JP6825358B2 - 水溶性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
一方で、フィルム製膜においては、カールの発生が懸念されるものであり、これを防止するためには、高温での熱処理が必要となってくる。
しかしながら、高温での熱処理を行うと、フィルムのPVA系樹脂が結晶化しやすい点から水シール性、水溶性等の諸物性の低下を招くと考えられている。そのため、相反する物性である、水シール性及び水溶性と、カール軽減とを両立させるのは困難であり、上記特許文献1及び2においても、更なる改善の余地があった。
下記工程[I]及び[II]の順に行うことを特徴とする水溶性フィルムの製造方法をその要旨とする。
工程[I]:PVA系樹脂(A)を含有する製膜原料を製膜し、乾燥することによりフィルムを得る工程。
工程[II]:乾燥後のフィルムを95〜135℃で熱処理した後、20秒以内の間にフィルムを40℃以下にまで冷却する工程。
下記工程[I]及び[II]を順に行うことを特徴とする水溶性フィルムの製造方法であるため、得られる水溶性フィルムは、溶解性及び耐カール性に優れるうえ、水シール性にも優れる。
工程[I]:PVA系樹脂(A)を含有する製膜原料を製膜し、乾燥することによりフィルムを得る工程。
工程[II]:乾燥後のフィルムを95〜135℃で熱処理した後、20秒以内の間にフィルムを40℃以下にまで冷却する工程。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを意味するものである。
本発明の製膜原料として用いられるPVA系樹脂(A)は、未変性PVAや変性PVA系樹脂が挙げられる。
本発明では、上記PVA系樹脂(A)を製膜原料として製膜し、水溶性フィルムを製造するが、その際、可塑剤(B)を含有させることが水溶性フィルムに柔軟性を持たせる点で好ましく、下記の2種の可塑剤(B)を併用することがより好ましい。
上記の中でも、水溶性フィルムの引張強度の点で融点が85℃以上、特には90℃以上のものが好ましい。なお、融点の上限は300℃、特には200℃が好ましい。
かかる可塑剤(b1)が少なすぎると水溶性フィルムが柔らかくなりすぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向があり、多すぎると水溶性フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下でもろくなる傾向がある。また、可塑剤(b2)が少なすぎると水溶性フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下でもろくなる傾向があり、多すぎると水溶性フィルムが柔らかくなりすぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
本発明で用いられるフィラー(C)は、耐ブロッキング性の目的で含有されるものであり、具体例としては、無機フィラーや有機フィラーが挙げられ、中でも有機フィラーが好ましい。また、平均粒子径としては、0.1〜50μmであることが好ましく、更には0.5〜40μmであることが好ましい。なお、上記平均粒子径は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置等で測定することができる。
本発明で用いられる界面活性剤(D)としては、水溶性フィルム製造時のキャスト面からの剥離性改善の目的で含有されるものであり、通常、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等が挙げられ、1種または2種以上併用して用いられる。中でも、製造安定性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが好適である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明は、PVA系樹脂(A)を含有し、下記工程[I]及び[II]を順に行う水溶性フィルムの製造方法である。
工程[I]:ポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有する製膜原料を製膜し、乾燥することによりフィルムを得る工程。
工程[II]:乾燥後のフィルムを95〜135℃で熱処理した後、20秒以内の間にフィルムを40℃以下にまで冷却する工程。
すなわち、本発明は、工程[I]により熱処理前水溶性フィルムを得て、続く工程[II]において該フィルムを熱処理後、短時間で急速に冷却することを特徴とする。
まず上記工程[I]から順に説明する。
溶解温度が、高温溶解の場合には、通常80〜100℃、好ましくは90〜100℃であり、加圧溶解の場合には、通常80〜130℃、好ましくは90〜120℃である。
溶解時間としては、通常1〜20時間、好ましくは2〜15時間、更に好ましくは3〜10時間である。溶解時間が短すぎると未溶解物が残る傾向にあり、長すぎると生産性が低下する傾向にある。
更に、溶解した後、得られた製膜原料に対して脱泡処理が行われるが、かかる脱泡方法としては、例えば、静置脱泡、真空脱泡、二軸押出脱泡等が挙げられる。中でも静置脱泡、二軸押出脱泡が好ましい。
静置脱泡の温度としては、通常50〜100℃、好ましくは70〜95℃であり、脱泡時間は、通常2〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
この製膜原料を製膜することにより熱処理前水溶性フィルムが得られる。
例えば、下記の製膜条件にて行うことができる。
なお、本発明において含水率は、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、得られた揮発分の値を含水率とする。
つぎに工程[II]について説明する。
なお、上記含水率は、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、得られた揮発分の値を含水率とする。
なお、上記pH値は、JIS K 3362 8.3に準拠して測定される。また、水分量は、JIS K 3362 7.21.3に準じて測定される。
薬剤包装体は、水溶性フィルムからなる包装体内に液体薬剤が内包されてなるものである。そして、運搬や保存の際には液体薬剤を内包した形状を保持し、使用時(洗濯時等)には、水溶性フィルムからなる包装体が水と接触して溶解し、内包されている液体薬剤が水中に流出し拡散して対象物に薬剤が接触して薬効を発揮するようになっている。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
・カルボキシル基変性PVA(A1):
20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度94モル%、
マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%
・未変性PVA(A2):
20℃における4%水溶液粘度18mPa・s、平均ケン化度88モル%
PVA系樹脂(A)として、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%のカルボキシル基変性PVA(A1)を90部、平均ケン化度88モル%の未変性PVA(A2)を10部、可塑剤(B)として、ソルビトールを20部及びグリセリンを20部、フィラー(C)として澱粉(平均粒子径20μm)を8部、界面活性剤(D)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩を2部及び水を混合して溶解処理し、澱粉が分散した製膜原料(固形分濃度22%)を得た。
得られた製膜原料を80℃にて脱泡し、40℃まで冷やした。その製膜原料をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:125μm、幅:300mm)上に、厚さ630μm、幅200mmで流延し、3mの乾燥室(105℃)の中を0.350m/minの速度で通過させ乾燥し、厚さ89μmの熱処理前水溶性フィルム(F0)を得た。
得られた熱処理前水溶性フィルム(F0)を300mm×210mmのSUS製の枠に4辺を固定して貼り付け、105℃に設定した熱風乾燥機に60秒入れることで熱処理を行い、その後すぐに14℃に冷やした鉄板で15秒急冷させてフィルムの温度を30℃以下まで冷却することによりPVA系フィルム(F1)(水溶性フィルム)を得た。
得られたPVA系フィルム(F1)(水溶性フィルム)について、以下の通り測定、評価を行った。
(測定試験片の調製)
PVA系フィルムを23℃、40%RHに24時間調湿を行った後、PVA系フィルムの幅方向における中央部から、PVA系フィルムを一辺がMD方向(流れ方向)と平行となるように50mm×50mmの正方形状にフィルムを切り出し、PVA系フィルム(α)とした。また、PVA系フィルムの幅方向における中央部から、MD方向(流れ方向)と平行な一辺が70mm、TD方向(幅方向)と平行な一辺が15mmの長方形となるようにフィルムを切り出し、PVA系フィルム(β)とした。
30cm角のガラス板上に、50mm×50mmに切り出した上記PVA系フィルム(α)をキャスト面を上側にして載せ、水を充分に含ませた綿棒(ジャストネオ社製:抗菌綿棒)でPVA系フィルム(α)に直径1cmの円形に水を塗布した。その後、もう1枚の15mm×70mmに切り出した上記PVA系フィルム(β)のキャスト面側を、水で濡らしてから5秒後のPVA系フィルム(α)の上に載せ、85gの重りをゆっくりのせてPVA系フィルム2枚を接着させた。
これを10秒間放置した後、下部のPVA系フィルム(α)は基板ガラスに固定し、上部のPVA系フィルム(β)の端面に、ばねばかりを取り付け、上方に2mm/秒の速さで引っ張ることで、剥離強度(g/15mm)を測定した。なお、測定は、23℃、40%RH環境下で行った。
実施例1において、冷却処理を施さなかった以外は同様に行い、PVA系フィルム(F’)(水溶性フィルム)を得た。
得られたPVA系フィルム(F’)(水溶性フィルム)について、実施例1と同様にして、測定、評価を行った。
Claims (8)
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有する水溶性フィルムの製造方法であって、
上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、平均ケン化度80〜90モル%の未変性ポリビニルアルコール、および平均ケン化度85〜99.9モル%の変性ポリビニルアルコール系樹脂の少なくとも一方を含み、
下記工程[I]及び[II]の順に行うことを特徴とする水溶性フィルムの製造方法。
工程[I]:ポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有する製膜原料を製膜し、乾燥することによりフィルムを得る工程。
工程[II]:乾燥後のフィルムを95〜135℃で熱処理した後、20秒以内の間にフィルムを40℃以下にまで冷却する工程。 - 上記乾燥後のフィルムの含水率が6〜25重量%であることを特徴とする請求項1記載の水溶性フィルムの製造方法。
- 上記熱処理を1〜120秒間行うことを特徴とする請求項1または2記載の水溶性フィルムの製造方法。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水溶性フィルムの製造方法。
- 可塑剤(B)を含有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の水溶性フィルムの製造方法。
- 可塑剤(B)の含有量が、ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して20重量部以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水溶性フィルムの製造方法。
- 水溶性フィルムの含水率が3〜15重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の水溶性フィルムの製造方法。
- 薬剤包装に用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の水溶性フィルムの製造方法。
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