JP2017071080A - 意匠性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、反射特性が異なる2つの領域間の反射光のコントラストが高く、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することが可能な意匠性フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】一方の面上に多数の突起部または溝部が形成された透明反射制御層と、上記透明反射制御層の上記突起部または上記溝部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層と、を少なくとも有し、上記突起部または上記溝部が露出した領域である低反射領域と、上記平坦化層が設けられた領域である高反射領域と、を有する意匠性フィルムであって、上記低反射領域では、上記突起部または上記溝部が所定のばらつきを有することを特徴とする意匠性フィルムを提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射特性が異なる2つの領域を有する意匠性フィルムに関する。
光の反射特性を利用して領域ごとに異なる意匠を発現させる技術としては、例えば、反射光を低減する構造を有する低反射領域と、上記構造を有さない高反射領域とを設け、領域ごとに反射光量の差異を利用して異なる意匠性を発現する技術が知られている。例えば、特許文献1では、金属基材の一部をブラスト処理により粗面化した低反射領域を設けることで、上記低反射領域では反射光の低減によりマット調の意匠を発現し、粗面化されていない高反射領域では、反射光によりメタリック調の意匠を発現する金属装飾体が開示されている。このように、領域ごとに反射特性を変化させることで、視覚効果の違いを利用して物品全体の意匠性の向上を図ることが可能である。
また、反射光を低減する構造として、多数の微小突起が反射防止を図る光の波長域の最短波長以下の間隔で規則正しく配置されてなる凹凸構造が知られている。上述の構造はモスアイ構造と呼ばれ、入射光に対する屈折率を厚み方向に連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることで、光の反射を防止するものであり、ブラスト処理等による粗面化よりも、優れた反射光低減効果を発揮することができる。
このような反射光を低減する構造が表面に賦形されたフィルムは、単体で、または、他の意匠層との併用により、意匠性フィルムとして用いることができる。例えば、特許文献2では、透明なモスアイフィルムのモスアイ構造が賦形された面(以下、モスアイ構造面とする。)上の一部もしくはその対向面上の一部に、絵柄層が設けられた意匠性フィルムが開示されている。
特許文献2に開示される意匠性フィルムは、モスアイ構造により入射した光の反射が低減されることで、反射光が絵柄層の絵柄に重畳することがないため、絵柄層を鮮明に表示することができるとされる。また、上記意匠性フィルムでは、絵柄層が設けられていない領域は、反射光の低減により視認されにくいことから、絵柄層が設けられた領域とそれ以外の領域との視覚的効果を利用して、絵柄層の絵柄を立体的に浮出しているように表示することができるとされる。
このように、反射光を低減する構造を有する意匠性フィルムは、単体での意匠性、もしくは併用される意匠層の意匠性を向上させることができる。
特開平6−88252号公報 特開2014−71220号公報
しかし、意匠性フィルムとして、モスアイ構造を有する低反射領域とモスアイ構造を有さない高反射領域とを設け、領域ごとに異なる意匠性を発現させようとする場合、領域間での反射光のコントラストが十分に得られにくいという問題がある。このため、領域ごとに発現される意匠性の違いが顕著に認識されず、領域ごとの視認効果の違いによる意匠性フィルム全体の意匠性の向上が十分に図れないという課題がある。
また、モスアイ構造を有する低反射領域では、一部の反射光が映り込むことで発現される意匠の視認性が阻害されるという課題がある。例えば、特許文献2に開示される意匠性フィルムにおいて、絵柄層の表面にモスアイ構造を有する場合、絵柄層の表示に映り込む光源の形が視認できるため、絵柄の視認が阻害されてしまう。また、上記低反射領域に絵柄層が設けられていない場合も同様に、映り込んだ光源の形が視認できるため、上記低反射領域において上記絵柄層による意匠とは異なる意匠を発現させる際に、上記意匠の視認性が阻害されてしまう。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、反射特性が異なる2つの領域間の反射光のコントラストが高く、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することが可能な意匠性フィルムを提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、低反射領域にモスアイ構造を付した上述の意匠性フィルムにおいて、反射特性が異なる2つの領域間での反射光のコントラストが得られにくい要因が、モスアイ構造特有の規則的な突起配列により、低反射領域での反射光低減効果が十分ではないためであると知見した。また、モスアイフィルムを意匠層等の被貼付物の一部に貼付して意匠性フィルムとした場合、上記モスアイフィルムの貼付部分である低反射領域では、上記意匠性フィルムと意匠層との積層界面において光の全反射が生じることも、意匠性フィルムにおける上記2つの領域間の反射光のコントラストが得られにくい要因であることを見出した。
そして、本発明者等は、反射特性が異なる2つの領域を有する意匠性フィルムにおいて、低反射領域の表面構造を、モスアイ構造にかえて、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の突起部または溝部からなる構造としたところ、上記低反射領域において、高い反射光低減効果を奏することができ、領域間の反射光のコントラストが向上することを見出した。また、上記低反射領域では、表面構造を上述の構造とすることで、正反射を含めた反射光を高効率で低減することが可能となることから、光源の映り込みが生じにくくなることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、一方の面上に多数の突起部が形成された透明反射制御層と、上記透明反射制御層の上記突起部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層と、を少なくとも有し、上記突起部が露出した領域である低反射領域と、上記平坦化層が設けられた領域である高反射領域と、を有する意匠性フィルムであって、上記低反射領域では、上記突起部の底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部と、上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部と、の重心間距離の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とする意匠性フィルムを提供する。
本発明によれば、上記低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の突起部が露出していることで、上記低反射領域に入射した光の反射を高効率で低減することができる。また、上記低反射領域では、多数の上記突起部のばらつきにより透明反射制御層のヘイズ値が高くなるため、光の散乱が増大し、層内への光の吸収を高めることができる。さらに、透明反射制御層の突起部が形成された面(以下、突起部賦形面とする場合がある。)と対向する面側に、他の層が積層される場合、上記低反射領域では、光の散乱により積層界面での光の全反射を低減することができ、反射率低減効果をより高めることができる。一方、上記高反射領域では、突起部上に平坦化層が形成されているため、突起部による反射光低減機能が阻害され、上記平坦化層の平坦性に応じて光を反射させることができる。
これにより、本発明の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができる。また、上記低反射領域では、光源からの光の正反射が低減され、光が十分に散乱されることから、光源の映り込みを防ぐことができる。
また、本発明は、一方の面上に多数の溝部が形成された透明反射制御層と、上記透明反射制御層の上記溝部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層と、を少なくとも有し、上記溝部が露出した領域である低反射領域と、上記平坦化層が設けられた領域である高反射領域と、を有する意匠性フィルムであって、上記低反射領域では、上記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、上記溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、一の上記溝部と、上記一の溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の上記溝部と、の重心間距離の平均が500nm以下であり、上記重心間距離の分散が8000以上であることを特徴とする意匠性フィルムを提供する。
本発明によれば、上記低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の溝部が露出していることで、上記低反射領域に入射した光の反射を高効率で低減することができる。また、上記低反射領域では、多数の上記溝部のばらつきにより透明反射制御層のヘイズ値が高くなるため、光の散乱が増大し、層内への光の吸収を高めることができる。さらに、透明反射制御層の溝部が形成された面(以下、溝部賦形面とする場合がある。)と対向する面側に、他の層が積層される場合、上記低反射領域では、光の散乱により積層界面での光の全反射を低減することができ、反射率低減効果をより高めることができる。一方、上記高反射領域では、溝部上に平坦化層が形成されているため、溝部による反射光低減機能が阻害され、上記平坦化層の平坦性に応じて光を反射させることができる。
これにより、本発明の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができる。また、上記低反射領域では、光源からの光の正反射が低減され、光が十分に散乱されることから、光源の映り込みを防ぐことができる。
上記発明においては、上記透明反射制御層の、上記平坦化層が形成された面と対向する面側に、意匠層を有していてもよい。低反射領域および高反射領域の反射特性の違いにより、領域ごとに意匠層の表示仕様を変化させることができるからである。
本発明の意匠性フィルムは、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の突起部または溝部が露出した低反射領域と、突起部または溝部の一部が平坦化層により平坦化された高反射領域と、を有することで、低反射領域での高い反射光低減効果により領域間の反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することが可能であるといった作用効果を奏する。
本発明の第1態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図である。 図1のC部分の拡大図である。 突起部の頂部の方位角φを説明する説明図である。 本発明の第1態様の意匠性フィルムにおける低反射領域の平面SEM画像である。 本発明の第1態様の意匠性フィルムにおける高反射領域の一例を示す概略断面図である。 本発明の第2態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図である。 図6のC部分の拡大図である。 溝部の形状を説明するための説明図である。 本発明の第2態様の意匠性フィルムにおける低反射領域の平面SEM画像である。 本発明の意匠性フィルムの他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明の意匠性フィルムについて詳細に説明する。
本発明の意匠性フィルムは、透明反射制御層の一方の面上に形成された形状に応じて、2つの態様に大別することができる。以下、各態様について説明する。
I.第1態様
本発明の意匠性フィルムの第1態様(以下、この項においては、「本態様」と称する場合がある。)は、一方の面上に多数の突起部が形成された透明反射制御層と、上記透明反射制御層の上記突起部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層と、を少なくとも有し、上記突起部が露出した領域である低反射領域と、上記平坦化層が設けられた領域である高反射領域と、を有する意匠性フィルムであって、上記低反射領域では、上記突起部の底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、一の上記突起部と、上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の上記突起部と、の重心間距離(以下、この項においては、「最近接重心間距離」と称する場合がある。)の平均が400nm以下であり、上記重心間距離の分散が10000以上であり、上記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において上記突起部の底面の重心からの上記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことを特徴とするものである。
本態様の意匠性フィルムについて、図を参照して説明する。図1は、本態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図であり、図2は図1のC部分の拡大図である。
本態様の意匠性フィルム10は、一方の面上に多数の突起部11が形成された透明反射制御層1と、透明反射制御層1の突起部11が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層2と、を少なくとも有する。意匠性フィルム10は、突起部11が露出した領域が低反射領域Aとなり、平坦化層2が設けられた領域が高反射領域Bとなる。なお、図2においてPは、透明反射制御層1において突起部11の根元が位置する面(基準面)を示す。
多数の突起部11は、形状および配置位置に所定のばらつきをもって形成されており、低反射領域Aでは突起部11が露出していることで、後述する突起部11による反射光低減機能が発揮され、反射光を低減することができる。一方、高反射領域Bでは、突起部11間を充填するようにして平坦化層2が形成されていることで、突起部11による反射光低減機能が阻害され、低反射領域Aよりも多くの光を反射することができる。
このように、本態様の意匠性フィルム10は、領域ごとに異なる反射特性を示すことができる。なお、多数の突起部の形状および配置位置のばらつきのことを、単に「(突起部の)ばらつき」と称する場合がある。
ここで、上記低反射領域において多数の突起部が有するばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。
第1のパラメータは、突起部の大きさによるものである。本態様において、多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図2に示すように、突起部11の底面の重心Oを通る最大幅Lの平均が250nm以上500nm以下の範囲内であることをいう。
第2のパラメータは、隣接する突起部の位置関係によるものである。本態様において、多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図2に示すように、一の突起部11Aと、一の突起部11Aの底面の重心Oに最も近接した位置に底面の重心Oを有する他の突起部11Bと、の重心間距離Lの平均が400nm以下であり、重心間距離Lの分散が10000以上であることをいう。
第3のパラメータは、突起部の頂部が示す方向によるものである。本態様において、多数の突起部が所定のばらつきを有するとは、図3に示すように、突起部11が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において突起部11の底面の重心Oからの突起部11の頂部Tの位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、突起部11の抽出点数をn(n≧30)としたときに、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことをいう。
すなわち、多数の突起部が「所定のばらつきを有する」とは、第1〜第3の各パラメータが上述の所定の範囲内(以下、所定値と称する場合がある。)を示すことを意味する。
本態様の意匠性フィルムによれば、上記低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の突起部が露出していることで、上記低反射領域に入射した光の反射を高効率で低減することができる。また、上記低反射領域では、多数の上記突起部のばらつきにより透明反射制御層のヘイズ値が高くなるため、光の散乱が増大し、層内への光の吸収を高めることができる。さらに、透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面側に、他の層が積層される場合、上記低反射領域では、光の散乱により積層界面での光の全反射を低減することができ、反射率低減効果をより高めることができる。
一方、上記高反射領域では、突起部上に平坦化層が形成されているため、突起部による反射光低減機能が阻害され、上記平坦化層の平坦性に応じて光を反射させることができる。
これにより、本態様の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができ、意匠の視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性向上を図ることができる。また、上記低反射領域では、光源からの光の正反射が低減され、光が十分に散乱されることから、光源の映り込みを防ぐことができる。
本態様の意匠性フィルムにおける各領域の反射特性、および、それにより発現される各領域での意匠性について、さらに、詳しく説明する。
本態様の意匠性フィルムの低反射領域では、多数の突起部が所定のばらつきを有して露出していることから、上記突起部に入射した光を多数回反射させて、突起部から透明反射制御層内に吸収させることができる。また、上記突起部が所定のばらつきを有することで、干渉によって特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。さらに、多数の突起部が所定のばらつきを有することで、上記突起部、中でも突起部の頂部においては、多数回反射により層内に光が吸収されるのに加えて、突起部の形状により光がミー散乱することで、光の吸収量をさらに増加させることができ、反射をより低減させることが可能となる。これは、ミー散乱が「前方散乱が強い」、「波長依存性が小さい」といった特長を有することによるものである。
つまり、ミー散乱は前方散乱が強いため、突起部に入射した光は突起部内で散乱されることとなり、散乱光を層内へ吸収させることができるからである。また、ミー散乱は波長依存性が小さいため、可視光領域380nm〜780nmの全域の光を散乱させることができ、散乱光を層内へ吸収させることが可能となる。このため、低反射領域では、表面の突起部により広波長域の光の反射を低減することができる。
加えて、低反射領域の表面が上述の構造を有することで、上記低反射領域でのヘイズ値が高くなり、層内において光の散乱が増大するため、透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面側に、他の層が積層される場合、透明反射制御層の低反射領域と上記他の層との積層界面での光の全反射を生じにくくすることができる。
これにより、上記低反射領域では、高い反射光低減効果を奏することができる。また、上記低反射領域では、光源からの光の正反射が低減され、光が十分に散乱されることから、光源の映り込みを防ぐことができる。
一方、高反射領域においては、突起部上に平坦化層が設けられており、上記平坦化層により上記突起部間が充填されることで、上述した突起部による反射光低減機能が阻害される。このため、上記高反射領域では、上記平坦化層表面に当たった光を表面の平滑性に応じて反射することができる。
このように、本態様の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域間で反射特性が大きく異なるため、領域間での反射光のコントラストが向上する。
そして、本態様の意匠性フィルムに光を当てると、低反射領域では、反射光が抑えられた白濁した(ヘイズかかった)低光沢感の意匠を発現し、一方、高反射領域では、周囲の低反射領域との反射光のコントラストにより、高反射領域で生じる反射光の輝度が際立った高輝度かつ高光沢感の意匠を発現することができる。
したがって、本態様の意匠性フィルムは、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができることから、意匠の視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性向上を図ることができる。また、低反射領域では、光源の映り込みを防ぐことができる。
本態様の意匠性フィルムは、透明反射制御層の表面の一部にパターン状の平坦化層を少なくとも有することで、領域ごとの反射特性に応じて上述した意匠性を発現することが可能であるが、透明反射制御層の上記平坦化層が形成された面と対向する面側に、意匠層上に設けた意匠性フィルムとすることで、低反射領域および高反射領域の反射特性の違いを利用して領域ごとに上記意匠層の表示仕様を変化させることができる。
例えば、上記意匠層として印刷層を用い、上記印刷層の表面に透明反射制御層および透明な平坦化層を貼り付けた本態様の意匠性フィルムは、低反射領域では、散乱光の吸収が高いことから印刷層の発色性が向上するため、印刷層の色みや絵柄を鮮明に表示することができる。また、低反射領域では、反射光の低減により印刷層の色みや絵柄を低光沢感を帯びた表示とすることができる。一方、高反射領域では、平坦化層の存在により光が反射して、印刷層の色みや絵柄を高輝度で高光沢感を帯びた表示とすることができる。
また、上記意匠層として金属層を用い、金属層表面に透明反射制御層および透明な平坦化層を貼り付けた本態様の意匠性フィルムは、低反射領域では、反射光が低減されるため、金属層を金属光沢が抑えられたマット調に表示することができる。一方、高反射率領域では、反射光により金属層を金属光沢感の強いメタリック調に表示することができる。
本態様の意匠性フィルムにおける意匠層については、後述する。
以下、本態様の意匠性フィルムについて詳細に説明する。
A.低反射領域および高反射領域
本態様における低反射領域は、透明反射制御層の突起部が露出した領域である。
また、本態様における高反射領域は、上記透明反射制御層の突起部賦形面上の、パターン状の平坦化層が設けられた領域である。
1.低反射領域
低反射領域では、多数の突起部が所定のばらつきを有することにより、広波長域の光に対し、正反射を含む光の反射を低減し、反射光の低減効果による意匠性を発現することができる。また、低反射領域は、表面に上述の構造を有することから、高ヘイズ値を示すことができ、領域内での光の散乱が増大する。突起部の詳細については、後述する。
上記低反射領域は、多数の突起部が所定のばらつきを有することから、高反射領域よりも低い反射率を示すことができる。低反射領域の反射率は、例えば、可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が2.0%以下であることが好ましく、中でも1.5%以下であることが好ましい。低反射領域の最大反射率が上述の上限値以下であることで、可視光の全波長域に対して低い反射率を示し、反射光を十分に低減することができ、その効果を目視で確認できるからである。
低反射領域の最大反射率は、計測装置としてScanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)を用い、透明反射制御層の突起部賦形面を光の入射面として、可視光領域380nm〜780nmの波長の光を8°にて入射させた際の全方向の積算反射率(全反射)を求め、その中で最も高い反射率とすることができる。後述する高反射領域の最大反射率も同じ方法で測定が可能である。低反射領域が透明性を有する場合は、上記最大反射率は、透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面に黒テープ等の黒色層を配置した状態で測定することができる。
また、上記低反射領域は、多数の突起部が所定のばらつきを有することから、高ヘイズ値を示すことができる。これにより、上記低反射領域では、入射光が散乱される等により透明反射制御層内に吸収されるため、反射光を低減することができ、後述する高反射領域との反射光のコントラストを向上させることができる。
上記低反射領域のヘイズ値は、70%以上であることが好ましく、中でも80%以上であることが好ましい。また、ヘイズ値の上限としては95%以下であることが好ましい。
低反射領域のヘイズ値が上記範囲よりも小さいと、上記低反射領域において多数の突起部が後述する所定のばらつきを有していないこととなり、光の多数回反射およびミー散乱による光の吸収が起こりにくくなり、反射光の低減が図れない場合がある。また、低反射領域内において光を十分に散乱することができず、上記透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面側に他の層が積層される場合に、低反射領域の透明反射制御層と他の層との積層界面において生じる光の全反射を低減することができない恐れがある。一方、上記ヘイズ値が上限よりも大きいと、透明反射制御層表面に所望の突起部の形状を賦形することが困難となる場合がある。
上記ヘイズ値は、低反射領域における透明反射制御層単体での値であり、ヘイズメーター(東洋精機製作所製 商品名:ヘイズガード)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。ヘイズ値の測定に際し、低ヘイズ値(例えば1%以下)を示す透明基材上に透明反射制御層を積層した状態で測定した値を、透明反射制御層のヘイズ値とすることも可能である。
2.高反射領域
高反射領域では、透明反射制御層の突起部賦形面上に平坦化層が設けられていることから、所定のばらつきを有する多数の突起部による反射光低減機能が発揮されにくくなり、上記反射光による意匠性を発現することができる。平坦化層については、後述する。
高反射領域の反射率は、低反射領域よりも高ければよく、例えば、可視光領域380nm〜780nmにおける最大反射率が3%以上であることが好ましく、中でも5%以上であることが好ましい。高反射領域の最大反射率を上述の範囲内とすることで、可視光の全波長域に対して高い反射率を示すことができ、低反射領域との反射光のコントラストが向上するため、高反射領域で発現される意匠の輝度を際立たせることができるからである。
高反射領域の最大反射率は、平坦化層側を光の入射面として、上述した低反射領域の最大反射率と同様の方法で測定することができる。上記高反射領域が透明性を有する場合は、上記最大反射率は、透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面に黒テープ等の黒色層を配置した状態で測定する。
3.その他
低反射領域および高反射領域は、反射率差が大きいことが好ましい。低反射領域および高反射領域の領域間の反射光のコントラストが向上し、各領域にて発現される意匠が顕著に視認可能となるからである。
低反射領域および高反射領域の最大反射率差は、例えば1%以上が好ましく、中でも3%以上であることが好ましい。最大反射率差が上記範囲よりも小さいと、領域ごとの意匠性の違いが顕著に視認されにくくなり、本態様の意匠性シートによる効果を十分に発揮できない場合がある。
B.透明反射制御層
本態様における透明反射制御層は、一方の面上に、多数の突起部が形成されたものである。少なくとも上記低反射領域では、多数の上記突起部が所定のばらつきを有し、通常は、透明反射制御層の突起部賦形面全域において、多数の上記突起部が所定のばらつきを有する。
1.突起部
突起部は、その形状および配置位置に所定のばらつきを有するものであり、上記低反射領域においては、多数の突起部が有するばらつきの程度により反射光低減効果が決定される。
ここで、多数の突起部が有するばらつきは、上述した突起部の大きさ、隣接する突起部の位置関係、突起部の頂点が示す方向、の3つのパラメータを定量化することで規定され、各パラメータが上述の所定値を示すことで、多数の上記突起部は所定のばらつきを有することができる。
以下、突起部のばらつきを規定するためのパラメータの定量化方法、および上記定量化方法により規定される各パラメータについて説明する。
(1)パラメータの定量化方法
突起部の形状および配置位置のばらつきは、透明反射制御層の一方の面上に形成された多数の突起部、好ましくは、上記透明反射制御層の平坦化層が形成されていない低反射領域にて露出する多数の突起部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。
突起部の抽出は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)等を用い、倍率10000倍、視野範囲を縦4μm×横4μmとして透明反射制御層の突起部賦形面側から平面視観察を行い、上記視野範囲における突起部の面内配列を画像で検出し、その中から所望の点数を抽出する方法を用いる。
各パラメータは、1つの視野範囲あたりの突起部の最低抽出点数を30点として算出したものである。突起部の抽出点数は多いほど好ましく、抽出点数は30点以上、中でも50点以上であることが好ましい。また、突起部の抽出を行うための上記視野範囲の検出数は、透明反射制御層の突起部賦形面の所望の単位面積(2500mm)当たり3箇所以上、中でも5箇所以上、特に10箇所以上であることが好ましい。
抽出点数および視野範囲の検出数を上記範囲で規定することで、3つのパラメータをより高い精度で定量化することができ、突起部の形状および配置位置のばらつきを正確に規定することができるからである。
各パラメータは、以下の手順により定量化される。
(a)まず、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて突起部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の突起部を抽出し、各突起部の高さの極大点および極小点を検出する。極大点および極小点を求める方法としては、例えば、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法等、種々の手法を適用することができる。このとき得られた極大点を「突起部の頂部」とする。
(b)次に、SEM画像やAFM画像から、極大点を囲む極小点の集合を突起部の根元とし、根元の形状を決定するために上記根元の形状を所望の形状に近似する。根元の形状とは、根元の輪郭の平面視形状(輪郭形状)であり、上記輪郭により囲まれた領域である。近似の際、部分的に途切れている線は補完する。補完する方法としては、例えば、ある閾値を設けて閉空間を作る方法を取ることができる。近似された根元の輪郭形状としては、各パラメータを特定可能な形状であれば特に限定されず、例えば円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等とすることができる。得られた突起部の根元の近似形状を「突起部の底面の形状」とする。
突起部の根元の形状の近似方法としては、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、特に限定されないが、例えば、テンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。
テンプレートマッチングは、予め形状を表現したテンプレートを準備し、画像認識の対象となる画像データに対してテンプレートを移動させながら相関係数等の類似度の指標を調べることによって画像データに含まれる形状を認識する技術である。テンプレートマッチングによる画像近似手法については、例えば、「中田崇行、包躍、藤原直史:“三次元環境におけるLog-Polar変換を用いた図形認識”,電気情報通信学会論文誌(D-II), Vol.88, No.6, pp.985-993(2005.6)」、「斎藤文彦:“部分ランダム探索と適応型探索による半導体チップ画像テンプレートマッチング”, 精密工学会誌, Vol.61, No.11, pp.1604-1608(1995.11)」に開示される。
また、一般化ハフ変換は、無限に存在する直線の中から画像データ内の特徴点を最も多く通る直線を決定するハフ変換を一般化して曲線に応用したものであり、この一般化ハフ変換によっても、事前に用意した参照用のテーブルを利用して画像データの形状認識を行うことができる。一般化ハフ変換による画像近似手法については、例えば、「Ballad.D.H: “GENERALIZING THE HOUGH TRANSFORM TO DETECT ARBITRARY SHAPES”, Pattern Recognition, Vol.13, No.2, pp.111-122(1981)」や、「木村彰男,渡辺孝志:“アフィン変換に不変な任意図形検出法として拡張された一般化ハフ変換”, 電気情報通信学会誌(D-II), Vol. J84-D-II, No. 5, pp.789-798(2001.5)」に開示される。
Douglas-Peucker法は、折れ線近似によって形状認識を行う手法である。Douglas-Peucker法による画像近似手法については、例えば、「Wu. S.T, M.R.G:“A non-self-intersection Douglas-Peucker Algorithm”, Proceeding of Sixteenth Brazilian Symposium on Computer Graphics and Image Processing, IEEE, pp.60-66(2003)」に開示される。
(c)次に、突起部の底面の形状から、突起部の底面の重心を特定する。突起部の底面の重心は、一般的な線形代数の計算で求めることができる。例えば、突起部の底面の形状が正円である場合、円周上の3点を結ぶ三角形を描き、三角形のうち二辺の垂直2等分線をそれぞれ引いた交点を円の重心とすることができる。また、突起部の底面の形状が楕円である場合、楕円の外周上の2点を結ぶ2本の線分を平行となるように引き、平行する2本の線分の各中点を結び、結んだ線分の中点を重心とすることができる。
さらに突起部の底面の形状が多角形である場合、突起部の底面の重心は、以下の操作を行うことで特定することができる。
操作1:まず、多角形の1つの頂点から、上記1つの頂点に隣接する2つの頂点を除く他の各頂点へ対角線を結び、複数の三角形に分割する。
操作2:分割された各三角形の重心を求める。
操作3:次に、各三角形の重心を結び多角形を形成する。
操作4:突起部の底面の形状が奇数角形の場合、操作3において形成される多角形が三角形となるまで、操作1〜操作3を繰り返す。一方、突起部の底面の形状が偶数角形の場合、操作3において形成される多角形が四角形となるまで、操作1〜操作3を繰り返す。
操作5:上述の操作1〜操作4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が三角形となる場合、上記三角形の重心が突起部の底面の重心となる。一方、上述の操作1〜操作4により、分割された各三角形の重心から形成された形状が四角形となる場合、以下の方法で上記四角形の重心を求める。まず、上記四角形を1つの対角線で2つの三角形に分割し、2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。次に、四角形を別の対角線で2つの三角形に分割して2つの三角形の各重心を求め、2つの重心を直線で結ぶ。2本の直線の交点が突起部の底面の重心となる。
(d)次に、突起部の底面の重心を通る最大幅(以下、単に、突起部の底面の最大幅と略する場合がある。)を決定し、突起部の大きさを規定する。突起部の底面の最大幅の長さの決定は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出して行うことができる。上記最大幅は、突起部の底面の重心を通り、上記底面の形状の外周上の2点を結ぶ線分の長さのうち、最も幅広の線分をいう。
具体的には、突起部の底面の形状が正円の場合では、上記最大幅とは正円の直径をいい、突起部の底面の形状が楕円の場合では、上記最大幅とは楕円の重心を通過して外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。また、突起部の底面の形状が多角形の場合では、上記最大幅とは、多角形の重心を通過して多角形の外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。
算出した最大幅を統計処理することで、突起部の底面の最大幅の平均値および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。なお、上記最大幅の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最大幅−最大幅の平均値)/標準偏差
(e)次に、各突起部の位置を座標化する。突起部の位置とは、上述した突起部の底面の重心の位置(以下、単に、突起部の重心と称する場合がある。)を意味する。
突起部の底面の重心の位置は、以下の方法により座標化することができる。まず、SEM画像やAFM画像内の所望の位置に原点を設定する。例えば、SEM画像やAFM画像中の左下を原点とする。次に、上記原点から、上記画像内において透明反射制御層の突起部賦形面内の長さ方向に相当する一方向をx軸、x軸に直交し、幅方向に相当する一方向をy軸と規定する。このように画像を座標平面とすることで、各突起部の重心を座標化することができる。
突起部の重心の座標から、特定の一の突起部と隣接する複数の突起部との突起部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は以下の計算式によって算出され、特定の一の突起部について算出される重心間距離のうち、最小の距離を「最近接重心間距離」とする。
重心間距離={(x−x+(y−y1/2
なお、式中のxおよびyは、特定の一の突起部の位置を示すx座標およびy座標である。また、xおよびyは、上記特定の一の突起部に隣接する突起部の位置を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
上記の方法で各突起部の最近接重心間距離を抽出し、既存の表計算ソフトで統計処理して最近接重心間距離の平均値および分散を計算することで、隣接する突起部の位置関係を規定する。なお、最近接重心間距離の平均値および分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の突起部の最近接重心間距離−最近接重心間距離の平均値)/標準偏差
(f)次に、突起部の底面の重心から頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂点が示す方向を規定する。方位角φは、突起部の位置を座標化した際に設定した座標平面の平面視上において、x軸に対して突起部の重心および頂部を結ぶ辺が成す角度で規定される。
抽出した各突起部について方位角φを決定し、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値を算出する。この算出は既存の表計算ソフトを使用することができる。
各パラメータの定量化において算出される分散の値とは、一般に平均値から算出される値、すなわち、測定値と測定値の平均値との差の二乗平均の和を抽出点数で割ることで算出される値である。後述する「B.第2態様」においても同様とする。
(2)パラメータ
次に、突起部のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
(a)突起部の大きさ
突起部の大きさは、突起部の底面の重心を通る最大幅(突起部の底面の最大幅)で規定される。突起部の底面の最大幅は、図2、図4(a)においてRで示す部分である。
図4は低反射領域の平面SEM画像であり、図4(a)中のTは突起部の頂部を示す。
突起部の底面の最大幅の平均は、250nm以上500nm以下の範囲内であればよく、中でも300nm以上400nm以下の範囲内であることが好ましい。球形粒子では幾何光学散乱が支配する直径は数μm以上であるが、突起形状での散乱は異なる挙動を示すため、突起部の底面を上記範囲内に最大幅を有する形状とすることで、突起部においてミー散乱が支配的に生じることが推測されるからである。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも大きいと、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり前方散乱が起こりにくくなるため、低反射領域での光の吸収が小さくなり、所望の反射光低減効果が得られない場合がある。また、低反射領域における単位面積あたりの突起部の個数が減少するため、多数回反射が生じにくくなり、反射率を低減させることが困難となる場合がある。
一方、突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲よりも小さいと、レイリー散乱が支配的になるため、前方散乱が起こりにくくなり、低反射領域での光の吸収が小さくなる場合がある。
突起部の底面の最大幅の平均が上記範囲内にあるとき、上記突起部の底面の最大幅の分散は、10000以上であることが好ましい。干渉によって特定の波長光の強度が強まる不具合を抑制できるためである。上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば18000以下であることが好ましい。突起部の底面の最大幅の分散の単位はnmとなる。
(b)隣接する突起部の位置関係
隣接する突起部の位置関係は、一の突起部と、上記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の突起部と、の重心間距離(最近接重心間距離)の平均により規定される。
突起部の位置とは、突起部の底面の重心の位置をいい、図2〜図4においてOで示す部分である。
最近接重心間距離は、先に説明した方法で算出され定量化されるが、算出方法についてさらに図を示して説明する。最近接重心間距離は、図4(b)で示すように、突起部11Aに隣接する突起部のうち、突起部11Aの重心Oと最も近い位置に重心Oを有する突起部11Bを抽出し、その重心間距離L1を最近接重心間距離として算出する。次に、突起部11Bに隣接する突起部のうち、突起部11Bの重心と最も近い位置に重心Oを有する突起部11Cを抽出し、その重心間距離L2を最近接重心間距離として算出する。
最近接重心間距離の平均は、上記操作を繰り返し行い、突起部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出される。
最近接重心間距離の平均は、400nm以下であればよく、中でも360nm以下、特に350nm以下であることが好ましい。最近接重心間距離の平均が上記範囲よりも大きいと、隣接する突起部が密接しておらず、突起部が形成されない非突起部領域が多く存在することとなり、非突起部領域において生じる光の反射により、低反射領域において反射光低減効果が十分に得られない場合がある。
最近接重心間距離の平均の下限は、特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば280nm以上であることが好ましい。
また、最近接重心間距離の平均が上記範囲内にあるときの、上記最近接重心間距離の分散は、10000以上であればよく、中でも11000以上、特に12000以上であることが好ましい。最近接重心間距離の分散が上記範囲よりも小さいと、多数の突起部が均等なピッチ幅で配置されることとなり、干渉により特定の波長光の強度が強まり、低反射領域において所望の反射光低減機能が発揮されにくい場合があるからである。
上記分散の上限は特に限定されず、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば14000以下であることが好ましい。なお、最近接中心間距離の分散の単位はnmとなる。
(c)突起部の頂点が示す方向
突起部の頂点が示す方向は、透明反射制御層の表面において、突起部の底面の重心に対して突起部の頂点が位置する方向で規定される。
すなわち、図3に示すように、低反射領域において、透明反射制御層の上記突起部が形成され面内の長さ方向および幅方向をそれぞれx軸方向およびy軸方向で規定し、突起部の頂部側(z軸方向側)からの平面視上において突起部の底面の重心Oからの頂部Tの位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示すことにより、突起部の頂点が示す方向が規定される。方位角φの規定方法は先に説明した通りである。
多数の突起部の頂部が示す方向のばらつきは、上記透明反射制御層の面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向と規定し、平面視上における上記突起部の頂部の位置を方位角φで示し、上記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたとき、突起部の各方位角φのcos値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち|Σ(k=1〜n)cosφ/n|)、および各方位角φのsin値の和を抽出点数で割った値の絶対値(すなわち|Σ(k=1〜n)sinφ/n|)の値により規定することが可能である。
ここで、複数の突起部の頂点が同一方向を向いて配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は大きくなる。一方、複数の突起部がそれぞれ異方向を向いてランダムに配置される場合、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値は小さくなる。
本態様においては、|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすことで、複数の突起部の頂点が、光の入射角度に因らず反射率の低減が可能となるように、ランダムな方向に向くこととなる。中でも|(Σ(k=1〜n)cosφ)/n|≦0.15、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.15の関係を満たすことが好ましく、特に|Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.10、かつ|Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.10の関係を満たすことが好ましい。|Σ(k=1〜n)cosφ/n|および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|の値が上記範囲よりも大きいと、複数の突起部の各頂点が同一方向を向き、高い規則性を有して配置されることになる。このため、上記低反射領域において、特定の角度から入射される光に対しては高い反射率で反射してしまい、光の入射角度に応じて反射光低減の程度に差が生じる場合があるからである。
なお、抽出点数nは30点以上であればよく、より好適な点数については既に説明した抽出点数と同様である。
(3)その他
突起部の高さは、上述の3つのパラメータが所定値となることが可能な大きさであれば特に限定されないが、例えば、100nm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも300nm〜1μmの範囲内が好ましい。突起部の高さが上記範囲よりも小さい場合、突起部の頂部の曲率が大きくなるため、ミー散乱よりも幾何光学散乱が支配的になり、前方散乱が起こりにくくなるため、低反射領域での光の吸収が小さくなる可能性がある。一方、突起部の高さが上記範囲よりも大きい場合、所望の突起部の形状に賦形することが困難となる可能性がある。
突起部の高さは、突起部の根元から頂点までの長さをいい、図2においてhで示す部分である。突起部の高さは、上述の「(1)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により検出した極大点から、特定の基準位置(例えば突起部の根元位置を高さ=0とする。)からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化した値とすることができる。
また、突起部の高さが上記範囲内にあるとき、突起部の底面の最大幅に対する高さのアスペクト比(図2におけるh/R)は、低反射領域において所望の反射光低減機能を発揮することが可能な比であればよく、例えば、0.3〜30の範囲内が好ましく、中でも0.8〜3の範囲内が好ましい。上記アスペクト比が上記範囲よりも小さいと、突起部において光の反射が起こりにくくなり、低反射領域において反射光低減機能が十分に発揮されない場合がある。一方、アスペクト比が上記範囲よりも大きいと、賦形が困難となり突起部が所望の形状とならない場合がある。
突起部は、凸型の錐状構造を成しており、透明反射制御層の表面に上記突起部の形状を精度良く賦形することが可能であるため、生産性が向上するという製造上の利点を有する。
一般に、モスアイ構造のように、突起部を規則的に配置して反射率の低減を図る場合、反射光低減効果を向上させるために、突起部の形状を頂部が分岐した多峰形状とし、表面積を大きくする方法が用いられる。しかし、このような形状は、精度良く賦形できない場合がある。一方、本態様においては、多数の突起部に所定のばらつきをもたせることで反射を低減することができるため、突起部を多峰形状とする必要がなく、個々の突起部を精度良く賦形することが可能となる。
突起部の頂部の先端は、尖っていてもよく、曲率を有していてもよい。中でも低反射領域において、ミー散乱による光の吸収が大きくなることから、先端が尖っていることが好ましい。
突起部の底面形状は、近似により上述のパラメータの規定が可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等を挙げることができる。
また、突起部の側面形状は、突起部の縦断面において直線状であってもよく、曲線状であってもよい。さらに、突起部の側面形状が多段状であってもよい。中でも突起部の側面が多段状であることが好ましい。突起部において多数回反射およびミー散乱がより起こりやすくなるからである。
2.その他
上記透明反射制御層は光透過性を有し、少なくとも可視光に対して透明性を有するである。上記透明反射制御層を構成する材料は、透明性を有し、表面に突起部の賦形が可能なものであればよく、通常は、樹脂が用いられる。上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を硬化させた硬化樹脂であってもよく、各種硬化形態の賦形用樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えばアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリシロキサン系樹脂等が挙げられる。
なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
上記透明反射制御層は、例えば、屈折率調整剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等の任意の材料を含んでいてもよい。屈折率調整剤としては、例えば特開2013−142821号公報に開示される低屈折率材が挙げられる。
上記透明反射制御層が透明性を有するとは、上記透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面側がある程度以上ないしは完全に透けて見える状態をいい、「透明」および「半透明」の概念を含む。また、上記透明反射制御層が有する透明性には、有色透明も含まれる。この場合、透明反射制御層は、任意の着色剤を含んでいてもよい。
透明反射制御層の厚みは、使用する材料、要求される強度等を考慮して適宜設定することができ、例えば3μm〜200μmの範囲内が好ましく、中でも5μm〜100μmの範囲内が好ましい。
透明反射制御層の厚みとは、透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面から突起部の頂部のうち最も高い位置までの長さ(図2中のh)の平均をいう。
透明反射制御層の光透過率は、80%以上が好ましく、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。上記光透過率は、全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率値であり、例えば、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 U−4100)により測定することができる。本明細書内において、光透過率は、上記測定機器を用いて同様の方法で測定される。
また、透明反射制御層のヘイズ値は、上述した低反射領域でのヘイズ値と同様である。
透明反射制御層の屈折率は、特に限定されないが、後述するように、透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面側に基材層や意匠層等の他の層を設ける場合は、上記他の層との屈折率差が小さいことが好ましい。透明反射制御層と他の層との屈折率差が大きいと、積層界面に屈折率の不連続界面が形成されることになり、上記不連続界面において光が反射されることで、低反射領域における反射光低減効果が損なわれる場合があるからである。
透明反射制御層の具体的な屈折率は、選択する樹脂の種類にもよるが、例えば1.20〜2.40の範囲内が好ましく、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。上記屈折率は、株式会社島津製作所製 精密分光計GMR−1DA型により測定される。
C.平坦化層
本態様における平坦化層は、透明反射制御層の上記突起部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられるものである。
上記平坦化層は、光透過性を有していてもよく、遮光性を有していてもよい。また、上記平坦化層は、透明であってもよく、半透明であってもよい。さらに、上記平坦化層は、無色であってもよく有色であってもよい。さらにまた、平坦化層には、絵柄等が印刷されていてもよい。
上記平坦化層が光透過性を有する場合、高反射領域において発現される意匠は、反射光の輝度が際立った高輝度かつ高光沢感の意匠とすることができる。また本態様の意匠性フィルムが、透明反射制御層の突起部賦形面と対向する面側に基材層や意匠層等の他の層を有する場合、基材層や意匠層の意匠に、反射光による高輝度かつ高光沢感が付与された意匠とすることができる。
一方、上記平坦化層が遮光性を有する場合、高反射領域において発現される意匠は、上記平坦化層の色や印刷された絵柄に、反射光による高輝度かつ高光沢感が付与された意匠とすることができる。
上記平坦化層としては、例えば、樹脂層、印刷層、金属層、フィルム層、それらを組み合わせた積層体、これらの層に接着層を付した積層体、転写箔等が挙げられる。
樹脂層の樹脂としては、熱可塑性樹脂層、硬化樹脂等の、一般的な光学フィルム等における平坦化層に用いられる樹脂が挙げられる。硬化樹脂とは、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が硬化した樹脂である。具体的にはポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
印刷層および金属層については、後述する「III.任意の層 B.意匠層」の項で説明する印刷層および金属層と同様とすることができる。
上記平坦化層はパターン状に形成される。上記平坦化層のパターン形状については特に限定されず、例えば、格子パターンやラインパターン、幾何学パターン等とすることができる。また、上記平坦化層のパターン形状を意匠パターンとすることで、高反射領域においてパターン形状に応じた意匠を高輝度で表示することができる。
上記意匠パターンとしては、例えば、文字、記号、数字、模様、標章等を表わすパターンが挙げられる。
上記平坦化層は、透明反射制御層の突起部賦形面上に直接設けられていてもよく、接着層を介して設けられていてもよい。平坦化層が透明反射制御層の突起部賦形面上に直接設けられる場合、図5(a)で例示するように、平坦化層2が隣接する突起部11間を充填するようにして設けられることが好ましい。平担化層が突起部間を充填することで、突起部および平担化層間にある空気が消失し、界面の屈折率差がなくなるため、高反射領域にて発現する意匠の視認性を高めることができる。また、平担化層が突起部間を充填することで、平担化層と突起部とが強固に付着し、上記平担化層を簡単に剥がれにくくすることができる。
また、図5(b)で例示するように、平坦化層2が接着層21を介して透明反射制御層1の突起部11が形成された面上に設けられる場合、接着層21が隣接する突起部11間を充填するようにして設けられることが好ましい。その理由については、上述した平坦化層が突起部間を充填するようにして設けられることが好ましい理由と同様である。
接着層に用いられる接着剤は特に限定されず、一般的な光学フィルムにおいて、平坦化層を設ける際に使用されるものを用いることができる。
上記平坦化層は、反射率が高いことが好ましい。その理由および平坦化層の反射率については、上述した「A.低反射領域および高反射領域 2.高反射領域」の項で説明した内容と同様である。
上記平坦化層が透明性を有する場合、上記平坦化層の光透過率は、透明反射制御層の光透過率と同様とすることができる。
上記平坦化層の厚みは、突起部賦形の一部を平坦化することが可能であれば特に限定されない。平坦化層が透明反射制御層の突起部賦形面上に直接設けられる場合は、平坦化層の厚みは、突起部の高さ以上であることが好ましい。
D.製造方法
本態様の意匠性フィルムの製造方法は、一方の面に所定のばらつきを有する多数の突起部が形成された透明反射制御層を形成し、上記透明反射制御層の突起部賦形面上に平坦化層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。
本態様の意匠性フィルムは、例えば、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を準備する転写原版準備工程、上記転写原版の上記凸型錐状構造体形成面上に、ソフトモールド用組成物を塗布し硬化して、一方の面に凹型錐状構造体を備えたソフトモールドを転写形成するソフトモールド形成工程、上記ソフトモールドの凹型錐状構造体形成面上に透明反射制御層用組成物を塗布し、塗布層上に基材層を配置して上記塗布層を硬化後、上記ソフトモールドを剥離して、多数の突起部を備えた透明反射制御層を上記基材層上に形成する透明反射制御層形成工程、および、上記透明反射制御層の突起部賦形面上に、平坦化層をパターン状に形成する平坦化層形成工程を有する製造方法を用いて製造することができる。
転写原版準備工程において準備される上記転写原版は、上述の「B.透明反射制御層 1.突起部」の項で説明した突起部と対応する凸型錐状構造体を多数有する。多数の上記凸型錐状構造体は、上述の「B.透明反射制御層 1.突起部」の項で説明した所定のばらつきを有する。上記転写原版の材質としては、例えば、金属、樹脂等が挙げられるが、中でも金属が好ましい。
上記転写原版の凸型錐状構造体は、例えばステンレス板の表面をブラスト加工し、ステンレス板の加工表面に対して、段階的に電流値を小さくしながら電解めっき処理を施すことにより形成することができる。電解めっき処理としては、例えば、電解ニッケルめっき、電解クロムめっき、電解スズめっき等による処理が挙げられる。このとき、ブラストの表面粗さを調整することにより、凸型錐状構造体のばらつきを調整できる。また、段階的に電流値を小さくする割合を調整することにより、凸型錐状構造体の高さを調整できる。
ソフトモールド形成工程において形成されるソフトモールドは、一方の面に転写原版の凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体を多数有する。
ソフトモールド用組成物は、転写原版の凸型錐状構造体を精度良く転写可能なものであればよく、一般に樹脂製原版の形成に用いられる樹脂が選択可能である。ソフトモールド用組成物は、必要に応じて任意の添加剤を含んでいてもよい。ソフトモールド用組成物の塗布方法は、特に限定されず、一般的な塗布方法を適宜選択することができる。
ソフトモールドは光透過性を有することが好ましい。ソフトモールド側から光や電子線等の照射を行うことで、透明反射制御層用組成物の塗布層を硬化することができるからである。
透明反射制御層形成工程において用いられる透明反射制御層用組成物は、上述の「B.透明反射制御層」の項で説明した材料を含むものである。上記透明反射制御層用組成物の塗布方法は、従来公知の方法を適用することができる。透明反射制御層用組成物の硬化方法および硬化条件は、含有される樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
上記透明反射制御層形成工程において用いられる基材層については、後述する「III.任意の層」の項で説明する。
平坦化層形成工程における平坦化層の形成方法は、平滑性が良好となるように製膜可能な方法であれば特に限定されず、平坦化層の材料に応じて適宜選択することができる。
平坦化層の形成方法としては、例えば、透明反射制御層の突起部賦形面上に平坦化層形成用組成物を塗布または印刷する方法を用いることができる。平坦化層形成用組成物の塗布方法や印刷方法は、材料に応じて従来公知の方法を用いることができる。
また、別の方法として、別途、基材上に平坦化層を設け、上記平坦化層を透明反射制御層の突起部賦形面上に転写する方法を用いることができる。転写方法としては、溶融転写等の熱転写法等の従来公知の方法を用いることができる。
さらに、別の方法として、透明反射制御層の突起部賦形面上、もしくは市販の樹脂フィルム等の予め成膜された平坦化層の表面上に、接着剤を塗布して接着層を形成し、上記接着層を介して平坦化層と透明反射制御層の突起部賦形面とを貼り合せる方法を用いることもできる。
また、本態様の意匠性フィルムの他の製造方法として、上述の転写原版準備工程およびソフトモールド形成工程と、上記ソフトモールドをロールに巻きつけて転写ロールを準備する転写ロール準備工程と、基材層上に透明反射制御層用組成物を塗布し、上記転写ロールで塗布層を押圧すると同時に上記塗布層を硬化する透明反射制御層形成工程と、上述の平坦化層形成工程と、を有する方法を用いることも可能である。
II.第2態様
本発明の意匠性フィルムの第2態様(以下、この項においては、「本態様」と称する場合がある。)は、一方の面上に多数の溝部が形成された透明反射制御層と、上記透明反射制御層の上記溝部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層と、を少なくとも有し、上記溝部が露出した領域である低反射領域と、上記平坦化層が設けられた領域である高反射領域と、を有する意匠性フィルムであって、上記低反射領域では、上記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、上記溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、一の上記溝部と、上記一の溝部の上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の上記溝部と、の重心間距離(以下、この項においては、「最近接重心間距離」と称する場合がある。)の平均が500nm以下であり、上記重心間距離の分散が8000以上であることを特徴とするものである。
本態様の意匠性フィルムについて、図を参照して説明する。図6は、本態様の意匠性フィルムの一例を示す概略断面図であり、図7は図6のC部分の拡大図である。また、図8溝部の形状を説明するための説明図であり、図8(a)は溝部の概略斜視図、図8(b)は溝部の概略平面図である。
本態様の意匠性フィルム10は、一方の面上に多数の溝部12が形成された透明反射制御層1と、透明反射制御層1の溝部12が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層2と、を少なくとも有する。意匠性フィルム10は、溝部12が露出した領域が低反射領域Aとなり、平坦化層2が設けられた領域が高反射領域Bとなる。なお図7においてPは、透明反射制御層1において溝部11の側面により囲まれた領域である溝口部dが位置する面(基準面)を示す。
多数の溝部12は、形状および配置位置に所定のばらつきをもって形成されており、低反射領域Aでは、溝部12が露出していることで、後述する溝部12による反射光低減機能が発揮され、反射光を低減することができる。一方、高反射領域Bでは、溝部を充填するようにして平坦化層2が形成されていることで、溝部12による反射光低減機能が阻害され、低反射領域Aよりも多くの光を反射することができる。
このように、本態様の意匠性フィルム10は、領域ごとに異なる反射特性を示す。なお、多数の溝部の形状および配置位置のばらつきのことを、単に「(溝部の)ばらつき」と称する場合がある。
ここで、上記低反射領域において多数の溝部が有するばらつきは、3つのパラメータを定量化することで規定される。
第1のパラメータは、溝部の側面により囲まれた領域である溝口部(以下、単に、溝口部と称する場合がある。)の大きさによるものである。溝部は透明反射制御層の面内に溝口部を有している。本態様において、多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、図8(b)で示すように、溝部12Aおよび12Bの溝口部dの平面視形状を八角形に近似したときの面積Sの平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であることをいう。
第2のパラメータは、溝口部の形状によるものである。本態様において、多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、溝口部の平面視形状を図8(b)に示すように八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であることをいう。
第3のパラメータは、隣接する溝部の位置関係によるものである。本態様において、多数の溝部が所定のばらつきを有するとは、図8(b)で示すように、一の溝部12Aと、一の溝部12Aの溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oに最も近接した位置に、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oを有する他の溝部12Bと、の重心間距離(最近接重心間距離)Lの平均が500nm以下であり分散が8000以上であることをいう。
すなわち、多数の溝部が「所定のばらつきを有する」とは、第1〜第3の各パラメータが上述の所定の範囲内(以下、所定値と称する場合がある。)を示すことを意味する。
本態様の意匠性フィルムによれば、上記低反射領域では、形状および配置に所定のばらつきを有する多数の溝部が露出しており、上記溝部が上述の「I.第1態様」の項で説明した突起部による機能と同様の機能を発揮することで、高い反射光低減効果を発揮することができる。また、上記低反射領域においては、光源からの光の正反射が低減され、光が十分に散乱されることから、光源の映り込みを防ぐことができる。一方、上記高反射領域では、溝部上に平坦化層が形成されているため、上述の「I.第1態様」と同様の理由から、光を反射させることができる。
これにより、本態様の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することができる。したがって、本態様の意匠性フィルムは、意匠の視認効果の違いによる意匠性フィルム全体での意匠性向上を図ることができる。
本態様の意匠性フィルムにおける各領域の反射特性については、上述の第1態様の意匠性フィルムの低反射領域において突起部により奏される反射特性が、本態様においては溝部により奏される点を除いて、上述の「I.第1態様」の項で説明した内容と同様である。
つまり、上記低反射領域では、所定のばらつきを有する多数の溝部が露出していることで、上述の「I.第1態様」の項で説明した突起部と同様の機能により、低反射領域での反射率を低下させることができ、干渉により特定の波長光の強度が強まるのを抑制することができる。また、上記溝部、中でも溝口部においては、多数回反射による光吸収に加えて、溝部の形状による光のミー散乱が生じるため、上述の「I.第1態様」の項で説明したように、透明反射制御層内への光の吸収量がさらに増加し、反射率をより低減させることが可能となる。ミー散乱による反射光低減のメカニズムの詳細については、上述の「I.第1態様」の項で説明した突起部でのミー散乱による反射光低減のメカニズムと同様であるため、ここでの説明は省略する。
加えて、低反射領域の表面が上述の構造を有することで、上記低反射領域でのヘイズ値が高くなり、層内において光の散乱が増大するため、本態様の意匠性フィルムにおいて、透明反射制御層の溝部賦形面と対向する面に他の層が配置される場合、透明反射制御層の低反射領域と上記他の層との積層界面での光の全反射を生じにくくすることができる。
これにより、上記低反射領域では、高い反射光低減効果を奏することができる。また、上記低反射領域では、光源からの光の正反射が低減され、光が十分に散乱されることから、光源の映り込みを防ぐことができる。
一方、高反射領域では、溝部上に平坦化層が設けられており、上記平坦化層により溝部が充填されることで、上述した溝部による反射光低減機能が阻害される。このため、上記項反射領域では、上記平坦化層表面に当たった光を表面の平滑性に応じて反射することができる。
このように、本態様の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域間で反射特性が大きく異なるため、領域間での反射光のコントラストが高くなる。
本態様の意匠性フィルムにより発現される意匠性、および透明反射制御層の上記平坦化層が形成された面と対向する面側に意匠層を備えることにより発揮される意匠性については、上述の「I.第1態様」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様においては、低反射領域に溝部が形成されることで、構造的な耐久性が高いという特長も有する。低反射領域において突起部が形成される場合、外部衝撃により突起部が破損したり変形すると、反射光の低減効果が低下することが予想される。これに対し、溝部は、外部衝撃による破損や変形等が発生しにくく、長期にわたり高い反射光低減効果を発揮することができる。
本態様の意匠フィルムのうち、透明反射制御層の溝部以外の構成については、上述した「I.第1態様」と同様であるため、説明を省略する。
以下、本態様の意匠性フィルムにおける透明反射制御層について詳細に説明する。
A.透明反射制御層
本態様における透明反射制御層は、一方の面上に多数の溝部が形成されたものである。
少なくとも上記低反射領域では、多数の上記溝部が所定のばらつきを有し、通常は、透明反射制御層の溝部賦形面全域において、多数の上記溝部が所定のばらつきを有する。
1.溝部
溝部は、その形状および配置位置に所定のばらつきを有するものであり、上記低反射領域においては、多数の溝部が示すばらつきの程度により反射光低減効果が決定される。
ここで、溝部の形状および配置位置のばらつきは、溝口部の大きさ、溝口部の形状、および隣接する溝部の位置関係の3つのパラメータを定量化することで規定され、各パラメータが上述の所定値を示すことで、多数の上記溝部は所定のばらつきを有することができる。
以下、溝部のばらつきを規定するためのパラメータの定量化方法、および上記定量化方法により規定される各パラメータについて説明する。
(1)パラメータの定量化方法
溝部の形状および配置位置のばらつきは、透明反射制御層の一方の面上に形成された多数の溝部、好ましくは、上記透明反射制御層の平坦化層が形成されていない低反射領域にて露出する多数の溝部のうち、所望の点数を抽出して算出され、定量化される。
溝部の抽出方法、1つの視野範囲あたりの溝部の最低抽出点数、および、溝部の抽出を行うための上記視野範囲の検出数については、上述した「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した突起部の抽出方法等と同様とすることができる。
各パラメータは、以下の手順により定量化される。
(a)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて溝部の面内配列を検出する。検出された面内配列から、所望の点数の溝部を抽出し、各溝部について溝部側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を検出する。溝口部の平面視形状は、SEM像では白黒のコントラストから、AFM像では色の明暗のコントラストから検出することができる。
平面視形状の具体的な検出方法は特に限定されないが、例えば、画像内のコントラストの1次微分で勾配を計算することでエッジの強さを計算し、上記勾配の方向から上記エッジの局所的な変化を予測して、その方向の勾配が局所的に極大となる箇所を探す方法を用いることができる。
続いて、SEM画像やAFM画像から、各溝部について溝口部の平面視形状を八角形に近似する。この際、部分的に途切れている線は補完する。補完方法としては、ある閾値を設けて閉空間を作る方法を用いることができる。
溝口部の平面視形状の近似は、画像から形状を近似する際に用いられる従来公知の方法を適用することができ、特に限定されないが、例えばテンプレートマッチング、一般化ハフ変換、Douglas-Peucker法等の方法を用いることができる。各方法の詳細については、「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
(b)次に、各溝部について、八角形に近似された溝口部の平面視形状の面積(以下、単に、溝口部の面積と称する場合がある。)を算出し、溝口部の大きさを規定する。
溝口部の面積は、画像のスケールのピクセルサイズと八角形に含まれるピクセル数との対比から算出することができる。算出された上記面積を統計処理することで、平均値および分散を求める。統計処理には既存の表計算ソフトを使用することができる。
なお、溝口部の面積の平均値および分散を求める際には、外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝口部の面積−溝口部の面積の平均値)/標準偏差
(c)次に、各溝部について、八角形に近似された溝口部の平面視形状の最大内角(以下、単に、溝口部の最大内角と称する場合がある。)を抽出して、統計処理により分散を求めることで、溝口部の形状を規定する。
統計処理には既存の表計算ソフトを使用する。また、上記最大内角の分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値とは、以下の計算式によって算出される標準化得点の絶対値が3以上をいう。
標準化得点=(個々の溝口部の最大内角−溝口部の最大内角の平均値)/標準偏差
(d)次に、隣接する溝部の位置関係を規定する。まず、各溝部について、八角形に近似された溝口部の平面視形状の重心(以下、単に、溝口部の重心と称する場合がある。)を特定し、溝部の位置を規定する。溝口部の重心は、溝口部の平面視形状を八角形に近似し、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した突起部の底面の重心の特定方法と同様の方法により特定することができる。
(e)続いて、各溝口部の重心の位置を座標化する。溝口部の重心の位置は、SEM画像やAFM画像を座標平面とすることで座標化することができる。画像の座標化は、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法と同様の方法を用いることができる。
各溝部の溝口部の重心の位置の座標から、特定の一の溝部と、それに隣接する複数の溝部との溝部間の距離、すなわち重心間距離を算出する。重心間距離は、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した隣接突起部間の重心間距離の算出方法と同様の方法で算出することができる。算出される重心間距離のうち、最小の距離を「最近接重心間距離」とする。
なお、隣接溝部間の重心間距離の算出に際し、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した隣接突起部間の重心間距離の算出式中の、xおよびyは、特定の一の溝部の溝口部の重心の位置を示すx座標およびy座標とする。また、xおよびyは、上記特定の一の溝部に隣接する溝部の溝口部の重心の位置を示すx座標およびy座標である。
上記重心間距離は、SEM画像やAFM画像のスケールのピクセルサイズとピクセル数との対比から算出することができる。
(f)上記の方法で各溝部の最近接重心間距離を抽出し、既存の表計算ソフトで統計処理をして最近接重心間距離の平均値および分散を計算することで、隣接する溝部の位置関係を規定する。なお、最近接重心間距離の平均値および分散を求める際には外れ値を除外することが望ましい。外れ値の算出方法は、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した隣接突起部間の最近接重心間距離の平均値および分散を求める際の算出方法と同様である。
(2)パラメータ
次に、溝部の形状および配置位置のばらつきを規定する各パラメータについて説明する。
(a)溝口部の大きさ
溝口部の大きさは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積、すなわち溝口部の面積により規定される。溝口部の面積とは、図8(b)、図9(a)においてSで示す部分である。なお、図9は低反射領域の平面SEM画像である。
溝口部の面積の平均は、94000nm以上131000nm以下の範囲内であればよく、中でも99000nm以上121000nm以下の範囲内であることが好ましい。溝口部の面積の平均を上記範囲内とすることで、上記溝口部においてミー散乱が支配的に生じることが推測されるからである。
また、溝口部の面積の平均が上記範囲内にあるとき、溝口部の面積の分散は、4.08E+9以上1.06E+10以下の範囲内であることが好ましい。
溝口部の面積の平均および分散を上記範囲内とする理由については、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (2)パラメータ(a)突起部の大きさ」の項で説明した、突起部の底面の最大幅の平均および分散の好適範囲の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。溝口部の面積の分散の単位は(nmとなる。
(b)溝口部の形状
溝口部の形状は、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の大きさにより規定される。溝口部の最大内角とは、図9(b)においてθmaxで示す部分をいう。
溝口部の平面視形状は、最大内角が大きいほど形状のばらつきが大きくなり、一方、最大内角が小さいほど正八角形に近い形状となることから、形状のばらつきが小さくなる。したがって、抽出された各溝部について算出された最大内角の分散が大きいほど、溝部ごとの溝口部の平面視形状についてもばらつきが大きくなる。
溝口部の最大内角の分散は、600以上1020以下の範囲内であればよく、中でも640以上980以下の範囲内、特に640以上810以下の範囲内であることが好ましい。溝口部の最大内角の分散が上記範囲よりも大きいと、製造上、溝部の設計が困難となる場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと干渉によって特定の波長光の強度が強まる場合があるからである。溝口部の最大内角の分散の単位は度(°)となる。
またこのとき、溝口部の最大内角の平均は、200°以上230°以下の範囲内であることが好ましい。その理由については、溝口部の最大内角の分散の好適範囲の規定理由と同様である。
(c)隣接する溝部の位置関係
隣接する溝部の位置関係は、一の溝部と、上記一の溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に上記溝口部の上記重心を有する他の溝部と、の重心間距離(最近接重心間距離)の平均により規定される。
溝部の位置とは、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心の位置をいい、図8、図9(b)、(c)においてOで示す部分である。
最近接重心間距離は、先に説明した方法で算出され定量化されるが、算出方法についてさらに図を示して説明する。最近接重心間距離は、図9(c)で示すように、溝部12Aに隣接する溝部のうち、溝部12Aの溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oと最も近い位置に、溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心Oを有する溝部12Bを抽出し、その重心間距離L1を最近接重心間距離として算出する。次に、溝部12Bに隣接する溝部のうち、溝部12Bの溝口部の重心Oと最も近い位置に溝口部の重心Oを有する溝部12Cを抽出し、その重心間距離L2を最近接重心間距離として算出する。
最近接重心間距離の平均は、上記操作を繰り返し行い、溝部の抽出点数分の最近接重心間距離の総和を算出し、抽出点数で割ることで算出される。
最近接重心間距離の平均は、500nm以下であればよく、中でも420nm以下の範囲内、特に410nm以下の範囲内であることが好ましい。その理由については、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (2)パラメータ (b)隣接する突起部の位置関係」の項で説明した隣接突起部の最近接重心間距離の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。
最近接重心間距離の平均の下限については、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば330nm以上であることが好ましい。
また、最近接重心間距離の平均が上記範囲内にあるときの、上記最近接重心間距離の分散は、8000以上であればよく、中でも11000以上、特に12000以上であることが好ましい。その理由については、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (2)パラメータ (b)隣接する突起部の位置関係」の項で説明した隣接突起部の最近接重心間距離の分散の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。
最近接重心間距離の分散の上限は、製造上設計可能な範囲で設定することができ、例えば20000以下であることが好ましい。最近接重心間距離の分散の単位はnmとなる。
(3)その他
溝部の深さは、上述の3つのパラメータが所定値となることが可能な大きさであれば特に限定されず、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (3)その他」の項で説明した突起部の高さと同様とすることができる。
溝部の深さとは、溝口部が形成された透明反射制御層の面から溝底の先端までの長さをいい、図7においてhで示す部分である。
溝部の深さは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて、各溝部の深さの極大点および極小点を検出し、検出した極大点から、特定の基準位置(例えば溝口部を面内含む透明反射制御層の最表面位置を「深さ=0」とする。)からの各極大点位置の相対的な深さの差を取得してヒストグラム化し、ヒストグラムによる度数分布から算出し、平均化される。極大点および極小点の検出方法については、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部(1)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法を用いることができる。
また、溝部の深さが上記範囲内にあるとき、溝口部の平面視形状の最大幅に対する深さのアスペクト比は、所望の反射光低減効果を発揮することが可能な比であればよく、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (3)その他」の項で説明した突起部の底面の最大幅に対する高さのアスペクト比と同様とすることができる。
溝口部の平面視形状の最大幅とは、上記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときに重心を通る最大幅をいう。
溝部は、凹型の錐状構造を成しているため、溝部の形状を精度良く賦形することが可能であり、生産性が向上するという製造上の利点を有する。その理由については、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (3)その他」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
溝部の溝底の先端形状としては、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (3)その他」の項で説明した突起部の頂部の先端形状と同様とすることができる。
溝口部の平面視形状は、八角形に近似が可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば円、楕円等の丸形状、五角形、六角形、八角形、十二角形等の多角形状等を挙げることができる。
また、溝部の側面形状としては、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層 1.突起部 (3)その他」の項で説明した突起部の側面形状と同様とすることができる。
2.その他
透明反射制御層の溝部以外の詳細については、上述した「I.第1態様 B.透明反射制御層 2.透明反射制御層」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。なお、本態様における透明反射制御層の厚みとは、透明反射制御層の溝部が形成された面と対向する面から、溝部の溝口部が形成された面までの長さをいい、図7においてhで示す部分である。
B.製造方法
本態様の意匠性フィルムの製造方法は、一方の面に所定のばらつきを有する多数の溝部が形成された透明反射制御層を形成し、上記透明反射制御層の溝部賦形面上に平坦化層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。
本態様の意匠性フィルムは、例えば、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体を備えた転写原版を準備する転写原版準備工程、上記転写原版の上記凸型錐状構造体形成面上に、第1ソフトモールド用組成物を塗布し硬化して、一方の面に凹型錐状構造体を備えた第1ソフトモールドを転写形成する第1ソフトモールド形成工程、上記第1ソフトモールドの上記凹型錐状構造体形成面上に、第2ソフトモールド形成用組成物を塗布し硬化して、一方の面に凸型錐状構造体を備えた第2ソフトモールドを転写形成する第2ソフトモールド形成工程、上記第2ソフトモールドの上記凸型錐状構造体形成面上に、透明反射制御層用組成物を塗布し、塗布層上に基材層を配置して上記塗布層を硬化後、上記第2ソフトモールドを剥離して、多数の溝部を備えた透明反射制御層を上記基材層上に形成する透明反射制御層形成工程、および、上記透明反射制御層の溝部賦形面上に、平坦化層をパターン状に形成する平坦化層形成工程を有する製造方法を用いて製造することができる。
上記転写原版準備工程において準備される上記転写原版は、上述の「B.透明反射制御層 1.溝部」の項で説明した多数の溝部の反転形状に対応する凸型錐状構造体を多数有する。多数の上記凸型錐状構造体の反転形状は、上述の「B.透明反射制御層 1.溝部」の項で説明した所定のばらつきを有する。上記転写原版の材質、凸型錐状構造体の形成方法については、上述の「I.第1態様 D.製造方法」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記第1ソフトモールド形成工程において形成される第1ソフトモールドは、一方の面に転写原版の凸型錐状構造体の反転形状である凹型錐状構造体を有する。また、第2ソフトモールド形成工程において形成される第2ソフトモールドは、一方の面に転写原版の凸型錐状構造体と同形状の凸型錐状構造体を有する。
第1ソフトモールド用組成物および第2ソフトモールド用組成物については、上述の「I.第1態様 D.製造方法」の項で説明したソフトモールド用組成物と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。第1ソフトモールド用組成物および第2ソフトモールド用組成物は、組成が同一であってもよく異なってもよい。
上記透明反射制御層形成工程および平坦化層形成工程については、上述の「I.第1態様 D.製造方法」の項で説明した各工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本態様の意匠性フィルムの他の製造方法として、上述の転写原版準備工程と、第1ソフトモールド形成工程および第2ソフトモールド形成工程と、上記第2ソフトモールドをロールに巻きつけて転写ロールを準備する転写ロール準備工程と、基材層上に透明反射制御層用組成物を塗布し、上記転写ロールで塗布層を押圧すると同時に上記塗布層を硬化する透明反射制御層形成工程と、上述の平坦化層形成工程と、を有する方法を用いることも可能である。
さらに、本態様の意匠性フィルムの他の製造方法として、円筒形のシリンダーの表面をめっきし、所定のばらつきを有する多数の凸型錐状構造体が表面に形成されたロール原版を準備するロール原版準備工程と、基材層上に透明反射制御層用組成物を塗布し、上記ロール原版で塗布層を押圧すると同時に上記塗布層を硬化する透明反射制御層形成工程と、上述の平坦化層形成工程と、を有する方法を用いることも可能である。
III.任意の層
本発明の意匠性フィルムは、上記透明反射制御層の、上記平坦化層が形成された面と対向する面側に、任意の層を有していてもよい。
以下、想定される任意の層について説明する。
A.基材層
透明反射制御層は、図10(a)で示すように、透明反射制御層1の、平坦化層2が形成された面と対向する面側に、基材層3を有していてもよい。基材層を有することで、透明反射制御層の機械的強度を向上させることができるからである。
基材層の材料は、基材層の光透過性の有無に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂材料や紙、ガラス、セラミック、金属等の無機材料等を用いることができる。
基材層の形態は、特に限定されず、板状、シート状、フィルム状等が挙げられる。
基材層の厚みは、透明反射制御層を支持することが可能であれば特に限定されず、例えば0.025mm〜20mmの範囲内とすることができる。
基材層は、光透過性を有していてもよく、遮光性を有していてもよい。また、基材層が光透過性を有する場合、上記基材層は、透明であってもよく、半透明であってもよい。さらに、上記基材層は、無色であってもよく、着色剤等を含む有色であってもよい。
基材層の上記透明反射制御層側の面と対向する面側に、後述する意匠層を有する場合、上記基材層は通常、透明性を有する。このとき基材層の可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率は、80%以上、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。
一方、基材層の色により意匠性を発現する場合、上記基材層は遮光性が高いことが好ましく、例えば、可視光の全波長領域380nm〜780nmに対する光透過率が3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)であることが望ましい。
基材層が透明性を有する場合、上記基材層は、透明反射制御層の屈折率と同程度の屈折率を示すことが好ましい。その理由については、上述の「I.第1態様 B.透明反射制御層」の項で説明した理由と同様である。
透明反射制御層と基材層との屈折率差(絶対値)は、0〜0.5の範囲内、中でも0〜0.2の範囲内、特に0〜0.1の範囲内であることが好ましい。
上記基材層の屈折率は、基材層を構成する材料、および上述した透明反射制御層の屈折率との関係において適宜決定することができるが、例えば、1.20〜2.40の範囲内、中でも1.40〜1.70の範囲内が好ましい。
B.意匠層
本発明の意匠性フィルムは、上記透明反射制御層の、上記平坦化層が形成された面と対向する面側に、意匠層を有していてもよい。意匠層の種類に応じて、低反射領域および高反射領域の領域ごとに意匠層の表示仕様を変化させることができるからである。
意匠層としては、例えば、印刷層、金属層等が挙げられる。以下、意匠層として用いられる各層について説明する。
1.印刷層
印刷層は、色や絵柄により、本発明の意匠性フィルムの意匠性を向上させることができる。上記印刷層は、透明反射制御層の上記平坦化層が形成された面と対向する面上、もしくは基材層上に印刷形成される。
印刷層の材料は、一般的な印刷層の形成に用いられる従来公知の材料を用いることができ、例えば、バインダ樹脂および着色剤を含む樹脂インキが挙げられる。
バインダ樹脂は、樹脂インキに含まれる従来公知のバインダ樹脂の中から、要求される物性、印刷適性などに応じて適宜選択することができる。例えば、セルロース樹脂、アクリル樹脂のほか、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの単体またはこれらを含む混合物を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
着色剤は、樹脂インキに含まれる従来公知の着色剤の中から、要求される物性、印刷適性などに応じて適宜選択することができる。例えば、無機顔料、有機顔料や染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
また、樹脂インキは、架橋剤、安定剤、可塑剤、硬化剤等の任意の材料を含んでいてもよい。
印刷層は、透明反射制御層の上記平坦化層が形成された面と対向する面もしくは基材層の一方の表面の全域を覆うようにして印刷された着色層であってもよく、基材層の片面に所望の絵柄が描かれることで形成される絵柄層であってもよく、その両方であってもよい。
印刷層が絵柄層である場合、絵柄としては、写真、文字、記号、数字、模様、稿図、標章等が挙げられる。
2.金属層
金属層としては、金属箔、金属蒸着膜等が挙げられる。
金属層に用いられる金属は、一般的な加飾に使用される金属であれば特に限定されず、金属層の種類やその形成方法に応じて適宜選択することができる。例えば、鉄、銅、金、白金、アルミニウム等を挙げることができる。
3.その他
意匠層の厚みは特に限定されず、意匠層の種類や材料、本発明の意匠性フィルムの用途等に応じて適宜設定される。
また、意匠層の光透過性は、種類や用途に応じて適宜設計することができる。
意匠層は、上記透明反射制御層の、上記平坦化層が形成された面と対向する面上に直接形成されていてもよく、図10(b)で示すように、意匠層4が透明反射制御層1と基材層3との間に形成されていてもよく、図10(c)で示すように、意匠層4が基材層3を介して透明反射制御層1上に形成されていてもよい。意匠層が透明反射制御層と基材層との間に形成される場合は、基材層の光透過性の有無や透明性等については、特に限定されない。一方、意匠層が、基材層を介して透明反射制御層上に形成される場合は、基材層は通常、透明性を有するものとする。
意匠層の形成方法は、意匠層の種類に応じて従来公知の方法で形成することができる。
例えば、意匠層が印刷層であれば、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェットプリントなどの公知の印刷法を用いることができる。
また、意匠層が金属層であれば、金属層の種類に応じて蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化合気相成長)法などの真空薄膜法を用いることができる。
IV.用途
本発明の意匠性フィルムは、低反射領域および高反射領域での反射特性の違いにより、領域間に生じる反射光のコントラストが向上し、領域ごとに異なる意匠性を顕著に発現することが可能であることから、高い意匠性が求められる用途に好適に用いることができる。
上記用途としては、例えば、雑誌や書籍の印刷、包装パッケージ等の高意匠印刷、カレンダーやカタログ、広告、看板等の商業印刷、壁紙、床材、化粧板などの内装用の印刷、写真、ポスターなどの画像印刷、カードや金券などのセキュリティ印刷、店頭ディスプレイ等の什器等に用いることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1〜7]
以下の方法により、第1態様の意匠性フィルムを得た。
1.透明反射制御層の作製
(転写原版A1〜G1の作製)
ステンレス板にブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表1に示す各値となるように仕上げた。次に、下記の組成を含有するめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表1に示す条件で電流密度を開始値(A/dm)から終了値(A/dm)まで1分毎(1ステップ毎)に所定値(A/dm)ずつ小さくして、ステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、黒色クロムめっき膜を形成した。これにより、多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版A1〜G1を得た。
<めっき浴の組成>
・塩化クロム:200g/dm(0.75mol/dm
・塩化アンモニウム:30g/dm(0.56mol/dm
・シュウ酸:3g/dm(0.024mol/dm
・炭酸バリウム:5g/dm(0.025mol/dm
・ホウ酸:30g/dm(0.49mol/dm
・フッ化バリウム:10g/dm(0.057mol/dm
(ソフトモールドA1〜G1の作製)
転写原版A1〜G1のそれぞれの凸型錐状構造体の賦形面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型のソフトモールド形成用組成物を塗布し、厚み0.2mmのポリカーボネート(PC)フィルム(パンライトフィルム、帝人化成株式会社製)で挟んで、PCフィルム面側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をした。転写原版の錐状構造体を転写し、ソフトモールド形成用組成物を硬化させた後、上記転写原版を剥離して多数の凹型錐状構造体が賦形されたソフトモールドA1〜G1を得た。
<ソフトモールド形成用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
ソフトモールドA1〜G1のそれぞれの凹型錐状構造体の賦形面上に、下記の組成から成る紫外線硬化型の透明反射制御層用組成物を塗布し、塗布面上に基材層としてPETフィルム(コスモシャインA4100 東洋紡株式会社製)を配置して、基材層側から波長365nm、照射エネルギー170mJ/cmでUV照射をして、透明反射制御層用組成物を硬化した。その後、ソフトモールドを剥離して、最表面に多数の突起部を備える透明反射制御層A1〜G1を各基材層上に得た。
転写原版A1〜G1を用いて得た透明反射制御層A1〜G1における多数の突起部は、使用した転写原版A1〜G1における多数の凸型錐状構造体と、形状およびばらつきが一致した。
<透明反射制御層用組成物>
・ウレタンアクリレート … 35質量%
・1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート … 35質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート … 10質量%
・ビニルピロリドン … 15質量%
・1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン … 2質量%
・ベンゾフェノン … 2質量%
・ポリエーテル変性シリコーンオイル … 1質量%
(平坦化層の準備)
平坦化層として、厚み50μmのPETフィルム(ルミラー50T60;東レ(株)製)を用い、上記PETフィルムの片面に以下の接着剤組成物をグラビアコーターにて塗工し、接着層付き平坦化層を作製した。
<接着剤組成物>
・アクリル系粘着剤(ニッセツPE−118;日本カーバイト工業(株)製)) … 100重量部
・イソシアネート系架橋剤(ニッセツCK−101;日本カーバイト工業(株)製) … 2重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(重量比) … 55重量部
(意匠性フィルムの作製)
得られた接着層付き平坦化層を直径1cmの円形状にカットしたカット片を複数準備し、上記カット片を各透明反射制御層A1〜G1の表面の一部に貼り付けて高反射領域を設け、意匠性フィルムを得た。
[比較例1〜4]
以下の方法で作製した転写原版H1〜K1を用いて透明反射制御層H1〜K1を形成したこと以外は、実施例1と同様にして意匠性フィルムを得た。転写原版H1〜K1を用いて得た透明反射制御層H1〜K1における多数の突起部は、使用した転写原版H1〜K1における多数の凸型錐状構造体と、形状およびばらつきが一致した。
(転写原版H1〜K1の作製)
ステンレス板のブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表2に示す各値となるように仕上げ、ステンレス板の加工面に表2に示す各条件で電解めっき処理を行い多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版H1〜K1を得た。
[実施例8〜14]
以下の方法により、第2態様の意匠性フィルムを得た。
1.透明反射制御層の作製
(転写原版A2〜G2の作製)
ステンレス板にブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表3に示す各値となるように仕上げた。実施例1と同様の組成のめっき浴を用い、陽極としてグラファイト電極を用いて、表3に示す各条件でステンレス板の加工面に電解めっき処理を行い、黒色クロムめっき膜を形成した。これにより、多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版A2〜G2を得た。
(第1ソフトモールドの作製)
転写原版A2〜G2のそれぞれの凸型錐状構造体の賦形面上に、実施例1で用いた紫外線硬化型のソフトモールド形成用組成物を塗布し、PCフィルム(実施例1で用いたものと同様。)で挟み、実施例1と同じ条件でUV照射してソフトモールド形成用組成物を硬化させた後、上記転写原版を剥離して、多数の凹型錐状構造体が賦形された第1ソフトモールドA2〜G2を得た。
(第2ソフトモールドの作製)
第1ソフトモールドA2〜G2のそれぞれの凹型錐状構造体が賦形された面上に、第1ソフトモールドと同じソフトモールド形成用組成物を塗布し、PCフィルム(実施例1で用いたものと同様。)で挟み、同じ条件でUV照射してソフトモールド形成用組成物を硬化させた後、第1ソフトモールドを剥離して、多数の凸型錐状構造体が賦形された第2ソフトモールドA2’〜G2 ’をそれぞれ得た。
第2ソフトモールドA2’〜G2 ’のそれぞれの凸型錐状構造体の賦形面上に、実施例1で用いた紫外線硬化型の透明反射制御層用組成物を塗布し、塗布面上に基材層としてPETフィルム(コスモシャインA4100 東洋紡株式会社製)を配置して、基材層側から実施例1と同じ条件でUV照射をして、透明反射制御層用組成物を硬化した。その後、第2ソフトモールドを剥離して、最表面に多数の溝部を備える透明反射制御層A2〜G2を各基材層上に得た。
転写原版A2〜G2を用いて得た透明反射制御層A2〜G2における多数の溝部は、使用した転写原版A2〜G2における多数の凸型錐状構造体の反転形状と、形状およびばらつきが一致した。
(意匠性フィルムの作製)
実施例1と同様の方法で接着層付き平坦化層を作製し、直径1cmの円形状にカットしたカット片を複数準備し、上記カット片を各透明反射制御層A2〜G2の表面の一部に貼り付けて高反射領域を設け、意匠性フィルムを得た。
[比較例5〜8]
以下の方法で作製した転写原版H2〜K2を用いて透明反射制御層H2〜K2を形成したこと以外は、実施例8と同様にして意匠性フィルムを得た。転写原版H2〜K2を用いて得た透明反射制御層H2〜K2における多数の溝部は、使用した転写原版H2〜K2における多数の凸型錐状構造体の反転形状と、形状およびばらつきが一致した。
(転写原版H2〜K2の作製)
ステンレス板のブラスト加工をして、三次元表面粗さ測定における算術平均面粗さSaが表4に示す各値となるように仕上げ、ステンレス板の加工面に表4に示す各条件で電解めっき処理を行い多数の凸型錐状構造体を版面に有した転写原版H2〜K2を得た。
[評価1]
実施例1〜14、比較例1〜8で得られた意匠性フィルムについて、以下の条件にてSEM観察を行った。
実施例1〜7および比較例1〜4で得られた意匠性フィルムについては、透明反射制御層の低反射領域に形成された突起部の中から表1および表2に示す点数を抽出し、平面視SEM像から突起部の底面の最大幅の平均および分散、突起部の最近接重心間距離の平均および分散、ならびに|Σ(k=1〜n)cosφ/n|値および|Σ(k=1〜n)sinφ/n|値を求めた。
平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化は、上述の「I.第1態様 A.透明反射制御層 1.突起部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により行い、突起部の根元の近似形状は八角形とした。
また、実施例8〜14、比較例5〜8で得られた意匠性フィルムについては、透明反射制御層の低反射領域に形成された溝部の中から表3および表4に示す点数を抽出し、平面視SEM像から溝口部の面積、溝口部の最大内角、および隣接する溝部の最近接重心間距離について平均および分散を求めた。
平面視SEM像を用いた各パラメータの定量化は、上述の「II.第2態様 A.透明反射制御層 1.溝部 (1)パラメータの定量化方法」の項で説明した方法により行った。
(条件)
・SEM:電界放出形走査電子顕微鏡 S-4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)
・観察方法:Top−View(透明反射制御層の平坦化層が設けられた面側から)
・前処理:Pt−Pdスパッタ
・観察倍率:×10k
・視野範囲:縦4μm×横4μm
[評価2]
実施例1〜14、比較例1〜8で得られた意匠性フィルムについて、以下の条件にて低反射領域および高反射領域での最大反射率を計測した。測定に際し、基材層の透明反射制御層が形成された面と対向する面全域に、カラーコード(DIC社製、以下同じ。)No.582の黒色印刷層を設けて測定した。
(条件)
・計測装置:Scanning Spectrophotometer UV-3100PC(島津製作所製)
・計測方法:8°入射光(波長領域380nm〜780nm)に対する全反射
[評価3]
実施例1〜14、比較例1〜8で得られた意匠性フィルムについて、以下の条件にて低反射領域のヘイズ値を計測した。
(条件)
・計測装置:ヘイズメーター HM−150((株)村上色彩技術研究所製)
・計測方法:JIS K7136に準拠した方法
各評価結果を表1〜4に示す。表中のμは平均値、σは上記平均値から算出される分散を示す。
[実施例15〜28および比較例9〜16]
意匠層として、基材層の片面全域に、グラビア印刷法を用いて多色印刷画像を有する印刷層を形成し、上記基材層の上記印刷層が形成された面と対向する面上に透明反射制御層を形成したこと以外は、実施例1〜14および比較例1〜8と同様にして意匠性フィルムを得た。
印刷層の印刷画像は、背景がカラーコードNo.582の黒色印刷層から構成され、白抜き、カラーコードNo.125の黄色印刷層、カラーコードNo.564の赤色印刷層、カラーコードNo.649の緑色印刷層、カラーコードNo.578の青色印刷層を用いて大きさ20ptでアルファベットAからZまでが表示されている絵柄とした。
[評価4]
実施例15〜28および比較例9〜16の意匠性フィルムについて、平坦化層が設けられた側の表面に対し、光源(照度400ルクス)のもとで、正反射方向から観察した。
実施例15〜28の意匠性フィルムでは、平担化層が設けられた高反射領域部分でのみ光源の正反射が見られ、円形状の平担化層の形状が輝度高く観察され、意匠層の絵柄とは異なる意匠(円形)を観察することができた。一方、比較例9〜16の意匠性フィルムでは、円形状の平坦化層の周囲でも正反射による光源形状が映り込み、意匠層の絵柄とは異なる意匠(円形)をはっきりと視認することは困難であった。
1 … 透明反射制御層
2 … 平坦化層
3 … 基材層
4 … 意匠層
10 … 意匠性フィルム
11、11A、11B、11C… 突起部
12、12A、12B、12C… 溝部
A … 低反射領域
B … 高反射領域

Claims (3)

  1. 一方の面上に多数の突起部が形成された透明反射制御層と、
    前記透明反射制御層の前記突起部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層と、
    を少なくとも有し、
    前記突起部が露出した領域である低反射領域と、前記平坦化層が設けられた領域である高反射領域と、を有する意匠性フィルムであって、
    前記低反射領域では、前記突起部の底面の重心を通る最大幅の平均が250nm以上500nm以下の範囲内であり、
    一の前記突起部と、前記一の突起部の底面の重心に最も近接した位置に底面の重心を有する他の前記突起部と、の重心間距離の平均が400nm以下であり、前記重心間距離の分散が10000以上であり、
    前記突起部が形成された面内の長さ方向および幅方向をx軸方向およびy軸方向で規定し、平面視上において前記突起部の底面の重心からの前記突起部の頂部の位置を方位角φ(0°≦φ<360°)で示し、前記突起部の抽出点数をn(n≧30)としたときに、
    |Σ(k=1〜n)cosφ/n|≦0.25、かつ
    |Σ(k=1〜n)sinφ/n|≦0.25の関係を満たすこと
    を特徴とする意匠性フィルム。
  2. 一方の面上に多数の溝部が形成された透明反射制御層と、
    前記透明反射制御層の前記溝部が形成された面上の一部に、パターン状に設けられた平坦化層と、
    を少なくとも有し、
    前記溝部が露出した領域である低反射領域と、前記平坦化層が設けられた領域である高反射領域と、を有する意匠性フィルムであって、
    前記低反射領域では、前記溝部の側面により囲まれた領域である溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの面積の平均が94000nm以上131000nm以下の範囲内であり、
    前記溝部の前記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの最大内角の分散が600以上1020以下の範囲内であり、
    一の前記溝部と、前記一の溝部の前記溝口部の平面視形状を八角形に近似したときの重心に最も近接した位置に前記溝口部の前記重心を有する他の前記溝部と、の重心間距離の平均が500nm以下であり、前記重心間距離の分散が8000以上であること
    を特徴とする意匠性フィルム。
  3. 前記透明反射制御層の、前記平坦化層が形成された面と対向する面側に、意匠層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の意匠性フィルム。
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