JP2016060746A - 水溶性フィルム、包装袋、内容物放出体、及び水溶性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂と、亜硫酸水素塩と、を含有する原料を製膜してなる水溶性フィルムである。ポリビニルアルコール系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩を添加している。このようにすると、原料を加温状態にて所定時間保持した後に、製膜しても、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制される。
また、この効果は、亜硫酸水素塩に特有の効果であり、亜硫酸塩を用いた際には得られない効果である。
【選択図】なし
Description
薬剤を個別に包装する用途では、薬剤の使用に際して、その都度計量する必要がないことから、使用者にとって非常に好都合である。よって、この用途における水溶性フィルムの市場規模が拡大していくことが期待されている。
この技術では、2種類の可塑剤と亜硫酸塩を含有させることによって、製膜時の着色が少なく、かつ、薬剤と接触しても経時的な着色の増大が少ない水溶性フィルムが得られることが開示されている。
そして、この新規な水溶性フィルムは、従来の水溶性フィルムよりも優れた水溶性を有するという予想外の事実を見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
ポリビニルアルコール系樹脂と、亜硫酸水素塩と、を含有する原料を製膜してなる水溶性フィルムである。
前記亜硫酸水素塩は水溶性低下防止剤であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性フィルムである。
前記ポリビニルアルコール系樹脂と、前記亜硫酸水素塩と、を含有する前記原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性フィルムである。
請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムから形成されたことを特徴とする包装袋である。
請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムによって内容物を包んでなり、水に触れることにより内容物を放出可能な内容物放出体である。
ポリビニルアルコール系樹脂と、亜硫酸水素塩と、を含有する原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜することを特徴とする水溶性フィルムの製造方法である。
本発明の包装袋は、優れた水溶性を有する水溶性フィルムを用いているから、内容物を適切に放出できる。
本発明の内容物放出体は、優れた水溶性を有する水溶性フィルムを用いているから、内容物を適切に放出できる。
本発明の水溶性フィルムの製造方法によれば、優れた水溶性を有する水溶性フィルムを製造することができる。
〔1〕水溶性フィルム
本実施形態の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」という)と、亜硫酸水素塩と、を含有する原料を製膜してなるものである。
本実施形態で用いられるPVA系樹脂としては、特に限定されず、公知のPVA系樹脂を用いることができる。すなわち、ビニルエステル系化合物を重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化して得られる樹脂を幅広く用いることができる。本実施形態では、PVA系樹脂を1種のみならず、2種以上併用して用いることもできる。
溶解性の観点から、アニオン性基変性PVA系樹脂が好ましい。アニオン性基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
変性PVA系樹脂の変性量は、変性ユニットの含有量が0.1〜10モル%が好ましく、0.5〜8モル%が更に好ましく、1〜6モル%が特に好ましい。水への溶解性の点で0.1モル%以上が好ましく、樹脂の生産性やコストの観点から10モル%以下が好ましい。
例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類の完全アルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン、ジアクリルアセトンアミド等が挙げられる。
尚、上記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定される。
本実施形態で使用する亜硫酸水素塩は、亜硫酸水素イオンを有する塩であれば、特に限定されない。例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも水溶性フィルムの溶解性の観点から、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。亜硫酸水素塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態において、亜硫酸水素塩は水溶性フィルムの水溶性低下防止剤として用いられている。
亜硫酸水素塩の水溶性フィルム中の含有量(総量)は、特に限定されない。例えば、PVA系樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部が更に好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。この範囲内の含有量であれば、水溶性の改善効果が十分得られるとともに、十分なフィルム強度が得られるからである。
〔可塑剤〕
本実施形態では、原料に可塑剤を含有させることができる。可塑剤としては、特に限定されず、公知の可塑剤を適用できる。例えば、グリセリン、ジグリセリン等のポリグリセリン、グルコース、フルクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール等の糖や、糖アルコール、低分子量ポリエチレングリコール(分子量:600以下)、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の多価アルコール系可塑剤が挙げられる。可塑剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
可塑剤の水溶性フィルム中の含有量(総量)は、特に限定されない。例えば、PVA系樹脂100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、5〜40質量部が更に好ましく、8〜30質量部が特に好ましい。この範囲内の含有量であれば、可塑効果が得られるとともに、可塑剤がフィルム表面にブリードすることも抑制されるとともに、十分なフィルム強度が得られるからである。
本実施形態では、原料に界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、特に限定されず、公知の界面活性剤を適用できる。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤(陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤)、非イオン性界面活性剤、高分子界面活性剤を適用できる。界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態では、原料に種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、必要に応じて着色剤、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体等が用いられる。
有機フィラーとしては、特に限定されないが、澱粉、メラミン系樹脂等の各種樹脂等が挙げられる。
フィラーの含有量については、特に限定されない。PVA系樹脂100質量部に対して0〜100質量部が好ましく、0.1〜50質量部が更に好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。フィラーを添加することにより、水溶性フィルムのアンチブロッキング性が向上したり、フィラーは水溶性フィルムの溶解補助剤としても働く場合がある。
また、原料には水を添加してもよい。水の添加量については、特に限定されない。通常、PVA系樹脂100質量部に対して25〜10000質量部であり、40〜1000質量部が更に好ましい。この範囲内であれば、水溶性フィルムの製膜効率が向上するからである。
〔水溶性フィルムの厚み等〕
水溶性フィルムの厚みは、特に限定されない。10〜100μmが好ましく、20〜100μmが更に好ましく、30〜90μmが特に好ましい。この範囲内の厚みであれば、水溶性フィルムの強度を適度に保ちつつ、優れた水溶性も発揮されるからである。
水溶性フィルムの表面の形状は特に限定されない。例えば、平坦(プレーン)でもよいし、フィルムの片面又は両面にエンボス模様や梨地模様等を施してもよい。
水溶性フィルムの溶解性の評価は、次の試験方法によるものである。この方法により溶解時間を測定し、下記式にて原料の加温24時間当たりの溶解時間の変化率を算出する。
この変化率は、例えば、原料を85℃で加温した場合であって、厚み75μmの水溶性フィルムを用いた場合には、0.001≦R≦1.4が好ましく、0.001≦R≦1.3が更に好ましく、0.001≦R≦1.2が特に好ましい。
(式) R=(S2−S1)÷(T2−T1)×24
加温24時間当たりの溶解時間の変化率:R
加温時間:T1(h)
加温時間:T2(h)(但し、T1<T2)
加温時間T1の原料を用いたフィルムの溶解時間:S1(s)
加温時間T2の原料を用いたフィルムの溶解時間:S2(s)
(試験方法)
図1に示すように、スライドマウント(FUJICOLOR 35mm用 プラスチックマウント)の長辺部分を切断して、略逆U字状とする。そして、開口よりも大きい3.5cm×3.9cmフィルムを図2のように取り付ける。すなわち、フィルムの三方をスライドマウントの枠に固定する。
10℃の水800mlを入れた1000mlビーカーに、フィルムが取り付けられたスライドマウントを、略逆U字状の状態で、フィルムの全面が水に浸かるまで下降させて停止させる。その状態で静置し、フィルムが溶解してスライドマウントから落下するまでの時間を溶解時間とする。
原料の製膜に際しては、特に製造方法は制限されず、公知のフィルムの製造方法を準用することができる。例えば、溶媒(水)に溶解させた原料を金属製等のバンド又は金属製等のドラムへ流延し、溶媒を乾燥除去してフィルムを得る溶媒キャスト法(溶液流延法)が用いられる。この方法では、流延する際の樹脂組成物の固形分濃度は、特に限定されない。例えば、固形分濃度は、1〜80質量%である。この製造方法における乾燥温度、すなわち、金属製等のバンド又は金属製等のドラムの表面温度は、特に限定されないが、通常、50〜100℃であり、好ましくは60〜99℃である。また、乾燥時間も特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
また、原料をPVA系樹脂の溶融温度以上に加熱し、溶融混練してダイより押し出し、冷却することによりフィルムを得る溶融押出法も採用される。
加温状態の温度は、PVA系樹脂の種類等により適宜選択される。例えば、通常30〜100℃であり、更に60〜99℃であり、特に70〜99℃である。
また、加温状態で保持する時間は、特に限定されない。例えば、通常1分〜360時間であり、更に30分〜288時間であり、特に1〜240時間である。
なお、加温状態で所定時間保持する方法は、特に限定されない。タンク内で保持したり、配管内で保持する場合が例示される。タンクとしては、例えば、バッチ式の溶解タンクが用いられる。
PVA系樹脂を含有する原料を、加温状態にて所定時間保持した後に、製膜して水溶性フィルムとすると溶解性が低下する傾向にあった。
本実施形態では、PVA系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩を添加している。このようにすると、原料を加温状態にて所定時間保持した後に、製膜しても、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制される傾向にある。この傾向は、無変性PVA系樹脂よりもアニオン性基変性PVA系樹脂を用いた場合の方が顕著である。
また、この効果は、亜硫酸水素塩に特有の効果であり、亜硫酸塩を用いた際には得られない効果である。
本実施形態の水溶性フィルムは、以下の作用効果を奏する。すなわち、従来、PVA系樹脂を含有する原料を、加温状態にて所定時間保持した後に、製膜した水溶性フィルムは溶解性が低下する傾向にあった。
本実施形態では、PVA系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩が添加されているから、原料を加温状態にて所定時間保持しても、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制される。
本実施形態の包装袋は、上述の水溶性フィルムから形成されたことを特徴としている。本実施形態の包装袋は、内容物を包むためのものである。内容物は、特に限定されない。例えば、内容物としては、洗剤、洗浄剤、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、肥料、染料、農薬等の薬剤が用いられる。
なお、包装袋の形状、大きさ等は、内容物の種類、量等に応じて適宜選択できる。
<本実施形態の包装袋の効果>
本実施形態の包装袋は、以下の作用効果を奏する。すなわち、従来の水溶性フィルムを用いた包装袋は、溶解性が必ずしも十分とは言えない場合があった。本実施形態の包装袋では、PVA系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩が添加されているから、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制されて、包装袋からの内容物の放出が速やかに行われる。
本実施形態の内容物放出体は、上述の水溶性フィルムによって内容物を包んでなり、水に触れることにより内容物を放出可能な内容物放出体である。内容物としては、上記〔2〕包装袋の欄で説明したものを用いることができる。すなわち、内容物は、特に限定されないが、例えば、洗剤、洗浄剤、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、肥料、染料、農薬等の薬剤が用いられる。
なお、内容物放出体の形状、大きさ等は、内容物の種類、量等に応じて適宜選択できる。
<本実施形態の内容物放出体の効果>
本実施形態の内容物放出体は、以下の作用効果を奏する。すなわち、従来の水溶性フィルムを用いた内容物放出体は、溶解性が必ずしも十分とは言えない場合があった。本実施形態の内容物放出体では、PVA系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩が添加されているから、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制されて、内容物放出体からの内容物の放出が速やかに行われる。
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂と、亜硫酸水素塩と、を含有する原料を加温状態にて所定時間保持した後、原料を製膜することを特徴とする。
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法では、「ポリビニルアルコール系樹脂」、「亜硫酸水素塩」、「その他の成分」、「製膜」等については、上記〔1〕水溶性フィルムの説明をそのまま適用できる。
<本実施形態の水溶性フィルムの製造方法の効果>
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法では、PVA系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩を添加しているから、原料を加温状態にて所定時間保持した後に、製膜しても、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制できる。
〔1〕水溶性フィルムの調製
<実施例1>
PVA系樹脂として、4%水溶液粘度12.0mPa・s(20℃)、平均ケン化度88モル%、変性量2.0モル%のマレイン酸変性PVAを用いた。PVA系樹脂100質量部に、可塑剤としてグリセリン16質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.1質量部、アニオン性界面活性剤0.5質量部、及び水を加え、樹脂組成物の水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料1)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料2)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、0.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料3)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料4)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、1.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料5)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料6)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、1.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料7)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料8)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、2.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料9)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料10)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、5.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料11)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料12)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、10質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料13)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料14)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、15質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料15)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料16)を得た。
亜硫酸水素ナトリウムの含有量を、20質量部とした以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料17)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料18)を得た。
PVA系樹脂として、4%水溶液粘度28.0mPa・s(20℃)、平均ケン化度88モル%、変性量2.0モル%のマレイン酸変性PVAを用いた。PVA系樹脂100質量部に、可塑剤としてグリセリン21質量部、亜硫酸水素ナトリウム1.5質量部、アニオン性界面活性剤0.5質量部、及び水を加え、樹脂組成物の水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料19)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料20)を得た。
PVA系樹脂として、4%水溶液粘度12.0mPa・s(20℃)、平均ケン化度88モル%、変性量2.0モル%のマレイン酸変性PVAを用いた。PVA系樹脂100質量部に、可塑剤としてグリセリン16質量部、アニオン性界面活性剤0.5質量部、及び水を加え、樹脂組成物の水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料21)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料22)を得た。
PVA系樹脂として、4%水溶液粘度12.0mPa・s(20℃)、平均ケン化度88モル%、変性量2.0モル%のマレイン酸変性PVAを用いた。PVA系樹脂100質量部に、可塑剤としてグリセリン16質量部、亜硫酸ナトリウム2.0質量部、アニオン性界面活性剤0.5質量部、及び水を加え、樹脂組成物の水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料23)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料24)を得た。
PVA系樹脂として、4%水溶液粘度28.0mPa・s(20℃)、平均ケン化度88モル%、変性量2.0モル%のマレイン酸変性PVAを用いた。PVA系樹脂100質量部に、可塑剤としてグリセリン21質量部、亜硫酸ナトリウム1.5質量部、アニオン性界面活性剤0.5質量部、及び水を加え、樹脂組成物の水溶液を得た。
この水溶液を85℃で24時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料25)を得た。
また、同じ水溶液を85℃で168時間保持して、その後、溶液流延法で成形し、厚み75μmの水溶性フィルム(試料26)を得た。
実施例1〜10、比較例1〜3の水溶性フィルム(試料1〜26)を上述の試験方法を用いて溶解試験を行った。
結果を表1に示す。亜硫酸水素ナトリウムを用いた実施例1〜10では、85℃で水溶液を保持しても水溶性フィルムの溶解性は良好であった。すなわち、加温24時間当たりの溶解時間変化率が低く抑えられていた。
一方、無添加の比較例1,亜硫酸ナトリウムを用いた比較例2〜3では、85℃で水溶液を保持すると、水溶性フィルムの溶解性の低下が顕著であった。すなわち、加温24時間当たりの溶解時間変化率が実施例の場合よりも高かった。
また、同じPVA系樹脂を用いた実施例10の場合と、比較例3の場合を比較すると、実施例10の場合には、加温24時間当たりの溶解時間変化率がいずれも0.5に抑えられていた。これに対して、亜硫酸ナトリウム1.5質量部を添加した比較例3では、加温24時間当たりの溶解時間変化率は1.8と高かった。
以上の結果より、PVA系樹脂を含有する水溶液を加熱状態で保持しても、亜硫酸水素ナトリウムの添加により、水溶性フィルムの冷水溶解性の低下は顕著に抑制されることが分かった。
3;水溶性フィルム
ポリビニルアルコール系樹脂及び亜硫酸水素塩を含有し、キトサンを含有しない原料を製膜してなる水溶性フィルムであって、
前記亜硫酸水素塩は水溶性低下防止剤であることを特徴とする水溶性フィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記ポリビニルアルコール系樹脂には、アニオン性基変性PVA系樹脂が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性フィルムである。
前記ポリビニルアルコール系樹脂と、前記亜硫酸水素塩と、を含有する前記原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜して得られることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムである。
請求項1から4のいずれか一項に記載の水溶性フィルムから形成されたことを特徴とする包装袋である。
請求項1から4のいずれか一項に記載の水溶性フィルムによって内容物を包んでなり、水に触れることにより内容物を放出可能な内容物放出体である。
ポリビニルアルコール系樹脂及び水溶性低下防止剤としての亜硫酸水素塩を含有し、キトサンを含有しない原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜することを特徴とする水溶性フィルムの製造方法である。
〔1〕水溶性フィルム
本実施形態の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」という)及び亜硫酸水素塩を含有し、キトサンを含有しない原料を製膜してなるものであって、亜硫酸水素塩は水溶性低下防止剤であることを特徴とする。
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂及び水溶性低下防止剤としての亜硫酸水素塩を含有し、キトサンを含有しない原料を加温状態にて所定時間保持した後、原料を製膜することを特徴とする。
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法では、「ポリビニルアルコール系樹脂」、「亜硫酸水素塩」、「その他の成分」、「製膜」等については、上記〔1〕水溶性フィルムの説明をそのまま適用できる。
<本実施形態の水溶性フィルムの製造方法の効果>
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法では、PVA系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩を添加しているから、原料を加温状態にて所定時間保持した後に、製膜しても、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制できる。
ポリビニルアルコール系樹脂及び亜硫酸水素塩を含有する原料を製膜してなる水溶性フィルムであって、
前記亜硫酸水素塩は水溶性低下防止剤であり、
前記ポリビニルアルコール系樹脂には、アニオン性基変性PVA系樹脂として、マレイン酸変性PVA系樹脂、イタコン酸変性PVA系樹脂、アクリル酸変性PVA系樹脂、及びメタクリル酸変性PVA系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれることを特徴とする水溶性フィルムである。
前記ポリビニルアルコール系樹脂と、前記亜硫酸水素塩と、を含有する前記原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性フィルムである。
請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムから形成されたことを特徴とする包装袋である。
請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムによって内容物を包んでなり、水に触れることにより内容物を放出可能な内容物放出体である。
ポリビニルアルコール系樹脂及び水溶性低下防止剤としての亜硫酸水素塩を含有する原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜する水溶性フィルムの製造方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂には、アニオン性基変性PVA系樹脂として、マレイン酸変性PVA系樹脂、イタコン酸変性PVA系樹脂、アクリル酸変性PVA系樹脂、及びメタクリル酸変性PVA系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれることを特徴とする水溶性フィルムの製造方法である。
〔1〕水溶性フィルム
本実施形態の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」という)及び亜硫酸水素塩を含有する原料を製膜してなるものであって、亜硫酸水素塩は水溶性低下防止剤であり、
ポリビニルアルコール系樹脂には、アニオン性基変性PVA系樹脂として、マレイン酸変性PVA系樹脂、イタコン酸変性PVA系樹脂、アクリル酸変性PVA系樹脂、及びメタクリル酸変性PVA系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれることを特徴とする。
本実施形態で用いられるPVA系樹脂には、アニオン性基変性PVA系樹脂として、マレイン酸変性PVA系樹脂、イタコン酸変性PVA系樹脂、アクリル酸変性PVA系樹脂、及びメタクリル酸変性PVA系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれる。PVA系樹脂としては、ビニルエステル系化合物を重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化して得られる樹脂を用いることができる。本実施形態では、PVA系樹脂を1種のみならず、2種以上併用して用いることもできる。
溶解性の観点から、アニオン性基変性PVA系樹脂が含まれる。アニオン性基としては、本実施形態では、カルボキシル基である。
変性PVA系樹脂の変性量は、変性ユニットの含有量が0.1〜10モル%が好ましく、0.5〜8モル%が更に好ましく、1〜6モル%が特に好ましい。水への溶解性の点で0.1モル%以上が好ましく、樹脂の生産性やコストの観点から10モル%以下が好ましい。
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂及び水溶性低下防止剤としての亜硫酸水素塩を含有する原料を加温状態にて所定時間保持した後、原料を製膜し、ポリビニルアルコール系樹脂には、アニオン性基変性PVA系樹脂として、マレイン酸変性PVA系樹脂、イタコン酸変性PVA系樹脂、アクリル酸変性PVA系樹脂、及びメタクリル酸変性PVA系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれることを特徴とする。
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法では、「ポリビニルアルコール系樹脂」、「亜硫酸水素塩」、「その他の成分」、「製膜」等については、上記〔1〕水溶性フィルムの説明をそのまま適用できる。
<本実施形態の水溶性フィルムの製造方法の効果>
本実施形態の水溶性フィルムの製造方法では、PVA系樹脂を含有する原料に亜硫酸水素塩を添加しているから、原料を加温状態にて所定時間保持した後に、製膜しても、水溶性フィルムの溶解性の低下が抑制できる。
Claims (6)
- ポリビニルアルコール系樹脂と、亜硫酸水素塩と、を含有する原料を製膜してなる水溶性フィルム。
- 前記亜硫酸水素塩は水溶性低下防止剤であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性フィルム。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂と、前記亜硫酸水素塩と、を含有する前記原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性フィルム。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムから形成されたことを特徴とする包装袋。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムによって内容物を包んでなり、水に触れることにより内容物を放出可能な内容物放出体。
- ポリビニルアルコール系樹脂と、亜硫酸水素塩と、を含有する原料を加温状態にて所定時間保持した後、
前記原料を製膜することを特徴とする水溶性フィルムの製造方法。
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