JP7031350B2 - 製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定方法 - Google Patents

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本発明は、転炉から連続鋳造機までの製鋼プロセスにおける、鋳造時間の推定方法に関する。
製鋼工場では、連続鋳造機において溶鋼を冷却して鋳片を製造するため鋳造に適した温度で溶鋼を連続鋳造機に供給する必要がある。溶鋼の温度管理は、例えば、溶鋼が凝固し始める液相線温度に、鋳造中の温度降下を考慮して定めた過熱度を加えた温度を、連続鋳造機における溶鋼温度目標値として、転炉や2次精錬設備において温度を調整することにより行われる。もしも、連続鋳造機において溶鋼温度が目標値より高ければ、鋳造速度を低下させ通常より溶鋼を長く冷却することとなるため、生産性が低下する。一方、溶鋼温度が目標値より低ければ、溶鋼搬送に用いる取鍋内において、または連続鋳造機上に配置された溶鋼受け皿であるタンディッシュ内において、低熱起因の品質悪化トラブル等により、歩留低下や安定操業阻害の要因となる。
上記のように、連続鋳造機に適切な温度で溶鋼を供給するために、転炉や2次精錬設備(以下において、「RH」と称することがある。)において温度調整が実施される。転炉では、高炉から供給された溶銑に酸素を吹き付けおよそ1300℃から1700℃近くまで温度を上昇させる。その際に、転炉から連続鋳造機までの各設備の操業条件や、転炉から連続鋳造機へと至るまでの経過時間にともなう温度降下量を見積もって、転炉処理終了時の目標温度と一致させるように、吹き付ける酸素量を調整している。また、RHでは目標値より溶鋼温度が高ければ冷材を投入し、目標値より溶鋼温度が低ければ酸素を吹き付ける昇温処理を施すことにより、温度を微調整する。製鋼工場における溶鋼温度管理の一例を、図1に示す。
一般的に、2次精錬工程は連続鋳造工程の前工程であり、2次精錬設備から連続鋳造機への搬送時間も短いことから、溶鋼温度を調整することが求められる。しかしながら、RHは転炉と比較して、一般的に溶鋼1ton当りに対する昇温コストが高い。そのため、コストの観点から、RHにおける温度調整は可能な限り少なくすることが求められる。
製鋼工場では、操業スケジュールに基づいて、連続鋳造機へと到着する時の溶鋼温度が目標値(液相線温度+過熱度)となるような、転炉出鋼時の溶鋼温度、出鋼後の取鍋内における溶鋼温度、および、RH処理前後の溶鋼温度の各指示値を算出して、各工程は溶鋼温度が指示値となるように操業を進める。しかしながら、成分調整や温度調整により処理時刻が遅れる可能性を考慮して、転炉処理やRH処理の開始時刻を前倒したり、連続鋳造における鋳造速度低下による鋳造時間が延長されたりすることにより、予定時刻と実績時刻との間に誤差が生じるため、予め設定する温度指示値が適切ではなくなる。本発明者による検証によれば、製鋼工場では、予定と比較して転炉処理およびRH処理が早期に開始される傾向があり、転炉処理およびRH処理は予定よりも延長される傾向があることが判明している。
図2に、製鋼工場が予定通りに操業された場合、および、RH処理の開始時刻が予定時刻よりも前倒しになり、且つ、RH処理の所要時間が予定よりも延長された場合のそれぞれにおける、溶鋼温度の推移の例を示す。転炉出鋼を起点とすると、実績の方が、転炉とRHとの間の搬送時間が短いため、予定と比較するとRH到着時の溶鋼温度は高くなる。しかしながら、RH処理時間は実績の方が長いため、RH処理後の溶鋼温度は実績の方が低くなる。そのため、実績では、RHにて余分に温度調整が必要となっている。
このように、温度目標値算出に用いる予定と実績との間に誤差が生じると、溶鋼温度予測が不正確となり、RHでの温度調整が必要になる。そのため、溶鋼温度を適切に管理するためには、予定と実績との間の時間誤差を低減することが重要である。
連続鋳造機で連々鋳操業を行う場合には、前のチャージの連続鋳造終了時刻と、当該前のチャージに続けて行われるチャージの連続鋳造開始時刻とを一致させる必要があるため、各チャージの連続鋳造開始時刻を正確に管理することが求められる。図3に、転炉、RH、および、連続鋳造機を有する製鋼工場における、操業スケジュールの一例を示す。図3におけるi-3、i-2、…、i+1は、チャージの番号である。図3に示したように、転炉処理およびRH処理では、前のチャージの処理終了時刻とその次のチャージの処理開始時刻とが一致していないが、連続鋳造機では、前のチャージの処理終了時刻とその次のチャージの処理開始時刻とが一致している。製鋼工場では、連続鋳造機における、前のチャージの処理終了時刻とその次のチャージの処理開始時刻とを一致させるために、例えば、転炉の出鋼時刻、転炉とRHとの間の搬送時間、RH処理の開始時刻、および、RHと連続鋳造機との間の搬送時間からなる群より選択された1以上が調整され、転炉から連続鋳造機までの溶鋼温度が管理されている。
製鋼工場における溶鋼温度管理に関する技術として、例えば特許文献1には、製鋼プロセス実行中のチャージに関して、二次精錬処理終了後の溶鋼の取鍋中での温度、連続鋳造中の溶鋼のタンディッシュ内での温度及び/又は連続鋳造の鋳込み速度に基づいて鋳込み終了時刻を推定するステップと、推定された鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの鋳込み開始時刻を推定するステップと、推定された鋳込み開始時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの溶鋼温度を管理するステップと、を含む溶鋼温度管理方法が開示されている。
また、製鋼工場における操業スケジュール作成に関する技術として、例えば特許文献2には、製鋼工場における溶鋼温度推移を目的関数とし、実績操業情報に基づいて最適な操業スケジュールを作成する、製鋼プロセスにおける操業スケジュール作成方法が開示されている。
特開2004-223602号公報 特開2014-36974号公報
特許文献1に開示されている技術では、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの連続鋳造開始時刻やRH終了時における溶鋼目標温度を定めている。しかしながら、これから転炉処理が開始されるチャージの連続鋳造開始時刻と現在時刻との間に複数のチャージが行われる場合には、当該複数のチャージの連続鋳造開始時刻を正確に予測する必要がある。連続鋳造開始時刻を予測するチャージの数が1つである特許文献1に開示されている技術では、複数のチャージの連続鋳造開始時刻を予測することは困難であるため、これから転炉処理が開始されるチャージの連続鋳造開始時刻を正確に予測することが困難であった。この問題は、特許文献1に開示されている技術と特許文献2に開示されている技術とを単に組み合わせても、解決することが困難であった。
そこで本発明は、これから転炉処理が開始されるチャージの、連続鋳造開始時刻の推定精度を向上させることが可能な、製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定方法を提供することを課題とする。
転炉処理の開始前に連続鋳造開始時刻を推定する場合には、RHの開始時刻および終了時刻や、連続鋳造の開始時刻および終了時刻を予測することが求められる。本発明者は、製鋼工場について物流シミュレーションを行うことにより、RHおよび連続鋳造の、開始時刻や終了時刻について調査した。その結果、RH処理前において待ち時間が長く発生していることから、転炉とRHとの間の搬送時間やRHと連続鋳造機との間の搬送時間よりも、鋳造時刻の制約が、RHの開始時刻や終了時刻に影響を与えていることを知見した。そこで、溶鋼温度を正確に管理するために、連続鋳造開始時刻を正しく推定する手法について検討することにした。転炉とRHとの搬送時間が長い製鋼工場では、転炉出鋼から連続鋳造開始までの時間(溶鋼滞留時間)が長いため、その間に複数のチャージが連続鋳造される。そして、連続鋳造において連々鋳操業実施時は、次のチャージの連続鋳造開始時刻をその前のチャージの連続鋳造終了時刻に一致させる必要があるため、溶鋼滞留の間に鋳造されるチャージの鋳造時間を正しく推定することが必要になる。
鋳造時間の予定値および実績値の例を図4に、図4に示した結果を誤差分布で示した図を図5に、それぞれ示す。図4および図5に示したように、現状の鋳造時間の予定値と実績値との間には誤差が生じる。そのため、本発明者は、鋳造時間を正しく推定する手法について検討した。その結果、連続鋳造開始時刻を推定するチャージ(当該チャージ)の転炉処理を行う前に判明している、当該チャージよりも前のチャージの出鋼量については実測値を用いるとともに、当該チャージよりも前のチャージの鋳造速度や、鋳造時間の予測誤差については、統計モデルを用いて推定した推定値を用いて、鋳造時間を推定することにより、鋳造時間の推定精度を向上させることが可能になることを知見した。本発明は当該知見に基づいて完成させた。
本発明について、以下に説明する。
本発明は、少なくとも1基以上の転炉、および、少なくとも1基以上の連続鋳造機を用いる製鋼プロセスにおける、連続鋳造機における鋳造時間を推定する方法であって、当該チャージの連続鋳造開始時刻を推定するために、現在時刻から当該チャージの連続鋳造開始時刻までの間に行われる、当該チャージよりも前のチャージの鋳造時間を、下記式を用いて推定するに際して、出鋼量WCHとして、上記前のチャージの出鋼量の実績値を使用し、且つ、鋳造速度Vおよび誤差時間Thoseiの何れか一方又は両方として、統計モデルに基づいて算出される推定値を使用することにより、上記前のチャージの鋳造時間Tを推定することを特徴とする、製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定方法である。
T=WCH×R/(WdMD×ThMD×V×S×d) + Thosei
上記式において、Tは鋳造時間(min)、WCHは出鋼量(Ton)、Rは鋳込歩留、WdMDは鋳型幅(m)、ThMDは鋳型厚(m)、Vは鋳造速度(m/min)、Sはストランド数、dは溶鋼の比重(Ton/m)、Thoseiは誤差時間(min)である。
ここで、本発明において、「チャージ」とは、転炉の1操業単位をいい、1回の転炉操業で数百トン程度の溶鋼を作製する。転炉から出鋼された溶鋼は、取鍋で搬送されて、連続鋳造機へと送られる。また、「当該チャージ」とは、連続鋳造開始時刻を推定する対象のチャージであって、転炉処理が未だ開始されていないチャージをいう。図3に示した例では、チャージiが当該チャージである。また、「当該チャージよりも前のチャージ」とは、現在時刻と当該チャージの連続鋳造開始時刻との間に連続鋳造が行われるチャージをいう。図3に示した例では、チャージi-3、チャージi-2、および、チャージi-1が、当該チャージよりも前のチャージである。また、鋳造時間Tは、連続鋳造開始時刻から連続鋳造終了時刻までの時間であり、本発明では、当該チャージよりも前のチャージ(図3に示した例ではチャージi-3~チャージi-1)の鋳造時間Tを計算する。また、出鋼量WCHは、転炉から取り出される溶鋼の量である。また、鋳込歩留Rは、鋳造量/出鋼量で表される。転炉出鋼後に、2次精錬設備で合金を装入する等の操業が行われるので、実際に鋳込まれる量は出鋼量ではなく、その補正を加味した値が鋳込歩留である。他のパラメータと同様に、鋳込歩留の実績値は操業後に判明するが、操業方針に応じて、操業前に各チャージの鋳込歩留の予定値が与えられる。また、鋳型幅WdMDおよび鋳型厚ThMDは、鋳造方向を法線方向とする断面が矩形である鋳型の、長辺および短辺である。また、上記式の右辺第2項である誤差時間Thoseiは、上記式の右辺第1項で算出される鋳造時間と、実際の鋳造時間との差である。
鋳造時間を推定する際に既に判明している出鋼量については実績値を用い、鋳造時間を推定する際に実績値が判明していないパラメータのうち、予定値と実績値とのばらつきが大きい鋳造速度Vおよび鋳造時間の推定誤差に相当するThoseiの何れか一方又は両方ついては統計モデルを用いて推定した値を使用して、鋳造時間を推定することにより、鋳造時間を高精度に推定することが可能になる。このようにして、現在時刻と当該チャージの連続鋳造開始時刻との間に連続鋳造が行われるすべてのチャージの鋳造時間を推定することにより、当該チャージの連続鋳造開始時刻を高精度に推定することが可能になる。
また、上記本発明において、誤差時間Thoseiとして、統計モデルに基いて算出される推定値を使用することが好ましい。これにより、製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定精度を高めやすくなる。
また、上記本発明において、鋳造速度VCおよび誤差時間Thoseiのそれぞれについて、統計モデルに基づいて算出される推定値を使用することが好ましい。これにより、製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定精度を高めやすくなる。
本発明によれば、これから転炉処理が開始されるチャージの、連続鋳造開始時刻の推定精度を向上させることが可能な、製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定方法を提供することができる。
製鋼工場における溶鋼温度管理の例を説明する図である。 溶鋼温度の推移の例を示す図である。 製鋼工場における操業スケジュールの例を示す図である。 鋳造時間の予定値および実績値の例を示す図である。 図4に示した結果を誤差分布で示した図である。 連続鋳造機の形態例を説明する図である。 実績データの使用有無による鋳造時間の推定精度を説明する図である。図7(A)は誤差時間Thoseiに過去実績の平均値を、その他の変数に予定値を代入して計算した場合の結果を示す図であり、図7(B)は誤差時間Thoseiに過去実績の平均値を、出鋼量は実績値を用い、その他の変数については予定値を代入して計算した場合の結果を示す図であり、図7(C)は誤差時間Thoseiに過去実績の平均値を用い、その他すべての変数に実績値を代入して計算した場合の結果を示す図である。 鋳型幅WdMDの予定値および実績値の分布例を示す図である。 鋳造速度Vの予定値および実績値の分布例を示す図である。 最大鋳造速度および鋳造速度の実績値を説明する図である。 材質ごとに分類した、鋳造時間の予定値と実績値との差を説明する図である。 パラレルグレイボックスモデルによる鋳造時間推定方法を説明する図である。 シリアルグレイボックスモデルによる鋳造時間推定方法を説明する図である。 ハイブリッドグレイボックスモデルによる鋳造時間推定方法を説明する図である。
本発明により鋳造時間を推定される連続鋳造が行われる連続鋳造機の形態例を、図6に示す。図6に示した連続鋳造機10は、2つの鋳型11を有している。鋳型11の上側には、鋳型11へと供給される溶鋼1を受けるタンディッシュ12が配置され、タンディッシュ12内の溶鋼1は、管13を通って鋳型11へと供給される。タンディッシュ12へと供給される溶鋼1は、取鍋14によって連続鋳造機10へと搬送され、取鍋14内の溶鋼1は、管15を通ってタンディッシュ12へと供給される。2つの鋳型を用いて連続鋳造が行われる図6に示した連続鋳造機10は、ストランド数Sが2である。
本発明者は、現状の鋳造時間予定値と実績値とを比較して、実績データを用いて鋳造時間を計算したときの改善程度について検討した。その結果の一例を図7に示す。図7(A)は、上記式のパラメータのうち、Thoseiを除くすべてのパラメータとして予定値を用いて算出した鋳造時間の推定値と実績値との分布を示す図である。また、図7(B)は、上記式のパラメータのうち、ThoseiおよびWCHを除くすべてのパラメータについては予定値を用い、且つ、WCHについては実績値を用いて算出した鋳造時間の推定値と実績値との分布を示す図である。また、図7(C)は、上記式のパラメータのうち、Thoseiを除くすべてのパラメータについて実績値を用いて算出した鋳造時間の推定値と、鋳造時間の実績値との分布を示す図である。なお、図7(A)~(C)に示した鋳造時間の推定値を算出する際には、上記式におけるThoseiは過去実績の平均値を用いている。
図7(A)に示した推定値と実績値とを比較すると、鋳造時間の推定誤差の標準偏差は3.4分であった。また、図7(B)に示した推定値と実績値とを比較すると、鋳造時間の推定誤差の標準偏差は、図7(A)よりも0.44分改善して2.96分となった。また、図7(C)に示した推定値と実績値とを比較すると、鋳造時間の推定誤差の標準偏差は、1.23分まで改善した。なお、図7(C)に示した結果においても、推定値と実績値との間には差が見られるが、これは実績データ自体に、測定誤差等が含まれていることが理由であると思われる。
上述のように、WCHとして実績値を用いて鋳造時間を推定すると、鋳造時間の推定誤差の標準偏差は2.96分になる。この標準誤差は、1チャージ分の値である。図3に示した例のように、現在時刻と当該チャージの連続鋳造開始時刻との間に3つのチャージの連続鋳造が行われる場合、各々が独立と考えると、連々鋳3チャージ後の鋳造開始時刻の標準偏差は、二乗和平方根を用いて、5.13分になる。そこで、本発明者は、鋳造時間の推定誤差を低減する方法について、検討した。
上記式において予定値に対して実績値が変動する要素は、出鋼量WCH、鋳込歩留R、鋳型幅WdMD、鋳造速度Vである。この中で出鋼量WCHに関しては、チャージiの連続鋳造開始時刻を推定する際に、当該チャージiよりも前のチャージであるチャージi-3~チャージi-1の出鋼量については測定値を利用することが可能である。また、鋳込歩留Rに関しては、鋳込歩留Rはチャージ毎にほぼ一定であるため、予定値を利用することができる。鋳型幅WdMDおよび鋳造速度Vについて、予定値および実績値の分布を、図8および図9に示す。図8は、鋳型幅WdMDの予定値および実績値の分布例を示す図であり、図9は、鋳造速度Vの予定値および実績値の分布例を示す図である。
図8に示したように、鋳型幅WdMDは、予定値に対する実績値の誤差が小さい。そのため、鋳型幅WdMDについては予定値を用いることが可能と考えられる。これに対し、図9に示したように、鋳造速度Vは、実績値が予定値から大きく低下しているチャージが多数あるため、鋳造時間の推定誤差への影響が大きいと考えられる。
操業時における鋳造速度に関しては、例えば、材質、鋳型幅、過熱度、転炉処理後の硫黄濃度等に応じて、予定値である最大鋳造速度が与えられる。例えば、極低炭鋼に対しては、図10に実線で示すように最大鋳造速度が定められる。しかしながら、図10に○で示した鋳造速度の実績値の中には、最大鋳造速度から低下しているものも多い。
また、図11に、材質ごとに分類した、鋳造時間の予定値と実績値との差のボックスプロットを示す。図11の左側の縦軸に示した記号は材質を表す記号(材質記号)であり、同右側の縦軸には各材質のデータ数を示した。図11に示したように、材質によって中央値(箱内太線)がばらついていることが分かる。
このような鋳造速度の予定値と実績値との差に影響する要因としては、例えば、タンディッシュ内の湯面レベル変動やバルジングなど連続鋳造機の操業状況や、精整ラインや熱延ラインなどの下工程の影響が考えられる。しかし、連続鋳造機の操業状況や下工程の影響は、鋳造時間を推定する予定段階では参照できないデータである。そこで、予定段階で利用可能なデータ(上記式では出鋼量WCH)を用いつつ、予定段階で利用できないデータのうち、鋳造時間の推定精度に大きな影響を与えるデータ(上記式では鋳造速度Vや誤差時間Thosei)については統計モデルにより推定した推定値を用いて、鋳造時間を推定することとした。
物理モデルと統計モデルとを組み合わせて利用する計算モデル(以下において、「グレイボックスモデル」と称することがある。)には、物理モデルでは説明できない誤差を推定するパラレルグレイボックスモデルと、物理モデル内において最も影響を与えるパラメータの推定値を用いて物理モデルを計算するシリアルグレイボックスモデルがある。本検討では、シリアルグレイボックスモデルにおいて最も変動要素の大きい鋳造速度を推定対象とした。さらに、これら2つの手法を組み合わせたハイブリッドグレイボックスモデルについても検討した。パラレルグレイボックスモデルによる鋳造時間推定方法を図12に、シリアルグレイボックスモデルによる鋳造時間推定方法を図13に、ハイブリッドグレイボックスモデルによる鋳造時間推定方法(図12に示した方法と図13に示した方法とを組み合わせた推定方法)を図14に、それぞれ示す。図12~図14において、「鋳造時間物理モデル」とは、上記式の右辺第1項である分数の各パラメータに値を代入することによって鋳造時間を算出することを意味し、この鋳造時間物理モデルへと向かう矢印の起点である枠内には、その具体的なパラメータが示されている。これらのパラメータのうち、「(実績値)」は実績値を用いたことを意味し、「(予定値)」は予定値を用いたことを意味する。また、「鋳造時間誤差推定モデル」は、後述する統計モデルを用いて、誤差時間Thoseiを推定することを意味し、「鋳造速度推定モデル」は、後述する統計モデルを用いて、鋳造時間Vを推定することを意味する。また、鋳造時間誤差推定モデルや鋳造速度推定モデルへと向かう矢印の起点である枠内に記載された「操業データ」は、後述する統計モデルで用いた説明変数を意味する。
所定数以上のデータ数が確保可能な材質について、図12~図14に示す3つの推定方法を用いて、鋳造時間を推定した。統計モデルには重回帰モデルを用いた。以下に説明変数として利用した項目を示す。
説明変数:最大鋳造速度、出鋼量(実績値)、鋳造時間(予定値)、RH時間(予定値)、連々総数、連々回数、取鍋回数、過熱度、鋳型幅、幅替回数
ここで、最大鋳造速度は、図10に例示した、鋳造速度の予定値であり、より具体的には、材質、鋳型幅、過熱度、および、転炉処理後の硫黄濃度に応じて定められる、実用上ほぼ理想的な操業が行われた場合に得られる鋳造速度である。
また、出鋼量は転炉から取り出される溶鋼の量であり、転炉から取鍋へと取り出された溶鋼を搬送する際に秤量することが可能である。図12~図14に示す3つの推定方法では、測定した実績値を用いた。なお、この出鋼量は、そのままの量が鋳造量ではない。転炉から出鋼された溶鋼は、その後、成分調整のための合金鉄等が添加されるため、鋳造量を特定する際には溶鋼へと添加される添加物についての補正をする必要がある。この補正量を、上記式では鋳込歩留Rとして出鋼量WCHに乗じている。鋳込歩留Rは操業状況等により設定される。
また、鋳造時間およびRH時間としては、予定値を用いた。
また、連々総数は、1回の連々鋳操業を構成するチャージの総数であり、例えば1回の連々鋳操業で7チャージ連続の操業を行う場合、連々総数は7である。
また、連々回数は、1回の連々鋳操業を構成する各チャージを意味し、例えば1回の連々鋳操業で7チャージ連続の操業を行う場合、連々回数は1から7までの値である。
また、取鍋回数は、転炉やRHで処理された溶鋼を受ける回数が何回目の取鍋であるかを表す数である。取鍋は、取鍋回数が数十回(例えば50回)になると、耐火物等が補修される。取鍋回数が異なると、取鍋の耐火物の厚さや取鍋内にこびりついた物の量が変わるため、溶鋼の温度が変わり、その温度に応じて鋳造速度が変更される。
また、過熱度は、溶鋼温度と溶鋼の凝固温度との差である。
また、鋳型幅は鋳型の幅であり、幅替回数は、1チャージの鋳込中に鋳型の幅を変更する回数である。
材質毎の推定誤差の標準偏差を、図8に結果を示した3つの手法による推定誤差の標準偏差とともに、表1に示す。
Figure 0007031350000001
表1に示したように、Thoseiには過去実績の平均値を用い、且つ、その他の変数には予定値を用いる図7(A)の手法に相当する物理モデル(予定値)の標準偏差の平均値は、3.74分であった。これに対し、図12に示したパラレルグレイボックスモデルでは標準偏差の平均値が2.95分、図13に示したシリアルグレイボックスモデルでは標準偏差の平均値が3.54分、図14に示したハイブリッドグレイボックスモデルでは標準偏差の平均値が2.89分であり、物理モデル(予定値)と比較して、それぞれ、0.79分、0.2分、0.85分改善できた。シリアルグレイボックスモデルを用いた場合に、パラレルグレイボックスモデルやハイブリッドグレイボックスモデルよりも標準偏差の改善量が少なかったのは、鋳造速度低下に影響する因子を十分に取り込めていないことが考えられる。
hoseiには過去実績の平均値を用い、且つ、その他の変数にはすべて実績値を用いる図7(C)に結果を示した手法に相当する物理モデル(実績値)の標準偏差の平均値は、2.03分であり、物理モデル(予定値)からの改善代は1.71分である。また、Thoseiには過去実績の平均値を用い、且つ、出鋼量についてのみ実績値を用いる図7(B)に結果を示した手法に相当する物理モデル(実)出鋼量の標準誤差の平均値は3.49分であった。今回の結果から、パラレルグレイボックスモデルでは改善代の46.5%、ハイブリッドグレイボックスモデルでは改善代の49.8%の改善効果があった。したがって、本発明では、パラレルグレイボックスモデル、または、ハイブリッドグレイボックスモデルにより、鋳造時間を推定することが好ましい。
なお、上記説明では、統計モデルとして重回帰モデルを用いる形態を示したが、本発明で使用可能な統計モデルはこれに限定されない。本発明で使用可能な統計モデルとしては、ニューラルネットワーク等を例示することが出来る。
1…溶鋼
10…連続鋳造機
11…鋳型
12…タンディッシュ
13、15…管
14…取鍋

Claims (3)

  1. 少なくとも1基以上の転炉、および、少なくとも1基以上の連続鋳造機を用いる製鋼プロセスにおける、前記連続鋳造機における鋳造時間を推定する方法であって、
    当該チャージの連続鋳造開始時刻を推定するために、現在時刻から前記当該チャージの連続鋳造開始時刻までの間に行われる、前記当該チャージよりも前のチャージの鋳造時間を、下記式を用いて推定するに際して、
    出鋼量WCHとして、前記前のチャージの出鋼量の実績値を使用し、且つ、
    鋳造速度Vおよび誤差時間Thoseiの何れか一方又は両方として、統計モデルに基づいて算出される推定値を使用することにより、前記前のチャージの鋳造時間Tを推定することを特徴とする、製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定方法。
    T=WCH×R/(WdMD×ThMD×V×S×d) + Thosei
    上記式において、Tは鋳造時間(min)、WCHは出鋼量(Ton)、Rは鋳込歩留、WdMDは鋳型幅(m)、ThMDは鋳型厚(m)、Vは鋳造速度(m/min)、Sはストランド数、dは溶鋼の比重(Ton/m)、Thosei統計モデルに基づいて算出される誤差時間の推定値又は0(min)である。
  2. 前記鋳造速度V として、該鋳造速度V の予定値、又は、前記統計モデルに基づいて算出される推定値を使用することを特徴とする、請求項1に記載の製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定方法。
  3. 前記鋳造速度Vおよび前記誤差時間Thoseiとして、前記統計モデルに基づいて算出される推定値を使用することを特徴とする、請求項1に記載の製鋼プロセスにおける鋳造時間の推定方法。
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