JP4476451B2 - 塩素含有物質包装用水溶性フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は農薬、洗浄剤、殺菌剤などの塩素含有物質の包装用として優れた性能を有するポリビニルアルコール(以下PVAと略称する)系水溶性フィルムに関する。さらに詳しくは、PVA(A)100重量部に対して、ジアゾール化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジアジン化合物、トリアジン化合物、ピリダジン化合物、1−アミノピロリジン及びその無機酸塩、モノヒドラジド化合物、ジヒドラジド化合物、並びにポリヒドラジド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を0.1〜20重量部配合してなる組成物からなることを特徴とする塩素含有物質包装用水溶性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、農薬、洗浄剤や殺菌剤をはじめとする各種薬品などを単位量づつ水溶性フィルムに密封包装して、使用時にその包装形態のまま水中に投入し、内容物を包装フィルムごと水に溶解または分散して使用する方法が多く用いられてきている。このユニット包装の利点は使用時に危険な薬剤に直接触れることなく使用できること、一定量が包装されているために使用時に計量することがいらないこと、薬剤を包装、輸送した容器または袋などの使用後の処理が不要または簡単であるなどである。
従来このようなユニット包装用の水溶性フィルムとして部分けん化PVAやカルボン酸変性PVA製フィルムが用いられていた。これらの水溶性フィルムは冷水に易溶性でしかも機械的強度が優れており良好な性能を有しているが、塩素を含有した殺菌剤や洗浄剤、農薬などの薬剤包装用フィルムとしては、包装中にフィルムが経時的に水溶性の低下を生じ長期保存中に水に不溶性または難溶性となり使用できなくなり、この分野でのユニット包装はできないのが現状である。
【0003】
洗剤などのアルカリ性物質を包装するフィルムはカルボキシル基またはその塩を含有変性したPVA系のフィルムが多く開示されているが、塩素含有物質を包装するPVA系水溶性フィルムについては知られていない。
上記部分けん化PVAフィルム、カルボキシル基またはその塩やスルホン酸またはその塩を含有変性したPVAフィルムを塩素含有物質包装用として使用すると不溶化が急速に進行し使用できない。またこれら酸変性PVAの他にオキシアルキレン基やカチオン性基などをPVAに導入することも試みられているが、包装時に水溶性の低下を招き充分な性能が得られていない。
【0004】
現在、塩素含有物質を包装するフィルムとしてはポリエチレンオキサイド系フィルム、セルロース系フィルムが知られている。しかしながらこれらのフィルムは水溶性が非常に遅く、フィルムの機械的物性が不足し、ヒートシールができない、硬く脆いために低温での耐衝撃性が極端に小さいなど多くの欠点を持ち、広く実用化されるには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の欠点を無くし、塩素含有物質包装用のフィルムとして機械的強度に優れ、柔軟でタフネスのあるフィルム物性を有し、さらに長期間塩素含有物質を包装しても水溶性が低下せず、初期の水易溶性を保持するPVA系水溶性フィルムを提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
従来のPVAフィルムでは、塩素含有物質を包装し長期保存すると、ほとんどの場合、フィルムは褐色に変色し、冷水、熱水にも、PVAの良溶剤であるジメチルスルホキシドなどにも不溶となり、架橋したPVAフィルムとなり水溶性フィルムとしての機能が失われていた。
本発明者らはかかる現状に鑑み、鋭意検討した結果、塩素含有物質の包装用フィルムにおいて、PVA(A)100重量部に対して、ジアゾール化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジアジン化合物、トリアジン化合物、ピリダジン化合物、1−アミノピロリジン及びその無機酸塩、モノヒドラジド化合物、ジヒドラジド化合物、並びにポリヒドラジド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を0.1〜20重量部配合してなる組成物からなることを特徴とする水溶性フィルムが塩素含有物質の包装用フィルムとして有用なことを見いだし本発明を完成するに至った。さらにPVAがスルホン酸基含有変性PVAである時にさらに優れた効果を有するPVA系水溶性フィルムを与えることを見い出した。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明に使用するPVAはポリビニルエステルのけん化物である。ここでビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、工業的に生産されコスト的に有利な酢酸ビニルが通常使用される。ポリビニルエステルのけん化物とはビニルエステルを塊状またはアルコールなどの溶媒中でラジカル開始剤の存在下重合させ、しかる後にアルカリまたは酸触媒を作用させ部分的にあるいは高度にけん化させることによって製造される重合体を言う。
また本発明に使用するPVA(A)は無変性のPVAの他、スルホン酸基含有変性PVA、カルボン酸基含有変性PVA、カチオン基含有変性PVA、アルキレンオキシド含有変性PVA、アミド基含有変性PVAなどの変性PVAも含まれる。この中でもスルホン酸基含有変性PVAが塩素含有物質を包装したときに、水溶性が非常に速く、耐薬品性に優れ、水溶性の経時的な低下が少ない性質を有し特に優れている。
【0008】
スルホン酸基含有変性PVAとは、スルホン酸基含有共重合体単位を0.1〜20モル%含有してなるPVAである。該PVAはビニルエステルと分子内にスルホン酸基を有する単量体とを共重合させ、けん化することによって製造される。
本発明のスルホン酸を含有した重合性単量体は分子内にスルホン酸基またはその塩を含有し、ビニルエステルと共重合可能なものであれば特に限定はなくいずれも使用できる。代表的なスルホン酸含有単量体の具体的な例としては次のものが挙げられる。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩などである。この中でビニルエステルとの共重合反応性やけん化時の安定性などの点から2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩が最も好ましい。またエチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸などのオレフィンスルホン酸またはその塩も含まれる。ここでアルカリ金属塩とはNa、K、Liの塩を、また類似物としてアンモニウムやアミンなどを示す。スルホン酸基が酸の場合も本発明に含まれるがスルホン酸が強酸のため共重合中にビニルエステルが加水分解を受けるなどの問題を生じることがあり、一般的には部分的にあるいは完全に金属で中和されていることが望ましい。
この共重合体は通常アルコール溶液中でアルカリまたは酸触媒を用いてけん化され、本発明に用いられるスルホン酸基を含有したPVAが製造される。
スルホン酸基含有PVA中のスルホン酸基含有共重合単位は0.1〜20モル%であり、好ましくは0.5〜10モル%である。さらに好ましくは1〜5モル%である。
【0009】
アミド基変性PVAとは、アミド基含有共重合体単位を0.1〜20モル%含有してなるPVAである。アミド基を含有した重合性単量体は分子内にアミド基を含有しビニルエステルと共重合可能であれば特に限定はなく使用できる。具体的な例としては、官能基−NR1−CO−R2(ここでR1はHまたは炭素数1〜3のアルキル基、R2はHまたは炭素数1〜5のアルキル基を示す)を有するN-ビニル化合物、例えばN-ビニルホルムアミド、 N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオン酸アミドなどが挙げられる。またN-ビニルピロリドンも本発明に含まれる。
アミド基含有PVA中のアミド基含有共重合体単位は0.1〜20モル%であり、好ましくは1〜10モル%である。
【0010】
本発明のPVAの重合度は特に限定は無いが、水溶性フィルムの場合フィルムの機械的な物性も重要であり、10〜100μmの薄い厚さでも強い強度と柔軟性を要求されている。フィルムの強度やタフネスの点から粘度平均重合度で300〜10000、好ましくは500〜8000である。重合度が300未満ではフィルム強度が弱くなる傾向にあり、また10000より大きい重合度ではフィルムを調製するときの溶液粘度が高くなり作業性に問題があり好ましくない。
【0011】
また本発明のPVAのけん化度はフィルムにしたとき水溶性を示すことが必要であり、フィルム強度やフィルムのコシや製袋性を考慮すると無変性のPVAでは50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%である。変性PVAでは変性の種類や変性度によって異なるが、より高いけん化度でも水溶性が得られるため広いけん化度の範囲で使用可能である。スルホン酸基を含有したPVAでは、通常40〜100モル%である。好ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは70〜99.5モル%である。
【0012】
本発明は後述するアゾール化合物、アジン化合物、アミノピロリジン化合物およびヒドラジド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を有効成分として使用する。
これらの化合物は、アルデヒド基やカルボニル基と選択的に反応し、これらの反応基を不活性にする機能を有している。これらの化合物をPVAと均一に混合したり、PVA中に分散させることによって、PVAの不溶化の過程で生じるPVA分子中のアルデヒド基や、カルボニル基と反応してその基の持つ機能を不活性化させ、PVAフィルムの劣化や不溶化を防ぐ役割をはたしているものと考えられる。
【0013】
アゾール化合物およびアジン化合物としては、2個又は3個の窒素原子を有する、5員乃至6員の複素環化合物を広く使用することができる。これらの複素環化合物には、炭素数1〜4程度の直鎖又は分岐鎖状のアルキル鎖、1又は2個以上の置換基を有してもよい。アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、メルカプト基、エステル基、カルボキシル基、ベンゾトリアゾリル基、1−ヒドロキシベンゾトリアゾリル基等の置換基が1個又は2個以上置換していてもよい。また置換基としてカルボキシル基を有する場合にはそのエステルおよびその塩も本発明の有効成分に包含される。
【0014】
アゾール化合物としては、ジアゾール化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物挙げられ、ジアゾール化合物及びトリアゾール化合物を好ましく使用できる。
【0015】
ジアゾール化合物の具体例としては、例えば3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、3−フェニル−6−ピラゾロン、3−メチル−1−(3−スルホフェニル)−5−ピラゾロン等のピラゾロン化合物、ピラゾール、3−メチルピラゾール、1,4−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3−アミノピラゾール、5−アミノ−3−メチルピラゾール、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸メチルエステル、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸エチルエステル、3,5−メチルピラゾールジカルボン酸等のピラゾール化合物等を挙げることができる。
【0016】
トリアゾール化合物の具体例としては、例えば1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オン、ウラゾール(3,5−ジオキシ−1,2,4−トリアゾール)、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸,1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジン、1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0017】
チアジアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−2−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、5−t−ブチル−2−メチルアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール等を挙げることができる。
【0018】
アジン化合物としては、ジアジン化合物、トリアジン化合物、ピリダジン化合物挙げられ、これらの中でもピリダジン化合物が好ましく使用できる。
【0019】
ジアジン化合物の具体例としては、例えば1,3−ジアジン、2−アミノ−4,6−ジメチル−1,3−ジアジン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン、2−メルカプト−1,3−ジアジン、2−メルカプト−1,3−ジアジン、2−アミノ−1,3−ジアジン、2,4−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン等の1,3−ジアジン類、2−アミノ−1,3−ジアジン、2,3−ジメチル−1,4−ジアジン、2−メチル−1,4−ジアジン、1,4−ジアジン−2−カルボン酸、2,3,5−トリメチル−1,4−ジアジン等の1,4−ジアジン類等を挙げることができる。
【0020】
トリアジン化合物の具体例としては、例えば3−アミノ−5,6−ジメチル−1,2,4−トリアジン、3−ヒドロキシ−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、ベンゾ−1,2,3−トリアジン−4(3H)−オン、3−(2−ピリジル)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン等を挙げることができる。
【0021】
ピリダジン化合物の具体例としては、例えば、ピリダジン、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロビリダジン、4,5−ジクロロ−ピリダジン、6−メチル−ピリダジン等を挙げることができる。
【0022】
アミノピロリジン化合物としては、1−アミノピロリジン及びその無機酸塩挙げられる。1−アミノピロリジン化合物の無機酸塩としては、より具体的には1−アミノピロリジン化合物の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられる。
【0023】
ヒドラジド化合物としては、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物挙げられる。
【0024】
モノヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、P−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等を例示できる。
【0025】
ジヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレルタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。更に、特公平2−4607号公報に記載の各種2塩基酸ジヒドラジド化合物、2,4−ジヒドラジド−6−メチルアミノ−sym−トリアジン等もジヒドラジドとして用いることができる。
【0026】
ポリヒドラジド化合物は、具体的には、ポリアクリル酸ヒドラジド等を例示できる。
【0027】
本発明では、上記アゾール化合物、アジン化合物及びアミノピロリジン化合物およびヒドラジド化合物は、1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0028】
これらの化合物のいずれも使用可能であるが、PVAとの相容性がよく、塩素含有物質を包装して長期間保存してもフィルムの水溶性が保持できる効果の特に優れた化合物として、アジン化合物が良好である。アジン化合物として、ジアジン化合物、トリアジン化合物およびピリダジン化合物から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする化合物が好ましい。この中でも、理由ははっきりしないがピリダジン化合物が特に好ましい。
これらの化合物(B)の配合量としてはPVA(A)100重量部に対し0.1〜20重量部であり、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。0.1未満の配合量では塩素含有物質の包装中に水溶性を保持することができず、水不溶性になり好ましくない。また20重量部を越えた量ではフィルム強度を大きく低下させ、フィルム表面に白色粉末として析出する等の問題点が生じるため使用できない。本発明の化合物(B)をPVAフィルムに配合することにより、長時間塩素含有物質を包装放置しても水溶性の低下が少なく、着色やゲル化がなく初期のフィルムの優れた機械的物性を保持することができる。
【0029】
本発明に使用する還元剤(C)とは、包装放置中にPVAフィルムが酸化するのを防ぐ作用を向上させる化合物である。化合物(B)だけを配合することによっても優れた特性を有するフィルムが得られるが、PVA(A)と化合物(B)に併用配合することにより、さらに大きな効果を発現する。具体的には酒石酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどである。この中でも酒石酸、L−アスコルビン酸が特に好ましい。該還元剤(C)の配合量としてはPVA(A)100重量部に対し0.1〜10重量部であり、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。
0.1未満の配合量では塩素含有物質の包装中にフィルムの水溶性を保持する効果が低く、また10重量部を越えた量ではフィルム強度低下が大きく、フィルム表面にブリードアウトして析出することがあり好ましくない。本発明の還元剤をPVAフィルムに配合することにより、長時間塩素含有物質を包装放置しても水溶性の低下が少なく、着色やゲル化がなく初期のフィルムの優れた物性を保持することができる。
【0030】
本発明の塩素含有物質とは、分子中に塩素を含有した農薬、プールや屎尿処理後の放流水に使用する、また家庭用に使用する殺菌剤、漂白剤、トイレおよび台所などの洗浄剤などである。具体的にはイソシアヌル酸トリクロライド、イソシアヌル酸ジクロライドおよびその塩、イソシアヌル酸モノクロライドおよびその塩、イソシアン酸ジクロライド、N,N−ジクロロヒダントイン、N−クロロ−N−ブロモ−5,5−ジメチルヒダントインその他農薬のECP、BHCなどが含まれるがこれに限定されるものではない。
また該塩素含有物質の形状は顆粒状、錠剤、粉体、ブロック状物、場合によっては液状でも良い。塩素含有物質の担体として用いられるタルク、カオリン、ベントナイト、珪藻土などの展開剤や水への親和性を上げたり、均一に分散するための界面活性剤や分散剤も本発明の物質に含まれていてもよい。また該塩素含有物質は殺菌剤、農薬や洗浄剤の有効成分の一つとして少量でも含まれていれば本発明の範囲内に含有される。
【0031】
本発明のPVA系組成物を製膜して水溶性フィルムを得るにあたってはその水溶液を流延するか、適当な可塑剤または水の存在下で溶融押出するなどの任意の方法が用いられる。その際、必要に応じて着色剤、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤などの通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。また必要に応じて、本発明の特性を失わない範囲内で2種以上のPVA、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を添加しても良い。
【0032】
また本発明のPVA系水溶性フィルムは高温多湿の地域や寒冷地でも運搬、貯蔵、使用がなされるため、フィルムの強度やタフネスが要求される。特に低温での耐衝撃性が必要とされる。そのため一般にフィルムのガラス転移点を下げるため種々の可塑剤が用いられる。可塑剤としてはPVAの可塑剤として一般に用いられているものなら全て使用可能である。具体的な可塑剤としては、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール誘導体、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物やグリセリンやペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールへアルキレンオキサイドを付加した化合物や水などがこれに含まれる。可塑剤の添加量としては使用するPVAの種類や使用する塩素含有物質の種類によっても異なるがPVA100重量部に対して0〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお実施例中とくに断りのないかぎり「%」および「部」は重量基準を表す。
[水溶性フィルムの水溶性の測定方法]
フィルムサンプルを40×40mmの正方形に切り、これをスライドマウントに挟み、20℃および10℃の撹拌しているイオン交換水中に浸漬し、フィルムが完全に溶解するまでの時間(秒数)を測定し評価した。
【0034】
実施例1
無変性の重合度1700、けん化度88モル%PVA(A)100重量部に対して本発明に使用する化合物(B)として、1,2,4−トリアゾールを2部を配合し、さらに可塑剤としてグリセリン18部を用いて均一な水溶液を作成し、70℃の熱ロールへ流延し厚さ40μmのフィルムを得た。
さらに上記組成物の化合物(B)に代えて3,5−ジメチルピラゾールにした他は上記と同様にして厚さ40μmのフィルムを作成した。
また同様にして化合物(B)を3−メチル−5−ピラゾロンおよび1−アミノピロリジンにそれぞれ代えて40μm厚みのフィルムを作成した。
塩素含有物質として、イソシアヌル酸ジクロライドのナトリウム塩を15%含有するトイレブロック洗浄剤(50g)を本発明の上記フィルムで包装し、熱シールして密封した。この包装袋をさらにアルミにポリエチレンをラミネートしたフィルムで熱シールして密封し2重包装し、塩素含有物質の包装袋から水や可塑剤が飛散しないようにした。この袋を長期保存テストの促進試験として40℃の恒温器に入れ1ヶ月間放置した。1ヶ月後に取り出し包装したフィルムの水溶性の経時変化を見た。
結果を表1に示す。40℃、1ヶ月後も水溶性は保持され良好であった。
また放置試験後のトイレブロック洗浄剤のフィルム包装物を、実際の水洗トイレの貯水槽に入れ、5分後水を流したところ洗浄剤を含む水がでていることを確認した。また1日後貯水槽からブロックを取り出したところフィルムは完全に溶解して存在しなかった。
【0035】
比較例1
実施例1の化合物(B)を配合しない他は実施例1と同様にフィルムを作成し、トイレブロック洗浄剤を包装して包装袋の放置試験を実施した。40℃、1ヶ月後のフィルムの水溶性を見た。結果を表1に併せて示す。放置後の包装フィルムは褐色に着色し、水に浸漬してもほとんど膨潤せず、溶解もしなかった。
【0036】
実施例2
酢酸ビニルと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムをメタノール溶媒中で共重合し得られた共重合体のメタノール溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加することによって常法によりけん化反応を行い、重合度1650、けん化度98モル%、スルホン酸基含有共重合体単位2.5モル%のスルホン酸基含有PVAを得た。この変性PVA100部に対し、化合物(B)として、3−アミノ−5,6−ジメチル−1,2,4−トリアジンを1部、また還元剤(C)として酒石酸0.5部および可塑剤としてグリセリン20部を用いて水溶液を作成し、70℃の熱ロールへ流延し厚さ40μmのフィルムを得た。また化合物(B)をピリダジンに代えた他は上と同様にして厚さ40μmのフィルムを作成した。
このフィルムから10cm×10cmの袋を作り、塩素含有物質としてイソシアヌル酸トリクロライドを90%以上含有するプール殺菌剤(錠剤、60g)1個を入れ熱シールして密封した。この包装袋をさらにアルミにポリエチレンをラミネートしたフィルムで熱シールして密封し2重包装して、この包装袋から水や可塑剤が飛散しないようにした。この袋を長期保存テストの促進試験として40℃の恒温器に入れ放置し、1ヶ月後に取り出し包装したフィルムの水溶性の変化をみ見た。結果を表1に示す。40℃、1ヶ月後もほとんど水溶性の低下はなく良好である。
【0037】
比較例2
実施例2の化合物(B)を配合しない他は実施例2と同様にフィルムを作成し、プール殺菌剤を包装して包装袋の放置試験を実施した。40℃、1ヶ月後のフィルムの水溶性を見た。結果を表1に併せて示す。放置後の包装フィルムは褐色に着色し、水に浸漬してもほとんど膨潤せず、溶解もしなかった。
【0038】
実施例3
酢酸ビニルと無水マレイン酸をメタノール溶媒中で共重合し得られた共重合体のメタノール溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加することによってけん化反応を行い、重合度1780、けん化度96モル%、マレイン酸基含有共重合体単位2モル%のカルボン酸基含有PVAを得た。この変性PVA100部に対し、化合物(B)として、アジピン酸ジヒドラジドを3部、また還元剤(C)としてL−アスコルビン酸0.5部および可塑剤としてグリセリン20部を用いて水溶液を作成し、70℃の熱ロールへ流延し厚さ40μmのフィルムを得た。
塩素含有物質として実施例1のトイレブロック洗浄剤を用い、実施例1と同様にして包装後放置試験を行った。結果を表1に示す。40℃、1ヶ月後も水溶性は保持され良好であった。
【0039】
実施例4
酢酸ビニルとN-ビニルアセトアミドをメタノール溶液中で共重合し、得られた共重合体を常法によりけん化し、重合度1600,けん化度98.3モル%、アミド基含有共重合体単位6.2モル%のアミド基含有PVAを得た。この変性PVA100部に対し、化合物(B)として6−メチルピリダジンを2部、還元剤(C)としてL−アスコルビン酸0.5部、可塑剤としてグリセリン16部を用いて、実施例2と同様にして厚さ40μmのフィルムを作成した。
このフィルムを用いて実施例2のプール殺菌剤を包装し、2重包装して40℃、1ヶ月の放置試験を実施した。結果を表1に示す。放置後も着色はなく水溶性も大きく低下せず良好であった。
【0040】
【表1】
Figure 0004476451
【0041】
【発明の効果】
本発明は塩素含有物質のユニット包装用として優れた性能を有するポリビニルアルコール系水溶性フィルムに関する。従来のポリビニルアルコール系水溶性フィルムでは、塩素含有物質を包装すると経時的に水溶性の低下が生じ長期保存中に水に不溶性または難溶性となり使用できなくなり問題となっていた。本発明のポリビニルアルコールとアゾール化合物、アジン化合物、アミノピロリジン化合物およびヒドラジド化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる水溶性フィルムは、塩素含有物質の包装用フィルムとして、塩素含有物質を包装した状態で長期保存しても、水溶性の経時的な低下の少ない塩素含有物質包装用水溶性フィルムを提供する。

Claims (6)

  1. ポリビニルアルコール(A)100重量部に対して、ジアゾール化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジアジン化合物、トリアジン化合物、ピリダジン化合物、1−アミノピロリジン及びその無機酸塩、モノヒドラジド化合物、ジヒドラジド化合物、並びにポリヒドラジド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を0.1〜20重量部配合してなる組成物からなることを特徴とする塩素含有物質包装用水溶性フィルム。
  2. ポリビニルアルコール(A)がスルホン酸基含有共重合体単位を0.1〜20モル%含有してなるポリビニルアルコールである請求項1記載の水溶性フィルム。
  3. ポリビニルアルコール(A)がアミド基含有共重合体単位を0.1〜20モル%含有してなるポリビニルアルコールである請求項1記載の水溶性フィルム。
  4. ポリビニルアルコール(A)が無変性のポリビニルアルコールである請求項1記載の水溶性フィルム。
  5. 合物(B)がジアジン化合物、トリアジン化合物およびピリダジン化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項記載の水溶性フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物に酒石酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよびロンガリットから選ばれる少なくとも1種の還元剤(C)を、ポリビニルアルコール(A)100重量部に対して0.1〜10重量部配合してなる請求項1〜5のいずれか1項記載の水溶性フィルム。
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