JP4474109B2 - スパッタ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板ホルダーに取り付けられた凹凸形状を有する基板に成膜する際の膜の均質及び膜厚分布特性を所望の膜厚分布に成膜するスパッタ装置及びスパッタ方法で、特に、基板が大口径レンズの様な基板に均質膜で且つ所望の膜厚分布を持った多層反射防止膜や多層膜ミラー、X線反射多層膜の成膜装置及び成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から広く用いられている平行平板型のマグネトロンスパッタは、真空槽内に、薄膜の材料となるターゲットと、基板ホルダーに取り付けられた基体とを対向するように配置した上で、プラズマを生成してターゲットをスパッタリングし、スパッタリングによって叩き出されたスパッタリング粒子を基体上に堆積させることにより、基体上に薄膜を成膜する装置で、他の手法に比べ簡便で高速成膜、大面積成膜、ターゲット寿命等に優れるという特徴がある。
【0003】
この様なスパッタ装置で、近年、光学膜分野に於いてスパッタリングの検討がなされ、特にステッパー等の半導体露光焼き付け装置では焼き付け性能を高める為に高NA化が進められレンズ口径の大型化やレンズに入射する光線の斜入射特性の改善や、更に次世代のX線(EUV)露光装置では大口径で精度の高い傾斜膜(斜入射特性改善)等の要求が出ている。
【0004】
13.4nmのX線波長を使用したモリブデン(Mo)とシリコン(Si)のX線多層ミラーでは、反射特性の帯域幅が非常に狭い為ミラー面に入射するX線の入射角度がかわると反射特性が低下する。この改善策として、反射ミラー面内に於いてX線入射角度に合った反射ミラー特性にする方法がとられている。従って反射ミラー面内に於いて、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の膜厚分布を高精度に分布制御する必要がある。
【0005】
膜厚分布を制御する方法として、遮蔽マスクを使用しその遮蔽マスクの形状と移動速度分布を制御して膜厚分布を制御する方法(特許文献1)や、基体を蒸発源に対し平行なX又はXY方向に移動しながら成膜する方法(特許文献2)更に自公転運動している基板がターゲット上を通過する時の公転速度制御で傾斜膜成膜(特許文献3)等が提案されている。
【0006】
ところが、露光装置などに使用される光学素子は、短波長化し、形状も非球面、自由曲面、放物面などと異形状な物もあり多様化している。その為、従来にまして高精度な膜厚制御が要求される。
【0007】
この様に、非常に高精度な膜厚分布制御が必要な光学素子を具現化する為には下記の様な成膜装置及び成膜方法が必要である。
(1)いろいろな凹凸形状に対し膜厚分布制御が可能である
(2)複数ターゲット(材料の放出角度分布の違いによる膜厚分布が異なる)に対して対応が可能であること
(3)スパッタ粒子の斜入射膜は膜密度が低いので水分吸着で屈折率が変化し光学特性が変化する。従ってスパッタ粒子の斜入射成分を極力抑えた成膜装置であること。
(4)ゴミの発生や残留ガス、特に水の影響を極力抑える為にロードロック方式の成膜が可能であること。
(5)真空装置内に複雑な移動機構を導入しない成膜装置であること。
【0008】
上述の遮蔽マスクを使用しその遮蔽マスクの形状と移動速度分布を制御して膜厚分布を制御する方法(特許文献1)では、上記(1)及び(2)を満足させるには1形状のマスクで対応するには難しく、真空槽を大気に開放してマスクを交換する作業が必要となる。真空槽を大気に開放すると真空槽内に付着した膜に大気中の水が吸着し膜の応力が増加し膜はがれが発生しやすくなり成膜時に(4)の影響が出る。又、ターゲットと基体間の基体近傍に遮蔽マスクが設置されているのでゴミの発生源となり好ましくない。
【0009】
さらに、上述の遮蔽マスクを使用しその遮蔽マスクの形状と移動速度分布を制御して膜厚分布を制御する方法(特許文献1)では、回転対称系の膜しか付けることはできず、異形状には対応できない。また、自公転運動している基板がターゲット上を通過する時の公転速度制御で傾斜膜成膜(特許文献3)する方法でも同様に、回転対称の膜しか付けることはできない。
【0010】
また、基体を蒸発源に対し平行なX又はXY方向に移動しながら成膜する方法
【特許文献2】では、凹凸形状の曲率の大きな及び/または複雑な形状を持つ基体の周辺部の成膜では、基体に入射するスパッタ粒子の斜入射成分が大きく膜密度の低い膜になり特性シフト等の問題があった。更に真空装置内に複雑な移動機構が必要で好ましくない。
【特許文献1】
特開平10−30170号公報
【特許文献2】
特開平9−213634号公報
【特許文献3】
USP6010600号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来とは異なった方法で、いろいろな形状の基体に光学薄膜を均質且つ高精度に所望の膜厚分布を得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のスパッタ装置及びスパッタ方法は、凹凸又は平面形状を有する基板に物理的気相成長にて膜を成膜するスパッタ装置であって、成膜中に基板とターゲットの相対位置関係等を独立に移動走査出来る制御軸が3軸以上有する。
前記の基板とターゲットの相対位置関係等を独立に移動制御出来る3軸は、基板を回転する軸と、少なくとも1つ又は複数のカソードで構成されたカソード回転軸と、回転する基板を走査するスキャン軸である。
【0013】
前記3軸の制御軸をXYZ立体図で配置関係を表現すると(図1,2参照)カソード回転軸はターゲット面に平行なY軸上で、Z軸にオフセットされたX’軸上に回転中心を持ちXZ面上に走査するスキャン軸とスキャン軸でXZ面上を移動するユニット内に組み込まれた基板を回転する回転軸を有する配置関係を有する。
【0014】
更に、前記の3軸とターゲットと基板間の距離を可変可能なTS軸、合計4軸を有する。
前記4軸の制御軸をXYZ立体図で配設関係を表現するとカソード回転軸はターゲット面に平行なY軸上で、Z軸にオフセットされたX’軸上に回転中心を持ちXZ面上に走査するスキャン軸とスキャン軸でXZ面上を移動するユニット内に組み込まれた基板を回転する回転軸とターゲット基板間距離を可変するTS制御軸を有する配置関係である以上の手段で達成される。
【0015】
又、本発明の成膜方法は、上記のスパッタ装置においてカソード回転軸と基板回転軸とスキャン軸とTS制御軸の内少なくとも2軸以上の制御された複数条件の移動速度を1回又は複数回繰り返しスキャンして成膜する方法や2軸以上の制御された複数条件位置の滞在時間を1回又は複数回繰り返しスキャンして成膜する方法で達成される。
【0016】
また、本発明のスパッタ装置は、様々形状を有する基板に物理的気相成長にて膜を成膜するスパッタ装置であって、成膜中に基板とターゲットの相対位置関係等を独立に移動走査出来る制御軸が3軸以上有し、かつ成膜のレートおよび成膜領域を自由に制御できる機構を有する。
【0017】
前記の基板とターゲットの相対位置関係等を独立に移動制御出来る3袖の一つは、基板を走査するスキャン軸である。
【0018】
前記の成膜のレートおよび成膜領域を自由に制御できる機構は、可動型のマスク及び可動型のコリメータである。
【0019】
本発明の成膜方法は、上記スパッタ装置において他の軸と同期して、マスク及び/またはコリメータを制御することによって、自在な膜厚分布を様々な形状を持つ基板に成膜することで達成される。
【0020】
【作用】
本発明の構成は、(XYZ立体図で配置関係を表現すると)少なくとも1つ又は複数のカソードで構成されたカソード回転軸はターゲット面に平行なY軸上で、Z軸にオフセットされたX’軸上に回転中心を持ちXZ面上に走査するスキャン軸とスキャン軸でXZ面上を移動するユニット内に組み込まれた基板を回転する回転軸とターゲット基板間距離を可変するTS制御軸を有する。この構成で基板ホルダーに凹凸面形状基板がセットされた場合、例えば外径φ300mmで曲率半径R=300mmの凸レンズが回転する基板ホルダーにセットされた場合で説明すると、回転したレンズがXZ面上で且つターゲット側の半径のどの成膜領域においてもレンズ法線がターゲット成膜面とほぼ垂直となる様にカソード回転角度(Tθ)とZ軸にオフセットされたX’軸上に回転中心を持ちXZ面上に走査するスキャン軸角度(Sθ)の2軸の角度で達成出来る。
【0021】
この様にターゲットとレンズ内の成膜領域が向かい合う複数条件を設定し、その条件の滞在時間を制御しながら1回もしくは複数回スキャンしながら成膜することでスパッタ粒子の垂直入射成分を多く含んだ膜で且つ所望の膜厚分布を得ることが出来る。同様に、前記複数条件を連続に可変してその2軸の可変速度を制御しながら1回もしくは複数回スキャンすることでも同様の効果を得る事が可能である。
【0022】
更に、ターゲットと基板間の距離を可変可能なTS制御軸を付加する事でターゲットレンズ間の距離が一定となる様に制御しながら前記の様なスキャン成膜を行えば成膜条件が同一となり均質な膜を得ながら膜厚分布の制御が可能となり更に好ましい。
(前記の作用は凸形状レンズで説明したが、凹形状レンズやターゲット材を異種材料に切り替えた時にスパッタ粒子の放出角度分布がかわってもカソード回転角度(Tθ)、スキャン軸角度(Sθ)、ターゲットと基板間の距離条件を最適化すれば同様の効果が得られる。)
又、前記構成はロードロック室を有したスパッタ装置の成膜室チャンバーの真空雰囲気内でやや複雑な動作が必要であるが、本発明では、ターゲット回転軸と基板回転軸は磁気シールを用いた回転軸で、スキャン軸は回転中心部分の周りをベローズで覆う方式を用い、ターゲットと基板間の距離を可変可能なTS軸はベローズを用いた移動機構でリーク等が発生しづらい信頼性の高い機構が比較的簡単に得る事が出来た。
【0023】
従って、従来技術のマスク移動の方式や基体をX、Y軸平行移動の方式では凹凸形状を有する基体の成膜では、レンズ周辺部の領域に於いて、スパッタ粒子の斜入射成分が多い膜密度の低い膜が形成されたが、本発明のスパッタ装置では、ターゲット材料による放出角度分布や基板形状(凹凸)が変わってもカソード回転角度(Tθ)、スキャン軸角度(Sθ)、ターゲットと基板間の距離条件を最適化することでレンズ全面均質且つ、高精度に所望の膜厚分布を有するレンズを得る事が出来た。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態によるスパッタ装置の正面断面図であり、図2は、平面断面図である。
【0026】
図1及び図2に示す実施形態のスパッタ装置の基本構成は、真空チャンバー1を排気する排気系2、スパッタプロセスガスを供給するガス供給系3と複数のカソードにスパッタ電力を供給する電源4で構成されている。電源4は、カソード毎に電源が接続されていてもよいし、1台の電源で切り替え器を用い使用するカソードのみに電力を供給するタイプでも良い。真空チャンバー内部には、複数のターゲットが取り付けられたカソードユニット5と基体6を回転保持しながらスキャンするスキャンユニット7で構成されている。
更に、チャンバー内部を詳しく説明すると、カソードユニット5はチャンバー1の上面及び底面から磁気シール8,9を介してカソード回転軸10,11で固定され、磁気シール9の下部にはカソード駆動系12が配設されている。多角柱のカソードユニット5の側面には、電気的に絶縁された複数のカソード13a、b、c、dが配設され、異材料のターゲット14a、b、c、dが取り付けられている。又、各カソードにはシャッター15a、b、c、dが配設され独立に開閉できる。回転軸10、11は中空になっていて、その内部には、カソード冷却水や、スパッタ電力供給ケーブルやスパッタリングガス、シャッター駆動用エアー等を供給している。この様な構成にすることで所望のターゲットをスパッタしながら回転移動が可能となる。更に、カソード駆動系12の駆動モーターをサーボモーターを用いることで高精度に位置制御しながら成膜が可能となる。
【0027】
スキャンユニット7は、基体6を保持する基板ホルダー16が基板回転軸17の先端に固定されている。この回転軸17は磁気シール18を介して基板回転させる基板回転駆動系19と、T−Sベローズ20で大気と隔離しながらターゲット基板間距離を可変させるT−S駆動系21と、大気と隔離しながら曲げが可能なSθベローズ22の中心部分に回転中心を持ちユニット全体をチャンバー底面と平行に首振り走査させるスキャン駆動系23で構成させている。この様な構成にすることでスパッタ中に基板回転しながらターゲット基板間距離を可変しながらスキャンして成膜することが可能となる。更に前記のカソード駆動系と同様に各制御軸の駆動モーターをサーボモーターにすることで高精度に位置制御しながら成膜が可能となる。
【0028】
チャンバー内部の各ユニットの配置関係は、カソードユニット7の回転軸をY軸とし、ターゲット14の中心を通るチャンバー底面に平行な軸をX、Z軸とすると、基板回転軸17はX軸に対しZ軸方向にオフセットしたX’軸上に基板回転軸を有し、更にスキャン軸はX’軸上に回転中心を有しスキャンユニット全体をXZ面上のスキャン動作をする。
【0029】
図8は、本発明の別の実施の形態によるスパッタ装置の断面図である。
【0030】
図8に示す実施形態のスパッタ装置の基本構成は、真空チャンバー31を排気する排気系32、回転するスパッタリングターゲツト4がある。また、基体3を回転保持しながらスキャンするスキャンユニット35がある。基板とターゲットの間には、成膜領域を変えるための可動マスク36と固定マスク37を有し、成膜粒子の方向およびレートを決めるコリメータ38がある。このコリメータは回転可能になっており、この角度を変えることにより、成膜レートを可変できる。
【0031】
スパッタリングは、イオン源を用いたイオンビームスパッタでも、ターゲットに電力を供給するマグネトロンスパッタ方式でもどちらでも良い。
【0032】
【実施例】
(実施例1)
本発明のスパッタ装置を用いた実際の多層成膜は、下記の手順で行われる。
スキャン条件設定
スキャン条件の待機時間又は移動速度の最適化
【0033】
成膜工程
▲1▼のスキャン条件設定は、本スパッタ装置のCAD図面の平面図を用いて各ステップ条件のターゲット角度Tθ、T-S間距離、スキャン軸角度Sθを求める方法とプログラムを作成してT-S間距離が一定でターゲット中心と基板上の各ステップを結ぶ線の各交点上の法線との角度sin(tθ)+sin(sθ)が最小となる最適化計算によるTθ、Sθ条件を求める方法がある。本実施例では、CAD図面から求める方法で説明する。
まず、CAD図面上で基板ホルダーに取り付けられたレンズの半径よりも約2割程度大きさの半径方向を10〜20分割し、その分割された点をレンズ中心からP0、P1、P2・・・P20とする。ターゲット中心とレンズ表面上のP0、P1、・・・・P20の各T-S間距離を100mmに一定にしてレンズ表面上のP0、P1、・・・・P20の法線とターゲット中心の法線がほぼ一致する各ターゲット角度Tθと各スキャン軸角度Sθを求める。
【0034】
▲2▼上記▲1▼で求めた各ポイントのターゲット角度Tθ、T-S間距離、スキャン軸角度Sθ条件で膜厚分布シミュレーションを用いそれぞれのターゲット材の膜厚分布を算出する。算出した各ポイントの膜厚分布に待機時間を掛けた合計が所望の膜厚分布となる様に最小二乗法を用いて待機時間を最適化する。
【0035】
▲3▼成膜工程では、上記の各ターゲット材料の最適化条件の成膜速度から所望の膜厚となる様に各ポイントの待機時間をスパッタ装置に入力する。次に最適化条件された形状のレンズを基板ホルダーに取り付けロードロック室を介して真空チャンバー内のスキャンユニットにセットする。
【0036】
真空チャンバー内を排気ユニットで十分に排気後、設定された各ポイントのターゲット角度Tθ、T-S間距離、スキャン軸角度Sθ条件で最適化された待機時間で成膜を開始する。
【0037】
成膜後、この基板を取り出し膜厚分布を計測した結果、所望の膜厚分布が得られなかった場合、そのずれ量を補正した待機時間の最適化を行えば容易に所望の膜厚分布を得ることが出来る。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様の構成で各ステップの膜厚シミュレーション結果で得られた所望の膜厚分布となる最適条件からターゲット角度Tθ、T-S間距離、スキャン軸角度Sθの各移動速度を連続的に可変して条件設定しても実施例1と同様の効果が得られる。
【0039】
次に凹凸基板の膜厚分布制御性比較として基体を蒸発源に対し平行なX又はXY方向に移動しながら成膜する方法(特許文献2)と本発明であるターゲット角度Tθ、T-S間距離、スキャン軸角度Sθを制御した方式の比較シミュレーションを行った。
ターゲットはφ5インチ、T-S間距離100、120、150mm、基板中心から半径方向に15mmピッチで16ステップ移動、基板は外径φ300mmで曲率300mmの凸形状基板で回転動作している形態で成膜圧力は散乱の影響が少なくなる放電維持限界0.1Pa程度を想定して散乱効果は無視した。更に放出角度分布は余弦則で計算した。
【0040】
図3は上記凸レンズを蒸発源に対し平行なX方向に15mmピッチで16ステップ移動した従来例方式の場合の各ステップにおける膜厚分布を表したものである。この各ステップの膜厚分布及び成膜速度に待機時間の積の和が所望の100%(全体が均一な膜厚分布)と115%(レンズ中心から周辺に向かって直線的に115%迄増加する)の膜厚分布になる様に待機時間を最適化して求めた膜厚分布が図4である。
【0041】
図5は本発明の構成でシミュレーション計算した各ステップの膜厚分布を示したもので、基本条件は前記と同じであるがターゲット角度Tθ、スキャン軸角度Sθ、及びT−S間距離をCAD図面から求めた。レンズの半径方向を16分割し、その分割された点をレンズ中心からP0、P1、P2・・・P15とします。T-S間距離を100、120、150mmに一定にしてレンズP0、P1、・・・・P10の法線とターゲット中心の法線がほぼ一致する各ターゲット角度Tθと各スキャン軸角度Sθを求めた値を用いた。
【0042】
図6は上記同様に、図5の各ステップの膜厚分布及び成膜速度に待機時間の積の和が100%(全体が均一な膜厚分布)と115%(レンズ中心から周辺に向かって直線的に115%迄増加する)の膜厚分布になる様に待機時間を最適化して求めたものである。
【0043】
又、図7は全体の待機時間に対する各ステップに於ける待機時間を比率で表した表である。図3、5及び図7でわかるように従来方式では、レンズ外周部の膜厚はスパッタ粒子の基板への斜入射成分が多い点とTS間距離が大きくなる影響で薄くなり、その結果、外周部を成膜する待機比率が高くなり、更に成膜面積の小さい中心部も同時に成膜されてしまうので膜厚均一性も本発明に比べ悪い。尚、本発明でターゲット前面に中空円柱状のチムニーを設けると更に斜入射成分がカットされより膜厚分布や膜質均一化が図れ更に好ましい。
【0044】
(実施例3)
図9は、本実施例の装置形態である。
図9に示すスパッタ装置の基本構成は、真空チャンバー31を排気する排気系32、回転するスパッタリングターゲット34がある。また、基体33を回転保持しながらスキャンするスキャンユニット35がある。基板とターゲツトとの間には、成膜領域を変えるための可動マスク36と固定マスク37を有し、成膜粒子の方向およびレートを決めるコリメータ38がある。このコリメータは回転可能になっており、この角度を変えることにより、成膜レートを可変できる。スパッタリングは、イオン源39を用いたイオンビームスパッタ方式である。
【0045】
本装置を用いて、成膜する手順を説明する。
真空チャンバー31に基板33を導入し、10−4Pa以下の圧力まで待機する。その後、基板33を回転し、イオンビーム39とターゲット34を所望の角度にし、成膜開始する。その際、スキャンユニットおよび、可動マスク36を動かし、基板33上の膜厚分布を制御する。また、成膜レートをコリメータ8によって制御し、均一性を高めている。
この装置を用いた結果、±0.2%以下の精度で所望の膜厚を得ることができた。
【0046】
(実施例2)
図10は、本実施例の装置形態である。
図10に示すスパッタ装置の基本構成は、真空チャンバー31を排気する排気系32、回転するスパッタリングターゲット34がある。また、回転放物面形状を持つ基体33をスキャンするスキャンユニット35がある。基板とターゲットの間には、成膜領域を変えるための可動マスク36および40と固定マスク37を有し、成膜粒子の方向およびレートを決めるコリメータ38がある。このコリメータは回転可能になっており、この角度を変えることにより、成膜レートを可変できる。スパッタリングは、イオン源39を用いたイオンビームスパッタ方式である。
【0047】
本装置を用いて、成膜する手順を説明する。
真空チャンバー31に基板3を導入し、10−4Pa以下の圧力まで待機する。その後、基板33を回転し、イオンビーム39とターゲット34を所望の角度にし、成膜開始する。その際、スキャンユニットおよび、可動マスク36および37を動かし、基板33上の膜厚分布を制御する。また、成膜レートをコリメータ38によって制御し、均一性を高めている。
この装置を用いた結果、±0.2%以下の精度で所望の膜厚を得ることができた。
【0048】
ここで、以下に本発明の実施態様を示す。
(実施態様1) 凹凸又は平面形状を有する基板に物理的気相成長にて膜を成膜するスパッタ装置に於いて、成膜中に基板とカソードの相対位置関係等を独立に可変出来る制御軸が3軸以上有することを特徴とするスパッタ装置。
(実施態様2) 前記基板とカソードの相対位置関係等を独立に可変出来る少なくとも3個の制御軸は、基板を回転する軸と、1または2以上のカソードで構成されたカソード回転軸と、回転する基板を走査するスキャン軸と、であることを特徴とする実施態様1に記載のスパッタ装置。
(実施態様3) 前記カソード回転軸はターゲット面に平行なY軸上で、Z軸にオフセットされたX’軸上に回転中心を持ちXZ面上に走査するスキャン軸と、スキャン軸でXZ面上を移動するユニット内に組み込まれた基板を回転する回転軸と、を有する配置関係であることを特徴とする実施態様2に記載のスパッタ装置。
【0049】
上記実施態様1ないし3のいずれかによれば、 いろいろな形状の基体に光学薄膜を均質且つ高精度に所望の膜厚分布を得ることができる。
(実施態様4) 前記基板とカソードとの相対位置関係等を独立に可変制御出来るカソード対面側に配置された基板を回転する軸と、1又2以上のカソードで構成されたカソード回転軸と、回転する基板を走査するスキャン軸の3軸と、更にターゲット基板間の距離を可変可能なTS制御軸と、を有することを特徴とする実施態様2に記載のスパッタ装置。
(実施態様5) 前記カソード回転軸は、さらに、ターゲット基板間距離を可変するTS制御軸を有する配置関係であることを特徴とする実施態様2または4のスパッタ装置。
【0050】
上記実施態様4または5によれば、ターゲットレンズ間の距離が一定となる様に制御しながら前記の様なスキャン成膜を行えば成膜条件が同一となり均質な膜を得ながら膜厚分布の制御が可能となる。
(実施態様6) 実施態様1ないし5のいずれかに記載のスパッタ装置において、カソード回転軸と基板回転軸とスキャン軸とTS軸制御軸の内少なくとも2軸以上の制御された複数条件の移動速度を1回又は複数回繰り返しスキャンして成膜することを特徴とするスパッタ成膜方法。
(実施態様7) 前記カソード回転軸と基板回転軸とスキャン軸とTS制御軸の内少なくとも2軸以上の制御された複数条件位置の滞在時間を1回又は複数回繰り返しスキャンして成膜することを特徴とする実施態様6に記載のスパッタ成膜方法。
【0051】
上記実施態様6または7によれば、スパッタ粒子の垂直入射成分を多く含んだ膜で且つ所望の膜厚分布を得ることが出来る。同様に、前記複数条件を連続に可変してその2軸の可変速度を制御しながら1回もしくは複数回スキャンすることでも同様の効果を得る事ができる。
(実施態様8) 自由な曲面形状を有する基板に物理的気相成長にて膜を成膜するスパッタ装置であり、成膜中に基板とカソードの相対位置関係を独立に可変出来る制御軸を3軸以上有することを特徴とするスパッタ装置において、相対位置関係の制御軸とは独立に成膜中にレートまたは成膜領域、またはその両方を可変できる機能を1つ以上備えたことを特徴とするスパッタ装置。
(実施態様9) 前記成膜中にレートまたは成膜領域、またはその両方を可変できる機能とは、可動型のマスクであることを特徴とする実施態様8に記載のスパッタ装置。
(実施態様10) 前記成膜中にレートまたは成膜領域、またはその両方を可変できる機能とは、コリメータの角度を変え、開口率を制御することであることを特徴とする実施態様8に記載のスパッタ装置。
(実施態様11) 実施態様9及び10に記載のスパッタ装置において、前記成膜中にレートまたは成膜領域、またはその両方を可変できる機能とは、前記可動型のマスクとコリメータの角度を変え、開口率を制御する複数の機能を組み合わせていることを特徴とする実施態様8に記載のスパッタ装置。
(実施態様12) 実施態様8に記載のスパッタ装置において、前記基板とカソードの相対位置関係等を独立に可変出来る3個以上の制御軸の一つは、基板を走査する軸であり、かつその走査軸と連動して成膜中にレートまたは成膜領域、またはその両方を可変できる機能を1つ以上備えたことを特徴とする実施態様8ないし11のいずれかに記載のスパッタ装置。
(実施態様13) 前記基板を走査する軸とは、直線的に走査するスキャン軸であることを特徴とする実施態様12に記載のスパッタ装置。
【0052】
上記実施態様8ないし13のいずれかによれば、レンズ、ミラー等の様々な形状を有する高性能な光学部品を基板とする成膜プロセスにおいて、成膜中にレートまたは成膜領域、またはその両方を可変できる機能を付加することにより、所望の膜厚分布を有する成膜を効率的に行なうことができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明は上述のとおり構成されているスパッタ装置及び成膜方法なので、以下に記載するような効果を奏する。
【0054】
レンズ等の凹凸形状を有する高性能な光学部品を基板とする成膜プロセスにおいて、各ステップのターゲット角度Tθ、スキャン軸角度Sθ条件を最適化してスパッタ粒子の垂直入射成分を主とした部分成膜領域を走査速度制御された連続又は待機時間制御されたステップスキャン走査することでレンズ面内に膜密度の高い均質膜が得られ且つ所望の膜厚分布を有する反射防止膜等の成膜を効率的に行なうことができる。
【0055】
さらに、レンズ、ミラー等の様々な形状を有する高性能な光学部品を基板とする成膜プロセスにおいて、成膜中にレートまたは成膜領域、またはその両方を可変できる機能を付加することにより、所望の膜厚分布を有する成膜を効率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるスパッタ装置の正面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態によるスパッタ装置の平面断面図である。
【図3】従来方式の各ステップに於ける膜厚分布(φ300、凸形状、曲率300レンズ)である。
【図4】従来方式の各ステップの待機時間を最適化したときの膜厚分布(φ300、凸形状、曲率300レンズ)である。
【図5】本発明の各ステップに於ける膜厚分布(φ300、凸形状、曲率300レンズ)である。
【図6】本発明の各ステップの待機時間を最適化したときの膜厚分布(φ300、凸形状、曲率300レンズ)である。
【図7】最適化した時の待機時間である。
【図8】本発明の別の実施の形態によるスパッタ装置の概略図である。
【図9】本発明の実施例3の形態によるスパッタ装置の概略図である。
【図10】本発明の実施例4の形態によるスパッタ装置の概略図である。
【符号の説明】
1 真空チャンバー、
2 排気系、
3 スパッタプロセスガスを供給するガス供給系、
4 スパッタ電力を供給する電源、
5 複数のターゲットが取り付けられたカソードユニット、
6 基体、
7 スキャンユニット、
8,9 磁気シール、
10,11 カソード回転軸、
12 カソード駆動系、
13a,b,c,d カソード、
14a,b,c,d ターゲット、
15a,b,c,d シャッター、
16 基板ホルダー、
17 基板回転軸、
18 磁気シール、
19 基板回転させる基板回転駆動系、
20 T−Sベローズ、
21 ターゲット基板間距離を可変させるT−S駆動系、
22 Sθベローズ、
23 スキャン駆動系、
31 真空チャンバー、
32 排気系、
33 基体、
34 ターゲット
35 スキャンユニット、
36 可動マスク、
37 固定マスク、
38 開口率および開口方向調整板(コリメータ)、
39 イオンガン、
40 可変マスク。

Claims (7)

  1. 凹凸形状を有する基板に真空チャンバー内で物理的気相成長にて膜を成膜するスパッタ装置に於いて、
    前記真空チャンバーの内部に配置されターゲットを保持し、第1の回転軸を有し、該第1の回転軸を中心に前記ターゲット前記基板が対向するように回転する第1の駆動手段によって回転するカソードユニットと、前記真空チャンバーの内部に配置され、前記基板を前記ターゲットに対向するように保持する基板保持ユニットとを有しており、
    前記基板保持ユニットは第2の回転軸を有し、該第2の回転軸を中心に前記基板を軸回転する第2の駆動手段と、前記第2の回転軸上に回転中心を持つ第3の回転軸を有し、前記第3の回転軸を中心に前記基板を首振り走査する第2の駆動手段とを有していて、スパッタの際に、基板表面上の複数点いずれかの法線とターゲット中心の法線とが一致するように前記カソードユニットの第1の回転軸と基板保持ユニットの第3の回転軸とが、一方の回転軸の回転に連動して他方の回転軸が回転する機構と、前記基板保持ユニットは、前記基板を前記X軸方向に駆動することで、前記基板と前記ターゲットとの距離をスパッタの際に一定に調整する第4の駆動手段を備えていることを特徴とするスパッタ装置。
  2. 前記カソードユニットは、複数のターゲットを保持しており、前記基板に対向するターゲットを変更する回転機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタ装置。
  3. 前記第2の回転軸はX軸方向であり、前記第1の回転軸はY軸方向であり、前記第2の回転軸と前記第1の回転軸はZ方向にオフセットしていることを特徴とする請求項2に記載のスパッタ装置。
  4. 前記基板保持ユニットは、複数のベローズにより、前記真空チャンバーに取り付けられており、前記第2、第3の駆動機構の駆動手段は、前記ベローズを介して、前記真空チャンバーの外部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のスパッタ装置。
  5. 前記カソードユニットと前記基板保持ユニットの間には、成膜レートまたは成膜領域を可変にする調整機構が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のスパッタ装置。
  6. 前記調整機構は可動型のマスクであることを特徴とする請求項5に記載のスパッタ装置。
  7. 前記調整機構は角度を変更可能なコリメータであることを特徴とする請求項5に記載のスパッタ装置。
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