JP4985161B2 - 光学素子およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は光学素子およびその製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は複数の光学機能(例えば、反射防止機能、偏光分離機能、位相変換機能、光拡散機能など)を併せ持った光学素子およびその製造方法に関する。
光の特性を制御する光学素子は、例えば、液晶ディスプレイ等に代表される光エレクトロニクス機器等に使用されている。光学素子としては、光拡散フィルム、偏光フィルム、プリズムフィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、位相差板等が挙げられる。これらの光学素子は、フィルムを構成する材料の分子配向を制御したり、機能を付与する材料をフィルムに含有させたり、フィルム表面の立体構造を制御したりすることによって得られる。
液晶ディスプレイなどの表示装置では、表示画面の大面積化と、装置の薄型化の検討が進められている。これに伴い、大面積で多機能の光学フィルムの開発が望まれるようになってきている。
例えば、特許文献1には、高透明性樹脂100重量部に対して、平均粒子径1〜20μmのビーズ状の架橋アクリル樹脂0.5〜10重量部を含有せしめてなる光拡散性シートの少なくとも片面に、微細な断面鋸歯状の凸条を形成することによって、プリズムシートと光拡散性シートの両性能を兼備し、照明カバーや液晶バックライトの輝度向上並びに均一化を図った光拡散性プリズムシートが提案されている。
特開平9−304606号公報
また、特許文献2には、コレステリック配向フィルムに温度40〜300℃、圧力0.05〜80MPaの加温加圧条件下において回折素子基板の回折パターンを転写し、フィルムの一部に回折能を示す領域を形成させた、偏光性を有する回折光を生じさせることができるコレステリック液晶性フィルムが提案されている。
しかしながら、異なる光学機能間での干渉を避けて複数の機能を完全に兼備させるためには複雑な設計を要する。またより複雑な光学機能を兼ね合わせた、広い面積の光学部材は、製造方法が煩雑な場合が多く、製造コストがかさみ、汎用性のある光学部材として使うことができなかった。
特開2000−310704号公報
本発明の目的は、複数の光学機能(例えば、反射防止機能、偏光分離機能、位相変換機能、光拡散機能など)を併せ持った、廉価に製造可能な広い面積の光学素子およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討した結果、フィルム基材の少なくとも一方の表面に光学機能膜を形成して積層体を得、次いで該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて光学機能膜を褶曲させることによって、光学機能層と基層とを含む積層体からなり、光学機能層と基層との界面が褶曲しており、該光学機能層の表面に褶曲に対応する起伏を有する光学素子を、容易に大面積で得ることができ、しかも、起伏面の頂点間の距離、アスペクト比およびその分布度合いを自在に制御できるので、起伏形状に由来する光学機能と、光学機能膜に由来する光学機能とを低干渉で兼備できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 光学機能層と基層とを含む積層体からなり、 光学機能層と基層との界面が褶曲しており、 該光学機能層の表面に褶曲に対応する起伏を有する光学素子。
(2) 光学機能層が、光反射防止層、回折格子層、偏光分離層、および位相差層からなる群から選ばれる少なくとも一つの層である、前記の光学素子。
(3) 光学機能層の表面の起伏は、頂点間の平均距離が50nm〜50μmである、前記の光学素子。
(4) フィルム基材の少なくとも一方の表面に光学機能膜を形成して積層フィルムを得る工程、および該積層フィルムを面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて光学機能膜を褶曲させる工程を含む、光学素子の製造方法。
本発明の光学素子は、複数の光学機能(例えば、反射防止機能、偏光分離機能、位相変換機能、光拡散機能など)を併せ持っている。本発明の光学素子を液晶ディスプレイなどの表示装置に適用することによって、表示画面の大面積化と、装置の薄型化に貢献することができる。
光学素子の起伏面の表面走査型電子顕微鏡写真像の一例を示す図 図1の電子顕微鏡写真像の2次元フーリエ変換像を示す図 光学素子の起伏面の表面走査型電子顕微鏡写真像の別の一例を示す図 本発明で得られる構造の断面模式図 本発明で得られる構造の断面模式図 実施例1で得られた光学フィルム1の角度−輝度分布を示す図 実施例2で用いた拡散光源の角度−輝度分布を示す図 実施例2で得られた光学フィルム1の角度−輝度分布を示す図 実施例3で得られた光学フィルム1の角度−輝度分布を示す図
符号の説明
1,11:基層(フィルム基材)
2,12:光学機能層(光学機能膜)
〔光学素子〕
本発明の光学素子は、光学機能層と基層とを含む積層体からなり、光学機能層と基層との界面が褶曲しており、該光学機能層の表面に褶曲に対応する起伏を有するものである。
基層は、通常、樹脂や、ゴム若しくはエラストマーで形成されている。基層の平均厚さは、通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。
光学機能層と基層との界面は褶曲している。褶曲は、しわを寄せたように波形に曲がった状態のことである。この波形は、頂点間の平均距離が50nm〜50μmであることが好ましい。この波形の頂点は尾根状に連なっており、途中に分岐が存在してもよい。またこの波形の稜線は一つの方向に略平行に配置されたものになっていてもよいし、フラクタルのような不規則図形になっていてもよい。
波形の頂点間の距離の変動係数は、80%以下となっていることが好ましい。なお、この変動係数は、頂点間の距離の平均値に対する該距離の標準偏差の割合(=標準偏差/平均値×100)である。波形の稜線が一つの方向に略平行に配置されたものでは、頂点間の距離の変動係数は40%以下が好ましく、30%以下がさらに好ましい。頂点間の距離の変動係数が小さいことは、波形の周期性が高いことを意味する。
図4及び図5は、本発明の光学素子の垂直断面を示す模式図である。光学機能層2,12と基層1,11との界面が褶曲しており、該光学機能層の表面に褶曲に対応する起伏を有している。光学機能層は基層の両面に積層されていてもよく、そして両界面が褶曲して、両面に褶曲に対応する起伏を有していてもよい。
光学機能層の表面の起伏は、褶曲の波形に対応して形成されているので、起伏中の凸部の形状、配置状態などは、前述した波形の形状、配置状態などによって決まる。従って、起伏の頂点間の平均距離は、波形の頂点間の平均距離と同じ50nm〜50μmであることが好ましく、また、起伏の頂点は尾根状に連なっており、途中に分岐が存在してもよい。またこの起伏の稜線は一つの方向に略平行に配置されたものになっていてもよいし、フラクタルのような不規則図形になっていてもよい。また、起伏の頂点間の距離の変動係数が80%以下であることが好ましい。
起伏の頂点間の平均距離及び頂点間距離の変動係数は、光学素子の周期性が最も強い方向の垂直断面を走査型電子顕微鏡で観察し、該観察像から隣接する凸部と凸部との間の距離を複数計測し、それら計測値の平均値、標準偏差を求め、そして変動係数(%)=標準偏差σ/平均値×100を算出する。なお、光学素子の短手方向に10cm以上離れた場所から最低2箇所選択し、さらに光学素子の長手方向に10cm以上離れた場所から最低2箇所選択し、選択した箇所の断面形状からそれぞれ30点以上の距離を計測する。なお、本発明の標準偏差は標本標準偏差である。
起伏中の凸部の高さは、目的に応じて5nm〜50μmの範囲で選択され、好ましくは50nm〜10μmの範囲である。起伏中の凸部の幅(高さの半分の場所の幅)は、好ましくは5nm〜50μmであり、好ましくは50nm〜10μmである。またアスペクト比は、通常0.1〜10である。アスペクト比は起伏中の凸部の高さ/凸部の幅で定義される。アスペクト比は光学機能膜の膜質、光学機能膜の膜厚、フィルム基材の収縮率等を制御することで調整することができる。
起伏は、フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真像を2次元フーリエ変換して得られる空間周波数のパワースペクトルが一つの方向に分布していることが好ましい。前記パワースペクトルが一つの方向に分布していると、拡散機能や回折機能や集光などの光学特性に異方性を持たせることができる。図1は、本発明光学素子表面の走査顕微鏡写真の一例を示す図である。図2は、図1の画像を2次元フーリエ変換した像を示す図である。図2は縦方向に空間周波数の強度の強い部分が分布しており、この方向に光学素子の周期性が強くなっていることを示している。
また、起伏が、図1のように、稜線が一つの方向に略平行に配置された構造である場合には、後述するように回折格子や、グリッド偏光子等に利用できる。
本発明の光学素子は、その表面の起伏を利用して様々な用途に適用できる。起伏頂点間の距離、アスペクト比、およびその分布を変更することによって、光拡散機能、集光機能、光回折機能、偏光吸収機能、電磁波遮蔽機能、電磁波吸収機能、偏光分離機能を有する光学素子を容易自在に大面積で製造できる。
また、起伏面に、褶曲に対応するマクロ凹凸形状よりも短い頂点間の平均距離を有するミクロ突起を設けることによって、各種光学機能を付与できる、ミクロ突起のパターンとしては、ホログラムパターン、格子パターンなどが挙げられる。
光学機能層の平均厚さは、1nm〜50μmであることが好ましい。また、光学機能層の平均厚さは、起伏の凸部の平均高さの10%〜100%であることが好ましい。光学機能層の平均厚さが、起伏の凸部の平均高さの10%より薄い場合には、耐擦傷性が損なわれる可能性があり、逆に100%より厚い場合には、過酷な条件で使用した場合、そりが出る可能性がある。
光学機能層の厚さの変動係数は20%以下であることが好ましい。光学機能層の厚さの変動係数が20%より大きい場合には、光学機能層の厚さ分布が大きくなり、そりの原因となる場合があり、また基層表面の凹凸形状に対応した起伏が光学機能層側の表面に現れなくなる。
光学機能層の厚さは、以下のようにして計測できる。フィルムを周期性が強い方向で垂直に切断し超薄切片を得、透過電子顕微鏡にて超薄切片を写真撮影する。撮影した画像から光学機能層の厚さを、凸部頂点および凹部底点のそれぞれ少なくとも15点以上で計測し、それら計測値から、平均値、標準偏差、変動係数を算出する。
フィルムの周期性が強い方向は、フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真像を2次元フーリエ変換して得られる空間周波数のパワースペクトル分布から空間周波数の強度が強い2点を抽出し、この2点で結ばれる直線の方向である。起伏の稜線が一つの方向に略平行に配置された構造である場合、稜線が伸びる方向に直交する方向が、周期性が強い方向になる。なお、光学機能層がミクロ突起を有する場合、ミクロ突起を含めたものを光学機能層の厚みとする。
光学機能層には、それを構成する材料自身が持つ屈折率、光透過率、光反射率などの特性を利用した機能層と;表面の起伏よりも短い頂点間平均距離を有するミクロ突起などの表面ミクロ形状を利用した機能層と;がある。
材料特性を利用した光学機能層としては、例えば、(1)ディスコティック液晶化合物やネマチック液晶化合物などの光学異方性材料などを塗布し、所望の配向(例えば、光学異方性化合物が螺旋状に配向したコレステリック配向、光学異方性化合物の配向方向が膜面に対して一定角度を持って配向した均一チルト配向や膜面に対する角度が厚さ方向で変化するハイブリッドチルト配向)にし、その配向を固定させて得られる膜;(2)高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜とを交互に積層してなる膜;(3)微粒子などの光拡散材をマトリックスに分散させてなる膜;(4)面内等方性薄膜と面内異方性薄膜とを多数積層させた膜;(5)蛍光性材料からなる膜;などが挙げられる。(1)の膜によって、円偏光反射又は円偏光分離機能(輝度向上機能)、位相差機能(視野角拡大、色相調整などの光学補償機能)などを付与できる。(2)の膜によって、光の反射防止機能などを付与できる。(3)の膜によって光拡散機能を付与できる。(4)の膜によって直線偏光反射または直線偏光分離機能(輝度向上機能)などを付与できる。(5)の膜によって、発光機能などを付与できる。
表面ミクロ形状を利用した光学機能層としては、例えば、(6)周期的な極微細な突起が起伏面に形成された膜;(7)格子状の突起が起伏面に形成された膜;(8)梨地のようなランダムな形状の突起が起伏面に形成された膜;などが挙げられる。(6)の膜によって、モスアイ、ホログラムなどの機能を付与できる。(7)の膜によって、ワイヤグリッド偏光、回折格子、電磁波遮蔽または吸収などの機能を付与できる。(8)の膜によって、光反射防止、光拡散性、防眩性などの機能を付与できる。
〔光学素子の製造方法〕
本発明の光学素子の製造方法は、フィルム基材の少なくとも一方の表面に光学機能膜を形成して積層フィルムを得る工程、及び該積層フィルムを面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて光学機能膜を褶曲させる工程を含むものである。
(フィルム基材)
本発明の製造方法に用いるフィルム基材は、光学機能膜を積層させた後に、面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させることができるものであれば特に限定されない。例えば、フィルム基材自身が加熱などの手段によって収縮するものであってもよいし、一軸延伸させたときに延伸方向に直交する方向が収縮するものであってもよい。このフィルム基材と後述する光学機能膜の収縮差によって、光学機能膜と基材との界面が褶曲して、光学機能膜に皺がより起伏が形成される。
フィルム基材の収縮前の平均厚さは、ハンドリングの観点から通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。
フィルム基材は、通常、樹脂や、ゴム若しくはエラストマーで形成されている。
樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、メタクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(例えば、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)などが挙げられる。
なお、脂環式オレフィン樹脂としては、特開平05−310845号公報や米国特許第5179171号公報に記載されている環状オレフィンランダム共重合体、特開平05−97978号公報や米国特許第5202388号公報に記載されている水素添加重合体、特開平11−124429号公報や国際公開99/20676号公報に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
またゴム/エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。
フィルム基材の材料は、これらのうち、製造が容易な点から熱可塑性樹脂が好ましい。
フィルム基材を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、加工の容易さの観点からガラス転移温度が60〜200℃であるものが好ましく、100〜180℃であるものがより好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
また、フィルム基材を構成する熱可塑性樹脂は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより成形加工性が良好となり、機械的強度を向上させることができる。この重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定することができる。
フィルム基材を構成する樹脂や、ゴム又はエラストマーは、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、拡散粒子、熱可塑性エラストマーその他の配合剤が適宜配合されたものであってもよい。
フィルム基材は、その製法によって特に制限されない。フィルム基材の原反は、前述の樹脂等を公知のフィルム成形法で形成すること等によって得られる。フィルム成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。
加熱などの手段によってそれ自身が収縮するフィルム基材は、例えば、前述の樹脂等を公知の成形法で原反フィルムに形成し、該原反フィルムを延伸することによって得ることができる。また、延伸処理の代わりに、磁場や電場を掛けて又はラビング処理して分子を配向させ収縮性を示すフィルム基材とすることができる。ゴム又はエラストマーを公知の成形法で弾性フィルムに形成し、該弾性フィルムを面内方向に引っ張った状態にすることで、弾性による復元力を利用した収縮性を示すフィルム基材とすることができる。さらに硬化性樹脂からなるフィルムをあらかじめ溶剤等で膨潤させ、該膨潤フィルムが乾燥する時に生じる収縮を利用して本発明に用いるフィルム基材とすることができる。これらのうち、原反フィルムを延伸することによって得られる収縮性を示すフィルム基材が好ましい。
原反フィルムを延伸することによって得られる収縮性を示すフィルム基材は、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれで延伸したものであってもよい。二軸延伸の場合は、通常、フィルム面内の二つの方向に収縮することになる。
延伸処理する方法としては、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いてフィルムの幅方向に対して任意の角度θの方向に連続的に斜め延伸する方法;などが挙げられる。
主たる収縮方向の収縮率が大幅に高くなると、主たる収縮方向に直交する方向に伸びが生じることがあり、その伸びによって起伏面に亀裂が生じることがある。この収縮時の亀裂発生を抑制することができるという観点から、(i)延伸時の縦方向の収縮を好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下に抑えて横方向に一軸延伸する(横一軸延伸法)か、(ii)縦方向及び横方向に二軸延伸するの(二軸延伸法)が好ましい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
延伸時の温度は、フィルム基材を構成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)と(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)と(Tg+50℃)の間の温度から選択される。
延伸倍率は、使用するフィルムの引張り特性に応じて、起伏中の凸部が所望するアスペクト比になるように適宜選択すればよい。なお、ここで言うアスペクト比とは起伏中の凸部の垂直断面形状の高さと幅との比(=高さ/幅)である。なお、凸部の垂直断面の形状が長方形または正方形以外のときには、アスペクト比を求めるときの凸部の幅は凸部の高さの1/2の高さにおける凸部の幅である。
高アスペクト比の凸部を得たい場合には、光学機能膜の膜質や厚さにもよるが、おおむね延伸倍率を高く設定する。低アスペクト比の凸部を得たい場合には、延伸倍率を低く設定する。具体的には、主たる延伸方向の倍率R1を、通常1.01〜30倍、より好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.05〜5倍にする。主たる方向の延伸倍率R1が1.01倍より小さい倍率では、起伏が生じず、30倍より大きい倍率では、フィルム強度が低下する恐れがある。
(光学機能膜)
次に、フィルム基材の少なくとも一方の表面に光学機能膜を形成する。光学機能膜の収縮率は、フィルム基材を収縮させる条件下において、フィルム基材の収縮率の20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。光学機能膜の収縮率が大きすぎると褶曲が生じず、表面に起伏を形成しない場合がある。フィルム基材上に形成された光学機能膜は、本発明の光学素子を構成する光学機能層になる。
光学機能膜の収縮前の平均厚さは、1nm〜50μmであることが好ましい。光学機能膜の厚さは、透過電子顕微鏡にて、光学機能膜の垂直断面を写真撮影し、該写真像から厚さの平均値を求める。
光学機能膜は、光反射防止、回折、偏光分離、位相差、防眩などの光学特性を発現させることができる公知の無機薄膜または有機薄膜で形成されている。
薄膜を構成する無機物質としては、金属;金属酸化物や金属窒化物などの金属化合物;非金属;非金属酸化物などの非金属化合物などが挙げられ、具体的には、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、白金、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、アンチモン、イットリウム、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ランタン、セリウム、等の金属若しくは非金属;またはこれらの酸化物や窒化物;又はそれらの混合物が挙げられる。本発明の製造方法で得られるフィルムを光学素子として使用する場合には、可視光を透過する無機物質を選択することが好ましく、その具体的な例としてITO、In23、SnO2、SiO2、CuI、TiO2、ZrO2等が挙げられる。これらのうち、薄膜の柔軟性という観点からSiO2が好ましい。
無機薄膜の平均厚さは、1nm〜500nmであることが好ましい。1nmより薄すぎると起伏が形成しづらくなり、500nmより厚すぎると収縮時に無機薄膜層にクラックが発生しやすくなる。無機薄膜を用いると、頂点間平均距離が50nm〜1000nmの起伏が容易に得られる。
無機薄膜を形成する方法は、特に制限されず、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD(化学蒸着)等の蒸着法;スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、スプレー法、ベーパー法、グラビアコータやブレードコータなどのコータ法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の塗布法;無電解めっき法、電解めっき法などが挙げられる。
薄膜を構成する有機物質としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、前記フィルム基材に用いることができるものとして例示したものと同様のものを挙げることができる。硬化性樹脂には、熱硬化性のものと、エネルギー線硬化性のものとがある。なお、エネルギー線とは、可視光線、紫外線、電子線などのことをいう。薄膜を構成する有機物質として液晶化合物のような光学異方性のものを用いると位相差を持った薄膜を形成できる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。エネルギー線硬化性樹脂としては、ラジカル重合性不飽和基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等)及び/又はカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の官能基を有するモノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤や光増感剤等とを含むものが挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を挙げられる。
有機薄膜を形成する方法は、特に制限されず、例えば、(1)フィルム基材を構成する樹脂と、光学機能膜を構成する樹脂とを共押出する方法;(2)樹脂を成形し光学機能膜を得、これをフィルム基材に貼り合わせる方法;(3)フィルム基材の表面に樹脂を含有する溶液を塗布し乾燥硬化させる方法、(4)樹脂等を用いて蒸着させる方法等が挙げられる。
有機薄膜の平均厚さは、100nm〜50μmであることが好ましい。100nmより薄すぎると表面に起伏が形成しづらくなり、50μmより厚すぎるとアスペクト比の制御が難しくなる。有機薄膜を用いると、頂点間の平均距離が500nm〜50μmの微細な起伏が容易に得られる。
(褶曲誘起構造)
本発明の製造方法においては、フィルム基材表面に光学機能膜を形成する前に、光学機能膜の褶曲を引き起こさせるための構造(褶曲誘起構造)をフィルム基材の表面に形成すること、又はフィルム基材表面に光学機能膜を形成した後で且つ該基材を収縮させる前に、該光学機能膜の褶曲を引き起こさせるための構造(褶曲誘起構造)を光学機能膜に形成することを含むことが、凹凸形状の頂点間の距離の均一性を向上させたい場合には、好ましい。
褶曲誘起構造は、基材が収縮したときに光学機能膜の褶曲を引き起こさせる構造であれば特に限定されず、例えば、ラビング処理やその他の方法で表面に付けた傷、インクジェットプリンターや印刷機等で載せたインク印、エンボス加工やインプリントなどで付与した凹凸などが挙げられる。
褶曲誘起構造は一定間隔の位置に形成されることが好ましい。褶曲誘起構造の間隔は、所望する起伏の頂点間の距離とは直接に関係無いので、所望の起伏頂点間の距離よりも狭くても、広くても良いが、起伏の頂点間の所望距離の0.05倍〜100倍の褶曲誘起構造の間隔にすることが好ましい。
本発明の製造方法においては、次に前記光学機能膜を表面に積層したフィルム基材を収縮させ、光学機能膜を褶曲させる。フィルム基材を収縮させる方法は、フィルム基材の種類に応じて適宜選択すればよい。
フィルム基材の収縮率は、フィルム基材の収縮によって光学機能膜が褶曲したときに光学機能膜等に亀裂などが生じないようにするために、主たる収縮方向の収縮率ΔL、および主たる収縮方向に直交する方向の収縮率ΔMが、式〔3〕および式〔4〕を満たすことが好ましい。なお、ΔL及びΔMは式〔1〕及び式〔2〕でそれぞれ定義される。
式〔1):ΔL=(L0−L1)/L0×100 (L0:主たる収縮方向の収縮前の長さ、L1:主たる収縮方向の収縮後の長さ)
式〔2):ΔM=(M0−M1)/M0×100 (M0:主たる収縮方向に直交する方向の収縮前の長さ、M1:主たる収縮方向に直交する方向の収縮後の長さ)
式〔3〕:ΔL>0
式〔4〕:−(ΔL×0.3)≦ΔM≦ΔL
起伏の異方性を強くしたい場合、すなわち、起伏の稜線が一つの方向に略平行に配置された構造にしたい場合には、式〔3〕及び式〔5〕を満たすことが好ましい。
式〔5〕:−(ΔL×0.2)≦ΔM≦(ΔL×0.2)
本発明の製造方法は、このように収縮条件を変更するだけで、頂点間距離、アスペクト比等を任意に調整できるので各種光学フィルムの製造に好適である。またグリッド偏光子等で要求される凸部の稜線が一つの方向に略平行に配置された構造も本発明の製造方法によって容易に製造できる。
なお、主たる収縮方向は、収縮する度合い(収縮率)が最も大きい方向である。例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸して得られたフィルム基材は加熱によって収縮する。フィルムの延伸を一軸方向にだけ行った場合には、通常、該延伸方向が主たる収縮方向になる。また二軸方向に延伸を行った場合には、通常、延伸した二つの方向のうち延伸倍率の大きい方向が主たる収縮方向になる。
熱可塑性樹脂からなるフィルムを一軸延伸すると、延伸時に延伸方向に直交する方向にフィルムが収縮する。この延伸時の収縮を利用したフィルム基材では、延伸方向に直交する方向が主たる収縮方向である。なお、主たる収縮方向に直交する方向の収縮率ΔMの値がマイナスのときは、収縮処理においてフィルムが伸びたことを表す。主たる収縮方向にフィルムが収縮したときに、主たる収縮方向に直交する方向の伸びが大きくなりすぎると光学機能膜に亀裂が生じやすくなる。
主たる収縮方向に直交する方向の収縮率は、1%〜90%であることが好ましく、1%〜50%であることがより好ましい。
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(製造例1)フィルム基材の製造
脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製、ZEONOR1420、ガラス転移温度136℃)のペレットを、窒素を流通させた熱風乾燥機を用いて、100℃で4時間乾燥した。次いでこのペレットを、50mmφのスクリューを備えたTダイ式フィルム溶融押出成形機を使用して、溶融樹脂温度260℃で押出し成形することにより、幅650mm、厚さ188μmのフィルムを製造し、両端25mmずつをトリミングして幅600mmの脂環式オレフィン樹脂からなる原反フィルムを得た。
(フィルム基材1)
幅600mmの原反フィルムの両端をクリップに把持させて、テンター延伸機内に導入し、温度150℃でフィルム幅方向に1.2倍、フィルム流れ方向に1倍の延伸倍率になるように横一軸延伸し、延伸機から出た延伸フィルムをクリップから外し、両端を連続的にトリミングして幅700mmのフィルム基材1を得た。
(フィルム基材2)
幅600mmの原反フィルムの両端をクリップに把持させて、テンター延伸機内に導入し、温度150℃でフィルム幅方向に2倍、フィルム流れ方向に1倍の延伸倍率になるように横一軸延伸し、延伸機から出た延伸フィルムをクリップから外し、両端を連続的にトリミングして幅1000mmのフィルム基材2を得た。
(フィルム基材3)
幅600mmの原反フィルムを、縦一軸延伸装置を用い、温度145℃で縦方向に1.3倍に延伸した。この延伸フィルムの両端をクリップに把持させて、テンター延伸機内に導入し、温度150℃でフィルム幅方向に1.6倍、フィルム流れ方向に1倍の延伸倍率になるように横一軸延伸し、延伸機から出た延伸フィルムをクリップから外し、両端を連続的にトリミングしてフィルム基材3を得た。
(製造例2)紫外線硬化性樹脂溶液の製造
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(NKエステル AD−TMP、新中村化学社製) 90重量部、光重合開始剤(イルガキュア−907、チバガイギー社製) 10重量部、および酢酸ブチル 900重量部をホモジナイザーで混合し均一な溶液を得、これを1μmのフィルタで濾過して、紫外線硬化性樹脂溶液を調製した。
(製造例3)光学活性(旋光性)を有する末端フッ化アルキル基含有重合体
コンデンサ、温度計、攪拌機および滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、フッ素系溶媒AK−225(旭硝子社製、1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,3−ジクロロプロパン:1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1,3−ジクロロプロパン=1:1.35(モル比)の混合溶媒) 50重量部、および化1で表される光学活性を有する反応性カイラル剤 5.22重量部を仕込み、窒素気流中で45℃に温度を調整した。
次いで、濃度10重量%の過酸化ジペルフルオロ−2−メチル−3−オキサヘキノイルのAK225溶液 6.58重量部を窒素気流中で5分間かけてフラスコに滴下した。滴下終了後、さらに5時間、45℃で、窒素気流中で反応させた。反応生成物をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、ヘキサン中に濃縮液を滴下することにより、樹脂を沈殿させた。
次いで、沈殿した樹脂をろ過し、ろ紙に残った樹脂を乾燥させることにより光学活性(旋光性)を有する末端フッ化アルキル基含有重合体(化合物A) 3.5重量部(収率60%)を得た。化合物Aは、数平均分子量が4,000(重量平均分子量/数平均分子量=1.77)、フッ素含有量が5.89重量%であった。分子量はテトラヒドロフランを展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフで測定した。
Figure 0004985161
(製造例4)
負の固有複屈折値を有する材料としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(ダイラークD332,ノバケミカル社製)、透明樹脂材料として脂環式オレフィンポリマー(ZEONOR1020、日本ゼオン社製)を用意した。
二台の押出し機の出口側に、溶融物がダイ中で一体に組み合わされるような押出ダイを備えた多層押出機を用いて、スチレン−無水マレイン酸共重合体および脂環式オレフィンポリマーそれぞれを溶融させフィルターを通してダイに供給して、脂環式オレフィンポリマー層−スチレン−無水マレイン酸共重合体層−脂環式オレフィンポリマー層の構成を成した積層フィルムを得た。積層フィルムは、走査式厚さ計による測定で、平均厚さが300μm、厚さむらが平均厚さの2.5%であった。
該積層フィルムを縦一軸延伸装置を用いて、140℃で縦方向1.8倍に延伸した。次いで、テンター延伸(横一軸延伸)装置を用いて140℃で横方向1.5倍に延伸して、位相差素子Eを得た。位相差素子Eは平均厚さdが120μm、面内遅相軸方向の屈折率nxが1.5732、面内遅相軸に直交する方向の屈折率nyが1.5731、厚さ方向の屈折率が1.5757、面内レタデーションReが約10nm、厚さ方向レタデーションRthが約−300nmであった。なお、Reはd×(nx−ny);Rthはd×((nx+ny)/2−nz)で定義される値であり、自動複屈折測定装置KOBRA−21SDH(王子計測機器社製)を用いて測定することができる。
(製造例5)
正の固有複屈折値を有する材料として脂環式オレフィンポリマー(ZEONOR1020、日本ゼオン社製)および負の固有屈折値を有する材料としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(ダイラークD332,ノバケミカル社製)を用いて、前記位相差素子Eと同様の方法によって3層構造の積層フィルムを得た。該積層フィルムは、走査式厚さ計による測定で、平均厚さが120μm、厚さむらが平均厚さの2.2%であった。
該積層フィルムを縦一軸延伸装置を用いて125℃で縦方向に1.7倍延伸して、広帯域1/4波長板を得た。広帯域1/4波長板は、測定波長450nm、550nm、および650nmにおける面内レタデーションReと、測定波長との比が、それぞれ0.235、0.250、および0.232であった。
(実施例1)
フィルム基材1の表面をコロナ放電により改質した。製造例2で得た紫外線硬化性樹脂溶液をグラビアコーターを用いて、フィルム基材1の改質面に乾燥膜厚0.4μmになるように塗布し、80℃で5分間乾燥させた。超高圧水銀ランプで紫外線を積算光量400mJ/cm2で照射し紫外線硬化性樹脂を硬化させ、得られたフィルムをロール状に巻き取った。
前記フィルムから50mm×50mmのフィルム片を切り出し、該フィルム片の硬化樹脂膜側表面にアルゴンガス存在下で出力400Wでスパッタリングして厚さ400nmのSiO2膜を形成した。SiO2膜表面に感光性樹脂をスピンコーターで塗布し、アルゴンレーザー(波長351nm)を用いたレーザー干渉露光装置で、三方向から入射角度40度で露光した。感光性樹脂膜を溶剤で現像し、縦横に配列した微細な形状を有するマスク層を形成した。
NH4F 17%とHF 3.7%とを含有する薬液に前記マスク層が形成されたフィルムを浸漬して、SiO2からなるミクロ凹凸構造からなる反射防止層をフィルム基材1の上に形成した。
分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計V−570)を用いて、入射角度5度における反射率を測定した。550nmの光に対して0.9%の反射率であった。
温度140℃の温風を循環させた乾燥機に前記フィルムを入れ、フィルムを収縮させて、光学フィルム1を得た。
光学フィルム1は、フィルム基材と反射防止層との界面が褶曲しており、この褶曲に対応するように積層された反射防止層の表面に起伏が形成されている。反射防止層の厚さの変動係数は4%であった。反射防止層の表面に形成された起伏は、図1に示すような、稜線が一つの方向に略平行に配置されたものであり、頂点間の距離の平均値(Xp)が1.8μm、標準偏差(σp)が0.66μm、σp/Xpが0.367であった。収縮後の反射防止層は、収縮前のミクロ凹凸構造を保持していた。
光学フィルム1は、全光線透過率が90%、ヘイズが80%であった。このことから、光学フィルム1は高い光線透過率と拡散性を有するフィルムであることがわかる。
コリメート光を光学フィルム1に入射させ、その透過出射光の角度依存性を測定した。結果を図6に示した。光学フィルム1は周期性のある方向(図6中の実線)に回折及び散乱を示し、それと直交する方向(図6中の破線)には全く散乱しない異方散乱性を示すフィルムであった。
(実施例2)
8mm×8mm×60mmのステンレス鋼製シャンクに、ロウ付けされた0.2mm×1mm×1mmの直方体単結晶ダイヤモンドの、0.2mm×1mmの面全面に、集束イオンビーム加工装置SMI3050(セイコーインスツルメンツ社製)を用いてアルゴンイオンビームで集束イオンビーム加工を行い、長さ1mmの辺に平行な幅1μm、高さ500nmの断面矩形の突起をピッチ2μmで形成した切削工具を作製した。
直径200mmで長さが150mmのステンレス鋼(SUS430)製円筒の曲面全面に、厚さ100μmのニッケル−リン無電解めっきを施した。次いで前記切削工具を取り付けた精密円筒研削盤S30−1(スチューダ社製)を用いて、前記ニッケル−リン無電解めっき面全面に、円筒の円周端面と直交する方向に真直ぐ伸びる、幅1μm、深さ500nmの断面矩形の溝をピッチ2μmで形成して、転写ロールを得た。
なお。集束イオンビーム加工による切削工具の作製、ニッケル−リン無電解めっき面の切削加工は、温度20.0±0.2℃、振動制御システム(昭和サイエンス社製)により0.5Hz以上の振動変位が10μm以下に管理された恒温低振動室内で行った。
フィルム基材2の表面をコロナ放電により改質した。製造例2で得た紫外線硬化性樹脂溶液をグラビアコーターを用いて、フィルム基材2の改質面に乾燥膜厚3.8μmになるように塗布し、80℃で5分間乾燥させた。前記転写ロールとフィルム基材2の塗膜面を接触させ、超高圧水銀ランプで紫外線をフィルム基材側から積算光量400mJ/cm2で照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、得られたフィルムをロール状に巻き取った。
得られたフィルムを所定の大きさに切り出し、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所社製)に付属のマイクロサンプリング装置を使用してTEM用観察断面を作製し、透過電子顕微鏡H7500(日立製作所社製)にてフィルム断面を観察した。硬化樹脂層に、転写ロールのパターン形状が転写され、幅1μm、深さ500nmの断面矩形の溝がピッチ2μmで平行に形成されていた。
温度140℃の温風を循環させた乾燥機に前記フィルムを入れ、フィルムを収縮させて、光学フィルム2を得た。
光学フィルム2は、フィルム基材と硬化樹脂層との界面が褶曲しており、この褶曲に対応するように積層された硬化樹脂層の表面に起伏が形成されている。硬化樹脂層の厚さの変動係数は9%であった。硬化樹脂層の表面に形成された起伏は、図1に示すような、稜線が一つの方向に略平行に配置されたものであり、頂点間の距離の平均値(Xp)が32.0μm、標準偏差(σp)が1.35μm、σp/Xpが0.04で、起伏中の凸部のアスペクト比が0.27であった。硬化樹脂層の起伏面には、収縮前に転写した凹凸パターンが収縮後もそのままの形状(幅1μm、深さ500nm、ピッチ2μmで平行に形成された断面矩形の溝)で残っており、断面矩形の溝の方向と、起伏の稜線の方向とが直交していた。
光学フィルム2は、全光線透過率が80%、ヘイズが79%であった。拡散光を光源として用いて、光学フィルム2の出射光の角度依存性を測定した。拡散光の角度特性を図7に、光学フィルム2の出射光の角度特性を図8に示した。光学フィルム2は集光特性を示すフィルムであった。図7及び図8中の実線は周期性のある方向の角度特性を、破線は該方向に直交する方向の角度特性を示している。なお、拡散光は等方性の光であるので図7中の実線と破線とは重なっている。
(実施例3)
フィルム基材3を100mm×50mmの大きさに切り出し、フィルム表面をプラズマ放電処理した。ポリビニルアルコール 10重量部および水 371重量部からなる配向膜用塗布液をフィルム基材3の片面に塗布、乾燥し、厚さ1μmの配向膜を形成した。フィルム基材の長手方向に対して平行な方向に配向膜表面をラビング処理した。
配向膜の上に、液晶化合物(化2) 8.2重量部、光重合開始剤(化3) 0.3重量部、 製造例3で得られた化合物A 1.9重量部、およびメチルエチルケトン 24.0重量部からなる液晶塗布液をバーコーターを用いて塗布し、室温で10秒間乾燥し、100℃のオーブンで2分間加熱して配向を熟成させ、次いで紫外線を30秒間照射して、厚さ5.0μmのコレステリック液晶からなる円偏光分離層を備えたフィルムを作製した。
該円偏光分離層の断面をSEM観察したところ、層法線方向に螺旋軸を有し、厚さ方向にコレステリックピッチが連続的に変化した構造を有していた。
Figure 0004985161
Figure 0004985161
温度140℃の温風を循環させた乾燥機に前記フィルムを入れ、フィルムを収縮させて、光学フィルム3を得た。
光学フィルム3は、フィルム基材と円偏光分離層との界面が褶曲しており、この褶曲に対応するように積層された円偏光分離層の表面に起伏が形成されている。円偏光分離層の厚さの変動係数は4%であった。円偏光分離層の表面に形成された起伏は、図3に示すように、不規則で複雑なフラクタル様の形状をなしており、頂点間の距離の平均値(Xp)が5.4μm、標準偏差(σp)が4.48μm、σp/Xpが0.83であった。また、円偏光分離層は収縮前の螺旋構造が収縮後もそのままの螺旋構造で残っていた。
コリメート光を光学フィルム3に入射し、出射光の角度依存性を測定した。その結果を図9に示した。光学フィルム3は周期性のある方向(図9中の実線)に強い散乱を示し、それと直交する方向(図9中の破線)には弱い散乱を示す異方散乱性フィルムであった。
光学フィルム3に製造例4で得られた位相差素子および製造例5で得られた広帯域1/4波長板をこの順で積層し、輝度向上フィルムを得た。入射端面側に冷陰極管が配置され、かつ裏面側に光反射シートが設けられた導光板の出射面側に、順次光拡散シート、作製した輝度向上フィルムを円偏光分離層が光拡散シート側に向くように積層し偏光光源装置を作製した。前記偏光光源装置の1/4波長板側に、順次偏光板、透過型のTN液晶表示素子及び偏光板を配置し、液晶表示装置を作製した。この輝度向上フィルムを液晶表示装置に取り付けたところ、輝度向上フィルムを具備しない液晶表示装置に比べて輝度が125%向上し、良好な特性を示すことが確認された。

Claims (5)

  1. 光学機能層と基層とを含む積層体からなり、
    光学機能層と基層との界面が褶曲しており、該褶曲の波形の頂点が尾根状に連なり且つ該尾根の途中に分岐を有し、
    該光学機能層の表面に褶曲に対応する起伏を有する光学素子。
  2. 光学機能層が、光反射防止層、回折格子層、偏光分離層、および位相差層からなる群から選ばれる少なくとも一つの層である、請求項1に記載の光学素子。
  3. 光学機能層の表面の起伏は、頂点間の平均距離が50nm〜50μmである、請求項1に記載の光学素子。
  4. 光学機能層が、
    光学異方性材料を塗布し、配向し、その配向を固定させて得られる膜、
    面内等方性薄膜と面内異方性薄膜とを多数積層させた膜、
    蛍光性材料からなる膜、 又は
    表面ミクロ形状を利用したもの
    である、請求項1に記載の光学素子。
  5. フィルム基材の少なくとも一方の表面に、収縮率が該フィルム基材の収縮率の20%以下である光学機能膜を形成して積層フィルムを得る工程、および該積層フィルムを面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて光学機能膜を褶曲させる工程を含む光学素子の製造方法。
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