JP2012133633A - 生産計画作成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の工程を有する製造ラインにおいて、各工程の工程処理時間が頻繁に変動する場合であっても、適切な生産計画を作成することができる生産計画作成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る生産計画作成装置100は、製造ライン上にある仕掛品の物理状態を検出する物理状態検出装置1と、生産計画を作成する生産計画作成部Aとを備える。生産計画作成部は、物理状態検出装置で検出した仕掛品の物理状態を用いて、仕掛品を各工程で処理するための所要時間である工程処理時間を算出するステップと、算出した工程処理時間を用いて、リードタイム延長により発生するコスト、工程処理時間の短縮により発生するコスト及び納期遅れにより発生するコストの総和からなるコスト指標を演算するステップと、演算したコスト指標を最小化するように工程処理時間を更新し、該更新した工程処理時間を用いて生産計画を作成するステップとを実行することを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、複数の工程を有する製造ラインにおいて、各工程の工程処理時間が頻繁に変動する場合であっても、適切な生産計画を作成することができる生産計画作成装置に関する。
製造業では、製品ごとの納期を厳守するように事前に生産計画を作成し、この生産計画に基づき製造ラインを操業するのが通常である。この際、作成した生産計画に応じて、製品毎に複数の工程にわたるリードタイムを決定するが、決定したリードタイムが実績リードタイム(必要なリードタイム)と異なると、種々の問題が発生する。
例えば、製鋼ラインなど、高温下で操業を行わなければならない製造ラインを例に挙げれば、決定したリードタイムが必要なリードタイムより長い場合(リードタイムの延長が生じた場合)には、仕掛品の放熱によるエネルギーロスが生じるため、これを補償するために、昇温時の電力などのエネルギーコストが増加するという問題がある。また、仕掛品の積み上がりにより、在庫コストが増加するという問題も発生する。逆に、実績リードタイムが決定したリードタイムよりも長くなった場合、エネルギーコストや在庫コストの増加はなくなるが、納期遅れ発生のリスクが大きくなるという問題がある。このため、リードタイム延長により発生するコスト及び納期遅れ発生リスクの双方を考慮して、リードタイムを管理することが課題となっていた。
上記のような課題に対処するため、特許文献1には、製鋼ラインにおいて、納期遅れの最小化及びリードタイム最小化の観点から最適な生産計画を作成するため、所与の鋳込順からシミュレーションによる時刻計算を行い、後処理として設備競合回避・工程処理時間確保のため線形計画法による最適化計算を行う手法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、工程処理時間を定数として取り扱っているため、ネック工程を中間工程に有する製造ラインの場合、工程処理時間のミスマッチによる前倒しが発生し、リードタイムの延長を回避することができない。
また、特許文献2には、製鋼ラインにおいて、操業状態の変動によりリードタイムが延長した際の溶鋼温度の低下に対処するため、操業状態及び連続鋳造工程への到着目標温度に基づき、出鋼温度を決定する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、リードタイム延長時に温度補正を行うのみであるため、リードタイム延長によりコストが増加するという問題を解決できていない。
また、特許文献3には、工程処理時間の変動に合わせて逐次再スケジューリングし、再スケジューリングの結果、納期遅れが発生しそうな場合には、納期に対する遅れ時間を出力することで、納期調整を短時間で行うことを可能にした方法が提案されている。
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、納期遅れのガイダンスを行っているのみであるため、納期遅れに対応するために工程処理時間を短縮した際の操業全体での総合的なコスト変化(例えば、2次精錬設備での工程処理時間短縮に伴うエネルギーコストの増加と、納期遅れにより発生するコスト(納期遅れが発生した際の減産による利益減少)との大小関係)を人間系で判断しなければならない。
さらに、特許文献4には、所与の製造オーダーに対して任意の工程処理時間の組み合わせで生産計画を作成し、作成した各生産計画に対して、実績確率分布に基づき各工程処理時間を変動させるモンテカルロシミュレーションを行い、そのシミュレーション結果からリードタイム延長と納期遅れ発生状態の双方を評価し、工程処理時間に対して、適切な余裕代を与える方法が提案されている。
ここで、本発明者らが工程処理時間の変動要因を分析すると、主に、(1)仕掛品の温度・重量等の物理的要因、(2)操業者による意図的な変更、(3)処理誤り等によるヒューマンエラーの要因、(4)搬送設備の干渉等による物流要因、に分けられることが解った。上記(1)〜(4)の要因のうち、(1)の要因が工程処理時間の変動における最大の支配的因子であり、(1)の要因による工程処理時間の変動の結果として、(2)〜(4)の要因による工程処理時間の変動が生じる場合が多いと考えられる。(1)の要因による工程処理時間の変動については、仕掛品の物理状態を取得することができれば解析的に予測することが可能である。(2)の要因による工程処理時間の変動については、人間系で制御可能である。(3)及び(4)の要因による工程処理時間の変動については、予測も制御も困難である。
上記本発明者らの検討結果に対し、特許文献4に記載の方法では、解析的に工程処理時間が求まるもの(上記の(1))も、操業者による意図的な変更(上記の(2))も、確率論でしか予測ができないもの(上記の(3)及び(4))も、分けることなく、一つの工程処理時間分布で扱って計算を行うため、計算に用いる工程処理時間のバラツキが大きくなる。従って、工程処理時間変動による納期遅れ発生リスクを回避するために、リードタイムの余裕代を大きく設定せざるを得なくなり、結果としてリードタイム延長によるコスト増に繋がるという問題点がある。
特開昭62−164811号公報 特開平8−246016号公報 特開2001−34672号公報 特開2007−188306号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、複数の工程を有する製造ラインにおいて、各工程の工程処理時間が頻繁に変動する場合であっても、適切な生産計画を作成することができる生産計画作成装置を提供することを課題とする。
前述のように、工程処理時間の変動は、人為的要因・物流的要因よりも、仕掛品の物理的要因が支配的である。例えば、図1に示すように、昇温を目的とした処理工程であれば、この工程処理時間(図1(a))は、仕掛品の処理前温度に大きく依存する。具体的には、仕掛品の処理前温度が高い場合(図1(b)に示す例では1400℃以上)には、低い場合(図1(c)に示す例では1400℃未満)に比べて、目標温度に達するまでの工程処理時間は短くてすむ。また、人為的要因・物流的要因による工程処理時間の変動も、物理的要因に関連して発生していることが多い。
このため、各工程処理時間の変動における物理的な要因を分析・特定し、特定した要因の値を生産計画の作成時に取得すれば、操業時に最低限確保が必要な工程処理時間を解析的に求めることができ、操業変動の吸収のため設定していたリードタイムの余裕代を不要にすることが期待できる。換言すれば、リードタイム延長により発生するコストを低減できることが期待できる。
また、工程処理時間は、前述の物理的要因以外にも、操業条件に応じて操業者が意図的に制御する場合がある。例えば、製鋼ラインにおける2次精錬工程を例に挙げると、溶鋼温度を上昇する際に使用する電力量を多くすれば短時間での処理が可能となり、納期遅れ発生リスクを回避することができる。しかしながら、電力使用量を多くすれば相応のコストがかかる。そこで、前述したリードタイム延長により発生するコストに加え、工程処理時間の短縮(リードタイム削減)により発生するコストと、納期遅れにより発生するコストとを考慮して最適化計算を行い、これら各コストの総和からなるコスト指標を最小化するように工程処理時間を決めれば、適切な工程処理時間の設定、ひいては適切な生産計画を作成することが可能になると考えた。具体的には、図2(a)に示すように、2次精錬工程の処理時間が連続鋳造工程の処理時間よりも長ければ、連続鋳造工程をチャージ間で空きの無いように続ける(納期遅れにより発生するコストを0にする)には転炉工程の前倒しが必要になり、リードタイム延長によるコストが増加する。つまり、図2(a)に示すように、最初のチャージについて転炉工程での処理が終了してから連続鋳造工程での処理が開始されるまでの時間(100min)を、最後のチャージ(4つ目のチャージ)について転炉工程での処理が終了してから連続鋳造工程での処理が開始されるまでの時間(70min)に比べて大きくする必要が生じるため、リードタイム延長によるコストが増加する。そこで、図2(b)に示すように、リードタイム延長により発生するコストと、工程処理時間の短縮により発生するコストと、納期遅れにより発生するコスト(図2(b)に示す例では0)との総和からなるコスト指標を最小化するように工程処理時間を決めれば(図2(b)に示す例では2次精錬工程の処理時間を10分短縮している)、適切な生産計画を作成することが可能になると考えられる。
本発明は、本発明者らの上記の知見に基づき完成されたものである。すなわち、本発明は、複数の工程を有する製造ラインにおける生産計画を作成する装置であって、前記製造ライン上にある仕掛品の物理状態を検出する物理状態検出装置と、生産計画を作成する生産計画作成部とを備え、前記生産計画作成部は、前記物理状態検出装置で検出した仕掛品の物理状態を用いて、仕掛品を各工程で処理するための所要時間である工程処理時間を算出するステップと、前記算出した工程処理時間を用いて、リードタイム延長により発生するコスト、工程処理時間の短縮により発生するコスト及び納期遅れにより発生するコストの総和からなるコスト指標を演算するステップと、前記演算したコスト指標を最小化するように工程処理時間を更新し、該更新した工程処理時間を用いて生産計画を作成するステップとを実行することを特徴とする生産計画作成装置を提供する。
本発明によれば、仕掛品の物理状態(例えば、製鋼ラインにおける溶鋼温度及び溶鋼量)を用いて工程処理時間を算出するため、操業時に最低限確保が必要な工程処理時間を解析的に求めることができ、操業変動の吸収のため設定していたリードタイムの余裕代を不要にすることが期待できる。換言すれば、リードタイム延長により発生するコストを低減できることが期待できる。
さらに、本発明によれば、リードタイム延長により発生するコスト、工程処理時間の短縮により発生するコスト及び納期遅れにより発生するコストの総和からなるコスト指標を最小化するように工程処理時間を更新するため、適切な工程処理時間の設定、ひいては適切な生産計画を作成することが可能である。
なお、本発明におけるリードタイムとは、製造ラインが有する複数の工程全体にわたる経過時間又はその一部における経過時間を意味し、どの時点からどの時点までの経過時間をリードタイムと定義するかは目的に応じて任意に決定可能である。
また、本発明における「生産計画を作成する」とは、各工程における仕掛品の処理の開始・終了時刻を作成することを意味する。
本発明によれば、複数の工程を有する製造ラインにおいて、各工程の工程処理時間が頻繁に変動する場合であっても、適切な生産計画を作成することが可能である。
図1は、工程処理時間の分布例を模式的に示す図である。 図2は、工程処理時間の最適化を模式的に説明する図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る生産計画作成装置の概略構成を示すブロック図である。 図4は、図3に示す生産計画作成装置による生産計画作成のフローを示す図である。 図5は、図3に示す製造オーダーデータベースに記憶されている内容の概要を示す図である。 図6は、図3に示す仕掛品物理状態データベースに記憶されている内容の概要を示す図である。 図7は、図3に示す製品処理進捗データベースに記憶されている内容の概要を示す図である。 図8は、図3に示す工程処理時間計算定数データベースに記憶されている内容の概要を示す図である。 図9は、製造オーダー、物理状態及び製品処理進捗の具体例を示す図である。 図10は、図3に示すコスト計算定数データベースに記憶されている内容の概要を示す図である。 図11は、リードタイム基準値の計算フローの一例を示す図である。 図12は、リードタイムの計算方法の一例を示す図である。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る生産計画作成装置について、その適用先である製造ラインが製鋼ラインである場合を例に挙げて説明する。なお、本実施形態は、リードタイム延長時の温度降下に対する問題解決を目的としている。また、製鋼ラインにおける仕掛品の温度降下は、転炉出鋼以降に発生し、連続鋳造工程開始以降は温度補償を行うことができない。このため、本実施形態で考慮すべきリードタイムは、温度管理のために必要な範囲のみであるため、転炉工程の終了時刻から連続鋳造工程の開始時刻までの経過時間をリードタイムとしている。
<本実施形態に係る生産計画作成装置における演算の概要>
製鋼ラインとは、転炉工程、2次精錬工程、及び連続鋳造工程の3工程からなる製造ラインである。転炉工程は、溶銑に酸素を吹きつけることで、溶銑内の炭素等の元素の除去を行い、溶鋼を作り出す工程である。次いで、2次精錬工程は、最終的な成分調整及び温度調整を行う工程である。最後に、連続鋳造工程は、溶鋼を鋳込み、鋳片を作製する工程である。各工程の物理的な処理時間変動要因は、2次精錬工程であれば溶鋼の処理前温度と処理後目標温度であり、連続鋳造工程であれば溶鋼の量となる。これらの物理状態を変数とすれば、チャージ(製鋼ラインでは、取鍋一杯分の溶銑・溶鋼をチャージと呼称し、製造時の最小単位としている)iを2次精錬設備jで処理する時間Trj,iと、連続鋳造設備kで処理する時間Tck,iとは、それぞれ次の式(1)、(2)で表現される。
Figure 2012133633

ここで、式(1)において、frc,jは2次精錬設備jにおける設備付帯時間(取鍋の入出時間等)を、frt,jは2次精錬設備jにおける昇温処理時間を、xt_startは溶鋼の処理前温度を、xt_endは溶鋼の処理後目標温度を、fra,jは2次精錬設備jにおける成分調整時間を、xtypeは品種を、それぞれ意味する。
Figure 2012133633

ここで、式(2)において、fは連続鋳造工程の処理時間を、xは溶鋼量を、xvは鋳込速度を、それぞれ意味する。
溶鋼の物理状態(溶鋼温度、溶鋼量)を取得後に、上記の式(1)、(2)式を用いた工程処理時間の設定を行えば、事前設定値に対する処理時間変動のバラツキを抑え、納期遅れリスクを低減することができ、過度な余裕代の設定は不要となる。
また、標準的な工程処理時間通りに操業を行うと、製造納期に間に合わないような場合や、工程処理時間のミスマッチ(2次精錬時間が鋳込時間よりも長いとき等)による過度なリードタイム延長が発生する場合には、操業サイドで意図的に工程処理時間を短縮することがあるが、工程処理時間の短縮は、相応のコストが必要となる。例えば、2次精錬工程の処理時間を短縮するには、転炉での出鋼温度を上げて熱補償を行い2次精錬工程での昇温処理時間を短縮することで2次精錬工程の処理時間を短縮するか、あるいは、2次精錬時の使用電力量を上げることで2次精錬工程の処理時間を短縮するかの、いずれかの手段が採られる。しかしながら、転炉での出鋼温度を上げた場合は転炉耐火物の損耗が早くなり補修コストが増加するし、2次精錬工程の処理時間を短縮する際に電力使用量を上げれば電力費用が増加する。そこで、2次精錬工程の処理時間短縮により発生するコスト(転炉出鋼温度を上げたときに発生するコスト、2次精錬時の使用電力量を上げたときに発生するコスト)、リードタイム延長により発生するコスト及び納期遅れにより発生するコストの総和で決定される下記の式(3)で表現される目的関数Fを最小化することで、2次精錬工程の処理時間の最適化、ひいては生産計画の最適化が可能であると考えられる。
Figure 2012133633

ここで、式(3)〜(5)において、fcost_cv(xcv,i)は転炉出鋼温度を基準よりもxcv,iだけ上げて出鋼したときに発生するコストを、Sはチャージiの各2次精錬設備(1〜m)での処理の有無を示すベクトルを、Sj,iはチャージiの2次精錬設備jでの処理の有無を示す変数(0は処理無し、1は処理有り)を、fcost_refine,iはチャージiの各2次精錬設備(1〜m)で電力使用量を上げて基準よりも昇温処理時間を短縮したときに発生するコストを示すベクトルを、fcost_refine j(xrj,i)はチャージiの2次精錬設備jで電力使用量を上げて基準よりも昇温処理時間をxrj,iだけ短縮したときに発生するコストを、fcost_leadtime(xl,i)はリードタイムが基準よりもxl,iだけ延長したときに発生するコストを、fcost_overdue(xo,i)は納期遅れがxo,iだけ生じたときに発生するコストを、iはチャージ番号を、jは2次精錬設備の番号を、nは生産するチャージ数を、mは2次精錬設備数を、xcv,iはチャージiについて基準よりも転炉出鋼温度を上げた際の温度上昇値を、xrj,iは2次精錬設備jでチャージiの精錬を行う際に電力使用量を上げて基準よりも昇温処理時間を短縮した際の短縮時間を、xl,iはチャージiのリードタイムが標準よりも延長した際の延長時間を、xo,iはチャージiが納期遅れした際の納期遅れ時間(連続鋳造の空き時間)を、それぞれ意味する。
<本実施形態に係る生産計画作成装置の具体的内容>
図3は、本実施形態に係る生産計画作成装置100の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係る生産計画作成装置100は、物理状態検出装置1と、生産計画作成部Aとを備える。生産計画作成部Aは、工程処理時間設定モジュール7と、生産計画作成モジュール10とを具備する。また、本実施形態に係る生産計画作成装置100は、製造オーダーデータベース2と、仕掛品物理状態データベース3と、工程処理時間計算定数データベース4と、コスト計算定数データベース5と、製品処理進捗データベース6と、工程間搬送時間定数データベース8と、入出力部9とを備える。
物理状態検出装置1は、工程処理時間の予測に必要な仕掛品の物理状態を操業進捗(製品処理進捗)に合わせて計測し、仕掛品物理状態データベース3に登録する装置である。
仕掛品の物理状態のうち溶鋼の温度は、製鋼ラインを構成する各設備の到着前後において、人手により又は専用設備により計測され、その測温結果が仕掛品物理状態データベース3に登録される。測温には、例えば、使い捨ての熱電対などが用いられる。また、仕掛品の物理状態のうち溶鋼量は、転炉への装入前は秤量機に取鍋を設置して計測される。また、転炉からの出鋼以降の溶鋼量は、クレーンで取鍋を運搬する際に、クレーンに搭載された秤量機で計測される。
なお、物理状態検出装置1で計測される溶鋼温度は、生産計画を作成する時点で着目している仕掛品(溶鋼)が転炉からの出鋼直後で2次精錬設備への搬送前の状態であれば、出鋼温度として用いられ、2次精錬設備に到着しそこで計測されたものであれば2次精錬設備の処理前の溶鋼温度として用いられる。
製造オーダーデータベース2は、生産計画を作成する際の基となる製造オーダー情報を管理するデータベースである。仕掛品物理状態データベース3は、物理状態検出装置1から受け取った仕掛品の物理状態を管理するデータベースである。工程処理時間計算定数データベース4は、工程処理時間の予測計算に必要な定数を管理するデータベースである。コスト計算定数データベース5は、リードタイム延長等で発生するコストを算定する際に用いる計算定数を管理するデータベースである。製品処理進捗データベース6は、製品処理の進捗情報を管理するデータベースである。工程処理時間設定モジュール7は、製造オーダーや仕掛品物理状態等から工程処理時間を計算し、操業条件に応じた最適な工程処理時間を設定するモジュールである。工程間搬送時間定数データベース8は、生産計画作成時に必要な工程間の仕掛品搬送時間を管理するデータベースである。生産計画作成モジュール10は、設定した工程処理時間等から生産計画を作成するモジュールである。具体的には、生産計画作成モジュール10は、転炉工程の開始・終了時刻、2次精錬工程の開始・終了時刻、連続鋳造工程の開始・終了時刻を各チャージ毎に作成する。入出力部9は、生産計画作成モジュール10により作成された生産計画を操業者が利用できるように出力する。
以下、適宜図4を参照しつつ、本実施形態に係る生産計画作成装置100による生産計画作成のフローについて説明する。
まず最初に、計画立案者が入出力部9を介して所定の操作を行ったタイミングで、生産計画作成部A(工程処理時間設定モジュール7及び生産計画作成モジュール10)は、作成する生産計画の基となる製造オーダーを製造オーダーデータベース2より取得する(図4のS11)。図5に示すように、製造オーダーは、製造するチャージ毎の納期・製造番号・処理順序・品種・処理工程・鋳込速度等からなる情報である。
次に、生産計画作成部Aは、各チャージの物理状態を仕掛品物理状態データベース3より取得する(図4のS12)。図6に示すように、本実施形態での物理状態とは、生産計画作成時に各チャージが有する、溶鋼量・溶鋼温度を示す。また、対象チャージが先々に鋳込むチャージであり、物理状態の実績値が取得できない場合には、生産計画作成部Aは、標準的な物理状態を工程処理時間計算定数データベース4から取得する。
次に、生産計画作成部Aは、製品処理進捗を製品処理進捗データベース6より取得する(図4のS13)。図7に示すように、製品処理進捗は、製造番号に紐づけられた、処理の状態と、各工程における処理開始・終了の実績時刻とを意味する。
次に、工程処理時間設定モジュール7は、製品処理進捗が処理中又は処理前であるチャージについて、工程処理時間の初期値を設定する(図4のS14)。工程処理時間の初期値は、図4のS11で取得した製造オーダーと、S12で取得した物理状態と、S13で取得した製品処理進捗とを基に、前述した式(1)及び式(2)式を用いて計算され、設定される。式(1)を用いることにより、2次精錬工程の工程処理時間の初期値が計算され、式(2)を用いることにより、連続鋳造工程の工程処理時間の初期値が計算される。この工程処理時間の計算のため、工程処理時間設定モジュール7は、工程処理時間計算定数データベース4(図8にデータベースに記憶されている内容の概要を示す)より、品種毎の工程処理時間設定に必要な定数を取得する。なお、転炉工程の工程処理時間の初期値としては、工程処理時間計算定数データベース4に記憶されている転炉処理時間が用いられる。
以下、製造オーダー、物理状態及び製品処理進捗が図9に示すような状態である場合を例に挙げて、各工程処理時間の設定手順を具体的に説明する。なお、本実施形態では、2次精錬設備が2つ設けられ、各2次精錬設備を用いた2次精錬工程をそれぞれ2次精錬1、2次精錬2と称する。同様に、本実施形態では、連続鋳造設備が2つ設けられ、各連続鋳造設備を用いた連続鋳造工程をそれぞれ連続鋳造1、連続鋳造2と称する。
図9に示すケースでは、転炉−2次精錬1−連続鋳造1の工程となるチャージiにおいて、溶鋼量の実績値a[ton/m]と溶鋼温度の実績値T[℃]とが判明しており、転炉まで処理が完了している。この場合、2次精錬1と連続鋳造1の2つの工程について工程処理時間を設定する必要がある。2次精錬工程の処理時間は、前述した式(1)に示すように、設備付帯時間・昇温処理時間・成分調整時間の3つに分類される。設備付帯時間は、2次精錬設備内に取鍋が出入する際に要する時間であり、物理状態や処理内容に依存せず一律の値である。ここでは、2次精錬1の設備付帯時間をtrcとする。昇温処理時間は、溶鋼の処理前温度と処理後目標温度(図8に示す2次精錬1の鍋出目標温度に相当)に依存し、目標温度と処理前温度との差を昇温能率(図8に示す2次精錬1の昇温能率の標準値に相当)で除算することで昇温処理時間が求められる。2次精錬1の鍋出目標温度をTとし、昇温能率をUとすると、昇温処理時間は(T−T)/Uとなる。成分調整時間は、図8に示すように品種毎に定数で定義されている。ここでは、成分調整時間をtとする。以上より、チャージiについての2次精錬1の工程処理時間Tr1,iは次の式(6)で表現される。
Figure 2012133633
一方、連続鋳造工程の処理時間は、鋳込速度と図8に示す鋳込時間計算用定数とを乗算した値で、溶鋼量を除算することで求められる。鋳込時間計算用定数は、連続鋳造設備の仕様毎に異なる値となる。ここで、鋳込時間計算用定数をcとすると、チャージiについての連続鋳造1の工程処理時間Tc1,iは次の式(7)で表現される。
Figure 2012133633
以上のようにして、工程処理時間設定モジュール7は、製造オーダーと物理状態と製品処理進捗とを基に、各工程処理時間の初期値を計算し、設定する。
次に、工程処理時間設定モジュール7は、上記のようにして作成した解(工程処理時間の設定値)に対する目的関数(コスト指標)を計算する(図4のS15)。目的関数は、前述の式(3)に示すように、転炉出鋼温度を基準より上げて出鋼したときに発生するコスト(転炉耐火物の損耗コスト)、2次精錬設備で電力使用量を上げて基準よりも昇温処理時間を短縮したときに発生するコスト(昇温エネルギーコスト)、リードタイムが基準よりも延長したときに発生するコスト(温度降下補償のための昇温エネルギーコスト)、納期遅れが生じたときに発生するコスト(減産による利益減少コスト)の合計値を計画対象の全チャージで総和を取ったものである。目的関数の決定変数は、転炉出鋼温度が基準値(図8に示す転炉出鋼温度の標準値に相当)を越えた値、2次精錬工程において昇温処理時間が基準値を越えた値(昇温能率を基準(図8に示す2次精錬設備の昇温能率の標準値に相当)よりも上げた値)、リードタイムが基準値を越えた値、納期が遅れた値となる。コスト計算に必要な定数は、コスト計算定数データベース5(図10にデータベースに記憶されている内容の概要を示す)より取得する。
転炉出鋼温度上昇コスト(転炉出鋼温度を基準より上げて出鋼したときに発生するコスト)は、転炉出鋼温度の基準値を越えた値に対して、図10に示す転炉出鋼温度上昇コスト係数を乗算して求められる。例えば、チャージiの転炉出鋼温度の基準値がtcv_baseで、出鋼温度の計画値tcv_planがtcv_base以上の値となるとき、転炉出鋼温度が基準値を越えた値(温度上昇値)xcv_iは、xcv_i=tcv_plan−tcv_baseで表される。一方、tcv_plan<tcv_baseのときには、xcv_i=0となる。ここで、転炉出鋼温度上昇コスト係数をwcost_cvとすると、転炉出鋼温度上昇コストは、fcost_cv(xcv,i)は、次の式(8)で表現される。
Figure 2012133633

なお、出鋼温度の計画値としては、溶鋼温度(出鋼時の溶鋼温度)の実績値を取得している場合にはその実績値が用いられ、溶鋼温度の実績値を取得していない場合には図8に示す転炉出鋼温度の標準値が用いられる。
2次精錬昇温処理時間短縮コスト(2次精錬設備で電力使用量を上げて基準よりも昇温処理時間を短縮したときに発生するコスト)は、2次精錬工程の処理時間を基準値よりも短縮した際の短縮時間に対して、図10に示す2次精錬昇温処理時間短縮コスト係数を乗算して求められる。例えば、2次精錬1の鍋入温度(処理前温度)がTで、鍋出目標温度(処理後目標温度)がTのとき、昇温能率の基準値をUとした際の標準的な昇温処理時間trefineは、(T−T)/Uとなるが、昇温処理時間短縮のために昇温能率をU’(U’>U)とした場合の昇温処理時間trefine’は、(T−T)/U’となる。このとき、2次精錬1の昇温処理時間短縮コスト係数をwcost_refine 1とするとチャージiについての2次精錬昇温処理時間短縮コストfcost_refine 1(xr1,i)は、次の式(9)で表現される。
Figure 2012133633
リードタイム延長コスト(リードタイムが基準よりも延長したときに発生するコスト)は、リードタイム基準値よりも、リードタイムが延長したときに、その延長時間に対して、図10に示すリードタイム延長コスト係数を乗算して求められる。リードタイム基準値は、生産計画作成モジュール10において、工程処理時間設定モジュール7で設定した標準的な工程処理時間と、工程間搬送時間定数データベース8より取得した工程間の搬送時間とを積み上げて求められる。標準的な工程処理時間は、例えば、2次精錬工程の場合、図8に示す2次精錬における鍋入温度の標準値、鍋出目標温度、昇温能率の標準値を用いて計算した昇温処理時間、設備付帯時間、成分調整時間を積み上げて求められる。
より具体的に説明すれば、リードタイム基準値は、例えば図11に示すようなフローに従って積み上げ計算される。すなわち、まずリードタイム基準値を計算する際の起点として、転炉工程を注目工程として指定する(図11のS31)。次に、注目工程の次工程を製造オーダーデータベース2より検索し取得する(図11のS32)。次に、注目工程から次工程への溶鋼の搬送時間を工程間搬送時間定数データベース8より取得する(図11のS33)。次に、取得した搬送時間をリードタイムに加算する(図11のS34)。次工程が連続鋳造工程である場合は、リードタイム基準値の積み上げ計算は終了する(図11のS35のYes)が、次工程が連続鋳造工程でない場合(図11のS35のNo)は、次工程の工程処理時間(標準的な工程処理時間)を、工程処理時間設定モジュール7より取得する(図11のS36)。次に、取得した工程処理時間をリードタイムに加算し(図11のS37)、この後、次工程を注目工程として更新する(図11のS38)。以下、図11のS32に戻り、次工程が連続鋳造工程となるまで同様の計算を繰り返すことで、リードタイム基準値が計算される。
一方、リードタイムは、生産計画作成モジュール10にてシミュレーションを行い求める。このシミュレーションは、図12に示すような遡り計算等で行い、連続鋳造工程の終了・開始時刻、2次精錬工程の終了・開始時刻、転炉工程の終了・開始時刻を求め、転炉工程の終了時刻から連続鋳造工程の開始時刻までの経過時間をリードタイムとして算出する。
ここで、リードタイム延長コスト係数をwcost_leadtimeとすると、チャージiについてのリードタイム延長コストfcost_leadtime(xl,i)は、次の式(10)で表現される。
Figure 2012133633
納期遅れ発生コスト(納期遅れが生じたときに発生するコスト)は、注目チャージの鋳造工程開始時刻が、前回チャージの鋳造工程終了時刻に対して空きが生じたときに、その空き時間に、図10に示す納期遅れ発生コスト係数を乗算して求められる。納期遅れ時間(連続鋳造の空き時間)xo,iは、注目チャージiの連続鋳造工程開始時刻tcast_start,iと、前回チャージi−1の連続鋳造工程終了時刻tcast_end,i−1の差として求まる。
納期遅れ発生コスト係数をwcost_overdueとすると、チャージiについての納期遅れ発生コストfcost_overdue(xo,i)は、次の式(11)で表現される。
Figure 2012133633
以上に説明した各コストを計画対象の全チャージで総和を取ったものがコスト指標(目的関数)となる。なお、初期解(工程処理時間初期値)に対してコスト指標を計算した場合は、その初期解の値を暫定最適解として記憶する。
次に、工程処理時間設定モジュール7は、今回計算したコスト指標が、暫定最適解に対して計算したコスト指標よりも向上しているか否か(計算した目的関数の値が小さくなっているか否か)を判定し(図4のS16)、向上している場合には、暫定最適解を今回計算に用いた解に更新する(図4のS17)。
次に、工程処理時間設定モジュール7は、工程処理時間の計算終了条件を満たしたか否かを判定する(図4のS18)。計算の終了条件は、各種最適化計算手法に依存し、LP(線形計画法)であれば事前に設定した収束条件に応じ、タブーサーチ等のヒューリスティックによる求解を行う場合には計算回数を計算終了条件とする。
図4のS18で工程処理時間の計算終了条件を満たしていなかった場合、工程処理時間設定モジュール7は、新たな解を選択する(図4のS19)。目的関数の決定変数のうち、転炉出鋼温度の上昇値xcv,iと、2次精錬工程での昇温処理時間の短縮時間xrj,iについては、規定の制約条件内で選択されるが、リードタイムの延長時間xl,iと、納期遅れ時間xo,iについては、先に設定した転炉出鋼温度の上昇値と2次精錬工程での昇温処理時間の短縮時間を基に計算した工程処理時間からシミュレーションした結果によって決まる。このため、新たな解の選択時に設定するのは、実際には、転炉出鋼温度の上昇値xcv,iと2次精錬工程での昇温処理時間の短縮時間xrj,iのみとなる。ここで、xcv,i及びxrj,iの上下限値について説明すると、xcv,iは転炉出鋼温度が基準値を越えた値であり、転炉出鋼温度の上限値は図8に示すように与えられる(下限値は標準値が相当)。転炉出鋼温度の標準値をtcv_base、転炉出鋼温度の上限値をtcv_maxとすると、転炉出鋼温度の上昇値xcv,iは、次の式(12)で表現される制約範囲内で与えられる。
Figure 2012133633
2次精錬工程での昇温処理時間の短縮時間xrj,iについては、図8に示す2次精錬設備の昇温能率の上下限値により、その上下限値が決定される(昇温能率の下限値は標準値が相当)。2次精錬工程の処理前温度をT、処理後目標温度をT、昇温能率標準値をUbase、昇温能率上限値をUmaxとすると、2次精錬工程での昇温処理時間の短縮時間xrj,iは、次の式(13)で表現される制約範囲内で与えられる。
Figure 2012133633
一方、図4のS18で工程処理時間の計算終了条件を満たしていた場合は、暫定最適解を最適解とし、最終的に工程処理時間として設定する(図4のS20)。生産計画作成モジュール10は、設定した工程処理時間を基にして生産計画を作成する(図4のS21)。作成した生産計画は、入出力部9を通じて操業者に提示される。
1・・・物理状態検出装置
2・・・製造オーダーデータベース
3・・・仕掛品物理状態データベース
4・・・工程処理時間計算定数データベース
5・・・コスト計算定数データベース
6・・・製品処理進捗データベース
7・・・工程処理時間設定モジュール
8・・・工程間搬送時間定数データベース
9・・・入出力部
10・・・生産計画作成モジュール
100・・・生産計画作成装置
A・・・生産計画作成部

Claims (1)

  1. 複数の工程を有する製造ラインにおける生産計画を作成する装置であって、
    前記製造ライン上にある仕掛品の物理状態を検出する物理状態検出装置と、
    生産計画を作成する生産計画作成部とを備え、
    前記生産計画作成部は、
    前記物理状態検出装置で検出した仕掛品の物理状態を用いて、仕掛品を各工程で処理するための所要時間である工程処理時間を算出するステップと、
    前記算出した工程処理時間を用いて、リードタイム延長により発生するコスト、工程処理時間の短縮により発生するコスト及び納期遅れにより発生するコストの総和からなるコスト指標を演算するステップと、
    前記演算したコスト指標を最小化するように工程処理時間を更新し、該更新した工程処理時間を用いて生産計画を作成するステップとを実行することを特徴とする生産計画作成装置。
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