シートを剥離することにより、転写層を成形体に転写し、転写層と成形体とが一体化された加飾成形品を得る方法である。この転写層が、加飾フィルムに相当する。
加飾成形品には、光透過性を有するものや、また、該成形品の内側に図柄を有しており、図柄部分までは光透過性を有しているような態様のものもある。
また、加飾フィルムの中には、光透過性を有し、かつ、マット部分を有しているタイプのもの(以下、「部分マットフィルム」と言う。)がある。例えば、特許文献1に、部分マット転写シートを用いて、このような部分マットフィルムで加飾された部分マット転写成形品が得られることが記載されている。
特許第5095598号公報
上記のような部分マット転写成形品においては、該成形品の内側に施されている図柄の輪郭と、その外面の部分マットフィルムのマット部分との位置を合わせるように形成することが難しい。また、フィルム面に対して垂直方向から見た場合に、両者に位置ずれがなく、一致している場合であっても、このような加飾成形品は、見る方向によっては、前記輪郭がくっきりと見える部分と、部分マットフィルムの凹凸面を介してぼやけて見える部分とが混在しているように見受けられることがある。このような見え方のばらつきは、不快な印象を与えやすく、加飾成形品の装飾性や意匠性を損なうことにもつながるものである。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、部分マットフィルムを用いた加飾成形品であって、優れた装飾性や意匠性を確保するために、該加飾成形品の内側に施されている図柄の輪郭の見え方のばらつきを抑制し、これによる不快感を緩和することができる加飾成形品、及びその製造方法、並びにこれに用いられる転写シートを提供することを目的とする。
本発明は、部分マットフィルムを用いた加飾成形品において、部分マットフィルムのマット部分と、該マット部分とは光沢感の異なる部分との境界領域に所定の中間領域を形成することにより、該加飾成形品の内側に施された図柄の輪郭の見え方のばらつきによる不快感を緩和することができることを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]成形体の表面に加飾フィルムを備えた加飾成形品であって、前記加飾成形品は、前記加飾フィルムのフィルム面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記2領域に接する第3領域を有し、かつ、前記第1領域又は前記第3領域の前記加飾成形品の表面以外の箇所に図柄を有し、前記図柄の輪郭が、前記第1領域と前記第2領域との境界線、又は前記第3領域と前記第2領域との境界線に合致しており、前記加飾フィルムは、前記図柄を有する領域及び前記第2領域において光透過性を有し、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra3よりも小さく、前記第2領域の幅W[mm]が下記式(1)で表される、加飾成形品。
0.2≦W<T・tan{sin-1(1/n)} …(1)
(式(1)において、T[mm]:前記図柄の輪郭から前記加飾成形品の表面までの距離、n:前記第2領域において前記図柄よりも前記加飾成形品の表面側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。)
[2]前記加飾フィルムは、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さが、前記第1領域側から前記第3領域側に向かって漸増している、上記[1]に記載の加飾成形品。
[3]前記図柄が、前記成形体の前記加飾フィルムとは反対側の面に形成されている、上記[1]又は[2]に記載の加飾成形品。
[4]離型シート上に、前記離型シートに接し、図柄を有する転写層を少なくとも備えた転写シートであって、前記転写層は、前記転写シートのシート面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記第2領域に接する第3領域を有しており、前記第1領域又は前記第3領域に図柄を有し、かつ、少なくとも前記第2領域は光透過性を有しており、前記図柄の輪郭が、前記第1領域と前記第2領域との境界線、又は前記第2領域と前記第3領域との境界線に合致しており、前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'3よりも小さく、前記第2領域が、下記式(2)で表される幅W1[mm]を有している、転写シート。
0.2≦W1<T1・tan{sin-1(1/n1)} …(2)
(式(2)において、T1[mm]:前記図柄の輪郭から前記転写層の前記離型シートに接する面までの距離、n1:前記第2領域において前記離型シート側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。)
[5]前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さが、前記第1領域側から前記第3領域側に向かって漸増している、上記[4]に記載の転写シート。
[6]上記[3]に記載の加飾成形品を製造する方法であって、離型シート上に、前記離型シートに接し、転写層を少なくとも備えた下記に示す構成を有する転写シートXを用いて、前記転写シートXの転写層側の面を成形体の表面に密着させた後、前記離型シートを剥離して、前記転写層が前記成形体に転写された加飾成形品を得る方法であり、前記成形体表面に前記転写シートXの転写層側の面を密着させた後、前記離型シートを剥離する工程と、前記成形体の前記転写層とは反対側の面に、前記転写層の第1領域と第2領域との境界線、又は第3領域と第2領域との境界線と、その輪郭が合致するように図柄を施す工程とを有し、前記転写シートXの前記第2領域の幅W2[mm]が下記式(3)を満たす、加飾成形品の製造方法。
0.2≦W2<T2・tan{sin-1(1/n2)} …(3)
(式(3)において、T2[mm]:前記図柄の輪郭から前記加飾成形品の表面までの距離、n2:前記第2領域において前記離型シート側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。)
<転写シートX>
転写シートXのシート面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記第2領域に接する第3領域を有する転写層を備え、前記転写層は、少なくとも第1領域及び前記第2領域において光透過性を有し、前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”3よりも小さい。
[7]上記[4]又は[5]に記載の転写シートの転写層側の面を、成形体の表面に密着させた後、前記離型シートを剥離して、前記転写層が前記成形体に転写された加飾成形品を得る、加飾成形品の製造方法。
本発明によれば、部分マットフィルムを用いた加飾成形品において、該加飾成形品の内側に施されている図柄の輪郭の見え方のばらつきが抑制され、この見え方のばらつきによる不快感を緩和することができる。したがって、本発明は、上記のような加飾成形品において、優れた装飾性や意匠性を確保することに寄与し得るものである。
また、所定の転写シートを用いた本発明の製造方法によれば、上記のような加飾成形品を好適に得ることができる。
本発明の一実施態様において図柄の輪郭の見え方を説明するための加飾成形品の部分概略断面図である。 加飾フィルムの第2領域のフィルム表面の表面粗さの測定を説明するための加飾フィルムの部分正面図である。
以下、本発明の加飾成形品及びその製造方法、並びに転写シートについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書中の「AA〜BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
[加飾成形品]
図1に、本発明の加飾成形品の一態様の表面の部分概略断面図を示す。図1に示す加飾成形品10は、加飾対象である成形体20の表面に加飾フィルム30を備えている。加飾成形品10は、該加飾フィルム30のフィルム面を区画する、第1領域A、第1領域Aに接する第2領域B、及び第2領域Bに接する第3領域Cを有している。そして、加飾成形品10は、第1領域Aの加飾成形品10の表面以外の箇所に図柄40を有し、図柄40の輪郭Pが、第1領域Aと第2領域Bとの境界線に合致している。
加飾フィルム30は、図柄40を有する領域(図1においては、第1領域A)及び第2領域Bにおいて光透過性を有し、第2領域BのJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra2が、第1領域AのJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra1よりも大きく、かつ、第3領域CのJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra3よりも小さい。
そして、加飾成形品10は、第2領域Bの幅W[mm]が下記式(1)で表されることを特徴とするものである。
0.2≦W<T・tan{sin-1(1/n)} …(1)
上記式(1)において、T[mm]は、図柄40の輪郭から加飾成形品10の表面までの距離を表し、nは、第2領域Bにおいて図柄40よりも加飾成形品10の表面側にあり、図柄40の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。
なお、図1の加飾成形品10においては、図柄40を有する領域が第1領域Aであるが、第3領域Cであってもよい。その場合には、図柄40の輪郭Pは、第3領域Cと第2領域Bとの境界線に合致するものとする。以下においては、代表例として、図柄40を有する領域が第1領域Aである場合について説明する。
加飾フィルム30は、少なくとも、図柄40を有する第1領域A、及び第2領域Bにおいて光透過性を有する。すなわち、加飾成形品10の外観上、第1領域A及び第2領域Bにおいて、図柄40を視認し得る。第3領域Cは、光透過性を有していても、有していなくてもよい。各領域は、着色されていてもよい。
図柄40は、絵や文字、図形、記号、模様等のいずれであってもよい。なお、本発明は、図柄40の輪郭の見え方を改善するものであり、第3領域Cにも図柄を有していてもよい。
また、図柄40は、加飾成形品10の表面以外の箇所、すなわち、加飾成形品10のうちの加飾フィルム30の最表面よりも成形体側に施されているものとする。図柄40は、加飾フィルム30に施されていても、成形体20に施されていてもよい。図柄40の輪郭Pから加飾成形品10の表面までの距離がある場合に、本発明の効果を得ることができ、加飾成形品10の表面に施されている図柄に対しては、本発明の効果は得られない。
本発明は、図柄40が、成形体20の加飾フィルム30とは反対側の面に形成されている場合に、より効果的である。
なお、図柄40の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、塗布や印刷、フィルムの貼付、レーザー加工等が挙げられる。
加飾フィルム30の形状は、特に限定されるものではないが、各領域の位置関係は、第2領域Bが第1領域Aに接しており、第3領域Cが第2領域Bに接していればよく、例えば、第1領域Aを第2領域Bが囲み、第2領域Bを第3領域Cが囲むように形成されていたり、逆に、第3領域Cを第2領域Bが囲み、第2領域Bを第1領域Aが囲むように配置されていたり、第1領域A、第2領域B、及び第3領域Cが順次並列して配置されていてもよい。
加飾フィルム30のフィルム表面の算術平均粗さは、JIS B0601:2001に準じた表面粗さの測定により求められ、具体的には、加飾フィルム30のフィルム裏面を、透明粘着剤を用いて平滑板に貼付した試料のフィルム表面について、JIS B0601:2001に準じて測定される、カットオフ値0.8mmでの算術平均粗さである。
なお、これらの算術平均粗さは、例えば、表面粗さ測定器「SE−3400」(株式会社小坂研究所製)等により測定することができる。
第1領域A及び第3領域Cの表面粗さの測定は、各領域の、目視でゴミや傷等の異常点がないことが確認された箇所から、1.8cm×1.8cmの試料片を切り出し、該試料の一辺に平行な方向(縦方向)に0.3cm間隔で5点と、前記縦方向に垂直な方向(横方向)に0.3cm間隔で5点の合計10点で行う。これらの10点における算術平均粗さの測定値の平均値を、それぞれ、Ra1及びRa3とする。
第2領域Bは、第1領域A及び第3領域Cに挟まれており、所定の幅であること鑑み、また、後述するように、第2領域Bにおける加飾フィルム30のフィルム表面の算術平均粗さは、第1領域A側から第3領域C側に向かって漸増していることが好ましいことから、その表面粗さは、以下のようにして測定する。
第2領域Bの表面粗さの測定について、図2に示す加飾フィルム30の部分正面図を参照して説明する。フィルム表面の第1領域Aと第2領域Bとの境界線d上の任意の点Sから、境界線dと垂直な方向に第2領域Bを横断し、第2領域Bと第3領域Cとの境界線eとの交点までの線分を6等分する5点M1〜M5で、前記線分と垂直方向に測定を行う。なお、点Sは、前記線分上に目視でゴミや傷等の異常点が確認されることのないような位置を選択する。
前記5点における算術平均粗さの測定値の平均値をRa2とする。
加飾フィルム30のフィルム表面は、Ra2が、Ra1よりも大きく、かつ、Ra3よりも小さい、すなわち、Ra1<Ra2<Ra3の関係を満たす。図1においては、このような表面粗さの大小を模式的に表している。
加飾フィルム30のフィルム表面の算術平均粗さと光沢感とは相関性を有しており、算術平均粗さが小さいほど、光沢感があり、逆に、算術平均粗さが大きいほど、マット感があると言える。
したがって、加飾フィルム30のフィルム表面の各領域の表面粗さが上記のような関係を満たす加飾成形品10は、第1領域Aが第3領域Cよりも光沢感があり、逆に言えば、第3領域Cが、第1領域Aよりもマット感がある。すなわち、加飾フィルム30は、第3領域Cがマット部分である部分マットフィルムである。第2領域Bは、第1領域Aと第3領域Cとの中間的な光沢感(又はマット感)を与える、言わば中間領域である。
求められる光沢感又はマット感は、加飾成形品10によって様々であり、加飾成形品10の物品は、特に限定されるものではないが、加飾フィルム30が光透過性を有する部分を備える部分マットフィルムであることから、特に、カーナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、その他の家庭用電化製品等の画像や映像を表示するディスプレイに好適に適用することができる。
例えば、加飾成形品10の物品が、上記のようなディスプレイである場合、上質感やデザイン性等の観点から、Ra1は0.10μm未満であることが好ましく、より好ましくは0.90μm以下、さらに好ましくは0.07μm以下である。また、Ra3は0.10μm超であることが好ましく、より好ましくは0.12〜0.30μm、さらに好ましくは0.12〜0.20μmである。
また、Ra1のRa3に対する比Ra1/Ra3が、1.5以上であることが好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。
加飾フィルム30の第2領域Bにおけるフィルム表面の算術平均粗さは、第1領域A側から第3領域C側に向かって漸増していることが好ましい。すなわち、第2領域Bにおける前記フィルム表面の算術平均粗さは、第1領域Aから測定位置までの距離が大きくなるほど、大きくなることが好ましい。
これは、図2において、第2領域Bにおける表面粗さの測定点M1〜M5の5点で測定される算術平均粗さが、M1における測定値よりもM2における測定値の方が大きく、M2における測定値よりもM3における測定値の方が大きく、M3における測定値よりもM4における測定値の方が大きく、M4における測定値よりもM5における測定値の方が大きいことを意味する。
前記算術平均粗さの漸増の程度は、第1領域Aからの距離に対して比例していてもよく、あるいはまた、前記距離に対する増加率が途中で変化してもよい。第2領域Bが明瞭なラインとして視認されることを抑制する観点からは、第1領域A近傍及び第3領域C近傍では前記増加率が小さく、両領域の中間付近に変曲点を有するように増加していることがより好ましい。
第2領域Bにおける前記フィルム表面の算術平均粗さが上記のように変化していることにより、各領域の境界線が明瞭に視認され難くなり、各領域の境界における光沢感の較差を強く印象づけることを緩和することができる。
また、加飾フィルム30の第1領域A及び第3領域Cのフィルム表面は均質であり、各領域内での前記フィルム表面の凹凸のばらつきが小さいことが好ましい。このような観点から、JIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの第1領域Aの十点平均粗さの平均値Rzjis1が、0.2〜4.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0μm、さらに好ましくは0.7〜1.6μmである。同様に、第3領域Cの十点平均粗さの平均値Rzjis3が、0.01〜0.09μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.08μm、さらに好ましくは0.03〜0.07μmである。
十点平均粗さの平均値は、算術平均粗さの平均値との差が小さいほど、各領域内に特異的な凹部や凸部が少なく、凹凸のばらつきが小さいと言える。
なお、Rzjis1及びRzjis3は、上記のRa1及びRa3を求める際と同様のJIS B0601:2001に準じた表面粗さの測定から求めた値である。
第1領域A及び第3領域Cの光沢感は、JIS Z8741:1997に準じて測定される前記フィルム表面の60度鏡面光沢度において、第1領域Aにおける60度鏡面光沢度の平均値Gs1が、第3領域Cにおける60度鏡面光沢度の平均値Gs3よりも大きい値として現れる。このように、各領域の前記フィルム表面の算術平均粗さは、各領域における、このような60度鏡面光沢度の大小関係に反映される。
第1領域A及び第3領域Cの前記フィルム表面の60度鏡面光沢度は、具体的には、加飾フィルム30のフィルム裏面を、透明粘着剤を用いて黒色平滑板に貼付した試料についての測定値である。このとき、界面反射を防止するため、フィルム裏面側の層と透明粘着剤との屈折率差を0.15以内とすることが好ましく、より好ましくは0.10以内とする。また、黒色平滑板は、JIS K7361−1:1997における全光線透過率が1%以下のものが好ましく、より好ましくは0%である。
第1領域A及び第3領域Cにおける測定点は、前記表面粗さの測定点と同様に選択した10点とする。これらの10点における60度鏡面光沢度の測定値の平均値を、それぞれ、Gs1及びGs3とする。
なお、第2領域Bは、所定の幅であり、一般的な光沢度計で測定するための十分な測定スポットを確保できない幅である場合もあるが、前記表面粗さの測定点と同様に選択した点で測定可能である場合には、上述した算術平均粗さの大小関係に対応して、第1領域A及び第3領域Cの60度鏡面光沢度の間の60度鏡面光沢度となる。
加飾成形品10が、例えば、カーナビゲーションシステムのディスプレイであり、ディスプレイ画面に対する防眩効果が求められるような場合には、該ディスプレイ画面が、加飾フィルム30のマット部分である第3領域Cに形成されていることが好ましい。このとき、該ディスプレイのベゼルが、図柄40を有する第1領域Aに相当するものとすることができる。
なお、第2領域Bが着色されている場合、第1領域Aと第3領域Cとの間で、色の濃淡、明暗及び色調が、グラデーションを有するように形成されていてもよい。
第3領域Cにディスプレイ画面が形成されている場合、加飾フィルム30の第3領域Cは、光透過性を有し、かつ、該ディスプレイ画面に対する防眩効果、及び白化した印象を与えることを抑制する観点から、Gs3は、100%未満であることが好ましく、より好ましくは30〜90%、さらに好ましくは40〜80%である。
このとき、ディスプレイのベゼルが、図柄40を有する第1領域Aに相当する場合には、ディスプレイ全体の高級感を高める程度の光沢感を有するものとする観点から、Gs1は、100%以上であることが好ましく、より好ましくは110〜200%である。また、Gs1のGs3に対する比(Gs1/Gs3)が0.6以下であることが好ましく、より好ましくは0.55以下、さらに好ましくは0.45以下である。
なお、この場合の加飾フィルム30の第3領域Cの光透過率は、JIS K7361−1:1997に準じて測定される全光線透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。また、ディスプレイのベゼルの図柄40を引き立たせる観点からは、加飾フィルム30の第1領域Aの光透過率も、JIS K7361−1:1997に準じて測定される全光線透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
また、第1領域Aと第3領域Cとに挟まれている第2領域Bは、その幅W[mm]が下記式(1)で表されるものである。
0.2≦W<T・tan{sin-1(1/n)} …(1)
上記式(1)において、T[mm]は、図柄40の輪郭から加飾成形品10の表面までの距離を表し、nは、第2領域Bにおいて図柄40よりも加飾成形品10の表面側にあり、図柄40の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。
第2領域Bの幅Wを上記のように設定することにより、加飾成形品10の外観上、見る位置によって図柄40の輪郭Pの見え方にばらつきが生じることを抑制することができる。
Wの下限値は、一般的な人間の視認性を考慮し、視力1.5、適視距離25cmでの人間の目の解像度に基づく判別距離が0.2mmであることに鑑みた値である。Wが0.2mm未満の場合は、図柄40の輪郭Pの視認性に対する第2領域Bによる効果を人間の目では認識できない。
一方、Wの値は、上記式(1)に示したように、図柄40の輪郭から加飾成形品10の表面までの距離Tと、第2領域Bにおいて図柄40よりも加飾成形品10の表面側にあり、図柄40の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率に依存するものであることから、Wの上限は、以下のようにして導き出したものである。
図1において、観察点Rにおいて視認される図柄40の輪郭Pは、加飾フィルム30の表面(空気との境界面)の点Qにおいて、入射角θ1、出射角θ2で屈折した光である。空気の屈折率を1とみなすと、スネルの法則より、
θ1=sin-1{(sinθ2)/n} …(4)
加飾フィルム30の表面で、図柄40の輪郭Pからの入射光が全反射する条件は、1/n≧sinθ1である。θ1がこの条件を満たす場合には、第2領域Bの幅Wを規定することによる効果は得られない。換言すれば、第2領域Bの幅Wを設定することによる効果が得られるのは、θ1が1/n<sinθ1の関係を満たすときであり、この関係式を変形すると、sin-1(1/n)<θ1となる。
また、tanθ1=W/Tであることから、加飾成形品10の外観から、図柄40の輪郭Pが視認される場合のWは、下記式(1−1)で表される。
W<T・tan{sin-1(1/n)} …(1−1)
したがって、Wの上限については、Wが式(1−1)の関係を満たせば、図柄40の輪郭Pは、加飾成形品10の外観上、光沢感が相対的に最も低い、すなわちマット部分である第3領域Cの表面からの屈折光として視認されるため、その見え方のばらつきによる不快感を緩和することができる。
図柄として、絵や文字、図形、記号、模様等を施した一般的な加飾成形品や、カーナビゲーションシステム及びその他の家庭用電化製品等のディスプレイパネル等の比較的視野角の広い加飾成形品においては、例えば、適正視野角を45度とみなし、これに基づいて、第2領域Bの幅W[mm]は、下記式(1−2)を満たすことが好ましい。
0.2≦W<T・tan{sin-1(π/4n)} …(1−2)
また、絵や文字、図形、記号、模様等をほぼ正面から視認することを目的とした加飾成形品や、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等のパーソナルユース目的のディスプレイパネル等の比較的視野角の狭い加飾成形品においては、例えば、適正視野角を20度とみなし、これに基づいて、第2領域Bの幅W[mm]は、下記式(1−3)を満たすことが好ましい。
0.2≦W<T・tan{sin-1(π/9n)} …(1−3)
なお、図柄40の輪郭Pから加飾フィルム30の表面への入射光は、図柄40が接している成形体20及び加飾フィルム30を透過した光であるが、屈折率nは、図柄40に接していない加飾フィルム30の影響はほとんど受けず、実質的に、図柄40に接している成形体20の構成材料の屈折率とみなすことができる。
図柄が成形体の表面側に、加飾フィルムの裏面に接している場合には、図柄よりも加飾成形品の表面側にあり、図柄の輪郭に接する層とは、加飾フィルムであり、屈折率nは、第2領域における加飾フィルムの構成材料の屈折率を表す。
加飾フィルム30は、上述した各領域を有するフィルム形成の容易性の観点から熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の樹脂を用いて形成されることが好ましい。各樹脂は、そのうちの1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、強度及びフィルム表面形状の制御容易性等の観点から、より好ましくは電離放射線硬化性樹脂が用いられる。
電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線の照射により重合又は架橋する硬化反応を生じて得られる樹脂である。ここで言う電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋させるエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線も含むものとする。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、エポキシ基、オキセタニル基等を有する化合物の硬化反応により得られる樹脂が挙げられる。具体的には、硬度や耐スクラッチ性等の観点から、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂等が好ましく、より好ましくはウレタン(メタ)アクリレート樹脂である。
熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ABS樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
加飾フィルム30は、単層で構成されていても、あるいはまた、支持体を含む複数層で構成されていてもよい。これらの各層は、有機粒子や無機粒子等の添加剤を含有していてもよい。また、加飾対象の成形体に接する加飾フィルム裏面は、該成形体と密着して一体化可能となるように形成されていることが好ましく、例えば、感熱接着性や感圧接着性を有する接着剤層を有していてもよい。
加飾フィルム30は、例えば、所定の支持体上に、公知の塗布方法や印刷方法で前記樹脂材料による層を形成することにより製造することができる。支持体上への前記層の形成は、フィルム面の各領域に正確かつ精密な表面形状を形成する観点から、版を用いて行うことが好ましい。特に、各領域でフィルム表面形状が異なる場合、予めフィルム表面形状に対して相補的な凹凸形状が形成された版を用いることが好ましい。
加飾フィルム30は、加飾対象の成形体20表面に貼着される等により、成形体20と一体化される。これにより、加飾フィルム30を所定の成形体20、好ましくは樹脂成形体上に備えた加飾成形品10が得られる。
あるいはまた、マット加工されたフィルム基材に、第1領域A及び第2領域Bに対応する版を用いて塗布又は印刷することにより、前記フィルム基材の露出部分(マット加工面)を第3領域Cとした加飾フィルム30を得ることができる。この場合、第2領域B及び第3領域Cを転写法によって形成してもよい。
加飾フィルム30は、版を用いる方法の中でも、フィルム表面物性を良好に制御する観点から、後述する本発明の転写シートによって形成されることがより好ましい。
[転写シート]
前記加飾成形品における加飾フィルムは、その製造方法は特に限定されるものではないが、転写シートによって形成されることが好ましい。例えば、図柄を有する転写シートを用いて、加飾フィルムを形成することができる。
本発明の図柄を有する転写シートは、離型シート上に、前記離型シートに接し、図柄を有する転写層を少なくとも備えた転写シートであって、前記転写層が、前記転写シートのシート面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記第2領域に接する第3領域を有しており、前記転写層が、前記第1領域に図柄を有し、かつ、少なくとも前記第2領域は光透過性を有しており、前記図柄の輪郭が、前記第1領域と前記第2領域との境界線に合致しているものである。
図柄は、前記第3領域に施され、該図柄の輪郭が、前記第2領域と前記第3領域との境界線に合致するような態様であってもよい。なお、以下においては、図柄を有する領域が第1領域である場合を代表として説明する。
前記転写シートにおいては、前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'3よりも小さい。
そして、前記転写シートの第2領域は、下記式(2)で表される幅W1[mm]を有している。
0.2≦W1<T1・tan{sin-1(1/n1)} …(2)
上記式(2)において、T1[mm]は、前記図柄の輪郭から前記転写層の前記離型シートに接する面までの距離を表し、n1は、前記第2領域において前記離型シート側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。
また、前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さが、第1領域側から第3領域側に向かって漸増していることが好ましい。
すなわち、前記転写シートの転写層が、前記加飾成形品の加飾フィルムに相当する。該転写シートにおける第1領域、第2領域及び第3領域の各領域の区画は、前記加飾成形品の加飾フィルムにおける第1領域A、第2領域B及び第3領域Cの各領域の区画と同様である。また、該転写層表面のRa'1、Ra'2及びRa'3については、それぞれ、前記加飾シートのRa1、Ra2及びRa3についての説明と同様であるため、省略する。
ただし、該転写シートにおいては、図柄を有するのは転写層(加飾フィルム)である点で、図1に示した加飾成形品10においては、図柄40が、加飾フィルム30ではなく、成形体20に施されているのと相違している。
図柄を有する転写層において、図柄は、転写層の最表面以外、すなわち、離型シートと接する面以外のいずれかの箇所に施される。転写層における図柄の形成方法も、特に限定されるものではなく、前記加飾成形品における図柄の形成方法と同様に、塗布や印刷、フィルムの貼付、レーザー加工等により行うことができる。
前記転写シートの転写層表面は、前記加飾フィルムと同等の光沢感を有していることが好ましい。具体的には、前記転写層を黒色平滑板に転写した際に、JIS Z8741:1997に準じて測定される転写層表面の60度鏡面光沢度について、前記第2領域における平均値Gs'2が、前記第1領域における平均値Gs'1よりも小さく、かつ、前記第3領域における平均値Gs'3よりも大きいことが好ましい。転写層表面のGs'1、Gs'2及びGs'3についても、それぞれ、前記加飾フィルムのGs1、Gs2及びGs3についての説明と同様である。また、W1、T1及びn1についても、前記加飾成形品のW、T及びnの説明と同様である。したがって、これらの説明は省略する。
なお、転写シートの転写層表面においては、一般に、表面粗さが異なる領域間で、転写層と離型シートの接着強度が異なる。このため、加飾対象の成形体に密着させた転写シートの離型シートの一端を転写層表面から剥離する際、同等の剥離強度で剥離すると、剥離速度が一定とならず、剥離速度が急激に変化した箇所に、いわゆるストップマークが生じる。
これに対して、前記転写層は、第1領域と第3領域との間に、Ra'1とRa'3との間の値の算術平均粗さRa'2を有する第2領域が中間領域として形成されていることにより、剥離速度の急激な変化が抑制され、ストップマークが生じることを抑制する効果も得られる。
転写シートにおける転写層は、加飾対象の成形体に転写される層であり、単層であっても、2層以上の積層構造を有していてもよいが、少なくとも、離型シートと接する層の表面が、前記加飾フィルムの表面となるように構成される。このため、転写層表面の層は、前記加飾フィルムと同様の材料により構成されることが好ましい。
また、転写層は、加飾成形品において求められる装飾等に応じて、高温でのインモールド成形を行う場合に耐熱性を付与するためのアンカー層等のその他の層を、必要に応じて有していてもよい。これらの各層は、該各層における公知の構成材料で形成することができる。
また、転写層を加飾対象の成形体に接着して一体化するためには、別途、接着剤を用いてもよいが、転写層の離型シートと反対側の裏面は接着性を有する層を有していることが好ましい。転写層裏面の接着性を有する層は、通常、感熱接着性又は感圧接着性を有する層として形成され、その層を構成する樹脂組成は、加飾対象の成形体の材質に応じて適宜定められる。
例えば、加飾対象の成形体がアクリル系樹脂からなる場合は、接着性を有する層としてはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、加飾対象の成形体がポリプロピレン樹脂からなる場合は、接着性を有する層には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロン−インデン樹脂等を使用することが好ましい。また、加飾対象の成形体がポリフェニレンオキサイド−ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂又はスチレン系樹脂からなる場合は、接着性を有する層としては、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を用いることが好ましい。
一方、離型シートは、転写層を加飾対象の成形体に転写した後に剥離されるものであり、通常、基材上に、転写層と接する表面を有する剥離層が形成されたものである。
離型シートは、例えば、離型シートを剥離する際の作業性等の観点から、基材裏面に設けられる帯電防止層等のその他の層を、必要に応じて有していてもよい。
基材及び剥離層等の各層の構成材料は、特に限定されるものではなく、転写層の材質に応じて、該構成材料として公知の樹脂材料等を用いることができる。
上述したような転写層表面の表面粗さを得るためには、該転写層表面と接する離型シート表面に該転写層表面の形状と相補的な形状を形成しておくことが好ましい。
離型シート表面形状の形成は、複数の離型シートを一定の表面形状で効率的に製造する観点から、版を用いて行うことが好ましい。版は、所望の転写層表面形状を複製したものとする。版の作製は、金型にエッチングやサンドブラスト、切削、レーザー加工等を施すことにより行うことができる。
表面粗さが変化する領域を有する版を形成する方法としては、例えば、表面粗さが変化する領域である前記第2領域に対応する箇所の金型表面にネガ型感光性樹脂を塗布し、光透過性を徐々に変化させた所定のフォトマスクを用いて露光することによりパターニングし、現像後、当該部分及び前記第1領域に対応する箇所にサンドブラストを施す方法を用いることができる。また、サンドブラスト加工の際に、拡散ノズルを用いたり、ブラスト圧を変化させる等により、金型表面の研削量を調整して行うこともできる。このような方法により、所望の箇所において表面粗さが適宜調節された版を好適に得ることができる。
上記のようにして得られた版を用いて、グラビアコーティング等の公知の塗布又は印刷方法で、基材上に所定の樹脂材料等による剥離層を形成することにより、離型シートを作製することができる。そして、得られた離型シート表面に、転写層を塗布や印刷等により積層し、転写シートが得られる。
[加飾成形品の製造方法1]
前記転写シートを用いて加飾フィルムを形成する場合、該転写シートの転写層側の面を成形体の表面に密着させた後、離型シートを剥離することにより、転写層が前記成形体に転写された加飾成形品を得ることができる。
また、加飾対象の成形体を成形するのと同時に、該成形体に転写シートを用いた加飾を行うインモールド成形により、加飾成形品を製造することもできる。このインモールド成形においては、成形金型の内側に向けて転写シートの転写層側の面を配置し、この金型内に所定の成形体の構成樹脂材料を射出注入して、転写シートと成形体の所定形状の樹脂とを一体成形する。その後、脱型して得られた樹脂成形体表面の転写シートの離型シートを剥離することにより、加飾成形品が得られる。このような方法によれば、加飾対象の成形体表面が平面状である加飾成形品のみならず、凹凸形状や曲面等の3次元表面形状を有する加飾成形品も好適に得ることができる。
[加飾成形品の製造方法2]
図柄が成形体に施される場合は、上述したような転写シートではなく、図柄を有していない転写シートを用いて、加飾成形品を製造することもできる。
具体的には、下記に示す転写シートXが好適に用いられる。
<転写シートX>
転写シートXは、離型シート上に、前記離型シートに接し、転写層を少なくとも備えている。そして、転写シートXのシート面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記第2領域に接する第3領域を有する転写層を備え、前記転写層は、少なくとも第1領域及び前記第2領域において光透過性を有し、前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”3よりも小さい。
すなわち、転写シートXは、上述した転写シートとは、転写層が図柄を有していない点のみ相違し、第1領域、第2領域、及び第3領域の転写層表面の算術平均粗さについては、上述した転写シートと同様である。したがって、前記転写層を平滑板に転写した際に、第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さは、第1領域側から第3領域側に向かって漸増していることが好ましい。
転写シートXを用いた加飾成形品の製造方法2においては、転写シートXの転写層側の面を成形体の表面に密着させた後、前記離型シートを剥離することにより、前記転写層が前記成形体に転写された加飾成形品を得ることができる。
製造方法2は、前記成形体表面に前記転写シートXの転写層側の面を密着させた後、前記離型シートを剥離する工程と、前記成形体の前記転写層とは反対側の面に、前記転写層の第1領域と第2領域との境界線、又は第3領域と第2領域との境界線と、その輪郭が合致するように図柄を施す工程とを有する。
製造方法2においては、前記転写シートXは、前記第2領域の幅W2[mm]が下記式(3)を満たすように構成されているものが用いられる。
0.2≦W2<T2・tan{sin-1(1/n2)} …(3)
上記式(3)において、T2[mm]は、前記図柄の輪郭から前記加飾成形品の表面までの距離を表し、n2は、前記第2領域において前記離型シート側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。
2、T2及びn2ついての説明は、前記加飾成形品のW、T及びnの説明と同様であるため、これらの説明は省略する。
なお、製造方法2においては、離型シートを剥離する工程と、図柄を施す工程とは、いずれが先であってもよい。すなわち、成形体に転写層を転写して加飾フィルムを形成した後に、図柄を施してもよく、あるいはまた、図柄が施された成形体に、転写層を転写して加飾フィルムを形成してもよい。
製造方法2においても、上記製造方法1と同様に、インモールド成形により、加飾成形品を製造することができる。
10 加飾成形品
20 成形体
30 加飾フィルム
40 図柄
A 第1領域
B 第2領域
C 第3領域

Claims (7)

  1. 成形体の表面に加飾フィルムを備えた加飾成形品であって、
    前記加飾成形品は、前記加飾フィルムのフィルム面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記2領域に接する第3領域を有し、かつ、前記第1領域又は前記第3領域の前記加飾成形品の表面以外の箇所に図柄を有し、
    前記図柄の輪郭が、前記第1領域と前記第2領域との境界線、又は前記第3領域と前記第2領域との境界線に合致しており、
    前記加飾フィルムは、前記図柄を有する領域及び前記第2領域において光透過性を有し、
    前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra3よりも小さく、
    前記第2領域の幅W[mm]が下記式(1)で表される、加飾成形品。
    0.2≦W<T・tan{sin-1(1/n)} …(1)
    (式(1)において、T[mm]:前記図柄の輪郭から前記加飾成形品の表面までの距離、n:前記第2領域において前記図柄よりも前記加飾成形品の表面側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。)
  2. 前記加飾フィルムは、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定されるフィルム表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さが、前記第1領域側から前記第3領域側に向かって漸増している、請求項1に記載の加飾成形品。
  3. 前記図柄が、前記成形体の前記加飾フィルムとは反対側の面に形成されている、請求項1又は2に記載の加飾成形品。
  4. 離型シート上に、前記離型シートに接し、図柄を有する転写層を少なくとも備えた転写シートであって、
    前記転写層は、前記転写シートのシート面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記第2領域に接する第3領域を有しており、前記第1領域又は前記第3領域に図柄を有し、かつ、少なくとも前記第2領域は光透過性を有しており、
    前記図柄の輪郭が、前記第1領域と前記第2領域との境界線、又は前記第2領域と前記第3領域との境界線に合致しており、
    前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra'3よりも小さく、
    前記第2領域が、下記式(2)で表される幅W1[mm]を有している、転写シート。
    0.2≦W1<T1・tan{sin-1(1/n1)} …(2)
    (式(2)において、T1[mm]:前記図柄の輪郭から前記転写層の前記離型シートに接する面までの距離、n1:前記第2領域において前記離型シート側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。)
  5. 前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さが、前記第1領域側から前記第3領域側に向かって漸増している、請求項4に記載の転写シート。
  6. 請求項3に記載の加飾成形品を製造する方法であって、
    離型シート上に、前記離型シートに接し、転写層を少なくとも備えた下記に示す構成を有する転写シートXを用いて、前記転写シートXの転写層側の面を成形体の表面に密着させた後、前記離型シートを剥離して、前記転写層が前記成形体に転写された加飾成形品を得る方法であり、
    前記成形体表面に前記転写シートXの転写層側の面を密着させた後、前記離型シートを剥離する工程と、
    前記成形体の前記転写層とは反対側の面に、前記転写層の第1領域と第2領域との境界線、又は第3領域と第2領域との境界線と、その輪郭が合致するように図柄を施す工程とを有し、
    前記転写シートXの前記第2領域の幅W2[mm]が下記式(3)を満たす、加飾成形品の製造方法。
    0.2≦W2<T2・tan{sin-1(1/n2)} …(3)
    (式(3)において、T2[mm]:前記図柄の輪郭から前記加飾成形品の表面までの距離、n2:前記第2領域において前記離型シート側にあり、前記図柄の輪郭に接する層を構成する材料の屈折率を表す。)
    <転写シートX>
    転写シートXのシート面を区画する、第1領域、前記第1領域に接する第2領域、及び前記第2領域に接する第3領域を有する転写層を備え、
    前記転写層は、少なくとも第1領域及び前記第2領域において光透過性を有し、
    前記転写層を平滑板に転写した際に、前記第2領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”2が、前記第1領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”1よりも大きく、かつ、前記第3領域のJIS B0601:2001に準じて測定される転写層表面のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さの平均値Ra”3よりも小さい。
  7. 請求項4又は5に記載の転写シートの転写層側の面を、成形体の表面に密着させた後、前記離型シートを剥離して、前記転写層が前記成形体に転写された加飾成形品を得る、加飾成形品の製造方法。
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