JP6641864B2 - 印刷物 - Google Patents

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Description

本発明は、表面に多数の突起部を備える印刷物に関する。
広告、雑誌、ポスター等の種々の印刷物においては、近年、ますます高精細で鮮明な印刷画像の表示が求められており、印刷技術分野においては、印刷媒体への画像データの出力方法や、印刷媒体に用いられる材料およびインキの材料等の選択方法等のあらゆる印刷技術を用いることが検討されている。
しかしながら、上述した種々の印刷技術を用いて印刷媒体上に高精細かつ鮮明な印刷画像が印刷されたとしても、印刷物の表面において光の一部が反射されることで、観察者からは実際の印刷画像の色彩に比べて白っぽく観察されてしまい、文字や模様の判読を妨げるといった問題があった。
また、印刷物の表面に照射される光の強度や照射方向、さらには観察者が印刷物を観察する方向によっては、印刷物の表面からの反射光により印刷画像の視認性が低下したり、目視が困難となる可能性があるといった問題があった。
このような問題に対して、表面での光の反射を低減させて印刷画像の視認性を向上させる目的で、印刷物の表面に加工が施された印刷物が提案されている。例えば、特許文献1および2では、表面にモスアイと呼ばれる多数の微細凹凸が形成された印刷物が開示されている。このような印刷物は、表面に微細凹凸が形状および配置に規則性を有して形成されていることで、モスアイ構造の原理により入射光に対する屈折率の急激な変化がなくなり、物質界面での不連続な屈折率変化に起因する光の反射を抑制することができる。これにより、印刷物表面での光の反射が低減され、印刷画像の視認性を向上させることが可能である。
特開2012−152987号公報 特開2014−71220号公報
しかし、印刷物の表面に微細凹凸を有することで、反射率低減効果を得ることが可能であるものの、個々の凸部(突起部)および凹部(溝部)の形状および配置に規則性があるため、反射率の低減に波長選択性を示し、波長領域によっては微細凹凸による十分な反射率低減効果が得られず、また、印刷物の印刷画像の鮮明さや視認性が十分ではない場合がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、印刷画像の色彩を鮮明に表示することができ、印刷画像の視認性を向上させることが可能な印刷物を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、透明基材と、上記透明基材の一方の面上に形成された印刷層とを有する印刷物であって、上記印刷物は、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面側の最表面に多数の突起部が形成されており、上記突起部の底面は、上記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部の重心間距離の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とする印刷物を提供する。
本発明によれば、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の突起部が、印刷物の透明基材の印刷層が形成された面と対向する面側の最表面に形成されていることから、突起部において光を多数回反射させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。さらに、上記突起部においては、光の多数回反射による光の吸収に加えて、ミー散乱による突起部内への光の吸収も起こるため、反射率を低下させることができる。さらにまた、多数の上記突起部が形成された層は、ミー散乱が生じることで高ヘイズ値を示すことができ、それにより、突起部が形成された表面や印刷物内の積層界面における全反射を低減し、印刷物の色調に係る光以外の光の吸収率をさらに高めることができる。
これにより、本発明の印刷物は、所定のばらつきを有する突起部により、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することができ、印刷画像の視認性を向上させることが可能となる。また、印刷物に入射する光、中でも印刷物の色調に係る光以外の光の反射が低減され、印刷物内への光の吸収率が高くなることから、印刷層における印刷画像の発色性が向上し、色彩を鮮明に表示することが可能となる。
上記発明においては、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面には、透明低反射層が形成され、上記透明低反射層の上記透明基材と対向する面に、多数の上記突起部が形成されていることが好ましい。透明基材の表面に直接、突起部を形成することが困難な場合に、所望の突起部が賦形された透明低反射層を印刷物の最表層として設けることで、所定のばらつきを有する突起部による上述の効果を奏することができるからである。
上記発明の場合、上記透明低反射層が、透明支持層と、上記透明支持層の一方の面側に形成され、透明樹脂を含む低反射樹脂層とを有し、上記低反射樹脂層の上記透明支持層と接する面と対向する面上に多数の上記突起部が形成されていることが好ましい。透明低反射層の突起部を、透明基材を介して印刷層の位置に合わせて配置することができ、印刷画像の視認性を向上させることが可能となり、また、製造時のハンドリング性が向上するからである。さらに、透明基材が曲面である、透明基材の密着性が悪い等の理由から、透明基材の表面上に直接、突起部を有する透明低反射層を形成することが困難な場合に、所望の印刷物とすることができるからである。
また、上記発明の場合、上記透明低反射層が、透明樹脂により形成された単層であり、上記透明基材上に直に形成されていることが好ましい。透明低反射層が透明樹脂により形成された単層であり、透明低反射層内に積層界面が形成されないため、透明低反射層内において積層界面での光の反射を防止することができるからである。
上記発明においては、多数の上記突起部が、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面に直接形成されていることが好ましい。本発明の印刷物を構成する層の数を少なくすることができ、積層界面での光の反射を防止することができるからである。
上記発明においては、少なくとも上記印刷層の上記透明基材と接する面と対向する面上に、機能層を有することが好ましい。少なくとも印刷層表面に機能層を設けることで、本発明の印刷物に対し、機能層の種類に応じた機能を付加することや、機能層による光制御により印刷画像の色再現性や視認性を向上させることができるからである。また、印刷層表面に機能層を設けることにより、印刷層を保護することができるからである。
上記発明の場合、上記機能層が遮光層であることが好ましい。印刷物の印刷層側表面から光が透過することにより、突起部を介して表示される印刷画像においてヘイズが目立つことによる視認性の低下、および鮮明な色表示が阻害されることによる色再現性の低下を防止することができるからである。
本発明の印刷物は、最表面に形成された多数の突起部が形状および配置位置に所定のばらつきを有することで、広波長域の光に対して反射率低減効果が発揮されることから、印刷画像の視認性を向上させることができ、また、印刷画像の色彩を鮮明に表示することが可能であるといった作用効果を奏する。
本発明における突起部を説明する説明図である。 本発明における突起部の頂部の方位角φを説明する説明図である。 本発明の印刷物における突起部を有する表面の平面SEM画像である。 本発明の印刷物の第1態様の一例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の第1態様の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の第1態様の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の第1態様の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の第2態様の一例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の第2態様における透明基材を説明する説明図である。
以下、本発明の印刷物について詳細に説明する。
本発明の印刷物は、透明基材と、上記透明基材の一方の面上に形成された印刷層とを有する印刷物であって、上記印刷物は、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面側の最表面に多数の突起部が形成されており、上記突起部の底面は、上記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部の重心間距離(以下、最近接重心間位置と称する場合がある。)の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とするものである。
本発明によれば、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の突起部が、印刷物の最表面に形成されていることから、上記突起部により広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することができる。なお、多数の突起部の形状および配置位置のばらつきのことを、単に「ばらつき」と称する場合がある。
すなわち、多数の突起部が上記所定のばらつきを有することで、突起部に入射した光を多数回反射させて突起部内に吸収させることができ、また、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。
さらに、多数の突起部が上記所定のばらつきを有することで、上記突起部、中でも突起部の頂部においては、多数回反射により突起部内へ光が吸収されるのに加えて、突起部の形状により光をミー散乱させることで、突起部内への光の吸収量をさらに増加させることができ、反射率をより低減させることが可能となる。
これは、ミー散乱が「前方散乱が強い」、「波長依存性が小さい」といった特長を有することによるものである。つまり、ミー散乱は前方散乱が強いため、突起部に入射した光は突起部内で散乱されることとなり、散乱光を突起部内へ吸収させることができるからである。また、ミー散乱は波長依存性が小さいため、可視光領域380nm〜780nmの全域の光を散乱させることができ、散乱光を突起部内に吸収させることが可能となるからである。
このように、多数の突起部が所定のばらつきを有することにより、広波長域の光に対して優れた反射率低減効果を発揮することが可能となり、上記多数の突起部が最表面に形成された印刷物は、反射光の低減により印刷画像の視認性を向上することができる。
また、印刷物は、通常、減色混合により印刷画像を表示するものであり、印刷物に入射した光のうち、一部の光が印刷物内に吸収され、印刷物に吸収されずに反射した光の色調が印刷画像の色調となる。印刷物表面での光の反射率が低くなるとは、すなわち印刷物への光の吸収率が高くなること、中でも印刷物の色調に係る光以外の光の吸収率が高くなることを意味する。
本発明によれば、多数の突起部のばらつきにより奏される反射率低減効果により、広波長域の光が印刷物内へ吸収されることとなる。加えて、多数の上記突起部が形成された層は、ミー散乱が生じることで高ヘイズ値を示すことができる。それにより、上記突起部が形成された表面や印刷物内の積層界面における全反射を低減し、印刷物の色調に係る光以外の光の吸収率をさらに高めることができる。
このように、印刷物に入射する光、中でも印刷物の色調に係る光以外の光の反射が低減され、印刷物内への吸収率が高くなるため、本発明の印刷物は、印刷層における印刷画像の発色性が向上し、色彩を鮮明に表示することが可能となる。
以下、本発明の印刷物について、本発明の印刷物が有する突起部、および本発明の印刷物の実施形態に分けて説明する。
I.突起部
本発明における突起部は、印刷物の上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面側の最表面に形成され、その形状および配置位置に所定のばらつきを有するものである。
本発明における突起部について、図を参照して説明する。図1は、本発明の印刷物における突起部を説明する説明図である。図2は本発明における突起部の頂部の方位角φを説明する説明図であり、図2(a)は突起部の斜視図、図2(b)は図2(a)のz軸方向から見たときの、突起部の頂部の位置および方位角を説明する説明図である。
図1に例示するように、本発明の印刷物10の最表面に備わる多数の突起部1は、形状および配置位置に所定のばらつきを有する。
ここで、多数の突起部が有する所定のばらつきとは、3つのパラメータを定量化することで規定される。
第1のパラメータは、突起部の大きさによるものである。本発明において多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図1に示すように、突起部1の底面の重心Gを通る最大幅Rの平均が250nm以上500nm以下の範囲内であることをいう。
第2のパラメータは、隣接する突起部の位置関係によるものである。本発明において多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図1に示すように、一の突起部1Aおよび一の突起部1Aの底面の重心Gに最も近接した位置に底面の重心Gを有する他の突起部1Bの重心間距離(最近接重心間距離)Lの平均が400nm以下であり、その分散が10000以上であることをいう。
第3のパラメータは、突起部の頂部が示す方向によるものである。本発明において多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図2に示すように、突起部1が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において突起部1の底面の重心Gからの突起部1の頂部Tの位置を方位角(0°≦φ<360°)で示し、突起部1の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことをいう。
すなわち、多数の突起部が「所定のばらつきを有する」とは、第1〜第3の3つのパラメータが上述の所定の範囲内(以下、所定値と称する場合がある。)を示すことを意味する。
本発明においては、多数の上記突起部が所定のばらつきを有することで、突起部が発揮する反射率低減機能により、本発明の効果を奏することができる。
突起部のばらつきは、「突起部の大きさ」、「隣接する突起部の位置関係」、および「突起部の頂部が示す方向」の3つのパラメータを定量化することで規定され、各パラメータが上述の所定値を示すことで、多数の上記突起部は、所定のばらつきを有することができる。
以下、各パラメータの定量化方法、および上記定量化方法により規定される各パラメータの値について説明する。
A.パラメータの定量化方法
本発明における突起部の形状および配置位置のばらつきは、印刷物の最表面に備わる多数の突起部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。
突起部の抽出は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)等を用い、倍率10000倍、視野範囲を縦4μm×横4μmとして印刷物の突起部を有する面側から平面視観察を行い、上記視野範囲における突起部の面内配列を画像で検出し、その中から所望の点数を抽出する方法を用いる。
本発明における各パラメータは、1つの視野範囲あたりの突起部の最低抽出点数を30点として算出する。突起部の抽出点数は多いほど好ましく、抽出点数は30点以上、中でも50点以上であることが好ましい。また、突起部の抽出を行うための上記視野範囲の検出数は、印刷物の突起部を備える面の単位面積(2500mm)当たり3箇所以上、中でも5箇所以上、特に10箇所以上であることが好ましい。
抽出点数および視野範囲の検出数を上記範囲で規定することで、3つのパラメータをより高い精度で定量化することができ、突起部の形状および配置位置のばらつきを正確に規定することができるからである。
各パラメータは、以下の手順により定量化される。
(1)まず、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて突起部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の突起部を抽出し、各突起部の高さの極大点および極小点を検出する。極大点および極小点を求める方法としては、例えば、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法等、種々の手法を適用することができる。このとき得られた極大点を「突起部の頂部」とする。
(2)次に、SEM画像やAFM画像から、極大点を囲む極小点の集合を突起部の根元とし、根元の形状を決定するために上記根元の形状を所望の形状に近似する。根元の形状とは、根元の輪郭の平面視形状(輪郭形状)であり、上記輪郭により囲まれた領域が「突起部の底面」となる。根元の輪郭形状を近似する際に、部分的に途切れている線は補完する。補完方法としては、例えば、ある閾値を設けて閉空間を作る方法を取ることができる。
近似された根元の輪郭形状は、各パラメータを特定可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状、円、楕円等の丸形状としてもよい。得られた突起部の根元の近似形状を「(突起部の)底面の形状」とする。
突起部の根元の形状の近似方法としては、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、特に限定されないが、例えば、テンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。
テンプレートマッチングは、予め形状を表現したテンプレートを準備し、画像認識の対象となる画像データに対してテンプレートを移動させながら相関係数等の類似度の指標を調べることによって画像データに含まれる形状を認識する技術である。テンプレートマッチングによる画像近似手法については、例えば、「中田崇行、包躍、藤原直史:“三次元環境におけるLog-Polar変換を用いた図形認識”,電気情報通信学会論文誌(D-II), Vol.88, No.6, pp.985-993(2005.6)」、「斎藤文彦:“部分ランダム探索と適応型探索による半導体チップ画像テンプレートマッチング”, 精密工学会誌, Vol.61, No.11, pp.1604-1608(1995.11)」に開示される。
また、一般化ハフ変換は、無限に存在する直線の中から画像データ内の特徴点を最も多く通る直線を決定するハフ変換を一般化して曲線に応用したものであり、この一般化ハフ変換によっても、事前に用意した参照用のテーブルを利用して画像データの形状認識を行うことができる。一般化ハフ変換による画像近似手法については、例えば、「Ballad.D.H: “GENERALIZING THE HOUGH TRANSFORM TO DETECT ARBITRARY SHAPES”, Pattern Recognition, Vol.13, No.2, pp.111-122(1981)」や、「木村彰男,渡辺孝志:“アフィン変換に不変な任意図形検出法として拡張された一般化ハフ変換”, 電気情報通信学会誌(D-II), Vol. J84-D-II, No. 5, pp.789-798(2001.5)」に開示される。
Douglas-Peucker法は、折れ線近似によって形状認識を行う手法である。Douglas-Peucker法による画像近似手法については、例えば、「Wu. S.T, M.R.G:“A non-self-intersection Douglas-Peucker Algorithm”, Proceeding of Sixteenth Brazilian Symposium on Computer Graphics and Image Processing, IEEE, pp.60-66(2003)」に開示される。
(3)次に、上記突起部の底面の形状から、突起部の底面の重心を特定する。突起部の底面の重心は、一般的な線形代数の計算で求めることができる。例えば、突起部の底面の形状が正円である場合、円周上の3点を結ぶ三角形を描き、三角形のうち二辺の垂直2等分線をそれぞれ引いた交点を円の重心とすることができる。また、突起部の底面の形状が楕円である場合、楕円の外周上の2点を結ぶ2本の線分を平行となるように引き、平行する2本の線分の各中点を結び、結んだ線分の中点を重心とすることができる。
さらに突起部の底面の形状が多角形である場合、突起部の底面の重心は、以下の操作を行うことで特定することができる。
操作1:まず、多角形の1つの頂点から、上記1つの頂点に隣接する2つの頂点を除く他の各頂点へ対角線を結び、複数の三角形に分割する。
操作2:分割された各三角形の重心を求める。
操作3:次に、各三角形の重心を結び多角形を形成する。
操作4:突起部の底面の形状が奇数角形の場合、操作3において形成される多角形が三角形となるまで、操作1〜操作3を繰り返す。一方、突起部の底面の形状が偶数角形の場合、操作3において形成される多角形が四角形となるまで、操作1〜操作3を繰り返す。
操作5:上述の操作1〜操作4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が三角形となる場合、上記三角形の重心が突起部の底面の重心となる。一方、上述の操作1〜操作4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が四角形となる場合、以下の方法で上記四角形の重心を求める。まず、上記四角形を1つの対角線で2つの三角形に分割し、2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。次に、四角形を別の対角線で2つの三角形に分割して2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。2本の直線の交点が突起部の底面の重心となる。
(4)次に、突起部の底面の幅を規定する。突起部の底面の幅とは、上記底面の重心を通り、上記底面の形状の外周上の2点を結ぶ線分の長さをいい、最も大きい線分を、突起部の底面の重心を通る最大幅(以下、突起部の(底面の)最大幅と称する場合がある。)とする。
具体的には、底面の形状が正円の場合では、上記最大幅とは正円の直径をいい、底面の形状が楕円の場合では、上記最大幅とは楕円の重心を通過して外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。また、底面の形状が多角形の場合では、上記最大幅とは、多角形の重心を通過して多角形の外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。
突起部の底面の最大幅の長さは、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
算出した突起部の最大幅を統計処理することで、突起部の最大幅の平均値および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。なお、上記最大幅の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最大幅−最大幅の平均値)/標準偏差
(5)次に、隣接する突起部の位置関係を規定する。まず、各突起部の位置を座標化する。突起部の位置とは、上述した突起部の底面の重心の位置(以下、単に、突起部の重心と称する場合がある。)を意味する。
突起部の底面の重心の位置は、以下の方法により座標化することができる。まず、SEM画像やAFM画像中の所望の位置に原点を設定する。例えば、SEM画像やAFM画像中の左下を原点とする。次に、上記原点から、上記画像内において印刷物の突起部が形成された面内の長さ方向に相当する一方向をx軸とし、x軸に直交し幅方向に相当する一方向をy軸と規定する。このように画像を座標平面とすることで、上記画像上の各突起部について、上述した方法で特定した底面の重心の位置を座標化することができる。
次に、突起部の底面の重心の座標から、特定の一の突起部と隣接する複数の突起部との突起部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は以下の計算式によって算出され、特定の一の突起部について算出される重心間距離のうち、最小の距離を「最近接重心間距離」とする。
重心間距離={(x−x+(y−y1/2
なお、式中のxおよびyは、特定の一の突起部の底面の重心位置を示すx座標およびy座標である。また、xおよびyは、上記特定の一の突起部に隣接する突起部の底面の重心位置を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
(6)上記の方法で各突起部の最近接重心間距離を抽出し、既存の表計算ソフトで統計処理することにより、最近接重心間距離の平均値および分散を計算する。なお、最近接重心間距離の平均値および分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最近接重心間距離−最近接重心間距離の平均値)/標準偏差
(7)次に、突起部の底面の重心から頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂部が示す方向を規定する。方位角φは、突起部の位置を座標化した際に設定した座標平面の平面視上において、x軸に対して突起部の底面の重心および頂部を結ぶ辺が成す角度で規定される。
抽出した各突起部について方位角φを決定し、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値を算出する。この算出は、既存の表計算ソフトを使用して行うことができる。
各パラメータの定量化において算出される分散の値とは、一般に平均値から算出される値、すなわち、測定値と測定値の平均値との差の二乗平均の和を抽出点数で割ることで算出される値である。
B.パラメータ
次に、本発明における突起部の形状および配置位置のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
1.突起部の大きさ
突起部の大きさは、突起部の底面の重心を通る最も幅広な部分であるの突起部の底面の最大幅で規定される。
突起部の底面の最大幅とは、図1、図3(a)においてRで示す部分である。
図3は、本発明の印刷物の、突起部を有する面側から観察した平面SEM画像であり、図3(a)中のTは突起部の頂部を、Gは底面の重心を示す。
突起部の底面の最大幅の平均は、250nm以上500nm以下の範囲内であればよく、中でも300nm以上400nm以下の範囲内であることが好ましい。球形粒子では幾何光学散乱が支配する直径は数μm以上であるが、突起形状での散乱は異なる挙動を示す。突起部の底面が上記範囲内に最大幅を有する形状とすることで、突起部においてミー散乱が支配的に生じることが推測されるからである。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも大きいと、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり前方散乱が起こりにくくなるため、前方散乱が起こりにくくなり、突起部内への光の吸収が小さくなり、所望の反射率低減効果が得られない場合がある。また、突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも大きいと、単位面積あたりの突起部の個数が減少するため多数回反射が生じにくくなり、反射率を低減させることが困難となる場合がある。
一方、突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも小さいと、レイリー散乱が支配的になるため、前方散乱が起こりにくくなり、前方散乱が起こりにくくなり、突起部内への光の吸収が小さくなる場合がある。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲内にあるとき、上記突起部の底面の最大幅の分散は10000以上であることが好ましい。干渉により特定の波長の光の強度が強まる不具合を抑制できるからである。
上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば18000以下であることが好ましい。突起部の底面の最大幅の分散の単位はnmとなる。
2.隣接する突起部の位置関係
突起部の位置とは、突起部の底面の重心の位置をいい、図1〜図3においてG、G、G、Gで示す部分である。
隣接する突起部の位置関係は、一の突起部および上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の突起部の重心間距離、すなわち、最近接重心間距離の平均により規定される。
上記最近接重心間距離は、先に説明した方法で算出され定量化されるが、さらに図を示して説明する。最近接重心間距離は、図3(b)で示すように、突起部1Aに隣接する突起部のうち、突起部1Aの重心Gと最も近い位置に重心Gを有する突起部1Bを抽出し、その重心間距離L1を最近接重心間距離として算出する。次に、突起部Bに隣接する突起部のうち、突起部1Bの重心Gと最も近い位置に重心Gを有する突起部1Cを抽出し、その重心間距離L2を最近接重心間距離として算出する。
最近接重心間距離の平均は、上記操作を繰り返し行い、突起部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出される。
上記最近接重心間距離の平均は、400nm以下であればよく、中でも360nm以下、特に350nm以下であることが好ましい。最近接重心間距離の平均が上記範囲よりも大きいと、隣接する突起部が密接しておらず、突起部が形成されない平坦領域である非突起部領域が多く存在することとなり、上記非突起部領域において生じる光の反射により、反射率低減効果が低下する場合がある。
最近接重心間距離の平均の下限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば280nm以上であることが好ましい。
最近接重心間距離の平均が上記範囲内にあるときの上記最近接重心間距離の分散は、10000以上であればよく、中でも11000以上、特に12000以上であることが好ましい。最近接重心間距離の分散が上記範囲よりも小さいと、多数の突起部が均等なピッチ幅で配置されることとなり、干渉によって特定の波長の光の強度が強まり、所望の反射率低減効果が発揮されにくい場合があるからである。
上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば14000以下であることが好ましい。なお、最近接中心間距離の分散の単位はnmとなる。
3.突起部の頂部が示す方向
突起部の頂部が示す方向とは、突起部の底面の重心に対して突起部の頂部が位置する方向をいう。
すなわち、図2に示すように、突起部1が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において突起部の底面の重心Gからの突起部1の頂部Tの位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂部が示す方向が規定される。方位角φは、先に説明した方法により規定される。
多数の突起部の頂部が示す方向のばらつきは、突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向と規定し、平面視上における上記突起部の頂部の位置を方位角φで示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたとき、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|)、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち、|Σ(k=1〜n)sinφ/n|)の値により規定することが可能である。
ここで、多数の突起部の頂部が同一方向を向いて配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は大きくなる。一方、多数の突起部がそれぞれ異方向を向いてランダムに配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は小さくなる。
本発明においては、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことで、多数の突起部の頂部が、光の入射角度に因らず反射率の低減が可能となるように、ランダムな方向に向くことができる。中でも多数の突起部が、|(Σ(k=1〜n)cosφ)/n|≦0.15、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.15の関係を満たすことが好ましく、特に|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.10、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.10の関係を満たすことが好ましい。|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値が上記範囲よりも大きいと、多数の突起部の各頂部が同一方向を向き、高い規則性を有して配置されることになる。このため、特定の角度から入射される光に対しては、高い反射率で反射してしまい、光の入射角度に応じて反射率の低減の程度に差が生じる場合がある。
なお、抽出点数nは30点以上であればよく、より好適な点数については既に説明した抽出点数と同様である。
C.その他
上記突起部の高さは、上述の3つのパラメータが所定値となることが可能な大きさであれば特に限定されないが、例えば、100nm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも300nm〜1μmの範囲内が好ましい。突起部の高さが上記範囲よりも小さい場合、突起部の頂部の曲率が大きくなり、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になる。このため、前方散乱が起こりにくくなり、突起部内への光の吸収が小さくなる可能性がある。一方、突起部の高さが上記範囲よりも大きい場合、所望の突起部の形状に製造することが困難となる可能性がある。
突起部の高さは、突起部が形成された層の表面から突起部の頂部までの長さをいい、図1においてhで示す部分である。突起部の高さは、上述の「A.パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により検出した極大点から、特定の基準位置(例えば、突起部の根元位置を高さ=0とする。)からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化される値である。
上記突起部の高さが上記範囲内にあるとき、突起部の底面の最大幅に対する高さのアスペクト比(図1中のh/R)としては、所望の反射率低減効果を発揮することが可能な比であればよく、例えば、0.3〜30の範囲内が好ましく、中でも0.8〜3の範囲内が好ましい。上記アスペクト比が上記範囲よりも小さいと、そもそも突起部において光の反射が起こりにくくなるため、突起部による反射率低減効果が十分に発揮されない場合ある。一方、アスペクト比が上記範囲よりも大きいと、賦形が困難となり突起部が所望の形状とならない場合がある。
突起部は、凸型の錐状構造を成しており、突起部の形状を精度良く賦形することが可能であるため、生産性が向上するという製造上の利点を有する。
一般に、モスアイ構造のような突起部が規則的に配置された印刷物においては、反射率低減効果を向上させるために、突起部の形状を頂部が分岐した多峰形状とし、表面積を大きくする方法が用いられる。しかし、このような形状は、精度良く賦形できない場合がある。一方、本発明においては、突起部に所定のばらつきをもたせることで反射率低減効果を奏することから、突起部を多峰形状とする必要がなく、個々の突起部を精度良く賦形することが可能となるのである。
突起部の頂部の先端は、尖っていてもよく、曲率を有していてもよい。中でもミー散乱による突起部内への光の吸収が大きくなることから、先端が尖っていることが好ましい。
突起部の底面の形状は、近似により上述したパラメータの特定が可能な形状であれば特に限定されず、例えば、円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等を挙げることができる。
また、突起部の側面形状は、直線状であってもよく、曲線状であってもよい。さらに、突起部の側面形状が多段状であってもよい。中でも突起部の側面が多段状であることが好ましい。突起部において多数回反射およびミー散乱がより起こりやすくなるからである。
II.実施形態
次に、本発明の印刷物の実施態様について説明する。
本発明の印刷物は、透明基材と、透明基材の一方の面上に形成された印刷層とを有し、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面側の最表面に、上述の「I.突起部」の項で説明した所定のばらつきを有する多数の突起部が多数形成されたものであり、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面に、透明低反射層が形成され、上記透明低反射層の上記透明基材と対向する面に、多数の上記突起部が形成されている第1態様と、多数の上記突起部が、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面に直接形成されている第2態様と、を挙げることができる。
以下、各態様について説明する。
A.第1態様
本発明の印刷物の第1態様(以下、この項において、本態様とする場合がある。)について説明する。本態様の印刷物は、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面には、透明低反射層が形成され、上記透明低反射層の上記透明基材と対向する面に、多数の上記突起部が形成されている。
本態様においては、上記透明低反射層が印刷物の最表層に位置する。
本態様の印刷物について図面を参照しながら説明する。図4は本態様の印刷物の一例を示す概略断面図である。図4に示すように、本態様の印刷物10は、透明基材2、透明基材2の一方の面上に形成され、印刷画像を構成する印刷層3、および透明基材2の印刷層3が形成された面と対向する面上に形成された透明低反射層4を有するものである。透明低反射層4の透明基材2と対向する面には、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の突起部1が形成されている。
図4に例示する本態様の印刷物においては、透明低反射層4は、透明支持層11と、透明樹脂を含む低反射樹脂層12とが積層された層構成を有し、最表層である低反射樹脂層12の表面上に、多数の突起部1が所定のばらつきを有して形成されている。透明低反射層4は、接着層13を介して透明基材2上に形成されている。
多数の突起部が有する所定のばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。多数の突起部が所定のばらつきを有するための3つのパラメータおよびその所定値については、上述の「I.突起部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様によれば、透明基材の表面に直接、突起部を形成することが困難な場合に、所望の突起部が賦形された透明低反射層を印刷物の最表層として設けることで、所定のばらつきを有する突起部による本発明の効果を奏することができる。
以下、本態様の印刷物の各構成について説明する。
1.透明低反射層
本態様における透明低反射層は、透明基材と対向する面(以下、透明低反射層の表面と称する場合がある。)に、多数の上記突起部が所定のばらつきを有して形成されている。
透明低反射層の表面に形成された突起部の詳細については、上述の「I.突起部」で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記透明低反射層は、可視光の全波長域に対して低い反射率を示すことが好ましい。具体的には、上記透明低反射層の可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.5%以下であることが好ましい。
透明低反射層の最大反射率を上述の上限値以下とすることで、可視光の全波長域に対して低い反射率を示すことができ、突起部による反射率低減効果が十分に発揮されるため、印刷画像の視認性を向上させることが可能となる。また、突起部による反射率低減効果により、印刷物への光の吸収率が高くなることから、印刷画像の発色性が向上し、色彩を鮮明に表示することが可能となる。
最大反射率は、計測装置としてScanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)を用い、突起部が形成された面(以下、突起部形成面と称する場合がある。)への8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射を測定した値とすることができる。具体的には、可視光領域380nm〜780nmの波長の光を8°にて入射させた際の全方向の積算反射率を求め、その中で最も高い反射率とすることができる。透明低反射層の最大反射率は、例えば、後述する印刷層を黒色印刷層とすることで測定が可能である。本明細書内における最大反射率は、上記の方法により測定された値とする。
上記透明低反射層は、ヘイズ値が高いことが好ましい。ヘイズ値が高い程、突起部の形状および配置位置のばらつきが大きくなることから、透明低反射層全体として優れた反射率低減効果を奏することができ、印刷物における印刷画像の発色性や視認性を向上させることができるからである。
また、透明低反射層のヘイズ値が高い程、ミー散乱による光の散乱が増大し、突起部形成面や印刷物内の積層界面における全反射を低減することができる。これにより、印刷物に入射する光、中でも、印刷物の色調に係る光以外の光の反射が低減されて、印刷物内への吸収率が高くなるため、印刷層における印刷画像の発色性がさらに向上し、色彩をより鮮明に表示することが可能となるからである。
透明低反射層が高ヘイズ値を示すことにより奏される上述の効果について、更に説明すると、高ヘイズ値を示す上記透明低反射層に対し、全反射する角度で入射した白色光は、種々の角度に散乱して層内に吸収されるが、このとき、入射角が小さくなった一部の光が印刷層に入射することで、所定の波長光については反射が起こり、印刷物の所定の色調の発色を高めることができる。
上記透明低反射層のヘイズ値は、70%以上であることが好ましく、中でも80%以上であることが好ましい。また、ヘイズ値の上限としては95%以下であることが好ましい。ヘイズ値が上記範囲よりも小さいと、突起部が形状および配置位置に所定のばらつきを有しておらず、光の多数回反射およびミー散乱による透明低反射層への光の吸収が起こりにくくなり、反射率低減効果が発揮されない場合があるからである。一方、ヘイズ値が上限よりも大きいと、所望の突起部の形状に製造することが困難となる場合があるからである。
ヘイズ値は、透明低反射層の突起部が形成された領域での値であり、ヘイズメーター(東洋精機製作所製 商品名:ヘイズガード)を用いてJIS K7361に準拠した方法により測定することができる。本明細書内におけるヘイズ値は、上記の方法により測定された値とする。
本態様における透明低反射層は、表面に多数の突起部が所定のばらつきを有して形成され、所望の最大反射率およびヘイズ値を示すことが可能であればよく、以下の2つの仕様に大別することができる。
すなわち、本態様における透明低反射層は、図4に例示したように、透明低反射層4が、透明支持層11と、透明支持層11の一方の面側に形成され、透明樹脂を含む低反射樹脂層12とを有し、低反射樹脂層12の透明支持層11と接する面と対向する面上に多数の突起部1が形成された仕様(以下、透明低反射層の第1仕様とする。)と、図5に例示するように、透明低反射層4が、透明樹脂により形成された単層であり、透明基材2上に直に形成された仕様(以下、透明低反射層の第2仕様とする。)と、に大別することができる。
以下、透明低反射層の各仕様について説明する。
(1)透明低反射層の第1仕様
透明低反射層の第1仕様(以下、この項において、本仕様とする場合がある。)は、透明支持層と、上記透明支持層の一方の面側に形成され、透明樹脂を含む低反射樹脂層とを有し、上記低反射樹脂層の上記透明支持層と接する面と対向する面上に多数の上記突起部が形成されている。
本仕様の透明低反射層は、透明支持層上に低反射樹脂層を形成し、上記低反射樹脂層の透明支持層と接する面と対向する面上に多数の突起部を賦形した後、透明基材の印刷層が形成された面と対向する面上に貼付して印刷物とすることができる。このため、透明低反射層の突起部を、透明基材を介して印刷層の位置に合わせて配置することができ、印刷画像の視認性を向上させることが可能となり、また、製造時のハンドリング性が向上するという製造上の利点を有する。さらに、透明基材が曲面である、透明基材の密着性が悪い等の理由から、透明基材の表面上に直接、透明低反射層を形成することが困難な場合であっても、所望の印刷物とすることができるという利点を有する。
(a)低反射樹脂層
低反射樹脂層は、透明樹脂を含む。多数の突起部が所望の反射率低減効果を発揮するためには、上述の「I.突起部」で説明した3つのパラメータの定量化により規定される所定のばらつきを有する必要があるところ、透明樹脂を含む低反射樹脂層の表面に突起部を賦形することで、突起部ごとの形状の精度を高くなり、所定のばらつきを示すことが可能となる。
上記低反射樹脂層を構成する透明樹脂は、上述の所定のばらつきを有する多数の突起部を賦形することが可能なものであれば特に限定されず、例えばアクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料、および各種硬化形態の賦形用樹脂を使用することができる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
上記低反射樹脂層は、必要に応じて任意の材料を含んでいてもよい。任意の材料としては、例えば屈折率調整剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。屈折率調整剤としては、例えば特開2013−142821号公報等に開示される低屈折率材が挙げられる。
上記低反射樹脂層の厚みは特に限定されず、使用する材料、要求される強度等を考慮して適宜設定することができ、例えば3μm〜200μmの範囲内が好ましく、中でも5μm〜100μmの範囲内が好ましい。低反射樹脂層の厚みは、低反射樹脂層と透明支持層との界面から低反射樹脂層の表面に有する突起部の頂部のうち最も高い位置までの長さの平均をいう。
上記低反射樹脂層は、印刷層における印刷画像の視認を可能とするために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、低反射樹脂層の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。本明細書内において、光透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計 U−4100により測定された値とする。
上記低反射樹脂層の屈折率は、後述する透明支持層との屈折率差が所望の範囲内となる大きさであることが好ましく、選択する透明樹脂の種類にもよるが、1.20〜2.40の範囲内が好ましく、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。なお、本明細書内において、屈折率は、株式会社島津製作所製 精密分光計GMR−1DA型により測定された値とする。
(b)透明支持層
透明支持層は、一方の面上に上述の低反射樹脂層を有し、上記一方の面と対向する面が、透明基材と接触または近接する。
上記透明支持層に用いられる材料は、所望の光透過性を示し、所望の屈折率を有する透明支持層を得ることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の樹脂を用いることができる。
具体的には、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン等を挙げることができる。
また、透明支持層の材料として、ガラス、セラミックス等の無機材料を用いてもよい。
上記透明支持層は、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
上記透明支持層は、板状、シート状、フィルム状等の各種態様のものを用いることができる。
上記透明支持層の厚みは、低反射樹脂層を支持することができ、所望の光透過性を示すことが可能な厚みであれば特に限定されないが、例えば0.025mm〜20mmの範囲内が好ましい。
上記透明支持層は、印刷層における印刷画像の視認を可能とするために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、透明支持層の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。
上記透明支持層の屈折率は、低反射樹脂層の屈折率と同程度であることが好ましい。透明支持層と低反射樹脂層との屈折率差が大きいと、積層界面において、屈折率の不連続界面が形成されることになり、上記不連続界面において光が反射されることで、突起部による反射率低減効果が損なわれて、印刷画像の視認性が低下するからである。
低反射樹脂層と透明支持層との屈折率差(絶対値)は、0〜0.5の範囲内、中でも0〜0.2の範囲内、特に0〜0.1の範囲内であることが好ましい。また、上記透明支持層の屈折率は、透明低反射層の屈折率との関係において決定されるが、1.20〜2.40の範囲内であることが好ましく、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。
(c)その他
本仕様の透明低反射層は、透明支持層上に低反射樹脂層を積層形成してもよく、透明支持層および低反射樹脂層の樹脂を共押し出しして形成してもよい。
また、本仕様の透明低反射層は、透明基材の印刷層が形成された面と対向する面上に接着層を介して形成されてもよく、透明基材上に熱ラミネート等により直に形成されてもよい。
上記接着層に用いられる接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱熔融型接着剤等の公知の接着剤が挙げられる。また、これら接着剤の材料としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ゴム等の公知の樹脂が挙げられる。
上記接着層の厚みは、透明低反射層と透明基材とを所望の強度で貼合することができ、透明基材を介して対向位置にある印刷層における印刷画像の視認性等を阻害しない厚みであれば特に限定されず、例えば1μm〜1000μmの範囲内とすることが好ましい。
上記接着層は、印刷層における印刷画像の視認を可能とするために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、接着層の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。
また、上記接着層は、その屈折率が透明支持層の屈折率および透明基材の屈折率と同程度であることが好ましい。すなわち、接着層の屈折率と、透明支持層の屈折率および透明基材の屈折率との屈折率差が小さいことが好ましい。その理由については、上述の「(b)透明支持層」の項で説明した透明支持層と低反射樹脂層との屈折率差を小さくする理由と同様である。
上記接着層と上記透明支持層との屈折率差(絶対値)、および上記接着層と透上記明基材との屈折率差(絶対値)は、それぞれ0〜0.5の範囲内、中でも0〜0.2の範囲内、特に0〜0.1の範囲内であることが好ましい。また、上記接着層の屈折率の値は、透明支持層および透明基材の各屈折率との関係において決定されるが、1.20〜2.40の範囲内、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。
(2)透明低反射層の第2仕様
透明低反射層の第2仕様(以下、この項において、本仕様とする場合がある。)は、透明樹脂により形成された単層である。
また、本仕様の透明低反射層は、透明基材の印刷層が形成された面と対向する面上に直に形成されており、表面に多数の突起部が所定のばらつきを有して形成されている。
本仕様の透明低反射層は、上述の第1仕様の透明低反射層とは異なり、単層であることから、透明低反射層内に積層界面が形成されない。したがって、透明低反射層内において積層界面での光の反射を防止することができる。
本仕様の透明低反射層を構成する透明樹脂は、上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の項で説明した透明樹脂と同様とすることができる。
また、本仕様の透明低反射層は、必要に応じて上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の項で説明した任意の材料を含んでいてもよい。
本仕様の透明低反射層の厚みは、上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の厚みと同等とすることができる。
また、本仕様の透明低反射層の光透過率および屈折率は、上述の「(1)透明低反射層の第1仕様 (a)低反射樹脂層」の項で説明した低反射樹脂層の光透過率および屈折率と同様とすることができる。
本仕様の透明低反射層の形成方法としては、例えば、透明基材の印刷層が形成された面と対向する面上に、透明低反射層を構成する透明樹脂を直接塗布し、賦形することで、表面に多数の突起部を形成する方法等が挙げられる。
2.印刷層
本態様における印刷層は、透明基材の透明低反射層が形成される面と対向する面上に形成される。
上記印刷層は、減法混色により単色、多色ないしフルカラーで表示される印刷画像が印刷された層であり、透明基材の表面にインキ等を用いて直に印刷形成される。
上記印刷層の材料は、減色混合により色表示が可能な所望の印刷画像を印刷できる材料であれば特に限定されず、例えば、バインダ樹脂および着色剤を含む樹脂インキ等が挙げられる。
上記樹脂インキに含まれるバインダ樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの、一般に樹脂インキに使用される公知のバインダ樹脂の中から、要求される物性、印刷適性などに応じて適宜選択することができる。例えば、セルロース系樹脂、アクリル樹脂のほか、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
上記樹脂インキに含まれる着色剤は、一般に印刷物に使用される材料を用いることができ、例えば、無機顔料、有機顔料、染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
また、着色剤の種類に応じて、印刷層の遮光性を調整することが可能である。遮光性の高い印刷層とする場合に用いられる着色剤の具体例としては、後述する「4.任意の部材」の項で説明する遮光層に用いられる着色剤を挙げることができる。
上記樹脂インキは、紫外線吸収剤、架橋剤、安定剤、可塑剤、硬化剤等の任意の材料を含んでいてもよい。
上記印刷層の厚みは、印刷法により適宜選択されるものであるが、具体的には、0.01μm〜2000μmの範囲内、中でも0.3μm〜800μmの範囲内、特に0.8μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。印刷層の厚みが上記範囲よりも厚いと、印刷物が厚膜化するため、印刷物の加工性が低下する場合があり、一方、上記範囲よりも薄いと、印刷層を透明基材上に均質に形成することが困難となり、擦れやムラを生じやすくなる場合があるからである。
上記印刷層における印刷画像としては、例えば、絵柄、写真、文字、数字、模様、稿図、標章等が挙げられる。
上記印刷層は光透過性を有していてもよく、遮光性を有していてもよいが、印刷物への光の吸収率を高める観点から、遮光性を有することが好ましい。印刷層が光透過性を有すると、突起部により散乱された光の一部が印刷層から出射されるため、印刷物内への光の吸収率が減少し、突起部による本発明の効果が低減する場合がある。また、印刷物の印刷層側表面から光が入射する場合に、光が印刷層を透過してしまい、視認される印刷画像にヘイズが生じる場合があるからである。
上記印刷層が遮光性を有するとは、具体的には、上記印刷層の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)であることをいう。
上記印刷層の遮光性が上記範囲に満たない場合であっても、後述するように、印刷層の透明基材に接する面と対向する面上に遮光層を設けることで、印刷層の遮光性を補うことができる。これにより、印刷画像を鮮明に表示することができ、また、ヘイズの発生を抑制することができる。
上記印刷層は、透明基材の一方の表面の全域に形成されていてもよく、一部の領域に形成されていてもよい。
上記印刷層は、一般的な印刷法を用いて形成することが可能であり、印刷層の形成に使用される材料の種類等に応じて適宜選択することができる。具体的には、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェットプリントなどの公知の印刷法を挙げることができる。
3.透明基材
本態様における透明基材は、所望の光透過性を有し、自己支持性を有するものであれば特に限定されるものではなく、反射防止物品に用いられる公知の透明基材を用いることができる。このような透明基材に用いられる材料としては、例えば、透明樹脂や透明無機材料が挙げられる。
透明樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。具体的にはトリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等を挙げることができる。
一方、透明無機材料としては、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等が挙げられる。
上記透明基材は、フレキシブル性を有していてもよく、リジットなものであってもよい。よって、形態としては、フィルム状、シート状、板状等が挙げられる。
上記透明基材は、印刷層の印刷画像を鮮明に表示するために、可視光に対する透過性を備える。具体的には、透明基材の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。
上記透明基材の屈折率は、隣接する他の層との屈折率と同程度であることが好ましい。隣接する他の層と透明基材との屈折率差が大きいと、界面に屈折率の不連続界面が形成されることになり、上記不連続界面において光が反射されることで、突起部による反射率低減効果が損なわれて印刷画像の視認性が低下するからである。隣接する層と透明基材との屈折率差(絶対値)としては、0〜0.5の範囲内、中でも0〜0.2の範囲内、特に0〜0.1の範囲内であることが好ましい。
ここでいう「透明基材と隣接する層」とは、透明基材に直に接する層である。透明基材上に直に透明低反射層が形成されている場合、透明低反射層が第1仕様であれば透明支持層をいい、第2仕様であれば透明低反射層自体をいう。また、透明基材と透明低反射層とが接着層を介して積層されている場合、「透明基材と隣接する層」とは、接着層のことを指す。
上記透明基材の屈折率は、上記透明基材と隣接する層の屈折率との関係において決定されるが、1.20〜2.40の範囲内であることが好ましく、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。
上記透明基材の厚みは、表面に印刷層を形成することができ、印刷物として所望の機械強度を有することが可能な大きさであればよく、形態に応じて適宜設計することができるが、例えば10μm以上50μm、中でも10μm以上25μmの範囲内が好ましい。透明基材の厚みが上記範囲よりも小さいと、表面に直接、各種印刷法により印刷層を形成することが困難となる場合がある。一方、上記範囲よりも大きいと、印刷物の最表面に有する突起部から印刷層までの距離が大きくなり、視認される印刷画像に距離感が生じることにより視認性が低下する場合がある。
上記透明基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。中でも層内に界面を有さない点から、透明基材は単層であることが好ましい。
透明基材の材料によっては、透明基材の表面に直に印刷画像を印刷して印刷層を形成する際に、透明基材がインク等をはじいてしまい、印刷層の形成が困難となる場合がある。そのため、透明基材は、印刷層との密着性を向上させるために表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、およびグラフト化処理等の、公知の表面改質技術を適用することができる。
表面処理は、透明基材の表面のうち、少なくとも印刷層が形成される面に施されることが好ましく、さらに、透明低反射層が形成される面にも施されることが好ましい。透明基材と透明低反射層との密着性を向上させることが可能となるからである。
4.任意の部材
以下、本態様の印刷物に想定される任意の部材について説明する。
(1)機能層
本態様の印刷物は、図6で例示するように、少なくとも印刷層3の透明基材2と接する面と対向する面(以下、印刷層表面とする場合がある。)上に、機能層14を有していてもよい。なお、図6は、機能層14として遮光層を用いた例を示す。
少なくとも印刷層表面に機能層を設けることで、印刷物に機能層の種類に応じた機能を付加することや、機能層による光制御により印刷画像の色再現性や視認性を向上させることができるからである。また、印刷層表面に機能層を設けることにより、印刷層を保護することができるからである。
印刷層表面に設ける機能層は、要求される機能等に応じて適宜選択することができ、例えば遮光層、導電層、帯電防止層、保護層、印刷用粘着層や印刷用接着層等が挙げられる。
(a)遮光層
本態様の印刷物は、機能層として遮光層を有することが好ましい。印刷物の印刷層側表面から光が透過することにより、突起部を介して表示される印刷画像においてヘイズが目立つことによる視認性の低下、および、鮮明な色表示が阻害されることによる色再現性の低下を防止することができるからである。
上記遮光層は、印刷物の印刷層側表面から入射する光を遮ることが可能なものであればよく、例えば、遮光性樹脂層、金属膜等の、一般に表示装置等の遮光層として用いられるものを用いることができる。
(i)遮光性樹脂層
遮光性樹脂層は、通常、着色剤およびバインダ樹脂を含む。
また、遮光性樹脂層の色は、紫外線および可視光線を十分遮光する効果を奏する色を呈するものであれば特に限定されず、例えば、黒色、銀色ないし白色、青色、紫色、紺色等の暗色等が挙げられる。
上記遮光性樹脂層に含まれる着色剤は、一般的な遮光層に用いられる有機系または無機系の染料、顔料等が挙げられ、遮光性樹脂層の色に応じて適宜選択することができる。
例えば、黒色であれば、鉄黒、黒鉛、または、カ−ボンブラック等が挙げられる。
また、白色ないし銀色であれば、チタン白(酸化チタン)粉末やアルミニウム粉末、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性けい酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。
暗色であれば、有彩色の着色剤、例えば、アゾ系染料・顔料、アントラキノン系染料・顔料、フタロシアニン系染料・顔料、キナクリドン系染料・顔料、ジオキサジン系染料・顔料、その他等の有機系染料・顔料、黄鉛、クロムバ−ミリオン、紺青、弁柄、その他等の無機系顔料等が挙げられる。
また、上記遮光性樹脂層に含まれるバインダ樹脂は、一般に遮光層を形成する際に用いられるバインダ樹脂と同様の樹脂を使用することができ、遮光性樹脂層の形成方法に応じて適宜選択が可能である。
例えば、上記遮光性樹脂層を印刷法やインクジェット法を用いて形成する場合、上記バインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
一方、上記遮光性樹脂層をフォトリソグラフィー法を用いて形成する場合、上記バインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂等が挙げられる。
上記遮光性樹脂層は、必要に応じて光重合開始剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。
(ii)金属膜
金属膜としては、例えばクロムの単層や、酸化クロム(CrO)およびクロムの多層膜、酸化クロム(CrO)、窒化クロム(CrN)およびクロムの多層膜、クロムおよび酸化窒化クロム(CrN)の多層膜等を用いることができる。ここで、x、yは任意の数である。金属膜に用いられる金属としては、例えば、特開2014−142610号公報に開示される金属膜の材料を挙げることができる。
(iii)その他
遮光層は、単層であってもよく、複数の層を積層させて成る多層体であってもよい。多層体とすることで、遮光性を更に向上させることができる。
遮光層は、可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)であることが好ましい。
遮光層の厚みは、所望の遮光性を得ることができる厚みであれば特に限定されず、遮光層の種類等に応じて適宜調整される。
遮光層は、少なくとも印刷層の透明基材と接する面と対向する面上に有していればよい。
印刷層が透明基材と接する面と対向する面上の全域に形成されている場合、図6(a)で示すように、印刷層3の透明基材2と接する面と対向する面全域に遮光層14を有することができる。
また、上記印刷層が透明基材と接する面と対向する面上の一部の領域に形成されている場合は、図6(b)で示すように、印刷層3の透明基材2と接する面と対向する面上にのみ遮光層14を有していてもよい。この場合、印刷物の印刷層が形成されていない領域では、透明低反射層が突起部により奏されるヘイズ機能により高ヘイズ値を示すため、白色を呈することから、印刷物の印刷層以外の領域の色(下地色)を白色とすることができる。さらに、図6(c)で示すように、印刷層3表面を含む印刷物の印刷層側の表面全域に遮光性14を有する、すなわち、遮光層14が、印刷層3を覆うようにして、透明基材2の印刷層3が形成された側の面上の全域に形成されていてもよい。この場合、上記印刷物の印刷層が形成されていない領域を、遮光層の色とすることができる。
また、上記印刷層が光透過性を有する場合、印刷層の色と遮光層の色とを重ねて印刷層の印刷画像を多彩に表示することができる。さらには、印刷層の色と遮光層の色との重複により、印刷画像をグラデーションに表示することができ、印刷画像の意匠性をさらに向上させることができる。
上記遮光層の形成方法は、遮光層の種類等に応じて適宜選択することができる。上記遮光層が遮光性樹脂層であれば、上記遮光層の形成方法としては、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィー法等が挙げられる。一方、上記遮光層が金属膜であれば、遮光層の形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法等が挙げられる。
(b)導電層
本態様の印刷物は、機能層として導電層を有していてもよい。導電層による帯電防止性能により、印刷物が静電気を帯びるのを防ぐことができ、印刷物に発生した静電気による貼付時の不要な密着等のトラブルを防ぐことができるからである。
上記導電層は、透明であってもよく不透明であってもよいが、遮光性の観点から不透明であることが好ましい。導電層の材料は、特に限定されず、一般的な導電層と同様とすることができ、例えば、金属単体、合金、導電性酸化物、導電性高分子材料等が挙げられる。また、必要に応じてバインダ樹脂を含んでいてもよい。具体的な導電層の材料については、例えば特開2004−017456号公報に記載の各種材料を用いることができる。
上記導電層は、印刷層の表面にパターン状に形成されていてもよく、印刷層表面の全面を覆うように形成されていてもよい。また、印刷層が、透明基材の一方の表面の一部の領域に形成されている場合、導電層は、透明基材の印刷層表面を含む表面全域に形成されていてもよい。
導電層表面の表面抵抗値は、帯電防止性能を発揮できる大きさであればよく、導電層の膜厚にもよるが、例えば0.01Ω/□〜1000Ω/□の範囲内が好ましい。なお、上記表面抵抗は、4端子測定法により、Loresta−GP、MCP−T600(三菱化学製)を用いて測定される値である。
上記導電層は、材料に応じて、真空蒸着や各種印刷法等、一般的な導電層の形成方法を用いて形成することができる。
(c)帯電防止層
本態様の印刷物は、上述の導電層と同様の効果を奏するという理由から、機能層として帯電防止層を有していてもよい。上記帯電防止層は、帯電防止剤を含む層であり、一般に反射防止用途の積層体に用いられるものを適用することができる。具体的には、特開2011−203745号公報等に記載の帯電防止層を用いることができる。なお、帯電防止層は、遮光性の観点から不透明であることが好ましい。
(d)その他の機能層
その他の機能層としては、被着体に貼り合せるための印刷用粘着層や印刷用接着層、印刷層の耐傷性の観点から保護層等が挙げられる。
(2)その他の任意の部材
本態様の印刷物は、透明基材と透明低反射層および/または印刷層との間にプライマー層(密着安定層)を有していてもよい。透明基材と印刷層および/または透明低反射層との密着性を向上させることができるからである。プライマー層の材料としては、例えば、フッ素系コーティング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
5.その他
本態様の印刷物において、多数の突起部は、印刷物の少なくとも印刷層と平面視上重なる位置に形成されていればよく、印刷層が形成されていない領域と平面視上重なる位置にも突起部が形成されていてもよい。
例えば、図4および図5で示したように、本態様の印刷物10は、透明基材2の一方の面の全域に印刷層3が形成され、透明基材2の印刷層3が形成された面と対向する面の全域に、表面に突起部1を有する透明低反射層4が形成されていてもよい。
また、印刷層が透明基材の一方の面の一部に形成されている場合、本態様の印刷物は、図7(a)で例示するように、透明基材2の印刷層3が形成された面と対向する面の、印刷層3と平面視上重なる位置に、突起部1を有する透明低反射層4が形成されていてもよく、図7(b)で示すように、透明基材2の印刷層3が形成された面と対向する面の全域に、突起部1を有する透明低反射層4が形成されていてもよい。図7(b)で示す印刷物は、高い視認性を有し且つ色彩が鮮明な印刷画像が表示される印刷領域(図7(b)中のX領域)と、透明低反射層4のヘイズにより白色を帯びた非印刷領域(図7(b)中のY領域)とを有することができる。また、印刷層表面を含む透明基材の表面全域に上述した遮光層が設けられている場合、非印刷領域は遮光層の色を呈することができる。
本態様の印刷物は、可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.5%以下であることが好ましい。その理由および測定方法については、上述の「1.透明低反射層」の項で説明した理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様の印刷物において、突起部が印刷物の表面の一部に形成されている場合は、上記最大反射率とは、本態様の印刷物の、突起部が形成された領域での最大反射率とする。
6.用途
本態様の印刷物は、例えば、広告、ポスター、雑誌、書籍、カタログ、化粧板、自動車内装材等に用いることができる。特に自動車内装材のダッシュボードは、本態様の印刷物を用いることでフロントガラスへの映りこみを抑制できるため、有効である。
7.製造方法
本態様の印刷物の製造方法は、透明基材の一方の表面に印刷層を印刷形成し、透明基材の印刷層が形成された面と対向する面上に透明低反射層を形成することができ、透明低反射層の表面に所定のばらつきを有する多数の突起部を形成することが可能な方法であれば、特に限定されず、透明低反射層の仕様に応じて適宜選択することができる。
(1)製造方法の第1例
本態様の印刷物は、例えば、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に多数の凹型錐状構造体が形成されたソフトモールドを形成する転写版準備工程、上記ソフトモールドの上記凹型錐状構造体が形成された表面に透明低反射層用組成物を塗布する塗布工程、塗布層上に透明基材を配置して上記塗布層を硬化した後、上記ソフトモールドを剥離して透明低反射層を形成する賦形工程、および上記透明基材の上記透明低反射層が形成された面と対向する面上に印刷層を印刷形成する印刷工程、を経ることにより形成することができる。
上述の各工程を経て形成される本態様の印刷物は、第2仕様の透明低反射層を有し、上記突起部の形状および配置位置のばらつきは、上記転写原版の凸型錐状構造体の形状および配置位置のばらつきと対応する。
(a)転写版準備工程
本工程は、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に凹型錐状構造体が形成されたソフトモールドを形成する工程である。
まず、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を準備する。上記凸型錐状構造体は、上述の「I.突起部」の項で説明した突起部に相当し、上記項で説明した3つのパラメータの定量化により規定された所定のばらつきを有するものとする。
上記転写原版の材質は、所定のばらつきを有する凸型錐状構造体の形成が可能なものであれば特に限定されず、例えば、金属、樹脂等が挙げられるが、中でも耐久性の観点から金属が好ましい。
上記転写原版の製造方法は、形状および配置位置に所定のばらつきを有する凸型錐状構造体を表面に有することができる方法であれば特に限定されない。上記転写原版は、例えば、ステンレス板の表面をブラスト加工し、ステンレス板の加工表面に対して、段階的に電流値を小さくしながら電解めっき処理を施すことにより形成することができる。電解めっき処理としては、例えば、電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解スズめっき等による処理が挙げられる。
このときブラストの表面粗さを調整することにより、凸型錐状構造体の大きさや配置間隔、頂部の方向性を調整することができる。また、段階的に電流値を小さくする割合を調整することにより、凸型錐状構造体の高さを調整できる。
次に、得られた転写原版の上記凸型錐状構造体が形成された面上に、硬化性樹脂を含むソフトモールド形成用組成物を塗布し、塗布層を硬化してソフトモールドを転写形成する。このとき、上記ソフトモールドの一方の表面には、凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体が多数形成される。
ソフトモールド形成用組成物に含まれる硬化性樹脂は、転写原版の凸型錐状構造体の形状を精度良く転写することが可能な樹脂であればよく、例えば、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が用いられる。また、必要に応じて、上述の「1.透明低反射層」の項で説明した任意の材料を含んでいてもよい。
ソフトモールド形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、一般に樹脂製原版の形成の際に用いられる方法と同様とすることができる。
後述する塗布工程にて用いる透明低反射層用組成物が、光硬化性または電子線硬化性樹脂を含む場合、ソフトモールドは光透過性を有することが好ましい。ソフトモールド側から光や電子線等の照射を行い、上記塗布層を硬化することができるからである。
(b)塗布工程
本工程は、上記ソフトモールドの上記凹型錐状構造体が形成された表面に透明低反射層用組成物を塗布する工程である。
透明低反射層用組成物は、上述の「1.透明低反射層 (2)透明低反射層の第2仕様」の項で説明した透明樹脂を含むものである。
透明低反射層用組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知の塗布方法を適用することができる。
(c)賦形工程
本工程は、塗布層上に透明基材を配置して上記塗布層を硬化した後、上記ソフトモールドを剥離して透明低反射層を形成する工程である。
本工程において、透明基材の一方の表面と塗布層とが接するようにして配置した状態で、上記塗布層を硬化することにより、透明基材の一方の面に、所定のばらつきを有する多数の突起部を備える透明低反射層を形成することができる。
塗布層の硬化方法および硬化条件は、透明低反射層用組成物に含有される透明樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。透明樹脂が電離放射線硬化性樹脂の場合、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、透明樹脂が熱硬化性樹脂の場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、透明樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法等も挙げられる。
(d)印刷工程
本工程は、上記透明基材の上記透明低反射層が形成された面と対向する面上に印刷層を印刷形成する工程である。
印刷層は、透明基材の一方の面上に樹脂インキを用いて印刷画像を印刷し乾燥して形成される。印刷方法は、使用する樹脂インキの組成等に応じて適宜選択することができる。使用する樹脂インキおよび印刷法については、上述の「2.印刷層」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
印刷工程を行うタイミングは特に限定されず、上述した工程順で印刷工程を行っても良く、先に印刷工程を行い、透明基材の一方の面上に印刷層を印刷形成した後、透明基材の印刷層を有する面上に透明低反射層を形成する賦形工程を行ってもよい。後述する「(2)製造方法の第2例」においても同様である。
(2)製造方法の第2例
本態様の印刷物の製造方法の第2例としては、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した転写版準備工程と、上記ソフトモールドをロールに巻きつけて転写ロールを準備する転写ロール準備工程と、透明基材の一方の表面に透明低反射層用組成物を塗布し、上記転写ロールで塗布層を押圧すると同時に硬化して透明低反射層を成形する賦形工程と、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した印刷工程と、を有する方法が挙げられる。上述の各工程を経て形成される本態様の印刷物は、第2仕様の透明低反射層を有することができる。
賦形工程における硬化方法は、透明低反射層用組成物の組成に応じて適宜選択することができ、例えば、透明低反射層用組成物が紫外線硬化性樹脂を含む場合、押圧と同時に紫外線照射を行うことで透明低反射層を形成することができる。
(3)製造方法の第3例
本態様の印刷物の製造方法の第3例としては、透明低反射層を別途製造し、上記透明低反射層を透明基材とを貼合する方法がある。この方法により、第1仕様の透明低反射層を有する印刷物を製造することができる。
具体的には、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した塗布工程において、ソフトモールドの凹型錐状構造体が形成された面上に、低反射樹脂層用組成物を塗布し、賦形工程において、上記低反射樹脂層用組成物の塗布層上に透明支持層を配置して上記塗布層を硬化し、上記ソフトモールドを剥離することで、表面に多数の突起部を有する低反射樹脂層が、上記透明支持層の一方の面側に形成された透明低反射層を形成する。低反射樹脂層用組成物は、上述の「1.透明低反射層 (1)透明低反射層の第1仕様」の項で説明した透明樹脂を含むものである。
続いて、上記透明低反射層を、透明基材の一方の表面に接着層を介して貼合する貼合工程、および、上記透明基材の上記透明低反射層が貼合された面と対向する面上に印刷層を印刷形成する印刷工程を行うことにより、第1仕様の透明低反射層を有する印刷物を製造することができる。なお、貼合工程および印刷工程は、順不同で行うことができる。
B.第2態様
次に、本発明の印刷物の第2態様(以下、この項において、本態様とする場合がある。)について説明する。本態様の印刷物は、多数の上記突起部が、上記透明基材の上記印刷層が形成された面と対向する面に直接形成されている。
本態様の印刷物について図を参照して説明する。図8は本態様の印刷物の一例を示す概略断面図である。図8に示すように、本態様の印刷物10は、透明基材2と透明基材2の一方の面に形成された印刷層3とを有し、透明基材2の印刷層3が形成された面と対向する面には、形状および配置位置に所定のばらつきを有する多数の突起部1が直接形成されている。
本態様の印刷物において、多数の突起部が有する所定のばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。多数の突起部が所定のばらつきを有するための3つのパラメータおよびその所定値については、上述の「I.突起部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様によれば、印刷物を構成する層の数を少なくすることができ、積層界面での光の反射を防止することができる。また、上記印刷物を薄厚とすることができることから、加工性の高い印刷物とすることができる。
以下、本態様の印刷物について説明する。なお、本態様における印刷層、任意の部材、印刷物の物性、印刷物の構造による表示態様、および用途等の詳細については、上述の「A.第1態様」の項で説明した詳細の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
1.透明基材
本態様における透明基材は、印刷層が形成された面と対向する面に直接、多数の突起部が所定のばらつきを有して形成されているものである。
本態様における透明基材は、多数の突起部が所定のばらつきを有して形成されていることから、上述の「A.第1態様 1.透明低反射層」の項で説明した最大反射率およびヘイズ値を示すことができる。
(1)透明基材の構造
本態様における透明基材は、印刷層が形成された面と対向する面に多数の突起部を有する。透明基材の表面に形成された突起部の詳細については、上述の「I.突起部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様において、透明基材は、図9で例示するように、多数の突起部1を支持する基底部5を有することが好ましい。図9は、本態様における透明基材を説明する説明図であり、図8のP部分の拡大図である。
上記基底部の厚みは、所定のばらつきを有する多数の突起部を支持することができ、透明基材により印刷物としての自己支持性を有することが可能であれば特に限定されないが、0.3μm〜100mmの範囲内、中でも6μm〜30mmの範囲内、特に9μm〜15mmの範囲内であることが好ましい。基底部の厚みが上記範囲に満たないと、透明基材の表面に所定のばらつきを有する多数の突起部を形成することが困難である場合や、印刷物としての機械的強度に劣る場合があるからである。一方、基底部の厚みが上記範囲を超えると、印刷物全体の厚みが厚くなり、加工性が低下する場合や、透明基材において割れが生じやすくなるためである。
上記基底部の厚みは、透明基材の印刷層と接する面から突起部の根元までの長さ(図9中のhで示す部分の長さ)の平均値をいい、例えば、接触式膜厚計(テスター産業株式会社製 フィルム用厚み測定器 H−102)を用いて透明基材の印刷層が形成された面から突起部の頂部までの高さ(h+h)を計測した後、突起部の高さhを差し引いて算出することができる。
(2)透明基材の材料
本態様における透明基材の材料は、上述の「A.第1態様 3.透明基材」の項で説明した透明基材の樹脂材料と同様とすることができる。また、上記透明基材は、必要に応じて上述の「A.第1態様 3.透明基材」の項で説明した任意の添加剤が含まれていてもよい。
2.その他の構成
本態様の印刷物は、透明基材の一方の面に、多数の突起部が所定のばらつきを有するようにして形成されており、上記一方の面と対向する面に印刷層を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて任意の部材を有することができる。任意の部材については、上述の「A.第1態様」の項で説明した任意の部材と同様とすることができる。
3.その他
本態様の印刷物は、多数の突起部は、印刷物の最表面において少なくとも印刷層と平面視上重なる位置に形成されていればよく、印刷層が形成されていない領域と平面視上重なる位置に突起部が形成されていてもよい。本態様の印刷物の各構造による表示態様については、上述の「A.第1態様」で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
4.製造方法
本態様の印刷物の製造方法は、透明基材の一方の面に直接、多数の突起部を所定のばらつきを有するように賦形可能な方法であれば特に限定されない。
(1)製造方法の第1例
本態様の印刷物の製造方法の他の例としては、例えば、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を用いて、表面に多数の凹型錐状構造体が形成された電鋳モールドを形成する転写版準備工程、上記電鋳モールドを加熱しながら上記凹型錐状構造体が形成された面を透明基材の表面に押圧し、上記透明基材の一方の表面に所定のばらつきを有する多数の突起部を賦形する賦形工程、および、上記透明基材の上記突起部が形成された面と対向する面に印刷層を形成する印刷工程を有する方法が挙げられる。このようなホットエンボス方法による製造では、賦形工程および印刷工程は順不同で行うことができる。
凸型錐状構造体を備えた転写原版の製造方法、および印刷工程については、上述の「A.第1態様 7.製造方法」の項で説明した内容と同様とすることができる。
(2)製造方法の第2例
本態様の印刷物の製造方法の他の例としては、例えば、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した転写版準備工程、加熱溶融された透明基材用組成物に上記電鋳モールドを押圧して、一方の表面に所定のばらつきを有する多数の突起部が形成された透明基材を成形する透明基材成形工程、および上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した印刷工程を有する方法が挙げられる。このようなチルロールエンボス法による製造では、印刷工程は透明基材成形工程後に実施される。
(3)製造方法の第3例
さらに、本態様の印刷物の製造方法の他の例としては、例えば、上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した転写版準備工程、上記電鋳モールドをスタンパとして金型内部へ装着し、加熱溶融された透明基材用組成物を上記金型内に充填して保圧後、上記金型を剥離して、一方の表面に所定のばらつきを有する多数の突起部が形成された透明基材を成形する透明基材成形工程、および上述の「(1)製造方法の第1例」の項で説明した印刷工程を有する方法が挙げられる。このような射出成型法による製造では、印刷工程は透明基材成形工程後に実施される。
上記転写版準備工程において、電鋳モールドの形成に使用される金属としては、例えばニッケル等が挙げられる。また、電鋳モールドによる押圧条件や、射出成形の条件等については、所望の形状の透明基材を成形可能な条件であれば特に限定されない。
透明基材用組成物は、上述の「1.透明基材」の項で説明した樹脂材料を含むものである。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
1.単色印刷物の作成
以下の方法により、単色印刷物を得た。
[実施例1−1]
(転写原版の作製)
ステンレス板にブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さ(以下、Saと略する場合がある。)が0.20μmとなるように仕上げた。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Aを版面に有した転写原版Aを得た。なお、転写原版Aの凸型錐状構造体Aの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Aの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
以下の組成を含有するめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、電流密度を80A/dmから1分毎(1ステップ毎。以下、同様とする。)に2.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
<<めっき浴の組成>>
・塩化クロム:200g/dm(0.75mol/dm
・塩化アンモニウム:30g/dm(0.56mol/dm
・シュウ酸:3g/dm(0.024mol/dm
・炭酸バリウム:5g/dm(0.025mol/dm
・ホウ酸:30g/dm(0.49mol/dm
・フッ化バリウム:10g/dm(0.057mol/dm
(ソフトモールドの作製)
転写原版Aの錐状構造体Aが形成された面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型のソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚み0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(製品名:パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をした。ソフトモールド形成用組成物を硬化した後、転写原版Aを剥離して、片面に転写原版Aの凸型錐状構造体Aの反転形状が賦形されたソフトモールドを得た。
<ソフトモールド形成用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
(単色印刷物の作製)
厚み0.2mmの透明基材(ポリカーボネート(PC)フィルム、製品名:パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)の片面上全域に、グラビア印刷により、全面がカラーコードNo.582の黒色印刷層である絵柄を印刷画像として、印刷層を形成した。なお、印刷層の色は、DIC社製カラーコードを指定した。後述する多色印刷物についても同様とする。
得られたソフトモールドの賦形面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型の透明低反射層用組成物を塗布し、塗布面上に透明基材の黒色印刷層が形成された面と対向する面を上記塗布面側にして配置した。ソフトモールドのPCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をして、透明低反射層用組成物を硬化し、その後、ソフトモールドを剥離することで、最表面に多数の突起部Aを備える単色印刷物を得た。
<透明低反射層用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
[実施例2−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Bを版面に有した転写原版Bを得た。なお、転写原版Bの凸型錐状構造体Bの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Bの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.4A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Bを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Bを備える単色印刷物を得た。
[実施例3−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.15μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Cを版面に有した転写原版Cを得た。転写原版Cの凸型錐状構造体Cの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Cの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.6A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Cを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Cを備える単色印刷物を得た。
[実施例4−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.20μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Dを版面に有した転写原版Dを得た。転写原版Dの凸型錐状構造体Dの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Dの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.8A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Dを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Dを備える単色印刷物を得た。
[実施例5−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.30μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Eを版面に有した転写原版Eを得た。転写原版Eの凸型錐状構造体Eの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Eの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Eを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Eを備える単色印刷物を得た。
[実施例6−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Fを版面に有した転写原版Fを得た。転写原版Fの凸型錐状構造体Fの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Fの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に5.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Fを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Fを備える単色印刷物を得た。
[実施例7−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Gを版面に有した転写原版Gを得た。転写原版Gの凸型錐状構造体Gの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Gの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に0.5A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Gを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Gを備える単色印刷物を得た。
[比較例1−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Hを版面に有した転写原版Hを得た。転写原版Hの凸型錐状構造体Hの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Hの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に6.0A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Hを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Hを備える単色印刷物を得た。
[比較例2−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Iを版面に有した転写原版Iを得た。転写原版Iの凸型錐状構造体Iの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Iの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に0.4A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Iを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Iを備える単色印刷物を得た。
[比較例3−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.5μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Jを版面に有した転写原版Jを得た。転写原版Jの凸型錐状構造体Jの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Jの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.8A/dmずつ小さくして、最終的に20A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Jを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Jを備える単色印刷物を得た。
[比較例4−1]
ステンレス板にブラスト加工をしてSa=0.25μmとした。表面に下記の条件で電解クロムめっきを施し、多数の凸型錐状構造体Kを版面に有した転写原版Kを得た。転写原版Kの凸型錐状構造体Kの形状およびばらつきと、得られる印刷物における突起部Kの形状およびばらつきとは一致するものであった。
<電解クロムめっきの条件>
実施例1と同じめっき浴および陽極を用い、電流密度を80A/dmから1分毎に1.4A/dmずつ小さくして、最終的に10A/dmとし、ステンレス板上に電解めっき処理により黒色クロムめっき膜を形成した。
転写原版Aにかえて、転写原版Kを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Kを備える単色印刷物を得た。
2.多色印刷物の作成
以下の方法により多色印刷物を作成した。
[実施例1−2]
透明基材の片面上全域に、グラビア印刷法を用いて以下の印刷画像を有する印刷層を形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして最表面に多数の突起部Aを備える多色印刷物を得た。印刷層の印刷画像は、背景がカラーコードNo.582の黒色印刷層から構成され、白抜き、カラーコードNo.125の黄色印刷層、カラーコードNo.564の赤色印刷層、カラーコードNo.649の緑色印刷層、カラーコードNo.578の青色印刷層を用いて大きさ20ptでアルファベットAからZまでが表示されている絵柄とした。
[実施例2−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Bを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Bを備える多色印刷物を得た。
[実施例3−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Cを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Cを備える多色印刷物を得た。
[実施例4−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Dを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Dを備える多色印刷物を得た。
[実施例5−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Eを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Eを備える多色印刷物を得た。
[実施例6−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Fを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Fを備える多色印刷物を得た。
[実施例7−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Gを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Gを備える多色印刷物を得た。
[比較例1−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Hを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Hを備える多色印刷物を得た。
[比較例2−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Iを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Iを備える多色印刷物を得た。
[比較例3−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Jを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Jを備える多色印刷物を得た。
[比較例4−2]
転写原版Aにかえて、転写原版Kを用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして最表面に多数の突起部Kを備える多色印刷物を得た。
3.遮光層付き多色印刷物の作成
以下の方法により遮光層付き多色印刷物を作成した。
[実施例1−3]
実施例1−2で得られた多色印刷物の印刷層側表面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながらエレクトロンビーム(EB)加熱方法による真空蒸着法により、下記の蒸着条件で膜厚50nm、波長550nmでの光透過率が2%の酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
(蒸着条件)
・蒸着源:アルミニウム
・蒸着チャンバー内真空度:2×10−4mbar
・電子ビーム電力:25kw
・蒸着時間:120秒
[実施例2−3]
実施例2−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[実施例3−3]
実施例3−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[実施例4−3]
実施例4−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[実施例5−3]
実施例5−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[実施例6−3]
実施例6−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[実施例7−3]
実施例7−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[比較例1−3]
比較例1−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[比較例2−3]
比較例2−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[比較例3−3]
比較例3−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[比較例4−3]
比較例4−2で得られた多色印刷物の印刷層表面に、実施例1−3と同様の方法で酸化アルミニウム蒸着膜(遮光層)を形成し、遮光層付き多色印刷物を得た。
[評価1]
実施例1〜7、比較例1〜4で得られた単色印刷物および多色印刷物について、以下の条件にてSEM観察を行った。印刷物表面に形成された多数の突起部の中から表1に示す点数を抽出し、平面視SEM像から、突起部の底面の最大幅の平均および分散、突起部の最近接重心間距離の平均および分散、ならびに|Σ(k=1〜n)cosφ/n|値および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|値を求めた。
平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化は、上述の「I.突起部」の項で説明した方法により行い、突起部の根元の近似形状は八角形とした。
(条件)
・SEM:電界放出形走査電子顕微鏡 S-4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)
・観察方法:Top−View(突起部が形成された面側から)
・前処理:Pt−Pdスパッタ
・観察倍率:×10k
・視野範囲:縦4μm×横4μm
[評価2]
実施例1−1〜7−1、比較例1−1〜4−1で得られた単色印刷物について、以下の条件にて最大反射率を計測した。
(条件)
・計測装置:Scanning Spectorophotometer UV-3100PC(島津製作所製)
・計測方法:8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射
[評価3]
実施例1−2〜7−2および比較例1−2〜4−2で得られた多色印刷物、ならびに実施例1−3〜7−3および比較例1−3〜4−3で得られた遮光層付き多色印刷物について、色彩を目視で確認し、印刷画像の視認性を評価した。評価方法は、比較例1−2〜4−2の多色印刷物の色彩の鮮明さを基準(△)とし、各実施例の色彩が基準と対比して鮮明であるか、以下の基準で判定した。
◎ … 基準に比べて色彩が最も鮮明であり、視認性が最も良好。
○ … 基準に比べて色彩が非常に鮮明であり、視認性が非常に良好。
▲ … 基準に比べて色彩が鮮明であり、視認性が良好。
△ … 基準。
評価1〜3の結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2中のμは平均、σは分散を示す。
実施例で示すように、所定のばらつきを有する突起部を印刷物の最表面に形成することで、色彩が鮮明になり視認性を向上させることができた。
また、実施例1−3〜7−3から、印刷層側表面にさらに遮光層を設けることにより、印刷層における印刷画像の色彩がより鮮明になり、視認性がさらに向上した。
1 … 突起部
2 … 透明基材
3 … 印刷層
4 … 透明低反射層
10 … 印刷物
11 … 透明支持層
12 … 低反射樹脂層
14 … 機能層(遮光層)

Claims (7)

  1. 透明基材と、
    前記透明基材の一方の面上に形成された印刷層と
    を有する印刷物であって、
    前記印刷物は、前記透明基材の前記印刷層が形成された面と対向する面側の最表面に多数の突起部が形成されており、
    前記突起部の底面は、前記底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、
    一の前記突起部および前記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の前記突起部の重心間距離の平均が400nm以下であり、前記重心間距離の分散が10000nm 以上であり、
    前記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において前記突起部の底面の重心からの前記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、前記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、
    |Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ
    |Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすこと
    を特徴とする印刷物。
  2. 前記透明基材の前記印刷層が形成された面と対向する面には、透明低反射層が形成され、
    前記透明低反射層の前記透明基材と対向する面に、多数の前記突起部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
  3. 前記透明低反射層が、透明支持層と、前記透明支持層の一方の面側に形成され、透明樹脂を含む低反射樹脂層とを有し、
    前記低反射樹脂層の前記透明支持層と接する面と対向する面上に多数の前記突起部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷物。
  4. 前記透明低反射層が、透明樹脂により形成された単層であり、
    前記透明基材上に直に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷物。
  5. 多数の前記突起部が、前記透明基材の前記印刷層が形成された面と対向する面に直接形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
  6. 少なくとも前記印刷層の前記透明基材と接する面と対向する面上に、機能層を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の印刷物。
  7. 前記機能層が遮光層であることを特徴とする請求項6に記載の印刷物。
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