JP2016017216A - 製鋼工場における溶鋼温度の制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】操業進行が予定から外れた場合であっても、溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れる確率を予め定めた危険率以下に低減し得る、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法を提供する。
【解決手段】操業スケジュールにおける、二次精錬開始時刻から当該チャージの二次精錬開始時刻の遅延時間の上限値と、連続鋳造開始時刻から当該チャージの連続鋳造開始時刻の遅延時間の上限値とを用いて、転炉から二次精錬装置への取鍋搬送中における遅延による溶鋼の温度降下量の管理上限値、及び、二次精錬装置から連続鋳造機への取鍋搬送中における遅延による溶鋼の温度降下量の管理上限値を算出し、操業スケジュール通りに操業した場合における転炉出鋼時から連続鋳造開始時までの溶鋼の温度降下量の推定値と上記2種類の管理上限値とを、連続鋳造開始時における溶鋼温度の管理下限値に加えた値を、転炉出鋼時の溶鋼温度の目標値とする、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、転炉設備と二次精錬装置と連続鋳造装置とを備え、転炉吹錬終了後に溶鋼が取鍋へと注入され、取鍋を用いて溶鋼が装置間を運搬される製鋼工場において、装置間の取鍋搬送に要する時間の分布予測結果を用いて転炉吹錬終了時の溶鋼温度目標値を制御する、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法に関する。
製鋼工場では、転炉吹錬後の溶鋼へ成分調整用合金鉄を投入しながら取鍋に注入する作業を出鋼とよぶ。取鍋に満たされた溶鋼は、二次精錬から連続鋳造までの各装置間を搬送され、二次精錬でさらなる成分調整が行われた後、連続鋳造機で凝固させることにより、所定の形状の鋳片が製造される。連続鋳造では、生産性および品質の観点から、溶鋼を鋳型へ注入する時の最適温度を定めて操業する。そのため、転炉吹錬開始前に、二次精錬処理中の溶鋼温度変化や、転炉−二次精錬装置間の運搬中における取鍋内溶鋼の温度降下や、二次精錬装置−連続鋳造装置間の運搬中における取鍋内溶鋼の温度降下を予測して、取鍋出鋼完了時点を始点とし、二次精錬開始時と終了時、および、連続鋳造開始時点における溶鋼温度の目標値経路を設計する。
溶鋼温度の目標値経路設計においては、該当チャージの転炉への溶銑および副原料装入以前に立案された、出鋼完了後の処理時間および処理間取鍋搬送時間の操業スケジュールと、前記処理時間および処理間取鍋搬送時間を入力に用いる計算モデルにより、処理中の溶鋼温度変化および搬送中の溶鋼温度降下を予測する。
二次精錬以降の各処理装置では、処理開始時点において適正な溶鋼温度範囲をあらかじめ定め、各処理終了時の溶鋼温度の目標値を、次工程処理までの取鍋での溶鋼搬送に要する時間の予定値、搬送中の溶鋼温度降下量、および、次工程の処理開始時点における適正な溶鋼温度範囲を考慮して設定する方法が、従来から知られている。
特許文献1には、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅を予測し、当該温度降下幅の高温側最大バラツキ幅および低温側最大バラツキ幅を予測し、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度が、高温側最大バラツキ幅と低温側最大バラツキ幅とを用いて定められた不等式を満たすように溶鋼処理設備を操業する技術が開示されている。
特開2007−186762号公報
溶鋼温度の予測において、取鍋に溶鋼を保持するだけで温度調整処理を実施しない装置間搬送中の溶鋼温度降下量は、取鍋搬送時間の予測精度に強く影響を受ける。それゆえ、溶鋼処理開始前に溶鋼温度目標値の決定に用いた予定値と操業実績値との間で取鍋搬送時間が大きく異なる場合、下流側処理開始時点での溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れることになる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、操業の進行の遅れや進みが考慮されておらず、上記のバラツキの評価時点は鋳型への注湯開始時刻に固定されている。そのため、同文献による方法では、操業進行が予定から外れた場合に、下流側処理開始時点での溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れやすく、これを防ぐために、溶鋼の昇温などコスト増加を起こす処理が必要になる虞がある。
そこで本発明は、操業進行が予定から外れた場合であっても、溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れる確率を予め定めた危険率以下に低減することが可能な、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法を提供することを課題とする。
本発明は、溶鋼精錬および鋳造処理の装置として、転炉と二次精錬装置と連続鋳造機とを備え、取鍋により溶鋼が上記装置間を運搬され、連続鋳造の開始時点における溶鋼温度の目標値および管理下限値を設定し、転炉吹錬および二次精錬により溶鋼の成分制御が実施される製鋼工場における溶鋼温度を制御する方法であって、立案された操業スケジュールにおける二次精錬の開始時刻から当該チャージの二次精錬の開始時刻が遅延する時間の管理上限値ΔzU2、を用いて、転炉から二次精錬装置への取鍋搬送中における遅延による溶鋼の温度降下量の管理上限値ΔTU2を算出し、上記操業スケジュールにおける連続鋳造の開始時刻から当該チャージの連続鋳造の開始時刻が遅延する時間の管理上限値ΔzU3、を用いて、二次精錬装置から連続鋳造機への取鍋搬送中における遅延による溶鋼の温度降下量の管理上限値ΔTU3を算出し、上記操業スケジュール通りに操業した場合における転炉出鋼完了時から二次精錬装置到着までの溶鋼温度降下量DTと、二次精錬装置処理終了から連続鋳造開始時までの溶鋼の温度降下量の推定値DTと、二次精錬装置処理開始から二次精錬装置処理終了までの溶鋼温度降下量DTとを、連続鋳造開始時における溶鋼温度の管理下限値TL3に加えて転炉出鋼後溶鋼温度の暫定目標値T’t1とし、搬送時間以外の温度変化要因による温度低下リスク上限値wと、ΔTU2と、ΔTU3とを、転炉出鋼後溶鋼温度の目標値T’t1に加えたT’t1+w+ΔTU2+ΔTU3を、転炉出鋼完了時における溶鋼温度の目標値Tt1とすることを特徴とする、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法である。なお、「搬送時間以外の温度変化要因による温度低下リスク」には、例えば、転炉出鋼直前の取鍋の耐火物内部温度等、測定ができない要因による溶鋼温度の降下が含まれる。
本発明では、二次精錬の開始時刻が遅延する時間や連続鋳造の開始時刻が遅延する時間を考慮して、連続鋳造開始時における溶鋼温度が、その管理下限値TL3未満にならないように、転炉出鋼完了時における溶鋼温度の目標値を設定する。本発明において、ΔzU2およびΔzU3は、溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れる確率を予め定めた危険率以下に低減できるように決定することが可能である。本発明では、ΔzU2を用いて算出されるΔTU2と、ΔzU3を用いて算出されるΔTU3とを用いて、転炉出鋼完了時における溶鋼温度の目標値を設定するので、操業進行が予定から遅延することにより操業進行が予定から外れた場合であっても、溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れる確率を予め定めた危険率以下に低減することが可能になる。
また、上記本発明において、転炉から二次精錬装置までの搬送時間の遅延による搬送中の前記溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU2となる確率が予め定めた危険率α(0≦α≦1)以下となるように特定される上記管理上限値ΔzU2を、上記操業スケジュールで特定された二次精錬開始予定時刻のデータと過去の操業の二次精錬開始時刻の実績データとを用いて特定し、二次精錬装置から連続鋳造機までの搬送時間の遅延による搬送中の溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU3となる確率が予め定めた上記危険率α以下となるように特定される上記管理上限値ΔzU3を、上記操業スケジュールで特定された連続鋳造開始予定時刻のデータと過去の操業の連続鋳造開始時刻の実績データとを用いて特定し、過去の操業の実績データを用いて、転炉と二次精錬装置との間の搬送時間に対する取鍋内溶鋼温度の降下速度V1を推定し、過去の操業の実績データを用いて、二次精錬装置と連続鋳造機との間の搬送時間に対する取鍋内溶鋼温度の降下速度V2を推定し、ΔTU2をΔTU2=ΔzU2×V1とし、且つ、ΔTU3をΔTU3=ΔzU3×V2としても良い。
操業スケジュールで特定された二次精錬開始予定時刻の過去の操業データや、操業スケジュールで特定された連続鋳造開始予定時刻の過去の操業データが判明している場合には、例えば、判明しているこれらのデータを用いて特定したΔTU2およびΔTU3を使用することにより、本発明を実施することができる。
また、上記本発明において、当該チャージの二次精錬の開始時刻が遅延する時間の上限値を算出する際に、当該チャージの転炉出鋼完了時刻E1、n(nは2以上の整数。以下において同じ。)と、当該チャージに対する二次精錬装置の前回処理チャージの終了時刻E2、n−1と、取鍋の最大移動速度を用いて特定される転炉から二次精錬装置への取鍋搬送時間の下限値tと、二次精錬装置における処理準備にかかる時間の下限値qと、を用いて算出される、該当チャージの二次精錬処理を最も早く開始できる時刻を、二次精錬最小待機時刻とし、上記操業スケジュールで特定される二次精錬装置の位置に取鍋が到着する時刻に、二次精錬装置における処理準備にかかる時間の下限値に加えて実際の処理準備で当該下限値より過剰に消費される時間の標準値zm2を加えた時刻として推定される二次精錬開始予定時刻と、転炉出鋼完了時刻の実績データとの差を、転炉と二次精錬装置との間の搬送時間の予定値とし、転炉と二次精錬装置との間の搬送時間の実績データと、搬送時間の予定値との差を、立案された操業スケジュールにおける二次精錬の開始時刻から当該チャージの二次精錬の開始時刻が遅延する時間とし、転炉から二次精錬装置までの搬送時間の遅延による搬送中の溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU2となる確率が予め定めた危険率α(0≦α≦1)以下となるように特定される上記管理上限値ΔzU2を、上記二次精錬最小待機時刻を用いて特定し、特定されたΔzU2を用いて、ΔTU2を算出しても良い。
ここで、標準値zm2は、過去の操業実績データにおいて、二次精錬装置における処理準備にかかる時間の下限値よりも過剰に消費される時間の平均値により求めることができる。操業スケジュールで特定された二次精錬開始予定時刻の過去の操業データが不明な場合には、例えば二次精錬最小待機時刻を用いてΔTU2を算出することにより、本発明を実施することが可能になる。
また、上記本発明において、当該チャージの連続鋳造の開始時刻が遅延する時間の上限値を算出する際に、当該チャージの二次精錬完了時刻E2、nと、当該チャージに対する連続鋳造装置の前回処理チャージの終了時刻E3、n−1と、取鍋の最大移動速度を用いて特定される二次精錬装置から連続鋳造機への取鍋搬送時間の下限値tと、連続鋳造機における処理準備にかかる時間の下限値qと、を用いて算出される、該当チャージの連続鋳造処理を最も早く開始できる時刻を、連続鋳造最小待機時刻とし、上記操業スケジュールで特定される連続鋳造機の位置に取鍋が到着する時刻に、連続鋳造機における処理準備にかかる時間の下限値に加えて実際の処理準備で当該下限値より過剰に消費される時間の標準値zm3を加えた時刻として推定される連続鋳造開始予定時刻と、二次精錬完了時刻の実績データとの差を、二次精錬装置と連続鋳造機との間の搬送時間の予定値とし、二次精錬装置と連続鋳造機との間の搬送時間の実績データと、搬送時間の予定値との差を、立案された操業スケジュールにおける連続鋳造の開始時刻から当該チャージの連続鋳造の開始時刻が遅延する時間とし、二次精錬装置から連続鋳造機までの搬送時間の遅延による搬送中の溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU3となる確率が予め定めた危険率α(0≦α≦1)以下となるように特定される上記管理上限値ΔzU3を、上記連続鋳造最小待機時刻を用いて特定し、特定されたΔzU3を用いて、ΔTU3を算出しても良い。
ここで、標準値zm3は、過去の操業実績データにおいて、連続鋳造機における処理準備にかかる時間の下限値よりも過剰に消費される時間の平均値により求めることができる。操業スケジュールで特定された連続鋳造開始予定時刻の過去の操業データが不明な場合には、例えば連続鋳造最小待機時刻を用いてΔTU3を算出することにより、本発明を実施することが可能になる。
本発明によれば、操業進行が予定から外れた場合であっても、溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れる確率を予め定めた危険率以下に低減することが可能な、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法を提供することができる。
転炉および二次精錬の処理時間の関係を説明するガントチャートである。 転炉−二次精錬装置間の溶鋼搬送時間の分布を説明する図である。 二次精錬装置−連続鋳造機間の溶鋼搬送時間の分布を説明する図である。 本発明の製鋼工場における溶鋼温度の制御方法と従来技術とを比較する図である。
処理間の取鍋搬送の遅延により連続鋳造開始時の溶鋼温度が管理下限値を下回ることを防ぐためには、遅延による溶鋼温度降下を予め見積もり、転炉出鋼完了後の溶鋼目標温度に補償量を加えることが必要である。しかし、通常出鋼前に遅延時間を予測することは困難なので、本発明者らは、その上限値を精度よく見積もり、目標値に加える溶鋼温度降下量を過剰に増大させない方法を検討した。
転炉出鋼完了後から二次精錬開始までの溶鋼温度降下量をDT2とし、そのモデルを、転炉出鋼完了後から二次精錬開始までの溶鋼温度降下量を目的変数とし,上記取鍋搬送時間を含む説明変数を用いた実績データに対する回帰分析により算出する。特に、転炉と二次精錬装置との間の取鍋搬送時間zに対する係数をaで表す。本発明では、係数aは正の値と仮定する。
=T−DT2
T2=a×z+Σ×x …式(1)
ここで、Tは転炉出鋼完了時の溶鋼温度、Tは二次精錬開始時の溶鋼温度、xは取鍋搬送時間以外の説明変数、cはxに対する係数である。
転炉出鋼から二次精錬開始までの取鍋搬送時間が予定値からΔzだけ変動した場合、取鍋内の溶鋼温度降下量DT2の当初予測値からの変動範囲ΔTは、
ΔT=a×Δz …式(2)
である。Δzのばらつきの上限値をΔzU2で表すと、搬送時間中の溶鋼温度降下量変動幅の上限値ΔTU2は、
ΔTU2=a×ΔzU2 …式(3)
である。温度降下量モデル式(1)における搬送時間以外の温度変化要因の変動範囲をデータからあらかじめ求めておき、さらに、上記式(1)の係数cの符号に応じて変動範囲の上限および下限をあらわすΔx を、cの符号が正ならばxの変動幅の上限値、反対にcの符号が負ならばxの変動幅の下限値として選択するとき、上記式(1)における搬送時間以外の温度変化要因による温度低下リスク上限wは、
=Σ×Δx …式(4)
となる。
同様に、二次精錬処理終了後から連続鋳造開始までの溶鋼温度降下量をDT3とし、そのモデルを二次精錬処理終了後から連続鋳造開始までの溶鋼温度降下量を目的変数とし、上記取鍋搬送時間を含む説明変数を用いた実績データに対する回帰分析により算出する。特に、二次精錬装置と連続鋳造機との間の取鍋搬送時間zに対する係数をaで表す。本発明では、係数aは正の値と仮定する。
T3=a×z+Σ×x …式(5)
式(5)において、xは取鍋搬送時間以外の説明変数である。
二次精錬処理終了から連続鋳造開始までの取鍋搬送時間が予定値からΔzだけ変動した場合、取鍋内の溶鋼温度の当初予測値からの変動範囲ΔTは、
ΔT=a×Δz …式(6)
である。したがって、Δzのばらつきの上限値をΔzU3で表すと、搬送時間中の溶鋼温度降下量変動幅の上限値ΔTU3は、
ΔTU3=a×ΔzU3 …式(7)
である。
二次精錬装置から連続鋳造機までの搬送時間およびその他の操業条件のばらつきがある場合でも、連続鋳造開始時の溶鋼温度Tが管理下限値TL3を下回らないことを実現するためには、転炉出鋼後溶鋼温度の制御偏差と温度降下量モデル式における搬送時間以外の温度変化要因に関係するパラメータの誤差を合わせた温度低下リスクwも含めて、転炉出鋼完了時の溶鋼温度の目標値Tt1
L3≦Tt1−ΔT−ΔT−w …式(8)
を満たすこと、すなわち
ΔT+ΔT≦Tt1−TL3−w …式(9)
を満たすことが必要である。したがって、あらかじめ定めた操業スケジュール通りに操業した場合における転炉出鋼完了時から二次精錬装置到着までの溶鋼温度降下量DTと、二次精錬装置処理終了から連続鋳造開始時までの溶鋼の温度降下量の推定値DTと、二次精錬装置処理開始から二次精錬装置処理終了までの溶鋼温度降下量DTとを、連続鋳造開始時における溶鋼温度の管理下限値TL3に加えた温度を転炉出鋼後溶鋼温度の暫定目標値T’t1とする。T’t1は次のように表される。
T’t1=TL3+DT+DT+DT
さらに、転炉から2次精錬装置まで、および、2次精錬装置から連続鋳造機までの各々の溶鋼搬送時間の最大延長時間をそれぞれΔTU2、ΔTU3とする場合、鋼種や鋳造時間に基づきあらかじめ定めたTL3に対して、転炉出鋼完了時の溶鋼温度の目標値Tt1は、
T’t1+ΔTU2+ΔTU3+w≦Tt1
を満たす最小値
t1=T’t1+w+ΔTU2+ΔTU3 …式(10)
と設定する。
上記ΔTおよびΔTは、式(3)および式(6)より、それぞれ、転炉から2次精錬装置までの溶鋼搬送時間の遅延幅Δzおよび2次精錬装置から連続鋳造機までの溶鋼搬送時間の遅延幅Δzを用いて定めることができる。
溶鋼搬送時間の遅延幅の最大値を過小に見積もり、転炉出鋼温度を低下させると、連続鋳造開始時に溶鋼温度低温による鋳込み不能となる可能性が高まり、反対に溶鋼搬送時間の遅延幅の最大値を過大に見積もり、転炉出鋼温度目標値を上昇させると、取鍋耐火物の損耗が激しくなる。そこで本発明では、これらの溶鋼温度上限値ΔTU2およびΔTU3を適切に設定するために、取鍋搬送時間の遅延幅ΔzおよびΔzの、各々の管理上限値ΔzU2およびΔzU3を操業の実態に基づき見積もることにより、転炉出鋼後の溶鋼温度の目標値を適切に制御する。
本発明では、転炉から二次精錬装置まで、および、二次精錬装置から連続鋳造機までの、各々の溶鋼搬送時間の遅れΔzおよびΔzの範囲を適切に予測し、これらの搬送時間の遅れによる搬送中の溶鋼温度低下量ΔTおよびΔTについて、ΔT>ΔTU2となる確率およびΔT>ΔTU3となる確率の各々があらかじめ定めた危険率以下となる値として、操業実績データに基づき転炉出鋼後二次精錬開始までの搬送時間の遅れの管理上限値ΔzU2および二次精錬終了後連続鋳造開始までの搬送時間の遅れの管理上限値ΔzU3を決定し、転炉出鋼後溶鋼温度目標値が適切な範囲に入るように制御する。
上記溶鋼搬送時間の遅れの管理上限値(ΔzU2およびΔzU3)については、チャージ毎の二次精錬開始および連続鋳造開始予定時刻データが記録されている場合には、各々の実績データとの偏差を遅れとすればよく、開始予定時刻データが記録されていない場合には、下記の方法により推定することが可能である。
(t、qの同定)
図1は、転炉と二次精錬の処理時間の関係のガントチャートである。図中では、当該チャージをn回目とし、二次精錬の1回過去のn−1回目の処理チャージの完了時刻をE2、n−1、当該チャージの転炉出鋼完了時刻をE1、n、当該チャージの二次精錬開始時刻をS2、nで表す。また、クレーンまたは台車等の取鍋搬送手段の最大速度等から定まる転炉から二次精錬装置への取鍋搬送時間の下限値をtとし、二次精錬の処理準備時間下限値をqとする。このとき、二次精錬におけるn−1回目のチャージの処理が完了し、さらに当該チャージの処理を準備しなければ、n回目のチャージの溶鋼取鍋が二次精錬装置に到着しても処理を開始できないため、最も早く二次精錬を開始できる時刻は、最大値を選択する関数maxを使ってmax(E1、n+t、E2、n−1+q)で表され、二次精錬開始時刻との関係として
2、n≧max(E1、n+t、E2、n−1+q) …式(11)
が成り立つ。なお、本発明の説明では、最も早く二次精錬を開始できる時刻を「最小待機二次精錬開始時刻」と称する。
当該チャージの、転炉−二次精錬装置間の溶鋼搬送時間はS2、n−E1、nで表され、式(11)より
2、n−E1、n≧max(t、E2、n−1−E1、n+q) …式(12)
を満たす。
図2は、本発明を実施可能な製鋼工場において、横軸にx=E2、n−1−E1、nを、縦軸にy=S2、n−E1、nをとりプロットした、転炉−二次精錬装置間の溶鋼搬送時間の分布図である。プロットの点が存在する範囲は、x軸に平行な直線L:y=t、および、傾き1の直線L:y=x+qで囲まれる、y≧tかつy≧x+qなる領域である。上記のプロットの領域と直線Lとの隙間を最小にするtを転炉から二次精錬装置への取鍋搬送時間の下限値とし、上記のプロットの領域と直線Lとの隙間を最小にするqを二次精錬の処理準備時間下限値として決定する。
(t、qの同定)
二次精錬と連続鋳造の処理時間の関係についても、図2と同様の関係が成り立つ。すなわち、連続鋳造の1回過去のn−1回目の処理チャージの完了時刻をE3、n−1、当該チャージの二次精錬完了時刻をE2、n、当該チャージの連続鋳造開始時刻をS3、nで表す。また、クレーンまたは台車等の取鍋搬送手段の最大速度等から定まる二次精錬装置から連続鋳造機への取鍋搬送時間の下限値をtとし、連続鋳造機の処理準備時間下限値をqとする。このとき、連像鋳造機におけるn−1回目のチャージの処理が完了し、さらに当該チャージの処理を準備しなければ、n回目のチャージの溶鋼取鍋が連続鋳造機に到着しても鋳造を開始できない。最も早く連続鋳造を開始できる時刻は、max(E2、n+t、E3、n−1+q)で表される。したがって、
3、n≧max(E2、n+t、E3、n−1+q) …式(13)
が成り立つ。なお、本発明の説明では、最も早く連続鋳造を開始できる時刻を「最小待機連続鋳造開始時刻」と称する。
当該チャージの、二次精錬装置−連続鋳造機間の溶鋼搬送時間はS3、n−E2、nで表され、式(13)より
3、n−E2、n≧max(t、E3、n−1−E2、n+q) …式(14)
を満たす。図2と同様に、本発明を実施可能な製鋼工場における連続鋳造の1チャージ目の実績データについて、横軸にx=E3、n−1−E2、nを、縦軸にy=S3、n−E2、nをとりプロットした、二次精錬装置−連続鋳造機間の溶鋼搬送時間の分布図を図3に示す。図3に示したように、プロットが存在する範囲は、x軸に平行な直線L:y=t、および、傾き1の直線L:y=x+qで囲まれる、y≧tかつy≧x+qなる領域である。上記のプロットの領域と直線Lとの隙間を最小にするtを二次精錬装置から連続鋳造機への取鍋搬送時間の下限値とし、上記のプロットの領域と直線Lとの隙間を最小にするqを連続鋳造機の処理準備時間下限値として決定する。
また、操業スケジュール立案において、二次精錬開始時刻は、取鍋が二次精錬装置に到着してから精錬が開始されるまでの短時間作業の所要時間zm2を、最小待機二次精錬開始時刻に加えて設定される。最小待機二次精錬開始時刻に作業時間zm2を加えた時刻が、二次精錬開始予定時刻である。同様に、取鍋が連続鋳造機に到着してから鋳造が開始されるまでの短時間作業時間をzm3とするとき、最小待機連続鋳造開始時刻に作業時間zm3を加えた時刻が、連続鋳造開始予定時刻の推定値である。
このように、二次精錬および連続鋳造の開始予定時刻データが記録されてない場合であっても、各々の操業時の開始予定時刻を推定できる。
(ΔzU2、ΔzU3の設定)
溶鋼搬送の予定からの遅延は、処理装置における該当チャージの1つ前のチャージの処理時間の延長および取鍋搬送装置の使用取り合いなどにより発生するため、遅延時間幅Δz2、nおよびΔz3、nを転炉出鋼以前に事前予測することは困難である。そこで、上記の二次精錬開始時刻および最小待機二次精錬開始時刻を用いて、操業スケジュールに対する転炉−二次精錬装置間の溶鋼搬送遅延時間の変動幅が上回る確率があらかじめ定めた危険率以下になる管理上限値ΔzU2を決定し、上記の連続鋳造開始時刻および最小待機連続鋳造開始時刻を用いて、操業スケジュールに対する二次精錬装置−連続鋳造機間の溶鋼搬送遅延時間の変動幅が上回る確率があらかじめ定めた危険率以下になる管理上限値ΔzU3を決定する。
二次精錬および連続鋳造の開始予定時刻データの記録がある場合には、各々の開始時刻の実績データと予定時刻データとの偏差を、二次精錬についてはΔzおよび連続鋳造についてはΔzとし、各々の分布の上位100×α%にあたる値を、管理上限値ΔzU2およびΔzU3とする。
ΔzU2およびΔzU3は、各々ΔzおよびΔzの分布を以下のように補間することにより算出する。過去の操業実績のデータサンプル数がN個の場合に、実績データにおけるΔzの値を小さい値から順に、同値の場合は順番を増やしながら並べ、j番目の値をΔz[j]とし、対応する相対順位をp[j]=j/Nとする。点(p[j]、Δz[j])間(1≦j≦N)を線形補間することにより、p=αに対応する値を、p[j]≦p<p[j+1]を満たすjについて
ΔzU2=(1−g)×Δz[j]+g×Δz[j+1]
g=(p−p[j])/(p[j+1]−p[j])
として求める。ΔzU3についてもΔz[j]に関して同様の手続きにより算出する。
一方、二次精錬および連続鋳造の開始予定時刻データの記録がない場合には、例えば以下の方法により、ΔzU2およびΔzU3を決定することができる。
n番目のチャージの実績データについて、転炉出鋼−前回チャージ二次精錬終了時間差xを、x=E2、n−1−E1、nと定義するとともに、転炉−二次精錬装置間の取鍋搬送時間yを、y=S2、n−E1、nと定義し、二次精錬開始の最小待機二次精錬開始時刻に対する遅れ
=y−max(t、x+q) …式(15)
の分布表を作成する。そして、上記yの分布の上位100×α%にあたる値zをzU2とする(ただし、0≦α≦1)。zU2−zm2は、操業スケジュールに対する搬送時間の遅延時間が上限値を上回る危険率が100×α%となる値なので、溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU2
ΔzU2=zU2−zm2 …式(16)
と定義する。
二次精錬装置−連続鋳造機間の搬送時間についても同様に、二次精錬終了−前回チャージ連続鋳造終了時間差xと、二次精錬装置−連続鋳造機間の取鍋搬送時間yと、最小待機連続鋳造開始時刻に対する連続鋳造開始時刻の遅れzと、zの管理上限値zU3とを定義し、溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU3
ΔzU3=zU3−zm3 …式(17)
と定義する。
上記zU2およびzU3は、各々zおよびzの分布を以下のように補間して算出する。過去の操業実績のデータサンプル数がN個の場合に、実績データにおけるzの値を小さい値から順に、同値の場合は順番を増やしながら並べ、j番目の値をz[j]とし、対応する相対順位をp[j]=j/Nとする。点(p[j]、z[j])間(1≦j≦N)を線形補間することにより、p=αに対応する値を、p[j]≦p<p[j+1]を満たすjについて
U2=(1−g)×z[j]+g×z[j+1]
g=(p−p[j])/(p[j+1]−p[j])
として求める。zU3についてもz[j]に関して同様の手続きにより算出する。
(転炉吹錬開始前の溶鋼温度目標値の設定方法)
上述の方法で求めた上限管理値ΔzU2およびΔzU3を、それぞれ式(3)および(7)へ代入することにより、ΔTU2およびΔTU3を算出し、これらを式(10)へと代入することにより、転炉出鋼完了時の溶鋼温度の目標値Tt1を決定することができる(図4)。このほか、過去の操業の実績データを用いて、転炉と二次精錬装置との間の搬送時間に対する取鍋内溶鋼温度の降下速度V1、および、二次精錬装置と連続鋳造機との間の搬送時間に対する取鍋内溶鋼温度の降下速度V2を推定することができる場合、ΔTU2はΔTU2=ΔzU2×V1により算出することができ、ΔTU3はΔTU3=ΔzU3×V2により算出することができる。このようにしてΔTU2およびΔTU3を算出したら、これらを式(10)へと代入することにより、転炉出鋼完了時の溶鋼温度の目標値Tt1を決定することができる。
実施例を参照しつつ、本発明の予測方法についてさらに説明を続ける。
本発明の効果を検証した製鋼工場では、まず、連続鋳造機の鋳造開始時刻をチャージ毎に決定した。次に、二次精錬装置から連続鋳造機までの搬送時間標準値に基づいて、各チャージの製造材質ごとの二次精錬処理所要時間の違いを反映して、鋳造開始時刻から上記搬送時間標準値だけさかのぼった時刻を二次精錬終了時刻とし、各チャージの二次精錬終了時刻からスケジューリングにおける二次精錬処理時間標準値だけさかのぼった時刻を二次精錬開始時刻とした。次に、各チャージの二次精錬開始時刻から、転炉から二次精錬装置までの搬送時間標準値だけさかのぼった時刻を転炉出鋼完了時刻とし、転炉出鋼完了時刻から、転炉の原料および副原料装入と吹錬と出鋼に要する時間の標準値の和だけさかのぼった時刻を転炉処理開始時刻とする、さかのぼり計算によって、仮に各処理の開始時刻を決定した。その後、連続鋳造機の鋳造速度、または、装置処理の開始時刻や終了時刻を適宜調整することで操業スケジュールを決定した。
製鋼工場の転炉出鋼完了から二次精錬開始までの所要時間の実績データを解析した結果、本工場の操業スケジューリングにおける、転炉出鋼完了から二次精錬装置への溶鋼搬送時間(取鍋搬送時間)の下限値tは9分と設定され、二次精錬の処理準備時間下限値qは10分と設定されていた。また、二次精錬完了から連続鋳造機への溶鋼搬送時間(取鍋搬送時間)の下限値tは13分と設定され、連続鋳造間の準備時間下限値(連続鋳造機の処理準備時間下限値)qは27分と設定されていた。また、zm2は7.9分であり、zm3は14.4分であった。
従来は、溶鋼搬送時間のスケジュールに対する遅延による溶鋼温度低下量を予測して、転炉出鋼完了時における溶鋼温度の目標値を設定する方法は存在しなかった。そこで、本発明と比較するために、最も単純な方法として、転炉と二次精錬装置との間の取鍋搬送に関して、転炉−二次精錬装置間の取鍋搬送時間yの実績値と、転炉から二次精錬装置への取鍋搬送時間の下限値tの設定値とから算出されるz’=y−tについて、z’の値の大きい方から上位2.5%の範囲では溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れると仮定して(危険率を2.5%として)、分布データの上位2.5%にあたる時間をzU2’とした。同様に、二次精錬装置と連続鋳造機との間の取鍋搬送に関して、二次精錬装置−連続鋳造機間の取鍋搬送時間yの実績値と、二次精錬装置から連続鋳造機への取鍋搬送時間の下限値tの設定値とから算出されるz’=y−tについて、危険率を2.5%として、分布データの上位2.5%にあたる時間をzU3’とした。すると、転炉−二次精錬装置間についてはzU2’=37分、二次精錬装置−連続鋳造機間についてはzU3’=39分であった。したがって、転炉−二次精錬装置間の溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU2’は、ΔzU2’=zU2−zm2=37−7.9=29.1分であり、二次精錬装置−連続鋳造機間の溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU3’は、ΔzU3’=zU3−zm3=39−14.4=24.6分であった。
これに対し、本発明により、zおよびzの各々の実績データについて分布データの上位2.5%に当たる時間を求めると、zU2=25分であり、zU3=33分であった。したがって、本発明により求めた転炉−二次精錬装置間の溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU2は、ΔzU2=zU2−zm2=25−7.9=17.1分であり、本発明により求めた二次精錬装置−連続鋳造機間の溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU3は、ΔzU3=zU3−zm3=33−14.4=18.6分であった。ΔzU2’とΔzU2との比較から、本発明によれば、転炉−二次精錬装置間の溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU2を29.1−17.1=12分短縮することができた。また、ΔzU3’とΔzU3との比較から、本発明によれば、二次精錬装置−連続鋳造機間の溶鋼搬送遅延時間幅の管理上限値ΔzU3を24.6−18.6=6分短縮することができた。この結果を表1に示す。
また今回、上記式(1)の係数aは、実績データの回帰分析結果よりa=0.65とモデル化した。さらに、式(5)の係数aは、実績データの回帰分析結果よりa=0.3とモデル化した。
二次精錬開始時の溶鋼温度が管理下限値を下回る確率を2.5%として、上記式(10)にしたがって二次精錬開始時の溶鋼温度の目標値、および、転炉出鋼完了時における溶鋼温度の目標値を設定すると、従来の方法では、ΔTU2’=a×ΔzU2’=0.65×29.1=18.9℃、および、ΔTU3’=a×ΔzU3’=0.3×24.6=7.4℃より、ΔTU2’+ΔTU3’=26.3℃であった。
これに対し、本発明では、ΔTU2=a×ΔzU2=0.65×17.1=11.1℃、および、ΔTU3=a×ΔzU3=0.3×24.6=5.6℃より、ΔTU2’+ΔTU3’=16.7℃であった。したがって、本発明によれば、転炉出鋼完了時における溶鋼の目標温度に加える遅延補償量を、従来の方法と比較して、26.3−16.7=9.6℃低減することが可能であった。この結果を表2に示す。
以上説明したように、本発明によれば、操業進行が予定から外れた場合であっても、溶鋼温度が適正な溶鋼温度範囲を外れる確率を予め定めた危険率(上記例では2.5%)以下に低減することが可能な、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法を提供することができる。このような本発明によれば、転炉出鋼完了時における溶鋼の目標温度を、従来よりも低下させることが可能になる。その結果として、転炉吹錬における酸素量コストや、転炉および取鍋耐火物の劣化コストを低減させることが可能となる。

Claims (4)

  1. 溶鋼精錬および鋳造処理の装置として、転炉と二次精錬装置と連続鋳造機とを備え、取鍋により溶鋼が前記装置間を運搬され、連続鋳造の開始時点における溶鋼温度の目標値および管理下限値を設定し、転炉吹錬および二次精錬により溶鋼の成分制御が実施される製鋼工場における溶鋼温度を制御する方法であって、
    立案された操業スケジュールにおける二次精錬の開始時刻から当該チャージの二次精錬の開始時刻が遅延する時間の管理上限値ΔzU2、を用いて、前記転炉から前記二次精錬装置への取鍋搬送中における遅延による前記溶鋼の温度降下量の管理上限値ΔTU2を算出し、
    前記操業スケジュールにおける連続鋳造の開始時刻から当該チャージの連続鋳造の開始時刻が遅延する時間の管理上限値ΔzU3、を用いて、前記二次精錬装置から前記連続鋳造機への取鍋搬送中における遅延による前記溶鋼の温度降下量の管理上限値ΔTU3を算出し、
    前記操業スケジュール通りに操業した場合における転炉出鋼完了時から二次精錬装置到着までの溶鋼温度降下量DTと、二次精錬装置処理終了から連続鋳造開始時までの溶鋼の温度降下量の推定値DTと、二次精錬装置処理開始から二次精錬装置処理終了までの溶鋼温度降下量DTとを連続鋳造開始時における溶鋼温度の管理下限値TL3に加えて転炉出鋼後溶鋼温度の暫定目標値T’t1とし、搬送時間以外の温度変化要因による温度低下リスク上限値wと,前記ΔTU2と、前記ΔTU3とを、前記転炉出鋼後溶鋼温度の暫定目標値T’t1に加えたT’t1+w+ΔTU2+ΔTU3を、転炉出鋼完了時における溶鋼温度の目標値とすることを特徴とする、製鋼工場における溶鋼温度の制御方法。
  2. 前記転炉から前記二次精錬装置までの搬送時間の遅延による搬送中の前記溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU2となる確率が予め定めた危険率α(0≦α≦1)以下となるように特定される前記管理上限値ΔzU2を、前記操業スケジュールで特定された二次精錬開始予定時刻のデータと過去の操業の二次精錬開始時刻の実績データとを用いて特定し、
    前記二次精錬装置から前記連続鋳造機までの搬送時間の遅延による搬送中の前記溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU3となる確率が予め定めた前記危険率α以下となるように特定される前記管理上限値ΔzU3を、前記操業スケジュールで特定された連続鋳造開始予定時刻のデータと過去の操業の連続鋳造開始時刻の実績データとを用いて特定し、
    過去の操業の実績データを用いて、前記転炉と前記二次精錬装置との間の搬送時間に対する取鍋内溶鋼温度の降下速度V1を推定し、
    過去の操業の実績データを用いて、前記二次精錬装置と前記連続鋳造機との間の搬送時間に対する取鍋内溶鋼温度の降下速度V2を推定し、
    前記ΔTU2をΔTU2=ΔzU2×V1とし、且つ、前記ΔTU3をΔTU3=ΔzU3×V2とする、請求項1に記載の製鋼工場における溶鋼温度の制御方法。
  3. 前記当該チャージの二次精錬の開始時刻が遅延する時間の上限値を算出する際に、当該チャージの転炉出鋼完了時刻と、前記当該チャージに対する二次精錬装置の前回処理チャージの終了時刻と、取鍋の最大移動速度を用いて特定される前記転炉から前記二次精錬装置への取鍋搬送時間の下限値と、前記二次精錬装置における処理準備にかかる時間の下限値と、を用いて算出される、該当チャージの二次精錬処理を最も早く開始できる時刻を、二次精錬最小待機時刻とし、
    前記操業スケジュールで特定される前記二次精錬装置の位置に前記取鍋が到着する時刻に、二次精錬装置における処理準備にかかる時間の下限値に加えて実際の処理準備で該下限値より過剰に消費される時間の標準値を加えた時刻として推定される二次精錬開始予定時刻と、転炉出鋼完了時刻の実績データとの差を、前記転炉と前記二次精錬装置との間の搬送時間の予定値とし、
    前記転炉と前記二次精錬装置との間の搬送時間の実績データと、前記搬送時間の予定値との差を、立案された操業スケジュールにおける二次精錬の開始時刻から当該チャージの二次精錬の開始時刻が遅延する前記時間とし、
    前記転炉から前記二次精錬装置までの搬送時間の遅延による搬送中の前記溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU2となる確率が予め定めた危険率α(0≦α≦1)以下となるように特定される前記管理上限値ΔzU2を、前記二次精錬最小待機時刻を用いて特定し、
    特定された前記ΔzU2を用いて、前記ΔTU2を算出する、請求項1に記載の製鋼工場における溶鋼温度の制御方法。
  4. 前記当該チャージの連続鋳造の開始時刻が遅延する時間の上限値を算出する際に、当該チャージの二次精錬完了時刻と、前記当該チャージに対する連続鋳造装置の前回処理チャージの終了時刻と、取鍋の最大移動速度を用いて特定される前記二次精錬装置から前記連続鋳造機への取鍋搬送時間の下限値と、前記連続鋳造機における処理準備にかかる時間の下限値と、を用いて算出される、該当チャージの連続鋳造処理を最も早く開始できる時刻を、連続鋳造最小待機時刻とし、
    前記操業スケジュールで特定される前記連続鋳造機の位置に前記取鍋が到着する時刻に、連続鋳造機における処理準備にかかる時間の下限値に加えて実際の処理準備で該下限値より過剰に消費される時間の標準値を加えた時刻として推定される連続鋳造開始予定時刻と、二次精錬完了時刻の実績データとの差を、前記二次精錬装置と前記連続鋳造機との間の搬送時間の予定値とし、
    前記二次精錬装置と前記連続鋳造機との間の搬送時間の実績データと、前記搬送時間の予定値との差を、立案された操業スケジュールにおける連続鋳造の開始時刻から当該チャージの連続鋳造の開始時刻が遅延する前記時間とし、
    前記二次精錬装置から前記連続鋳造機までの搬送時間の遅延による搬送中の前記溶鋼の温度低下量をΔTとするとき、ΔT>ΔTU3となる確率が予め定めた危険率α(0≦α≦1)以下となるように特定される前記管理上限値ΔzU3を、前記連続鋳造最小待機時刻を用いて特定し、
    特定された前記ΔzU3を用いて、前記ΔTU3を算出する、請求項1又は3に記載の製鋼工場における溶鋼温度の制御方法。
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