JP2016069727A - 成膜装置及び成膜基板製造方法 - Google Patents

成膜装置及び成膜基板製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ワークの形状にかかわらず、高速に効率良く均一な厚さで成膜することができ、小型で省スペースの成膜装置及び成膜基板製造方法を提供する。
【解決手段】スパッタガスG1が導入されるチャンバ2と、チャンバ2内に設けられ、ワークWを循環搬送する搬送路を有する搬送部と、ワークWに堆積されて膜となる成膜材料によって形成され、搬送路に離隔して対向する位置に設けられたターゲット41と、ターゲット41に電力を印加することにより、スパッタガスG1をプラズマ化させ、成膜材料を、ワークWに堆積させる第1の電源部5と、成膜材料が堆積する領域である成膜領域Fを、搬送部によってワークWが通過する間に、ワークWのターゲット41に対する位置の変化に応じて、第1の電源部5がターゲット41に印加する電力を変化させる電源制御部とを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、成膜装置及び成膜基板製造方法に関する。
基板などのワークの表面に成膜を行う装置として、スパッタリングによる成膜装置が広く用いられている。スパッタリングは、チャンバ内に導入したガスをプラズマ化してイオンを生成し、このイオンが成膜材料であるターゲットに衝突することでターゲットから材料の粒子を叩き出し、叩き出された粒子をワークに付着させて膜を形成する技術である。
このような成膜装置においては、成膜効率を上げるために、複数のワークを循環移動させ、ターゲットに対向する位置を通過させながら、一括して成膜する技術が開発されている。しかし、ターゲットに比べてワークのサイズが大きくなると、外周側に膜が付かなくなり、膜厚分布が悪くなる。
一方、ターゲットと比べてワークのサイズが小さくなると、チャンバ内においてワーク以外の部分に付着する膜の量が増えるため、成膜効率が低下する。また、チャンバ内に付着した成膜材料は、剥離するとワークを汚染する。このため、チャンバ内を定期的にクリーニングする必要があり、手間がかかる。
ワークのサイズに合わせて、複数サイズのターゲットを用意し、これらのターゲットを、異なるサイズのワークごとに交換して成膜を行うと、手間がかかり、生産効率の低下、またコストアップをまねく。
これに対処するため、特許文献1は、2つのターゲットを有し、この2つのターゲットの位置を変えることで、ワークに向き合うターゲットの面積を変える成膜装置を開示している。
また、特許文献1には、ワークの外周側に対向するターゲットへの印加電力を、成膜対象物の内周側に対向するターゲットへの印加電力よりも大きくすることで、膜厚の面内均一化を図ることも開示されている。
さらに、特許文献1には、2つのターゲットへの印加電力を異なるものとするのではなく、2つのターゲットへの印加電力を同じにした条件で、内周側と外周側とで、ターゲットと成膜対象物との距離を変えて、膜厚の面内均一化を図ることも開示されている。
国際公開第07/148536号
しかしながら、特許文献1では、1つのターゲットにおいて、ワークが通過する領域における成膜分布は固定である。そして、各ワークは、成膜領域を一定の速度、一定の方向で通過する。このため、各ワークの成膜対象となる面が平坦面で、ターゲットに対して平行であれば、膜厚の均一性は確保しやすい。
しかし、成膜対象となる面は、必ずしも平坦面ではなく、ターゲットと平行とは限らない。例えば、ワークが、凹状又は凸状に湾曲した基板の場合がある。これは、集光レンズ、反射鏡、コンバイナなどのように、プロジェクタ、ヘッドアップディスプレイ等の光学機器に用いられる。このような湾曲した基板の場合、縁部と中央部とで、成膜対象となる面とターゲットとの距離に大きな違いが生じる。このため、湾曲した基板の場合、スパッタリングによる均一な厚さでの成膜は困難であった。
そこで、湾曲した基板に均一な厚さで成膜する場合には、一般的には、真空蒸着装置が用いられてきた。真空蒸着装置は、蒸発材料を投入した小さな蒸発源を加熱することにより、蒸発材料を蒸発させ、蒸発源を取り囲む大きな面積の基板に対して成膜を行う装置である。真空蒸着装置であれば、湾曲した基板の場合にも、蒸発源と基板との距離を長くすることにより、湾曲による距離の相違があっても、比較的均一な厚さで成膜できる。
しかしながら、蒸発源と基板との距離を、基板自体の湾曲により生じる距離の差を埋める程度に長く確保するために、真空蒸発装置が大型化することになる。また、蒸発源は、抵抗加熱や電子ビーム照射により加熱する必要があるため、その応答性は迅速ではない。このため、装置の立ち上げ等に時間がかかり、小中ロットの製品を、順次効率良く製造するには適さない。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、ワークの形状にかかわらず、高速に効率良く均一な厚さで成膜することができ、小型で省スペースの成膜装置及び成膜基板製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、実施形態の成膜装置は、スパッタガスをプラズマ化させ、成膜材料をワークに堆積させる成膜装置であって、スパッタガスが導入されるチャンバと、前記チャンバ内に設けられ、ワークを循環搬送する搬送部と、前記ワークに堆積されて膜となる前記成膜材料によって形成され、前記搬送部によって前記ワークが移動する経路に対向する位置に設けられたターゲットを有するスパッタ源と、前記ターゲットに電力を印加する電源部と、前記成膜材料が堆積される領域である成膜領域を前記ワークが通過する間に、前記ワークの前記ターゲットに対する間隔、方向又は平面方向から見た重なり面積の変化に応じて、前記電源部が前記ターゲットに印加する電力を変化させる電源制御部と、を有する。
前記電源制御部は、前記処理対象物における成膜対象となる表面と前記ターゲットとの垂直方向の距離に応じて、前記電源部が前記ターゲットに印加する電力を変化させてもよい。
前記電源制御部は、前記距離が短いほど印加する電力を小さく、前記距離が長いほど印加する電力を大きくしてもよい。
前記電源制御部は、前記電源部が印加する電力を、所定の振幅及び周期で変化させてもよい。
前記電源制御部は、前記ワークの循環搬送の1周分において定められた変化のパターンに従って、前記電源部が前記ターゲットに印加する電力を変化させてもよい。
前記搬送部は、前記ワークの搬送方向に対する前記ワークの角度を一定に保持する複数の保持部を有し、前記保持部は、等間隔で配設されていてもよい。
前記保持部は、前記成膜領域を通過するワークが、前記ターゲットとの距離が最大となる箇所と、最小となる箇所とを通過する位置に、前記ワークを保持してもよい。
前記搬送部は、前記保持部が設けられた回転テーブルを有してもよい。
前記搬送部は、前記保持部が設けられた回転ドラムを有してもよい。
前記スパッタ源は、前記ターゲットを複数有し、前記電源部は、ターゲット毎に、印加する電力を変化させるタイミングを変えてもよい。
距離を検出するセンサを有し、前記電源制御部は、前記センサに接続され、前記センサにより検出された前記ワークの表面までの距離に応じて、前記電源部が印加する電力を変化させてもよい。
前記センサは、前記ワークの表面までの距離が最大となる箇所と、最小となる箇所とを検出する位置に設けられていてもよい。
また、なお、上記の各実施形態は、成膜するワークが基板である成膜基板製造方法の発明としても捉えることができる。
このような態様の成膜基板製造方法は、スパッタガスが導入されたチャンバ内において、搬送部により基板を循環搬送し、この循環搬送される前記基板の移動経路に対向して配置されたターゲットに、電源部が電力を印加することにより、チャンバ内のスパッタガスをプラズマ化して、基板に成膜材料を堆積させ、前記搬送部による前記基板の移動に従って生じる基板とターゲットとの位置の変化に応じて、前記電源部がターゲットに印加する電力を変える。
本発明によれば、ワークの形状により、搬送中に、ターゲットに対するワークWの位置が変化することにより、ターゲットとワークの表面との距離が変化した場合であっても、これに応じて印加電力を制御するため、膜厚の均一性を確保できる。このため、スパッタリングにより、ワークWを高速に効率良く均一な厚さで成膜することができ、真空蒸着装置のように大型化することなく、小型で省スペースの成膜装置及び成膜基板製造方法を提供することができる。
実施形態の成膜装置を有するプラズマ処理装置の模式斜視図である。 実施形態の模式断面図である。 実施形態の制御装置を示すブロック図である。 回転テーブルにおける処理対象物を示す模式平面図である。 回転テーブルの回転とともに移動する処理対象物とターゲットとの平面方向から見た位置関係を示す説明図である。 図5に対応する印加電力とワークの回転角との関係を示す説明図である。 図5及び図6に対応するターゲットとワークの表面との距離の変化を示す説明図である。 回転テーブルの一周分における電力の変化態様を示す説明図である。 ワークとして用いる湾曲した基板を示す断面図である。 凹状に配置した基板に対して、電力を変化させずにチタン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 凹状に配置した基板に対して、電力を変化させてチタン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 凹状に配置した基板に対して、電力を変化させずにシリコン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 凹状に配置した基板に対して、電力を変化させてシリコン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 凸状に配置した基板に対して、電力を変化させずにチタン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 凸状に配置した基板に対して、電力を変化させてチタン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 凸状に配置した基板に対して、電力を変化させずにシリコン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 凸状に配置した基板に対して、電力を変化させてシリコン酸化膜を形成した場合の膜厚のばらつきを示す説明図である。 スパッタ源における複数のターゲットを、搬送方向に対して直交する方向に配置した場合の印加電力とワークの回転角との関係を示す説明図である。 スパッタ源における複数のターゲットを、搬送方向に対して斜めの方向に配置した場合の印加電力とワークの回転角との関係を示す説明図である。 スパッタ源における複数のターゲットを、搬送方向に対して平行な方向に配置した場合の印加電力とワークの回転角との関係を示す説明図である。 凹状に配置したワークに対して、センサにより検出された距離に応じた電力の変化を示す説明図である。 凸状に配置したワークに対して、センサにより検出された距離に応じた電力の変化を示す説明図である。 搬送部として回転ドラムを用いた成膜装置の一例を示す一部透視斜視図である。
本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態は、プラズマ処理装置1の一部として構成される成膜装置である。
[プラズマ処理装置]
[概要]
プラズマ処理装置1は、図1に示すように、回転テーブル31が回転すると、保持部33に保持されたワークWが、円を描く軌跡で移動して、スパッタ源4に対向する位置を通過するときに、ターゲット41からスパッタされた粒子が付着して成膜を受ける装置である。このプラズマ処理装置1は、逆スパッタ源6を有し、ワークWが、逆スパッタ源6に対向する位置を通過するときに、エッチングや、窒化、酸化等による化合物膜の生成が行われる。
なお、本実施形態の処理対象物であるワークWは、例えば、方形の基板である。この基板は、図9に示すように、側面視(長辺に対向する方向から見た状態)で略円弧状となる湾曲を有している。図9(a)に示すように、ワークWが凹状、つまり略U字状となるように保持された場合には、ワークWの成膜対象となる面は、窪んだ側の窪み面となる。また、図9(b)に示すように、ワークWが凸状、つまり略逆U字状又はドーム状となるように保持された場合には、ワークWの成膜対象となる面は、伸張した側の隆起面となる。また、ワークWの成膜対象となる面は、ワークWの表面が露出した面であっても、すでに単数又は複数の膜が形成された面であってもよい。
[構成]
本実施形態におけるプラズマ処理装置1は、図1〜図4に示すように、チャンバ2、搬送部3、スパッタ源4、第1の電源部5、逆スパッタ源6、第2の電源部7、ロードロック部8、制御装置9を有する。
[チャンバ]
チャンバ2は、内部にスパッタガスG1が導入される容器である。スパッタガスG1は、電力の印加により生じるプラズマにより、発生するイオン等を処理対象物に衝突させるスパッタリングを実施するためのガスである。例えば、アルゴンガスは、スパッタガスG1として用いることができる。
チャンバ2の内部の空間は真空室21を形成している。この真空室21は、気密性があり、減圧により真空とすることができる空間である。例えば、図1及び図2に示すように、真空室21は、円柱形状の密閉空間である。
チャンバ2は、排気口22、導入口24を有する。排気口22は、真空室21と外部との間で気体の流通を確保して、排気Eを行うための開口である。この排気口22は、例えば、容器2の底部に形成されている。排気口22には、排気部23が接続されている。排気部23は、配管及び図示しないポンプ、バルブ等を有する。この排気部23による排気処理により、真空室21内は減圧される。
さらに、チャンバ2は、導入口24を有する。導入口24は、真空室21のターゲット41の近傍に、スパッタガスG1を導入するための開口である。この導入口24には、第1のガス供給部25が接続されている。第1のガス供給部25は、配管の他、図示しないスパッタガスG1のガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。この第1のガス供給部25によって、導入口24から真空室21内にスパッタガスG1が導入される。
[搬送部]
搬送部3は、チャンバ2内に設けられ、ワークWを循環搬送させる装置である。上記のように、搬送部3におけるワークWが移動する経路が、搬送路Pである。循環搬送は、ワークWを無端状の移動経路で移動させることをいう。この搬送部3は、回転テーブル31、モータ32、保持部33を有する。
回転テーブル31は、円形の板である。モータ32は、回転テーブル31に駆動力を与え、円の中心を軸として回転させる駆動源である。保持部33は、搬送部3により搬送されるワークWを保持する構成部である。この保持部33によって、ワークWは、回転テーブル31上に、成膜対象となる面を上として位置決めされる。
保持部33に保持されたワークWは、回転テーブル31の回転により、回転テーブル3の周方向に円を描く軌跡で真空室21内を移動する。このように、ワークWが移動する軌跡が、ワークWの搬送路Pである。以下、単に「搬送方向」という場合には、「搬送路PにおけるワークWの移動方向」、「回転テーブル31の周方向」を意味する。単に「半径方向」という場合には、「回転テーブル31の半径方向」を意味する。
複数の保持部33は、搬送方向に対する各ワークWの角度を一定に保持する。また、複数の保持部33は、等間隔で配設されている。例えば、各保持部33は、回転テーブル31の周方向の円の接線に平行な方向で、等間隔に設けられている。より具体的には、保持部33は、各ワークWにおける成膜対象となる面と、反対側の面及び縁部を保持する溝、穴、突起、治具、ホルダ、トレイ等である。トレイの場合、トレイとともにワークWを搬入、搬出してもよい。静電チャック、メカチャック、粘着チャックによって、またはこれらと溝、穴、突起、治具、ホルダ、トレイ等の組み合わせによって保持部33を構成することもできる。トレイの場合、トレイを回転テーブル31に保持する溝、穴、突起、治具、ホルダ、静電チャック、メカチャック、粘着チャック等の保持手段を設けてもよい。この場合、保持部33は、トレイ及び保持手段を含む。なお、図1の例では、保持部33は6つ設けられているため、回転テーブル31上には6つのワークWが保持される。
[スパッタ源]
スパッタ源4は、ワークWに堆積されて膜となる成膜材料の供給源である。スパッタ源4は、ターゲット41、バッキングプレート42、電極43を有する。ターゲット41は、ワークWに堆積されて膜となる成膜材料によって形成され、搬送路Pに離隔して対向する位置に設けられている。成膜材料は、例えば、チタン、シリコンなどを使用できる。但し、スパッタリングにより成膜される材料であれば、周知のあらゆる材料を適用可能である。このターゲット41は、例えば、円柱形状である。但し、長円柱形状、角柱形状等、他の形状であってもよい。
ターゲット41の材料が、ターゲット41に対向する位置を通過するワークWに膜として堆積する領域を、成膜領域Fとする。図2の成膜領域Fは、便宜的に図示したものであり、ターゲット41におけるワークWに対向する面の面積、ターゲット41とワークWとの距離、ターゲット41に印加される電力等により変動する。このため、上記の面積、距離、電力は、ターゲット41の全体が成膜領域Fに入るとともに、ターゲット41から外れる成膜領域Fが極力少なくなるものとすることが望ましい。なお、成膜領域Fは、ターゲット41における搬送路Pに対向する面の直下の領域よりも広がりを有する。
さらに、ターゲット41の周囲には、カバー44が設置されている。カバー44は、例えば、真空室21の天井に設けられ、スパッタ源4を囲む円筒形の壁である。このカバー44があることによって、スパッタガスG1が真空室21に拡散することを抑制できる。この場合、成膜領域Fは、カバー44の外部に拡大することが抑制される。
バッキングプレート42は、ターゲット41を保持する部材である。電極43は、チャンバ2の外部からターゲット41に電力を印加するための導電性の部材である。なお、スパッタ源4には、必要に応じてマグネット、冷却機構などが適宜具備されている。
このようなスパッタ源4は、図1に示すように、チャンバ2の上蓋に、周方向に複数設けられている。なお、図1の例では、スパッタ源4は6つ設けられている。各スパッタ源4におけるターゲット41の底面側は、搬送部3により移動するワークWに、離隔して対向する。本実施形態の保持部33は、各ターゲット41の成膜領域Fを通過するワークWが、ターゲット41との距離が最大となる位置と、最小となる位置とを通過する位置に、ワークWを保持することが望ましい。但し、必ずしも正確な「最大」「最小」の位置には限定されず、「最大」となる位置、「最小」となる位置に近似する位置であってもよい。つまり、目標とする膜厚分布の精度に応じて、ターゲット41とワークWとの距離の差が、比較的大きく生じる位置を通過すればよい。
つまり、回転テーブル31上のワークWは、湾曲している場合、ターゲット41との距離が近い部分と、ターゲット41との距離が遠い部分が生じる。例えば、図7、図9、図21に示すように、ワークWが、対向する2辺(長辺)が略円弧状となることにより湾曲した長方形状の基板であるとする。このようなワークWが、保持部33に凹状に保持されているとする。この場合、ワークWにおける直線状の2辺(短辺)の縁部は高くなるため、ターゲット41との距離が最小となり、ワークWの中央は低くなるため、ターゲット41との距離が最大となる。
これとは逆に、図22に示すように、ワークWが、保持部33に凸状に保持されているとする。この場合、ワークWにおける直線状の2辺の縁部は低くなるため、ターゲット41との距離が最大となり、ワークWの中央は高くなるため、ターゲット41との距離が最小となる。このように、距離が最大となる箇所及び最小となる箇所を含むように、成膜領域FにおけるワークWが移動する。
なお、ワークWの成膜対象面の全体が均一に成膜されるためには、ワークWの全体が成膜領域Fを通過する必要がある。但し、上記のように、成膜領域Fは、ターゲット41における搬送路Pに対向する面の直下の領域よりも広がりを有する。このため、必ずしもターゲット41の直下の領域をワークWの全体が通過する必要はない。
[第1の電源部]
第1の電源部5は、ターゲット41に電力を印加する構成部である。この第1の電源部5によってターゲット41に電力を印加することにより、スパッタガスG1をプラズマ化させ、成膜材料を、ワークWに堆積させることができる。本実施形態においては、第1の電源部5は、例えば、高電圧を印加するDC電源である。なお、高周波スパッタを行う装置の場合には、RF電源とすることもできる。回転テーブル31は、接地されたチャンバ2と同電位であり、ターゲット41側に高電圧を印加することにより、電位差を発生させている。これにより、可動の回転テーブル31をマイナス電位とするために第1の電源部5と接続する困難さを回避している。
[逆スパッタ源]
逆スパッタ源6は、逆スパッタ処理を行う処理ユニットである。逆スパッタは、窒化膜、酸化膜等の化合物膜の生成、エッチング等の処理である。この逆スパッタ源6は、筒形電極61を有している。筒形電極61は有底の筒状体であり、一端の真空室21側が開口し、他端は閉塞している。筒形電極61の開口側の端部は、搬送路Pと離隔して対向する位置に配置されている。閉塞した他端は、チャンバ2上面に設けられた貫通孔を貫通して、外部に露出している。
また、筒形電極61には導入口62が設けられている。この導入口62には、第2のガス供給部63が接続されている。第2のガス供給部63は、配管及び図示しない反応ガスG2を導入するための反応ガスG2のガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。この第2のガス供給部63によって、導入口62から筒形電極61内部に反応ガスG2が導入される。反応ガスG2は、例えば、窒素、酸素とすることができる。なお、逆スパッタ源7は、エッチングを行うことも可能である。この場合、反応ガスG2は、例えば、アルゴン等の不活性ガスを用いることができる。
[第2の電源部]
第2の電源部7は、筒形電極10に高周波電圧を印加するためのRF電源である。回転テーブル31は、接地されたチャンバ2と同電位であり、筒形電極10側に高電圧を印加することにより、電位差を発生させている。
ロードロック部8は、真空室21の真空を維持した状態で、図示しない搬送手段によって、外部から未処理のワークWを真空室21に搬入し、処理済みのワークWを真空室21の外部へ搬出する装置である。このロードロック部8は、周知の構造のものを適用することができるため、説明を省略する。
制御装置9は、プラズマ処理装置1の各部を制御する装置である。この制御装置9は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、真空室21へのスパッタガスG1および反応ガスG2の導入および排気に関する制御、スパッタ源4及び逆スパッタ電極6の電源の制御、回転テーブル31の回転の制御などに関しては、その制御内容がプログラムされており、PLCやCPUなどの処理装置により実行されるものであり、多種多様な成膜仕様に対応可能である。
具体的に制御される内容としては、初期排気圧力、スパッタ源4の選択、ターゲット41への印加電力、スパッタガスG1の流量、種類、導入時間及び排気時間、成膜時間、筒形電極61への印加電力、反応ガスG2の流量、種類、導入時間及び排気時間、逆スパッタ時間などが挙げられる。
上記のように各部の動作を実行させるための制御装置9の構成を、仮想的な機能ブロック図である図3を参照して説明する。すなわち、制御装置9は、機構制御部90、電源制御部91、記憶部92、設定部93、入出力制御部94を有する。
機構制御部90は、排気部23、第1のガス供給部25、搬送部3のモータ32、第2のガス供給部63、ロードロック部8等の駆動源、バルブ、スイッチ、電源等を制御する処理部である。電源制御部91は、第1の電源部5、第2の電源部7を制御する処理部である。
本実施形態の電源制御部91は、搬送部3によって、成膜領域FをワークWが通過する間に、ワークWのターゲット41に対する位置の変化に応じて、第1の電源部5がターゲット41に印加する電力を変化させる。位置の変化は、ターゲット41とワークWとの間隔の変化、ターゲット41とワークWとの方向の変化、平面方向から見たターゲット41とワークWとの重なり面積の変化等を含む。
このような位置の変化は、各ワークWが平坦でない場合、ターゲット41の表面とワークWの表面との距離の変化と同じ意味である。なお、ターゲット41の表面とワークWの表面との距離は、ターゲット41の表面の任意の一点からワークWの表面に下ろした垂線の長さで考えればよい。この任意の一点を、その直下をワークWが必ず通過する点とすれば、平坦でないワークWが移動するに従って、ターゲット41との距離は変化する。
各ワークWとターゲット41との位置及び位置の変化を把握する手法は、例えば、以下のように種々の手法が考えられる。まず、保持部33によるワークWの保持位置と、回転テーブル31における回転軸を含む各部の位置との関係は決まっている。回転軸を中心として回転テーブル31が回転する場合に、回転テーブル31の回転方向の位置、つまり回転角、回転量等は、センサ等の検出器で検出することができる。従って、回転テーブル31の回転方向の位置から、保持部33とワークWの位置が分かる。ターゲット41は固定であり、保持部33とワークWの姿勢も決まっているので、回転テーブル31の回転方向の位置から、ワークWとターゲット41との位置関係が分かる。
ここで、回転テーブル31の回転方向の位置を検出するために、回転テーブル31の基準位置を検出するセンサ等の検出器を設けてもよい。また、モータ32の回転位置を検出することによって、回転テーブル31の回転方向の位置を検出してもよい。例えば、モータ32の内蔵又は外付けのセンサ、エンコーダ、ポテンショメータ等の検出器によって、モータ32の回転位置を検出することができる。さらに、センサ等の検出器により、ワークWの位置を直接検出したり、ターゲット41とワークWとの距離を直接測定してもよい。後述するセンサKを用いた他の実施形態は、その一例である。従って、上記に例示したような検出器を、制御装置9に接続することによっても、電源制御部91は、各ワークWのターゲット41に対する位置の変化に応じた制御が可能となる。
記憶部92は、回転テーブル31の回転方向の位置、回転速度、印加電力の変化態様、ターゲット41とワークWの表面との距離等、本実施形態の制御に必要な情報を記憶する構成部である。印加電力の変化態様としては、基本的には、ワークWとターゲット41の距離が短いほど小さく、距離が長いほど大きくする。これは、距離が短いと膜が厚くなるため、電力を小さくして堆積量を少なくし、距離が長いと膜が薄くなるため、電力を大きくして堆積量を増やすことにより、全体として均一性を得るためである。
また、印加電力の変化態様を、各ワークWとターゲット41との位置の変化に応じて、所定の振幅及び周期で変化する態様とすれば、振幅及び周期を決定すればよいため、設定が容易である。さらに、各ワークWが交換されない限り、各ワークWとターゲット41との位置は、一周ごとに同じ変化を繰り返す。このため、ワークWの循環移動の1周分において定められるワークWとターゲット41との位置や距離の変化のパターンに応じて、印加電力を変化させる態様であってもよい。
設定部93は、外部から入力された情報を、記憶部92に設定する処理部である。入出力制御部94は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。
さらに、制御装置9には、入力装置95、出力装置96が接続されている。入力装置95は、オペレータが、制御装置9を介してプラズマ処理装置1を操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段である。上記の印加電力の変化態様は、入力装置95から入力することができる。
出力装置96は、装置の状態を確認するための情報を、オペレータが視認可能な状態とするディスプレイ、ランプ、メータ等の出力手段である。上記の印加電力の変化態様は、出力装置96に表示される。
[作用]
[成膜処理]
以上のような本実施形態による成膜処理を、図1〜図4に加えて、図5〜図8を参照して、以下に説明する。まず、ロードロック部8の搬送手段により、成膜処理すべきワークWを、チャンバ2内に順次搬入する。回転テーブル31は、空の保持部33を、順次、ロードロック部8からの搬入箇所に移動させる。保持部33は、搬送手段により搬入されたワークWを、それぞれ個別に保持する。
このようにして、ワークWは、回転テーブル31上に全て載置される。なお、保持部33は、ワークWの上面が凹状となるように保持してもよいし、上面が凸状となるように保持してもよい。以下の説明は、凹状に保持した場合である。
排気部23は、真空室21を排気して減圧することにより真空にする。第1のガス供給部25は、スパッタガスG1を、ターゲット41の周囲に供給する。第2のガス供給部63は、反応ガスG2を、筒状電極61内に供給する。
回転テーブル31が回転して、所定の回転速度に達する。これにより、保持部33に保持されたワークWの全体又は一部は、搬送路P上を円を描く軌跡で移動して、スパッタ源4、逆スパッタ源6に対向する位置を通過する。
第1の電源部5は、ターゲット41に電力を印加する。第2の電源部7は、逆スパッタ源6に電力を印加する。これにより、真空室21内のスパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオンは、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。これにより、成膜領域Fを通過するワークWの表面に、成膜材料の粒子が堆積されて膜が生成される。例えば、チタン又はシリコンの膜が形成される。
また、逆スパッタ源6において、プラズマによって発生したイオンは、生成された膜を化合物の膜とする。例えば、チタン酸化膜、チタン窒化膜、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜等の化合物膜が形成される。一回のスパッタで形成される膜は、非常に薄いため、回転テーブル31が複数回転することにより、徐々に所望の厚みとすることができる。但し、スパッタ源4において非常に薄い膜を形成する毎に、逆スパッタ源6で化合物化するので、同じ箇所で膜形成と化合物化を行う場合に比べて、膜形成が妨げられることがない。また、化合物化の進行も速い。
このように複数のスパッタ源4による成膜と、逆スパッタ源6による化合物化の状態が連続して行われる。成膜の終わりには、第1の電源部5が電力の印加を停止して、その後、第2の電源部7が電力の印加を停止する。これにより、各ワークW上に、化合物の膜が生成される。
[電力の変化]
上記の成膜過程において、第1の電源部5は、記憶部92に記憶された電力の変化態様で、電源制御部91の指示に従って、スパッタ源4のターゲット41に電力を印加する。
ここで、ワークWとターゲット41との位置の変化の例を、図4及び図5に示す。この例では、図4に示すように、回転テーブル31は、平面方向から見て反時計回りに回転する。図5は、一つのターゲット41に対する、一つのワークWの位置の変化のみを示している。この図5(A)に示すように、回転テーブル31の回転に従って、ターゲット41にワークWが接近して行き、図2に示した成膜領域Fに入った後、ターゲット41の一部に、ワークWの一角が重なる。
回転テーブル31が、図5(A)の状態から45°回転すると、図5(B)に示すように、平面方向から見て、ターゲット41にワークWの大半が重なる。さらに、回転テーブル31が45°回転すると、図5(C)に示すように、図5(A)の一角とは対角線上で対向する一角のみが重なった状態となる。さらに、ワークWは、ターゲット41との重なりが無くなった後、図2に示した成膜領域Fから外れる。回転テーブル31の回転に従って、各ワークWと各ターゲット41との位置関係は、上記のような変化を繰り返す。
このような搬送部3によるワークWの移動に従って生じる、各ワークWとターゲット41との位置の変化に応じて、ターゲット41に印加する電力を変える態様の一例を、図6を参照して説明する。なお、図6の横軸は、図5における0°のラインを基準とするワークWの回転角、縦軸は印加する電力の大きさである。
まず、図5(A)に示すように、ワークWの一角がターゲット41に重なる瞬間は、ワークWの回転角は−45°である。この段階では、図6に示すように、第1の電源部5が印加する電力は比較的小さい。この状態から、第1の電源部5は、図5(B)に示すように、ワークWの大半が重なり回転角が0°になるまで、印加する電力を増大させる。回転角0°となった後は、図5(C)に示すように、ワークWの一角がターゲット41から外れる瞬間まで、印加する電力を減少させる。そして、次のワークWが、図5(A)のように、一角がターゲット41に重なるので、再び印加する電力を大きくしていく。
このような電力の変化の態様は、ワークWにおける成膜対象となる表面とターゲット41との距離が短いほど印加する電力を小さくして、距離が長いほど印加する電力を大きくすることに対応している。つまり、図5(A)(C)及びこれに対応する図7(a)(c)に示すように、ワークWが凹状の基板であり、ワークWの一角がターゲット41に重なっている場合、ターゲット41との距離は短くなる。このため、印加する電力は小さくする。そして、図5(B)及びこれに対応する図7(b)に示すように、ワークWの大半がターゲット41に重なっている場合、ターゲット41との距離は長くなる。このため、印加する電力は大きくする。
以上のように、一つのワークWについての電力の増減を1サイクルcとして、一定の振幅及び周期で変化する。これは、回転テーブル31の一回転につき、ワークWに対応する数のサイクルを繰り返すパターンとする。つまり、図8に示すワークWの6個分rにおける変化のパターンが決まっていて、これを一周ごとに繰り返す。
[成膜処理の実験例]
本実施形態による成膜処理と、電力を変化させない場合の成膜処理とを比較した実験例は、以下の通りである。
[ワークの形状]
実験に用いたワークWは、長辺の長さ(X)が210mm、短辺つまり幅(Y)が90mm、厚さが5mmの長方形状の基板である。このワークWは、長辺が略円弧状に湾曲しており、水平な載置面から最高部までの高さhが20mmである。湾曲により最も窪んだ部分の表面と、両縁部との高低差Δは15mmである。ワークWは、図9(A)に示すように、凹状に保持する場合と、図9(B)に示すように、凸状に保持する場合を実験した。
[装置条件]
なお、実験に用いた装置の条件は、以下の通りである。
ターゲット41のサイズはφ127mmである。
スパッタに要した時間は300秒であり、回転速度は60rpmである。
チタン酸化膜の成膜においては、スパッタ源4へのアルゴンガス流量は480sccm、逆スパッタ源6への酸素流量は150sccmである。スパッタ源4への直流の印加電力は、初期電力は1.3kwであり、変化させない場合はそのままで、成膜面が凹状で変化させる場合は1.3kw−2.6kw−1.3kwと2倍の変化をさせ、これと逆に成膜面が凸状で変化させる場合は2.6kw−1.3kw−2.6kwと2倍の変化をさせた。逆スパッタ源6へのRFの印加電力は300Wとした。
シリコン酸化膜の成膜においては、スパッタ源4へのアルゴンガス流量は120sccm、逆スパッタ源6の酸素流量は200sccmである。スパッタ源4への直流の印加電力は、初期電力は1.5kwであり、変化させない場合はそのままで、成膜面が凹状で変化させる場合は1.5kw−3.0kw−1.5kwと2倍の変化をさせ、これと逆に成膜面が凸状で変化させる場合は1.5kw−3.0kw−1.5kwと2倍の変化をさせた。逆スパッタ源6へのRFの印加電力は200Wとした。
[実験結果]
図10〜図17は、本実験による成膜装置による成膜処理の膜厚分布を示す。横軸は、基板の長手方向Xの中心を0とする水平長さ±100mmの位置を示す。縦軸は、基板の中心の膜厚を1とした場合に、短手方向であるY位置0点における膜厚の比率(無単位)を示す。図10〜図13は、ターゲット41に対して凹状に対向する面に成膜した結果であり、図14〜図17は、ターゲット41に対して凸状に対向する面に成膜した結果である。
図10、図11、図14、図15は、チタン酸化膜の成膜例であり、図12、図13、図16、図17は、シリコン酸化膜の成膜例である。そして、図10、図12、図14、図16は、本実施形態のような電力の制御を行なわずに成膜を行った結果であり、図11、図13、図15、図17は、本実施形態の電力の制御を行って成膜した結果である。
図10に示すように、チタン酸化膜の生成において、電力を変化させない場合、膜厚のばらつきを示す成膜分布が±11.2%であるのに対して、図11に示すように、本実施形態の場合、±6.2%に抑えられている。また、図12に示すように、シリコン酸化膜の生成において、電力を変化させない場合、成膜分布が±9.3%であるのに対して、図13に示すように、本実施形態の場合、±3.7%に抑えられている。
さらに、図14に示すように、チタン酸化膜の生成において、電力を変化させない場合、成膜分布が±6.6%であるのに対して、図15に示すように、本実施形態の場合、±5.3%に抑えられている。そして、図16に示すように、シリコン酸化膜の生成において、電力を変化させない場合、成膜分布が±7.2%であるのに対して、図17に示すように、本実施形態の場合、±3.2%に抑えられている。
以上のように、本実施形態によれば、膜厚の均一性が向上することは明らかである。
[効果]
以上のような本実施形態は、スパッタガスG1をプラズマ化させ、成膜材料をワークWに堆積させる成膜装置であって、スパッタガスG1が導入されるチャンバ2と、チャンバ2内に設けられ、ワークWを循環搬送する搬送部3と、ワークWに堆積されて膜となる成膜材料によって形成され、搬送部3によってワークWが移動する経路に対向する位置に設けられたターゲット41を有するスパッタ源4と、ターゲット41に電力を印加する電源部5とを有する。そして、成膜材料が堆積される領域である成膜領域Fを、搬送部3によってワークWが通過する間に、ワークWのターゲット41に対する位置の変化に応じて、第1の電源部5がターゲット41に印加する電力を変化させる電源制御部91とを有する。
このため、ワークWの搬送中に、ターゲット41に対するワークWの位置が変化することにより、ターゲット41とワークWの表面との距離が変化した場合であっても、これに応じて印加電力を制御するため、膜厚の均一性を確保できる。
ワークWの形状に湾曲等がある場合には、ターゲット41とワークWの表面との距離が短いと膜が厚くなり、長いと膜が薄くなる。そして、電力が大きいほど膜が厚くなり、電力が小さいほど膜が薄くなる。このため、ワークWのターゲット41に対する位置と、ワークWとターゲット41との距離の関係が決まっている場合には、ワークWがどの位置にあるかによって電力の大小を変えることにより、膜厚を均一にすることができる。
従って、スパッタリングにより、ワークWを高速に効率良く均一な厚さで成膜することができるとともに、真空蒸着装置のように大型化することなく、小型で省スペースの成膜装置とすることができる。
電源制御部91は、ワークWの位置に応じて電力を変化させることにより、ワークWにおける成膜対象となる面とターゲット41との距離に応じて、第1の電源部5がターゲット41に印加する電力を変化させている。特に、電源制御部91は、距離が短いほど印加する電力を小さく、距離が長いほど印加する電力を大きくしているため、結果として、膜厚を均一にすることができる。
また、電源制御部91は、制御される第1の電源部5の電力を、所定の振幅及び周期で変化させる。これにより、振幅と周期という簡単な設定を行うことにより、膜厚の均一を確保できる。
電源制御部91は、ワークWの循環搬送の1周分において定められた変化のパターンに従って、第1の電源部5がターゲット41に印加する電力を変化させる。ワークWとターゲット41との距離の関係は、一周ごとに同じ関係を繰り返すことになる。このため、一周分の変化のパターンを決定すれば、その後、何周しても、正確な膜厚の調整が可能とある。
搬送部3は、ワークWの搬送方向に対する各ワークWの角度を一定に保持する複数の保持部33を有し、保持部33は、等間隔で配設されている。このため、各ワークWと各ターゲット41との位置の変化による距離の変化の態様は一定となるので、これに応じた電力の変化の態様を一定として、設定が容易となる。
保持部33は、成膜領域Fを通過するワークWが、ターゲット41との距離が最大となる箇所と、最小となる箇所とを通過する位置に、ワークWを保持する。このため、ワークWの全体におけるターゲット41との距離の変化の最大幅を対象として、電力の変化を制御することができるので、ワークW全体としての膜厚の均一性を確保できる。
搬送部3は、保持部33が設けられた回転テーブル31を有する。これにより、簡易な構成で、循環する搬送路Pを形成できる。特に、回転テーブル31の軸の位置が定まれば、移動中のワークWの表面とターゲット41との距離の関係も、一定に維持し易い。
[他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様も含む。
(1)スパッタ源4は、ターゲット41を複数有し、第1の電源部5は、ターゲット41毎に、印加する電力を変化させるタイミングを変えてもよい。この場合、複数のターゲット41は、ワークWの搬送方向に対する角度を変えることにより、成膜領域Fの広狭を変化させることができる。これは、スパッタ源4を回動する構成とすればよい。複数のターゲット41のうち、ワークWが先に接近するターゲット41ほど、印加する電力を上昇させるタイミングを早くする。これは、ターゲット41が3つ以上の場合にも、同様である。
なお、回転テーブル31の外周側は内周側に比べて周長が長い。そのため、成膜対象物は、外周側の方が内周側よりも速くスパッタ源4の下を通過していき、外周側の方が内周側よりも成膜レートが低下する。すなわち、外周側の方が膜厚が薄くなりやすい。このため、複数のターゲット41は、回転の軸から遠い外周側ほど、印加する電力を大きくする。これは、ターゲット41が3つ以上の場合も同様である。
より具体的には、図18に示すように、2つのターゲット41が、搬送方向に直交する方向、つまり半径方向に並んでいる場合には、2つのターゲット41の電力の変化のタイミングは同じである。但し、軸から遠いターゲット41の方に印加する電力を高くする。
また、図19に示すように、2つのターゲット41が搬送方向に斜めに交差する方向に並んでいる場合には、より先にワークWに近づくターゲット41に印加する電力の変化のタイミングを早くする。また、軸から遠いターゲット41の方に印加する電力を高くする。
また、図20に示すように、2つのターゲット41が搬送方向と同方向又は搬送方向の接線方向に並んでいる場合には、より先にワークWに近づくターゲット41に印加する電力の変化のタイミングを早くする。但し、2つのターゲット41の軸に対する距離はほぼ同じであるため、印加する電力は同等とする。
(2)距離を検出するセンサを有し、電源制御部91がセンサに接続され、センサにより検出されたセンサからワークWの表面までの距離に応じて、第1の電源部5が印加する電力を変化させてもよい。
例えば、検出対象までの距離を検出するセンサを、制御装置9に接続する。このセンサは、センサからワークWの表面までの距離を検出できる位置に配置する。例えば、センサとしては、レーザセンサを用いることができる。また、例えば、スパッタ源4の間の真空室21の天井等に設けることができる。「センサから」とは、「所定の基準位置から」を意味し、センサの距離の演算手法により異なる。例えば、センサ下面を所定の基準位置とすることができるが、これには限定されない。
図21、図22は、センサKによるワークWの表面までの距離の計測を示している。図21、図22の(A)(B)は、ワークWの縁部を計測し、(C)は中央部を計測している状態を示す透視側面図である。基板の回転角と電力のグラフの関係は、図5、図6と同様である。図21は、ワークWを凹状に配置した例であるため、縁部までの距離は短く、中央部までの距離は長くなる。図22は、ワークWを凸状に配置した例であるため、縁部までの距離は長く、中央部までの距離は短い。つまり、センサKを、ワークWの表面までの距離が最大となる箇所と、最小となる箇所とを検出する位置に設けてもよい。
センサKとターゲット41の高低差は固定であるため、センサKとワークWとの距離は、ターゲット41とワークWとの距離と比例する。このため、センサKによる距離の検出値に応じて、電力を変えることにより、上記の実施形態と同様の作用効果が得られる。図21、図22に、電力を変える態様を例示している。ワークWとセンサKの距離が短いほど電力は小さく、長いほど電力は大きくしているが、ワークWの曲面に合わせて、電力の上昇と下降が緩やかなカーブとなっている。
かかる態様では、距離の実測値に基づいて、電力を変えているため、ワークWの形状をより正確に反映した精密な膜厚制御が可能となる。さらに、搬入されたワークWが全て保持部33に保持された状態で、回転テーブル31を一周させてセンサKにより距離を検出する。そして、例えば、制御装置9の設定部93が、距離に比例した電力の変化態様を設定し記憶部92に記憶する。この変化態様に従って電源制御部91が第1の電源部5を制御すれば、オペレータの手間を省いて、最適な電力の変化態様による成膜が可能となる。
(3)搬送部3が有する搬送手段は、回転テーブル31には限定されない。搬送部3は、保持部を有する回転ドラムを有してもよい。例えば、図23に示すように、角柱形状の回転ドラム34によって、搬送部3を構成できる。この回転ドラム34は、側面にワークWを保持する保持部35が設けられ、駆動源により軸を中心に回転する。回転ドラム34を収容するチャンバ26内には、ワークWの搬送路に対向する位置に、上記と同様のスパッタ源4、逆スパッタ源6等が設けられている。
かかる態様では、回転ドラム34の回転によるワークWの搬送方向と、ワークWの配置方向を平行とすることができる。例えば、上記の実施形態と同様に、長方形状のワークWとした場合、ワークWの長辺と搬送方向が平行となる。このため、回転テーブル31と比べて、搬送方向に直交する方向の膜厚のばらつきを低減することができる。なお、回転ドラム34は、角形ドラム状に限らず、円形ドラム状であってもよい。
(4)搬送部3により同時搬送されるワークWの数、保持部33、35の数は、少なくとも1つであればよく、上記の実施形態で例示した数には限定されない。つまり、1つのワークWが循環して成膜を繰り返す態様でもよく、2つ以上のワークWが循環して成膜を繰り返す態様でもよい。従って、例えば、搬送部3が、搬送路Pの搬送方向に対するワークWの角度を一定に保持する保持部33、35を1つ有する態様であってもよい。スパッタ源4、逆スパッタ源6の数は、単数であっても複数であってもよく、上記の実施形態で例示した数には限定されない。また、1つのスパッタ源4に具備されるターゲット41の個数も、単数であっても、複数であってもよい。また、複数のターゲット41の材料を異ならせて、成膜対象物に複合膜、あるいは異なる材料の多層膜を形成する構成であってもよい。
(5)成膜対象となるワークWの形状も、上記の実施形態で示したものには限定されない。成膜対象となる面が凹状又は凸状に形成されていて、保持部33、35に保持される側の面が平坦面であってもよい。例えば、成膜対象となる面がすり鉢状又は皿状に窪んだ凹面鏡の製造にも適している。また、成膜対象となる面が凹凸を繰り返すワークWであってもよい。この場合、凹凸によるターゲット41との距離の変化態様がわかっていれば、それに合わせて印加電力を変化させればよい。また、上記のように、センサKにより距離を測定すれば、凹凸に合わせた電力を正確に印加できる。
搬送路Pに対応して複数のターゲット41を有することを利用して、成膜領域F毎に、ターゲット41とワークWとの位置関係を変えて、幅方向の膜厚分布を向上させることもできる。例えば、各ターゲット41の高さ、角度等の位置を変える、各保持部33、35に保持されるワークWの高さ、角度等の位置を変える等が考えられる。
1 プラズマ処理装置
2 チャンバ
3 搬送部
4 スパッタ源
5 第1の電源部
6 逆スパッタ源
7 第2の電源部
8 ロードロック部
9 制御装置
10 検出器
21 真空室
22 排気口
23 排気部
24 導入口
25 第1のガス供給部
26 チャンバ
31 回転テーブル
32 モータ
33 保持部
35 保持部
41 ターゲット
42 バッキングプレート
43 電極
44 カバー
61 筒形電極
62 導入口
63 第2のガス供給部
90 機構制御部
91 電源制御部
92 記憶部
93 設定部
94 入出力制御部
95 入力装置
96 出力装置
E 排気
F 成膜領域
G1 スパッタガス
G2 反応ガス
K センサ
W ワーク
なお、本実施形態の処理対象物であるワークWは、例えば、方形の基板である。この基板は、図9に示すように、側面視(長辺に対向する方向から見た状態)で略円弧状となる湾曲を有している。図9(A)に示すように、ワークWが凹状、つまり略U字状となるように保持された場合には、ワークWの成膜対象となる面は、窪んだ側の窪み面となる。また、図9(B)に示すように、ワークWが凸状、つまり略逆U字状又はドーム状となるように保持された場合には、ワークWの成膜対象となる面は、伸張した側の隆起面となる。また、ワークWの成膜対象となる面は、ワークWの表面が露出した面であっても、すでに単数又は複数の膜が形成された面であってもよい。
保持部33に保持されたワークWは、回転テーブル31の回転により、回転テーブル3の周方向に円を描く軌跡で真空室21内を移動する。このように、ワークWが移動する軌跡が、ワークWの搬送路Pである。以下、単に「搬送方向」という場合には、「搬送路PにおけるワークWの移動方向」、「回転テーブル31の周方向」を意味する。単に「半径方向」という場合には、「回転テーブル31の半径方向」を意味する。
また、筒形電極61には導入口62が設けられている。この導入口62には、第2のガス供給部63が接続されている。第2のガス供給部63は、配管及び図示しない反応ガスG2を導入するための反応ガスG2のガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。この第2のガス供給部63によって、導入口62から筒形電極61内部に反応ガスG2が導入される。反応ガスG2は、例えば、窒素、酸素とすることができる。なお、逆スパッタ源は、エッチングを行うことも可能である。この場合、反応ガスG2は、例えば、アルゴン等の不活性ガスを用いることができる。
[第2の電源部]
第2の電源部7は、筒形電極61に高周波電圧を印加するためのRF電源である。回転テーブル31は、接地されたチャンバ2と同電位であり、筒形電極61側に高電圧を印加することにより、電位差を発生させている。
制御装置9は、プラズマ処理装置1の各部を制御する装置である。この制御装置9は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、真空室21へのスパッタガスG1および反応ガスG2の導入および排気に関する制御、スパッタ源4及び逆スパッタ6の電源の制御、回転テーブル31の回転の制御などに関しては、その制御内容がプログラムされており、PLCやCPUなどの処理装置により実行されるものであり、多種多様な成膜仕様に対応可能である。
排気部23は、真空室21を排気して減圧することにより真空にする。第1のガス供給部25は、スパッタガスG1を、ターゲット41の周囲に供給する。第2のガス供給部63は、反応ガスG2を、筒電極61内に供給する。
このような電力の変化の態様は、ワークWにおける成膜対象となる表面とターゲット41との距離が短いほど印加する電力を小さくして、距離が長いほど印加する電力を大きくすることに対応している。つまり、図5(A)、(C)及びこれに対応する図7(a)、(c)に示すように、ワークWが凹状の基板であり、ワークWの一角がターゲット41に重なっている場合、ターゲット41との距離は短くなる。このため、印加する電力は小さくする。そして、図5(B)及びこれに対応する図7(b)に示すように、ワークWの大半がターゲット41に重なっている場合、ターゲット41との距離は長くなる。このため、印加する電力は大きくする。
電源制御部91は、ワークWの循環搬送の1周分において定められた変化のパターンに従って、第1の電源部5がターゲット41に印加する電力を変化させる。ワークWとターゲット41との距離の関係は、一周ごとに同じ関係を繰り返すことになる。このため、一周分の変化のパターンを決定すれば、その後、何周しても、正確な膜厚の調整が可能とる。
図21、図22は、センサKによるワークWの表面までの距離の計測を示している。図21、図22の(A)、(B)は、ワークWの縁部を計測し、(C)は中央部を計測している状態を示す透視側面図である。基板の回転角と電力のグラフの関係は、図5、図6と同様である。図21は、ワークWを凹状に配置した例であるため、縁部までの距離は短く、中央部までの距離は長くなる。図22は、ワークWを凸状に配置した例であるため、縁部までの距離は長く、中央部までの距離は短い。つまり、センサKを、ワークWの表面までの距離が最大となる箇所と、最小となる箇所とを検出する位置に設けてもよい。

Claims (15)

  1. スパッタガスをプラズマ化させ、成膜材料をワークに堆積させる成膜装置であって、
    スパッタガスが導入されるチャンバと、
    前記チャンバ内に設けられ、ワークを循環搬送する搬送部と、
    前記ワークに堆積されて膜となる前記成膜材料によって形成され、前記搬送部によって前記ワークが移動する経路に対向する位置に設けられたターゲットを有するスパッタ源と、
    前記ターゲットに電力を印加する電源部と、
    前記成膜材料が堆積される領域である成膜領域を前記ワークが通過する間に、前記ワークの前記ターゲットに対する間隔、方向又は平面方向から見た重なり面積の変化に応じて、前記電源部が前記ターゲットに印加する電力を変化させる電源制御部と、
    を有することを特徴とする成膜装置。
  2. 前記電源制御部は、前記ワークにおける成膜対象となる面と前記ターゲットとの垂直方向の距離に応じて、前記電源部が前記ターゲットに印加する電力を変化させることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
  3. 前記電源制御部は、前記距離が短いほど印加する電力を小さく、前記距離が長いほど印加する電力を大きくすることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
  4. 前記電源制御部は、前記電源部が印加する電力を、所定の振幅及び周期で変化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜装置。
  5. 前記電源制御部は、前記ワークの循環搬送の1周分において定められた変化のパターンに従って、前記電源部が前記ターゲットに印加する電力を変化させることを特徴とする請求項4記載の成膜装置。
  6. 前記搬送部は、前記ワークの搬送方向に対する前記ワークの角度を一定に保持する複数の保持部を有し、前記保持部は、等間隔で配設されていることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
  7. 前記保持部は、前記成膜領域を通過するワークが、前記ターゲットとの距離が最大となる箇所と、最小となる箇所とを通過する位置に、前記ワークを保持することを特徴とする請求項6記載の成膜装置。
  8. 前記搬送部は、前記保持部が設けられた回転テーブルを有することを特徴とする請求項7記載の成膜装置。
  9. 前記搬送部は、前記保持部が設けられた回転ドラムを有することを特徴とする請求項7記載の成膜装置。
  10. 前記スパッタ源は、前記ターゲットを複数有し、
    前記電源部は、ターゲット毎に、印加する電力を変化させるタイミングを変えることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
  11. 距離を検出するセンサを有し、
    前記電源制御部は、前記センサに接続され、前記センサにより検出された前記ワークの表面までの距離に応じて、前記電源部が印加する電力を変化させることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
  12. 前記センサは、前記ワークの表面までの距離が最大となる箇所と、最小となる箇所とを検出する位置に設けられていることを特徴とする請求項11記載の成膜装置。
  13. スパッタガスが導入されたチャンバ内において、搬送部により基板を循環搬送し、
    この循環搬送される前記基板の移動経路に対向して配置されたターゲットに、電源部が電力を印加することにより、チャンバ内のスパッタガスをプラズマ化して、基板に成膜材料を堆積させ、
    前記搬送部による前記基板の移動に従って生じる基板とターゲットとの位置の変化に応じて、前記電源部がターゲットに印加する電力を変えることを特徴とする成膜基板製造方法。
  14. 前記電源部が、前記基板における成膜対象となる面と前記ターゲットとの距離に応じて、前記スパッタ源に印加する電力を変化させることを特徴とする請求項13記載の成膜基板製造方法。
  15. 前記距離が短いほど印加する電力を小さく、前記距離が長いほど印加する電力を大きくすることを特徴とする請求項14記載の成膜基板製造方法。
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