JP2016030783A - ポリカーボネート樹脂、塗工液、成形体、および積層体 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂、塗工液、成形体、および積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れ、溶媒に対する溶解性が良好なポリカーボネート樹脂、並びに当該ポリカーボネート樹脂を用いた塗工液、成形体、および積層体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂。

(X及びXは各々独立にC6〜18のアリーレン,YはC1〜6のアルキレン)
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂、塗工液、成形体、および積層体に関する。
ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂等の合成樹脂は、機械的性質、熱的性質、および電気的性質に優れている。そのため、これらの合成樹脂は、様々な産業分野において成形品等の素材に用いられてきた。
例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性、機械的強度等の性質に優れていることから、いわゆるエンジニアリングプラスチックとして様々な産業分野において広く用いられている。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、一般に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノール−A〕に、ホスゲンやジフェニルカーボネート等の炭酸エステル形成性化合物を反応させて製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が用いられている。このビスフェルールAを原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性や機械的強度と成形性とのバランスが良好であることから、電気・電子機器や光学機器等の素材として多用されている。
近年、これら機器類に対する小型化・軽量化の要請が増大しており、このような要請に対応するためには、合成樹脂の基本的な特性を低下させることなく、さらに耐熱性等の特性を向上させた合成樹脂の開発が要請されている。
このような要請に応えるため、様々な化学構造を有する合成樹脂が、その用途・要求特性に応じて提案されている。
例えば、特許文献1には、各種樹脂原料として適用可能なアントラセン誘導体が提案されている。また、特許文献2には、アントラセン骨格を有するフェノール樹脂が提案されている。また、特許文献3には、アントラセン骨格を有するビスフェノール型化合物を含むエポキシ樹脂が提案されている。さらに、特許文献4には、アダマンタン骨格を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が提案されている。
特開2011−105699号公報 特開2012−224723号公報 特開2014−001380号公報 特開2003−212986号公報
しかしながら、特許文献1には、樹脂の具体的な構造については、何ら記載されていない。特許文献2に記載のフェノール樹脂および特許文献3に記載のエポキシ樹脂は、硬化型であるため、塗工液のポットライフが短い等の問題がある。芳香族ポリカーボネート重合鎖の構成単位にアダマンタン骨格を導入した特許文献4に記載のポリカーボネート樹脂は、高い耐熱性を有するが、結晶化し易いことから、溶媒に対する溶解性を向上させたいという要望がある。
本発明の目的は、耐熱性に優れ、溶媒に対する溶解性が良好なポリカーボネート樹脂、並びに当該ポリカーボネート樹脂を用いた塗工液、成形体、および積層体を提供することである。
本発明の一態様に係るポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位を含む。
(前記一般式(1)中、XおよびXは、各々独立に、置換または無置換の炭素数6〜18のアリーレン基であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、Yは、置換または無置換の炭素数1〜6のアルキレン基である。)
本発明の一態様に係る塗工液は、本発明の一態様に係るポリカーボネート樹脂と溶媒とを含む。
本発明の一態様に係る成形体は、本発明の一態様に係る塗工液を用いて成形してなる。
本発明の一態様に係る積層体は、本発明の一態様に係る成形体を積層してなる。
本発明によれば、耐熱性に優れ、溶媒に対する溶解性が良好なポリカーボネート樹脂、並びに当該ポリカーボネート樹脂を用いた塗工液、成形体、および積層体を提供することができる。
以下に、本発明の一実施形態におけるポリカーボネート樹脂(以下、単に「PC樹脂」ともいう)、並びに当該PC樹脂を用いた塗工液、成形体、および積層体について詳細に説明する。
[PC樹脂]
本実施形態のPC樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位を含む。当該PC樹脂は、ポリカーボネートの良好な特性(機械的性質、熱的性質、および電気的性質)を持ち、さらに、高いガラス転移温度(Tg)および溶媒、特に非ハロゲン系有機溶剤への良好な溶解性を有する。
本実施形態のPC樹脂は、示差走査熱量測定により測定した中間点ガラス転移温度(Tmg)が、220℃以上であることが好ましい。中間点ガラス転移温度(Tmg)は、JIS K7121に準拠した方法、具体的には実施例に記載の方法で、測定することができる。
前記一般式(1)中、XおよびXは、各々独立に、置換または無置換の炭素数6〜18のアリーレン基であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、Yは、置換または無置換の炭素数1〜6のアルキレン基である。
本実施形態において、前記一般式(1)中のXおよびYは、アントラセン環を構築する炭素原子のいずれかに結合する。
前記一般式(1)で表される構成単位としては、下記一般式(10A)が挙げられる
前記一般式(10A)中、X、X、およびYは、前記一般式(1)中のX、X、およびYと、それぞれ同義である。
また、前記一般式(1)で表される構成単位として、下記一般式(11)、下記一般式(12)、下記一般式(13)、および下記一般式(14)で表される構成単位が挙げられる。
前記一般式(11)〜(14)中、X、X、およびYは、前記一般式(1)中のX、X、およびYと、それぞれ同義である。
本実施形態において、前記一般式(1)で表される構成単位は、原料の入手性の観点から、前記一般式(10A)で表されることが好ましい。
本実施形態において、XおよびXを構成する置換または無置換の炭素数6〜18のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、スチリレン基、ビフェニリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ピレニレン基、フェナントレニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。XおよびXが置換基を有する場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等がある。これら置換基の具体例としては、後述のR〜R11の具体例と同様の基が挙げられる。
およびXは、好ましくは、フェニレン基またはナフチレン基であり、耐熱性の観点から、より好ましくは、フェニレン基である。
また、XおよびXは、無置換であることが好ましい。
本実施形態において、Yを構成する置換または無置換の炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2−プロピリデン基等が挙げられる。Yが置換基を有する場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等がある。これら置換基の具体例としては、後述のR〜R11の具体例と同様の基が挙げられる。
Yは、好ましくは、メチレン基またはエチリデン基であり、より好ましくは、メチレン基である。
また、Yは、無置換であることが好ましい。
本実施形態のPC樹脂は、前記一般式(1)で表される構成単位のみからなるPC樹脂であってよい。この場合、複数のX同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、複数のX同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、複数のY同士は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
本実施形態のPC樹脂は、下記一般式(2)で表される構成単位を含むことも好ましい。下記一般式(2)で表される構成単位を含むことで、PC樹脂の設計の幅を広げることができる。
前記一般式(2)中、Xは、単結合または連結基であり、Xが連結基である場合の連結基は、
−O−、
−CO−、
−S−、
−SO−、
−SO−、
−CR
置換または無置換の炭素数5〜12のシクロアルキリデン基、
置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキリデン基、
置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキレン基、
置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキリデン基、
置換または無置換の5〜20のトリシクロアルキレン基
置換または無置換の炭素数2〜12のα,ω−アルキレン基、
9,9−フルオレニリデン基、
1,8−メンタンジイル基、
2,8−メンタンジイル基、
置換または無置換の炭素数6〜12のアリーレン基、
下記一般式(3a)、下記一般式(3b)または下記一般式(3c)で表される二価の基、および
下記一般式(4)で表される炭素数8〜16のアルキリデンアリーレンアルキリデン基からなる群から選択され、
mおよびnは4であり、
およびRは、各々独立に、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、
置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、および
置換または無置換の炭素数6〜12のアリールオキシ基からなる群から選択され、
およびRは、各々独立に、
水素原子、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、および
置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基からなる群から選択される。
前記一般式(3a)〜(3c)中、R、R、およびRは、各々独立に、前記Rおよび前記Rと同義であり、*は結合部分を示す。
前記一般式(4)中、R、R、R10、およびR11は、各々独立に、前記Rおよび前記Rと同義であり、*は結合部分を示す。なお、前記一般式(4)で表されるアルキリデンアリーレンアルキリデン基の「炭素数8〜16」とは、置換基R〜R11の炭素数の総数(0〜8)、前記一般式(4)に示されるフェニレン基の炭素数、置換基Rおよび置換基Rが結合する炭素原子、並びにR10およびR11が結合する炭素原子の合計である。置換基R、R、R10、およびR11のいずれもが、水素原子またはハロゲン原子である場合に、置換基R〜R11の炭素数の総数は0となる。
本実施形態のPC樹脂は、前記一般式(2)で表される構成単位を複数含むものであってもよく、当該複数の構成単位は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
本実施形態において、Xを構成する置換または無置換の炭素数5〜12のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
を構成する置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキリデン基としては、例えば、ノルボルネン骨格の1つのメチレン鎖の2つの水素原子が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
を構成する置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキレン基としては、例えば、ノルボルネン骨格の任意の2か所の水素が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
を構成する置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキリデン基としては、例えば、2,2−アダマンチリデン基、ジシクロペンタジエンの1つのメチレン鎖の2つの水素原子が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
を構成する置換または無置換の5〜20のトリシクロアルキレン基としては、例えば、1,3−アダマンチリレン基、ジシクロペンタジエンの任意の2か所の水素原子が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
を構成する置換または無置換の炭素数2〜12のα,ω−アルキレン基としては、例えば、α,ω−エチレン基、α,ω−プロピレン基、α,ω−ブチレン基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
を構成する置換または無置換の炭素数6〜12のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、あるいはこれらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等がある。これら置換基の具体例としては、後述のR〜R11の具体例と同様の基が挙げられる。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11を構成する置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基(例えば、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基等)等が挙げられる。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11を構成する置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11を構成する置換または無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11を構成する置換または無置換の炭素数6〜12のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11を構成するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等がある。これら置換基の具体例としては、上述のR〜R11の具体例と同様の基が挙げられる。
およびRは全て水素原子であってもよく、水素原子以外の基が複数ある場合には、当該複数の基は、互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R〜R11が、それぞれ複数存在する場合も、当該複数の基は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
なお、本実施形態において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、三重水素(tritium)を包含する。
また、本実施形態において、「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、前記置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
また、本実施形態において、「置換もしくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
本実施形態において、前記Xは単結合であり、かつ、前記RおよびRが水素原子であることが好ましい。
また、本実施形態において、前記Xはアダマンタンジイル基であり、かつ、前記RおよびRが水素原子であることも好ましい。
また、本実施形態において、前記Xはシクロヘキシリデン基であり、かつ、前記RおよびRが水素原子であることも好ましい。
本実施形態のPC樹脂は、連鎖末端が一価の芳香族基または一価のフッ素含有脂肪族基で封止されていることが好ましい。
当該PC樹脂は、連鎖末端以外の構成単位が、前記一般式(1)で表される構成単位のみからなるPC樹脂であってもよく、前記一般式(1)で表される構成単位および前記一般式(2)で表される構成単位を含むPC樹脂であってもよい。
一価の芳香族基は、アルキル基等の脂肪族基を含有する基であってもよい。
一価のフッ素含有脂肪族基は、芳香族基を含有する基であってもよい。
また、一価の芳香族基および一価のフッ素含有脂肪族基には、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基が付加していてもよい。これらの置換基には、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基がさらに付加していてもよい。また、置換基が複数ある場合、これらの置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。
連鎖末端を構成する一価の芳香族基は、炭素数6〜18のアリール基を含むことが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、置換基を有してよいフェニル基やビフェニル基が挙げられる。
芳香族基に付加する置換基や、芳香族基に付加しているアルキル基に付加する置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。また、芳香族基に付加する置換基として炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。このアルキル基は、上記のようにハロゲン原子が付加した基であってもよく、アリール基が付加した基であってもよい。
連鎖末端を構成する一価のフッ素含有脂肪族基としては、フッ素含有アルコールから誘導される一価の基が挙げられる。
フッ素含有アルコールとしては、炭素数2〜6である複数のフルオロアルキル鎖同士が、エーテル結合を介して連結し、全フッ素原子数が13〜19のフッ素含有アルコールが好ましい。全フッ素原子数が13以上であれば、十分な撥水性、撥油性を発現させることができる。一方、全フッ素原子数が19以下であれば、重合時の反応性の低下を抑制し、得られたPC樹脂の機械的強度、表面硬度、耐熱性等が向上し得る。
さらに、一価のフッ素含有脂肪族基としては、エーテル結合を2つ以上有するフッ素含有アルコールから誘導される一価の基も好ましい。このようなフッ素含有アルコールを用いることで、塗工液におけるPC樹脂の分散性が良くなり、成形体や電子写真感光体における耐摩耗性を向上させ、摩耗後の、表面潤滑性、撥水性および撥油性を保持することができる。
あるいは、フッ素含有アルコールとしては、下記一般式(30)もしくは(31)で表されるフッ素含有アルコール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等のフッ素含有アルコール、または下記一般式(32)、(33)、もしくは(34)で表されるエーテル結合を介したフッ素含有アルコールも好ましい。
H(CFn1CHOH・・・(30)
F(CFm1CHOH・・・(31)
前記一般式(30)において、n1は1〜12の整数であり、前記一般式(31)において、m1は1〜12の整数である。
F−(CF 31−OCFCH−OH・・・(32)
F−(CFCF 32−(CFCFO) 33−CFCHOH・・・(33)
CR−(CF 35−O−(CFCFO) 34−CFCHOH・・・(34)
前記一般式(32)において、n31は1〜10の整数であり、好ましくは、5〜8の整数である。
前記一般式(33)において、n32は0〜5の整数であり、好ましくは、0〜3の整数である。n33は1〜5の整数であり、好ましくは、1〜3の整数である。
前記一般式(34)において、n34は1〜5の整数であり、好ましくは、1〜3の整数である。n35は0〜5の整数であり、好ましくは、0〜3の整数である。Rは、CFまたはFである。
本実施形態において、樹脂の化学的安定性の観点から、PC樹脂の連鎖末端は、下記一般式(5)で表されるフェノールから誘導される一価の基または下記一般式(6)で表されるフッ素含有アルコールから誘導される一価の基により封止されていることが好ましい。
前記一般式(5)において、R10は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のフルオロアルキル基を表し、pは1〜3の整数である。
前記一般式(6)において、Rは、炭素数が5以上、かつ、フッ素原子数が11以上であるパーフルオロアルキル基、あるいは下記一般式(7)で表されるパーフルオロアルキルオキシ基を示す。
前記一般式(7)中、Rf2は炭素数1〜6の直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基である。m2は1〜3の整数である。
本実施形態において、PC樹脂を構成する全構成単位のモル百分率を100モル%としたとき、前記一般式(1)で表される構成単位のモル百分率が、1モル%以上100モル%以下であることが好ましく、10モル%以上90モル%以下であることがより好ましく、30モル%以上70モル%以下であることがさらに好ましい。
また、前記一般式(2)で表される構成単位を含む場合、前記一般式(1)で表される構成単位のモル百分率が、1モル%以上100モル%未満、かつ、前記一般式(2)で表される構成単位のモル百分率が、0モル%超99モル%以下であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される構成単位が1モル%以上であれば、耐熱性と溶解性がより良好となる。つまり、残りの構成単位の特徴に特性が依存することなく、良好な耐熱性と良好な溶解性を両立することができ、耐熱性および溶解性の改善効果が十分に得られる。
また、本実施形態において、PC樹脂の塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/L溶液の20℃における還元粘度[ηSP/C]は、0.1dL/g以上5dL/g以下であることが好ましく、0.2dL/g以上3dL/g以下であることがより好ましく、0.3dL/g以上2.5dL/g以下であることがさらに好ましい。還元粘度[ηSP/C]が0.1dL/g以上であれば、得られた樹脂からなる成形体(フィルム、コーティングフィルム等)の機械強度はより強固となる。また、還元粘度[ηSP/C]が5dL/g以下であれば、塗工液の粘度を適切な塗工粘度に保つことができ、成形体を製造する際に塗布ムラなどの不具合が生じることもなく、生産性を上げることができる。
[PC樹脂の合成方法]
以下に、本実施形態のPC樹脂の合成方法の一例を示す。
本実施形態のPC樹脂は、例えば、下記一般式(100)で示すビスクロロホーメートオリゴマーと、下記一般式(15)に示すモノマーとを、酸結合剤存在下で界面重縮合をさせることで、好適に炭酸エステル結合を形成させて、得られる。また、本実施形態のPC樹脂は、下記一般式(100)で示すビスクロロホーメートオリゴマーと、下記一般式(15)に示すモノマーと、下記一般式(16)に示す二価フェノール性化合物とを、酸結合剤存在下で界面重縮合させることで、好適に炭酸エステル結合を形成させて、得られる。PC樹脂のこれらの合成反応は、例えば、前記一般式(5)および(6)で表される末端封止剤の存在下で行われる。また、PC樹脂のこれらの合成反応において、必要に応じて分岐剤も使用される。
前記一般式(15)において、X、X、およびYは、前記一般式(1)中のX、X、およびYと、それぞれ同義である。前記一般式(100)において、Arは、下記一般式(20)で表される基、または前記一般式(15)からOHを除いた基である。前記一般式(16)において、Arは、下記一般式(20)で表される基である。
前記一般式(20)において、X、R、R、m、およびnは、前記一般式(2)中のX、R、R、m、およびnと同義である。
ここで、前記一般式(100)中のn11は、ビスクロロホーメートオリゴマーの平均量体数を示す。前記一般式(100)のビスクロロホーメートオリゴマーにおいて、その平均量体数n11は、1.0以上5.0以下の範囲にあることが好ましく、1.0以上1.9以下の範囲にあることがより好ましく、1.0以上1.3以下の範囲にあることがさらに好ましい。
なお、前記一般式(100)に示す平均量体数1.0のビスクロロホーメートオリゴマーと、コモノマー、例えば、前記一般式(15)に示されるモノマーを、モル比1:1で反応させたとしても、Arのモル百分率は50モル%を超える場合が多い。それは、前記一般式(100)に示すビスクロロホーメートオリゴマーを形成した後、前記一般式(15)に示されるコモノマーとの反応時に、ビスクロロホーメートオリゴマー末端のクロロホーメート基が、反応系内に存在する塩基と反応して水酸基となり、これが末端塩素のArオリゴマー(前記一般式(100)のビスクロロホーメートオリゴマー)と重縮合する場合があるからである。
なお、平均量体数n11は、例えば、次の数式(数1)を用いて求めることができる。
平均量体数(n)=1+(Mav−M1)/M2・・・(数1)
(式(数1)において、Mavは(2×1000/(CF価))であり、M2は(M1−98.92)であり、M1は前記一般式(100)において、n11=1のときのビスクロロホーメートオリゴマーの分子量であり、CF価(N/kg)は(CF値/濃度)であり、CF値(N)は反応溶液1Lに含まれる前記一般式(100)で表されるビスクロロホーメートオリゴマー中のクロル原子数であり、上記固形物濃度(kg/L)は反応溶液1Lを濃縮して得られる固形分の量である。ここで、98.92は、ビスクロロホーメートオリゴマー同士の重縮合で脱離する2個の塩素原子、1個の酸素原子および1個の炭素原子の合計の原子量である。)
前記一般式(15)で示されるモノマーとしては、9−(4−ヒドロキシベンジル)−10−(ヒドロキシフェニル)アントラセン、9−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−10−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)アントラセン等が挙げられる。
前記一般式(16)で示されるモノマー(二価フェノール性化合物)としては、ビフェノール化合物、およびビスフェノール化合物が挙げられる。具体的には、4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’−ジエチル−4,4’−ビフェノール、3,3’−ジプロピル−4,4’−ビフェノール、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェノール、3,3’−ビス(ペンタフルオロエチル)−4,4’−ビフェノール、3,3’−ビス(ヘプタフルオロプロピル)−4,4’−ビフェノール、3,3’,5−トリメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−ペンタフルオロエチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−ヘプタフルオロプロピル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ペンタフルオロエチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヘプタフルオロプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
これらのビフェノール化合物、およびビスフェノール化合物の中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。これらの化合物を用いてPC樹脂を製造すれば、当該PC樹脂は、溶媒、特に非ハロゲン系有機溶剤に対する溶解性が良好となる。そのため、当該PC樹脂を用いて成形体を形成する際に、不溶分、濁り、およびゲル化発生のない、成形体の形成に適した塗工液を得ることができ、当該成形体のガラス転移温度が高くなることで耐熱性が向上する。
本実施形態のPC樹脂の製造方法において、連鎖末端を生成させる末端封止剤としては、一価のカルボン酸およびその誘導体や、一価のフェノールを用いることができる。
例えば、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−(パーフルオロヘキシル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、p−パーフルオロオクチルフェノール、1−(p−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、p−〔2−(1H,1H−パーフルオロトリドデシルオキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸等が好適に用いられる。
あるいは、連鎖末端を生成させる末端封止剤として、前記一般式(30)もしくは(31)で表されるフッ素含有アルコール、または1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−プロパノール等の一価のフッ素含有アルコールも好適に用いられる。また、前記一般式(32)、(33)、(34)で表されるエーテル結合を介したフッ素含有アルコールを用いることも好ましい。
PC樹脂の化学的安定性を向上させる観点から、連鎖末端を生成させる末端封止剤としては、これらの中でも、前記一般式(5)で表される一価のフェノールまたは前記一般式(6)で表される一価のフッ素含有アルコールを用いることが好ましい。
前記一般式(5)で表される一価のフェノールとしては、例えば、p−tert−ブチル−フェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−パーフルオロヘキシルフェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、p−パーフルオロオクチルフェノール等が好適に用いられる。すなわち、本実施形態においては、連鎖末端は、p−tert−ブチル−フェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−パーフルオロヘキシルフェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、およびp−パーフルオロオクチルフェノールからなる群から選ばれる末端封止剤を用いて封止されていることが好ましい。
前記一般式(6)で表されるエーテル結合を介したフッ素含有アルコールとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。すなわち、本実施形態の連鎖末端は、下記フッ素含有アルコールのいずれかから選ばれる末端封止剤を用いて封止されていても好ましい。
末端封止剤の添加割合は、PC樹脂の構成単位、および連鎖末端の共重合組成のモル百分率として、好ましくは0.05モル%以上30モル%以下であり、さらに好ましくは0.1モル%以上10モル%以下である。末端封止剤の添加割合が、30モル%以下であると機械的強度の低下を抑制でき、0.05モル%以上であると成形性の低下を抑制できる。
また、本実施形態のPC樹脂の製造方法において用いることができる分岐剤は、特に限定されない。分岐剤の具体例としては、フロログルシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロモイサチン等が挙げられる。
これら分岐剤の添加割合は、共重合組成のモル百分率で30モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。分岐剤の添加割合が30モル%以下であると、成形性の低下を抑制できる。
界面重縮合を行う場合、酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物や、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属弱酸塩、アルカリ土類金属弱酸塩、ピリジン等の有機塩基等が挙げられる。界面重縮合を行う場合に好ましい酸結合剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物である。また、これらの酸結合剤は、混合物としても用いることができる。酸結合剤の使用割合も反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調製すればよい。具体的には、原料である二価フェノールの水酸基の合計1モル当たり、1当量もしくはそれより過剰量の酸結合剤を使用すればよく、好ましくは1〜10当量の酸結合剤を使用すればよい。
本実施形態のPC樹脂の製造方法で用いる溶媒としては、得られた樹脂に対して一定以上の溶解性を示せば問題無い。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、塩化メチレン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、シクロヘキサノン、アセトン、アセトフェノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が好適な溶媒として挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、互いに混ざり合わない2種の溶媒を用いて界面重縮合反応を行ってもよい。
また、本実施形態のPC樹脂の製造方法で用いる触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン等の第三級アミン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等の四級ホスホニウム塩等が好適である。
さらに、必要に応じて、本実施形態のPC樹脂の反応系に亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイト塩等の酸化防止剤を少量添加してもよい。
本実施形態のPC樹脂の製造方法は、前述したPC樹脂の製造方法以外にも、様々な態様で実施可能である。例えば、前記一般式(15)のモノマーとホスゲン等とを反応させて、前記一般式(100)のビスクロロホーメートオリゴマーを製造する。ついで、このビスクロロホーメートオリゴマーに、前記一般式(15)のモノマー、および前記一般式(16)の二価フェノール性化合物のいずれか1種以上を使用して、前記溶媒および酸結合剤のアルカリ水溶液の混合液の存在下に反応させる方法を採用することができる。この方法は、PC樹脂を構成する全構成単位のモル百分率を100モル%としたときのAr骨格単位(前記一般式(2)で表される構成単位)のモル百分率を好ましい範囲に調整できる点で好ましい。
前記一般式(100)のn11値が1.0以上5.0以下の範囲である低量体数のビスクロロホーメートオリゴマーを製造する方法としては、詳細には、後述する製造例で示す方法があるが、概略以下の通りである。
まず、塩化メチレン等の疎水性溶媒にホスゲンを加えて、さらに前記一般式(16)のビスフェノール化合物を懸濁させ、第一の溶液を形成する。一方、トリエチルアミン等の第三級アミンを塩化メチレン等の疎水性溶媒に溶解させて第二の溶液を形成し、この第二の溶液を前記第一の溶液に滴下して、反応させる。得られた反応混合物を含む第三の溶液に塩酸と純水を加えて洗浄し、低量体数のポリカーボネートオリゴマーを含む有機層を得る。
滴下温度や反応温度は、通常−10℃以上40℃以下であり、好ましくは0℃以上30℃以下である。滴下時間、反応時間は、共に、通常15分間以上4時間以下、好ましくは30分間以上3時間程度である。このようにして得られるポリカーボネートオリゴマーの平均量体数(n11)は、好ましくは1.0以上5.0以下であり、より好ましくは1.0以上1.9以下であり、さらに好ましくは1.0以上1.3以下である。
当該製造方法により製造されたポリカーボネートオリゴマーを用いると、PC樹脂製造時の洗浄工程を簡略化できること等の点で好ましい。
このようにして得られた低量体数のビスクロロホーメートオリゴマーを含む有機層に、前記一般式(15)のモノマーを加えて反応させる。反応温度は、0℃以上150℃以下であり、好ましくは5℃以上40℃以下であり、さらに好ましくは7℃以上20℃以下である。
反応圧力は、減圧、常圧、または加圧のいずれでもよいが、通常は、常圧もしくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応時間は、反応温度によって左右されるが、通常0.5分間以上10時間以下であり、好ましくは1分間以上3時間程度である。
この反応にあたって、前記一般式(15)に示されるモノマーは、水溶液、または有機溶媒溶液として添加するのが望ましい。その添加順序については、特に制限はない。なお、触媒、末端封止剤および分岐剤等は、上記の製造法において、必要に応じ、ビスクロロホーメートオリゴマーの製造時、その後の高分子量化の反応時のいずれか、またはその両方において添加して用いることができる。
上記のようにして得られるPC樹脂は、前記一般式(1)で表される構成単位および前記一般式(2)で表される構成単位を含む樹脂である。
また、このPC樹脂は、前記一般式(1)で表される構成単位や、前記一般式(2)で表される構成単位以外の構成単位を有するポリカーボネート単位や、ポリエステル構造を有する単位、ポリエーテル構造を有する単位を含有していてもよい。
また、得られるPC樹脂の還元粘度[ηsp/C]は、例えば、前記反応条件の選択、分岐剤や末端封止剤の使用量の調節等、各種の方法によって前記範囲に調整することができる。また、場合により、得られたPC樹脂に適宜、物理的処理(混合、分画等)および化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理等)の少なくとも一方を施して、所定の還元粘度[ηsp/C]のPC樹脂として取得することもできる。
また、得られた反応生成物(粗生成物)は、公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のPC樹脂として回収することができる。
[塗工液の構成]
本実施形態の塗工液は、少なくとも本実施形態のPC樹脂、および当該PC樹脂を溶解、または分散可能な溶媒を含む。また、塗工液には、上記PC樹脂および溶媒以外に、低分子化合物、染料、顔料等の着色剤、電荷輸送材、電子輸送材、正孔輸送材、電荷発生材料等の機能性化合物、無機または有機のフィラー、ファイバー、微粒子等の充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸捕捉剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、塗工液には、他の樹脂を含んでいてもよい。これらPC樹脂以外に含まれてもよい添加剤や他の樹脂としては、PC樹脂に含まれる物質として公知の物質を用いることができる。
本実施形態で使用される溶媒は、本実施形態のPC樹脂、他の材料の溶解性、分散性、粘度、蒸発速度、化学的安定性、物理的変化に対する安定性等を考慮し、単独、あるいは複数の溶媒を混合して使用することができる。
本実施形態において、前記溶媒は有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、エチルセロソルブ、εカプロラクタム等のエステル系溶媒、四塩化炭素、四臭化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等を挙げることができ、好ましくは、沸点が、160℃以下の有機溶剤である。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合溶媒として使用してもよい。
本実施形態において、有機溶剤は、環境衛生、蒸発性、溶解性、取り扱い性および経済性の観点から、アミド系有機溶剤およびハロゲン系有機溶剤を含まないことが好ましい。また、本実施形態において、有機溶剤は、非ハロゲン系有機溶剤を含むことが好ましい。本実施形態のPC樹脂は、沸点が比較的低い非ハロゲン系有機溶剤に対しても溶解性が高い。
非ハロゲン系有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒や、パラキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、あるいはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒等を挙げることができ、中でも、本実施形態のPC樹脂の溶解性が高いことから、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを、1種または2種以上含む有機溶剤が好ましい。
本実施形態の塗工液中のPC樹脂成分の濃度は、同塗工液の使用法に合わせた適切な粘度となる濃度であればよく、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。40質量%以下であれば、粘度が高くなりすぎることもなく塗工性が良好となる。0.1質量%以上であれば、適度な粘度に保つことができ、均質な膜が得られる。また、塗工後の乾燥時間の短縮や、容易に目標とする膜厚とするのに適度な濃度となる。
本実施形態のPC樹脂は、前記溶媒、特には非ハロゲン系有機溶剤に溶解しても白化またはゲル化を起こすことがない。従って、上記PC樹脂および溶媒を含有する本実施形態の塗工液は、長期に亘ってPC樹脂成分の白化またはゲル化を起こすことなく安定に保存することが可能である。また、本実施形態の塗工液は成形性に優れているため、当該塗工液を用いて成形体を形成した場合、成形品が結晶化を起こすこともなく、透明性の高い成形体を作製することができる。
本実施形態の塗工液が、前記添加剤を含む場合、本塗工液中のPC樹脂と添加剤との割合は、通常、質量比で10:90〜99.9:0.1、好ましくは30:70〜95:5とすることが望ましい。
本実施形態の塗工液中、本実施形態のPC樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の塗工液は、通常、感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とを含む積層型電子写真感光体の電荷輸送層や、耐熱性が要求されるコーティング層の形成に好適に用いられる。また、上記塗工液に、さらに上記電荷発生物質を含有させることにより、単層型の電子写真感光体の感光層の形成に使用することも可能である。
また、本実施形態の塗工液は、成形性に優れるため、各種成形体に用いることもできる。
[成形体の構成]
本実施形態のPC樹脂および本実施形態の塗工液の少なくとも一方を用いて、成形体を形成することができる。
成形体としては、当該塗工液をコーティングしてなるドラムおよびロール、当該塗工液を流延法にて成形してなるキャストフィルム、並びに当該塗工液を塗布法にて成形してなるコーティングフィルム等が挙げられる。キャストフィルムやコーティングフィルムの膜厚は用途により適宜設定できる。通常、キャストフィルムの膜厚は10μm〜500μm程度、コーティングフィルムにおけるコーティング層の膜厚は0.1μm〜100μm程度である。
コーティング方法としては、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、スクリーンコート、スピンコート、フローコート等の方法を挙げることができる。
本発明の成形体の一実施態様であるキャストフィルムやコーティングフィルムは、クラックが生じにくい柔軟性や付着性、良好な破断伸び等を有する。キャストフィルムやコーティングフィルムの用途としては、例えば位相差フィルム、導電性フィルム、タッチパネルやフレキシブルディスプレイ用フィルム、太陽電池の基板フィルム、光導波路、インクジェット用コートフィルム、防汚フィルム、保護フィルム、フレキシブルプリント配線板、転写フィルム等の加飾フィルム等を挙げることができる。
また、成形体としては、光学部材が挙げられ、光学部材としては、例えば、電子写真感光体、光学レンズ等が挙げられる。
[積層体]
本実施形態の成形体を積層して、積層体を形成することもできる。
本実施形態の積層体は、例えば、前記成形体を基材に積層することで形成することができる。
コーティングフィルム等の積層成形体を製造する際に使用される基材は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環系ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂等のプラスチック基材、アルミニウム等の金属基材、ガラス、紙、木質材、および石材等の無機質基材、電着塗装板、並びにラミネート板等を挙げることができる。
また、積層体の基材がフィルム状である場合、積層体の一態様としての積層フィルムは、例えば、インモールド成型用フィルムや加飾フィルムとして適用できる。その他、当該積層フィルムは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に使用されるタッチパネル用フィルム、光学補償フィルムや反射防止フィルム等の光学フィルム、および導電性フィルムとしても適用できる。
本実施形態のPC樹脂を含む成形体および積層体は、耐熱性に優れ、ヘイズが小さく、透明性に優れる。
次に、本発明を実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲での種々の変形および応用が可能である。
[実施例1]
トリエチルアミン111g(1.10モル)を塩化メチレン300mLで希釈した溶液(A液)を調製した。別の反応容器に、塩化メチレン2.7Lを投入し、次いでホスゲン166gを吹き込み、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(モノマーA)177g(0.56モル)を懸濁させた。この懸濁液に、上記で調製したA液を14〜18.5℃の範囲に保ちながら2時間50分かけて滴下した。18.5〜19℃の範囲に保ちながら1時間撹拌後、減圧下10〜22℃の範囲に保ちながら塩化メチレンを留去した。残液に純水150mL、濃塩酸9mL、およびハイドロサルファイト1.0gを加え洗浄した。その後、純水660mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するAdオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.83モル/L、固形物濃度は196g/Lであった。以後、この得られた原料をAd−CFという。
続いて、水浴上に設置した1L反応容器に、Ad−CF367g(溶液としての質量)、塩化メチレン423g、および4−tert−ブチルフェノール0.7gを仕込み、別途調製した水溶液(KOH22.4gをイオン交換水200mLに溶解した水溶液)に下記構造のモノマー(M−1)44gを混合した液を加え、20℃で混合した。
得られた混合物をメカニカルスターラーで混合しながら、トリエチルアミン(7vol%)を2mL添加した。反応熱を水浴で除熱しながら、1時間撹拌を継続した。
次いで、得られた反応混合物を塩化メチレン1000mLで希釈し、純水80mLを加え、コック付のセパラブルフラスコに投入し、15分撹拌した。反応混合物が水層と有機層に分離するまで静置後、下層(有機層)を分離した。
次いで、有機層を0.2NのKOH水溶液300mLで2回、0.02NのHCl水溶液300mLで1回、純水300mLで3回洗浄を行った。
得られた樹脂を温水中に投入し、ろ過、乾燥により樹脂固体を得た。
得られた樹脂の共重合組成モル比は、H−NMR(装置名JEOL製FT−NMR SYSTEM JNR−AL400)により決定した。また、得られた樹脂を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dLの溶液を作製し、20℃における還元粘度[ηSP/C]を測定(離合社製RIGO AUTO VISCOSIMETER TYPE VMR−052USPCを用い、ウベロード型粘度管を用いて測定)したところ、結果は1.0dL/gであった。共重合組成モル比および還元粘度を表1に示す。
得られた樹脂を用いて、下記手順で、塗工液、キャストフィルム、およびコーティングフィルムを作製して評価を行った。また、得られた樹脂の中間点ガラス転移温度(Tmg)を、下記測定方法により測定した。評価結果および測定結果を表1に示す。
<塗工液作製および評価>
得られた樹脂2.5gをジオキソラン20mLに溶解し、塗工液を作製した。
溶解性の評価として、初期溶解性および安定性を、作製した塗工液を観察することにより評価した。
初期溶解性は、不溶分の有無、濁り(ヘイズ)の有無、およびゲル化発生の有無を目視にて観察し、いずれも見られなければ良好とした。
安定性は、上記塗工液を室温に静置し、溶解後1ヶ月の期間で、不溶解分の生成、濁り(ヘイズ)の有無、およびゲル化発生有無を目視にて観察し、いずれも見られなければ良好とした。
<湿式成形体(キャストフィルム)作製および評価>
塗工液作製から1週間後、塗工液20mLを直径150mmのガラス製シャーレに展開した。風乾により溶剤を除去後、常圧で室温から50℃まで段階的に温度を上げ、5時間乾燥を行った後、減圧乾燥を行った(50℃、8時間、その後100℃、8時間)。シャーレからフィルムを剥がし、さらに減圧乾燥(150℃、14時間)を行い、膜厚0.1mmのキャストフィルムを得た。得られたフィルムの外観を目視にて観察し、透明で、曇りが無いものを良好とした。
<湿式成形体(コーティングフィルム)作製および評価>
塗工液作製から1週間後、塗工液6mLを、ギャップ250μmのアプリケータを用い、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布した。風乾により溶剤を除去後、常圧で室温から50℃まで段階的に温度を上げ、5時間乾燥を行った後、減圧乾燥を行い(50℃、8時間、その後100℃、8時間)、膜厚0.02mmのコーティングフィルムを得た。得られたコーティングフィルムの外観を目視にて観察し、透明で、曇りが無いものを良好とした。
<ガラス転移温度の測定方法>
得られた樹脂のガラス転移温度を、以下の通り測定した。
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(型番DIAMOND DSC)を用い、JIS K7121に準拠した方法により下記条件で測定した。
20℃/分で30℃から330℃に昇温の条件で、連続して2回測定を行った2回目の中間点ガラス転移温度を計測した。
[実施例2]
トリエチルアミン111g(1.10モル)を塩化メチレン300mLで希釈した溶液(A液)を調製した。別の反応容器に、塩化メチレン2.7Lを投入し、次いでホスゲン166gを吹き込み、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)150g(0.56モル)を懸濁させた。この懸濁液に、上記で調製したA液を14〜18.5℃の範囲に保ちながら2時間50分かけて滴下した。18.5〜19℃の範囲に保ちながら1時間撹拌後、減圧下10〜22℃の範囲に保ちながら塩化メチレンを留去した。残液に純水150mL、濃塩酸9mL、およびハイドロサルファイト1.0gを加え洗浄した。その後、純水660mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールZオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は1.08モル/L、固形物濃度は222g/Lであった。以後、この得られた原料をZ−CFという。
続いて、水浴上に設置した1L反応容器に、Z−CF190g(溶液としての質量)、塩化メチレン285g、および4−tert−ブチルフェノール0.7gを仕込み、別途調製した水溶液(KOH18.6gをイオン交換水120mLに溶解した水溶液)に下記構造のモノマー(M−1)29gを混合した液を加え、20℃で混合した。
得られた混合物をメカニカルスターラーで混合しながら、トリエチルアミン(7vol%)を2mL添加した。反応熱を水浴で除熱しながら、1時間撹拌を継続した。
次いで、得られた反応混合物を塩化メチレン1000mLで希釈し、純水120mLを加え、コック付のセパラブルフラスコに投入し、15分撹拌した。反応混合物が水層と有機層に分離するまで静置後、下層(有機層)を分離した。
次いで、有機層を0.2NのKOH水溶液240mLで2回、0.02NのHCl水溶液240mLで1回、純水240mLで3回洗浄を行った。
得られた樹脂を温水中に投入し、ろ過、乾燥により樹脂固体を得た。
得られた樹脂の共重合組成モル比は、H−NMRにより決定した。また、得られた樹脂を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dLの溶液を作製し、20℃における還元粘度[ηSP/C]を測定したところ、結果は1.0dL/gであった。共重合組成モル比および還元粘度を表1に示す。
得られた樹脂を用いて、実施例1と同様にして、塗工液、キャストフィルム、およびコーティングフィルムを作製し、評価を行った。また、得られた樹脂の中間点ガラス転移温度(Tmg)を、前記測定方法により測定した。評価結果および測定結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1のモノマー(M−1)44gを、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(モノマーA)37gに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂を合成したが、得られた樹脂を乾燥したものは、塩化メチレン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等に不溶であり、構造の確認、塗工液作製、キャストフィルム作製、およびコーティングフィルム作製ができなかった。
[比較例2]
実施例2のモノマー(M−1)29gを、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(モノマーA)25gに変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂を合成した。
得られた樹脂の共重合組成モル比は、H−NMRにより決定した。また得られた樹脂を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dLの溶液を作製し、20℃における還元粘度[ηSP/C]を測定したところ、結果は1.0dL/gであった。共重合組成モル比および還元粘度を表1に示す。
得られた樹脂を用いて、実施例1と同様にして、塗工液、キャストフィルム、およびコーティングフィルムを作製し、評価した。また、得られた樹脂の中間点ガラス転移温度(Tmg)を、前記測定方法により測定した。評価結果および測定結果を表1に示す。
実施例1および実施例2で用いたモノマーの構造を下記に示す。
表1に示すように、実施例1および実施例2のPC樹脂は、いずれもガラス転移温度(Tg)が高く高耐熱性を有していながら、有機溶剤への初期溶解性が非常に良好で、溶液の安定性も長く良好であった。
一方、比較例1のPC樹脂は、ガラス転移温度(Tg)は高いものの、各種有機溶剤に溶解しなかった。また、比較例2のPC樹脂は、高いガラス転移温度(Tg)で、かつ、有機溶剤への初期溶解性も良好であったものの、溶液の安定性は1週間程度と短かった。

Claims (19)

  1. 下記一般式(1)で表される構成単位を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
    (前記一般式(1)中、XおよびXは、各々独立に、置換または無置換の炭素数6〜18のアリーレン基であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、Yは、置換または無置換の炭素数1〜6のアルキレン基である。)
  2. 請求項1に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    示差走査熱量測定により測定した中間点ガラス転移温度(Tmg)が、220℃以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  3. 請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    前記一般式(1)で表される構成単位が、下記一般式(10A)で表される構成単位を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
    (前記一般式(10A)中、X、X、およびYは、前記一般式(1)中のX、X、およびYと、それぞれ同義である。)
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    前記Xおよび前記Xが、各々独立に、フェニレン基またはナフチレン基であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    前記Xおよび前記Xが、フェニレン基であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  6. 請求項5に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    前記フェニレン基が無置換であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    前記Yがメチレン基であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    下記一般式(2)で表される構成単位を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
    [前記一般式(2)中、Xは、単結合または連結基であり、Xが連結基である場合の連結基は、
    −O−、
    −CO−、
    −S−、
    −SO−、
    −SO−、
    −CR
    置換または無置換の炭素数5〜12のシクロアルキリデン基、
    置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキリデン基、
    置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキレン基、
    置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキリデン基、
    置換または無置換の5〜20のトリシクロアルキレン基
    置換または無置換の炭素数2〜12のα,ω−アルキレン基、
    9,9−フルオレニリデン基、
    1,8−メンタンジイル基、
    2,8−メンタンジイル基、
    置換または無置換の炭素数6〜12のアリーレン基、
    下記一般式(3a)、下記一般式(3b)または下記一般式(3c)で表される二価の基、および
    下記一般式(4)で表される炭素数8〜16のアルキリデンアリーレンアルキリデン基からなる群から選択され、
    mおよびnは4であり、
    およびRは、各々独立に、
    水素原子、
    ハロゲン原子、
    置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、
    置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基、
    置換または無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、および
    置換または無置換の炭素数6〜12のアリールオキシ基からなる群から選択され、
    およびRは、各々独立に、
    水素原子、
    置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、および
    置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基からなる群から選択される。
    (前記一般式(3a)〜(3c)中、R、R、およびRは、各々独立に、前記Rおよび前記Rと同義であり、*は結合部分を示す。)
    (前記一般式(4)中、R、R、R10、およびR11は、各々独立に、前記Rおよび前記Rと同義であり、*は結合部分を示す。)]
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
    連鎖末端が一価の芳香族基または一価のフッ素含有脂肪族基で封止されていることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂と溶媒とを含むことを特徴とする塗工液。
  11. 請求項10に記載の塗工液であって、
    前記溶媒が、有機溶剤を含むことを特徴とする塗工液。
  12. 請求項11に記載の塗工液であって、
    前記有機溶剤の沸点が、160℃以下であることを特徴とする塗工液。
  13. 請求項11または請求項12に記載の塗工液であって、
    前記有機溶剤が、アミド系有機溶剤およびハロゲン系有機溶剤を含まないことを特徴とする塗工液。
  14. 請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の塗工液であって、
    前記有機溶剤が、非ハロゲン系有機溶剤を含むことを特徴とする塗工液。
  15. 請求項14に記載の塗工液であって、
    前記非ハロゲン系有機溶剤が、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンからなる群から選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする塗工液。
  16. 請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の塗工液を用いて成形してなる成形体。
  17. 請求項16に記載の成形体であって、
    前記成形体が、キャストフィルムであることを特徴とする成形体。
  18. 請求項16に記載の成形体であって、
    前記成形体が、コーティングフィルムであることを特徴とする成形体。
  19. 請求項16に記載の成形体を積層してなる積層体。
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