JP6394208B2 - 製鋼工場における操業スケジュール作成方法および作成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記の従来技術では、鋳込スケジュールを前提条件としているため、そこから求めた処理順序を充足する範囲でしか転炉、二次精錬装置、および連続鋳造機におけるチャージの処理スケジュールを変更することができない。また、与えられた鋳込スケジュールにおけるキャストの鋳造時刻が不適切である場合、不適切な鋳造時刻を含む鋳込スケジュールから仮算出される処理順序を前提条件として操業スケジュールを求めたとしても、全体的に最適なスケジュールとなる保証はない。
また、処理順序を決定変数とするスケジューリング問題を混合整数計画問題として定式化して、実際の操業規模の問題を解こうとすると、解候補数が爆発的に増加するため、実用的な計算時間で解を得ることが難しい。そこで、本発明者は、チャージの登録情報を用いて一部の処理順序を固定することにより、解の選択候補を少なくして計算時間を短縮化することを知見した。
本発明は、このような知見に基づいて完成させた。以下、本発明について説明する。
図2は、本発明の製鋼工場における操業スケジュール作成方法を説明するフローチャートである。図2に示したように、本発明の操業スケジュール作成方法は、操業予定情報読込工程(S21)と、制約条件設定工程(S22)と、目的関数生成工程(S23)と、スケジュール演算工程(S24)と、を有している。
操業予定情報読込工程(S21)は、スケジュール作成対象期間に製造予定であるチャージの処理工程、該処理工程における所要時間、処理設備間の最短搬送時間、および、連続鋳造機における連々鋳順位、を含む操業予定情報を読み込む工程である。具体的には、スケジュール作成対象期間に製造が予定されているチャージについて、転炉、二次精錬装置、および連続鋳造機における設備番号、処理時間、設備間における搬送時間を含む時間の情報、ならびに、連続鋳造機における連続鋳造回数などキャストに関する情報を含む操業予定情報を、該情報が記憶されている操業予定情報記憶部から読み込む工程である。
制約条件設定工程(S22)は、上記S21で読み込んだ操業予定情報を用いて、制約条件を設定する工程である。S22で設定される制約条件には、(1)転炉、RH、および、連続鋳造機による処理の、開始時刻と終了時刻との関係、(2)転炉による処理の終了時刻、転炉とRHとの間の搬送時間、および、RHによる処理の開始時刻との関係、(3)RHによる処理の終了時刻、RHと連続鋳造機との間の搬送時間、および、連続鋳造機による処理の開始時刻との関係、ならびに、(4)製造するチャージ間の処理順序を表わす0−1変数を用いて表される、転炉工程、二次精錬工程、および、連続鋳造工程における、チャージ間の処理時刻の関係、が含まれる。後述するスケジュール演算工程で混合整数計画問題を解くことにより操業スケジュールを作成する場合における、S22の具体例について、以下に説明する。
目的関数生成工程(S23)は、生産コストに関する指標(ここでは、任意のチャージの転炉工程の終了から連続鋳造工程の開始までの所要時間である溶鋼滞留時間。)、および、生産量に関する指標(ここでは、連続鋳造工程の完了時刻。)を含む目的関数を生成する工程である。S23で生成される目的関数は、下記式(12)で表される。
ここで、溶鋼滞留時間は高温液体である溶鋼が取鍋内に蓄積されている時間を表し、溶鋼滞留時間の長さによって取鍋内の耐火物が溶損することから溶鋼滞留時間の長期化はメンテナンスに掛るコストの増加を表す。更に溶鋼滞留時間の長さに応じて溶鋼温度は低下するため、連続鋳造機での鋳造に適切な温度として溶鋼を供給するためには、溶鋼が取鍋内に蓄積されている間の温度降下量を見積もって転炉またはRHにおいて温度を高くしておく必要がある。したがって、溶鋼滞留時間が長ければ余分に温度を上昇させておく必要があるため生産コストを増加させる。上記の例では、「生産コストに関する指標」を溶鋼滞留時間とし、これを目的関数に加えたが、例えばメンテナンスや温度調整に掛るコストを「生産コストに関する指標」として、目的関数に加えても問題ない。
また、連続鋳造工程の完了時刻を早期化することは、単位時間当たりの生産量を高め、本スケジュールの対象とする全てのチャージの処理を完了した後に、早期に次のチャージ処理を開始することが可能となるため、連続鋳造工程における完了時刻は生産量を表す指標である。上記の例では、「生産量に関する指標」を連続鋳造工程における完了時刻とし、これを目的関数に加えたが、例えばキャスト間の非鋳造時間を「生産量に関する指標」として、目的関数に加えても良い。
スケジュール演算工程(S24)は、上記S22で設定した制約条件の下で、上記S23で生成した目的関数を、最大化または最小化する、転炉工程、二次精錬工程、ならびに、連続鋳造工程の、開始時刻および終了時刻(操業スケジュール)を決定する工程である。最小化問題の目的関数に「−1」をかけると最大化問題になるため、最大化問題は最小化問題と同様にして解を求めることができる。
図3は、本発明の製鋼工場における操業スケジュール作成装置の形態例を説明する図である。図3に示した本発明の製鋼工場における操業スケジュール作成装置3は、操業予定情報記憶部31と、操業予定情報読込部32と、スケジューリング問題生成部33と、スケジュール演算部34と、スケジュール記憶部35と、スケジュール表示部36と、情報入力部37と、を有し、スケジューリング問題生成部33は、制約条件設定部331および目的関数生成部332を有している。
一方、特許文献1の0038段落に記載されているようにバックワードシミュレーションによって算出した仮スケジュールに基づいて、各設備の処理順序を基に上記式(1)〜(5)、(12)、および、下記式(13)でチャージ間の処理時刻の制約を課すことにより、操業スケジュールを作成した。
なお、上記実施例および比較例では、転炉(p=1)における最短処理時間を25分、RH(p=2)における最短処理時間を15〜30分、連続鋳造機(p=3)における最短処理時間を30〜70分とし、簡単化するため最長処理時間は最短処理時間と同値とした。また、上記実施例では、転炉からRHへの最短搬送時間を40分、RHから連続鋳造機1または2(CC1またはCC2)への最短搬送時間を25分とした。また、上記実施例および比較例では、生産量を確保したうえで、生産にかかるコスト(滞留時間が長くなると溶鋼温度が低下するため溶鋼温度を上昇させるための再加熱を行うコストが生じるほか、取鍋耐火物の溶損によるメンテナンスコストが生じる。)を最小化するという意味で、生産量に関連する鋳造完了時刻により大きな重みを付与した。具体的には、コスト係数c1およびc2を、c1=1、c2=10とし、最小化問題として解を求めた。
なお、RHは溶鋼を真空槽内に循環させることにより不純なガスを取り除く設備であり、処理するチャージに求められる成分規格によって、RHの最短処理時間が定められる。
また、連続鋳造においては鋳片の表面上の疵や内部の品質によって鋳造速度の最大値が定められており、最大鋳造速度でチャージ1杯分の溶鋼を処理するときの鋳造時間が連続鋳造機の最短処理時間となる。
図6に示したように、ケース1(比較例)よりも、ケース2(実施例1)およびケース3(実施例2)は評価関数値が小さい。この結果から、本発明によれば、従来よりも溶鋼滞留時間の短縮化および鋳造完了時刻の早期化を図ることが可能な、操業スケジュールを作成可能であることが確認された。すなわち、本発明によれば、コストおよび生産性を考慮した操業スケジュールを作成することが可能である。
31…操業予定情報記憶部
32…操業予定情報読込部
33…スケジューリング問題生成部
34…スケジュール演算部
35…スケジュール記憶部
36…スケジュール表示部
37…情報入力部
331…制約条件設定部
332…目的関数生成部
Claims (6)
- 少なくとも、1基以上の転炉による転炉工程、1基以上の二次精錬装置による二次精錬工程、および、2基以上の連続鋳造機による連続鋳造工程、を有する製鋼工場における操業スケジュールを作成する方法であって、
スケジュール作成対象期間に製造予定であるチャージの処理工程、該処理工程における所要時間、処理設備間の最短搬送時間、および、前記連続鋳造機における連々鋳順位、を含む操業予定情報を読み込む、操業予定情報読込工程と、
前記操業予定情報を用いて制約条件を設定する、制約条件設定工程と、
任意のチャージの生産コストに関する指標および生産量に関する指標を含む目的関数を生成する、目的関数生成工程と、
前記制約条件設定工程で設定した前記制約条件の下で、前記目的関数生成工程で生成した前記目的関数を、最大化または最小化する、前記転炉、前記二次精錬装置、ならびに、前記連続鋳造機による処理の、開始時刻および終了時刻を決定する、スケジュール演算工程と、を有し、
前記制約条件に、
前記転炉、前記二次精錬装置、および、前記2基以上の連続鋳造機のそれぞれによる処理の、開始時刻と終了時刻との関係、
前記転炉による処理の終了時刻、前記転炉と前記二次精錬装置との間の搬送時間、および、前記二次精錬装置による処理の開始時刻の関係、
前記二次精錬装置による処理の終了時刻、前記二次精錬装置と前記2基以上の連続鋳造機のそれぞれとの間の搬送時間、および、前記2基以上の連続鋳造機のそれぞれによる処理の開始時刻の関係、ならびに、
製造するチャージ間の処理順序を表わす0−1変数である決定変数を用いて表される、前記転炉工程、前記二次精錬工程、および、前記連続鋳造工程における、チャージ間の処理時刻の関係、
が含まれることを特徴とする、製鋼工場における操業スケジュール作成方法。 - さらに、同一の前記連続鋳造機で鋳造される任意の2つのチャージに関し、鋳造する順番に対応して、処理順序を表わす前記決定変数を1または0に固定するという条件が、前記制約条件に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の製鋼工場における操業スケジュール作成方法。
- さらに、前記連続鋳造機で鋳造される、任意のチャージiと、鋳込順序が前記チャージiから所定の順番以上離れたチャージjとの間の鋳込順序を表す前記決定変数を1または0に固定するという条件が、前記制約条件に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の製鋼工場における操業スケジュール作成方法。
- 少なくとも、1基以上の転炉による転炉工程、1基以上の二次精錬装置による二次精錬工程、および、2基以上の連続鋳造機による連続鋳造工程、を有する製鋼工場における操業スケジュールを作成する装置であって、
スケジュール作成対象期間に製造予定であるチャージの処理工程、該処理工程における所要時間、処理設備間の最短搬送時間、および、前記連続鋳造機における連々鋳順位、を含む操業予定情報を記憶する、操業予定情報記憶部と、
前記操業予定情報記憶部に記憶された前記操業予定情報を用いて制約条件を設定する、制約条件設定部と、
任意のチャージの生産コストに関する指標および生産量に関する指標を含む目的関数を生成する、目的関数生成部と、
前記制約条件設定部で設定された前記制約条件の下で、前記目的関数生成部で生成された前記目的関数を、最大化または最小化する、前記転炉、前記二次精錬装置、ならびに、前記連続鋳造機による処理の、開始時刻および終了時刻を決定する、スケジュール演算部と、を有し、
前記制約条件に、
前記転炉、前記二次精錬装置、および、前記2基以上の連続鋳造機のそれぞれによる処理の、開始時刻と終了時刻との関係、
前記転炉による処理の終了時刻、前記転炉と前記二次精錬装置との間の搬送時間、および、前記二次精錬装置による処理の開始時刻の関係、
前記二次精錬装置による処理の終了時刻、前記二次精錬装置と前記2基以上の連続鋳造機のそれぞれとの間の搬送時間、および、前記2基以上の連続鋳造機のそれぞれによる処理の開始時刻の関係、ならびに、
製造するチャージ間の処理順序を表わす0−1変数である決定変数を用いて表される、前記転炉工程、前記二次精錬工程、および、前記連続鋳造工程における、チャージ間の処理時刻の関係、
が含まれることを特徴とする、製鋼工場における操業スケジュール作成装置。 - さらに、同一の前記連続鋳造機で鋳造される任意の2つのチャージに関し、鋳造する順番に対応して、処理順序を表わす前記決定変数を1または0に固定するという条件が、前記制約条件に含まれることを特徴とする、請求項4に記載の製鋼工場における操業スケジュール作成装置。
- さらに、前記連続鋳造機で鋳造される、任意のチャージiと、鋳込順序が前記チャージiから所定の順番以上離れたチャージjとの間の鋳込順序を表す前記決定変数を1または0に固定するという条件が、前記制約条件に含まれることを特徴とする、請求項4に記載の製鋼工場における操業スケジュール作成装置。
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