JP2002020569A - 塩素含有物質包装用水溶性フィルム - Google Patents

塩素含有物質包装用水溶性フィルム

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩素含有物質のユニット包装用として優れた
性能を有するポリビニルアルコール系水溶性フィルムを
提供すること。従来の水溶性フィルムとして使用されて
いるポリビニルアルコール系フィルムでは、経時的に水
溶性の低下が生じ長期保存中に水に不溶性または難溶性
となり使用できなくなり問題となっていた。本発明の目
的は塩素含有物質を包装して長期保存しても水溶性の経
時的な低下の少ない塩素含有物質包装用水溶性フィルム
を提供することにある。 【解決手段】 ポリビニルアルコール(A)100重量
部に対して、アゾール化合物、アジン化合物、アミノピ
ロリジン化合物およびヒドラジド化合物から選ばれる少
なくとも1種の化合物(B)を0.1〜20重量部配合
してなる組成物からなることを特徴とする塩素含有物質
包装用水溶性フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は農薬、洗浄剤、殺菌
剤などの塩素含有物質の包装用として優れた性能を有す
るポリビニルアルコール(以下PVAと略称する)系水
溶性フィルムに関する。さらに詳しくは、PVA(A)
100重量部に対して、アゾール化合物、アジン化合
物、アミノピロリジン化合物およびヒドラジド化合物か
ら選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を0.1〜2
0重量部配合してなる組成物からなることを特徴とする
塩素含有物質包装用水溶性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、農薬、洗浄剤や殺菌剤をはじめと
する各種薬品などを単位量づつ水溶性フィルムに密封包
装して、使用時にその包装形態のまま水中に投入し、内
容物を包装フィルムごと水に溶解または分散して使用す
る方法が多く用いられてきている。このユニット包装の
利点は使用時に危険な薬剤に直接触れることなく使用で
きること、一定量が包装されているために使用時に計量
することがいらないこと、薬剤を包装、輸送した容器ま
たは袋などの使用後の処理が不要または簡単であるなど
である。従来このようなユニット包装用の水溶性フィル
ムとして部分けん化PVAやカルボン酸変性PVA製フ
ィルムが用いられていた。これらの水溶性フィルムは冷
水に易溶性でしかも機械的強度が優れており良好な性能
を有しているが、塩素を含有した殺菌剤や洗浄剤、農薬
などの薬剤包装用フィルムとしては、包装中にフィルム
が経時的に水溶性の低下を生じ長期保存中に水に不溶性
または難溶性となり使用できなくなり、この分野でのユ
ニット包装はできないのが現状である。
【0003】洗剤などのアルカリ性物質を包装するフィ
ルムはカルボキシル基またはその塩を含有変性したPV
A系のフィルムが多く開示されているが、塩素含有物質
を包装するPVA系水溶性フィルムについては知られて
いない。上記部分けん化PVAフィルム、カルボキシル
基またはその塩やスルホン酸またはその塩を含有変性し
たPVAフィルムを塩素含有物質包装用として使用する
と不溶化が急速に進行し使用できない。またこれら酸変
性PVAの他にオキシアルキレン基やカチオン性基など
をPVAに導入することも試みられているが、包装時に
水溶性の低下を招き充分な性能が得られていない。
【0004】現在、塩素含有物質を包装するフィルムと
してはポリエチレンオキサイド系フィルム、セルロース
系フィルムが知られている。しかしながらこれらのフィ
ルムは水溶性が非常に遅く、フィルムの機械的物性が不
足し、ヒートシールができない、硬く脆いために低温で
の耐衝撃性が極端に小さいなど多くの欠点を持ち、広く
実用化されるには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の欠点を
無くし、塩素含有物質包装用のフィルムとして機械的強
度に優れ、柔軟でタフネスのあるフィルム物性を有し、
さらに長期間塩素含有物質を包装しても水溶性が低下せ
ず、初期の水易溶性を保持するPVA系水溶性フィルム
を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】従来のPVAフィルムで
は、塩素含有物質を包装し長期保存すると、ほとんどの
場合、フィルムは褐色に変色し、冷水、熱水にも、PV
Aの良溶剤であるジメチルスルホキシドなどにも不溶と
なり、架橋したPVAフィルムとなり水溶性フィルムと
しての機能が失われていた。本発明者らはかかる現状に
鑑み、鋭意検討した結果、塩素含有物質の包装用フィル
ムにおいて、PVA(A)100重量部に対して、アゾ
ール化合物、アジン化合物、アミノピロリジン化合物お
よびヒドラジド化合物から選ばれる少なくとも1種の化
合物(B)を0.1〜20重量部配合してなる組成物か
らなることを特徴とする水溶性フィルムが塩素含有物質
の包装用フィルムとして有用なことを見いだし本発明を
完成するに至った。さらにPVAがスルホン酸基含有変
性PVAである時にさらに優れた効果を有するPVA系
水溶性フィルムを与えることを見い出した。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明についてさらに詳細
に説明する。本発明に使用するPVAはポリビニルエス
テルのけん化物である。ここでビニルエステルとして
は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル、バ
ーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられ
るが、工業的に生産されコスト的に有利な酢酸ビニルが
通常使用される。ポリビニルエステルのけん化物とはビ
ニルエステルを塊状またはアルコールなどの溶媒中でラ
ジカル開始剤の存在下重合させ、しかる後にアルカリま
たは酸触媒を作用させ部分的にあるいは高度にけん化さ
せることによって製造される重合体を言う。また本発明
に使用するPVA(A)は無変性のPVAの他、スルホ
ン酸基含有変性PVA、カルボン酸基含有変性PVA、
カチオン基含有変性PVA、アルキレンオキシド含有変
性PVA、アミド基含有変性PVAなどの変性PVAも
含まれる。この中でもスルホン酸基含有変性PVAが塩
素含有物質を包装したときに、水溶性が非常に速く、耐
薬品性に優れ、水溶性の経時的な低下が少ない性質を有
し特に優れている。
【0008】スルホン酸基含有変性PVAとは、スルホ
ン酸基含有共重合体単位を0.1〜20モル%含有して
なるPVAである。該PVAはビニルエステルと分子内
にスルホン酸基を有する単量体とを共重合させ、けん化
することによって製造される。本発明のスルホン酸を含
有した重合性単量体は分子内にスルホン酸基またはその
塩を含有し、ビニルエステルと共重合可能なものであれ
ば特に限定はなくいずれも使用できる。代表的なスルホ
ン酸含有単量体の具体的な例としては次のものが挙げら
れる。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホ
ン酸またはそのアルカリ金属塩、2−アクリルアミド−
1−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属
塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホ
ン酸またはそのアルカリ金属塩などである。この中でビ
ニルエステルとの共重合反応性やけん化時の安定性など
の点から2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスル
ホン酸またはそのアルカリ金属塩が最も好ましい。また
エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルス
ルホン酸などのオレフィンスルホン酸またはその塩も含
まれる。ここでアルカリ金属塩とはNa、K、Liの塩
を、また類似物としてアンモニウムやアミンなどを示
す。スルホン酸基が酸の場合も本発明に含まれるがスル
ホン酸が強酸のため共重合中にビニルエステルが加水分
解を受けるなどの問題を生じることがあり、一般的には
部分的にあるいは完全に金属で中和されていることが望
ましい。この共重合体は通常アルコール溶液中でアルカ
リまたは酸触媒を用いてけん化され、本発明に用いられ
るスルホン酸基を含有したPVAが製造される。スルホ
ン酸基含有PVA中のスルホン酸基含有共重合単位は
0.1〜20モル%であり、好ましくは0.5〜10モ
ル%である。さらに好ましくは1〜5モル%である。
【0009】アミド基変性PVAとは、アミド基含有共
重合体単位を0.1〜20モル%含有してなるPVAで
ある。アミド基を含有した重合性単量体は分子内にアミ
ド基を含有しビニルエステルと共重合可能であれば特に
限定はなく使用できる。具体的な例としては、官能基−
NR1−CO−R2(ここでR1はHまたは炭素数1〜
3のアルキル基、R2はHまたは炭素数1〜5のアルキ
ル基を示す)を有するN-ビニル化合物、例えばN-ビニ
ルホルムアミド、 N-ビニルアセトアミド、N-ビニル
プロピオン酸アミドなどが挙げられる。またN-ビニル
ピロリドンも本発明に含まれる。アミド基含有PVA中
のアミド基含有共重合体単位は0.1〜20モル%であ
り、好ましくは1〜10モル%である。
【0010】本発明のPVAの重合度は特に限定は無い
が、水溶性フィルムの場合フィルムの機械的な物性も重
要であり、10〜100μmの薄い厚さでも強い強度と
柔軟性を要求されている。フィルムの強度やタフネスの
点から粘度平均重合度で300〜10000、好ましく
は500〜8000である。重合度が300未満ではフ
ィルム強度が弱くなる傾向にあり、また10000より
大きい重合度ではフィルムを調製するときの溶液粘度が
高くなり作業性に問題があり好ましくない。
【0011】また本発明のPVAのけん化度はフィルム
にしたとき水溶性を示すことが必要であり、フィルム強
度やフィルムのコシや製袋性を考慮すると無変性のPV
Aでは50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%
である。変性PVAでは変性の種類や変性度によって異
なるが、より高いけん化度でも水溶性が得られるため広
いけん化度の範囲で使用可能である。スルホン酸基を含
有したPVAでは、通常40〜100モル%である。好
ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは70〜
99.5モル%である。
【0012】本発明はアゾール化合物、アジン化合物、
アミノピロリジン化合物およびヒドラジド化合物から選
ばれる少なくとも1種の化合物(B)を有効成分として
使用する。これらの化合物は、アルデヒド基やカルボニ
ル基と選択的に反応し、これらの反応基を不活性にする
機能を有している。これらの化合物をPVAと均一に混
合したり、PVA中に分散させることによって、PVA
の不溶化の過程で生じるPVA分子中のアルデヒド基
や、カルボニル基と反応してその基の持つ機能を不活性
化させ、PVAフィルムの劣化や不溶化を防ぐ役割をは
たしているものと考えられる。
【0013】アゾール化合物およびアジン化合物として
は、2個又は3個の窒素原子を有する、5員乃至6員の
複素環化合物を広く使用することができる。これらの複
素環化合物には、炭素数1〜4程度の直鎖又は分岐鎖状
のアルキル鎖、1又は2個以上の置換基を有してもよ
い。アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ
基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリー
ルアミノ基、メルカプト基、エステル基、カルボキシル
基、ベンゾトリアゾリル基、1−ヒドロキシベンゾトリ
アゾリル基等の置換基が1個又は2個以上置換していて
もよい。また置換基としてカルボキシル基を有する場合
にはそのエステルおよびその塩も本発明の有効成分に包
含される。
【0014】アゾール化合物としては、例えばジアゾー
ル化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物
等を挙げることができ、ジアゾール化合物及びトリアゾ
ール化合物を好ましく使用できる。
【0015】ジアゾール化合物の具体例としては、例え
ば3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5
−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾ
ロン、3−フェニル−6−ピラゾロン、3−メチル−1
−(3−スルホフェニル)−5−ピラゾロン等のピラゾ
ロン化合物、ピラゾール、3−メチルピラゾール、1,
4−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾー
ル、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3−
アミノピラゾール、5−アミノ−3−メチルピラゾー
ル、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸、3−メチ
ルピラゾール−5−カルボン酸メチルエステル、3−メ
チルピラゾール−5−カルボン酸エチルエステル、3,
5−メチルピラゾールジカルボン酸等のピラゾール化合
物等を挙げることができる。
【0016】トリアゾール化合物の具体例としては、例
えば1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾ
ール、3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5
−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3−メ
ルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−
1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,
2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−
1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−フェニル
−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジフェニル−
1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール
−3−オン、ウラゾール(3,5−ジオキシ−1,2,
4−トリアゾール)、1,2,4−トリアゾール−3−
カルボン酸,1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−
ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインド
リジン、1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H
−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0017】チアジアゾール化合物の具体例としては、
例えば、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−チアジ
アゾール、5−アミノ−2−メルカプト−1,2,4−
チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−
チアジアゾール、5−t−ブチル−2−メチルアミノ−
1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メチル
−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−1,3,
4−チアジアゾール等を挙げることができる。
【0018】アジン化合物としては、例えばジアジン化
合物、トリアジン化合物、ピリダジン化合物等を挙げる
ことができ、これらの中でもピリダジン化合物が好まし
く使用できる。
【0019】ジアジン化合物の具体例としては、例えば
1,3−ジアジン、2−アミノ−4,6−ジメチル−
1,3−ジアジン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−ジ
アジン、2−メルカプト−1,3−ジアジン、2−メル
カプト−1,3−ジアジン、2−アミノ−1,3−ジア
ジン、2,4−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン等の
1,3−ジアジン類、2−アミノ−1,3−ジアジン、
2,3−ジメチル−1,4−ジアジン、2−メチル−
1,4−ジアジン、1,4−ジアジン−2−カルボン
酸、2,3,5−トリメチル−1,4−ジアジン等の
1,4−ジアジン類等を挙げることができる。
【0020】トリアジン化合物の具体例としては、例え
ば3−アミノ−5,6−ジメチル−1,2,4−トリア
ジン、3−ヒドロキシ−5,6−ジフェニル−1,2,
4−トリアジン、ベンゾ−1,2,3−トリアジン−4
(3H)−オン、3−(2−ピリジル)−5,6−ジフ
ェニル−1,2,4−トリアジン等を挙げることができ
る。
【0021】ピリダジン化合物の具体例としては、例え
ば、ピリダジン、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾ
ロビリダジン、4,5−ジクロロ−ピリダジン、6−メ
チル−ピリダジン等を挙げることができる。
【0022】アミノピロリジン化合物の具体例として
は、例えば1−アミノピロリジン及びその無機酸塩等を
挙げることができる。1−アミノピロリジン化合物の無
機酸塩としては、より具体的には1−アミノピロリジン
化合物の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げら
れる。
【0023】ヒドラジド化合物としては、分子中に1個
のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中
に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分
子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド
化合物等を挙げることができる。
【0024】モノヒドラジド化合物の具体例としては、
例えば、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジ
ド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン
酸ヒドラジド、P−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナ
フトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
ヒドラジド等を例示できる。
【0025】ジヒドラジド化合物の具体例としては、例
えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、
コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼ
ライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデ
カン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フ
マル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒
石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル
酸ジヒドラジド、テレルタル酸ジヒドラジド、ダイマー
酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の
2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。更に、特公平2
−4607号公報に記載の各種2塩基酸ジヒドラジド化
合物、2,4−ジヒドラジド−6−メチルアミノ−sy
m−トリアジン等もジヒドラジドとして用いることがで
きる。
【0026】ポリヒドラジド化合物は、具体的には、ポ
リアクリル酸ヒドラジド等を例示できる。
【0027】本発明では、上記アゾール化合物、アジン
化合物及びアミノピロリジン化合物およびヒドラジド化
合物は、1種を単独で使用でき又は2種以上を併用でき
る。
【0028】これらの化合物のいずれも使用可能である
が、PVAとの相容性がよく、塩素含有物質を包装して
長期間保存してもフィルムの水溶性が保持できる効果の
特に優れた化合物として、アジン化合物が良好である。
アジン化合物として、ジアジン化合物、トリアジン化合
物およびピリダジン化合物から選ばれる少なくとも1種
を有効成分とする化合物が好ましい。この中でも、理由
ははっきりしないがピリダジン化合物が特に好ましい。
これらの化合物(B)の配合量としてはPVA(A)1
00重量部に対し0.1〜20重量部であり、好ましく
は0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重
量部である。0.1未満の配合量では塩素含有物質の包
装中に水溶性を保持することができず、水不溶性になり
好ましくない。また20重量部を越えた量ではフィルム
強度を大きく低下させ、フィルム表面に白色粉末として
析出する等の問題点が生じるため使用できない。本発明
の化合物(B)をPVAフィルムに配合することによ
り、長時間塩素含有物質を包装放置しても水溶性の低下
が少なく、着色やゲル化がなく初期のフィルムの優れた
機械的物性を保持することができる。
【0029】本発明に使用する還元剤(C)とは、包装
放置中にPVAフィルムが酸化するのを防ぐ作用を向上
させる化合物である。化合物(B)だけを配合すること
によっても優れた特性を有するフィルムが得られるが、
PVA(A)と化合物(B)に併用配合することによ
り、さらに大きな効果を発現する。具体的には酒石酸、
アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウ
ム、ロンガリットなどである。この中でも酒石酸、L−
アスコルビン酸が特に好ましい。該還元剤(C)の配合
量としてはPVA(A)100重量部に対し0.1〜1
0重量部であり、好ましくは0.3〜5重量部、さらに
好ましくは0.5〜3重量部である。0.1未満の配合
量では塩素含有物質の包装中にフィルムの水溶性を保持
する効果が低く、また10重量部を越えた量ではフィル
ム強度低下が大きく、フィルム表面にブリードアウトし
て析出することがあり好ましくない。本発明の還元剤を
PVAフィルムに配合することにより、長時間塩素含有
物質を包装放置しても水溶性の低下が少なく、着色やゲ
ル化がなく初期のフィルムの優れた物性を保持すること
ができる。
【0030】本発明の塩素含有物質とは、分子中に塩素
を含有した農薬、プールや屎尿処理後の放流水に使用す
る、また家庭用に使用する殺菌剤、漂白剤、トイレおよ
び台所などの洗浄剤などである。具体的にはイソシアヌ
ル酸トリクロライド、イソシアヌル酸ジクロライドおよ
びその塩、イソシアヌル酸モノクロライドおよびその
塩、イソシアン酸ジクロライド、N,N−ジクロロヒダ
ントイン、N−クロロ−N−ブロモ−5,5−ジメチル
ヒダントインその他農薬のECP、BHCなどが含まれ
るがこれに限定されるものではない。また該塩素含有物
質の形状は顆粒状、錠剤、粉体、ブロック状物、場合に
よっては液状でも良い。塩素含有物質の担体として用い
られるタルク、カオリン、ベントナイト、珪藻土などの
展開剤や水への親和性を上げたり、均一に分散するため
の界面活性剤や分散剤も本発明の物質に含まれていても
よい。また該塩素含有物質は殺菌剤、農薬や洗浄剤の有
効成分の一つとして少量でも含まれていれば本発明の範
囲内に含有される。
【0031】本発明のPVA系組成物を製膜して水溶性
フィルムを得るにあたってはその水溶液を流延するか、
適当な可塑剤または水の存在下で溶融押出するなどの任
意の方法が用いられる。その際、必要に応じて着色剤、
香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉
体、界面活性剤などの通常の添加剤を適宜配合しても差
し支えない。また必要に応じて、本発明の特性を失わな
い範囲内で2種以上のPVA、澱粉、カルボキシメチル
セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセル
ロースなどの水溶性高分子を添加しても良い。
【0032】また本発明のPVA系水溶性フィルムは高
温多湿の地域や寒冷地でも運搬、貯蔵、使用がなされる
ため、フィルムの強度やタフネスが要求される。特に低
温での耐衝撃性が必要とされる。そのため一般にフィル
ムのガラス転移点を下げるため種々の可塑剤が用いられ
る。可塑剤としてはPVAの可塑剤として一般に用いら
れているものなら全て使用可能である。具体的な可塑剤
としては、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリ
コールなどの多価アルコール類、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類、
ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール
誘導体、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物やグ
リセリンやペンタエリスリトール、ソルビトールなどの
多価アルコールへアルキレンオキサイドを付加した化合
物や水などがこれに含まれる。可塑剤の添加量としては
使用するPVAの種類や使用する塩素含有物質の種類に
よっても異なるがPVA100重量部に対して0〜50
重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0033】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれによって限定されるものでは
ない。なお実施例中とくに断りのないかぎり「%」およ
び「部」は重量基準を表す。 [水溶性フィルムの水溶性の測定方法]フィルムサンプ
ルを40×40mmの正方形に切り、これをスライドマ
ウントに挟み、20℃および10℃の撹拌しているイオ
ン交換水中に浸漬し、フィルムが完全に溶解するまでの
時間(秒数)を測定し評価した。
【0034】実施例1 無変性の重合度1700、けん化度88モル%PVA
(A)100重量部に対して本発明に使用する化合物
(B)として、1,2,4−トリアゾールを2部を配合
し、さらに可塑剤としてグリセリン18部を用いて均一
な水溶液を作成し、70℃の熱ロールへ流延し厚さ40
μmのフィルムを得た。さらに上記組成物の化合物
(B)に代えて3,5−ジメチルピラゾールにした他は
上記と同様にして厚さ40μmのフィルムを作成した。
また同様にして化合物(B)を3−メチル−5−ピラゾ
ロンおよび1−アミノピロリジンにそれぞれ代えて40
μm厚みのフィルムを作成した。塩素含有物質として、
イソシアヌル酸ジクロライドのナトリウム塩を15%含
有するトイレブロック洗浄剤(50g)を本発明の上記
フィルムで包装し、熱シールして密封した。この包装袋
をさらにアルミにポリエチレンをラミネートしたフィル
ムで熱シールして密封し2重包装し、塩素含有物質の包
装袋から水や可塑剤が飛散しないようにした。この袋を
長期保存テストの促進試験として40℃の恒温器に入れ
1ヶ月間放置した。1ヶ月後に取り出し包装したフィル
ムの水溶性の経時変化を見た。結果を表1に示す。40
℃、1ヶ月後も水溶性は保持され良好であった。また放
置試験後のトイレブロック洗浄剤のフィルム包装物を、
実際の水洗トイレの貯水槽に入れ、5分後水を流したと
ころ洗浄剤を含む水がでていることを確認した。また1
日後貯水槽からブロックを取り出したところフィルムは
完全に溶解して存在しなかった。
【0035】比較例1 実施例1の化合物(B)を配合しない他は実施例1と同
様にフィルムを作成し、トイレブロック洗浄剤を包装し
て包装袋の放置試験を実施した。40℃、1ヶ月後のフ
ィルムの水溶性を見た。結果を表1に併せて示す。放置
後の包装フィルムは褐色に着色し、水に浸漬してもほと
んど膨潤せず、溶解もしなかった。
【0036】実施例2 酢酸ビニルと2−アクリルアミド−2−メチルプロパン
スルホン酸ナトリウムをメタノール溶媒中で共重合し得
られた共重合体のメタノール溶液に水酸化ナトリウムの
メタノール溶液を添加することによって常法によりけん
化反応を行い、重合度1650、けん化度98モル%、
スルホン酸基含有共重合体単位2.5モル%のスルホン
酸基含有PVAを得た。この変性PVA100部に対
し、化合物(B)として、3−アミノ−5,6−ジメチ
ル−1,2,4−トリアジンを1部、また還元剤(C)
として酒石酸0.5部および可塑剤としてグリセリン2
0部を用いて水溶液を作成し、70℃の熱ロールへ流延
し厚さ40μmのフィルムを得た。また化合物(B)を
ピリダジンに代えた他は上と同様にして厚さ40μmの
フィルムを作成した。このフィルムから10cm×10
cmの袋を作り、塩素含有物質としてイソシアヌル酸ト
リクロライドを90%以上含有するプール殺菌剤(錠
剤、60g)1個を入れ熱シールして密封した。この包
装袋をさらにアルミにポリエチレンをラミネートしたフ
ィルムで熱シールして密封し2重包装して、この包装袋
から水や可塑剤が飛散しないようにした。この袋を長期
保存テストの促進試験として40℃の恒温器に入れ放置
し、1ヶ月後に取り出し包装したフィルムの水溶性の変
化をみ見た。結果を表1に示す。40℃、1ヶ月後もほ
とんど水溶性の低下はなく良好である。
【0037】比較例2 実施例2の化合物(B)を配合しない他は実施例2と同
様にフィルムを作成し、プール殺菌剤を包装して包装袋
の放置試験を実施した。40℃、1ヶ月後のフィルムの
水溶性を見た。結果を表1に併せて示す。放置後の包装
フィルムは褐色に着色し、水に浸漬してもほとんど膨潤
せず、溶解もしなかった。
【0038】実施例3 酢酸ビニルと無水マレイン酸をメタノール溶媒中で共重
合し得られた共重合体のメタノール溶液に水酸化ナトリ
ウムのメタノール溶液を添加することによってけん化反
応を行い、重合度1780、けん化度96モル%、マレ
イン酸基含有共重合体単位2モル%のカルボン酸基含有
PVAを得た。この変性PVA100部に対し、化合物
(B)として、アジピン酸ジヒドラジドを3部、また還
元剤(C)としてL−アスコルビン酸0.5部および可
塑剤としてグリセリン20部を用いて水溶液を作成し、
70℃の熱ロールへ流延し厚さ40μmのフィルムを得
た。塩素含有物質として実施例1のトイレブロック洗浄
剤を用い、実施例1と同様にして包装後放置試験を行っ
た。結果を表1に示す。40℃、1ヶ月後も水溶性は保
持され良好であった。
【0039】実施例4 酢酸ビニルとN-ビニルアセトアミドをメタノール溶液
中で共重合し、得られた共重合体を常法によりけん化
し、重合度1600,けん化度98.3モル%、アミド
基含有共重合体単位6.2モル%のアミド基含有PVA
を得た。この変性PVA100部に対し、化合物(B)
として6−メチルピリダジンを2部、還元剤(C)とし
てL−アスコルビン酸0.5部、可塑剤としてグリセリ
ン16部を用いて、実施例2と同様にして厚さ40μm
のフィルムを作成した。このフィルムを用いて実施例2
のプール殺菌剤を包装し、2重包装して40℃、1ヶ月
の放置試験を実施した。結果を表1に示す。放置後も着
色はなく水溶性も大きく低下せず良好であった。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】本発明は塩素含有物質のユニット包装用
として優れた性能を有するポリビニルアルコール系水溶
性フィルムに関する。従来のポリビニルアルコール系水
溶性フィルムでは、塩素含有物質を包装すると経時的に
水溶性の低下が生じ長期保存中に水に不溶性または難溶
性となり使用できなくなり問題となっていた。本発明の
ポリビニルアルコールとアゾール化合物、アジン化合
物、アミノピロリジン化合物およびヒドラジド化合物か
ら選ばれた少なくとも1種の化合物からなる水溶性フィ
ルムは、塩素含有物質の包装用フィルムとして、塩素含
有物質を包装した状態で長期保存しても、水溶性の経時
的な低下の少ない塩素含有物質包装用水溶性フィルムを
提供する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F071 AA29 AC12 AC14 AC19 AE22 AH04 BC01 4J002 BE021 DG037 DG047 EF067 EL067 EQ026 EU026 EU106 EU136 EU166 EU186 EV177 EV316 FD206 FD207 GG02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリビニルアルコール(A)100重量
    部に対して、アゾール化合物、アジン化合物、アミノピ
    ロリジン化合物およびヒドラジド化合物から選ばれる少
    なくとも1種の化合物(B)を0.1〜20重量部配合
    してなる組成物からなることを特徴とする塩素含有物質
    包装用水溶性フィルム。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール(A)がスルホン
    酸基含有共重合体単位を0.1〜20モル%含有してな
    るポリビニルアルコールである請求項1記載の水溶性フ
    ィルム。
  3. 【請求項3】 ポリビニルアルコール(A)がアミド基
    含有共重合体単位を0.1〜20モル%含有してなるポ
    リビニルアルコールである請求項1記載の水溶性フィル
    ム。
  4. 【請求項4】 化合物(B)がアジン化合物である請求
    項1記載の水溶性フィルム。
  5. 【請求項5】 アジン化合物がジアジン化合物、トリア
    ジン化合物およびピリダジン化合物から選ばれる少なく
    とも1種である請求項4記載の水溶性フィルム。
  6. 【請求項6】 請求項1の組成物に酒石酸、アスコルビ
    ン酸、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよびロ
    ンガリットから選ばれる少なくとも1種の還元剤(C)
    を、ポリビニルアルコール(A)100重量部に対して
    0.1〜10重量部配合してなる請求項1記載の水溶性
    フィルム。
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