JP4100179B2 - 溶鋼温度管理方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶鋼温度管理方法、具体的には製鋼プロセスにおいて、転炉、電気炉等の製鋼炉で製造されて取鍋に払い出した溶鋼の温度をその後の連続鋳造のプロセスまでの間、適切に管理することにより、連続鋳造時に所定の鋳込み温度を得るために溶鋼の温度を管理する方法及びそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造を利用した一般的な製鋼プロセスでは図1にその模式図を示すように、製鋼炉(転炉、電気炉等)1において精錬処理(一次精錬処理)された溶鋼を取鍋2に払い出し、取鍋2中において真空脱ガス、成分温度調整等の二次精錬処理を行なった後、搬送してタンディッシュ3に一旦貯留し、その下側に位置する鋳型4から外側が凝固殻で覆われた固液2相体の状態の鋳片5を連続的に引き抜くことにより連続鋳造が行なわれる。
【0003】
このような連続鋳造による製鋼プロセスにおいては、チャージ毎の溶鋼温度のバラツキを可及的に小さくして安定した操業を確保するために、各プロセス、具体的には図1に示す製鋼炉1での一次精錬処理のプロセス、製鋼炉1からタンディッシュ3への搬送のプロセス、この搬送中の取鍋2での二次精錬処理のプロセス、タンディッシュ3への注入及び鋳型4による鋳込みのプロセスにおける溶鋼温度が所定温度であることが重要である。特に、タンディッシュ3から鋳型4への鋳込み中における溶鋼温度は、連続鋳造によって製造される鋳片5の品質を向上させるためにも重要である。
【0004】
ところが、上述のような連続鋳造による製鋼プロセスにおいては、取鍋2での二次精錬処理のプロセスが溶鋼温度を調整することが可能な最終のプロセスであり、それ以降の各プロセスにおいては溶鋼温度は時間の経過に従って自然に放熱して降下するのみである。従って、この二次精錬処理のプロセスの終了時点の溶鋼温度を以降の各プロセスでの所要時間、換言すればその間の温度降下量を見込んで決定する必要がある。
【0005】
以上のような事情から、溶鋼温度を管理するための技術がたとえば特許文献1及び特許文献2等に開示されている。特許文献1には、製鋼プロセスにおける二次精錬処理、溶鋼運搬、鋳込みの各プロセスでの温度降下量及びプロセス所要時間を考慮して、二次精錬処理開始時の溶鋼の目標温度を補正する技術が開示されている。
【0006】
また特許文献2には、過去のチャージ実績データと種々の操業変動要因とを用いて、製鋼炉での処理終了時点から鋳込み開始時点までの溶鋼温度の降下量を予測し、この予測値から得られた製鋼炉での処理終了時点の溶鋼温度を製鋼炉での目標温度として製鋼炉を自動吹錬制御する技術が開示されている。
【0007】
なお、特許文献3には、製鋼プロセスの操業スケジュールを作成するための技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−251648号公報
【特許文献2】
特許第2751800号公報
【特許文献3】
特許第3166822号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献2に開示されている技術は、製鋼炉での処理終了時点の溶鋼温度を管理することを主眼としている。具体的には、製鋼処理開始時において、製鋼炉処理終了時点から鋳込み時点までの溶鋼の温度降下量を推定し、この結果から逆算して製鋼炉処理終了時点での目標温度を設定することにより、鋳込み処理時の目標鋳込み温度を確保しようとするものである。なお、目標鋳込み温度は鋼種、品質等の関係から予め設定されている。
【0010】
しかしこのような特許文献2に開示されている技術では、製鋼炉での処理終了時点から鋳込みまでに要する時間が溶鋼の温度降下量に大きく影響する、具体的には、長時間を要すれば放熱によって溶鋼温度が自然に降下することは当然のことである。
【0011】
また特許文献2に開示されている技術では、製鋼炉での処理終了時点から鋳込み処理までの間の、製鋼炉と二次精錬処理のための取鍋との間の搬送時間、二次精錬処理に要する時間、二次精錬処理終了後からタンディッシュまでの搬送時間、鋳込み時間等、には計画時間(予定時間)を用いている。この計画時間は、たとえば引用文献3に開示されているような公知の製鋼スケジュール作成システム等によって作成された計画時間が使用可能である。
【0012】
特許文献1に開示されている技術では、二次精錬処理開始時において、二次精錬処理終了時点から鋳込みまでの溶鋼の温度降下量を推定し、この結果から逆算して二次精錬終了時点での目標温度を設定することにより、鋳込み処理時の目標鋳込み温度を確保しようとするものである。なお、目標鋳込み温度は鋼種、品質等の関係から予め設定されていることは特許文献2に開示されている技術と同様である。
【0013】
しかしこのような特許文献1に開示されている技術では、二次精錬処理終了時点から鋳込みまでに要する時間が溶鋼の温度降下量に大きく影響する、具体的には、長時間を要すれば放熱によって溶鋼温度が自然に降下することは当然のことであるという点においても、特許文献2に開示されている技術と同様である。
【0014】
また特許文献1に開示されている技術では、二次精錬処理終了時点から鋳込み処理までの間の、二次精錬処理終了後からタンディッシュまでの搬送時間、鋳込み時間等、には計画時間(予定時間)を用いていることも特許文献2に開示されている技術と同様である。
【0015】
以上のように、特許文献1、2のいずれに開示されている技術においても、各プロセスでの溶鋼温度の降下量の推定値を使用するため、製鋼スケジュールの計画時間の正確な予測が必要不可欠であることは勿論であるが、計画されたスケジュール通りに実操業が進行する必要がある。しかし、計画時間と実操業時間との間に誤差が生じた場合には、溶鋼温度の降下量の推定精度にも大きな誤差が生じるため、所定の鋳込み温度を得ることが出来ないという問題があった。
【0016】
なお、連続鋳造において鋳込み温度の誤差が低い方へ発生した場合には、鋳込み速度が高くなって鋳込みを中断する必要が生じる虞があると共に、鋳片品質が悪化する。逆に、鋳込み温度の誤差が高い方へ発生した場合には、鋳込み速度が低くなってブレークアウトが生じる虞があると共に、やはり鋳片品質が悪化する。
【0017】
図8は上述のような問題点を具体的に説明するためのタイミングチャートである。
【0018】
最上段には製鋼プロセス実行中のチャージ(以下、現チャージという)の計画時間が、その次の段には現チャージの実操業時間がそれぞれ示されている。ここでたとえば、現チャージの実操業時間の内の連続鋳造のプロセスに要する時間が、鋳込み温度が目標鋳込み温度からの誤差を生じたことが原因となって計画時間よりも時間Tだけ長くなってしまったとする。これに伴って、現チャージの次に製鋼プロセスが実行されるチャージ(以下、次チャージという)の実操業時間の内のタンディッシュへ搬送時間、換言すれば連続鋳造開始時刻を時間Tだけ遅延させる必要が生じている。
【0019】
この際、次チャージ計画時間に関しては、特許文献1に開示されている技術では二次精錬のプロセスの終了時点で温度降下量推定値(第1の温度降下量推定値)を考慮して溶鋼温度が管理され、特許文献2に開示されている技術では製鋼炉処理のプロセスの終了時点で温度降下量推定値(第2の温度降下量推定値)を考慮して溶鋼温度が管理される。
【0020】
しかし、実際には上述した遅延時間Tに起因して、次チャージの実操業に際しては実際の鋳込み温度は目標鋳込み温度から誤差を生じる、具体的には降下することになる。
【0021】
従来、上述のような製鋼スケジュールの計画時間と実操業時間との間の誤差を解消するためには、たとえば製鋼スケジュール作成システム自身による再スケジューリング(計画時間の再設定)を行なうか、作業員が経験と勘とによってマニュアルで調整する、等の対策が可能ではある。しかし、前者では再スケジューリングが行なわれた時点において既に当該チャージの処理が終了している可能性があり、後者では作業員の個人的能力差に左右される、等の問題があった。
【0022】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、製鋼スケジュールの計画時間と実操業時間との間に誤差が生じた場合に、従来は溶鋼温度を適正に管理することが出来ず、このために所定の鋳込み温度を得ることが出来なかった、という問題を解決し得る溶鋼温度管理方法を提供することを目的とする。またそのような方法を実現するための装置の提供をも目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る溶鋼の温度管理方法は、一次精錬処理後の溶鋼を取鍋でタンディッシュへ搬送しつつ二次精錬処理を行ない、タンディッシュに注入して鋳型から冷却しつつ鋳片として連続的に引き抜いて連続鋳造する製鋼プロセスの所定の鋳込み温度を得るための溶鋼の温度管理方法において、製鋼プロセス実行中のチャージに関して、二次精錬処理終了後の溶鋼の取鍋中での温度、連続鋳造中の溶鋼のタンディッシュ内での温度及び/又は連続鋳造の鋳込み速度に基づいて鋳込み終了時刻を推定するステップと、推定された鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの鋳込み開始時刻を推定するステップと、推定された鋳込み開始時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの溶鋼温度を管理するステップとを含むことを特徴とする。
【0024】
このような本発明の溶鋼の温度管理方法では、製鋼プロセス実行中のチャージ(現チャージ)の二次精錬処理終了後の溶鋼の取鍋中での温度、連続鋳造中の溶鋼のタンディッシュ内での温度及び/又は連続鋳造の鋳込み速度に基づいて現チャージの鋳込み終了時刻が推定され、この推定された現チャージの鋳込み終了時刻に基づいて、その次に製鋼プロセスが実行されるチャージ(次チャージ)の鋳込み開始時刻が推定され、この推定された次チャージの鋳込み開始時刻に基づいて次チャージの溶鋼温度が管理される。
【0025】
また本発明に係る溶鋼温度の管理方法は上述の発明において、推定された鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時刻から鋳込み終了時刻までの間の溶鋼温度の降下量を推定するステップと、推定された溶鋼温度の降下量に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼の目標温度を決定するステップとを更に含むことを特徴とする。
【0026】
このような本発明の溶鋼の温度管理方法では、推定された現チャージの鋳込み終了時刻に基づいて次チャージの二次精錬処理終了時刻から鋳込み終了時刻までの間の溶鋼温度の降下量が推定され、この推定された溶鋼温度の降下量に基づいて次チャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼の目標温度が決定される。
【0027】
また本発明に係る溶鋼温度の管理装置は、スケジュール作成手段が作成した製鋼プロセスの操業スケジュールに従って、一次精錬処理後の溶鋼を取鍋でタンディッシュへ搬送しつつ二次精錬処理を行ない、タンディッシュに注入して鋳型から冷却しつつ鋳片として連続的に引き抜いて連続鋳造する製鋼プロセスの所定の鋳込み温度を得るための温度管理装置において、前記取鍋中の溶鋼の温度を検出する第1のセンサと、前記タンディッシュ内の溶鋼の温度を検出する第2のセンサと、前記鋳型から引き抜かれる鋳片の引き抜き速度を鋳込み速度として検出する第3のセンサと、製鋼プロセス実行中のチャージに関して、前記第1のセンサが検出した二次精錬処理終了後の溶鋼の取鍋中での温度、前記第2のセンサが検出した連続鋳造中の溶鋼のタンディッシュ内での温度及び/又は前記第3のセンサが検出した連続鋳造の鋳込み速度に基づいて鋳込み終了時刻を推定する手段と、該手段が推定した鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの鋳込み開始時刻を推定する手段と、推定された鋳込み開始時刻に基づいて、前記スケジュール作成手段が作成した製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの操業スケジュールを見直す手段と、該手段により見直された操業スケジュールに従って、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの溶鋼温度を管理する手段とを備えたことを特徴とする。
【0028】
このような本発明の溶鋼温度の管理装置では、取鍋中の溶鋼の温度を検出する第1のセンサ,タンディッシュ内の溶鋼の温度を検出する第2のセンサ,及び鋳型から引き抜かれる鋳片の引き抜き速度(鋳込み速度)を検出する第3のセンサの検出結果を入力し、製鋼プロセス実行中のチャージ(現チャージ)の二次精錬処理終了後の溶鋼の取鍋中での温度、連続鋳造中の溶鋼のタンディッシュ内での温度、連続鋳造の鋳込み速度の全部、またはいずれか一つか二つに基づいて現チャージの鋳込み終了時刻を推定し、この推定した現チャージの鋳込み終了時刻に基づいて、その次に製鋼プロセスが実行されるチャージ(次チャージ)の鋳込み開始時刻を推定し、この推定した次チャージの鋳込み開始時刻に基づいて、スケジュール作成手段が作成した次チャージの操業スケジュールを見直し、この見直した操業スケジュールに従って、次チャージの溶鋼温度を管理する。
【0029】
更に本発明に係る溶鋼温度の管理装置は、上述の発明において、推定された鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時刻から鋳込み終了時刻までの間の溶鋼温度の降下量を推定する手段と、推定された溶鋼温度の降下量に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼の目標温度を決定する手段とを更に備えることを特徴とする。
【0030】
このような本発明の溶鋼温度管理装置では、推定した現チャージの鋳込み終了時刻に基づいて次チャージの二次精錬処理終了時刻から鋳込み終了時刻までの間の溶鋼温度の降下量を推定し、この推定した溶鋼温度の降下量に基づいて次チャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼の目標温度を決定する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0032】
図2は本発明に係る溶鋼温度管理方法の原理を示すタイミングチャートである。以下、まずこの図2のタイミングチャートを参照して本発明の原理について説明する。
【0033】
最上段には製鋼プロセス実行中のチャージ(以下、現チャージという)の計画時間が、その次の段には現チャージの実操業時間がそれぞれ示されている。本発明では、現チャージの計画時間に対する現チャージの実操業時間の内の二次精錬処理後の溶鋼温度、鋳込み中のタンディッシュ内温度、及び鋳込み速度に基づいて、現チャージの次に製鋼プロセスが実行されるチャージ(以下、次チャージという)の計画時間が見直される。但し、上述の現チャージの計画時間に対する現チャージの実操業時間の内の二次精錬処理後の溶鋼温度、鋳込み中のタンディッシュ内温度、及び鋳込み速度の内のいずれか一つ、または二つのみを利用してもよい。
【0034】
具体的には、現チャージの二次精錬処理が終了した時刻t01においてまず、現チャージの二次精錬処理後の溶鋼温度に基づいて現チャージの鋳込み時間(実際には終了時刻)が推定され、その終了時刻が時間T1だけ延長される。そしてこの時間T1だけ延長された時刻に次チャージの連続鋳造プロセスの開始時刻が一致するように二次精錬処理(及び/又は搬送処理)に要する時間を延長することにより、破線にて示されているような新たな次チャージ計画一次見直し時間が決定される。
【0035】
次に、現チャージが連続鋳造のプロセスに移ると、換言すればタンディッシュに溶鋼が移されると、タンディッシュ内の溶鋼温度に基づいて次チャージの計画時間が再度見直される。具体的には、現チャージにおいて溶鋼が取鍋からタンディッシュに移されると、タンディッシュ内の溶鋼温度に基づいて現チャージの鋳込み時間が再度推定され、その終了時刻が時間T2だけ更に延長される。そしてこの時間T2だけ延長された時刻に次チャージの連続鋳造プロセスの開始時点が一致するように二次精錬処理(及び/又は搬送処理)に要する時間を延長することにより、破線にて示されているような新たな次チャージ計画二次見直し時間が時刻t02において決定される。
【0036】
更に、現チャージが連続鋳造のプロセスに移った後、鋳込み速度に基づいて次チャージの計画時間がもう一度見直される。具体的には、現チャージにおいて、溶鋼がタンディッシュに移されて連続鋳造が開始されると、その鋳込み速度に基づいて現チャージの鋳込み時間が更にもう一度推定され、その終了時刻が時間T3だけ更に延長される。そしてこの時間T3だけ延長された時刻に次チャージの連続鋳造プロセスの開始時刻が一致するように二次精錬処理(及び/又は搬送処理)に要する時間を延長することにより、破線にて示されているような最終的な計画である次チャージ計画三次見直し時間が時刻t03において決定される。
【0037】
そして、この最終の見直し時間である次チャージ計画三次見直し時間に従って、次チャージの二次精錬処理のプロセス終了時点から鋳込み終了時点までの溶鋼の温度降下量が推定され、この推定値から逆算して二次精錬処理のプロセスの終了時点での溶鋼の目標温度が決定され、この目標温度を維持するために二次精錬処理プロセス間中の温度管理が行なわれる。
【0038】
なお、次チャージの二次精錬処理プロセスにおける温度管理は、最終的な次チャージ計画三次見直し時間にのみ従って行なわれるのではなく、次チャージ計画一次見直し時間、次チャージ計画二次見直し時間それぞれが求められる都度、行なわれる。
【0039】
ここで、前述の従来技術の説明において参照した図1を参照して、本発明の溶鋼温度管理方法を実現するための装置の構成例について説明する。
【0040】
図1に示されているように、取鍋2には内部の溶鋼温度を測定するためのセンサSN1が、タンディッシュ3には内部の溶鋼の温度を測定するためのセンサSN2が、鋳型4の下側には鋳込み速度(鋳片5の引き抜き速度)を測定するためのセンサSN3がそれぞれ備えられており、これらのセンサSN1,SN2,SN3の検出結果は本発明の溶鋼温度管理装置としての計算機10に入力されている。なお、これらのセンサSN1,SN2,SN3そのものは公知の技術を利用することが可能である。
【0041】
図3及び図4は上述の計算機10により各センサSN1,SN2,SN3の検出結果に基づいて実行される処理、換言すれば本発明方法の実行手順を示すフローチャートである。
【0042】
まず計算機10は現チャージの二次精錬処理が終了するまで待機しており(ステップS1でNO)、現チャージの二次精錬処理が終了すると(ステップS1でYES)、その時点の溶鋼温度をセンサSN1から取得し、この結果に基づいて現チャージの鋳込み終了時刻を推定する(ステップS2)。
【0043】
図5は上述のステップS2における現チャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼温度に基づいて行なわれる現チャージの鋳込み終了時刻を推定する手順を示すフローチャートである。
【0044】
まず、計算機10は鋳込み時間(鋳込みに要する総時間)を初期値である「0」にリセットし(ステップS21)、次に鋳込み中溶鋼温度(℃)を推定する(ステップS22)。具体的には、鋳込み中溶鋼温度は、センサSN1による「二次精錬処理終了時の溶鋼温度の実測値」から「溶鋼温度降下量」を差し引くことにより求められる。但し、溶鋼温度降下量は推定値であり、その求め方は従来公知の手法で行なわれる。
【0045】
次に、計算機10は溶鋼加熱度を算出する(ステップS23)。具体的には、溶鋼加熱度は、ステップS22において推定された「鋳込み中溶鋼温度」から「液相線温度(凝固温度)」を差し引くことにより求められる。
【0046】
次に、計算機10は鋳込み速度(m/min)を算出する(ステップS24)。具体的には、鋳込み速度は、ステップS23において算出された溶鋼加熱度と鋼種とにより予め定められている。但し、連−連1キャスト目の鋳込み初期等には特定の鋳込み速度が定められている場合もある。
【0047】
次に、計算機10は単位時間当たりの鋳込み重量(ton/min)を算出する(ステップS25)。具体的には、単位時間当たりの鋳込み重量は、ステップS24において算出された鋳込み速度、鋳型サイズ、鋼種(比重)から求められる。
【0048】
次に、計算機10は鋳込み重量を積算する(ステップS26)。具体的には、鋳込み重量の積算値は、「前回計算時鋳込み重量積算値」にステップS25で算出された「単位時間当たりの鋳込み重量」を加えることにより求められる。
【0049】
ここで、計算機10は計算上で現チャージの鋳込みが終了したか否かを判断する(ステップS27)。具体的には、上述のステップS26で積算した「鋳込み重量積算値」と「二次精錬処理終了時の溶鋼重量」とが一致していれば現チャージの鋳込みが終了したことになる(ステップS27でYES)。鋳込みが終了しない場合(ステップS27でNO)、計算機10は鋳込み時間を単位時間(計算の便宜上、たとえば1分,10分等、適宜に設定可能)だけ延長し(ステップS28)、ステップS22へ処理を戻す。
【0050】
以上のような処理が反復されることにより、ステップS27において鋳込み終了と判断されると(ステップS27でYES)、その時点で求められている鋳込み時間に基づいて現チャージの鋳込み終了時刻が前述の時刻t01において推定される。
【0051】
次に計算機10は、ステップS2において推定された現チャージの鋳込み終了時刻に基づいて次チャージ計画を見直す(ステップS3)。具体的には、計算機10はステップS2において推定された現チャージの鋳込み終了時刻を次チャージの連続鋳造開始時刻として修正することにより、図2に示されている次チャージ計画一次見直し時間を決定する。
【0052】
このようにして次チャージ計画一次見直し時間が決定されると、その二次精錬処理の終了時刻から鋳込み終了時刻までの時間が判明するので、計算機10はこの時間に対応する温度降下量推定値に基づいて次チャージの二次精錬処理の終了時点における取鍋2中の溶鋼の目標温度を決定する(ステップS4)。
【0053】
次に、現チャージの鋳込みが開始されると(ステップS5でYES)、計算機10はその時点の溶鋼温度、即ちタンディッシュ3内の溶鋼の温度をセンサSN2から取得し、この結果に基づいて現チャージの鋳込み終了時刻を推定する(ステップS6)。
【0054】
図6は上述のステップS6における現チャージの鋳込み中の溶鋼温度に基づいて行なわれる現チャージの鋳込み終了時刻を推定する手順を示すフローチャートである。
【0055】
まず、計算機10は鋳込み時間(鋳込みに要する総時間)を、センサSN2によりタンディッシュ3内の溶鋼温度を測定した時点までに既に経過している時間とする(ステップS61)。これは、ステップS6の処理が実行開始されるまでに既に前述したステップS2等の処理が行なわれているため、その時間を初期値としてこのステップS6の処理を開始するためである。
【0056】
次に計算機10は鋳込み中溶鋼温度(℃)を推定する(ステップS62)。具体的には、鋳込み中溶鋼温度は、センサSN2による「タンディッシュ3内の溶鋼温度の実測値」から「溶鋼温度降下量」を差し引くことにより求められる。但し、溶鋼温度降下量は推定値であり、その求め方は従来公知の手法で行なわれる。
【0057】
次に、計算機10は溶鋼加熱度を算出する(ステップS63)。具体的には、溶鋼加熱度は、ステップS62において推定された「鋳込み中溶鋼温度」から「液相線温度(凝固温度)」を差し引くことにより求められる。
【0058】
次に、計算機10は鋳込み速度(m/min)を算出する(ステップS64)。具体的には、鋳込み速度は、ステップS63において算出された溶鋼加熱度と鋼種とにより予め定められている。但し、連−連1キャスト目の鋳込み初期等には特定の鋳込み速度が定められている場合もある。
【0059】
次に、計算機10は単位時間当たりの鋳込み重量(ton/min)を算出する(ステップS65)。具体的には、単位時間当たりの鋳込み重量は、ステップS64において算出された鋳込み速度、鋳型サイズ、鋼種(比重)から求められる。
【0060】
次に、計算機10は鋳込み重量を積算する(ステップS66)。具体的には、鋳込み重量の積算値は、「前回計算時鋳込み重量積算値」にステップS65で算出された「単位時間当たりの鋳込み重量」を加えることにより求められる。
【0061】
ここで、計算機10は計算上で現チャージの鋳込みが終了したか否かを判断する(ステップS67)。具体的には、上述のステップS66で積算した「鋳込み重量積算値」と「タンディッシュ3内の溶鋼温度を測定した時点の残鋼量」とが一致していれば現チャージの鋳込みが終了したことになる(ステップS67でYES)。鋳込みが終了しない場合(ステップS67でNO)、計算機10は鋳込み時間を単位時間だけ延長し(ステップS68)、ステップS62へ処理を戻す。
【0062】
以上のような処理が反復されることにより、ステップS67において鋳込み終了と判断されると(ステップS67でYES)、その時点で求められている鋳込み時間に基づいて現チャージの鋳込み終了時刻が前述の時刻t02において推定される。計算機10はこの推定結果に基づいて次チャージ計画を見直し(ステップS7)、次チャージの二次精練処理終了時点の溶鋼の目標温度を決定する(ステップS8)。
【0063】
次に、計算機10は現チャージの鋳込み速度の変更が行なわれたか否かを判断する(ステップS9)。鋳込み速度が変更された場合(ステップS9でYES)、計算機10はその時点でタンディッシュ3内に残っている鋼量を変更後の鋳込み速度で全量鋳込むとして必要な鋳込み時間を推定する(ステップS10)。このステップS10において推定された鋳込み時間に基づいて現チャージの鋳込み終了時刻が前述の時刻t03において推定される。
【0064】
次に計算機10は、ステップS10において推定された現チャージの鋳込み終了時刻に基づいて次チャージ計画を再度見直す(ステップS11)。具体的には、計算機10はステップS10において推定された現チャージの鋳込み終了時刻を次チャージの連続鋳造開始時刻として再度修正することにより、図2に示されている次チャージ計画三次見直し時間を決定する。
【0065】
このようにして次チャージ計画三次見直し時間が決定されると、その三次精錬処理の終了時刻から鋳込み終了時刻までの時間が判明するので、計算機10はこの時間に対応する温度降下量推定値に基づいて次チャージの二次精錬処理の終了時点における取鍋2中の溶鋼の目標温度を決定する(ステップS12)。
【0066】
以上のように、計算機10は現チャージの鋳込み終了時刻を推定し、この推定された現チャージの鋳込み終了時刻を次チャージの鋳込み開始時刻として一次、二次、三次の次チャージ計画見直し時間を決定する。なお、見直しをも含む計画の作成に関しては従来公知の技術、たとえば特許文献3に「製鋼プロセスの操業スケジュール作成システム」として開示されているような技術を利用することができる。
【0067】
そして、計算機10は一次、二次、三次の次チャージ計画見直し時間が決定される都度、次チャージの二次精錬プロセス終了時点での溶鋼の温度が目標温度となるように管理する。なお、二次精錬プロセス終了時点での溶鋼温度の管理、より具体的には溶鋼の温度調整そのものに関しては従来公知の技術を利用することが可能である。
【0068】
図7は上述のような本発明方法による場合と特許文献1,2等に開示されている従来の技術による場合とで、溶鋼の目標鋳込み温度と実績鋳込み温度(鋳込み末期温度)とを比較した結果を示すグラフである。図7において、ハッチングを付した棒グラフが本発明方法による場合を、白抜き棒グラフが従来技術による場合をそれぞれ示している。
【0069】
この図7に示した結果からは、本発明による場合は溶鋼の鋳込み温度を目標値に対して従来よりも精度よく制御可能になっていることが理解されるはずである。従って、本発明方法によれば、連続鋳造において所定の鋳込み温度で安定して連続鋳造を行なうことが可能になり、連続鋳造される鋳片の品質向上を図ることが可能になる。
【0070】
【発明の効果】
以上に詳述したように本発明の溶鋼温度管理方法及び装置によれば、計画時間と実操業時間との間に誤差が生じた場合にも、溶鋼温度を適切に管理することが可能になり、所定の鋳込み温度で連続鋳造を行なえるため、連続鋳造により製造される鋳片の品質を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶鋼温度管理装置の構成例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る溶鋼温度管理方法の原理を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明に係る溶鋼温度管理装置としての計算機により実行される処理、換言すれば本発明方法の実行手順を示すフローチャートの一部である。
【図4】本発明に係る溶鋼温度管理装置としての計算機により実行される処理、換言すれば本発明方法の実行手順を示すフローチャートの残部である。
【図5】本発明に係る溶鋼温度管理装置の現チャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼温度に基づいて行なわれる現チャージの鋳込み終了時刻を推定する手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る溶鋼温度管理装置の現チャージの鋳込み中の溶鋼温度に基づいて行なわれる現チャージの鋳込み終了時刻を推定する手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明方法による場合と従来の技術による場合とで、溶鋼の目標鋳込み温度と実績鋳込み温度(鋳込み末期温度)とを比較した結果を示すグラフである。
【図8】従来技術の問題点を具体的に説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 製鋼炉
2 取鍋
3 タンディッシュ
4 鋳型
5 鋳片
10 計算機
SN1 取鍋内部の溶鋼温度を測定するためのセンサ
SN2 タンディッシュ内部の溶鋼の温度を測定するためのセンサ
SN3 鋳込み速度を測定するためのセンサ

Claims (4)

  1. 一次精錬処理後の溶鋼を取鍋でタンディッシュへ搬送しつつ二次精錬処理を行ない、タンディッシュに注入して鋳型から冷却しつつ鋳片として連続的に引き抜いて連続鋳造する製鋼プロセスの所定の鋳込み温度を得るための溶鋼の温度管理方法において、
    製鋼プロセス実行中のチャージに関して、二次精錬処理終了後の溶鋼の取鍋中での温度、連続鋳造中の溶鋼のタンディッシュ内での温度及び/又は連続鋳造の鋳込み速度に基づいて鋳込み終了時刻を推定するステップと、
    推定された鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの鋳込み開始時刻を推定するステップと、
    推定された鋳込み開始時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの溶鋼温度を管理するステップと
    を含むことを特徴とする溶鋼温度管理方法。
  2. 推定された鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時刻から鋳込み終了時刻までの間の溶鋼温度の降下量を推定するステップと、
    推定された溶鋼温度の降下量に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼の目標温度を決定するステップと
    を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の溶鋼温度管理方法。
  3. スケジュール作成手段が作成した製鋼プロセスの操業スケジュールに従って、一次精錬処理後の溶鋼を取鍋でタンディッシュへ搬送しつつ二次精錬処理を行ない、タンディッシュに注入して鋳型から冷却しつつ鋳片として連続的に引き抜いて連続鋳造する製鋼プロセスの所定の鋳込み温度を得るための溶鋼の温度管理装置において、
    前記取鍋中の溶鋼の温度を検出する第1のセンサと、
    前記タンディッシュ内の溶鋼の温度を検出する第2のセンサと、
    前記鋳型から引き抜かれる鋳片の引き抜き速度を鋳込み速度として検出する第3のセンサと、
    製鋼プロセス実行中のチャージに関して、前記第1のセンサが検出した二次精錬処理終了後の溶鋼の取鍋中での温度、前記第2のセンサが検出した連続鋳造中の溶鋼のタンディッシュ内での温度及び/又は前記第3のセンサが検出した連続鋳造の鋳込み速度に基づいて鋳込み終了時刻を推定する手段と、
    該手段が推定した鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの鋳込み開始時刻を推定する手段と、
    推定された鋳込み開始時刻に基づいて、前記スケジュール作成手段が作成した製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの操業スケジュールを見直す手段と、
    該手段により見直された操業スケジュールに従って、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの溶鋼温度を管理する手段と
    を備えたことを特徴とする溶鋼温度管理装置。
  4. 推定された鋳込み終了時刻に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時刻から鋳込み終了時刻までの間の溶鋼温度の降下量を推定する手段と、
    推定された溶鋼温度の降下量に基づいて、製鋼プロセス実行中のチャージの次のチャージの二次精錬処理終了時点の溶鋼の目標温度を決定する手段と
    を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の溶鋼温度管理装置。
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