JP6335705B2 - ポリカーボネート樹脂、塗工液、成形体、および積層体 - Google Patents
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Description
例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性、機械的強度等の性質に優れていることから、いわゆるエンジニアリングプラスチックとして様々な産業分野において広く用いられている。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、一般に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノール−A〕に、ホスゲンやジフェニルカーボネート等の炭酸エステル形成性化合物を反応させて製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が用いられている。このビスフェルールAを原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性や機械的強度と成形性とのバランスが良好であることから、電気・電子機器や光学機器等の素材として多用されている。
例えば、特許文献1には、各種樹脂原料として適用可能なアントラセン誘導体が提案されている。また、特許文献2には、アントラセン骨格を有するフェノール樹脂が提案されている。また、特許文献3には、アントラセン骨格を有するビスフェノール型化合物を含むエポキシ樹脂が提案されている。さらに、特許文献4には、アダマンタン骨格を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が提案されている。
本発明の一態様に係る成形体は、本発明の一態様に係る塗工液を用いて成形してなる。
本発明の一態様に係る積層体は、本発明の一態様に係る成形体を積層してなる。
本実施形態のPC樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位を含む。当該PC樹脂は、ポリカーボネートの良好な特性(機械的性質、熱的性質、および電気的性質)を持ち、さらに、高いガラス転移温度(Tg)および溶媒、特に非ハロゲン系有機溶剤への良好な溶解性を有する。
本実施形態のPC樹脂は、示差走査熱量測定により測定した中間点ガラス転移温度(Tmg)が、220℃以上であることが好ましい。中間点ガラス転移温度(Tmg)は、JIS K7121に準拠した方法、具体的には実施例に記載の方法で、測定することができる。
前記一般式(1)で表される構成単位としては、下記一般式(10A)が挙げられる
また、X1およびX2は、無置換であることが好ましい。
また、Yは、無置換であることが好ましい。
−O−、
−CO−、
−S−、
−SO−、
−SO2−、
−CR3R4−
置換または無置換の炭素数5〜12のシクロアルキリデン基、
置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキリデン基、
置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキレン基、
置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキリデン基、
置換または無置換の5〜20のトリシクロアルキレン基
置換または無置換の炭素数2〜12のα,ω−アルキレン基、
9,9−フルオレニリデン基、
1,8−メンタンジイル基、
2,8−メンタンジイル基、
置換または無置換の炭素数6〜12のアリーレン基、
下記一般式(3a)、下記一般式(3b)または下記一般式(3c)で表される二価の基、および
下記一般式(4)で表される炭素数8〜16のアルキリデンアリーレンアルキリデン基からなる群から選択され、
mおよびnは4であり、
R1およびR2は、各々独立に、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、
置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、および
置換または無置換の炭素数6〜12のアリールオキシ基からなる群から選択され、
R3およびR4は、各々独立に、
水素原子、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、および
置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基からなる群から選択される。
X1を構成する置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキリデン基としては、例えば、ノルボルネン骨格の1つのメチレン鎖の2つの水素原子が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
X1を構成する置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキレン基としては、例えば、ノルボルネン骨格の任意の2か所の水素が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
X1を構成する置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキリデン基としては、例えば、2,2−アダマンチリデン基、ジシクロペンタジエンの1つのメチレン鎖の2つの水素原子が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
X1を構成する置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキレン基としては、例えば、1,3−アダマンチリレン基、ジシクロペンタジエンの任意の2か所の水素原子が結合部分に置き換わった基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
X1を構成する置換または無置換の炭素数2〜12のα,ω−アルキレン基としては、例えば、α,ω−エチレン基、α,ω−プロピレン基、α,ω−ブチレン基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
X1を構成する置換または無置換の炭素数6〜12のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、あるいはこれらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11を構成する置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11を構成する置換または無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11を構成する置換または無置換の炭素数6〜12のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、あるいは、これらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11を構成するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
また、本実施形態において、「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、前記置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
また、本実施形態において、「置換もしくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
また、本実施形態において、前記X1はアダマンタンジイル基であり、かつ、前記R1およびR2が水素原子であることも好ましい。
また、本実施形態において、前記X1はシクロヘキシリデン基であり、かつ、前記R1およびR2が水素原子であることも好ましい。
当該PC樹脂は、連鎖末端以外の構成単位が、前記一般式(1)で表される構成単位のみからなるPC樹脂であってもよく、前記一般式(1)で表される構成単位および前記一般式(2)で表される構成単位を含むPC樹脂であってもよい。
一価のフッ素含有脂肪族基は、芳香族基を含有する基であってもよい。
また、一価の芳香族基および一価のフッ素含有脂肪族基には、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基が付加していてもよい。これらの置換基には、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基がさらに付加していてもよい。また、置換基が複数ある場合、これらの置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。
芳香族基に付加する置換基や、芳香族基に付加しているアルキル基に付加する置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。また、芳香族基に付加する置換基として炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。このアルキル基は、上記のようにハロゲン原子が付加した基であってもよく、アリール基が付加した基であってもよい。
さらに、一価のフッ素含有脂肪族基としては、エーテル結合を2つ以上有するフッ素含有アルコールから誘導される一価の基も好ましい。このようなフッ素含有アルコールを用いることで、塗工液におけるPC樹脂の分散性が良くなり、成形体や電子写真感光体における耐摩耗性を向上させ、摩耗後の、表面潤滑性、撥水性および撥油性を保持することができる。
F(CF2)m1CH2OH・・・(31)
F−(CF2CF2)n 32−(CF2CF2O)n 33−CF2CH2OH・・・(33)
CR3−(CF2)n 35−O−(CF2CF2O)n 34−CF2CH2OH・・・(34)
前記一般式(33)において、n32は0〜5の整数であり、好ましくは、0〜3の整数である。n33は1〜5の整数であり、好ましくは、1〜3の整数である。
前記一般式(34)において、n34は1〜5の整数であり、好ましくは、1〜3の整数である。n35は0〜5の整数であり、好ましくは、0〜3の整数である。Rは、CF3またはFである。
前記一般式(6)において、Rfは、炭素数が5以上、かつ、フッ素原子数が11以上であるパーフルオロアルキル基、あるいは下記一般式(7)で表されるパーフルオロアルキルオキシ基を示す。
また、前記一般式(2)で表される構成単位を含む場合、前記一般式(1)で表される構成単位のモル百分率が、1モル%以上100モル%未満、かつ、前記一般式(2)で表される構成単位のモル百分率が、0モル%超99モル%以下であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される構成単位が1モル%以上であれば、耐熱性と溶解性がより良好となる。つまり、残りの構成単位の特徴に特性が依存することなく、良好な耐熱性と良好な溶解性を両立することができ、耐熱性および溶解性の改善効果が十分に得られる。
以下に、本実施形態のPC樹脂の合成方法の一例を示す。
本実施形態のPC樹脂は、例えば、下記一般式(100)で示すビスクロロホーメートオリゴマーと、下記一般式(15)に示すモノマーとを、酸結合剤存在下で界面重縮合をさせることで、好適に炭酸エステル結合を形成させて、得られる。また、本実施形態のPC樹脂は、下記一般式(100)で示すビスクロロホーメートオリゴマーと、下記一般式(15)に示すモノマーと、下記一般式(16)に示す二価フェノール性化合物とを、酸結合剤存在下で界面重縮合させることで、好適に炭酸エステル結合を形成させて、得られる。PC樹脂のこれらの合成反応は、例えば、前記一般式(5)および(6)で表される末端封止剤の存在下で行われる。また、PC樹脂のこれらの合成反応において、必要に応じて分岐剤も使用される。
平均量体数(n)=1+(Mav−M1)/M2・・・(数1)
(式(数1)において、Mavは(2×1000/(CF価))であり、M2は(M1−98.92)であり、M1は前記一般式(100)において、n11=1のときのビスクロロホーメートオリゴマーの分子量であり、CF価(N/kg)は(CF値/濃度)であり、CF値(N)は反応溶液1Lに含まれる前記一般式(100)で表されるビスクロロホーメートオリゴマー中のクロル原子数であり、上記固形物濃度(kg/L)は反応溶液1Lを濃縮して得られる固形分の量である。ここで、98.92は、ビスクロロホーメートオリゴマー同士の重縮合で脱離する2個の塩素原子、1個の酸素原子および1個の炭素原子の合計の原子量である。)
例えば、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−(パーフルオロヘキシル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、p−パーフルオロオクチルフェノール、1−(p−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、p−〔2−(1H,1H−パーフルオロトリドデシルオキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸等が好適に用いられる。
これら分岐剤の添加割合は、共重合組成のモル百分率で30モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。分岐剤の添加割合が30モル%以下であると、成形性の低下を抑制できる。
さらに、必要に応じて、本実施形態のPC樹脂の反応系に亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイト塩等の酸化防止剤を少量添加してもよい。
まず、塩化メチレン等の疎水性溶媒にホスゲンを加えて、さらに前記一般式(16)のビスフェノール化合物を懸濁させ、第一の溶液を形成する。一方、トリエチルアミン等の第三級アミンを塩化メチレン等の疎水性溶媒に溶解させて第二の溶液を形成し、この第二の溶液を前記第一の溶液に滴下して、反応させる。得られた反応混合物を含む第三の溶液に塩酸と純水を加えて洗浄し、低量体数のポリカーボネートオリゴマーを含む有機層を得る。
滴下温度や反応温度は、通常−10℃以上40℃以下であり、好ましくは0℃以上30℃以下である。滴下時間、反応時間は、共に、通常15分間以上4時間以下、好ましくは30分間以上3時間程度である。このようにして得られるポリカーボネートオリゴマーの平均量体数(n11)は、好ましくは1.0以上5.0以下であり、より好ましくは1.0以上1.9以下であり、さらに好ましくは1.0以上1.3以下である。
当該製造方法により製造されたポリカーボネートオリゴマーを用いると、PC樹脂製造時の洗浄工程を簡略化できること等の点で好ましい。
反応圧力は、減圧、常圧、または加圧のいずれでもよいが、通常は、常圧もしくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応時間は、反応温度によって左右されるが、通常0.5分間以上10時間以下であり、好ましくは1分間以上3時間程度である。
また、このPC樹脂は、前記一般式(1)で表される構成単位や、前記一般式(2)で表される構成単位以外の構成単位を有するポリカーボネート単位や、ポリエステル構造を有する単位、ポリエーテル構造を有する単位を含有していてもよい。
また、得られた反応生成物(粗生成物)は、公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のPC樹脂として回収することができる。
本実施形態の塗工液は、少なくとも本実施形態のPC樹脂、および当該PC樹脂を溶解、または分散可能な溶媒を含む。また、塗工液には、上記PC樹脂および溶媒以外に、低分子化合物、染料、顔料等の着色剤、電荷輸送材、電子輸送材、正孔輸送材、電荷発生材料等の機能性化合物、無機または有機のフィラー、ファイバー、微粒子等の充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸捕捉剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、塗工液には、他の樹脂を含んでいてもよい。これらPC樹脂以外に含まれてもよい添加剤や他の樹脂としては、PC樹脂に含まれる物質として公知の物質を用いることができる。
非ハロゲン系有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒や、パラキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、あるいはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒等を挙げることができ、中でも、本実施形態のPC樹脂の溶解性が高いことから、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを、1種または2種以上含む有機溶剤が好ましい。
本実施形態の塗工液中、本実施形態のPC樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態の塗工液は、成形性に優れるため、各種成形体に用いることもできる。
本実施形態のPC樹脂および本実施形態の塗工液の少なくとも一方を用いて、成形体を形成することができる。
成形体としては、当該塗工液をコーティングしてなるドラムおよびロール、当該塗工液を流延法にて成形してなるキャストフィルム、並びに当該塗工液を塗布法にて成形してなるコーティングフィルム等が挙げられる。キャストフィルムやコーティングフィルムの膜厚は用途により適宜設定できる。通常、キャストフィルムの膜厚は10μm〜500μm程度、コーティングフィルムにおけるコーティング層の膜厚は0.1μm〜100μm程度である。
コーティング方法としては、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、スクリーンコート、スピンコート、フローコート等の方法を挙げることができる。
本実施形態の成形体を積層して、積層体を形成することもできる。
本実施形態の積層体は、例えば、前記成形体を基材に積層することで形成することができる。
コーティングフィルム等の積層成形体を製造する際に使用される基材は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環系ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂等のプラスチック基材、アルミニウム等の金属基材、ガラス、紙、木質材、および石材等の無機質基材、電着塗装板、並びにラミネート板等を挙げることができる。
また、積層体の基材がフィルム状である場合、積層体の一態様としての積層フィルムは、例えば、インモールド成型用フィルムや加飾フィルムとして適用できる。その他、当該積層フィルムは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に使用されるタッチパネル用フィルム、光学補償フィルムや反射防止フィルム等の光学フィルム、および導電性フィルムとしても適用できる。
トリエチルアミン111g(1.10モル)を塩化メチレン300mLで希釈した溶液(A液)を調製した。別の反応容器に、塩化メチレン2.7Lを投入し、次いでホスゲン166gを吹き込み、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(モノマーA)177g(0.56モル)を懸濁させた。この懸濁液に、上記で調製したA液を14〜18.5℃の範囲に保ちながら2時間50分かけて滴下した。18.5〜19℃の範囲に保ちながら1時間撹拌後、減圧下10〜22℃の範囲に保ちながら塩化メチレンを留去した。残液に純水150mL、濃塩酸9mL、およびハイドロサルファイト1.0gを加え洗浄した。その後、純水660mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するAdオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.83モル/L、固形物濃度は196g/Lであった。以後、この得られた原料をAd−CFという。
続いて、水浴上に設置した1L反応容器に、Ad−CF367g(溶液としての質量)、塩化メチレン423g、および4−tert−ブチルフェノール0.7gを仕込み、別途調製した水溶液(KOH22.4gをイオン交換水200mLに溶解した水溶液)に下記構造のモノマー(M−1)44gを混合した液を加え、20℃で混合した。
得られた混合物をメカニカルスターラーで混合しながら、トリエチルアミン(7vol%)を2mL添加した。反応熱を水浴で除熱しながら、1時間撹拌を継続した。
次いで、得られた反応混合物を塩化メチレン1000mLで希釈し、純水80mLを加え、コック付のセパラブルフラスコに投入し、15分撹拌した。反応混合物が水層と有機層に分離するまで静置後、下層(有機層)を分離した。
次いで、有機層を0.2NのKOH水溶液300mLで2回、0.02NのHCl水溶液300mLで1回、純水300mLで3回洗浄を行った。
得られた樹脂を温水中に投入し、ろ過、乾燥により樹脂固体を得た。
得られた樹脂2.5gをジオキソラン20mLに溶解し、塗工液を作製した。
溶解性の評価として、初期溶解性および安定性を、作製した塗工液を観察することにより評価した。
初期溶解性は、不溶分の有無、濁り(ヘイズ)の有無、およびゲル化発生の有無を目視にて観察し、いずれも見られなければ良好とした。
安定性は、上記塗工液を室温に静置し、溶解後1ヶ月の期間で、不溶解分の生成、濁り(ヘイズ)の有無、およびゲル化発生有無を目視にて観察し、いずれも見られなければ良好とした。
塗工液作製から1週間後、塗工液20mLを直径150mmのガラス製シャーレに展開した。風乾により溶剤を除去後、常圧で室温から50℃まで段階的に温度を上げ、5時間乾燥を行った後、減圧乾燥を行った(50℃、8時間、その後100℃、8時間)。シャーレからフィルムを剥がし、さらに減圧乾燥(150℃、14時間)を行い、膜厚0.1mmのキャストフィルムを得た。得られたフィルムの外観を目視にて観察し、透明で、曇りが無いものを良好とした。
塗工液作製から1週間後、塗工液6mLを、ギャップ250μmのアプリケータを用い、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布した。風乾により溶剤を除去後、常圧で室温から50℃まで段階的に温度を上げ、5時間乾燥を行った後、減圧乾燥を行い(50℃、8時間、その後100℃、8時間)、膜厚0.02mmのコーティングフィルムを得た。得られたコーティングフィルムの外観を目視にて観察し、透明で、曇りが無いものを良好とした。
<ガラス転移温度の測定方法>
得られた樹脂のガラス転移温度を、以下の通り測定した。
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(型番DIAMOND DSC)を用い、JIS K7121に準拠した方法により下記条件で測定した。
20℃/分で30℃から330℃に昇温の条件で、連続して2回測定を行った2回目の中間点ガラス転移温度を計測した。
トリエチルアミン111g(1.10モル)を塩化メチレン300mLで希釈した溶液(A液)を調製した。別の反応容器に、塩化メチレン2.7Lを投入し、次いでホスゲン166gを吹き込み、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)150g(0.56モル)を懸濁させた。この懸濁液に、上記で調製したA液を14〜18.5℃の範囲に保ちながら2時間50分かけて滴下した。18.5〜19℃の範囲に保ちながら1時間撹拌後、減圧下10〜22℃の範囲に保ちながら塩化メチレンを留去した。残液に純水150mL、濃塩酸9mL、およびハイドロサルファイト1.0gを加え洗浄した。その後、純水660mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールZオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は1.08モル/L、固形物濃度は222g/Lであった。以後、この得られた原料をZ−CFという。
続いて、水浴上に設置した1L反応容器に、Z−CF190g(溶液としての質量)、塩化メチレン285g、および4−tert−ブチルフェノール0.7gを仕込み、別途調製した水溶液(KOH18.6gをイオン交換水120mLに溶解した水溶液)に下記構造のモノマー(M−1)29gを混合した液を加え、20℃で混合した。
得られた混合物をメカニカルスターラーで混合しながら、トリエチルアミン(7vol%)を2mL添加した。反応熱を水浴で除熱しながら、1時間撹拌を継続した。
次いで、得られた反応混合物を塩化メチレン1000mLで希釈し、純水120mLを加え、コック付のセパラブルフラスコに投入し、15分撹拌した。反応混合物が水層と有機層に分離するまで静置後、下層(有機層)を分離した。
次いで、有機層を0.2NのKOH水溶液240mLで2回、0.02NのHCl水溶液240mLで1回、純水240mLで3回洗浄を行った。
得られた樹脂を温水中に投入し、ろ過、乾燥により樹脂固体を得た。
実施例1のモノマー(M−1)44gを、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(モノマーA)37gに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂を合成したが、得られた樹脂を乾燥したものは、塩化メチレン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等に不溶であり、構造の確認、塗工液作製、キャストフィルム作製、およびコーティングフィルム作製ができなかった。
実施例2のモノマー(M−1)29gを、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(モノマーA)25gに変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂を合成した。
得られた樹脂の共重合組成モル比は、1H−NMRにより決定した。また得られた樹脂を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dLの溶液を作製し、20℃における還元粘度[ηSP/C]を測定したところ、結果は1.0dL/gであった。共重合組成モル比および還元粘度を表1に示す。
得られた樹脂を用いて、実施例1と同様にして、塗工液、キャストフィルム、およびコーティングフィルムを作製し、評価した。また、得られた樹脂の中間点ガラス転移温度(Tmg)を、前記測定方法により測定した。評価結果および測定結果を表1に示す。
一方、比較例1のPC樹脂は、ガラス転移温度(Tg)は高いものの、各種有機溶剤に溶解しなかった。また、比較例2のPC樹脂は、高いガラス転移温度(Tg)で、かつ、有機溶剤への初期溶解性も良好であったものの、溶液の安定性は1週間程度と短かった。
Claims (18)
- 下記一般式(1)で表される構成単位と、下記一般式(2)で表される構成単位と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[前記一般式(2)中、X 1 は、単結合または連結基であり、X 1 が連結基である場合の連結基は、
−O−、
−CO−、
−S−、
−SO−、
−SO 2 −、
−CR 3 R 4 −
置換または無置換の炭素数5〜12のシクロアルキリデン基、
置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキリデン基、
置換または無置換の炭素数5〜15のジシクロアルキレン基、
置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキリデン基、
置換または無置換の炭素数5〜20のトリシクロアルキレン基
置換または無置換の炭素数2〜12のα,ω−アルキレン基、
9,9−フルオレニリデン基、
1,8−メンタンジイル基、
2,8−メンタンジイル基、
置換または無置換の炭素数6〜12のアリーレン基、
下記一般式(3a)、下記一般式(3b)または下記一般式(3c)で表される二価の基、および
下記一般式(4)で表される炭素数8〜16のアルキリデンアリーレンアルキリデン基からなる群から選択され、
mおよびnは4であり、
R 1 およびR 2 は、各々独立に、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、
置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、および
置換または無置換の炭素数6〜12のアリールオキシ基からなる群から選択され、
R 3 およびR 4 は、各々独立に、
水素原子、
置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基、および
置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基からなる群から選択される。
- 請求項1に記載のポリカーボネート樹脂であって、
示差走査熱量測定により測定した中間点ガラス転移温度(Tmg)が、220℃以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。 - 請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂であって、
前記一般式(1)で表される構成単位が、下記一般式(10A)で表される構成単位を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
前記X1および前記X2が、各々独立に、フェニレン基またはナフチレン基であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
前記X1および前記X2が、フェニレン基であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。 - 請求項5に記載のポリカーボネート樹脂であって、
前記フェニレン基が無置換であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
前記Yがメチレン基であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂であって、
連鎖末端が一価の芳香族基または一価のフッ素含有脂肪族基で封止されていることを特徴とするポリカーボネート樹脂。 - 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂と溶媒とを含むことを特徴とする塗工液。
- 請求項9に記載の塗工液であって、
前記溶媒が、有機溶剤を含むことを特徴とする塗工液。 - 請求項10に記載の塗工液であって、
前記有機溶剤の沸点が、160℃以下であることを特徴とする塗工液。 - 請求項10または請求項11に記載の塗工液であって、
前記有機溶剤が、アミド系有機溶剤およびハロゲン系有機溶剤を含まないことを特徴とする塗工液。 - 請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の塗工液であって、
前記有機溶剤が、非ハロゲン系有機溶剤を含むことを特徴とする塗工液。 - 請求項13に記載の塗工液であって、
前記非ハロゲン系有機溶剤が、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンからなる群から選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする塗工液。 - 請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の塗工液を用いて成形してなる成形体。
- 請求項15に記載の成形体であって、
前記成形体が、キャストフィルムであることを特徴とする成形体。 - 請求項15に記載の成形体であって、
前記成形体が、コーティングフィルムであることを特徴とする成形体。 - 請求項15に記載の成形体を積層してなる積層体。
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