以下に、本発明に係る作業車両及び農作業支援システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る苗移植機の側面図である。図2は、図1に示す苗移植機の平面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、苗移植機2の作業座席28からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。本実施形態に係る作業車両の一例である苗移植機2の走行車体3は、左右一対の前輪4と、同様に左右一対の後輪5とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。これにより、走行車体3は、圃場や道路を走行することが可能になっている。また、走行車体3の後部には、苗植付部昇降機構40によって昇降可能な苗植付部50が備えられている。
この走行車体3は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の動力を駆動輪と苗植付部50とに伝える動力伝達装置15と、を備えている。つまり、本実施形態に係るこの苗移植機2では、動力源であるエンジン10で発生した動力は、走行車体3を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部50を駆動させるためにも使用され、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
また、エンジン10は、走行車体3の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置されている。また、フロアステップ26は、走行車体3の前部とエンジン10の後部との間に渡って設けられてメインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場に落とせるようになっている。また、このフロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられている。このリアステップ27は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン10の左右それぞれの側方に配置されている。
エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設されている。即ち、エンジンカバー11は、フロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出した状態で、エンジン10を覆っている。
また、走行車体3には、エンジンカバー11の上部に、作業者が搭乗する作業座席28が設置されており、作業座席28の前方で、且つ、走行車体3の前側中央部には、操縦部30が配設されている。この操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。また、作業座席28には、作業者の着席を検知することにより作業者の有無を検知する着席検知部材である感圧センサ130(図8参照)が設けられている。この感圧センサ130は、圧力センサによって構成されると共に、作業座席28の座面内に配設されており、作業者が着席した際における圧力を検知することにより、作業者の着席を検知することが可能になっている。
操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられている。また、操縦部30の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル32が配設されている。このハンドル32は、作業者が前輪4を操舵操作することにより走行車体3を操舵する操舵部材として設けられており、操縦部30内の操作装置等を介して前輪4を転舵させることが可能になっている。また、操作レバーとしては、走行車体3の前後進と走行出力を切替操作する変速操作部材である変速レバー35と、走行車体3の走行速度を、走行する場所に応じた速度に切り替える副走行操作部材である副変速レバー38とが、機体右側と左側に配設されている。
また、フロアステップ26における操縦部30の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗を載せておく予備苗載台65が配置されている。この予備苗載台65は、フロアステップ26の床面から突出した支持軸(鉛直軸)によって回動自在に支持されており、作業者の手、または電動モータ等の回動部材によって回動させることが可能になっている。
また、動力伝達装置15は、エンジン10から伝達される駆動力を無段変速する変速装置である油圧式無段変速機16と、この油圧式無段変速機16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17と、を有している。このうち、油圧式無段変速機16とは、HST(Hydro Static Transmission)と云われる静油圧式の変速装置として構成されている。このため、油圧式無段変速機16は、エンジン10からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。これにより、油圧式無段変速機16は、エンジン10で発生する動力を、走行車体3を走行させる力に変換する。
その際に、油圧式無段変速機16は、回転力の方向や回転速度を変更して出力することにより、走行車体3の前後進及び走行速度を変更することができる。変速レバー35は、この油圧式無段変速機16の出力及び出力方向を変更することによって、走行車体3の前後進及び走行速度を操作することが可能になっており、即ち、変速レバー35は、油圧式無段変速機16の変速操作をすることが可能になっている。
図3は、図1に示す変速レバーの周囲の側面図である。詳しくは、変速レバー35の近傍には、変速レバー35の操作量を検知する操作量検知部材である変速ポテンショメータ36が配設されており、変速ポテンショメータ36は、検知した変速レバー35の操作量を、コントローラ200(図8参照)に伝達可能になっている。油圧式無段変速機16は、変速ポテンショメータ36で検知した変速レバー35の操作量に基づいてコントローラ200によって制御することにより、出力の大きさや出力方向を変更することが可能になっている。
この油圧式無段変速機16は、エンジン10よりも前方で、且つ、フロアステップ26の床面よりも下方に配置されており、本実施形態に係る苗移植機2では、走行車体3の上面から見て、エンジン10の前方に配置されている。
図4は、図1に示す油圧式無断変速機とベルト式動力伝達機構との説明図である。ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸10aに取り付けた第1プーリ17aと、油圧式無段変速機16の入力軸16aに取り付けた第2プーリ17bと、第1プーリ17aと第2プーリ17bとに巻き掛けたベルト17cと、さらに、このベルト17cの張力を調整するテンションプーリ17dと、を備えている。これにより、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10で発生した動力を、ベルト17cを介して油圧式無段変速機16に伝達可能になっている。
油圧式無段変速機16は、油圧式無段変速機16の出力を切り替える出力切替アクチュエータであるHST制御モータ90によって変速することにより、出力及び出力方向を変更することが可能になっている。詳しくは、油圧式無段変速機16は、油圧式無段変速機16の操作軸であるトラニオンギア軸92に、トラニオンギア軸92への入力部材であるトラニオンギア91が取り付けられている。このトラニオンギア91は、トラニオンギア軸92を中心として回動可能に設けられており、トラニオンギア軸92を中心として円周上にギアが形成された円板における、トラニオンギア軸92を中心とする一部の角度範囲の形状で形成されている。
トラニオンギア91には、HST制御モータ90の出力ギアであるピニオンギア93が噛み合っている。これにより、HST制御モータ90で発生した動力は、ピニオンギア93とトラニオンギア91とを介して、トラニオンギア軸92に伝達することができ、油圧式無段変速機16は、HST制御モータ90によって変速して出力することが可能になっている。このように、油圧式無段変速機16の出力を切り替え可能なHST制御モータ90は、コントローラ200(図8参照)に接続されており、コントローラ200は、変速ポテンショメータ36で検知した変速レバー35の操作量に基づいて、HST制御モータ90の制御を行う。このため、換言すると、HST制御モータ90は、変速ポテンショメータ36の検知に合わせて作動することにより、油圧式無段変速機16の出力を切り替える。
さらに、動力伝達装置15は、ベルト式動力伝達機構17を介して油圧式無段変速機16に伝達され、油圧式無段変速機16で変速したエンジン10からの駆動力を各部に伝達する伝動装置であるミッションケース18を有している。このミッションケース18は、路上走行時や植付時等における走行車体3の作業速度を切り替える副変速機構(図示省略)を内設しており、メインフレーム7の前部に取り付けられている。副変速機構は、走行車体3の走行伝動を少なくとも圃場で作業を行う際の変速段である「作業速」と、路上走行をする際の変速段である「路上速」とに切り替えることが可能になっている。なお、副変速機構は、「作業速」と「路上速」以外に切り替えることができるように構成されていてもよく、また、「作業速」や「路上速」において、複数段に切り替えることができるように構成されていてもよい。
副変速レバー38は、ミッションケース18内の副変速機構を操作することにより、走行車体3の走行速度を切り替えることが可能になっており、即ち、「作業速」と「路上速」とを切り替えることが可能になっている。ミッションケース18は、ベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されたエンジン10からの出力を、当該ミッションケース18内の副変速機構で変速して、前輪4と後輪5への走行用動力と、苗植付部50への駆動用動力とに分けて出力可能になっている。
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース21を介して前輪4に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケース22を介して後輪5に伝達可能になっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース21は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設されており、左右の前輪4は、車軸を介して左右の前輪ファイナルケース21に連結されている。また、この前輪ファイナルケース21は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース22には、車軸を介して後輪5が連結されている。一方、駆動用動力は、走行車体3の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部50へ伝達される。
また、走行車体3の後部に備えられる苗植付部50を昇降させる苗植付部昇降機構40は、昇降リンク装置41を有しており、苗植付部50は、この昇降リンク装置41を介して走行車体3に取り付けられている。この昇降リンク装置41は、走行車体3の後部と苗植付部50とを連結させる平行リンク機構42を備えている。この平行リンク機構42は、上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム43に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部50に回動自在に連結されることにより、苗植付部50を昇降可能に走行車体3に連結している。
また、苗植付部昇降機構40は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ44を有しており、油圧昇降シリンダ44の伸縮動作によって、苗植付部50を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構40は、その昇降動作によって、苗植付部50を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
また、苗植付部昇降機構40は、昇降リンク装置41による苗植付部50の昇降状態を検知するリンクセンサ45を有している。このリンクセンサ45は、平行リンク機構42における上リンクとリンクベースフレーム43との連結部分付近に配設されており、リンクベースフレーム43に対する上リンクの相対角度を検知することにより、苗植付部50の昇降状態を検知することが可能になっている。このように、苗植付部50の昇降状態の検知が可能なリンクセンサ45は、苗移植機2での作業時における作業場所の深さを検知する深度検知部材として設けられている。
また、苗植付部50は、圃場で作業を行う作業装置として設けられており、作業資材である苗を植え付ける範囲を、複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができる。本実施形態に係る苗移植機2では、苗植付部50は、苗を6つの区画で植え付ける、いわゆる6条植の苗植付部50になっている。この苗植付部50は、苗植付装置60と、苗載置台51及びフロート47を備えている。このうち、苗載置台51は、複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体3の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面52を有し、それぞれの苗載せ面52に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。また、苗載せ面52には、苗載せ面52に載置される苗を苗植付装置60側に送る苗送りベルト53が配設されている。この苗送りベルト53は、1条につき左右一対で設けられている。
また、苗植付部50には、作業資材である苗が減少したことを検知する資材減少検知部材である苗減少センサ55が設けられている。この苗減少センサ55は、苗載せ面52から突出して苗送りベルト53の左右間に配置されるスイッチになっている。苗載せ面52に苗が載置されているときは、苗減少センサ55は苗によって押され、苗植付部50に積載した苗が所定量未満になると、苗減少センサ55は苗によって押されなくなるので、補充が必要な段階まで苗が減少したことを検知することが可能になっている。操縦部30には、苗が減少したことを報知する報知手段であるランプ(図示省略)が配設されており、補充が必要な段階まで苗が減少したことを苗減少センサ55で検知した際には、このランプが点灯することにより、作業者に報知することが可能になっている。
また、苗植付装置60は、苗載置台51に載置された苗を苗載置台51から取って圃場に植え付ける装置になっている。この苗植付装置60は、2条毎に1つずつ配設されており、回転可能なロータリケース63に、2条分の植込杆61を回転可能に備えている。即ち、複数の苗植付装置60は、それぞれ植付条が割り当てられている。このうち、ロータリケース63は、苗植付装置60に駆動力を供給する植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されており、植付伝動ケース64は、エンジン10から苗植付部50に伝達された動力を、苗植付装置60に供給する。つまり、植付伝動ケース64には、2つのロータリケース63が、機体左右方向の両側に連結されており、苗植付部50は、この植付伝動ケース64を3つ備えている。
また、フロート47は、走行車体3の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体3の左右方向における苗植付部50の中央に位置するセンターフロート48と、左右方向における苗植付部50の両側に位置するサイドフロート49と、を有している。
また、苗植付部50の下方側の位置における前側には、圃場の整地を行う整地用ロータ67が設けられている。この整地用ロータ67は、後輪ギヤケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって回転可能に構成されている。
また、苗植付部50の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ68が備えられている。即ち、線引きマーカ68は、苗移植機2が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ68は、マーカモータ69(図8参照)によって作動し、走行車体3が旋回するごとに、左右の線引きマーカ68が入れ替わって作動することができるように構成されている。この左右の線引きマーカ68の入れ替えは、マーカモータ69が接続されるコントローラ200(図8参照)によって行う。即ち、コントローラ200は、走行車体3の旋回時に、左右の線引きマーカ68を交互に作動状態と非作動状態とに切り替えるマーカ切替装置としても設けられている。なお、左右の線引きマーカ68の線引き作用部は、図1及び図2に示す通り、円盤の外周部に複数の突起体を設け、回転自在にロッド部に装着したものとすると、圃場面との接地抵抗により確実に圃場面に線を形成することができ、次の植え付け作業位置での直進作業が行い易くなり、作業能率が向上する。
また、走行車体3における作業座席28の後方には、圃場で作業を行う作業装置である施肥装置70が搭載されている。この施肥装置70は、施肥装置70での作業に用いる作業資材である肥料を貯留する貯留ホッパ71と、貯留ホッパ71から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置72と、繰出し装置72により繰り出される肥料を圃場に供給する施肥通路である施肥ホース74と、施肥ホース74に搬送風を供給することにより、施肥ホース74内の肥料を苗植付部50側に移送する起風装置であるブロア73と、を有している。さらに、施肥装置70は、苗植付部50の下方に配設されると共に、施肥ホース74によって肥料が移送される施肥ガイド75と、施肥ガイド75の前側に設けられると共に、施肥ホース74によって移送された肥料を、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器76と、を有している。
また、施肥装置70には、作業資材である肥料が減少したことを検知する資材減少検知部材である肥料減少センサ77が設けられている。肥料減少センサ77は、水分を含む肥料等に覆われると通電し易くなる通電体からなり、貯留ホッパ71内における下端寄りの位置に配設されている。このように設けられる肥料減少センサ77は、肥料に覆われていると通電し、貯留ホッパ71内の肥料が減少して空気に晒されると通電が弱まるので、補充が必要な段階まで肥料が減少したことを検知することが可能になっている。操縦部30には、肥料が減少したことを報知する報知手段であるランプ(図示省略)が配設されており、補充が必要な段階まで肥料が減少したことを肥料減少センサ77で検知した際には、このランプが点灯することにより、作業者に報知することが可能になっている。
図5は、オートアクセル機構の説明図である。また、実施形態に係る苗移植機2は、油圧式無段変速機16の出力に連動してエンジン回転数を変更する駆動連動機構であるオートアクセル機構100を備えている。エンジン10の回転数は、通常は、作業者が作業座席28に座った状態における作業者の足元付近に配設されるアクセルペダル104を回動操作することによって、変更することが可能になっている。このアクセルペダル104は、エンジン10に設けられてエンジン10の回転数を調節するスロットル切替機構108に対して、アクセルペダル連携ケーブル105、連携回動部材106、連動ロッド107を介して接続されている。
このうち、アクセルペダル連携ケーブル105は、アクセルペダル104と連携回動部材106とを接続するケーブルになっており、アクセルペダル104の回動を連携回動部材106に伝達することが可能になっている。アクセルペダル連携ケーブル105は、連携回動部材106の上端付近に接続されている。連携回動部材106は、エンジン10の前方側に配置されて回動自在に設けられており、連携回動部材106には、連動ロッド107が接続されている。この連動ロッド107は、連携回動部材106の下端側に接続されると共に連携回動部材106から後方に向かって延びており、後端側がスロットル切替機構108に連結されている。
これらのように構成されることにより、アクセルペダル104を操作した際には、操作時の動きがアクセルペダル連携ケーブル105によって連携回動部材106に伝達されて連携回動部材106が回動し、連携回動部材106の回動によって、連動ロッド107が前後方向に移動する。連動ロッド107の前後方向の動きは、スロットル切替機構108に伝達されることにより、スロットル切替機構108は操作され、エンジン10の回転数が変更される。
オートアクセル機構100は、変速レバー35の操作量を検知する変速ポテンショメータ36のアームであるポテンショメータアーム101に、オートアクセル機構100が有するケーブルであるオートアクセルケーブル102の一端を接続し、オートアクセルケーブル102の他端を連携回動部材106に接続することにより構成されている。
ポテンショメータアーム101は、変速レバー35を操作することにより、変速レバー35と共に回動するため、変速レバー35の操作時の動きは、ポテンショメータアーム101とオートアクセルケーブル102とにより、連携回動部材106に伝達可能になっている。連携回動部材106が回動した際には、エンジン10の回転数が変更されるため、変速レバー35を操作した場合には、エンジン10の回転数を変更することができる。
一方、変速レバー35は、油圧式無段変速機16の変速操作を行うことができるように設けられている。このため、オートアクセル機構100は、変速レバー35を操作することにより、油圧式無段変速機16の出力の変更に連動してエンジン10の回転数を変更することができる。これにより、オートアクセル機構100は、変速レバー35の操作量に合わせて所定量エンジン回転数を増減させることができ、油圧式無段変速機16の出力変動に合わせた適正なエンジン回転数を設定することができる。
図6は、図1に示すミッションケースの断面図である。ミッションケース18は、内部に変速機構81を備えており、変速機構81には、油圧式無段変速機16から出力された駆動力のミッションケース18への伝動軸であるミッションケース入力軸80が接続されている。これにより、ミッションケース18には、油圧式無段変速機16で変速したエンジン10からの駆動力が伝達可能になっている。
また、ミッションケース18には、ミッションケース18に伝達された駆動力を苗植付装置60側に伝動するか否かを切り替えることにより、ミッションケース18から苗植付装置60への伝動を切り替える植付クラッチ機構82が備えられている。この植付クラッチ機構82は、ミッションケース18に内設される変速機構81と、ミッションケース18から苗植付装置60側への出力軸であるミッションケース出力軸83との間での動力の伝達と遮断との切り替えが可能になっている。
このミッションケース出力軸83には、ミッションケース出力軸83によって出力される駆動力が伝達されることにより、エンジン10で発生した駆動力を苗植付装置60に伝動する植付駆動機構であるPTO(Power take−off)軸87が接続されている。このPTO軸87と植付クラッチ機構82とは、ミッションケース18に伝達された駆動力を苗植付装置60に供給する駆動伝動装置85として構成されている。このように、PTO軸87と共に駆動伝動装置85を構成する植付クラッチ機構82の近傍には、植付クラッチ機構82の入切を検知することにより、駆動伝動装置85の作動状態を検知する駆動検知部材である植付クラッチセンサ89が備えられている。
PTO軸87は、ミッションケース出力軸83に対してメカロック防止クラッチ84を介して接続されている。このメカロック防止クラッチ84は、ミッションケース出力軸83からPTO軸87への通常の駆動力の伝達時における回転方向では、係合することにより回転駆動力を伝達でき、反対方向の回転時にはスリップすることよりミッションケース出力軸83とPTO軸87とが相対回転するようになっている。即ち、メカロック防止クラッチ84は、ワンウェイクラッチとして設けられている。
また、本実施形態に係る苗移植機2は、GPS(Global Positioning System)によって苗移植機2の位置情報を取得するGPS制御装置120(図8参照)を備えており、走行車体3には、GPS制御装置120を構成する受信アンテナ121が配設されている。この受信アンテナ121は、所定の時間的な間隔でGPS座標を取得することにより、地球上における作業位置情報を所定間隔で取得する位置情報取得装置として設けられている。この受信アンテナ121は、予備苗載台65を支持する支柱である予備苗載台支柱66(図7参照)に連結されるアンテナフレーム124に取り付けられている。
図7は、図1のA−A矢視図である。アンテナフレーム124は、下側が開放された向きの門型の形状で形成されており、門型の2箇所の下端部が、左右の予備苗載台支柱66に連結されている。つまり、アンテナフレーム124は、機体左右方向に延びるフレーム水平部125と、フレーム水平部125の両端から下方に延びる2箇所のフレーム垂直部126と、を有しており、フレーム垂直部126の下端が、予備苗載台支柱66に連結されている。フレーム垂直部126と予備苗載台支柱66とは、軸方向が機体前後方向に延びる回動部128によって連結されており、これにより、フレーム垂直部126は、回動部128を中心として機体左右方向に回動自在に、予備苗載台支柱66に連結されている。
また、左右のフレーム垂直部126のうち、一方のフレーム垂直部126には、フレーム垂直部126が延びる方向に伸縮自在な伸縮シリンダ127が設けられている。この伸縮シリンダ127は、油圧によって全長が伸縮可能になっており、これにより、伸縮シリンダ127が設けられる側のフレーム垂直部126は、全長が伸縮することが可能になっている。また、受信アンテナ121は、フレーム水平部125に取り付けられており、詳しくは、フレーム水平部125の長さ方向における中央付近の位置で、フレーム水平部125の上面に取り付けられている。
このように構成される苗移植機2は、走行車体3や苗植付部50、施肥装置70の作業情報を記憶したり表示したりする情報端末であるタブレット端末装置140を備えており、タブレット端末装置140との間で無線通信をすることが可能になっている。このタブレット端末装置140は、タッチパネル141を有しており、各種の情報をタッチパネル141によって表示すると共に、作業者がタッチパネル141に対して入力操作を行うことにより、情報の入力や動作指示を行うことが可能になっている。また、タブレット端末装置140は、作業中の苗移植機2の位置情報を含む苗移植機2の作業情報を、データベース化して記憶し、作業情報及び地図データを表示可能に構成されている。即ち、タブレット端末装置140は、苗移植機2の作業情報や地図データを、タッチパネル141によって表示することが可能になっている。
図8は、実施形態に係る苗移植機の機能ブロック図である。本実施形態に係る苗移植機2は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、このため、苗移植機2には、各部を制御するコントローラ200が備えられている。このコントローラ200は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらに入出力部が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。記憶部には、苗移植機2を制御するコンピュータプログラムが格納されている。このコントローラ200は、モータ等のアクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続されている。
例えば、コントローラ200には、アクチュエータ類として、苗植付部50を昇降させる油圧昇降シリンダ44や、線引きマーカ68を作動させるマーカモータ69、油圧式無段変速機16を変速させるHST制御モータ90等が接続されている。
また、コントローラ200に接続されるセンサ類としては、後輪回転センサ23、変速ポテンショメータ36、リンクセンサ45、苗減少センサ55、肥料減少センサ77、植付クラッチセンサ89、感圧センサ130等が接続されている。このうち、後輪回転センサ23は、駆動輪である後輪5の回転速度を検知することにより、走行車体3の走行状態を検知する走行検知部材として設けられている。
また、コントローラ200には、GPS制御装置120も接続されており、受信アンテナ121で受信した位置情報は、コントローラ200で取得することが可能になっている。また、この受信アンテナ121の向きは、コントローラ200によって伸縮シリンダ127を制御して伸縮シリンダ127を伸縮させることにより、向きを調整することができる。
また、苗移植機2は、ハンドル32を操作して、走行車体3を直進方向に維持することが可能な自動操舵装置110を備えており、自動操舵装置110も、コントローラ200に接続されている。この自動操舵装置110は、任意の回転力をハンドル32に付与することにより、ハンドル32を回転させる操舵モータ111と、ハンドル32の回転角度を検知するハンドルポテンショメータ112と、を有している。これらの操舵モータ111やハンドルポテンショメータ112は、ハンドル32の回転軸に対して回転力を付与したり、ハンドル32の回転軸の回転角度を検知したりすることにより、ハンドル32を操作したり、回転角度を検知したりすることが可能になっている。
また、苗移植機2は、作業時間を計測する作業タイマー135を備えており、コントローラ200からの指示に応じて時間を計測し、計測した時間をコントローラ200で取得することが可能になっている。
また、苗移植機2は、タブレット端末装置140との間で無線通信を行う苗移植機通信部201を有している。苗移植機通信部201は、電波を用いた無線通信により、タブレット端末装置140との間で信号の送受信を行うことが可能になっており、これによりコントローラ200は、苗移植機通信部201を介して、タブレット端末装置140との間で信号の送受信を行うことが可能になっている。
また、タブレット端末装置140は、タッチパネル141と、端末通信部144と、記憶部143と、制御部142と、スピーカ145と、を有している。このうち、タッチパネル141は、タブレット端末装置140における情報の表示部と、タブレット端末装置140の入力部とを兼ねている。このため、タッチパネル141は、苗移植機2の作業情報や地図データ等の各種の情報を表示すると共に、作業者が指等でタッチパネル141に触れることにより、入力操作を行うことが可能になっている。
また、端末通信部144は、タブレット端末装置140側の通信部として設けられている。この端末通信部144は、電波を用いた無線通信により、苗移植機2との間で信号の送受信を行うことにより情報の送受信が可能になっており、即ち、苗移植機2が有する苗移植機通信部201との間で、信号の送受信を行うことが可能になっている。詳しくは、端末通信部144は、近距離無線接続により苗移植機2との間で情報の送受信を行うことが可能になっており、近距離無線接続としては、例えば、Bluetooth(登録商標)が用いられる。これにより、苗移植機通信部201も、Bluetoothに対応しており、これにより、端末通信部144と苗移植機通信部201とは、無線通信が可能になっている。
また、記憶部143は、各種の情報を記憶しており、タブレット端末装置140を作動させるプログラムや、端末通信部144を介して取得した、作業中の苗移植機2の位置情報を含む苗移植機2の作業情報等の各種の情報を記憶することが可能になっている。
また、制御部142は、各種の演算処理を行うことが可能になっており、タッチパネル141、端末通信部144、記憶部143は、全て制御部142に接続され、制御部142との間で互いに信号の受け渡しを行うことが可能になっている。制御部142は、例えば、端末通信部144によって受信した情報に基づいて記憶部143に苗移植機2の作業情報を記憶させたり、タッチパネル141に対して、作業情報や地図データを表示させたりすることが可能になっている。
また、スピーカ145は、任意の音声を出すことが可能になっており、作業者に対して音声によって任意の報知を行う報知装置としても設けられている。
本実施形態に係る苗移植機2は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。苗移植機2の運転時は、エンジン10で発生する動力によって、走行車体3の走行と、苗載置台51に載せた苗の植え付け作業を行う。この植え付け作業は、回転軸が左右方向になる向きで苗植付装置60全体が回転しながら、植込杆61も回転することにより、苗載置台51に載せられた苗を順次植込杆61で取り、取った苗を徐々に圃場に植え付ける。その際に、苗載置台51を、苗載置台51に載置する1条分の機体左右方向の幅の範囲内で機体左右方向に往復移動させることにより、各苗植付装置60は、苗載置台51においてそれぞれの苗植付装置60に対応する部分から苗を取り出し、圃場に植え付ける。即ち、各苗植付装置60は、苗載置台51の所定の条に対応する部分から苗を取り出して、所定の条に苗を植え付ける。苗載置台51が、当該苗載置台51の左右方向の移動方向における端部まで移動したら、苗載置台51に載置されている苗を苗送りベルト53によって一列分、苗植付装置60側に送る。植え付け作業時は、これらのように苗載置台51や苗植付装置60を作動させながら圃場内を走行車体3で走行することにより、複数の列状に苗を植え付ける。
走行車体3の走行時には、エンジン10で発生した動力はベルト式動力伝達機構17に伝達され、ベルト式動力伝達機構17から油圧式無段変速機16に伝達されて、油圧式無段変速機16で所望の回転速度や回転方向、トルクに変換されて出力される。油圧式無段変速機16から出力された動力は、ミッションケース18に伝達され、路上走行時の走行速度に適した回転速度、または苗の植え付け時の走行速度に適した回転速度にミッションケース18内で変速されて、前輪4側や後輪5側に出力される。
また、ミッションケース18から出力される動力の一部は、苗植付部50側にも伝達され、苗植付部50での植え付け作業にも用いられる。具体的には、ミッションケース入力軸80によってミッションケース18内の変速機構81に伝達された駆動力は、変速機構81で変速され、植付クラッチ機構82の係合時に、ミッションケース出力軸83から出力される。ミッションケース出力軸83から出力された駆動力は、PTO軸87に伝達され、PTO軸87によって苗植付部50に伝達される。苗植付部50では、このように伝達された駆動力によって作動することにより、圃場に苗を植え付ける。
これらのように、苗移植機2の運転を行う際には、変速レバー35や副変速レバー38、アクセルペダル104を操作することにより、走行車体3の速度を調節しながら、走行したり作業を行ったりする。例えば、アクセルペダル104を操作した際には、アクセルペダル104の動作がアクセルペダル連携ケーブル105等を介してスロットル切替機構108に伝達されることにより、エンジン10の回転数やエンジン10で発生する動力が調節される。また、副変速レバー38は、「作業速」や「路上速」に切り替え操作を行うことが可能になっており、ミッションケース18内の副変速機構の変速段は、副変速レバー38の操作位置によって切り替えられる。
また、変速レバー35の操作量は、変速ポテンショメータ36によって検知可能になっているため、変速レバー35を操作した際には、操作量を変速ポテンショメータ36で検知し、コントローラ200に伝達する。コントローラ200は、変速ポテンショメータ36で検知した操作量に基づいてHST制御モータ90を制御し、これにより、油圧式無段変速機16の変速操作が行われる。その際に、変速レバー35への入力操作は、オートアクセル機構100によってスロット切替機構108に伝達され、エンジン10の回転数やエンジン10で発生する動力は、この変速レバー35の操作によっても変更される。
また、本実施形態に係る苗移植機2は、圃場で植え付け作業を行う際に、GPS制御装置120で苗移植機2の位置情報を取得しつつ、自動操舵装置110で操舵を行うことにより、直進しながら植え付け作業を行うことが可能になっている。詳しくは、苗移植機2は、GPSで使用される人工衛星からの信号をGPS制御装置120の受信アンテナ121で受信することにより、地球上における苗移植機2の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。
タブレット端末装置140には、圃場内で効率良く植え付け作業を行うための走路である直進走路の情報が記憶されており、コントローラ200は、タブレット端末装置140に記憶されている直進走路の情報と、受信アンテナ121で取得した位置情報とを比較し、自動操舵装置110を制御する。
自動操舵装置110の制御は、受信アンテナ121で取得した位置情報が、タブレット端末装置140に記憶されている直進走路の情報に沿うように、ハンドルポテンショメータ112で操舵角を検知し、走行車体3の進行方向の変化を検知しながら、操舵モータ111を作動させて操舵を行う。これにより、走行車体3を、タブレット端末装置140に記憶されている直進走路に沿うようにアシストしながら走行させる。
これらのように苗移植機2を走行させたり作業を行ったりする際には、タブレット端末装置140によって作業情報をタブレット端末装置140で記憶する。このタブレット端末装置140では、作業する圃場の地図データを記憶すると共に、タッチパネル141で表示することが可能になっており、また、以前の作業情報、または手入力データに基づいて、場所ごとの情報を地図上に区別して表示することが可能になっている。これにより、タブレット端末装置140では、記憶した作業情報に基づいて、これから行う作業についての作業計画を行うことが可能になっている。作業計画では、作業を行う圃場や日にち、作業の内容を決めたり、使用する苗や肥料等の作業資材の量を決めたりする。
詳しくは、タブレット端末装置140は、作業情報については、苗移植機2に載置された状態で苗移植機2と通信を行うことにより、作業を行う苗移植機2の作業情報を記憶することが可能になっている。この作業情報は、例えば、作業日や走行距離、作業時間、燃料消費量、苗植付部50での植え付け作業や、施肥装置70での施肥作業に関する情報等が記憶される。これらの作業情報は、変速レバー35の操作量を検知する変速ポテンショメータ36や、植付クラッチ機構82の状態を検知する植付クラッチセンサ89等の各センサ類で検知した結果をコントローラ200で取得し、さらに、この検出結果を苗移植機通信部201によって端末通信部144に送信することにより、タブレット端末装置140で取得する。このように苗移植機2の作業情報を取得したタブレット端末装置140は、作業情報を、記憶部143で記憶する。
このように、作業情報をタブレット端末装置140で記憶する際には、作業を行った際における位置情報も記憶する。この位置情報は、GPS制御装置120によって取得する。詳しくは、GPS制御装置120は、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信アンテナ121で受信することにより、地球上における苗移植機2の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。その際に、GPS制御装置120は、コントローラ200からの制御信号によって伸縮シリンダ127を適宜伸縮させることにより、受信アンテナ121の向きを、人工衛星からの信号を受信し易い向きにする。コントローラ200は、作業情報をタブレット端末装置140に送信する際には、このように受信アンテナ121によって取得した位置情報を作業情報と関連付けて送信する。これにより、タブレット端末装置140は、作業情報を記憶部143で記憶する際には、作業位置毎の作業情報を記憶する。
タブレット端末装置140によって作業情報を記憶する際には、例えば、副変速レバー38が「作業速」になっており、植付クラッチ機構82がONの状態であることを植付クラッチセンサ89で検知している場合には、苗移植機2は圃場で植え付け作業中であるとの作業情報を記憶する。一方、副変速レバー38が「路上速」になっており、植付クラッチ機構82がOFFの状態であることを植付クラッチセンサ89で検知している場合には、苗移植機2は路上を走行中であるとの作業情報を記憶する。
また、これらのように作業情報を記憶する際には、タブレット端末装置140は、作業位置毎の油圧式無段変速機16の出力とエンジン回転数も記憶する。このうち、油圧式無段変速機16の出力については、変速ポテンショメータ36から算出する。つまり、油圧式無段変速機16は、変速レバー35の操作量を変速ポテンショメータ36で検知し、検知した操作量に基づいてHST制御モータ90を作動させることにより、油圧式無段変速機16の変速比を変更し、出力を切り替えることが可能になっている。このため、油圧式無段変速機16の出力は、変速ポテンショメータ36で検知した変速レバー35の操作量に基づいて、検知した操作量の場合における出力をコントローラ200で算出する。
また、エンジン回転数については、オートアクセル機構100による油圧式無段変速機16の出力に対応する回転数を記憶する。つまり、変速レバー35を操作した際には、油圧式無段変速機16の出力のみでなく、オートアクセル機構100によってエンジン10の回転数も変更されるが、エンジン10の回転数は、変速レバー35の操作量に応じて変更される。一方、油圧式無段変速機16の出力も、変速ポテンショメータ36で検知した変速レバー35の操作量に基づいて変更する。このため、エンジン10の回転数と油圧式無段変速機16の出力とは、共に変速レバー35の操作量に対応しているため、換言すると、エンジン10の回転数と油圧式無段変速機16の出力も、互いに対応することになる。従って、タブレット端末装置140は、オートアクセル機構100による油圧式無段変速機16の出力に対応する回転数を記憶する。
具体的には、油圧式無段変速機16の出力は、変速ポテンショメータ36で検知した変速レバー35の操作量に基づいて算出するため、エンジン回転数も、変速ポテンショメータ36で検知した変速レバー35の操作量に基づいてコントローラ200で算出する。算出したエンジン回転数は、タブレット端末装置140に伝達し、作業情報として記憶部143で記憶する。
また、苗移植機2での作業時には、後輪回転センサ23で検知した結果に基づいて、走行速度を算出し、この走行速度も作業情報として記憶する。このように、後輪回転センサ23で検知した結果に基づいて作業情報を記憶する場合において、後輪回転センサ23の検知量が大幅に変動した際には、検知量の大幅な変動に基づいて推察される圃場の状態も合わせて記憶する。
具体的には、後輪回転センサ23の検知量が大幅に減少したら、検知量が減少方向に急激に変動した時における苗移植機2の作業位置情報と、そのまま走行を続けて後輪回転センサ23の検知量が所定値以上に復帰した位置の作業位置情報とから、走行車体3の実移動距離を算出する。
さらに、後輪回転センサ23の検知量が変動する直前の後輪回転センサ23の検知量から、検知量が変動しなかった場合における走行車体3の走行速度を算出する。検知量が変動しなかった場合における走行速度を算出したら、算出した走行車体3の走行速度に基づき、この走行速度で、実移動距離の走行に費やした時間と同じ時間走行した場合における走行車体3の移動距離である理論移動距離を算出する。これらのように、実移動距離と理論移動距離とを算出したら、双方を比較し、実移動距離と理論移動距離との差が、予め定められて閾値以上であるか否かを判定する。実移動距離と理論移動距離とを比較し、実移動距離と理論移動距離との差が一定以上である場合には、後輪回転センサ23の検知量変動時から検知量復帰時までの区間を、エンジン回転数が大幅に低下し得る圃場状態であると判定する。
例えば、圃場において他の部分より深かったり、抵抗が生じ易い土質であったりする場合には、動力源であるエンジン10に対する負荷が大きくなり、走行速度が低下し易くなるため、実移動距離と理論移動距離との差が一定以上である場合には、実移動距離の区間を、エンジン回転数が大幅に低下し得る圃場状態であると判定する。コントローラ200は、このように判定した圃場状態も位置情報と共に作業情報としてタブレット端末装置140に送信し、タブレット端末装置140は、圃場状態を含む作業情報を記憶部143に記憶する。
タブレット端末装置140では、このように圃場情報を記憶した圃場の地図データをタッチパネル141で表示する際には、当該圃場において、エンジン回転数が大幅に低下し得る圃場状態であると判定された作業位置の色を他の部分と異ならせる。これにより、作業者が当該圃場で作業を行う場合や、当該圃場で作業を行う際における作業計画をする際に、エンジン回転数が大幅に低下し得る部分が存在することを作業者が認識できるようにする。
圃場に、このようにエンジン回転数が大幅に低下し得る圃場状態の位置が存在する場合には、その情報を燃費の計算に用いてもよい。つまり、作業情報に燃費に関する情報を含める際には、エンジン回転数の変動状態を用いて燃費を算出してもよい。具体的には、スロットル切替機構108が一定であるにも関わらず、エンジン回転数が低くなる作業位置では、エンジン10の負荷が大きいことを示しているため、このような位置では燃費が悪くなる。一方、エンジン回転数が低くならない作業位置では、エンジン10の負荷が小さいことを示しているため、燃費は良くなる。このため、後輪回転センサ23の検知量に基づいて燃費の計算をする際には、エンジン回転数が大幅に低くなったと判断される作業位置では、燃費率に1以上の係数をかけ、エンジン回転数が低くならない作業位置では、燃費率に1未満の係数をかける。これにより、作業情報に燃費に関する情報を含める際に、圃場の状態に応じて補正を行うことができ、燃費情報の精度を上げることができる。
また、エンジン回転数が大幅に低下し得る圃場状態の作業位置では、燃費が悪くなるので、このような圃場状態の作業位置が存在する際には、圃場の地図データを表示する際に燃費情報を表示してもよい。つまり、圃場の地図データをタブレット端末装置140のタッチパネル141で表示する際に、エンジン回転数が大幅に低下し得る圃場状態の作業位置では、燃費が悪くなることを合わせて表示してもよい。
また、苗移植機2での作業時における作業情報では、作業タイマー135によって計測した作業時間も含めて記憶する。その際に、作業タイマー135では、苗移植機2の運転時間のみでなく、植付クラッチセンサ89が駆動検知状態である時間を別途計測する。植付クラッチセンサ89が駆動検知状態であるということは、苗植付部50によって植え付け作業を行っているということであるため、植付クラッチセンサ89が駆動検知状態である時間を作業タイマー135で計測することにより、植え付け作業を行っている時間を計測することができる。これにより、苗移植機2の運転時間のうち、実際に苗植付部50で植え付け作業を行わない旋回時間や、圃場に出入りする時間は含まない、PTO軸87によって苗植付部50に動力を伝達して植え付け作業を行っている時間のみを計測することができ、圃場で作業をするのに正確な時間を割り出すことができる。
また、自動操舵装置110によって、直進走行のアシストをする際には、直進アシストのティーチング時間を作業タイマー135で計測し、実際作業時間として含めないようにする。つまり、直進アシストのティーチングは、植付クラッチセンサ89はOFFの状態で苗植付部50は下降させ、「作業速」で走行することにより、直進走行を行わせるための調整を行うが、この場合は植え付け作業は行わないため、作業タイマー135でこの時間を計測し、作業時間には含めないようにする。作業タイマー135で計測した植え付け作業の作業時間は、作業情報としてタブレット端末装置140の記憶部143で記憶する。
また、自動操舵装置110によって直進アシストをする際において、作業タイマー135での作業時間の計測時に感圧センサ130が非検知状態の場合には、非検知状態の時間を苗植付部50や施肥装置70での作業に用いる苗や肥料の補充作業である補助作業時間として、作業タイマー135で別途計測する。つまり、直進走行のアシストによって低速で自動植え付けを行っている時に、苗載置台51に載置される苗や施肥装置70の貯留ホッパ71内の肥料が少なくなってきた場合、作業者は予備苗載台65に載置されている苗を苗載置台51に補充したり、フロアステップ26上の予備の肥料を貯留ホッパ71に補充したりする。この場合、植え付け作業を行いながらの補充であるが、作業タイマー135では、この植え付け作業中の補充作業についても計測し、このような植え付け作業中の補充作業を検知するために、感圧センサ130の検知結果を用いる。即ち、植え付け作業中に、感圧センサ130が非検知状態の場合には、作業者は立って補充作業を行っていると判断し、感圧センサ130が非検知状態になっている時間を、補充作業を行っていると時間として作業タイマー135で計測する。
また、苗移植機2で植え付け作業をする圃場は、水や泥が多く、走行時にスリップが発生し易いため、タブレット端末装置140では、記憶部143で記憶する作業情報として、駆動輪である後輪5のスリップ率も記憶する。つまり、植え付け作業時にスリップが発生すると、スリップの大きさに応じて走行速度が変化するため、苗を植え付ける際の植え付け間隔が変化してしまう。このため、作業情報を記憶する際には、スリップに起因して植え付け間隔が変化し易い状態であることを、同じ圃場で次回以降に作業を行う作業者に認識させ、適切な植え付け作業を実現させるために、スリップ率も記憶する。
これにより、同じ圃場で植え付け作業を行う作業者は、この圃場で植え付け作業を行う際におけるスリップ率をタブレット端末装置140によって認識し、このスリップ率に応じてエンジン回転数や油圧式無段変速機16の出力を切り替えて植え付け作業を行う。ここで、初めて作業を行う圃場等では、スリップ率を含む作業情報が無いことがある。このように、タブレット端末装置140に作業情報の蓄積が無いときは、仮想のスリップ率である仮想スリップ率を適用して、作業位置毎の作業情報を記憶する。仮想スリップ率としては、例えば8%〜10%程度のスリップ率にする。作業情報の蓄積が無い圃場では、植え付け作業を行いながら作業情報を取得し、スリップ率は仮想スリップ率にして、タブレット端末装置140の記憶部143で記憶する。
このように植え付け作業を行っている状態で、さらに、後輪回転センサ23の回転数と、少なくとも2点の作業位置情報から算出した実移動距離から、実際のスリップ率である実スリップ率を算出する。2点の作業位置情報としては、例えば、圃場の一端における植付クラッチ機構82をONにする位置と、圃場の他端で植付クラッチ機構82をOFFにする位置とを使用し、この2点の作業位置情報から、実移動距離を算出する。即ち、圃場の1列分の作業から、実移動距離を算出し、この実移動距離と、後輪回転センサ23で検知した回転数とを用いて、実スリップ率を算出する。このように、実スリップ率を算出したら、仮想スリップ率と置き換えて、引き続き植え付け作業を行いながら作業情報を取得し、算出した実スリップ率と共にタブレット端末装置140の記憶部143で記憶する。
また、作業情報を取得する際には、作業場所の深さも検知して、作業位置と共に作業情報に含める。この作業場所の深さは、リンクセンサ45によって検知する。詳しくは、苗移植機2で植え付け作業を行う際には、苗植付部50が有するフロート47の姿勢に応じて苗植付部昇降機構40の昇降リンク装置41を作動させ、苗植付部50を昇降させる。これにより、圃場の深さに応じて苗植付部50を昇降させる。昇降リンク装置41によって苗植付部50を昇降させた場合、リンクベースフレーム43に対する平行リンク機構42の角度が変化するため、リンクセンサ45は、このリンクベースフレーム43に対する平行リンク機構42の角度を検知することにより、圃場の深さ、即ち作業場所の深さを検知する。
つまり、平行リンク機構42の角度が、苗植付部50が比較的上方側に位置していることを示している場合には、作業場所は深くなっており、平行リンク機構42の角度が、苗植付部50が比較的下方側に位置していることを示している場合には、作業場所は浅くなっていることを示している。一方、作業場所の深さが深い場合には、車輪が沈み込んでスリップが発生し易い状態になり、作業場所の深さが浅い場合には、車輪は沈み込み難いので、安定走行を行い易くなる。
このため、平行リンク機構42の角度を検知するリンクセンサ45の検知量が、作業場所の深さが深いことを示しているときは、作業情報を取得する際に用いるスリップ率を上昇補正する。上昇補正としては、例えば+1%程度の補正を行う。反対に、平行リンク機構42の角度を検知するリンクセンサ45の検知量が、作業場所の深さが浅いことを示しているときは、作業情報を取得する際に用いるスリップ率を下方補正する。下方補正としては、例えば−1%程度の補正を行う。これにより、タブレット端末装置140の記憶部143で記憶する作業情報を、実際の作業の状態に極力合わせることが可能になる。
また、ミッションケース18内の副変速機構が「路上速」に切り替えられているとき、即ち、副変速レバー38が「路上速」に切り替えられているときは、作業情報を取得する際に、スリップ率を用いて計算しない、またはスリップ率を「0」とみなして計算をする。つまり、路上走行時には、スリップはほとんど発生しないため、タブレット端末装置140の記憶部143で記憶する作業情報では、スリップ率は考慮しないで記憶する。
苗移植機2で作業を行う際には、苗移植機2からタブレット端末装置140に対して作業情報を送信するのみでなく、タブレット端末装置140から適宜情報を受信して作業を行うこともある。例えば、苗移植機2が、地図データ上で不安定地帯を示す位置で植え付け作業を行っている際に、感圧センサ130が非検知状態になった場合には、HST制御モータ90は、油圧式無段変速機16の出力を低下させる。
つまり、タブレット端末装置140には、圃場の状態についても記憶されているため、自動操舵装置110によって直進アシストを行いながら植え付け作業を行っている場合において、感圧センサ130が非検知になった作業位置が、地図データにおける、圃場の状態が不安定であると記憶されている位置である場合には、油圧式無段変速機16の出力を低下させる。圃場の状態が不安定であると記憶されている位置では、機体の姿勢が急激に変わり易く、作業座席28に座っていないと危ないため、このような位置で作業を行う際に、感圧センサ130が非検知になった場合には、油圧式無段変速機16の出力を低下させることにより走行速度を低下させ、機体の姿勢の急激な変化を抑制する。
また、植え付け作業時に、地図データ上で、圃場端以外を示す位置で苗や肥料等の作業資材の残量が所定値未満になった場合には、タブレット端末装置140は、次の圃場端で補充を促すための報知をスピーカ145によって行う。詳しくは、圃場で植え付け作業を行う場合において、作業の途中で苗移植機2に苗や肥料を積み込む際には、圃場の端で積み込む。圃場端以外の位置で、苗や肥料が不足しそうな状況のときには、苗や肥料が無くなる前に、次の圃場端で補充を促すための報知を行う。即ち、植え付け作業を行っていて、圃場端から圃場端まで移動する間に苗や肥料が不足しそうな時には、苗や肥料が無くなる前にスピーカ145で報知を行う。
具体的には、苗減少センサ55での検出値が、苗が所定量未満であることを示していたり、肥料減少センサ77での検出値が、肥料が所定量未満であることを示していたりする場合に、次の圃場端で苗や肥料を補充しないと、次の圃場端からその次の圃場端まで移動する間に苗や肥料が無くなってしまうことを報知する。その際に、苗や肥料を補充することを促す圃場端としては、補充を行い易い位置で補充を行うように促すのが好ましい。つまり、圃場端によっては、補充を行い易い箇所と行い難い箇所があるので、苗や肥料が所定量未満であることを示している場合には、補充を行い易い圃場端に到達する前に報知するのが好ましい。
なお、このように、苗減少センサ55や肥料減少センサ77での検出値に基づいて、苗や肥料が少なくなってきていることを作業者に報知する際には、タブレット端末装置140のタッチパネル141で表示する地図データ上に、補充作業を行うべき位置を、色分け等によって報知してもよい。つまり、タッチパネル141で表示する地図データ上に、植え付け作業を行う際の経路を表示し、作業資材が少なくなってきた際には、補充作業を行うべき位置を色分けしたりすることにより、作業者に対して報知してもよい。
また、このように、植え付け作業を行う際の経路をタッチパネル141で表示する際には、地図データ上における作業開始地点に、作業開始地点であることを示すマークを表示し、このマークによって作業状態を表示するのが好ましい。例えば、マークが表示されている圃場での作業中は、マークに色付けを行ったり点滅させたりし、作業が終了したら、作業中とは別の色にしたりマークを点灯させたりすることにより、作業中であるか作業が終了したかを表示するのが好ましい。
また、1つの圃場で複数の作業者によって作業を行う際には、タッチパネル141には、他の作業者が作業した領域を表示するのが好ましい。つまり、1つの圃場で複数の苗移植機2によって作業を行う際には、他の苗移植機2が作業した領域を表示するのが好ましい。この場合、複数の苗移植機2の全てに、GPS制御装置120やタブレット端末装置140を備える苗移植機2を使用し、互いに、自己の苗移植機2の位置情報や作業情報を他の苗移植機2に対して送信する。これにより、各苗移植機2では、タブレット端末装置140のタッチパネル141上に、自己の苗移植機2や他の苗移植機2が作業を完了した領域を、色分けしたりすることによって表示する。
また、タブレット端末装置140を用いて行った作業計画に基づいて作業を行う際には、タッチパネル141には、作業が完了したら作業者が押すことができる作業終了ボタンを表示し、作業が完了したら、作業者が作業終了ボタンを押すことにより、次の作業指示や作業計画のデータを表示するようにする。なお、作業完了の判断は、作業者が作業終了ボタンを押すこと以外によって行ってもよい。例えば、GPS制御装置120で取得した位置情報が、作業終了とみなせる位置である場合には、作業が終了したとタブレット端末装置140で判断し、次の作業指示や作業計画のデータを表示してもよい。
以上の実施形態に係る苗移植機2は、作業時には、作業位置毎のエンジン回転数として、変速レバー35の操作量に連動した設定上の数値を記憶することにより、エンジン回転数を検知する検知部材を追加する必要がなく、エンジン回転数についての作業情報を取得することができる。この結果、部品点数の削減や構成の簡潔化を図ることができ、部品点数の増加を抑えつつ、適切な作業情報を取得することができる。
また、後輪回転センサ23の検知量と、GPS制御装置120の受信アンテナ121による位置情報に基づき、圃場内のエンジン回転数が低下し得る場所の情報を取得することにより、エンジン回転数に関する作業情報として、より適切な情報を、簡易な構成で取得することができる。また、エンジン回転数が低下し得る区間の情報により、作業者は該当箇所を通過する際に油圧式無段変速機16の出力を上昇させて、エンジン回転数の低下を防止することができる。この結果、走行速度の低下による作業能率の低下を防止できると共に、エンジン回転数が大きく増減することによる燃料消費量の増加を防止することができる。
また、駆動伝動装置85が駆動状態である時間、即ち、圃場での作業が実際に行われている時間を、作業タイマー135で別途計測することができるので、苗移植機2での作業時における作動時間のうち、実作業に費やされた時間がどの程度であるかを正確に知ることができる。この結果、作業計画を立てる際の参考情報としての精度を向上させることができる。
また、苗や肥料等の作業資材の補充に要する時間を補助作業時間として計測することにより、苗移植機2での実作業中に、補助作業をどれだけ行ったかを把握することができる。この結果、作業計画を立てる際の参考情報としての精度を向上させることができる。
また、タブレット端末装置140に作業情報が蓄積されていないときには、仮想スリップ率を作業情報に組み込むことにより、作業開始時点の作業情報と実際の機体の作業の差異を小さくすることができる。この結果、作業計画を立てる際の参考情報としての精度を向上させることができる。
また、圃場の深さに合わせてスリップ率を自動的に変更して記憶することにより、作業情報と実際の機体の作業の差異を小さくすることができる。また、ミッションケース18内の副変速機構が「路上速」に切り替えられているときは、スリップ率を計算しない、または「0」とみなすことにより、余分な計算が不要になり、適切な情報を取得することができる。これらの結果、作業計画を立てる際の参考情報としての精度を向上させることができる。
また、走行姿勢が乱れ易い作業位置で作業者が作業座席28から立ち上がったことを感圧センサ130で検知した場合には、油圧式無段変速機16の出力を低下させて走行速度を減速させるため、圃場面の凹凸等の影響で走行車体3の姿勢が乱れることを低減することができる。これにより、苗や肥料等の作業資材の補充作業等を行う際に、作業者がバランスを崩し難くなり、作業能率が向上すると共に、作業の安全性を確保することができる。また、作業資材が減少した状態で圃場端から離れると、スピーカ145が報知を行うため、次の圃場端での補充作業の必要があることを、速やかに作業者に気付かせることができる。この結果、作業資材を補充しに圃場端に戻る必要がなくなり、作業能率を向上させることができる。また、別の作業者が作業した領域をタッチパネル141で表示する地図データ上に表示するため、重複作業を防止することができる。この結果、余分な作業が不要になると共に、過度の作業による不具合を防止することができる。つまり、例えば、重複して肥料や薬剤を供給すると、余分な消費が発生すると共に、圃場や周辺環境が汚染される可能性があり、このような不具合を防止することができる。
〔変形例〕
なお、上述した苗移植機2では、作業情報をタブレット端末装置140で記憶することにより作業情報を管理するものになっているが、農作業支援システムとして作業情報以外の情報を管理するように構成してもよい。図9は、実施形態に係る苗移植機の変形例であり、苗載置台に載置する苗箱の説明図である。図10は、実施形態に係る苗移植機の変形例であり、苗載置台の要部側面図である。作業情報以外の管理する場合には、例えば、苗載置台51に載置する苗を、図9に示すような苗箱150に入れて、苗が入っている苗箱150を、図10に示すように苗載置台51に載置するようにする。その際に、各苗箱150には、苗箱150に入っている苗の量を示す識別体である金属チップ151を下面側に設ける。
一方、苗移植機2が有する苗植付部50には、苗箱150を苗載置台51に載置した場合における、苗箱150の金属チップ151に対向する位置付近に、金属チップ151を認識する消費認識装置である通電センサ152を配設する。これにより、苗箱150を苗載置台51に載置した際には、通電センサ152で金属チップ151を検知することにより、所定量の苗が苗載置台51に載置されたことを認識することができる。
図11は、図10に示す苗移植機を備える農作業支援システムの機能ブロック図である。通電センサ152は、他のセンサ類と同様にコントローラ200に接続され、通電センサ152での検知結果はコントローラ200で取得可能になっている。農作業支援システム1では、作業情報を記憶するサーバー155を有している。このサーバー155は、各種の情報を記憶する記憶部156と、無線通信が可能なサーバー通信部157とを備えている。このうち、サーバー通信部157は、電波を用いた無線通信により、タブレット端末装置140の端末通信部144との間で信号の送受信を行うことが可能になっており、これにより、サーバー155は、複数のタブレット端末装置140との間で情報を通信することができる。
このように構成される農作業支援システム1では、苗移植機2での植え付け作業時に、苗載置台51に苗箱150が載置された際には、苗箱150の金属チップ151を通電センサ152で検知することにより、コントローラ200は、苗箱150が載置されたことを認識する。通電センサ152での検知情報は、タブレット端末装置140に伝達され、タブレット端末装置140の記憶部143で記憶する。植え付け作業によって苗箱150の苗が消費され、苗箱150が入れ替えられた際には、そのことを通電センサ152で検知してタブレット端末装置140の記憶部143で記憶する。これにより、タブレット端末装置140は、通電センサ152が認識した苗の消費量を記憶する。また、このようにタブレット端末装置140で記憶する苗の消費量は、端末通信部144とサーバー通信部157との間の無線通信によってサーバー155に伝達され、サーバー155の記憶部156でも記憶する。
これらのように、作業資材である苗を消費する際に数を計測しておくことにより、次回以降の作業でどれだけの作業資材を用意すれば良いかを把握することができる。これにより、作業資材不足で作業が中断されて作業能率が低下することや、作業資材が余って余分な輸送作業が必要になることや、在庫を抱えることを防止することができる。また、以前の作業資材の消費量との比較により、圃場の環境の変動に対応することができると共に、余分な作業により消費された作業資材の量を判断することができるので、作業精度の向上や、作業資材の使用量の抑制を図ることができる。
なお、この説明では、作業資材の一例として、苗の消費量を管理する場合について説明したが、作業資材である肥料の消費量を管理する場合には、肥料袋に、識別体としてバーコードを設け、消費認識装置として、バーコードを読み取るバーコードリーダーを用いてもよい。バーコードリーダーは、専用のものを用いてもよく、装備されているカメラとアプリケーションによってタブレット端末装置140でバーコードを読み取れる場合には、タブレット端末装置140を用いてもよい。このように、バーコードとバーコードリーダーを使用し、肥料を使用する度に、肥料袋のバーコードをバーコードリーダーで読み取ることにより、肥料の消費量を管理することができる。
また、これらのような管理は、作業資材以外で行ってもよい。例えば、苗移植機2のような作業車両では、動力源であるエンジン10にはディーゼルエンジンとガソリンエンジンとがあり、それぞれ使用する燃料が異なっているため、燃料を間違えないような管理を行ってもよい。具体的には、燃料の持ち運び用のタンクと、走行車体3側のタンクとのそれぞれにセンサを設け、タンク同士のセンサが一致した場合にのみ、それぞれのタンクの蓋を開けることができるようにする。その際に、センサの種類は、ガソリン用のセンサと軽油用のセンサとで異なったものにする。このため、例えば、ガソリンエンジンを備える走行車体3に、軽油用のタンクを近付けた場合には、双方のタンクの蓋を開けることができず、ガソリン用のタンクを近付けた場合には、双方のタンクの蓋を開けることができるため、燃料の種類を間違えることなく補給することができる。
また、農作業支援システム1によって管理を行う際には、作業車両に搭載されるもの以外の管理を行ってもよく、例えば、倉庫に収容される作業資材の管理を行ってもよい。図12は、倉庫に収容される作業資材の管理を行う農作業支援システムの機能ブロック図である。倉庫に収容される作業資材の管理を行う際には、倉庫に配置される作業資材にバーコードを設け、バーコードリーダー160によって、このバーコードを読み取るようにする。バーコードリーダー160は、例えば、タブレット端末装置140に装備されるカメラとアプリケーションとを用いることによって、タブレット端末装置140に設ける。また、サーバー155では、倉庫に収容される作業資材の在庫数を、予め記憶部156で記憶しておく。
倉庫内の作業資材を使用する際には、使用する作業資材のバーコードを、タブレット端末装置140のバーコードリーダー160で読み取り、記憶部143で内容を記憶する。また、タブレット端末装置140は、バーコードリーダー160で読み取った情報をサーバー155に送信し、サーバー155では、予め記憶部156で記憶されている作業資材の在庫数を減少させる。
このように、倉庫から持ち出す作業資材の数を、持ち出しの際にサーバー155で管理させることにより、別の作業者が、倉庫の在庫状況をタブレット端末装置140によって把握することができる。これにより、倉庫内の作業資材が不足して余分な移動をする必要がなくなるため、作業能率を向上させることができる。また、倉庫内の作業資材の減少が数値的に分かるので、発注作業が行い易くなり、作業資材が不足する時間をできるだけ短く抑えることができる。また、タブレット端末装置140に、持ち出す作業資材の内容が記憶されるため、適切な使用量を作業前に把握することが可能になり、作業能率を向上させることができる。
また、農作業支援システム1では、サーバー155は、複数のタブレット端末装置140のうち、どのタブレット端末装置140が、どの走行車体3の情報を記憶しているかを判断し、タブレット端末装置140に記憶されていない走行車体3を、使用されていないものとして判定して記憶するのが好ましい。具体的には、複数の苗移植機2のそれぞれが有する苗移植機通信部201に、IDを付与してサーバー155で記憶し、タブレット端末装置140は、苗移植機2との間で情報の送受信を行う状態である場合には、その情報をサーバー155に伝達する。
これにより、サーバー155は、どの苗移植機2が、どのタブレット端末装置140との間で通信を行っているかを判断することができ、いずれのタブレット端末装置140との間でも通信を行わず、作業情報が記憶されていない苗移植機2については、使用されていないと判断することができる。このため、使用されていない走行車体3の有無を簡単に把握することができるので、追加で行う作業に使われていない走行車体3を手配することや、故障した走行車体3の代用を速やかに用意することができる。従って、天候等による作業計画の変更に柔軟に対応できると共に、作業の中断時間を短くでき、作業能率の低下や作業計画の遅延を防止することができる。
また、作業装置としては、苗植付部50や施肥装置70の他に、様々な種類のものがあるが、農作業支援システム1では、これらの作業装置の使用状態を把握することができるように構成されていてもよい。図13は、作業装置の使用状態を把握する農作業支援システムの機能ブロック図である。農作業支援システム1で作業装置の使用状態を把握する際には、例えば、作業車両の走行車体165に、作業装置167との装着を検知すると共に、サーバー155と通信可能な装着検知部材166を設ける。装着検知部材166の一例としては、作業車両がトラクタで、作業装置167が、トラクタに連結するロータリ等のアタッチメント作業機である場合には、トラクタの走行車体165が有する連結ヒッチに、装着検知部材166として接触センサを設ける。これにより、トラクタの走行車体165に作業装置167が装着された際には、作業装置167が装着されたことを装着検知部材166で検知することが可能になる。
このように設けられる装着検知部材166は、装着の検知状態になると、どの走行車体165が作業装置167に装着されたかをサーバー155に送信する。さらに、サーバー155は、走行車体165に装着されている記憶がない作業装置167を、非使用状態であるとタブレット端末装置140に送信する。これにより、非使用状態の作業装置167をタブレット端末装置140で把握することができるので、非使用状態の作業装置167を探す時間を短縮することができ、作業能率を向上させることができる。
図14は、作業装置の使用状態を把握する農作業支援システムの機能ブロック図である。なお、装着検知部材166は、連結ヒッチの接触センサ以外のものであってもよい。例えば、作業装置167が、動力草刈機や動力噴霧器等の、作業者が保持しながら作業を行う作業装置167である場合には、装着検知部材166は、作業者が携帯する携帯デバイス168と、作業装置167との装着を検知するものであってもよい。携帯デバイス168と作業装置167との装着を検知する装着検知部材166としては、例えば、作業装置167との間でUSB接続やカプラ接続を行うことにより、携帯デバイス168と作業装置167との装着を検知するものであってもよい。
この場合、サーバー155は、携帯デバイス168に装着されている記憶がない作業装置167を、非使用状態であると、タブレット端末装置140に送信する。これにより、作業装置167が、作業者が保持しながら作業を行うものであっても、非使用状態の作業装置167をタブレット端末装置140で把握することができ、作業能率を向上させることができる。
また、タブレット端末装置140は、使用する作業車両を間違えることを防止したり、作業車両のセキュリティに用いたりしてもよい。例えば、苗移植機2に、キーON時にQRコード(登録商標)が自動的に表示される装置を設けておき、キーON時に表示されたQRコードをタブレット端末装置140のバーコードリーダー160で読み取るようにする。一方、タブレット端末装置140には、認証用のQRコードを予め記憶しておき、読み取ったQRコードが、認証用のQRコードと一致している場合には、始動を許可する信号を苗移植機2に送信する。苗移植機2では、この始動許可の信号を受信しないときはエンジン10が始動しないようにしておく。これにより、苗移植機2の始動を許可できるタブレット端末装置140を持っていない作業者は、苗移植機2を使用することができないので、異なる苗移植機2の作業情報が記憶されたタブレット端末装置140を用いて作業計画を行うことを防止でき、また、不特定多数のものが苗移植機2を使用可能になる状態を抑制することができる。
また、タブレット端末装置140によって、作業車両のセキュリティを向上させる際には、キーON時にタブレット端末装置140にパスワードを入力し、パスワードが一致した場合にのみ、エンジン10が始動するようにしてもよい。その際に、パスワードは、ワンタイムパスワードを生成するのが好ましい。これにより、より確実にセキュリティを向上させることができる。
また、タブレット端末装置140によって、作業車両のセキュリティを向上させる際には、バーコードを用いて認証を行うようにしてもよい。例えば、作業車両にバーコードを表示し、タブレット端末装置140のバーコードリーダー160でバーコードを読み取れるようにする。さらに、タブレット端末装置140でもバーコードを表示すると共に、作業車両にバーコードリーダーを設ける。この場合、タブレット端末装置140のバーコードリーダー160で読み取った作業車両のバーコードが、認証用のバーコードと一致することにより、始動を許可する信号をタブレット端末装置140から苗移植機2に送信し、且つ、作業車両のバーコードリーダーで読み取ったタブレット端末装置140のバーコードが、認証用のバーコードと一致している場合にのみ、エンジン10の始動を許可する。これにより、二重でロックすることになるので、作業車両のセキュリティを、より向上させることができる。
また、実施形態に係る苗移植機2では、作業場所の深さを検知する深度検知部材としてリンクセンサ45が用いられているが、深度検知部材は、リンクセンサ45以外を用いてもよい。図15は、実施形態に係る苗移植機の変形例であり、深度検知部材に超音波センサを用いる場合の説明図である。図16は、図15に示す苗移植機の平面図である。深度検知部材は、例えば、図15、図16に示すように、超音波センサ170を用いてもよい。この超音波センサ170は、走行車体3の前端の下端に配設されており、下方に向けて超音波を発すると共に、圃場等で反射した反射波を受け、超音波を発した時間と受けた時間との差を測定することにより、圃場面の距離を測定し、作業場所の深さを検知することができる。このように、超音波センサ170を用いた場合でも、作業場所の深さを検知することができるので、作業場所の深さに応じてスリップ率を補正することができ、作業計画を立てる際の参考情報としての精度を向上させることができる。
また、実施形態に係る苗移植機2では、駆動伝動装置85の作動状態を検知する駆動検知部材として、植付クラッチセンサ89が用いられているが、駆動検知部材は、植付クラッチセンサ89以外を用いてもよい。駆動検知部材は、例えば、PTO軸87の回転数を検知するPTO軸回転センサや、植付クラッチ機構の入切を切り替えるクラッチ入切スイッチを用いてもよい。これらを用いた場合でも、駆動伝動装置85の作動状態を検知することができるため、苗移植機2での作業時における作動時間のうち、実作業に費やされた時間を正確に知ることができ、作業計画を立てる際の参考情報としての精度を向上させることができる。
また、受信アンテナ121で取得する位置情報は、苗移植機2での作業時における制御に用いてもよい。例えば、苗移植機2は、圃場端で旋回するために操舵角を大きくした際には、操舵角が所定以上の場合に苗植付部50を自動で上昇させることにより、作業者の運転操作の軽減を図っているが、圃場で直進作業時において、進行方向のずれを修正をするための操舵角が大きくなってしまった場合には、苗植付部50が上昇してしまうことが考えられる。この場合、植え付け作業が中断されてしまうため、植え付け間隔が狂ってしまう。一方、圃場の端の位置は、地図データとGPSの座標で認識することができ、旋回位置を把握することができるので、植え付け作業時に、現在の作業位置が、旋回位置ではない場合には、操舵角を大きくしても、苗植付部50を上昇させないようにするのが好ましい。これにより、植え付け作業時の誤動作を防止することができる。
また、エンジン10のアイドリング時に、所定の条件を満たした場合には燃費向上のためにアイドリングストップを行う作業車両において、圃場での作業中に高負荷が連続して検出されている場合や、そのような作業状態になることが予想される圃場にきた場合は、アイドリングストップの条件を満たしても、アイドリングストップをさせないのが好ましい。高負荷状態でアイドリングストップさせると、冷却をしていない状態でエンジン10を止めることになるため、再始動が長時間制限されてしまう虞がある。この場合、作業が長時間中断してしまうことになるため、高負荷が続いていたり、高負荷が続くような圃場で作業を行ったりしているときは、アイドリングストップは行わないようにするのが好ましい。これにより、作業が長時間中断してしまうことを抑制することができる。
また、苗移植機2等の作業車両は、エンジン10の温度が所定以上の場合には、キーをOFFにしても、一定時間エンジン10が止まらないようにするのが好ましい。つまり、エンジン10を冷却するには、ウォーターポンプや冷却ファンを動かす必要があるが、キーをOFFにすると、これらは停止してしまうため、エンジン10は短時間では冷えない状態になる。このため、エンジン10の温度が高い状態でエンジン10を停止した後、すぐに再始動をしようとした場合、エンジン10の温度が高過ぎて始動できなくなる虞がある。この場合、エンジン10の温度が自然に下がるまで始動することができず、作業が長時間中断してしまうため、このような状況になることを防ぐために、エンジン10の温度が所定以上の場合には、キーをOFFにしても、一定時間エンジン10が止まらないようにするのが好ましい。これにより、キーをOFFにしても、しばらくの間はウォーターポンプや冷却ファンは動き続け、エンジン10を冷却し続けることができるので、エンジン10の温度がある程度低下してから、停止させることができ、再始動時に、すぐに始動するようにすることができる。
また、上述した実施形態では、作業車両の一例として苗移植機2を用いて説明したが、作業車両は、苗移植機2以外のものでもよい。作業車両は、コンバインやトラクタ等、圃場で作業を行うものであれば、その種類は問わない。
また、上述した実施形態では、走行車体3側とタブレット端末装置140側との通信を行う近距離無線接続としては、Bluetoothを用いているが、近距離無線接続は、Bluetooth以外のものを用いてもよい。タブレット端末装置140は、所望の走行車体3や作業装置との間で無線通信が可能になるものであれば、その手法や形式、規格等は問わない。
また、上述した実施形態では、情報端末の一例としてタブレット端末装置140を用いて説明したが、情報端末は、タブレット端末装置140以外のものであってもよい。情報端末は、走行車体3や作業装置、サーバー155との間で情報の送受信が可能に構成され、作業情報を記憶することができるものであれば、その形態は問わない。