JP2010270388A - 成膜装置及び成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】同一の成膜材料を用いて繰り返し成膜を行った場合でも、各対象物における膜厚を均一化することのできる成膜装置を提供する。
【解決手段】ターゲット101を用いて基板100の表面に成膜を行う成膜装置1は、ターゲット101が載置される載置面を有する材料設置部4と、基板100を材料設置部4に載置されたターゲット101に対向させて支持する基板ホルダ6と、基板ホルダ6の材料設置部4に対向する面の第一の領域及び第二の領域の成膜環境を測定可能に配置されたセンサ部8と、センサ部8の測定結果に基づいて第一の領域及び第二の領域の成膜環境を比較し、両者の差が所定値以上であるときに材料設置部4と基板ホルダ6との位置関係を変化させるよう制御する制御部10とを備えたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜を成膜するための成膜装置及び成膜方法に関する。
成膜装置を用いてレンズや基板等の対象物の表面に薄膜の成膜を行う場合、通常は、対象物を保持するホルダに多数の対象物を保持させて成膜を行う。このとき、ホルダの中心付近と周辺付近では成膜速度が同一でなくなることがあり、これを放置すると、ホルダの中心付近に保持された対象物と周辺付近に保持された対象物とでは、成膜された膜厚が不均一となり、品質のばらつきの原因となる。
この問題を解決するための装置として、特許文献1に記載の多層膜光学フィルター形成装置が提案されている。この装置においては、対象物である基板の周方向に複数個の膜厚モニターを設置して蒸着速度分布を把握し、その結果をフィードバックして蒸着源を制御している。具体的には、電子線の電流値、電子線の平均的位置、電子線のスキャン形状等を制御することにより、蒸着速度分布の均一化を行っている。
特開2004−61810号公報
ホルダの中心付近と周辺付近との成膜速度差が小さい場合は、特許文献1の装置を用いもある程度成膜速度の均一化は可能である。
しかしながら、同一の成膜材料を用いて何回も繰り返して成膜を行うと、成膜材料表面の高さが部分的に低くなるように成膜材料の形状が変化する。これによって成膜材料の挙動が変化し、ホルダの中心付近と周辺付近との成膜速度差はより大きくなる。このような状況下では、特許文献1に記載の装置では成膜速度を均一化することが困難となるという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、同一の成膜材料を用いて繰り返し成膜を行った場合でも、各対象物における膜厚を均一化することのできる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様は、成膜材料を用いて対象物の表面に成膜を行う成膜装置であって、前記成膜材料が載置される材料設置部と、前記対象物を前記材料設置部に載置された前記成膜材料に対向させて設置する対象物設置部と、前記対象物設置部の前記材料設置部に対向する面の第一の領域及び第二の領域の成膜環境を測定可能に配置されたセンサ部と、前記センサ部の測定結果に基づいて前記第一の領域及び前記第二の領域の成膜環境を比較し、両者の差が所定値以上であるときに前記材料設置部と前記対象物設置部との位置関係を変化させるよう制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
前記制御部は、前記第一の領域及び前記第二の領域の成膜環境の差が所定範囲以上であるときに、前記対象物設置部を前記材料設置部の前記載置面に対して平行方向に移動させて前記材料設置部と前記対象物設置部との位置関係を変化させてもよいし、前記対象物設置部を前記材料設置部の前記載置面に対して垂直方向に移動させて前記材料設置部と前記対象物設置部との位置関係を変化させてもよい。
本発明の第二の態様は、同一の成膜材料を用いて、対象物設置部に保持された複数の対象物の表面に複数回連続して成膜を行う成膜方法であって、前記対象物の表面に成膜を行う成膜工程と、前記成膜工程後に、前記対象物設置部の第一の領域の成膜環境と、前記対象物設置部の第二の領域の成膜環境とを比較する比較工程と、前記比較工程において検出された前記第一の領域の成膜環境と、前記第二の領域の成膜環境との差が所定値以上のときに、前記対象物設置部と前記成膜材料との位置関係を変化させる調節工程とを備えることを特徴とする。
前記調節工程においては、前記対象物設置部が前記成膜材料の前記対象物設置部に対向する面に対して平行方向に移動されてもよいし、前記成膜材料の前記対象物設置部に対向する面に対して垂直方向に移動されてもよい。
本発明の成膜装置及び成膜方法によれば、同一の成膜材料を用いて繰り返し成膜を行った場合でも、各対象物における膜厚を均一化することができる。
本発明の第1実施形態の成膜装置の構成を示す図である。 同成膜装置を用いて同一ターゲットで成膜を繰り返したときの基板ホルダ中央部および周辺部の膜厚の推移を示すグラフである。 同成膜装置における対象物支持部と材料保持部との偏心量と同基板ホルダ周辺部と中央部との膜厚比の関係を示すグラフである。 同成膜装置を用いた成膜方法の流れを示すフローチャートである。 同成膜装置の使用時の動作を示す図である。 本発明の第2実施形態の成膜装置の構成を示す図である。 同成膜装置における対象物支持部と材料保持部との垂直距離と同基板ホルダ周辺部と中央部との膜厚比の関係を示すグラフである。 同成膜装置の使用時の動作を示す図である。
本発明の第1実施形態の成膜装置について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の成膜装置1を示す概略図である。
成膜装置1は、スパッタリングによる成膜を行う装置であって、真空槽2と、真空槽2の内部上方に設けられてレンズや基板等の成膜の対象物を保持する対象物支持部3と、真空槽2内部の下部に設けられた材料設置部4と、対象物支持部3と材料設置部4との間に設けられたシャッター5とを備えて構成されている。
真空槽2の側面には、導入ポート15が貫通して設けられており、真空槽2への酸素ガスやアルゴンガス等のガスの導入に使用される。
対象物支持部3は、対象物が設置される略円盤状の基板ホルダ(対象物設置部)6と、基板ホルダ6を駆動させるための駆動部7と、基板上に成膜された薄膜の成膜速度を測定するセンサ部8とを備えている。
基板ホルダ6は回転軸9を中心に回転可能に構成されており、基板ホルダ6の下側(材料設置部4に対向する側)の面に成膜対象となる基板100が設置される。駆動部7は、モータ等の公知の構成からなり、基板ホルダ6を回転軸9回りに回転させるとともに、基板ホルダ6を回転軸9と直交する方向に移動させて、基板ホルダ6と材料設置部4の水平方向(図1に示す左右方向)における位置関係を変化させることが可能である。
センサ部8は、真空槽2に支持されて基板ホルダ6の中心付近に配置された第1センサ8Aと、真空槽2に支持されて基板ホルダ6の周縁付近に配置された第2センサ8Bとの2つの水晶センサを備える。各センサ8A、8Bは、それぞれ基板ホルダ6の中央部(第一の領域)6A及び周辺部(第二の領域)6B付近に取り付けられており、中央部6A及び周辺部6Bに保持された基板100の成膜速度を測定可能である。各センサ8A、8Bは駆動部7の動きを制御するための制御部10に接続されている。
材料設置部4は、成膜材料が設置されるバッキングプレート11と、バッキングプレート11の下方に設けられたマグネットユニット12とを備えた公知の構成となっている。バッキングプレート11上には、適宜選択された材質のターゲット(成膜材料)101が載置される。マグネットユニット12には電源13が接続されており、電源13からマグネットユニット11に電圧を印加することにより、基板100の表面にターゲット101の材質からなる薄膜を形成することができる。
シャッター5は真空槽2の下部にその軸周りに回動自在に設けられた回動軸17に支持固定される。シャッター5は、スパッタリング環境が安定するまでターゲット101と基板100との間を遮蔽し、基板100への成膜が行われないよう制御する。
以上が成膜装置1の構成に関する説明である。成膜装置1の使用時の動作については後述するが、成膜装置1を用いてターゲット101を交換せずに複数回継続して成膜工程を繰り返すと、平坦であったターゲット101の表面(対象物支持部3に対向する面)から分子が離脱することによって当該表面に凹凸が生じる。その結果、分子又は原子の飛び方が変化することによって、基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bとにおける成膜速度の差が大きくなり、中央部6Aと周辺部6Bとに保持された基板100上に同一時間で形成される膜厚が均一でなくなる。
図2は、成膜装置1を用いてターゲット101を交換せずに成膜を複数回繰り返したときの各バッチにおいて、基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bとに保持された基板100上に同一時間に形成された薄膜の膜厚の推移を示すグラフである。図2に示すように、成膜を繰り返した場合、基板ホルダ6の中央部6Aよりも周辺部6Bにおいて膜厚の低下の度合いが大きく、バッチを重ねるごとに両者の差が大きくなっていることがわかる。
図2の検討においては、図1に示す基板ホルダ6の下面Tとバッキングプレート11の上面(載置面)Sに載置されたターゲット101の当初の表面との間の距離であるT−S間距離(垂直距離)D1と、基板ホルダ6の水平方向における中心と、材料設置部4の水平方向における中心との距離である偏心量D2とが一定であるためにターゲット101の表面形状の変化に伴って成膜速度及び膜厚に変化が生じている。
そこで、本実施形態の成膜装置1においては、制御部10が駆動部7を制御して、基板ホルダ6を水平方向、すなわちバッキングプレート11の載置面と平行な方向に移動する。これによって基板ホルダ6と材料設置部4上のターゲット101との水平方向における位置関係が変化し、それに伴って中央部6A及び周辺部6Bにおける成膜速度及び膜厚が変化する。
図3は、成膜装置1を用いて1バッチ成膜を行い、その後、成膜材料101を新品と交換することを繰返し、垂直距離D1を変えずに偏心量D2を様々に変化させて基板ホルダ6の周辺部6Bに保持された基板100上の膜厚と中央部6Aに保持された基板100上の膜厚との比を検討した結果を示すグラフである。図3に示すように、偏心量D2を大きくするほど周辺部6Bの膜厚が大きくなることがわかる。
図2に示すように、成膜装置1においては、バッチを繰り返すごとに周辺部の膜厚が低下するため、偏心量D2を増加させるように制御部10が駆動部7を制御すれば、基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bとにおける成膜速度環境差を小さくして各領域における成膜厚を均一に近づけることができる。
上記の構成を備えた成膜装置1の動作について、以下に説明する。
図4は、成膜装置1を用いた成膜方法の流れを示すフローチャートである。本成膜方法は、成膜を行う工程(成膜工程)S10と、成膜後に基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bとにおける成膜環境を比較する工程(比較工程)S20及びS40と、両者の環境における差が所定値以上であるときに基板ホルダ6を移動する工程(調節工程)S50とを備えている。
まずステップS10の成膜工程において、ユーザは基板ホルダ6上に基板100を設置し、ターゲット101をバッキングプレート11の載置面上に載置する。このとき、シャッター7は基板100とターゲット101との間に位置させる。そして、図示しない排気手段によって真空槽2の排気を行い、真空槽2内を真空にする。
続いてアルゴン等の不活性ガスを導入ポート15から導入してから、電源13から電力をマグネットユニット12に印加してプラズマを発生させる。発生したプラズマによってターゲット101に対し、公知のプレスパッタリングが行われる。必要に応じて酸素等の反応性ガスが導入ポート15から導入される。スパッタリング環境が安定してから回転軸9をその軸回りに回転させて基板ホルダ6を回転させる。
回動軸17をその軸回りに回動させてシャッター5を開き、基板100とターゲット101との間の遮蔽物をなくすと、基板100の表面にスパッタリングによって薄膜が形成される。図1に示す基板ホルダ6の中央部6Aに保持された基板100A及び周辺部6Bに保持された基板100B上の成膜速度の値は、それぞれセンサ部8の第1センサ8A及び第2センサ8Bによって計測され、制御部10に送られる。
成膜工程S10が終了すると、回動軸17が回転してシャッター5が再び基板100とターゲット101との間を遮蔽し、処理はステップS20に進む。
続くステップS20では、成膜工程S10における第1センサ8A及び第2センサ8Bの計測した成膜速度値にもとづいて、基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bにおける成膜工程中の平均成膜速度が各領域6A、6Bの成膜環境を示す指標として取得される。
ステップS30では、同一のターゲット101を用いて継続して成膜が行われるかどうかを作業者の制御部10への入力等に基づいて制御部10が判断する。継続した成膜が行われない場合は、制御部10による基板ホルダ6の移動は必要ないため、処理はNoに進んで成膜作業を終了する。一方、継続した成膜が行われる場合は、基板ホルダ6の位置修正の必要性を判断するため、処理はステップS40に進む。
ステップS40において、制御部10は、取得された平均成膜速度を比較し、基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bにおける成膜速度差、すなわち成膜環境の差が所定値以上であるかどうかを判断する。この所定値は、要求される膜厚の精度に応じて適宜決定され、制御部10に設定されてよい。
成膜速度差が所定値未満である場合、制御部10による偏心量D2の調節は行われないので、処理はNoに進んで一旦停止する。不図示のロードロック式基板ホルダ搬送機構を用いて真空中で基板ホルダ6の基板100を未処理のものと交換後、処理はステップS10に戻り、次のバッチの成膜工程が行われる。
成膜速度差が所定値以上であった場合は、偏心量D2の調節が必要と判断され、処理はYesに進んでステップS50に移る。
ステップS50では、制御部10が駆動部7を制御し、図5に示すように、偏心量D2が大きくなるように基板ホルダ6が図5の左側に移動される。このときの基板ホルダ6の水平方向への移動量は、常に所定の移動量、例えば3ミリメートル(mm)であってもよいし、是正すべき成膜速度差の大きさとそれに対応した偏心量D2の調整量を予めテーブル等として制御部10に入力しておき、制御部10が適宜当該テーブルを参照して移動量を決定するように構成されてもよい。このテーブルは、基板ホルダ6の移動量に伴い、新たなテーブルをつくり、移動量を決定するようにするとよい。
基板ホルダ6が水平方向に移動した後で成膜装置1は一旦停止し、上述のロードロック式基板ホルダ搬送機構を用いて真空中で基板ホルダ6の基板100を未処理のものと交換後、処理はステップS10に戻って次のバッチの成膜工程が行われる。
本実施形態のスパッタリング装置1によれば、ターゲット101を交換せずに継続して成膜が行われる場合、バッチが終了するごとに、センサ部8の取得値に基づいてステップS20で得られた基板ホルダ6の中央部6A及び周辺部6Bの平均成膜速度がステップS40で比較される。これによって、中央部6Aと周辺部6Bとの成膜環境が比較され、両者の差が所定値以上である場合に、ステップS50の調節工程において制御部10が駆動部7を介して基板ホルダ6を水平方向に移動させる。その結果、基板ホルダ6と材料設置部4との偏心量D2が変化して中央部6Aと周辺部6Bとの成膜速度差が小さくなり、両者の成膜環境が均一化されて基板100A及び100B上に形成される薄膜の膜厚も均一化される。
したがって、同一ターゲットを用いて繰り返し成膜を行う場合でも、基板ホルダ6に対する当該ターゲットの設置位置に関わらず基板100上に均一に成膜を行うことができ、成膜の再現性、精度を向上させることができる。
本実施形態においては、同一ターゲットを用いて成膜を継続するか否かの判断が行われるステップS30の前に、当該判断に関わらず常に成膜工程S10における平均成膜速度がステップS20において取得される例を説明した。しかし、本実施形態の成膜装置1はこれには限定されず、例えばステップS10の成膜工程を継続したままにステップS20を行い、続いてステップS40に相当する、基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bとの間の成膜速度差が所定値以上であるかの判断を行い、許容範囲外の場合には基板ホルダ6を移動させるステップS50の調節工程を、成膜を継続したまま行うように構成されてもよい。
次に本発明の第2実施形態について、図6を参照して説明する。本実施形態の成膜装置21と上述の第1実施形態の成膜装置1との異なるところは、駆動部による対象物支持部の動作の態様である。なお、以下の説明において、成膜装置1と共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図6は成膜装置21を示す図である。成膜装置21の多くの構成は上述した成膜装置1と共通しているが、対象物支持部3に取り付けられた駆動部22は、基板ホルダ6を回転軸9回りに回転可能であると共に、基板ホルダ6を回転軸9と平行な方向に移動させることが可能に構成されている。すなわち、成膜装置21においては偏心量D2を変化させることはできない代わりに、基板ホルダ6を材料設置部4の載置面と垂直な方向に移動させて垂直距離D1を変化させることによって、基板ホルダ6及び保持された基板100と、材料設置部4及び載置されたターゲット101との位置関係を変化させることができる。
図7は、成膜装置21を用いて1バッチ成膜を行い、その後、成膜材料101を新品と交換することを繰返し、偏心量D2を変えずに垂直距離D1を様々に変化させて基板ホルダ6の周辺部6Bに保持された基板100B上の膜厚と中央部6Aに保持された基板100A上の膜厚との比を検討した結果を示すグラフである。図7に示すように、垂直距離D1を長くする、すなわち、基板ホルダ6を材料設置部4から遠ざけるほど周辺部6Bの膜厚が大きくなることがわかる。
したがって、成膜装置21を用いた本実施形態の成膜手順においては、ステップS50の調節工程において、例えば周辺部6Bにおける成膜速度と中央部6Aにおける基板100Bの成膜速度との差が所定値以上である場合は、図8に示すように、制御部10が駆動部22を介して基板ホルダ6を成膜装置21の上側に移動させることによって、基板ホルダ6の中央部6Aと周辺部6Bとにおける成膜速度差を小さくして、成膜環境を均一化させることができる。
本実施形態の成膜装置21においても、制御部10が対象物支持部3と材料設置部4との位置関係を変化させることによって、対象物支持部3に保持された複数の基板100間の成膜環境を均一に近づけることができる。その結果、成膜の精度を向上させることができる。
また、駆動部22に対象物支持部3を水平方向に移動させるための機構を設ける必要がないため、駆動部の構成がより簡素になり、より低コストで成膜装置を構成することができる。
(実施例)
以上説明した本発明の成膜装置及び成膜方法について、実施例を用いてさらに説明する。本実施例においては、平均成膜速度に基づいて算出された膜厚比を成膜環境を示す指標として用いた。
本実施例では、第2実施形態の成膜装置21と同一の構成を有する成膜装置21Aを用いて、基板100上にMgFの単層膜を100±5nmとなるように20回繰返し成膜した。なお、このMgFの単層膜は、反射防止膜として用いられるものである。
MgFの単層膜を成膜する前に、内径φ120mm、内径高さ0.35cmの石英製の皿からなる材料設置部4の中に粒径1〜2mmのMgFの成膜材料101を85gだけ配設し、成膜材料101の表面を平坦化させた。さらに、対象物支持部3に基板100を搭載した基板ホルダ6を取り付けた。基板100としては、φ20mm、厚さ1mmのガラス基板を用いた。
垂直距離D1及び偏心量D2はいずれも100mmに設定し、駆動部22が回転軸9を中心に30rpmで基板ホルダ6及び基板100を回転させるよう制御部10の設定を行った。
次に、不図示の真空ポンプを用いて、5×10−4Paまで真空槽2内を排気した。その後、導入ポート15から酸素ガスを4×10−1Paまで導入した。さらに、(高周波)電源13から不図示のマッチングボックスを介して、マグネットユニット12へ1000Wの高周波電力を供給し、プラズマを発生させた。この状態で、シャッター5を100秒間開け、基板100上にMgF単層膜をセンサ部8で監視しながら100nmになるまで成膜する成膜工程(ステップS10)を行った。このとき、センサ部8Aで検出する成膜速度が1nm/秒で一定となるように電源13が制御された。
次に、成膜された基板100を保持した基板ホルダ6を、不図示の移動手段により真空槽2から移動させ、この基板ホルダ6を搬送している間に、平均成膜速度を取得する工程(ステップS20)を行い、次のバッチを行うか判断する(ステップS30)。このとき、まだ成膜を20回行ってない場合はステップS40へ進み、新規に成膜されていない基板100を保持した基板ホルダ6を真空槽2の上部へ配設させた。
ステップS20で得られた平均成膜速度から膜厚比を算出し、中心部6Aと周辺部6Bの膜厚の差が5%未満、すなわち膜厚比(周辺部6B/中心部6A)が0.95より大きく1.05未満の場合は次の成膜工程S10へ進むよう制御部10を設定した。
一方、中心部6Aと周辺部6Bの膜厚の差が5%以上の場合のうち、膜厚比が1.05以上の場合は垂直距離D1を小さくし、膜厚比が0.95より小さい場合は垂直距離D1を大きくするように基板ホルダ6を移動させるよう制御部10を設定した。なお、基板ホルダ6の移動距離は、得られた膜厚比の値にもとづいて決定されるよう設定された。
以上のようなスパッタリング成膜と、成膜された基板100を真空槽2から取出し新規の成膜されていない基板100を真空槽2へ配設する作業と、この対象物支持部3の搬送作業と同時に膜厚比の1との差分値が所定値以上のときに基板ホルダ6を移動する作業を繰返し行うことにより、真空槽2を大気にさらすことなく真空中で連続的に20回MgF単層膜を100nm成膜した。また、上述の制御部10の設定に基づいて、成膜が10回行われた後に、垂直距離D1が105mmに増加するように基板ホルダ6が5mm上方に移動された。
各回において成膜されたMgF単層膜の反射率特性をオリンパス株式会社製レンズ反射率測定器(商品名USPM)で測定し、これらの反射率測定結果から物理膜厚を算出した。これらMgF単層膜の物理膜厚はいずれも100±5nmの範囲内であり、20回という多数回の成膜であっても成膜毎に安定していることが確認された。
以上のように、本実施例においては、基板ホルダ6と成膜材料101の位置関係を制御することで、基板ホルダ6の中心部6Aに設置された基板100Aの膜厚が基板ホルダ6の周辺部6Bに設置された基板100Bの膜厚と略同一となり、同一時間で繰返し成膜した時の基板上の物理膜厚を均一にすることができた。また、複数の基板上の膜厚分布の再現性が良くなり、生産効率を向上させることができた。
以上、第1及び第2実施形態、並びに実施例を用いて説明したように、本発明の成膜装置によれば、同一の成膜材料を用いて複数回成膜を行う場合でも、センサ部で計測した第一の領域と第二の領域の成膜環境の差が所定値以上であると、制御部が材料設置部と対象物設置部との位置関係を変化させることによって第一の領域と第二の領域の成膜環境の差が小さくなり、アウトプットとしての膜厚を均一に近づけることができる。
また、本発明の成膜方法によれば、同一の成膜材料を用いて複数回成膜を行う場合でも、比較工程において比較された第一の領域と第二の領域の成膜環境の差が所定値以上であると、調節工程において材料設置部と対象物設置部との位置関係が変化されて第一の領域と第二の領域の成膜環境の差が小さくなり、アウトプットとしての膜厚を均一に近づけることができる。
以上、本発明の各実施形態及び実施例について説明したが、本発明の技術範囲は上記説明の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した各実施形態においては、スパッタリングによって成膜を行う成膜装置の例を挙げたが、本発明は真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト法等の他の方法によって成膜を行う成膜装置にも適用可能である。
また、上述した各実施形態においては、センサ部8が水晶センサで構成され、平均成膜速度差が制御ターゲットとされて成膜環境の比較及び調整が行われる例を説明したが、これに代えて、成膜速度を積分した膜厚値や実施例に示した膜厚比の値等を制御ターゲットとしてもよい。さらに、膜厚値を制御ターゲットとする場合は、水晶センサに代えて光学式の膜厚センサが用いられてもよい。加えて、成膜速度が選択した成膜材料に鑑みて好適な所定の範囲内の値となるように、センサ部のセンサの出力値に基づいて成膜速度値そのものが成膜速度差と併せて制御されてもよい。
また、上述した各実施形態においては、基板ホルダ周縁部の成膜速度が上昇するように対象物設置部と材料設置部との位置関係が調節される例を説明したが、これは一例である。したがって、成膜を繰り返すと逆に基板ホルダ中央部における成膜速度が低下する等の場合は、これに応じて、上述の態様とは逆の制御を行うことによって各部位の成膜速度を均一に近づけることができる。適切な制御態様については、上述の図3及び図7に示すような実験によって偏心量や垂直距離と成膜速度等との関係を明らかにし、当該実験結果に基づいて制御部における制御態様を決定すればよい。
また、成膜環境を調節する対象となる対象物設置部の第一及び第二の領域についても、上述の基板ホルダ中央部及び周辺部に限定されず、装置の成膜特性によって適宜設定されてよい。
加えて、成膜環境を調節するための対象物設置部の移動態様は、上述のような水平方向及び垂直方向のいずれか一方に限定されるものではない。したがって、これらを適宜組み合わせて2軸方向に移動可能に対象物設置部を構成することによって、より好適に成膜環境の調節が可能になるとともに、装置の寸法等の設計パラメータが調節機能に制限を加える事態を起きにくくすることができる。
1、21 成膜装置
4 材料設置部
6 基板ホルダ(対象物設置部)
6A 中央部(第一の領域)
6B 周辺部(第二の領域)
8 センサ部
10 制御部
100、100A、100B 基板(対象物)
101 ターゲット(成膜材料)

Claims (6)

  1. 成膜材料を用いて対象物の表面に成膜を行う成膜装置であって、
    前記成膜材料が載置される載置面を有する材料設置部と、
    前記対象物を前記材料設置部に載置された前記成膜材料に対向させて設置する対象物設置部と、
    前記対象物設置部の前記材料設置部に対向する面の第一の領域及び第二の領域の成膜環境を測定可能に配置されたセンサ部と、
    前記センサ部の測定結果に基づいて前記第一の領域及び前記第二の領域の成膜環境を比較し、両者の差が所定値以上であるときに前記材料設置部と前記対象物設置部との位置関係を変化させるよう制御する制御部と、
    を備えたことを特徴とする成膜装置。
  2. 前記制御部は、前記第一の領域及び前記第二の領域の成膜環境の差が所定範囲以上であるときに、前記対象物設置部を前記材料設置部の前記載置面に対して平行方向に移動させて前記材料設置部と前記対象物設置部との位置関係を変化させることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  3. 前記制御部は、前記第一の領域及び前記第二の領域の成膜環境の差が所定範囲以上であるときに、前記対象物設置部を前記材料設置部の前記載置面に対して垂直方向に移動させて前記材料設置部と前記対象物設置部との位置関係を変化させることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  4. 同一の成膜材料を用いて、対象物設置部に設置された複数の対象物の表面に複数回連続して成膜を行う成膜方法であって、
    前記対象物の表面に成膜を行う成膜工程と、
    前記成膜工程後に、前記対象物設置部の第一の領域の成膜環境と、前記対象物設置部の第二の領域の成膜環境とを比較する比較工程と、
    前記比較工程において検出された前記第一の領域の成膜環境と、前記第二の領域の成膜環境との差が所定値以上のときに、前記対象物設置部と前記成膜材料との位置関係を変化させる調節工程と、
    を備えることを特徴とする成膜方法。
  5. 前記調節工程において、前記対象物設置部が前記成膜材料の前記対象物設置部に対向する面に対して平行方向に移動されることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
  6. 前記調節工程において、前記対象物設置部が前記成膜材料の前記対象物設置部に対向する面に対して垂直方向に移動されることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
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CN105908138A (zh) * 2015-02-24 2016-08-31 亚威科股份有限公司 反应性溅射装置

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