JP2016024347A - 定着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】開磁路を形成する磁性芯材を円筒形回転体の内部に挿通し、芯材の周りでかつ回転軸線に交差する方向に巻線が巻き回され、円筒形回転体の軸方向に磁界を発生させることで円筒形回転体は発熱させる電磁誘導方式の定着装置において、取りうる駆動周波数によっては円筒形回転体の長手方向の温度が変化してしまい、光沢ムラやトナーのオフセットが発生してしまう。
【解決手段】取りうる駆動周波数の下限値において円筒形回転体の軸方向で最大温度を取る箇所にサーミスタを配置し、取りうる駆動周波数の上限値において円筒形回転体の軸方向で最大温度を取る箇所にサーミスタを配置する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電磁誘導電流によって筒状の金属部材自身が直接発熱する方式を用いて記録材上のトナー像を加熱する定着装置に関するものである。
電子写真方式の画像形成装置は、記録材上に形成したトナー像を加熱及び加圧することで記録材にトナーを定着する。定着の方式としては、セラミックヒータ等による発熱体が加熱部材へ熱を供給するセラミックヒータ方式や、励磁コイルが生成する磁場により加熱部材内に電流を流し、その際発生するジュール熱により加熱部材自身が発熱する電磁誘導方式等が挙げられる。電磁誘導方式では加熱部材自身が発熱するため、加熱部材以外への余分な熱損失が少なくセラミックヒータ加熱方式に比べ熱効率の優れた定着方式であると考えられる。
図17に特許文献1で開示されている電磁誘導方式の定着装置の一例を示す。この定着装置は主に筒状の加熱ロール201と弾性体である加圧ロール205、分割コア202、コイルボビン204、励磁コイル203、及び不図示の加圧機構からなる。加熱ロール201の内部で、所定の間隔にて分割コア202を配置し、分割コア202の外側にコイルボビン204及び励磁コイル203を配置する。
励磁コイル203は加熱ロール201の回転方向に巻かれており、この励磁コイル203に電流を流す事で分割コア202が軸X方向へ磁化する。電磁誘導により、この時発生する磁力線の変化を妨げる向きに加熱ロール201の内部に電流が流れ、加熱ロール201が発熱する。不図示の加圧機構により加熱ロール201と加圧ロール205の間に定着ニップNを形成し、この定着ニップN内にて記録材を挟持搬送することで記録材上のトナー像を定着する。
特開2004−341164号公報
しかしながら励磁コイル203に流す高周波電流の周波数により、軸X方向位置で加熱ロール201の温度が異なる事がわかった。具体的には、軸X方向における中央部と端部で加熱ロール201の温度を比較すると、周波数が高い場合には軸X方向端部の方が温度が高くなり、周波数が低い場合には軸X方向中央部の方が温度が高くなる。
従来、加熱ロール201の特定部位の温度を測定し、その測定温度に基づき加熱ロール全領域が適正温度範囲に収まるように制御する。しかし、周波数により加熱ロール軸X方向の温度分布が変化すると、この従来の方法では加熱ロール全体を適正温度範囲に収めることができないことがあった。そのため軸X方向での光沢ムラであったり、特に適正温度範囲から高温側へ外れた領域においてトナーが加熱部材201側へオフセットしてしまうといった問題がある。
本発明は上記課題を解決するため、取りうる駆動周波数範囲内でどの駆動周波数であっても、加熱部材としての回転体の通紙領域の温度が適正温度範囲に収まるように温度制御ができる定着装置の提案を目的とする。
上記の目的を達成するための本発明の定着装置の代表的な構成は、導電層を有する筒状の回転体と、前記回転体の中空部に挿通され前記回転体の母線方向に長い磁性芯材と、前記中空部において前記磁性芯材の外側に前記母線方向に交差する方向に前記磁性芯材に直接もしくは他物を介して巻かれた励磁コイルと、を有し、前記励磁コイルに交番電流を流すことで前記導電層が電磁誘導により発熱し画像を記録材に定着する定着装置において、前記磁性芯材は前記回転体の外側でループを形成しておらず、前記回転体の温度を測定する温度検知素子を有し、前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲において、前記回転体の母線方向で前記回転体の温度が最大となる箇所の温度を測定できるように前記温度検知素子が配置されていることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、取りうる駆動周波数範囲内において回転体の母線方向における最も高い温度を知ることができ、その結果光沢ムラ及びトナーのオフセットを防止できる。
実施例1の定着装置において、軸方向位置の温度分布測定結果図 実施例1の定着装置を用いた画像形成装置の概略構成図 実施例1の定着装置の要部の横断側面模型図 実施例1の定着装置の要部の斜視図 2種類の磁性コアを説明する図 磁性コア付近に存在する磁界説明図 図5(a)の磁気等価回路図 発熱層の外側を通る磁束比率と変換効率の関係を得るための実験構成図 発熱層の外側を通る磁束比率と変換効率の関係の実験結果図 1次コイルと2次コイルを巻いた形状の同心軸トランスの磁気結合を示す図 等価回路を示す図 磁性コアに対する位置と等価インダクタンスの関係を示す図 一様な磁界中に存在する磁界と磁性コアの境界条件を示す図 みかけの透磁率を考慮した等価回路を示す図 みかけの透磁率及び巻き数による合成インピーダンスへの影響を説明する図 2つの温度検知素子を用いた温度制御を説明する図 従来例の電磁誘導方式定着装置の要部の斜視図
《実施例1》
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下実施形態に記載する構成部品の材質、形状、相対的位置等は特に記載の無い限りは限定する趣旨のものではない。
<画像形成装置例の全体構成>
図2は本実施例の定着装置を用いた画像形成装置100の概略構成図である。画像形成装置100は、電子写真方式のレーザービームプリンタである。
101は像担持体としての感光体ドラムであり、矢示の時計方向に所定のプロセススピード(周速度)にて回転駆動する。感光体ドラム101はその回転過程で帯電ローラ102により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。
103は画像露光手段としてのレーザービームスキャナであり、不図示のコンピュータ等の外部機器から入力されるデジタル画素信号に対応してオン/オフ変調されたレーザー光113を出力して、感光体ドラム101の帯電処理面を走査露光する。この走査露光により感光体ドラム101表面の露光明部の電荷が除電されて感光体ドラム101表面に画像情報に対応した静電潜像が形成される。
104は現像装置であり、現像ローラ104aから感光体ドラム101表面に現像剤(トナー)が供給されて、感光体ドラム101表面の静電潜像は、可転写像であるトナー像として順次に現像される。105は給送カセットであり、記録材114を積載収納させてある。給送スタート信号に基づいて給送ローラ106が駆動されて、給送カセット105内の記録材114は、一枚ずつ分離給送される。そして、レジストローラ対107を介して、感光体ドラム101と接触して従動回転する転写ローラ108との当接ニップ部である転写部位108Tに、所定のタイミングで導入される。
すなわち、感光体ドラム101上のトナー像の先端部と記録材114の先端部とが、同時に転写部位108Tに到達するように、レジストローラ107で記録材114の搬送が制御される。その後、記録材114は転写部位108Tを挟持搬送され、その間、転写ローラ108には不図示の転写バイアス印加電源から所定に制御された転写電圧(転写バイアス)が印加される。転写ローラ108にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加され、転写部位108Tにおいて感光体ドラム101表面側のトナー像が記録材114の表面に静電的に転写される。
転写後の記録材114は、感光体ドラム101表面から分離されて搬送ガイド109を通り加熱装置としての定着装置115に導入される。定着装置115では、トナー画像21(図3)の熱定着処理を受ける。一方、記録材114に対するトナー像転写後の感光体ドラム101表面はクリーニング装置110で転写残トナーや紙粉等の除去を受けて清浄面化され、繰り返して作像に供される。定着装置115を通った記録材114は、排出口111から排出トレイ112上に排出される。
<定着装置>
本実施例において、定着装置115は電磁誘導加熱方式の装置である。図3は本例の定着装置115の要部の横断側面模型図である。加圧回転体としての加圧ローラ8は、芯金8aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させたシリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂などの耐熱性・弾性材層8bとで構成されており、表層に離型層8cを設けてある。
例えば、離型層8cはフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、FEP等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択することができる。また、弾性層8bは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等で耐熱性がよく、熱伝導率がよい材質が好ましい。
1は導電層を有する筒状の回転体である定着ローラ(定着スリーブ)である。この定着ローラ1が電磁誘導により発熱し画像を記録材に定着する加熱部材である。本実施例において、この定着ローラ1は、基層としての筒状の発熱層(導電層)1aと、その外周面に順次に積層された弾性層1bおよび離型層1cとで構成されている。発熱層1aは電磁誘導発熱性部材である導電性金属部材である。発熱層1aを不図示の加圧手段により加圧ローラ8の方向へ総圧約100N〜500Nの押圧力で押圧する。これにより、定着ローラ1と加圧ローラ8との間に記録材搬送方向において所定幅の定着ニップNは形成される。
本実施例においては、加圧ローラ8が不図示の駆動手段により矢印の反時計方向に回転駆動され、定着ニップNにおける加圧ローラ8との摩擦力で定着ローラ1が矢印の時計方向に従動して回転する。
本実施例では発熱層1aは厚み1.0mmのSUSを採用する。発熱層1aの厚みは、加圧時の撓みに対する剛性と、発熱層1aの発熱量により最適な値が決まる。発熱層1aの厚みと発熱量の関係は後に記述する。
弾性層1b及び離型層1cは加圧ローラ8の弾性層8b同様耐熱性に優れた材質が望ましい。本実施例の構成では、弾性層1bとして厚さ2.0mm、JIS−A硬度15°〜25°のシリコーンゴムを採用し、離型層1cとして厚さ50μmのPFAチューブを採用する
図4は定着装置115の要部の斜視図である。定着ローラ1の内部にて、回転軸線方向(定着ローラ1の母線方向)Xに磁性芯材としての磁性コア2が不図示の固定手段で定着ローラ1の中空部に貫通(挿通)して配置されている。即ち、定着ローラ1の中空部には、定着ローラ1の母線方向に長い磁性コア2が挿通されている。磁性コア2は、定着ローラ1の外側でループを形成しない形状、つまり有端形状であり、磁路の一部が断絶した開磁路を形成している。
励磁コイル3は、通常の単一導線を定着ローラ1の中空部において、磁性コア2に螺旋状に巻き回して形成される。即ち、励磁コイル3は、中空部において磁性コアの外側に前記母線方向に交差する方向に磁性コアに直接もしくはボビンなどの他物を介して巻かれている。そのため、この励磁コイル3に給電接点部3a,3bを介して高周波コンバータ16などで高周波電流(交番電流、交流電流)を流すと、定着ローラ1の母線方向に平行な方向に磁束を発生させることができる。
本実施例では巻き数70巻で構成している。また、詳細は後述するが、長手中央部に比べて端部の方が密度が高くなるようにコイルを巻き回し励磁コイル3を形成している。その外側の絶縁部材4により、励磁コイル3と発熱層1aとの絶縁が図られている。
励磁コイル3は回転体としての定着ローラ1の内部にて、定着ローラ1の母線方向に交差する方向に巻き回されている。そのため、この励磁コイル3に給電接点部3a,3bを介して高周波コンバータ16などで高周波電流(交番電流、交流電流)を流すと、定着ローラ1の母線方向に平行な方向に磁束を発生させることができる。磁性コア2は、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着ローラ1の内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。
定着ローラ1の温度検知は温度検知素子としてのサーミスタ9、10によって行う。図3および図4に示すように、記録材114が定着装置115に搬送されてくる側の、長手中央および端部の定着ローラ対向位置にサーミスタ9、10を配設する。高周波コンバータ16の駆動周波数は20kHz〜35kHzを採用し、サーミスタ9、もしくはサーミスタ10の検知温度が目標温度(約150℃〜200℃)になるように制御部15が出力電圧を制御する。本発明の特徴であるサーミスタ9、10の具体的な位置は後述する。
<発熱原理>
図5の(a)を用いて本実施例の定着装置の発熱メカニズムについて説明する。コイル3に交流電流を流して生じた磁力線が定着ローラ1の筒状の発熱層1の内側の磁性コア2の内部を発熱層1aの母線方向(SからNに向かう方向)に通過し、磁性コア2の一端(N)から発熱層の外側に出て磁性コア2の他端(S)に戻る。その結果、発熱層1aの内側を発熱層1aの母線方向に貫く磁束の増減を妨げる方向の磁力線を発生させる誘導起電力が発熱層1aに生じて発熱層1aの周方向に電流が誘導される。この誘導電流によるジュール熱で発熱層1aが発熱する。
この発熱層1aの熱が弾性層1bと離型層1cに伝達され定着ローラ1全体が加熱され、定着ニップNに導入される記録材114を加熱して未定着トナー画像21の定着がなされる。
この発熱層1aに生じる誘導起電力Vの大きさは、下記の式(1)から発熱層1aの内部を通過する単位時間当たりの磁束の変化量(Δφ/Δt)及びコイルの巻き数に比例する。
V=−N(Δφ/Δt) ・・・(1)
<発熱層の外側を通る磁束の割合と電力の変換効率との関係>
ところで、図5の(a)の磁性コア2はループを形成しておらず端部を有する形状である。図5の(b)のような磁性コア2が発熱層1aの外でループを形成している定着装置における磁力線は、磁性コア3に誘導されて発熱層1aの内側から外側に出て内側に戻る。
しかしながら、本実施例のように磁性コア2が端部を有する構成の場合、磁性コア2の端部から出た磁力線を誘導するものはない。そのため、磁性コア2の一端を出た磁力線が磁性コア2の他端に戻る経路(NからS)は、発熱層1aの外側を通る外側ルートと、発熱層1aの内側を通る内側ルートと、のいずれも通る可能性がある。以後、発熱層1aの外側を通って磁性コア2のNからSに向かうルートを外側ルート、発熱層1aの内側を通って磁性コア2のNからSに向かうルートを内側ルートと呼ぶ。
この磁性コア2の一端から出た磁力線のうち外側ルートを通る磁力線の割合は、コイル3に投入した電力のうち発熱層1aの発熱で消費される電力(電力の変換効率)と相関があり、重要なパラメータである。外側ルートを通る磁力線の割合が増加する程、コイル3に投入した電力のうち発熱層1aの発熱で消費される電力の割合(電力の変換効率)は高くなる。
この理由は、トランスにおいて漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと原理は同じである。つまり、本実施例においては、磁性コア2の内部を通過する磁束と、外側ルートを通過する磁束の数が近い程、電力の変換効率は高くなり、コイル3に流した高周波電流を発熱層1aの周回電流として効率よく電磁誘導できることになる。
これは、図5の(a)におけるコア2の内部をSからNに向かう磁力線と、内側ルートを通る磁力線は向きが反対であるから、磁性コア2を含めた発熱層1aの内側全体で見ると、これらの磁力線は打ち消しあうことになる。その結果、発熱層1aの内側全体をSからNに向かって通過する磁力線の数(磁束)が減り単位時間当たりの磁束の変化量が小さくなる。単位時間当たりの磁束の変化量が減少すると、発熱層1aに生じる誘導起電力が小さくなり、発熱層の発熱量が小さくなる。
以上述べたことから、本実施例の定着装置は必要な電力の変換効率を得るために外側ルートを通る磁力線の割合を管理することが重要になる。
<発熱層の外側を通る磁束の割合を示す指標>
そこで、定着装置115における外側ルートを通る磁力線の割合を磁力線の通り易さをパーミアンスという指標を用いて表す。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁力線が通る磁路の回路を電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができる。磁気回路は、電気回路に関するオームの法則が適用可能である。電気回路の電流に対応する磁束をφと、起電力に対応する起磁力をVと、電気抵抗に対応する磁気抵抗をRと、すると、次の式(2)を満たす。
φ=V/R ・・・(2)
しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。パーミアンスPを用いると、上式(2)は次の式(3)ように表せる。
φ=V×P ・・・(3)
更に、このパーミアンスPは、磁路の長さをBと、磁路の断面積をSと、磁路の透磁率をμと、すると下記の式(4)のように表せる。
P=μS/B ・・・(4)
パーミアンスPは、断面積S及び透磁率μに比例し、磁路の長さBに反比例する。
図6の(a)は、発熱層1aの内側に、半径a1[m]、長さB[m]、比透磁率μ1の磁性コア2に、コイル3を螺旋軸が発熱層1aの母線方向と略平行になるようにN[回]巻いたものを表した図である。ここで、発熱層1aは、長さB[m]、内径a2[m]、外径a3[m]、比透磁率μ2の導体である。発熱層1aの内側及び外側の真空の透磁率をμ0[H/m]とする。コイル3に電流I[A]を流したときに、磁性コア2の単位長さ当たりに発生する磁束をφc(x)とする。
図6の(b)は、磁性コア2の長手方向に垂直な断面図である。図中の矢印は、コイル3に電流Iを流したときに、磁性コア2の内部、発熱層1aの内側、発熱層1aの外側を通る磁性コア2の長手方向に平行な磁束を表している。磁性コア2の内部を通る磁束をφc(=φc(x))、発熱層1aの内側(発熱層1aと磁性コア2の間の領域)を通る磁束をφa_in、発熱層そのものを通る磁束をφs、発熱層の外側を通る磁束をφa_outとする。
図7の(a)に、図5の(a)に示した単位長さ当たりのコア2、コイル3、発熱層1aを含む空間の磁気等価回路を示す。磁性コア2を通る磁束φcにより生じる起磁力をVm、磁性コア2のパーミアンスをPc、発熱層1aの内側のパーミアンスをPa_in、発熱層1aの内部のパーミアンスをPs、発熱層1aの外側のパーミアンスをPa_outとする。
ここで、PcがPa_in及びPsに比べて十分に大きい時、磁性コア2の内部を通過して磁性コア2の一端から出た磁束は、φa_in、φs、φa_outの何れかを通過して磁性コア2の他端に戻ると考えられる。よって、以下の関係式(5)が成り立つ。
φc=φa_in+φs+Pa_out ・・・(5)
また、φc、φa_in、φs、φa_outはそれぞれ以下の式(6)〜(9)で表される。
φc=Pc×Wm ・・・(6)
φs=Ps×Wm ・・・(7)
φa_in=Pa_in×Wm ・・・(8)
φa_out=Pa_out×Wm ・・・(9)
よって、式(5)に(6)〜(9)を代入するとPa_outは次の式(10)示すように表される。
Pa_out=Pc−Pa_in−Ps ・・・(10)
図6の(b)より、磁性コア2の断面積をSc、発熱層1aの内側の断面積をSa_in、発熱層1a自身の断面積をSsとすると、パーミアンスは「透磁率×断面積」で表すことができる。単位は[H・m]である。
Pc=μ1c=μ1×πa1 2 ・・・(11)
Pa_in=μ0Sa_in=μ0×π(a2 2−a1 2) ・・・(12)
Ps=μ2Ss=μ2×π(a3 2−a2 2) ・・・(13)
これらの(11)〜(13)を式(10)に代入すると、Pa_outは式(14)で表せる。
Pa_out=μ1×πa1 2−μ0×π(a2 2−a1 2)−μ2×π(a3 2−a2 2
・・・(14)
上記の式(14)を使用することによって発熱層1aの外側を通る磁力線の割合であるPa_out/Pcを計算することができる。
尚、パーミアンスPの代わりに磁気抵抗Rを用いても良い。磁気抵抗Rを用いて議論する場合、磁気抵抗Rは単純にパーミアンスPの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことができて、単位は「1/(H・m)」である。
以下、実施例の装置のパラメータを使用して具体的な計算した結果を表1に示す。
磁性コア2は、フェライト(比透磁率1800)で形成され、直径14[mm]であって、断面積は1.5×10-4[m2]である。発熱層1aは、SUS(比透磁率1.0)で形成され、直径24[mm]、厚み1[mm]で断面積7.2×10-5[m2]である。
尚、発熱層1aと磁性コア2の間の領域の断面積は、直径24[mm]の発熱層の内側の中空部の断面積から磁性コアの断面積を差し引いて計算している。弾性層1b及び表層1cは、発熱層1aより外側に設けられており、発熱に寄与しない。従って、パーミアンスを計算する磁気回路モデルにおいては発熱層の外側の空気層であるとみなすことができるので計算に入れる必要はない。表1からPc、Pa_in、Psは、次のような値になる。
Pc=3.5×10-7[H・m]
Pa_in=2.8×10-10[H・m]
Ps=9.1×10-11[H・m]
これらの値を用いて、次の式(15)からPa_out/Pc計算することができる。
Pa_out/Pc=(Pc−Pa_in−Ps)/Pc
=0.999(99.9%) ・・・(15)
以上述べたことから、外側ルートを通る磁力線の割合をパーミアンスもしくは磁気抵抗を使って表すことができることを示した。
<装置に必要な電力の変換効率>
次に、本実施例の定着装置で必要な電力の変換効率について述べる。例えば、電力の変換効率が80%である場合、残り20%の電力は発熱層以外のコイルやコア等で熱エネルギーに変換されて消費される。電力の変換効率が低い場合は、磁性コアやコイル等の発熱すべきでないものが発熱し、それらを冷却するための対策を講じる必要性がある場合がある。
そこで、発熱層1aの外側ルートを通る磁束の割合を振って電力の変換効率を評価する。図8は、電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置を表した図である。金属シート1Sは、幅230mm、長さ600mm、厚み20μmのアルミニウム製のシートである。この金属シート1Sを磁性コア2とコイル3とを囲むように円筒状に丸めて、太線1ST部分において導通することによって発熱層とする。
磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、断面積26mm2、長さ230mmの円柱形状をしている。磁性コア2を不図示の固定手段でアルミニウムシート1Sの円筒のほぼ中央に配置する。磁性コア2にはコイル3が巻数25回で螺旋状に巻かれている。金属シート1Sの端部を矢印1SZ方向に引くと、発熱層の直径1SDを18〜191mmの範囲で調整することができる。
図9は、発熱層の外側ルートを通過する磁束の比率[%]を横軸にとり、21kHzの周波数における電力の変換効率を縦軸にとったグラフである。図9のグラフ中のプロットP1以降に電力の変換効率が急上昇して70%を超えており、矢印で示すレンジR1では電力の変換効率が70%以上を維持している。P3付近において電力の変換効率は再度急上昇し、レンジR2において80%以上となっている。P4以降のレンジR3においては電力の変換効率が94%以上と高い値で安定している。この、電力の変換効率が急上昇し始めたことは発熱層に効率的に周回電流が流れ始めたためである。
下記の表2は、図9のP1〜P4に該当する構成を、実際に定着装置として設計し、評価した結果である。
(定着装置P1)
本構成は、磁性コアの断面積が26.5mm2(5.75mm×4.5mm)で、発熱層の直径が143.2mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は64%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、発熱層の発熱に寄与した分を示すパラメータである。従ってそれ以外は損失となり、その損失はコイル及び磁性コアの発熱となる。
本構成の場合、立ち上げ時、数秒間900Wを投入しただけでもコイル温度は200℃を超える場合がある。コイルの絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトの磁性コアのキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイル等の部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コアの温度がキュリー点を超えるとコイルのインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
定着装置に供給した電力の約45%が発熱層の発熱に使用されないので、発熱層に900Wの電力を供給するためには約1636Wの電力供給する必要がある。これは100V入力時、16.36Aを消費する電源という事になる。商用交流のアタッチメントプラグから投入できる許容電流をオーバーする可能性がある。よって、電力の変換効率54.4%の定着装置P1は、定着装置に供給する電力が不足する可能性がある。
(定着装置P2)
本構成は、磁性コアの断面積はP1と同じで、発熱層の直径が127.3mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は71.2%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は70.8%である。定着装置のスペックによっては、コイル及びコアの昇温が課題になる場合がある。
本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、発熱層の回転速度は330mm/secとなり、発熱層の温度を180℃に維持する必要がある。発熱層の温度を180℃に維持しようとすると、磁性コアの温度は20秒間で240℃を超える場合がある。
磁性コア2として用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であるから、フェライトがキュリー温度を超えて磁性コアの透磁率は急激に減少し、磁性コアで磁力線を適切に誘導することができなくなる場合がある。その結果、周回電流を誘導して発熱層を発熱させることが難しくなる場合がある。
従って、外側ルートを通過する磁束の割合がレンジR1の定着装置を、前述した高スペックの装置にすると、フェライトコアの温度を下げるために冷却手段を設けることが望ましい。冷却手段としては、空冷ファン、水冷、放熱板、放熱フィン、ヒートパイプ、または、ベルチェ素子などを用いることができる。もちろん、本構成においてそこまでの高スペックを要求しない場合は、冷却手段は不要である。
(定着装置P3)
本構成は、磁性コアの断面積はP1と同じであり、発熱層の直径が63.7mmの場合である。この装置のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%である。磁性コア及びコイル等に定常的に熱量が発生するものの、冷却手段が必要なレベルではない。
本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると発熱層の回転速度は330mm/secとなり発熱層の表面温度を180℃に維持する場合があるものの、磁性コア(フェライト)の温度は220℃以上に上昇することはない。従って、本構成において、定着装置を前述した高スペックする場合は、キュリー温度が220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。
以上述べたことから、外側ルートを通る磁束の割合がレンジR2の構成の定着装置は、高スペックで使用する場合は、フェライト等の耐熱設計を最適化することが望ましい。一方、定着装置として高スペックを要求しない場合は、このような耐熱設計は不要である。
(定着装置P4)
本構成は、磁性コアの断面積がP1と同じであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。この装置でインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%である。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置(発熱層の回転速度は330mm/sec)で発熱層の表面温度を180℃に維持する場合であっても、励磁コイルやコイル等は、180℃以上に達することはない。従って、磁性コアやコイル等を冷却する冷却手段及び特別な耐熱設計は不要である。
以上述べたことから、外側ルートを通過する磁束の割合が94.7%以上であるレンジR3は、電力の変換効率が94.7%以上となり電力の変換効率が十分高い。よって、更なる高スペックの定着装置として用いても、冷却手段は不要である。
またR3の領域では、金属シート外部磁束の比率が変動しても電力変換効率に変化が少ない。これは、フィルムのような可撓性の高い部材を発熱層として採用し、磁性コアとの間の距離が多少変動したとしても、高い電力変換効率を安定維持できる事を意味する。
以上述べたことから、本実施例の定着装置は少なくとも必要な電力の変換効率を満たすために外側ルートを通過する磁束の割合が72%以上である必要があることがわかる。表2の数値は71.2%以上であるが測定誤差等を考慮して72%とする。
<装置が満たすべきパーミアンス又は磁気抵抗の関係式>
発熱層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が72%以上であることは、発熱層1aのパーミアンスと発熱層1aの内側(発熱層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コア2のパーミアンスの28%以下であることと等価である。従って、本実施例の特徴的な構成の一つは、磁性コア2のパーミアンスをPc、発熱層1aの内側のパーミアンスをPa_in、発熱層のパーミアンスPsとした時に、次の式(16)を満足することである。
0.28×Pc≧Ps+Pa_in ・・・(16)
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記の式(17)になる。
0.28×(1/Rc)≧(1/Rs)+(1/Ra_in)(≡1/Rsa)
0.28×Rsa≧Rc ・・・(17)
ここで、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下の式(18)ように定義。
Rsa=(Ra_in×Rs)/(Ra_in+Rs) ・・・(18)
Rc:磁性コアの磁気抵抗
Rs:発熱層の磁気抵抗
Ra_in:発熱層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記のパーミアンスもしくは磁気抵抗の関係式を、定着装置の記録材の最大搬送領域全域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向の断面において満足することが望ましい。
同様に、本実施例のレンジR2の定着装置は発熱層の外側ルートを通過する磁束の割合が92%以上である。表2の数値は91.7%以上であるが測定誤差等を考慮して92%とする。導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が92%以上であることは、導電層1aのパーミアンスと導電層の内側(導電層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コアのパーミアンスの8%以下であることと等価である。従って、パーミアンスの関係式は以下の式(19)になる。
0.08×Pc≧Ps+Pa_in ・・・(19)
上記のパーミアンスの関係式を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(20)ようになる。
0.08×Rsa≧Rc ・・・(20)
更に、本実施例のレンジR3の定着装置は発熱層の外側ルートを通過する磁束の割合が95%以上である。表2から正確には94.7%以上であるが測定誤差等を考慮して95%とする。導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が95%以上であることは、導電層1aのパーミアンスと導電層1aの内側(導電層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コアのパーミアンスの5%以下であることと等価である。パーミアンスの関係式は以下の式(21)になる。
0.05×Pc≧Ps+Pa_in ・・・(21)
上記のパーミアンスの関係式(21)を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(22)になる。
0.05×Rsa≧Rc ・・・(22)
本実施例の構成においてPc,Ps,Pa_inはそれぞれ表1に示す通りであり、上記(21)式を満たしている事がわかる。そのため、効率的に発熱層に電力供給できることがわかる。
以上が基本的な発熱原理である。次に、長手位置により発熱分布がある事及びそれが起きる理由について説明する。
<等価回路>
図5の(a)を用いて説明したように、励磁コイル2に流れる電流によって形成される交番磁界を打ち消すように、発熱層1aの周方向全域に誘導電流が流れる。この電流を誘導する物理モデルは、図10に示すように、実線で示す1次コイル81と点線で示す2次コイル82を巻いた形状の同心軸トランスの磁気結合と等価である。
2次コイル82は回路を形成しており、抵抗83を有している。高周波コンバータ16から発生した交番電圧により、1次コイル81に高周波電流が発生し、その結果2次コイル82に誘導起電力がかかり、抵抗83によって熱として消費される。ここで2次コイル82と抵抗83は、発熱層1aにおいて発生するジュール熱をモデル化している。
図10に示すモデル図の等価回路を図11の(a)に示す。L1は図10中1次コイル81のインダクタンス、L2は図10中2次コイル82のインダクタンス、Mは1次コイル81と2次コイル82の相互インダクタンス、Rは抵抗83である。この回路図(a)は、図11の(b)に等価変換することが出来る。より単純化したモデルを考えるために、相互インダクタンスMが十分大きく、L1≒L2≒Mとであるとする。その場合(L1−M)と(L2−M)は十分小さくなるため、回路は図11の(b)から図11の(c)のように近似することが出来る。
よって、図4に示す本発明の構成に対し、近似した等価回路として図11の(c)を考える。またここで、抵抗について説明する。図11の(a)の状態において2次側のインピーダンスは、発熱層1aの周回方向の電気抵抗Rとなる。トランスにおいて、2次側のインピーダンスは、1次側から見るとN2(Nはトランスの巻き数比)倍の等価抵抗R’となる。
ここで、トランスの巻き数比Nは、1次側コイルの巻き数=発熱層1aの中での励磁コイルの巻き数(本実施例では70回)に対し、発熱層1aを巻き数1回とみなし、トランスの巻き数比N=70と考えることが出来る。よってR’=N2R=702Rと考えることが出来、巻き数が多い程図11(c)に示す等価抵抗Rは大きくなる。相互インダクタンスMとR’の合成インピーダンスXは式(23)のようになる。
ここで、ω=2πfであり、fは駆動周波数である。(23)式より、合成インピーダンスXは巻き数比N、発熱層1aの周回方向の電気抵抗R、駆動周波数f、相互インダクタンスMに依存する事がわかる。一般的なトランスでは相互インダクタンスMは透磁率μに依存する。本実施例の開磁路の構成では透磁率μが長手位置で変化する挙動を示す。そのため、長手位置で合成インピーダンスXが異なる。詳しくは以下に説明する。
<みかけの透磁率>
磁性コア2の長手方向位置と等価インダクタンスの関係を説明したのが図12である。磁性コア2に対し、直径30mmのコイル141(コイルはN=5回巻)を通し、長手方向の各位置にてインピーダンスアナライザを用いてコイル両端からの等価インダクタンスL(周波数35kHz)を測定すると、図12に示す山形の分布形状となる。等価インダクタンスLは端部において中央の半分以下に減衰している。Lは以下の式(24)に従う。
L=μN2S/l ・・・(24)
ここで、μは磁性コアの透磁率、Nはコイルの巻き数、lはコイルの長さ、Sはコイルの断面積である。コイル141の形状は変化していないので、本実験においてはS,N,lは変化していない。従って、等価インダクタンスLの変化は透磁率μが変化している事を意味している。以下この位置によって変化するμを「みかけの透磁率」と表記する。以上を整理すると、図12は磁性コアの長手位置によってみかけの透磁率が変化する事を表している。
図13は、空気中に一様な磁界Hが存在し、その中に磁性コア201を配置した場合の磁束を表している。磁性コア201は、磁界Hに対し垂直な境界面NP⊥、SP⊥を有する開磁路を形成している。図13に示すように、磁性コア端部201Eでは磁性コア中央部201Cに対し磁束の密度が低下する。これは空気と磁性コアの境界条件によるものである。磁力線と垂直な境界面NP⊥、SP⊥において磁束密度は連続となるため、空気と接している磁性コア端部201Eでは磁性コア中央部201Cに対して磁束密度が低くなる。
一様な磁界H中において、物体の磁化が外部磁場にほぼ比例するような磁場領域においては、空間の磁束密度Bは以下の式(25)に従う。
B=μH ・・・(25)
即ち、磁力線と垂直な境界面NP⊥、SP⊥における磁束密度の連続性により磁束密度Bが変化し、その結果みかけの透磁率μが変化する。磁路を作る際磁路そのものをループで繋げて作る閉磁路と、開放端にするなどして磁路を断絶させる開磁路があるが、上記の現象は開磁路でのみ起きる現象である。
<発熱分布>
みかけの透磁率μが位置によって変化するため、図11の(a)の等価回路は図14の(a)のようになる。みかけの透磁率μが一定の微小幅を考慮しN分割している。図11同様に図14も等価交換及び近似を行う事で図14の(a)は図14の(b)になる。ここでの分割は等幅で行っているため、抵抗Rは全て同じ値となる。図14の(b)は各合成インピーダンスの直列回路になっているため図14の(c)のように書ける。
以上より、各位置の合成インピーダンスXは独立に扱う事ができ、各位置における合成インピーダンスXを考慮する事で長手方向の発熱分布を考察する事ができる。
以下簡単のため、中央部と端部の2点における合成インピーダンスの比較により長手方向の発熱分布を考察する。長手方向中央部における合成インピーダンスXcを式(26)、長手方向端部における合成インピーダンスXeを式(27)と表記する。
合成インピーダンスXc、Xeが周波数でどのように変化するかを模式的に表したものが図15である。励磁コイル3が長手方向で均等間隔に巻かれている場合、Nc=Ne(=N)であるため、周波数を無限大まで大きくすると合成インピーダンスXc、Xeは同じ値N2Rへ収束する。またこれまで説明した通り、中央部のみかけの透磁率μcと端部のみかけの透磁率μeはμc>μeという関係にある。その結果、相互インダクタンスもMc>Meという関係になる。よって、どの周波数においてもXc>Xeが成り立つ。
本実施例の構成では20kHz〜35kHzの範囲内の周波数を使用するが、この周波数の範囲内において周波数を小さくした方が合成インピーダンスXcとXeの差が大きくなる。これはつまり、中央部の発熱量Qcと端部の発熱量Qeの割合が周波数により変化する事を意味する。また、周波数を小さくすると中央部の発熱量Qcに対し端部の発熱量Qeが減っている。これにより、長手方向に短い用紙を定着する場合、周波数を下げる事で通紙領域外にて余計な発熱を抑える事ができる。
一方で、長手方向に長い用紙を定着する場合は高周波とすることで、長手方向中央部と長手方向端部の発熱量を同じにする事ができる。しかしながら長手方向端部の放熱を考慮すると、長手方向中央部より長手方向端部の方が発熱量をやや高めにする必要がある。そこで本実施例では長手方向端部において励磁コイル2の間隔を縮めるようにした。そうすると合成インピーダンスはXeから図15に示すXe´のように変化する。
ある長手位置において励磁コイル3の間隔を縮める事は、その長手位置における巻き数比Nを大きくする事と同じであり、周波数を無限大まで大きくした時の飽和値が大きくなる。そのため図15に示すように全体的に合成インピーダンスが大きくなる。その結果発熱量も大きくなる。
具体的な励磁コイル3の間隔は、中央部の間隔を5mm、端部の間隔を2mmになるようにし、その間の間隔は両者の線形補完により決定した。すなわち本実施例の形態では、周波数を調整する事でQc>QeとなったりQc<Qeとなったりする。
<測定結果>
図1に、軸X方向における定着ローラ1の表面温度分布測定結果を記す。本測定はNEC Avio社製のTVS−8500を用いて測定を行った。駆動周波数はそれぞれ20kHz、25kHz、30kHz、35kHzとして測定を行った。
図1は高周波コンバータ16により電力を投入し、サーミスタ9の温度がある温度に到達した時の温度分布を比較したものである。定着装置115で採用する駆動周波数の範囲内では、定着ローラ1の軸X方向において定着ローラ1が最大温度を取りうる箇所は3カ所存在する。駆動周波数が小さい場合は軸X方向中央部9xの温度が最も高く、駆動周波数が35kHzまで大きくなると軸X方向端部10xの位置で温度が最も高くなる。35kHzでは軸X方向位置11xの位置にも温度ピークが存在する。
11xは定着ローラ1の中心位置を基準に10xの点対称位置であり、11xの位置においても最も高い温度となりうる。軸X方向位置11xと10xで温度差ができる理由として、磁性コア2の形状ムラや励磁コイル3の巻き位置ムラが挙げられる。ただし温度差は小さいため、サーミスタ10は軸X方向位置10xおよび11xのどちらに配置しても構わない。
またサーミスタ9及び10は最も高い温度よりT℃低い箇所に置いても実用上問題無い。本実施例の構成では、T=5℃の箇所にサーミスタ9及び10を配置しても問題無い。そのため、サーミスタ9及び10の位置は範囲9y及び10y内であれば良く位置9x及び10xに限定するものではない。
以下、サーミスタ9、10を用いた場合の加熱ローラ1の温度制御例を説明する。図16に示すのは、加熱ローラ1の長手方向位置に対する温度分布である。周波数が高く、長手方向端部の温度が中央部に対して高い場合の温度分布を示している。温度ムラやオフセットの観点から、加熱ローラ1の温度は温度T1より低く温度T2より高い範囲に収める必要がある。
位置9xで温度制御を行う場合、位置9xで適正温度範囲に入ったとしても、長手方向端部で加熱ローラ1の温度が温度T1よりも大きくなり、適正温度範囲から外れてしまう可能性がある(温度分布(1))。
そのため本実施例の構成では位置10xに配置するサーミスタ10も同時に加熱ローラ1の温度を測定する。位置10xでの加熱ローラ1の温度が温度T1より低くなるように、かつ位置9xでの加熱ローラ1の温度が温度T2よりも高くなるように、位置9xでの設定温度を下げて調整する(温度分布(2))。
以上より本実施例の定着装置115では、駆動周波数20kHzの時に最も温度が高くなる軸X方向位置9xにサーミスタ9を配置する。また、駆動周波数35kHzの時に最も温度が高くなる軸X方向位置10xにサーミスタ10を配置する。このようにサーミスタを配置することで、採用する周波数の範囲内において通紙領域の定着ローラ1の温度を適正温度範囲内に収めることができる。その結果、光沢ムラやオフセット等の画像不良を抑制する事ができる。
上記の定着装置構成をまとめると次のとおりである。
1)導電層1aを有する筒状の回転体(定着ローラ)1を有する。回転体1の中空部に挿通され回転体1の母線方向に長い磁性芯材2を有する。中空部において磁性芯材2の外側に母線方向に交差する方向に磁性芯材2に直接もしくは他物を介して巻かれた励磁コイル3を有する。励磁コイル3に交番電流を流すことで導電層1aが電磁誘導により発熱し画像21を記録材114に定着する定着装置である。
磁性芯材3は回転体1の外側でループを形成していない。回転体1の温度を測定する温度検知素子9,10を有する。交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲において、回転体1の母線方向で回転体1の温度が最大となる箇所の温度を測定できるように温度検知素子9,10が配置されている。
2)また、前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲の中で最も大きい値のとき、回転体1の母線方向で最も温度が高い位置に温度検知素子が配置されている。
3)また、前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲の中で最も小さい値のとき、回転体1の母線方向で最も温度が高い位置に温度検知素子を配置されている。
4)また、前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲の中で最も大きいときに回転体1の母線方向で最も温度が高くなる位置を位置Aとする。採用しうる周波数の範囲の中で周波数が最も小さい時に回転体の母線方向で最も温度が高くなる位置を位置Bとする。この位置Aと位置Bの両方に温度検知素子を配置する。
ここで、定着装置には、未定着トナー画像を固着像として定着する以外にも、記録材に仮定着されたトナー画像あるいは一度加熱定着されたトナー像を再度加熱加圧して光沢度を向上させる装置(この場合も定着装置と呼ぶ)も包含される。
導電層1aを有する筒状の回転体1は、硬質あるいは可撓性の中空ローラあるいはパイプの形態のものにすることもできるし、複数の張架部材間に懸回張設されて回転駆動される可撓性を有するエンドレスベルト形態のものにすることもできる。
1‥‥ 定着ローラ、2‥‥ 磁性コア、3‥‥ 励磁コイル、8‥‥ 加圧ローラ、9,10‥‥ サーミスタ、15‥‥ 制御部、16‥‥ 高周波インバータ、100‥‥ 画像形成装置、114‥‥記録材、115‥‥ 定着装置

Claims (4)

  1. 導電層を有する筒状の回転体と、前記回転体の中空部に挿通され前記回転体の母線方向に長い磁性芯材と、前記中空部において前記磁性芯材の外側に前記母線方向に交差する方向に前記磁性芯材に直接もしくは他物を介して巻かれた励磁コイルと、を有し、前記励磁コイルに交番電流を流すことで前記導電層が電磁誘導により発熱し画像を記録材に定着する定着装置において、
    前記磁性芯材は前記回転体の外側でループを形成しておらず、前記回転体の温度を測定する温度検知素子を有し、前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲において、前記回転体の母線方向で前記回転体の温度が最大となる箇所の温度を測定できるように前記温度検知素子が配置されていることを特徴とする定着装置。
  2. 前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲の中で最も大きい値のとき、前記回転体の母線方向で最も温度が高い位置に前記温度検知素子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲の中で最も小さい値のとき、前記回転体の母線方向で最も温度が高い位置に前記温度検知素子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  4. 前記交番電流の周波数が採用しうる周波数の範囲の中で最も大きいときに前記回転体の母線方向で最も温度が高くなる位置と、採用しうる周波数の範囲の中で周波数が最も小さい時に前記回転体の母線方向で最も温度が高くなる位置と、の両方に前記温度検知素子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
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