JP2015193789A - 衝撃吸収材 - Google Patents

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Abstract

【課題】温度変化による荷重−変位特性の変動が少なく、広い温度範囲に亘って応力変化率の差が極めて小さく優れたエネルギ吸収性能を有する衝撃吸収材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の衝撃吸収材は、オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との複合樹脂発泡粒子の型内成形体からなり、密度20〜80g/L、エネルギ吸収効率70%以上、23℃における50%歪時圧縮応力0.1〜0.8MPa、−30℃における50%歪時圧縮応力と23℃における50%歪時圧縮応力の比が1.0〜1.4であり、65℃における50%歪時圧縮応力と23℃における50%歪時圧縮応力の比が0.6〜1.0であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、センサ付きバンパの構成部材として好適な、衝撃吸収材に関する。
近年、衝突時の歩行者保護性能を高める目的で、車両用バンパとして歩行者保護バンパが用いられるようになっている。歩行者保護バンパは、一般にバンパへの衝撃を検知する荷重センサ、圧力センサ、加速度センサ等のセンサを備え、バンパへの衝撃をセンサが検知すると、ポップアップフード、ボンネットエアバッグ等の歩行者への衝撃を軽減するための保護装置が作動するように構成されている。この種のセンサ付き歩行者保護バンパとしては、衝撃力を圧縮変形によって吸収するアブソーバ(衝撃吸収材)と、センサを備えたチャンバとを組みあわせ、アブソーバの変形に連動してチャンバを変形させるように両者を配置し、チャンバの変形を検知したセンサによって保護装置を作動させるように構成されたものが知られている(特許文献1、2)。
特許第5003636号公報 特許第5170140号公報
衝撃による荷重がアブソーバに加わった際のアブソーバの変位量は、同じ荷重に対しては一定であることが望ましいと考えられる。アブソーバにはエネルギ吸収性能に優れることが要求されているため、ポリプロピレンなどの合成樹脂発泡成形体によって構成されているが、従来の合成樹脂発泡成形体製のアブソーバの荷重−変位特性は温度によって異なり、温度が高い程、アブソーバの変形量は大きくなる。このため同じ荷重が加わった場合でも季節の違いによる気温差や日中と夜間との寒暖差等の気温の違いによってアブソーバの変形の度合いが異なり、アブソーバからチャンバへ伝わる変位の大きさも異なる。このため、歩行者等との衝突の度合いが同じであっても、保護装置を作動させるレベルが変化して保護装置が正確に動作しないことがないように、特許文献1に記載されるように、アブソーバが有する荷重−変位特性の温度特性を相殺するチャンバ設計を強いられていた。また、一般的にアブソーバとしては、軽量化の観点から低密度で高剛性の材料からなるものが好適であるが、従来のスチレン系樹脂発泡体を主体とした高剛性の材料は靱性が低下したり圧縮残留歪が大きくなる傾向にあり、圧縮残留歪が大きいと軽衝突の際の歪み回復性が劣り、アブソーバとしては更なる改善の余地を残すものであった。
本発明は上記従来技術の課題を解決すべくなされたもので、温度変化によって荷重−変位特性が大きく変動することがなく、広い温度範囲に亘って応力変化率の差が極めて小さく優れたエネルギ吸収性能を有する衝撃吸収材を提供することを目的とする。
即ち本発明は、
(1)オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との複合樹脂発泡粒子の型内成形体からなり、密度20〜80g/L、エネルギ吸収効率70%以上、23℃における50%歪時圧縮応力0.1〜0.8MPa、−30℃における50%歪時圧縮応力と23℃における50%歪時圧縮応力の比が1.0〜1.4であり、65℃における50%歪時圧縮応力と23℃における50%歪時圧縮応力の比が0.6〜1.0であることを特徴とする衝撃吸収材、
(2)複合樹脂が、オレフィン系樹脂3〜30重量%と、スチレン系樹脂97〜70重量%とから構成され、該オレフィン系樹脂の重量%と該スチレン系樹脂の重量%との合計は100重量%である上記(1)記載の衝撃吸収材、
(3)オレフィン系樹脂が、密度880〜930kg/mのエチレン系樹脂である上記(1)又は(2)記載の衝撃吸収材、
(4)複合樹脂発泡粒子の型内成形体の膨潤度が、1.25以上である上記(3)記載の衝撃吸収材、
(5)複合樹脂発泡粒子の型内成形体の圧縮永久歪率が15%以下であり、かつ曲げたわみ量が10mm以上である上記(1)に記載の衝撃吸収材。
(6)オレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体である上記(1)記載の衝撃吸収材、
(7)オレフィン系樹脂が、密度890〜930kg/m、190℃、2.16kgfにおけるメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンである上記(1)又は(2)記載の衝撃吸収材、
(8)オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂の複合樹脂発泡粒子が、オレフィン系樹脂の核粒子を水性溶媒中に懸濁させた懸濁液中にスチレンモノマーを添加し、核粒子中にスチレン系モノマーを含浸重合させてなる複合樹脂粒子を発泡させたものである上記(1)記載の衝撃吸収材、
(9)核粒子として用いるオレフィン系樹脂の融点が、95〜115℃である請求項8記載の衝撃吸収材、
(10)車両バンパ内に車幅方向に延在して、車両バンパ内に取付けられた衝撃を検知するセンサと連動するように配置される上記(1)記載の衝撃吸収材、
を要旨とするものである。
本発明の衝撃吸収材は、荷重−変位特性への温度の影響が少なく、エネルギ吸収性能に優れ、軽量化が可能なものである。本発明の衝撃吸収材をバンパ芯材として使用した場合には、歩行者保護或いは乗員保護装置のさらに正確な動作を実現でき、エネルギ吸収性能に関わるバンパ形状設計の自由度が高い、センサ付きバンパを提供できる。
実施例1における、発泡性複合樹脂粒子の中心部断面における透過型電子顕微鏡写真。 実施例1における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真。 実施例1における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真。 実施例2における、発泡性複合樹脂粒子の中心部断面における透過型電子顕微鏡写真。 実施例2における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真。 実施例2における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真。 実施例3における、発泡性複合樹脂粒子の中心部断面における透過型電子顕微鏡写真。 実施例3における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真。 実施例3における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真。 比較例1における、複合樹脂粒子の中心部断面における透過型電子顕微鏡写真。 比較例1における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真。 比較例1における、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真。 発泡粒子成形体のエネルギ吸収効率の算出方法を説明するための発泡粒子成形体の圧縮応力−歪曲線を示す図。 実施例、比較例の発泡粒子成形体の温度−圧縮応力変化率を示す図。
本発明の衝撃吸収材を構成するオレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との複合樹脂発泡粒子の型内成形体(以下、発泡粒子成形体ともいう。)は、オレフィン系樹脂を主成分とする連続相中にスチレン系樹脂を主成分とする分散相が分散されてなる改質樹脂、或いはオレフィン系樹脂を主成分とする連続相とスチレン系樹脂を主成分とする連続相との共連続相からなる改質樹脂を基材樹脂とするものが例示される。したがって、上記発泡粒子成形体を構成する発泡体気泡断面を透過型電子顕微鏡にて観察した場合において、その断面は、上記海島構造、或いは海海構造を形成していることが好ましい。
上記海島構造、或いは海海構造のモルフォロジーを有する発泡粒子成形体は、曲げたわみ性など特に優れた機械的物性を発現できる。
上記スチレン系樹脂を主成分とする相の状態は、複合樹脂発泡粒子を得るための樹脂粒子の重合温度や重合開始剤量を調整することにより重合速度を制御したり、該樹脂粒子の発泡条件を制御したりすることにより調整することができる。
本発明の衝撃吸収材を構成するオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレンホモ重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられるが、中でも直鎖状低密度ポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、特に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が、曲げたわみ性や成形性の面から好適である。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂としては、直鎖状の長鎖と該長鎖から分岐する、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3、4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等を共重合して得られる、炭素数4〜8の短鎖を有するものが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンは、通常、密度が880〜940kg/mであるが、本発明において直鎖状低密度ポリエチレン樹脂としては、密度890〜930kg/mのものが好ましく、900〜925kg/mのものがより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、メルトマスフローレイト(MFR:190℃、2.16kgf)が、0.5〜4.0g/10分のものが発泡性の観点から好ましく、1.0〜3.0g/10分のものがより好ましい。更に、メタロセン系触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が、発泡性の観点から好ましい。
本発明の衝撃吸収材を構成するスチレン系樹脂としては、スチレン樹脂や、スチレン系共重合体、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアルキル基の炭素数が1〜10のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のアルキル基の炭素数が1〜10のメタクリル酸アルキルエステル、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。スチレン系共重合体としては、スチレンモノマーと共重合可能な上記モノマーの1種又は2種以上が、スチレンモノマーと共重合したものを用いることができる。
本発明の衝撃吸収材は、上記オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させてなる発泡性樹脂粒子を発泡して得た予備発泡粒子を、金型等の型内に充填し、スチームで加熱して発泡粒子相互を融着、成形させて得られる型内成形体により構成される。
複合樹脂粒子を得る方法としては、上記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂とスチレン系樹脂を溶融混練した後、造粒操作にて粒状化する方法や、オレフィン系樹脂の核粒子を水性溶媒中に懸濁させ、この懸濁液中にスチレン系モノマーを添加し、オレフィン系樹脂の核粒子中に含浸重合させる方法等が挙げられるが、後者の方法が所期の目的を達成する上での基材樹脂物性改質効果に優れている観点から好ましい。通常、前者の方法では粒状化後に、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより、後者の方法では重合過程中又は重合後に、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより、発泡性複合樹脂粒子を得ることができる。このような複合樹脂粒子を得るための基本的な手順は、特開2011−42718号公報に記載されている手順を採用することができる。複合樹脂粒子を得る際の核粒子として用いるオレフィン系樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められる融点(Tm)が95℃〜115℃であるものが好ましく、100℃〜110℃であるものがより好ましい。核粒子として用いるオレフィン系樹脂が融点95〜115℃であると、懸濁させたオレフィン系樹脂の核粒子中にスチレンモノマーを十分に含浸させることができ、重合時に懸濁系が不安定化するのを防止でき、このようにして得た複合樹脂粒子からは、スチレン系樹脂の優れた機械的物性とオレフィン系樹脂の優れた粘り強さとを、より高いレベルで兼ね備えた複合樹脂発泡粒子型内成形体を得ることが可能となる。複合樹脂を構成するオレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との割合は、オレフィン系樹脂3〜30重量%、スチレン系樹脂70〜97重量%であることが好ましいが、オレフィン系樹脂10〜25重量%、スチレン系樹脂75〜90重量%であることがより好ましい。複合樹脂中のオレフィン系樹脂の割合が上記範囲であることにより、靱性や剛性に優れると共に、衝撃応答性能の温度依存性が一層小さなものとなる。したがって、例えば、センサ付きバンパのバンパ芯材として使用した場合には、センサに対する衝撃応答性能の温度依存性が一層小さなものとなる。
なお、スチレン系モノマーの重合過程においては、核粒子中に含まれるオレフィン系樹脂の架橋が生じることがあるため、本明細書において、「重合」は「架橋」を含む場合がある。
複合樹脂粒子を発泡させるための発泡剤としては、物理発泡剤が好ましく、特に沸点が80℃以下の有機系物理発泡剤であることが好ましい。沸点が80℃以下の有機系物理発泡剤としては、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素化合物、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物などから選択される、1種類あるいは2種類以上の混合物を用いることができる。上記の有機系物理発泡剤の中でも炭素数が3〜6個の炭化水素化合物が好ましく、中でも、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン等の炭素数が4または5個の炭化水素化合物が発泡剤として好ましい。発泡性樹脂粒子中の発泡剤含有量は、3〜10重量%が好ましく、更に好ましくは4〜9重量%である。発泡剤の含有量が少なすぎる場合は、発泡性が低下し、目標の発泡倍率まで発泡させることが困難になる。一方、発泡剤の含有量が多すぎる場合は、得られる発泡粒子のセルサイズが粗大になり、得られる発泡成形体の強度が低下したり、発泡成形加工が困難になる虞がある。なお、複合樹脂粒子を発泡させるための発泡剤として、二酸化炭素などの無機系物理発泡剤を使用することもできる。
本発明の衝撃吸収材は、荷重−変位特性への温度の影響が少なくエネルギ吸収性能に優れるものを得る観点から密度が20〜80g/L、好ましくは30〜65g/L、更に好ましくは35〜55g/Lのものが選択される。密度が上記範囲外であると、エネルギ吸収性能及び荷重−変位特性が安定しなくなる虞がある。なお、衝撃吸収材の密度は、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡粒子成形体の外形寸法からかさ体積(リットル)を求め、次いで該発泡粒子成形体の重量(g)を精秤し、発泡粒子成形体の重量をかさ体積にて割り算することにより求められる値である。
本発明の衝撃吸収材は、エネルギ吸収効率70%以上、好ましくは75%以上のものである。エネルギ吸収効率が70%以上であると、衝撃吸収材全体の容積が小さくても、優れたエネルギ吸収能力が発揮され、バンパを大型化することなく衝撃エネルギの吸収を確実に行うことができ軽量性に優れ、形状設計の自由度の高いものとなる。上記エネルギ吸収効率の値は、JIS K6767:1999に準拠して、幅50mm、長さ50mm、厚さ25mmの直方体形状の衝撃吸収材から切り出した発泡粒子成形体試験片の23℃における静的圧縮応力(試験速度:10mm/min.)を測定し、得られた圧縮応力−歪曲線に基づき下記の(1)式によって50%歪までのエネルギ吸収効率(図9中の面積Aに対する斜線部の面積Bの百分率)を算出した値である。
エネルギ吸収効率(%)=[(圧縮応力−歪曲線における50%歪時までの面積B)/(50(%)×(50%歪時の圧縮応力)にて求められる面積A)]×100・・(1)
衝撃吸収材は、例えば、歩行者の脚部保護等のバンパ設計思想等に応じて被接触体を保護できる性能を有することが必要である。一般に、圧縮応力が高い材料ほど小型(小容積)でありながら、高い緩衝作用を発揮するが、容積が同一であれば衝突G値は高くなってしまう。本発明の衝撃吸収材は、適度な圧縮応力と優れた緩衝性とを発現する、23℃における50%歪時圧縮応力が0.1〜0.8MPa、好ましくは0.3〜0.6MPaのものである。23℃における50%歪時圧縮応力が0.1MPa未満の場合には、大きな容積にする必要がありエネルギ吸収性能及び荷重−変位特性等の緩衝性能の安定性、更には形状設計の自由度等のデザイン性が損なわれる。一方、該圧縮応力が0.8MPaを超える場合、衝突G値が高くなりすぎて十分な被接触体保護性能を得ることが難しくなる。
本発明の衝撃吸収材は、荷重−変位特性への温度の影響が少ないもので次の指標を満足する。すなわち、−30℃における50%歪時圧縮応力:F(−30℃)と、23℃における50%歪時圧縮応力:F(23℃)の比:F(−30℃)/F(23℃)が1.0〜1.4であり、65℃における50%歪時圧縮応力:F(65℃)と、23℃における50%歪時圧縮応力:F(23℃)の比:F(65℃)/F(23℃)が0.6〜1.0である。好ましくは−30℃と23℃における50%歪時圧縮応力の比:F(−30℃)/F(23℃)が1.0〜1.3、更に1.0〜1.2であり、65℃と23℃における50%歪時圧縮応力の比:F(65℃)/F(23℃)が0.7〜1.0である。上記のF(−30℃)/F(23℃)、F(65℃)/F(23℃)の要件を満たさないものは、荷重−変位特性の温度依存性が大きいことを意味し、所期の目的を達成することが困難なものである。上記−30℃、23℃、65℃の各温度における50%歪時圧縮応力は、発泡粒子成形体から切り出した幅50mm、長さ50mm、厚さ25mmの直方体形状の発泡粒子成形体試験片を、−30℃、23℃、65℃の各温度で12時間保管した後、同温度においてJIS K7220:2006に準拠して試験速度:10mm/min.の条件で該成形体試験片を成形体の厚さ方向に圧縮した際の試験片厚さの50%圧縮時の圧縮応力である。本発明の発泡粒子成形体の上記圧縮応力比の特性は、該成形体を構成しているオレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との複合樹脂発泡粒子の特性に起因するものと考えられる。
本発明の衝撃吸収材は、特にスチレン系樹脂と密度880〜930kg/mのエチレン系樹脂との複合樹脂発泡粒子の型内成形体からなる場合、該衝撃吸収材を構成している発泡粒子成形体の膨潤度が1.25以上であることが好ましい。膨潤度が1.25以上、更に1.5以上のものは圧縮永久歪率が一層低い値を有するため好ましい。一方、型内成形にて得られる発泡粒子成形体の寸法安定性の観点から該膨潤度は、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。なお、発泡粒子成形体の膨潤度は、該成形体を得るための発泡粒子、更に該発泡粒子を得るための発泡性樹脂粒子においても同じ値を示す。したがって、発泡粒子成形体の膨潤度の調整は、該成形体を得るために使用する発泡性複合樹脂粒子の膨潤度を調整することによりなされる。
発泡粒子成形体の膨潤度は、以下のようにして求められる値である。
[発泡粒子成形体の膨潤度]
約1gの発泡粒子成形体を採取し、その重量(Wo)を少数点以下第四位まで計量し、150メッシュの金網袋に入れる。容量200mlの丸底フラスコ内に約200mlのキシレンを入れ、ソックスレー抽出管に上記サンプルを入れた金網袋をセットし、フラスコを8時間加熱してソックスレー抽出を行う。冷却後抽出管から金網袋を取り出し、約600mlのアセトンで金網ごとサンプルを洗浄した後、アセトンを揮発させてから120℃で乾燥し、金網袋内のキシレン不溶分を回収する。ソックスレー抽出終了後、フラスコ内に残留するキシレン溶液を600mlのアセトン中に投入し、アセトンに溶解しない成分をJIS P3801に規定される5種Aのろ紙を用いてろ過して分離回収し、回収物を減圧下で蒸発乾固させ、アセトン不溶分を回収する。回収したキシレン不溶分とアセトン不溶分の合計重量(Wa)を小数点以下第四位まで計量する。不溶分の合計重量が0.2000gに満たない場合、不溶分の合計重量が0.2000g以上となるまで上記の操作を繰り返し行う。回収したキシレン不溶分とアセトン不溶分の混合物を50mlのメチルエチルケトン中に浸漬し、23℃において24時間放置した後、メチルエチルケトン中から不溶分の混合物を取り出し、ろ紙で軽く拭いた後、不溶分混合物の重量(Wb)を小数点以下第四位まで計量する。メチルエチルケトン中に浸漬する前の不溶分混合物の重量(Wa)と、メチルエチルケトンに浸漬した後の不溶分混合物の重量(Wb)とから、下記(2)式により成形体の膨潤度:Sを求める。
S=Wb/Wa・・・・(2)
尚、発泡粒子の膨潤度や発泡性樹脂粒子の膨潤度は、発泡粒子成形体の代わりに、それぞれの発泡性樹脂粒子や発泡粒子をサンプルとして用いることで同様にして求められる。
膨潤度が上記所定値以上である場合に、上述のように圧縮永久歪にて表される復元性が優れる理由については、次のように推察される。
有機溶媒に架橋エチレン系樹脂を浸漬させた時の膨潤度(膨潤の度合い)は、樹脂の架橋構造(三次元網目構造)と相関性があり、網目が細かいほど有機溶媒の吸収量が低くなるため、膨潤度は低下する。一方、非架橋のエチレン系樹脂も、温度23℃のメチルエチルケトン中ではほとんど膨潤しない。
即ち、上記のごとく発泡粒子成形体を構成する複合樹脂のキシレン不溶分(架橋されたエチレン系樹脂成分)と、キシレン可溶分中のアセトン不溶分(メッシュを通過した架橋されたエチレン系樹脂成分、架橋されていないエチレン系樹脂成分、及びスチレン系モノマーがグラフト重合したエチレン系樹脂成分の合計)との不溶分混合物の膨潤度が大きい場合には、該膨潤度が小さい場合に比べて、複合樹脂発泡粒子成形体を構成するエチレン系樹脂中に、架橋された三次元網目構造の網目が粗いエチレン系樹脂成分が多く含まれていることを意味する。そのため、架橋された三次元網目構造の網目が粗いエチレン系樹脂成分は、上記発泡性複合樹脂粒子の発泡時に、強度を有しながらも適度に伸びやすいため、高い強度を有する気泡膜が形成されるものと推察される。さらに、その発泡性樹脂粒子から得られる複合樹脂発泡粒子、その成形体において、圧縮された際に、複合樹脂中のエチレン系樹脂が柔軟で十分に変形可能なため、複合樹脂中のスチレン系樹脂の比率が高い場合にも、発泡粒子の気泡膜が破れずに独立気泡構造を維持できるものと推察される。即ち、膨潤度が特定範囲の発泡性樹脂粒子を用いることにより、剛性及び復元性を高いレベルで兼ね備える発泡粒子、発泡樹脂成形体を得ることができる。
なお、従来検討されていた製造条件(例えば、スチレン系モノマーに対するエチレン系樹脂核粒子の配合比率が大きい条件、エチレン系樹脂核粒子にスチレン系モノマーを含浸させる温度が高い条件、水素引き抜き能が高い重合開始剤の使用する条件など)では、重合初期にエチレン系樹脂中でスチレン系モノマーが重合してスチレン系樹脂として析出する速度が速くなり、エチレン系樹脂の架橋された三次元網目構造の網目が細かくなると推察される。一方、上記膨潤度を満足する発泡性樹脂粒子を作製するためには、重合開始剤の種類や添加量、重合温度、エチレン系樹脂核粒子とスチレン系モノマーとの配合比率を調整することにより、重合初期にスチレン系樹脂成分が析出する速度を遅くして、架橋された三次元網目構造の網目が細かいエチレン系樹脂成分の量を少なく制御する方法が挙げられる。具体例としては、重合開始剤として水素引き抜き能が高すぎないt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートを主成分とするものを使用する方法、重合温度をエチレン系樹脂核粒子の融点±10℃とする方法、重合初期に添加するスチレン系モノマーに対するエチレン系樹脂核粒子の配合重量比率を0.5〜1.5とする方法が挙げられる。
本発明の衝撃吸収材は、圧縮永久歪率が15%以下であり、かつ曲げたわみ量が10mm以上のものであることが好ましく、更に曲げたわみ量は15mm以上であることが好ましい。上記、圧縮永久歪率の値は、JIS K6767:1999に準拠して測定した値である。また、曲げたわみ量は、JIS K7221−1:2006に準拠し、スパン:100mm、試験速度:10mm/min.、温度23℃、相対湿度50%の条件で、幅25mm、長さ120mm、厚さ20mmの直方体形状の試験片(スキンなし)を使用して測定した時に、破断する直前のサンプルのたわみ量である。なお、試験片が破断しない場合のたわみ量は、最大たわみ量の値を求め、該値以上とする。曲げたわみ量と圧縮永久歪率が上記範囲内であることにより、衝撃吸収材の形状にもよるが、衝撃吸収材の座屈破壊や薄肉部の割れを起こり難くすることができるため緩衝材設計で重要な応力−歪曲線の安定化を図ることができる。なお、上記圧縮永久歪率は、上記膨潤度の要件を満足するものにおいて特に優れたものとなり、上記曲げたわみ量は、上記特定のモルフォロジーのものにおいて特に優れたものとなる。
本発明の衝撃吸収材は、車両バンパへの衝撃を検知するセンサを備えるセンサ付きバンパに組み込まれて使用されるバンパ芯材として好適なものである。この場合、本発明の衝撃吸収材は、衝撃吸収材の車体ビーム側に圧力センサや荷重センサ等の衝撃を検知するセンサを備えた中空チャンバを配置したセンサ付きバンパのバンパ芯材として好適に利用することができる。
以下に、本発明に関する実施例及び比較例について説明する。
実施例1〜3、比較例1〜4
表1に示す組成の樹脂を基材樹脂とし、ブタンまたは二酸化炭素を発泡剤として含浸させた発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡樹脂粒子を得た。基材樹脂が複合樹脂からなるものについて、樹脂粒子及び発泡粒子のモルフォロジーを測定し、表1にあわせて示した。得られた発泡樹脂粒子を、平板形成用金型に充填し、スチームで加熱して発泡成形し、次いで冷却して表2に示す密度を有する発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子成形体の膨潤度、モルフォロジー、50%歪時圧縮応力、エネルギ吸収効率等の諸物性を測定した結果を表2にあわせて示す。なお、−30℃、23℃、65℃の各温度における50%歪時圧縮応力は、型内成形から14日経過後の発泡粒子成形体から切り出した発泡粒子成形体サンプルを使用して、前述の方法にて測定した。
実施例および比較例における発泡性樹脂粒子、発泡粒子、発泡粒子成形体は、詳しくは以下のとおり作製した。
(実施例1)
(1)核粒子の作製
オレフィン系樹脂として、メタロセン重合触媒を用いて重合してなる直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製「ニポロンZ 9P51A」、密度910kg/mを準備した。また、複合樹脂粒子のスチレン系樹脂分散相の分散粒径拡大剤として、アクリロニトリル−スチレン共重合体(電気化学工業株式会社製「AS−XGS、重量平均分子量:10.9万、アクリロニトリル成分量:28質量%、MFR(200℃、5kgf):2.8g/10min)を準備した。そして、上記直鎖状低密度ポリエチレン20kgと、上記アクリロニトリル−スチレン共重合体1kgとをヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製;型式FM−75E)に投入し、5分間混合して樹脂混合物を得た。
次いで、押出機(アイケージー株式会社製;型式MS50−28;50mmφ単軸押出機、マドックタイプのスクリュ)を用いて、樹脂混合物を温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により0.4〜0.6mg/個(平均0.5mg/個)に切断することにより、エチレン系樹脂核粒子を得た。
(2)発泡性複合樹脂粒子の作製
撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6.0gを加えた。その後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物12.9gを加え、室温で30分撹拌した。これにより、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。
次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)1.25g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.15g、及び前記核粒子25gを投入した。
次いで、重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート1.715g(日油社製「パーブチルE」)を、第1モノマー(スチレン系モノマー)に溶解させた。そして、重合開始剤を溶解した第1モノマーを撹拌速度500rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の懸濁剤中に投入した(分散工程)。なお、第1モノマーとしては、スチレン10gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用いた。
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間30分かけて温度100℃まで昇温させた。昇温後、この温度100℃で60分間保持した。その後、撹拌速度を450rpmに下げ、重合温度100℃で7時間30分間保持した(改質工程)。尚、温度100℃に到達してから60分経過時に第2モノマー(スチレン系モノマー)としてのスチレン450gを5時間かけてオートクレーブ内に添加した。
次いで、450rpmで攪拌しながらオートクレーブ内温度を125℃まで2時間かけて昇温させ、そのまま温度125℃で5時間保持した。その後、温度90℃まで1時間かけて冷却し、撹拌速度を400rpmに下げ、そのまま温度90℃で3時間保持した。そして、温度90℃到達時に、有機系物理発泡剤として、シクロヘキサン20g、及びブタン(ノルマルブタン約20質量%、イソブタン約80質量%の混合物)65gを約1時間かけオートクレーブ内に添加した(含浸工程)。さらに、攪拌速度400rpmに保持したまま、温度105℃まで2時間かけて昇温し、そのまま温度105℃で5時間保持した後、温度30℃まで約6時間かけて冷却した。
冷却後、内容物を取り出し、硝酸を添加して樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去し、発泡性複合樹脂粒子を得た。この発泡性複合樹脂粒子の中心部断面の透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。図中、黒色の着色部分がエチレン系樹脂であり、白色部分がスチレン系樹脂である。得られた発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して、帯電防止剤であるN,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.008質量部を添加し、さらにステアリン酸亜鉛0.12質量部、グリセリンモノステアレート0.04質量部、グリセリンジステアレート0.04質量部の混合物を添加し、これらで発泡性複合樹脂粒子を被覆した。
「モルフォロジー」
発泡性複合樹脂粒子の中心部から観察用サンプルを切り出した。観察用サンプルをエポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウム染色を行った後、ウルトラミクロトームにより超薄切片を作製した。この超薄切片をグリッドに載せ、発泡性複合樹脂粒子の中心部断面(中心部)のモルフォロジーを透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJEM1010)で観察し、断面写真(TEM写真)を撮影した。断面写真から、発泡性複合樹脂粒子におけるエチレン系樹脂(PE)の相とスチレン系樹脂(PS)の相のモルフォロジーを目視にて観察した。なお、後述する複合樹脂発泡粒子における複合樹脂のモルフォロジーは、観察用サンプルとして、複合樹脂発泡粒子の中央部から切り出した試験片を使用し、気泡膜部が会合する樹脂溜り部と、気泡膜部とを透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJEM1010)で観察した点を除いて、上記方法と同様にして観察した。
(3)複合樹脂発泡粒子の作製
次に、上記のようにして得られた発泡性複合樹脂粒子を用いて、嵩密度42g/Lの複合樹脂発泡粒子を作製した。
具体的には、まず、発泡性複合樹脂粒子を容積30Lの常圧バッチ発泡機内に入れ、この発泡機内にスチームを供給した。これにより、発泡性複合樹脂粒子を嵩密度42g/Lまで発泡させ複合樹脂発泡粒子を得た。なお、複合樹脂発泡粒子の嵩密度(g/L)は、1Lのメスシリンダーを用意し、空のメスシリンダー中に発泡粒子を1Lの標線まで充填し、1Lあたりの発泡粒子の質量(g)を測定することにより求めた。得られた複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真を図2Aに、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真を図2Bに示す。図中、黒色の着色部分がエチレン系樹脂であり、白色部分がスチレン系樹脂である。
(4)複合樹脂発泡粒子成形体の作製
まず、上記のようにして得られた複合樹脂発泡粒子を室温で1日間熟成させた。次いで、EPS用成形機(DAISEN株式会社製VS−1300)を用いて、複合樹脂発泡粒子を縦300mm、横250mm、厚み80mmの直方体形状の成形部を有する成形用金型に充填し、加熱スチーム圧0.07MPa(G)で成形し、複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた成形体を温度40℃で1日間乾燥させた後、さらに室温で1日間以上養生させた。
このようにして、嵩密度42g/Lの複合樹脂発泡粒子を成形し、密度45g/Lの発泡樹脂成形体を得た。
(実施例2)
本例においては、核粒子の投入量を75gに変更し、第1モノマーとして、スチレン60g及びアクリル酸ブチル15gを用い、第2モノマーとしてスチレン350gを用いた点を除いては、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子成形体を作製した。実施例2の発泡性複合樹脂粒子の中心部断面の透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。またこの発泡性複合樹脂粒子を発泡して得た複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真を図4Aに、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真を図4Bに示す。図中、黒色の着色部分がエチレン系樹脂であり、白色部分がスチレン系樹脂である。
(実施例3)
本例においては、核粒子の投入量を100gに変更し、第1モノマーとして、スチレン85g及びアクリル酸ブチル15gを用い、第2モノマーとしてスチレン300gを用いた点を除いては、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子成形体を作製した。実施例3の発泡性複合樹脂粒子の中心部断面の透過型電子顕微鏡写真を図5に示す。またこの発泡性複合樹脂粒子を発泡して得た複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真を図6Aに、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真を図6Bに示す。図中、黒色の着色部分がエチレン系樹脂であり、白色部分がスチレン系樹脂である。
(比較例1)
(1)核粒子の作製
オレフィン系樹脂として、メタロセン重合触媒を用いて重合してなる直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製「ニポロンZ 9P51A」)と酢酸ビニル成分含量が15質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製、「ウルトラセン626」)を準備した。また、発泡核剤として、ホウ酸亜鉛(富田製薬株式会社製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径:6μm)を準備した。そして、酢酸ビニル成分含量が15質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソ・BR>[株式会社製、「ウルトラセン626」)5kg、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(東ソー株式会社製「ニポロンZ 9P51A」)15kg、およびホウ酸亜鉛(富田製薬株式会社製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径:6μm)0.144kgをヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製;型式FM−75E)に投入し、5分間混合して樹脂混合物を得た。
次いで、押出機(アイケージー株式会社製;型式MS50−28;50mmφ単軸押出機、マドックタイプのスクリュ)を用いて、樹脂混合物を温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により0.4〜0.6mg/個(平均0.5mg/個)に切断することにより、エチレン系樹脂核粒子を得た。
(2)複合樹脂粒子の作製
撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6.0gを加えた。その後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物12.9gを加え、室温で30分撹拌した。これにより、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。
次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)1.25g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.1g、及び核粒子150gを投入した。
次いで、重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート1.72g(日油株式会社製「パーブチルE」)と難燃剤としての2,2−ビス(4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン10.4g(第一工業製薬株式会社製「SR130」)を、第1モノマー(スチレン系モノマー)に溶解させた。そして、溶解物を撹拌速度500rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の懸濁剤中に投入した(分散工程)。なお、第1モノマーとしては、スチレン145gとアクリル酸ブチル5gとの混合モノマーを用いた。
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間30分かけて温度100℃まで昇温させた。昇温後、この温度100℃で60分間保持した。その後、撹拌速度を450rpmに下げ、7時間かけて温度105℃まで昇温させた(改質工程)。尚、温度100℃に到達してから60分経過時に第2モノマー(スチレン系モノマー)としてのスチレン200gを5時間かけてオートクレーブ内に添加した。
次いで、温度125℃まで2時間かけて昇温させ、そのまま温度125℃で4時間保持した。その後、温度30℃まで約6時間かけて冷却した。
冷却後、内容物を取り出し、硝酸を添加して樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去し、複合樹脂粒子を得た。得られた複合樹脂粒子の中心部断面の透過型電子顕微鏡写真を図7に示す。図中、黒色の着色部分がエチレン系樹脂であり、白色部分がスチレン系樹脂である。
(3)複合樹脂発泡粒子の作製
次に、上記のようにして得られた複合樹脂粒子を用いて、嵩密度42g/Lの複合樹脂発泡粒子を作製した。具体的には、上記複合樹脂粒子500gを分散媒体である水3.5リットルと共に攪拌機を備えた5Lの耐圧容器内に仕込み、更に分散媒体中に、分散剤としてのカオリン5g、及び界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gを添加した。次いで、300rpmで攪拌しながら発泡温度である150℃まで昇温した後に耐圧容器内に無機系物理発泡剤としての二酸化炭素を4.0MPa(G)圧入し攪拌下で15分間保持した。その後、150℃において二酸化炭素の背圧で耐圧容器内の圧力を4.0MPa(G)に保ちながらバルブを開放して嵩密度42g/Lの複合樹脂発泡粒子を得た。得られた複合樹脂発泡粒子の中心部断面における樹脂溜り部の透過型電子顕微鏡写真を図8Aに、複合樹脂発泡粒子の中心部断面における気泡膜部の透過型電子顕微鏡写真を図8Bに示す。図中、黒色の着色部分がエチレン系樹脂であり、白色部分がスチレン系樹脂である。
(4)複合樹脂発泡粒子成形体の作製
得られた複合樹脂発泡粒子を使用し、加熱スチーム圧を0.11MPa(G)とした以外は、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子成形体を作製した。
(比較例2)
核粒子の作製時のオレフィン系樹脂として、酢酸ビニル成分含量が15質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製、「ウルトラセン626」)を使用した以外は実施例1と同様にして、核粒子を作製した。また、実施例1と同様にして、撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブにおいて、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。
次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)1.5g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.5g、及び核粒子175gを投入した。
次いで、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル1.29g(日油株式会社製「ナイパーBW」、水希釈粉体品)とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート2.58g(日油株式会社製「パーブチルE」)、及び架橋剤としてのジクミルパーオキサイド(日本油脂社製「パークミルD」)0.86gを、モノマーとしてのスチレン310g及びアクリル酸ブチル15gに溶解させ、溶解物を撹拌速度500rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の懸濁剤中に投入した)。
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間30分かけて温度88℃まで昇温させた。昇温後、この温度88℃で30分間保持した後、撹拌速度を450rpmに下げた。30分かけて88℃から80℃まで冷却し、この重合温度80℃で8時間保持した。
次いで、温度125℃まで4時間かけて昇温させ、そのまま温度125℃で2時間30分保持した。
その後、温度90℃まで1時間かけて冷却し、撹拌速度を400rpmに下げ、そのまま温度90℃で3時間保持した。そして、温度90℃到達時に、発泡剤としてシクロヘキサン20gとブタン(ノルマルブタン約20体積%、イソブタン約80体積%の混合物)65gを約1時間かけオートクレーブ内に添加した(含浸工程)。さらに、温度105℃まで2時間かけて昇温し、そのまま温度105℃で5時間保持した後、温度30℃まで約6時間かけて冷却した。
冷却後、内容物を取り出し、硝酸を添加し樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去し、平均粒径(d63)が約1.6mmの発泡性複合樹脂粒子を得た。
得られた発泡性複合樹脂粒子を、実施例1と同様に篩いにかけて直径が0.7〜2.0mmの粒子を取り出し、発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して、帯電防止剤であるN,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.008質量部を添加し、さらにステアリン酸亜鉛0.12質量部、グリセリンモノステアレート0.04質量部、グリセリンジステアレート0.04質量部の混合物で被覆した以外は、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子を得、同様にして複合樹脂発泡粒子成形体を作製した。
(比較例3)
撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水760g、懸濁剤として、第三リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)0.6g、界面活性剤としてテトラデセンスルホン酸ナトリウム(ライオン株式会社製 リポランLB440)の1%水溶液2.7gとドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム(花王株式会社製 ペレックスSSH)の1%水溶液 0.9g、懸濁助剤として過硫酸カリウムの0.01%水溶液を3.8g、電解質として酢酸ナトリウム1.2gを投入した。
次いで、重合開始剤として過酸化ベンゾイル2.4g(日本油脂株式会社製 ナイパーBW、水希釈粉体品)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート0.8g(日本油脂社製 パーブチルE)、及びジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製 パークミルD)0.8g、連鎖移動剤としてアルファ-メチルスチレンダイマー0.12g、可塑剤として流動パラフィン6gを、モノマーとしてスチレン760gに溶解させ、400rpmで撹拌しながらオートクレーブに投入した。オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間半かけて90℃まで昇温した。
90℃到達後、100℃まで5時間かけて昇温し、さらに112℃まで1時間30分かけて昇温し、そのまま112℃で3時間保持した後、30℃まで約6時間かけて冷却した。90℃到達4時間目に発泡剤としてペンタン25g、ブタン(ノルマルブタン約20体積%、イソブタン約80体積%の混合物)45gを約30分かけオートクレーブ内に添加した。冷却後、内容物を取り出し、硝酸を添加し発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを溶解させた後、遠心分離機で脱水・洗浄し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去し、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を篩いにかけて直径が0.8〜1.6mmの粒子を取り出し、発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して、帯電防止剤であるN,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.008質量部を添加し、さらにステアリン酸亜鉛0.12質量部、グリセリンモノステアレート0.04質量部、グリセリンジステアレート0.04質量部の混合物で被覆した。前記事項以外は、実施例1と同様にしてスチレン樹脂発泡粒子成形体を作製した。
(比較例4)
50mmφ単軸押出機を用いて、融点が142℃のプロピレン−エチレン共重合体とホウ酸亜鉛1000ppmを温度230〜250℃で溶融混練し、ストランドカット方式により1.0mg/個に切断することにより、プロピレン系樹脂粒子を得た。
該樹脂粒子1000gと分散媒の水3Lを、容量5Lの密閉容器内に仕込んだ。さらに樹脂粒子100重量部に対する配合比で、分散剤としてカオリンを0.3重量部、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分として0.4重量部、及び硫酸アルミニウムを0.01重量部が、それぞれ添加された。次いで、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を圧入し、密閉容器内の内容物を撹拌しながら142℃まで加熱昇温して、その温度を15分間保持して高温ピーク熱量を調整した。その後、発泡温度となる147℃まで加熱昇温して再度15分間保持した。その時の容器内圧力は3.2MPa(G)であった。次いで、密閉容器内の内容物を大気圧下に水と共に放出した。これにより、嵩密度40g/Lのプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。
上記のようにして得られた発泡粒子を室温で1日間熟成させた。次いで、プロピレン系樹脂発泡粒子用成形機(DAISEN株式会社製30SF)を用いて、発泡粒子を縦300mm、横250mm、厚さ80mmの直方体形状の成形部を有する成形用金型に充填し、加熱スチーム圧0.32MPa(G)で成形し、発泡粒子成形体を得た。得られた成形体を温度60℃で1日間乾燥させた後、さらに室温で1日間以上養生させた。このようにして、密度45g/Lのプロピレン系樹脂発泡樹脂成形体を得た。
実施例、比較例の発泡粒子成形体の温度−圧縮応力変化率を図10に示す。

Claims (10)

  1. オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との複合樹脂発泡粒子の型内成形体からなり、密度20〜80g/L、エネルギ吸収効率70%以上、23℃における50%歪時圧縮応力0.1〜0.8MPa、−30℃における50%歪時圧縮応力と23℃における50%歪時圧縮応力の比が1.0〜1.4であり、65℃における50%歪時圧縮応力と23℃における50%歪時圧縮応力の比が0.6〜1.0であることを特徴とする衝撃吸収材。
  2. 複合樹脂が、オレフィン系樹脂3〜30重量%と、スチレン系樹脂97〜70重量%とから構成され、該オレフィン系樹脂の重量%と該スチレン系樹脂の重量%との合計は100重量%である請求項1記載の衝撃吸収材。
  3. オレフィン系樹脂が、密度880〜930kg/mのエチレン系樹脂である請求項1又は2記載の衝撃吸収材。
  4. 複合樹脂発泡粒子の型内成形体の膨潤度が、1.25以上である請求項3記載の衝撃吸収材。
  5. 複合樹脂発泡粒子の型内成形体の圧縮永久歪率が15%以下であり、かつ曲げたわみ量が10mm以上である請求項1に記載の衝撃吸収材。
  6. オレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1記載の衝撃吸収材。
  7. オレフィン系樹脂が、密度890〜930kg/m、190℃、2.16kgfにおけるメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1又は2記載の衝撃吸収材。
  8. オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂の複合樹脂発泡粒子が、オレフィン系樹脂の核粒子を水性溶媒中に懸濁させた懸濁液中にスチレンモノマーを添加し、核粒子中にスチレン系モノマーを含浸重合させてなる複合樹脂粒子を発泡させたものである請求項1記載の衝撃吸収材。
  9. 核粒子として用いるオレフィン系樹脂の融点が、95〜115℃である請求項8記載の衝撃吸収材。
  10. 車両バンパ内に車幅方向に延在して、車両バンパ内に取付けられた衝撃を検知するセンサと連動するように配置される請求項1記載の衝撃吸収材。
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