JP2011256244A - 発泡性改質樹脂粒子および改質樹脂発泡粒子 - Google Patents

発泡性改質樹脂粒子および改質樹脂発泡粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】発泡剤の保持性に優れると共に、発泡、成形後にエチレン系樹脂特有の優れた粘り強さを維持しつつ強度に優れた成形体を得ることができる発泡性改質樹脂粒子、及び改質樹脂発泡粒子を提供すること。
【解決手段】エチレン系樹脂を主成分とする連続相2中にスチレン系樹脂を主成分とする体積平均径0.55μm以上の分散相3が分散した改質樹脂を基材樹脂とし、物理発泡剤を含有する発泡性改質樹脂粒子1である。改質樹脂は、エチレン系樹脂とスチレン系樹脂とを所定の配合割合で含有し、分散相3は、分散相拡大剤を所定量含有する。全反射吸収の赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる吸光度比(D698/D2850)が0.4〜5.0の範囲にある。
【選択図】図1

Description

本発明は、エチレン系樹脂とスチレン系樹脂を含有する改質樹脂を基材樹脂とする発泡性改質樹脂粒子、及び該発泡性改質樹脂粒子を発泡させてなる改質樹脂発泡粒子に関する。
エチレン系樹脂発泡粒子成形体は、スチレン樹脂発泡粒子成形体と比較して、耐衝撃性、曲げたわみ、繰り返し応力ひずみの復元性に優れているため、精密部品及び重量製品等の梱包材や包装材として利用されている。また、エチレン系樹脂発泡粒子成形体は、耐薬品性及び耐油性にも優れているため、衝撃吸収材、バンパー、フロアースペーサー等の自動車部材としても利用されている。このように、エチレン系樹脂発泡粒子成形体は、様々な用途において広く用いられている。
エチレン系樹脂発泡粒子成形体は、次のようにして製造されていた。
即ち、まず、エチレン系樹脂粒子を水性媒体と共に密閉容器内に入れ、更に物理発泡剤を容器内に圧入し高温高圧条件化でエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。続いて、得られる発泡性エチレン系樹脂粒子を水性媒体と共に低圧域へ放出するという所謂ダイレクト発泡により、発泡させてエチレン系樹脂発泡粒子を得る。次に、該エチレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより、エチレン系樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。
スチレン樹脂発泡粒子成形体は、発泡粒子を型内成形して得られる点においては、上述のエチレン系樹脂発泡粒子成形体と同様にして製造することができる。しかし、スチレン樹脂発泡粒子成形体の製造工程においては、発泡剤を含有した発泡性スチレン樹脂粒子を密閉容器から取り出した後、発泡性を維持した状態で長時間保管できる点で、エチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造工程と大きく異なる。
即ち、スチレン樹脂発泡粒子成形体の製造にあたっては、まず、密閉容器内にて重合中或いは重合後に、密閉容器内に圧入された物理発泡剤をスチレン樹脂に含浸させる。得られる発泡性スチレン樹脂粒子は、密閉容器内から取り出しても、発泡性を維持した状態をある程度の期間維持できるため、周知の方法にて保管又は輸送することができる。その後、適時、発泡性スチレン樹脂粒子を発泡機に入れ、加熱媒体にて加熱することにより発泡させてスチレン樹脂発泡粒子を得る。得られたスチレン樹脂発泡粒子を、上述のとおり型内成形することにより、スチレン樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。
一方、エチレン樹脂は、ブタン等の物理発泡剤を透過しやすい性質がある。そのため、発泡剤をエチレン系樹脂粒子に含浸させて発泡性エチレン系樹脂粒子を製造しても、製造後数時間で発泡剤が逸散し、発泡性が著しく低下してしまう。それ故、発泡性エチレン系樹脂粒子をその製造後に長時間保管することは困難であり、製造後短時間で発泡させて発泡粒子とする必要がある。したがって、発泡剤含浸設備の近くに発泡機及び成型機を設置する必要があったり、あるいは、上記ダイレクト発泡により発泡粒子を製造する必要があったりして生産拠点が限定されてしまう。
このように、エチレン系樹脂発泡粒子成形体の製造工程においては、発泡性樹脂粒子の状態での輸送及び保管が困難であり、発泡粒子や成形体の状態で輸送及び保管を行わなければならない。そのため、エチレン系樹脂発泡粒子成形体は、製造時の輸送費及び保管費が高く、スチレン系樹脂発泡粒子成形体に比べて経済的に不利であった。
また、スチレン樹脂発泡粒子成形体は、エチレン系樹脂発泡粒子成形体と比較して圧縮強度に優れるため、用途によっては、エチレン系樹脂発泡粒子成形体と比較して発泡倍率を高くすることができる。そのため、スチレン樹脂発泡粒子成形体は、エチレン系樹脂発泡粒子成形体と比較して軽量性という点においても有利であった。
上記のエチレン系樹脂発泡粒子成形体に関する問題点を解決するために、例えば次のような技術が開発されている。
即ち、例えば、ポリエチレン等の脂肪族オレフィン系重合体、尿素およびポリアミドからなる樹脂粒状物質に架橋剤を添加し、水、低沸点のアルコール類およびケトン類から選ばれる分散媒中で、懸濁、加熱して架橋処理することにより、該分散媒を発泡剤として該架橋処理した樹脂粒状物質に含浸させる方法が開発されている(特許文献1参照)。
また、ポリエチレン樹脂核粒子にビニル系芳香族モノマーを含浸させて該ビニル系芳香族モノマーの重合および架橋を行い、改質されたポリエチレン樹脂粒子を得る方法が開発されている(特許文献2及び3参照)。
特開昭50−139167号公報 特公昭45−32623号公報 特開平1−284536号公報
しかしながら、特許文献1の方法においては、発泡剤の保持性は優れるものの、低沸点のアルコール類やケトン類がポリエチレン系樹脂粒子の発泡剤として十分な機能を果たさすことができず、発泡性が低く、発泡粒を常温で長期間放置した後に成形すると、成形品の内部融着が悪くなり、高い強度を有する発泡成形品が得られないという問題点がある。
一方、特許文献2及び特許文献3の方法においては、ポリエチレン系樹脂粒子に対するビニル系芳香族モノマーの比率を高めることで発泡剤の保持性および発泡成形品の強度を向上させることができるものの、十分な発泡剤保持性を得るためにはビニル系芳香族モノマー比率を相当に高める必要がある。その結果、ポリエチレン特有の粘り強さという特性を得ることができなくなるおそれがある。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、発泡剤の保持性に優れると共に、発泡、成形後にエチレン系樹脂特有の優れた粘り強さを維持しつつ強度に優れた成形体を得ることができる発泡性改質樹脂粒子、及び該発泡性改質樹脂粒子を発泡させてなる改質樹脂発泡粒子を提供しようとするものである。
第1の発明は、エチレン系樹脂を主成分とする連続相中にスチレン系樹脂を主成分とする体積平均径0.55μm以上の分散相が分散されてなる改質樹脂を基材樹脂とし、物理発泡剤を含有する発泡性改質樹脂粒子において、
上記改質樹脂は、上記エチレン系樹脂と上記スチレン系樹脂との合計量を100質量部とすると、上記エチレン系樹脂20〜50質量部に対して、上記スチレン系樹脂を80〜50質量部含有し、
上記分散相は、該分散相の体積平均径拡大作用を有する熱可塑性重合体からなる分散相拡大剤を含有し、
上記改質樹脂中における上記分散相拡大剤の含有量は、上記エチレン系樹脂100質量部に対して1〜10質量部であり、
全反射吸収の赤外分光分析により測定された樹脂粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm-1及び2850cm-1での吸光度比(D698/D2850)が0.4〜5.0の範囲にあることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子にある(請求項1)。
第2の発明は、上記第1の発明の発泡性改質樹脂粒子を加熱媒体にて加熱し発泡させて得られ、見かけ密度が10〜200kg/m3であることを特徴とする改質樹脂発泡粒子にある(請求項8)。
第1の発明の発泡性改質樹脂粒子は、エチレン系樹脂を主成分とする上記連続相中にスチレン系樹脂を主成分とする上記分散相が分散されてなる改質樹脂を基材樹脂とし、上記エチレン系樹脂と上記スチレン系樹脂を上記特定の割合で含有する。
そのため、上記発泡性改質樹脂粒子を発泡成形して得られる成形体は、これを構成する発泡粒子自体がエチレン系樹脂特有の優れた粘り強さを示すことができる。
上記分散相は、上記分散相拡大剤を上記特定量含有し、体積平均径が0.55μm以上である。さらに、上記発泡性改質樹脂粒子においては、ATR法赤外分光分析により測定された樹脂粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm-1及び2850cm-1での吸光度比(D698/D2850)が0.4〜5.0の範囲にある。そのため、上記発泡性改質樹脂粒子は、発泡剤の保持性能に優れる。それ故、上記発泡性改質樹脂粒子は、密閉容器に入れた状態において、発泡力を十分に保持したまま長期間の保存が可能になる。特に常温での保管も可能になる。したがって、上記発泡性改質樹脂粒子の製造後短時間で該発泡性改質樹脂粒子を発泡させて発泡粒子にする必要がなくなり、上記発泡性改質樹脂粒子の状態での輸送及び保管が可能になる。また、上記発泡性改質樹脂粒子を例えば常温で7日間保管した後に発泡させ、成形しても高い融着率で発泡粒子が融着し、強度が高く、寸法安定性に優れた成形体を得ることができる。
次に、第2の発明の改質樹脂発泡粒子は、上記第1の発明の上記発泡性改質樹脂粒子を加熱媒体にて加熱し発泡させて得られる。
そのため、上記第1の発明の発泡性改質樹脂粒子の上述の優れた作用効果を生かして、発泡性改質樹脂粒子の状態で長期間保持したり、輸送したりすることが可能になることに起因して、発泡粒子の見かけ密度バラツキを小さくすることができ、均一性に優れた上記改質樹脂発泡粒子にすることができる。その結果、該改質樹脂発泡粒子は、型内成形性も良好になる。
また、上記改質樹脂発泡粒子は、その見かけ密度が10〜200kg/m3である。
上記改質樹脂発泡粒子の見かけ密度が10kg/m3未満の場合には、該改質樹脂発泡粒子の型内成型時の収縮が大きくなり、良好な発泡粒子成形体を得ることが困難になるおそれがある。一方、200kg/m3を超える場合には、見かけ密度を制御することが困難になり、型内成形によって得られる発泡粒子成形体の密度のばらつきが大きくなり、該成形体の強度が低下するおそれがある。
実施例にかかる、発泡性改質樹脂粒子の内部断面を模式的に示した説明図。 発泡性改質樹脂粒子の表面のポリスチレン量と吸光度比との関係を表す説明図。 発泡性改質樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850)と発泡性改質樹脂粒子の発泡剤保持率との関係を表す説明図。
本発明の発泡性改質樹脂粒子は、エチレン系樹脂を主成分とする連続相中にスチレン系樹脂を主成分とする分散相が分散されてなる改質樹脂を基材樹脂とする。
上記発泡性改質樹脂粒子の内部断面を透過型電子顕微鏡にて観察した場合において、その断面は、略円形および/または不定形の粒状の上記分散相が上記連続相中に分散した海島構造を形成していることが好ましい。上記透過型顕微鏡の内部断面観察においては、上記分散相中に上記分散相拡大剤の相がサラミ状に分散しているのが観察されることがある。
上記発泡性改質樹脂粒子における上記物理発泡剤の保持性の観点から、上記分散相は体積平均径0.55μm以上で分散されていることが好ましい。上記分散相の体積平均径が0.55μm未満の場合には、発泡剤の逸散性が大きくなる傾向がある。より好ましくは、0.6μm以上がよく、更に好ましくは0.7μm以上がよい。また、分散相の体積平均径が大きすぎると、場合によっては成形後の改質樹脂発泡粒子成形体が割れやすくなり強度特性が低下するおそれがあるという観点から、上記分散相の体積平均径は10μm以下が好ましい。
上記分散相の体積平均径は、分散相拡大剤を添加することにより、調整することができる。また、重合温度や重合開始剤量を調整することにより重合速度を制御して、スチレン系単量体(スチレン系モノマー)がエチレン系樹脂に含浸し、エチレン系樹脂中に先に存在しているスチレン系単量体、或いはスチレン系樹脂に集まる時間を長くすることにより、上記分散相の体積平均径を調整することもできる。
分散相の体積平均径とは、発泡性改質樹脂粒子の中心部(発泡性改質樹脂粒子を2等分する断面の中央部)の透過型電子顕微鏡写真(拡大倍率10000倍が好ましい)から、写真上の全て(100個以上)の分散相について、各分散相の面積を求め、該面積から計算した円相当径を分散相の代表径とし、式(Σni・di3/Σni)1/3(但し、niは個数、diは円相当径〔μm〕有効数字3桁)にて算出される平均径である。なお、本発明において、上記円相当径は、後述する実施例に記載の方法により求めた。また、分散相の体積平均径を発泡性改質樹脂粒子の中心部の透過型電子顕微鏡写真に基づき測定するのは、該中心部において本発明にて特定する体積平均径の範囲を満足するものが、本発明の優れた発泡剤保持性の効果が達成できることが確認できていることによる。また、上記発泡性改質樹脂粒子の中心部における体積平均径が上記数値範囲を満足するものは、上記発泡性改質樹脂粒子の中心部に限らず表面部を除く略全体においても、分散相の体積平均径が本発明にて特定する数値範囲値を満足するものと考えられる。
上記発泡性改質樹脂粒子の分散相は、連続相中に円形、楕円形、多角形、不定形などの様々な形状で分散されている。円形や多角形などの定形で分散されているより、表面積が大きくなるような例えば不定形または2つ以上の分散相が合一して形成される不定形で分散されている方が、発泡剤の保持性の観点から好ましい。尚、2つ以上の分散相が合一している分散相は1つの分散相として扱い、合一している分散相の面積から計算した円相当径を分散相の代表径とする。
上記連続相を構成する上記エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン-1共重合体、エチレン−ブテン-1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体等を用いることができる。また、エチレン系樹脂としては、1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
好ましくは、上記エチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体からなることがよい(請求項4)。
この場合には、上記発泡性改質樹脂粒子の良好な発泡剤の保持性をより向上させることができる。また、上記発泡性改質樹脂粒子を発泡成形させてなる上記改質樹脂発泡粒子成形体の強度をより向上させることができる。
また、上記分散相を構成する上記スチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーの重合体や、スチレン系モノマーと、該スチレン系モノマーと共重合可能なモノマー成分とからなる共重合体が挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。上記スチレン系モノマーは、単独でも、2種類以上混合して重合したものでも良く、2種類以上を混合したものを用いて良い。
また、スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基を含有するビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を含有するビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の有機酸ビニル化合物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン等のオレフィン化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド化合物などが挙げられる。
尚、スチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体などが挙げられる。上記スチレン系樹脂は単独で存在しても、2種類以上で存在しても良い。
スチレン系モノマーとこれに共重合可能なモノマー成分とを併用する場合には、スチレン系樹脂を重合する際の単量体の全質量に対するスチレンモノマーの質量の割合を、50質量%以上にすることが好ましい。より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上がよい。
また、分散相を構成するスチレン系樹脂としては、良好な発泡性の観点から、好ましくは、スチレンホモポリマー、スチレンとアクリル系単量体の共重合体がよい。
上記発泡性改質樹脂粒子を製造する場合、発泡性の観点から、後述する実施例のように、スチレンとアクリル酸ブチルを用いることが好ましい。この場合、得られる発泡性改質樹脂粒子中のアクリル酸ブチル成分は、発泡性改質樹脂粒子全体に対して0.5〜10質量%含まれることが好ましく、1〜8質量%含まれることがより好ましく、2〜5質量%含まれることがさらに好ましい。
上記発泡性改質樹脂粒子において、上記改質樹脂は、上記エチレン系樹脂と上記スチレン系樹脂との合計量を100質量部とすると、上記エチレン系樹脂20〜50質量部に対して、上記エチレン系樹脂を80〜50質量部含有する。
上記エチレン系樹脂が20質量部未満の場合又は上記スチレン系樹脂が80質量部を超える場合には、エチレン系樹脂の特性が損なわれて、発泡性改質樹脂粒子から得られる発泡粒子やその成形体の靱性、耐熱性、及び耐薬品性が低下するおそれがある。一方、上記エチレン系樹脂が50質量部を超える場合又は上記スチレン系樹脂が50質量部未満の場合には、粒子の球状化が困難になるおそれがある。また、スチレン系樹脂の特性が損なわれて発泡粒子やその成形体の機械的強度が低下するおそれがある。より好ましくは、上記エチレン系樹脂25〜45質量部に対して、上記スチレン系樹脂を75〜55質量部含有することがよく、さらに好ましくは、発泡性の向上という観点から上記エチレン系樹脂25質量部以上かつ35質量部未満に対して、上記スチレン系樹脂を75質量部以下かつ65質量部を超えて含有することがよい。
次に、上記分散相は、該分散相の体積平均径を拡大させる分散相拡大剤を含有する。
上記分散相拡大剤は、その添加により、上記連続相中に形成される上記分散相の体積平均径を拡大させる作用を有する熱可塑性重合体である。
上記分散相拡大剤は、その添加により、上記連続相中に形成される上記分散相の体積平均径を拡大させる作用を有する熱可塑性重合体である。したがって、ある熱可塑性重合体が分散相拡大剤に該当するか否かについては、その熱可塑性重合体を添加して作製した発泡性改質樹脂粒子と、該熱可塑性樹脂を添加せずその他の樹脂組成、重合条件は、該熱可塑性重合体を添加して作製した発泡性改質樹脂粒子と同様に作製した発泡性改質樹脂粒子について、上述の方法により体積平均径を測定し、これらを比較することにより知ることができる。即ち、該熱可塑性重合体を添加せずに作製した発泡性改質樹脂粒子に比べて、上記第1の発明において特定する量の該熱可塑性重合体を添加して作製した発泡性改質樹脂粒子におけるスチレン系樹脂を主成分とする分散相の体積平均径が、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、大きくなる場合には、その熱可塑性重合体は分散相拡大剤に相当する。
上記分散相拡大剤は、上記分散相の主成分とは異なるスチレン系樹脂、スチレン系エラストマー、及び塩化ビニル系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記分散相の体積平均径を十分に大きくすることが可能になる。
上記分散相の主成分とは異なるスチレン系樹脂としては、例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体,メチルメタクリレート−スチレン共重合体,ポリスチレン,ゴム変性ポリスチレン,ABS樹脂,AES樹脂等を用いることができる。
また、上記スチレン系エラストマーとしては、SBS,SIS,それらの水添物等を用いることができる。
また、上記塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン等を用いることができる。
上記分散相拡大剤のメルトマスフローレート(MFR(200℃,5kgf))は、後述する核粒子中での良好な分散性を示すという観点から、1g/10min〜500g/10minであることが好ましく、2g/10min〜200g/10minであることがより好ましい。
分散相拡大剤のメルトマスフローレートを上記範囲内にすることにより、上記発泡性改質樹脂粒子における発泡剤の逸散を抑制して発泡剤の保持性をより向上させる効果が期待できる。
上記分散相拡大剤のMFR(200℃,5kgf)の測定は、次のようにして行うことができる。
まず、メルトインデクサー(例えば宝工業(株)製の型式L203)を用いて、上記分散相拡大剤(熱可塑性重合体)に温度200℃で5000gの荷重をかけてダイ(内径2.09mm、長さ8.00mm)から上記分散相拡大剤を押出す。そして、10分間でダイから流出した上記分散相拡大剤の重量を測定し、これをMFR(200℃,5kgf)とする。
また、上記分散相拡大剤としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体を用いることがより好ましい。また、アクリロニトリル−スチレン共重合体中のアクリロニトリル成分量は20〜40質量%であることが好ましい。
アクリロニトリル−スチレン共重合体を用いる場合には、そのメルトマスフローレート(MFR(200℃,5kgf))は、上述の分散性の観点から1g/10min〜20g/10minであることが好ましく、2.5g/10min〜15g/10minであることがより好ましい。
MFRが1g/10min未満の場合には、アクリロニトリル−スチレン共重合体の分散が悪くなるため、発泡性改質樹脂粒子の発泡剤の逸散性が大きくなる傾向がある。
また、上記分散相拡大剤としてアクリロニトリル−スチレン共重合体を用いる場合には、その重合平均分子量は、5万から15万であることが好ましく、6万〜12万であることがより好ましい。
重合平均分子量が15万を超えると、アクリロニトリル−スチレン共重合体自体の発泡剤の逸散性を抑制して発泡剤の保持性を向上させる効果が小さくなるおそれがある。一方、5万未満の場合には、後述の核粒子を作製する際に、ダイスで目詰まりし易くなり、良好な核粒子を製造することができなくなるおそれがある。
上記重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法(高分子測定用ミックスゲルカラム)により測定する。具体的には、(株)日立製作所製の測定装置を用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量:2ml/分、検出器:UV220nm、カラム:日立化成工業(株)製のGL−R400M×2本という測定条件で測定することができる。即ち、重量平均分子量は、アクリロニトリル−スチレン共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで校正して求めることができる。
上記発泡性改質樹脂粒子において、上記改質樹脂中の上記分散相拡大剤の含有量は、上記エチレン系樹脂100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、3質量部〜7質量部であることがより好ましい。
上記分散相拡大剤の含有量が上記範囲内であれば、上記分散相の体積平均径を充分に大きくすることが容易となり、上記発泡性改質樹脂粒子の発泡剤保持性能を充分に向上させることができる。また、上記発泡性改質樹脂粒子を発泡し、型内成形して得られる上記改質樹脂発泡粒子成形体の良好な靭性、強度を維持する観点からも上記分散相拡大剤の含有量を上記範囲にすることが好ましい。
上記分散相拡大剤の含有量が1質量部未満の場合には、上記物理発泡剤の逸散性が大きくなる傾向がある。一方、10質量部を超える場合には、最終的に得られる改質樹脂発泡粒子成形体が割れやすくなり強度特性が低下するおそれがある。
次に、上記発泡性改質樹脂粒子は、物理発泡剤を含有する。
上記物理発泡剤としては、沸点が80℃以下の揮発性有機化合物が好ましい。
沸点が80℃以下の揮発性有機化合物としては、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素化合物、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物などを用いることができる。これらの物理発泡剤は、単独で、又は2種以上の混合物で用いることができる。
また、上記物理発泡剤は、イソブタン30〜100質量%と炭素数4〜6の炭化水素0〜70質量%とからなることが好ましい(請求項5)。但し、イソブタンと炭素数4〜6の炭化水素との合計量は100質量%である。
この場合には、上記発泡性改質樹脂粒子に物理発泡剤を充分に含浸、保持させることができる。
炭素数4〜6の炭化水素としては、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
発泡剤として炭素数が4〜6の炭化水素化合物を使用することにより、発泡性改質樹脂粒子の発泡剤保持性や成形する際の発泡力を向上させ、さらに発泡粒子成形体における発泡粒子相互の融着性を向上させることができる。
また、上記物理発泡剤中のイソブタンが占める割合が30質量%以上の場合には、上記発泡性改質樹脂粒子の発泡剤保持性を向上させることができる。
より好ましくは、上記物理発泡剤中におけるイソブタンの占める割合は50質量%以上であることがよい。
また、上記物理発泡剤の含有量は、上記改質樹脂100質量部に対して2〜10質量部であること好ましい(請求項6)。
この場合には、上記発泡性改質樹脂粒子の発泡性を向上させることができ、発泡時の収縮を防止することができる。さらに、発泡後に得られる上記改質樹脂発泡粒子の型内成形時に、改質樹脂発泡粒子同士の融着性を向上させることができ、改質樹脂発泡粒子成形体の寸法安定性を向上させることができる。より好ましくは、上記物理発泡剤の含有量は3〜8質量部がよい。
本発明の発泡性改質樹脂粒子においては、上述の如く、スチレン系樹脂を主成分とする特定の分散相がエチレン系樹脂を主成分とする連続相に分散されているため、発泡性改質樹脂粒子の物理発泡剤保持性が向上する。上記発泡性改質樹脂粒子の物理発泡剤保持性をさらに向上させるという観点、及び上記発泡性改質樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子の型内成型時の発泡粒子相互の融着性を向上させるという観点から、上記発泡性改質樹脂粒子の表面における上記吸光度比(D698/D2850)は0.4〜5.0の範囲にある。
上記吸光度比D698/D2850が0.4未満の場合には、発泡剤の逸散性防止効果の向上を望むことが難しくなる。一方、吸光度比D698/D2850が5.0を超える場合には、最終的に得られる発泡粒子成形体が割れやすくなり強度特性が低下するおそれがある。
同様の観点から好ましくは、上記発泡性改質樹脂粒子において、上記吸光度比(D698/D2850)は0.5〜3.0の範囲にあることがよい(請求項2)。
また、上記発泡性改質樹脂粒子の表面におけるポリスチレン量は10〜70質量%であることが好ましい。上記発泡性改質樹脂粒子の表面におけるポリスチレン量が少なすぎる場合には、上記物理発泡剤の逸散性が大きくなる傾向がある。一方、ポリスチレン量が多すぎる場合には、発泡粒子成形体が割れやすくなり強度特性が低下するおそれがある。かかる観点から、ポリスチレン量は上述のごとく10〜70質量%であることが好ましく、20〜55質量%であることがより好ましい。
上記発泡性改質樹脂粒子の表面における上記吸光度比(D698/D2850)は全反射吸収(ATR法)の赤外吸収スペクトルから求めることができる。また、上記吸光度比(D698/D2850)は、発泡性改質樹脂粒子の表面におけるポリスチレン量を推定する指標となる。
全反射吸収(ATR法)とは、赤外光がATR結晶表面で全反射を起こす際の試料へのもぐり込みを利用して、深さ数μmまでの試料表面の赤外スペクトルを測定する手法である。試料とプリズムを密着させるだけでスペクトル測定できる簡易さから、種々の物質の表面分析として広く利用されている。但し、ATR法では、下記(1)式に表わされるように、プリズム材質による屈折率や赤外光の入射角度によって、もぐり込み深さが異なるため、不均一な材質を測定する際には、測定条件を一定にする必要がある。
例えば、下記(1)式より、入射角を大きくした場合や屈折率の大きいプリズムを用いた場合は、もぐり込み深さが浅くなる。
dp=λ/(2π(sin2θ-(n2/n1))1/2) (1)
dp:もぐり込み深さ(μm)、λ:赤外光の波長(μm)、θ:赤外光の入射角(°)
1:プリズムの屈折率、n2:試料の屈折率
発泡性改質樹脂粒子表面の吸光度比(D698/D2850)の具体的な測定方法を説明する。
まず、例えば、測定装置として日本分光社製FT/IR-460plus(ATR PRO 450−S型、プリズム:ZnSe、入射角 45°)を使用して、発泡性改質樹脂粒子を170kg/cm2の圧力でプリズムに密着させて赤外スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトル(ATR補正なし)を得る。
次に、赤外吸収スペクトルから得られる698cm-1における吸光度D698と2850c-1における吸光度D2850を測定し、吸光度比(D698/D2850)を求める。本発明においては、同様の測定を5点の発泡性改質樹脂粒子について行い、これら5点の平均値を発泡性改質樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850)とする。
尚、赤外吸収スペクトルから得られる698cm-1における吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に主に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する698cm-1付近に現れるピークの高さである。また、赤外吸収スペクトルから得られる2850cm-1での吸光度D2850は、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の双方に含まれるメチレン基のC−H間伸縮振動に由来する2850cm-1付近に現れるピークの高さをいう。
また、横軸に組成割合(標準試料中のポリスチレン系樹脂の量(質量%))をとり、縦軸に吸光度比(D698/D2850)をとることで、検量線を描き、発泡性改質樹脂粒子の赤外線吸収スペクトルから吸光度比を算出し、検量線に基づいて発泡性改質樹脂粒子の表面におけるポリスチレン量を推定することができる。
上記検量線の作成は、以下の方法により行うことができる。
「検量線の作成」
ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を後述の要領で作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により赤外線吸収スペクトルを測定し、吸光度比(D698/D2850)を算出する。
ポリエチレン系樹脂として、後述する核粒子を構成するポリエチレン系樹脂、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製「LV115」)を選択し、ポリスチレン系樹脂として、例えば汎用ポリスチレン(PSジャパン社製「680」)を用い、組成割合が、ポリスチレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂(質量比)=5/95、10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、60/40、70/30、90/10、95/5にそれぞれなるようにポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を合計5kg計量する。これを小型射出成型機(日精樹脂工業社製;型式NS40−5A)にて加熱混練(200〜250℃)して、直径が50mmでかつ厚みが2mmの円柱状に成形し、標準試料を得る。
射出成型機で作製した標準試料の吸光度比(D698/D2850)は、上記の発泡性改質樹脂粒子の吸光度比の測定と同様にして求める。
次に、赤外吸収スペクトルから得られる698cm-1における吸光度D698と2850c-1における吸光度D2850を測定し、吸光度比(D698/D2850)を求める。
そして、横軸に組成割合(標準試料中のポリスチレン系樹脂の配合割合(質量%))をとり、縦軸に吸光度比(D698/D2850)をとることで、図2に示すような検量線を得ることができる。
「発泡性改質樹脂粒子の表面ポリスチレン量」
発泡性改質樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850)と、図2の検量線を用いることにより、発泡性改質樹脂粒子の表面ポリスチレン量を推定することができる。
尚、上記発泡性改質樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850)を特定範囲にすることで発泡剤保持性が高くなる理由は、定かではないが、次のように推察することができる。
上記発泡性改質樹脂粒子において、上記物理発泡剤は、発泡剤が保持されにくい上記連続相(ポリエチレン系樹脂相)と保持されやすい上記分散相(ポリスチレン系樹脂相)に含浸される。含浸された上記物理発泡剤は、時間の経過に伴って、発泡剤が保持されにくいポリエチレン系樹脂相から逸散すると考えられる。しかし、表面ポリスチレン量が十分に存在する発泡性改質樹脂粒子においては、その表面におけるポリスチレン系樹脂相によって上記物理発泡剤が保持されるため、上記物理発泡剤の逸散が抑制されると推察される。このことは、図3に示されるグラフにより裏づけられる。
即ち、図3は、発泡性改質樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850)と物理発泡剤の逸散性の関係を表したグラフである。該グラフより、発泡性改質樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850)が大きいほどガス逸散性が小さく、発泡剤の保持率が高いことが分かる。
また、上記発泡性改質樹脂粒子の表面には、テトラヒドロフラン抽出法にて確認される平均厚みが1〜10μmの表皮層が形成されていることが好ましい(請求項3)。より好ましくは、平均厚み5〜10μmの表皮層が形成されていることがよい。
この場合には、上記発泡性改質樹脂粒子は、発泡剤の保持性能に優れる。それ故、上記発泡性改質樹脂粒子は、密閉容器に入れた状態において、発泡力を十分に保持したまま長期間の保存が可能になる。特に常温での保管も可能になる。そのため、上記発泡性改質樹脂粒子の製造後短時間で該発泡性改質樹脂粒子を発泡させて発泡粒子にする必要がなくなり、上記発泡性改質樹脂粒子の状態での輸送及び保管が可能になる。また、上記発泡性改質樹脂粒子を例えば常温で7日間保管した後に発泡させ、成形しても高い融着率で発泡粒子が融着し、強度が高く、寸法安定性に優れた成形体を得ることができる。
表皮層の平均厚みが上記範囲内の場合には、特に、得られる発泡粒子成形体が欠け難く、曲げ応力に対して粘り強く割れ難いものとなる。また、発泡性改質樹脂粒子の発泡剤の逸散性も更に小さなものとなる。
テトラヒドロフラン抽出法による表皮層の平均厚みの測定は、次のようにして行うことができる。
即ち、100mlビーカーに50mlのテトラヒドロフランを入れ、23℃で2時間以上放置する。次に、カッターを使用して発泡性樹脂粒子を粒子の表面から該粒子の中心を通って二分割する。そして、二分割した切断片の一方を100mlビーカー内に入れてテトラヒドロフランに4時間浸漬した。次に、80メッシュの金網で切断片とテトラヒドロフランをろ過し、金網上の切断片はそのまま23℃で4時間以上放置して切断片中のテトラヒドロフランを自然乾燥させる。その後、金網から切断片を取り出して、走査電子顕微鏡(SEM)により、切断面の画像を撮影(500〜1000倍)して表皮層の厚みを測定する。5個の切断片を使用し、これらの平均値を算出して平均厚み(μm)とした。
上記発泡性改質樹脂粒子は、例えば次のようにして製造することができる。
即ち、まず、エチレン系樹脂からなる核粒子を、例えば懸濁剤、界面活性剤、及び水溶性重合禁止剤等を含む水性媒体中に懸濁させ、懸濁液を作製する。次いで、該懸濁液にスチレン系モノマー、又はスチレン系モノマー及びこれと共重合可能なビニルモノマーを添加して核粒子に含浸させモノマーの重合を行う。そして、重合中又は重合後に、物理発泡剤を含浸させる。発泡剤の含浸が完了した後、重合系内より排出することによって、発泡性改質樹脂粒子を製造することができる。
また、発泡性改質樹脂粒子を加熱媒体にて加熱し発泡させると、改質樹脂発泡粒子を製造することができる。
上記核粒子に用いるエチレン系樹脂は、発泡剤保持性と強度の有意性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。 また、上記分散相拡大剤は、上記核粒子中に含有させておくことが好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンは、好ましくは直鎖のポリエチレン鎖とC2〜C6の短鎖状の分岐構造を有するものがよい。例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度(g/cm3)は、通常、0.88〜0.945であるが、好ましくは、0.88〜0.94、より好ましくは0.88〜0.93である。
直鎖状低密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR190℃2.16kgf)は、造粒時における押出条件の観点から1.5〜4.0g/10分が好ましく、1.5〜3.0g/10分がより好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンのビカット軟化温度は、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜100℃がよい。ビカット軟化温度が80〜120℃の範囲内の場合には、上記発泡性改質樹脂粒子における上記物理発泡剤の逸散性がさらに小さくなると共に、造粒も容易になる。
上記のような直鎖状低密度ポリエチレンは市販品として入手することができる。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルを、例えば高圧ラジカル重合などで共重合して得られる重合体である。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、一般に、ポリエチレン鎖からなる長鎖と、該長鎖から分岐する酢酸ビニル由来の短鎖とを有している。
エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量、即ち、共重合体中の酢酸ビニルモノマー由来の構造単位の割合は、通常1〜45質量%のものが知られているが、本発明においては、3〜20質量%のものが好ましく、5〜15質量%のものがより好ましい。
酢酸ビニルの割合が3〜20質量%の場合には、発泡性改質樹脂粒子から得られる発泡粒子成形体の引っ張り破壊応力をより向上させることができる。また、上記発泡性改質樹脂粒子の発泡剤の保持性能をより向上させることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の密度は、通常、0.90〜0.96g/cm3であるが、本発明においては、発泡性及び成形性の向上という観点から、好ましくは0.90〜0.95g/cm3、より好ましくは0.90〜0.94g/cm3がよい。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトマスフローレート(MFR:190℃,2.16kgf)は、上記核粒子の製造時における押出適性の観点から、1.5〜4.0g/10分が好ましく、2.0〜3.5g/10分がより好ましい。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のビカット軟化温度は、上記核粒子の製造時における粒径安定化という観点から、好ましくは60〜110℃がよく、より好ましくは60〜90℃がよい。
上記のようなエチレン−酢酸ビニル共重合体は市販品として入手することができる。
上記核粒子を構成する樹脂の好適な配合割合は、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体の合計100質量部に対して、直鎖状低密度ポリエチレン60〜80質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体20〜40質量部である。
なお、上記核粒子は、本発明の効果を損なわない限り、気泡調整剤、顔料、スリップ剤、帯電防止剤、及び難燃剤等の添加剤を含有することができる。
上記核粒子は、上記エチレン系樹脂及び上記分散相拡大剤を配合し、溶融混練してから細粒化して製造することができる。溶融混練は押出機により行うことができる。このとき、均一な混練を行うために、予め各樹脂成分を混合した後に押出を行うことが好ましい。各樹脂成分の混合は、例えばヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー、レディーゲミキサーなどの混合機を用いて行うことができる。
また、発泡剤の保持性及び発泡成形性を向上させ、さらにエチレン系樹脂の特徴である粘り強さを維持しつつ強度に優れた発泡粒子成形体を実現するための上記発泡性改質樹脂粒子を得るためには、上記分散相拡大剤を上記核粒子の上記エチレン系樹脂中に均一に分散させることが好ましい。そのため、例えばダルメージタイプ、マドックタイプ、及びユニメルトタイプ等の高分散タイプのスクリュや二軸押出機を用いて溶融混練を行うことが好ましい。
上記核粒子のエチレン系樹脂に分散されている分散相拡大剤の分散径は10〜1000nmが好ましく、10〜500nmがより好ましい。
また、上記核粒子には、発泡後の上記改質樹脂発泡粒子の気泡サイズを調整するため、上記気泡調整剤を添加することができる。
上記気泡調整剤としては、例えば、高級脂肪酸ビスアミド及び高級脂肪酸金属塩等の有機物、又は無機物等を用いることができる。
有機物の上記気泡調整剤を用いる場合には、その配合量を、上記核粒子用の樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部の範囲にすることが好ましい。
また、無機物を用いる場合、その配合量は、核粒子用の樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲にすることが好ましい。
上記気泡調整剤の添加量が少なすぎる場合には、気泡サイズを小さくする十分な効果が得られなくなるおそれがある。一方、添加量が多すぎる場合には、気泡サイズが極端に小さくなり、型内成形時に発泡粒子の気泡が破壊され成形体の外観が悪くなるおそれがある。
上記核粒子の微細化は、上記押出機で溶融混練した後、ストランドカット方式、ホットカット方式、及び水中カット方式等により行うことができる。所望の粒子径が得られる方法であれば他の方法により行うこともできる。
上記核粒子の粒子径は、好ましくは0.1〜3.0mmがよく、より好ましくは0.3〜1.5mmがよい。粒子径が小さすぎる場合には、発泡剤の保持性が低下するおそれがある。一方、粒子系が大きすぎる場合には、発泡後の発泡粒子の粒径も大きくなり、型内成形時に金型への充填性が低下するおそれがある。
なお、押出機を用いる場合には、粒子径の調整は、例えば粒子径の範囲内の口径を有する孔から樹脂を押出し、カットスピードを変えて特定の粒子径の範囲内の長さに切断することにより行うことができる。
上記核粒子の粒子径は、例えば次のようにして測定できる。
即ち、核粒子を顕微鏡写真により観察し、200個以上の核粒子について各々の核粒子の最大径を測定し、測定された最大径の算術平均値を核粒子の粒子径とする。
上記核粒子は、通常、水性媒体中に懸濁させて懸濁液とする。水性媒体中への分散は、例えば撹拌機を備えた密閉容器を用いて行うことができる。上記水性媒体としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
上記核粒子は、懸濁剤とともに水性媒体中に分散させることが好ましい。
上記懸濁剤としては、例えばリン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、及びベントナイト等の微粒子状の無機懸濁剤を用いることができる。また、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機懸濁剤を用いることもできる。好ましくは、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、及びピロリン酸マグネシウムがよい。これらの懸濁剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記懸濁剤の使用量は、懸濁重合系の水性媒体(反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水)100質量部に対して、固形分量で0.05〜10質量部が好ましい。より好ましくは0.3〜5質量部がよい。上記懸濁剤が少なすぎる場合には、スチレン系単量体を懸濁して安定化させることが困難になり、樹脂の塊状物が発生するおそれがある。一方、上記懸濁剤が多すぎる場合には、製造コストが増大してしまうだけでなく、粒子径分布が広がってしまうおそれがある。
また、上記懸濁液には界面活性剤を添加することができる。
上記界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤等を用いることができる。
上記アニオン系界面活性剤としては、例えばアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、α‐オレフィンスルホン酸ナトリウム、及びドデシルフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等を用いることができる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等を用いることができる。
上記カチオン系界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩を用いることができる。また、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム等を用いることもできる。
上記両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、及びステアリルベタイン等のアルキルベタインを用いることができる。また、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイドを用いることもできる。
上述の界面活性剤は、単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。
好ましくは、アニオン系界面活性剤を用いることがよい。より好ましくは、炭素数8〜20のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)がよい。これにより、懸濁を充分に安定化させることができる。
また、上記懸濁液には、必要に応じて、例えば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類からなる電解質を添加することができる。
また、本発明において吸光度比(D698/D2850)を上記範囲内に調整し、靭性、機械的強度に優れる改質樹脂発泡粒子成形体を得るためには、上記懸濁液に水溶性重合禁止剤を添加することが好ましい。
上記水溶性重合禁止剤としては、例えば亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、L−アスコルビン酸、クエン酸等を用いることができる。
上記水溶性重合禁止剤は上記核粒子内に含浸し難く、水性媒体中に溶解する。したがって、上記核粒子に含浸した上記スチレン系単量体の重合は行われるが、上記核粒子に含浸されていない水性媒体中の上記スチレン系単量体の微小液滴、及び上記核粒子に吸収されつつある上記核粒子表面付近の上記スチレン系単量体の重合を抑制することができる。その結果、上記発泡性改質樹脂粒子の表面のポリスチレン系樹脂の量を少なく制御することができ、発泡剤の保持性を向上できると推察される。
水溶性重合禁止剤の添加量は、水性媒体(反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水をいう)100質量部に対して0.001〜0.1質量部が好ましく、より好ましくは0.002〜0.02質量部がよい。上記水溶性重合禁止剤が多すぎる場合には、残存するスチレン系単量体が増加し、良好な改質樹脂発泡粒子成形体が得られなくなるおそれがある。
また、上記核粒子内でスチレン系単量体を均一に重合させるためには、スチレン系単量体を核粒子に含浸させて重合させる。この場合には、スチレン系単量体の重合と共に架橋が生じることがある。スチレンの重合において重合開始剤を用いるが、必要に応じて架橋剤を併用することができる。また、重合開始剤及び/又は架橋剤を使用する際には、予めスチレン系単量体に重合開始剤及び/又は架橋剤を溶解しておくことが好ましい。
なお、スチレン系単量体の重合過程においては、上記核粒子中に含まれるオレフィンの架橋が生じる場合があることから、本明細書において、「重合」は「架橋」を含む場合がある。
また、スチレン系単量体には、必要に応じて可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、染料等を添加することができる。
可塑剤としては、例えばグリセリントリステアレート、グリセリントリオクトエート、グリセリントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ブチルステアレート等の脂肪酸エステルを用いることができる。また、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化モノグリセライド、硬化牛脂及び硬化ひまし油等の油脂類、シクロヘキサン及び流動パラフィン等の有機化合物等を用いることもできる。
油溶性重合禁止剤としては、例えばパラ−t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン等を用いることができる。
エチレン系樹脂からなる上記核粒子と上記スチレン系単量体の配合比は、質量比で、核粒子/スチレン系単量体=20/80〜50/50であることが好ましく、25/75〜45/55であることがより好ましい。さらに好ましくは、25/75〜40未満/60超過がよい。
上記重合開始剤としては、スチレン系単量体の懸濁重合法に用いられるもの、例えばビニルモノマーに可溶で、10時間半減期温度が50〜120℃である重合開始剤を用いることができる。具体的には、例えばクメンヒドロキシパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、及びラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用いることができる。これらの重合開始剤は1種類または2種類以上組み合わせて用いることができる。
上記重合開始剤は、溶剤に溶解させて添加し、上記核粒子に含浸させることもできる。
上記重合開始剤を溶解する溶剤としては、例えばエチルベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素、ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素等が用いられる。
上記重合開始剤は、スチレン系単量体100質量部に対して0.01〜3質量部で使用することが好ましい。
また、上記架橋剤としては、重合温度では分解せず、架橋温度で分解する10時間半減期温度が重合温度よりも5℃〜50℃高いものを用いることが好ましい。具体的には、例えばジクミルパーオキサイド、2,5−t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン等の過酸化物を用いることができる。上記架橋剤は、単独または2種類以上併用して用いることができる。上記架橋剤の配合量は、スチレン系単量体100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。
なお、上記重合開始剤及び上記架橋剤としては、同じ化合物を採用することもできる。
また、上記スチレン系単量体又は上記溶剤には、気泡調整剤を添加することができる。
上記気泡調整剤としては、例えば脂肪族モノアミド、脂肪酸ビスアミド、タルク、シリカ、ポリエチレンワックス、メチレンビスステアリン酸、メタクリル酸メチル系共重合体、及びシリコーンなどを用いることができる。 脂肪族モノアミドとしては、例えばオレイン酸アミド、及びステアリン酸アミド等を用いることができる。 脂肪酸ビスアミドとしては、例えばエチレンビスステアリン酸アミド等を用いることができる。
上記気泡調整剤は、スチレン系単量体100質量部に対して0.01〜2質量部用いることが好ましい。
上記核粒子にスチレン系単量体を含浸させて重合させる際に添加されるスチレン系単量体(必要により単量体中に重合開始剤及び/または架橋剤を含む)の添加は、一括して行っても、分割して行ってもよい。
重合温度は、使用する重合開始剤の種類によって異なるが、60〜105℃が好ましい。また、架橋温度は使用する架橋剤の種類によって異なるが、100〜150℃が好ましい。
物理発泡剤の含浸は、スチレン系単量体の重合中または重合後に行うことができる。
具体的には、重合中の又は重合後の樹脂粒子を収容する容器内に物理発泡剤を圧入し、樹脂粒子中に含浸させる。
発泡剤の含浸温度は、スチレン系樹脂(スチレンホモポリマー、スチレンモノマーとスチレンモノマーと共重合可能なモノマー成分との共重合体)のガラス転移温度(Tg)(℃)〜Tg+40(℃)の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、Tg+5(℃)からTg+25(℃)の範囲内がよい。
発泡剤の含浸温度が低すぎる場合には、初期の発泡剤含有量が多くなり、直ちに、発泡させる場合には問題ないが、常温以上の雰囲気下で保管又は輸送後に発泡させる場合には、発泡剤の保持性が不十分となるおそれがある。これは、改質樹脂粒子において含浸されやすいエチレン系樹脂からなる連続相に物理発泡剤が含浸され、スチレン系樹脂からなる分散相には物理発泡剤が充分に含浸されず、物理発泡剤が逸散しやすい連続相から物理発泡剤が抜けてしまうためと推定される。また、この傾向は、改質樹脂粒子において、分散相の体積平均径が大きい(=総表面積が小さい)場合に顕著になる傾向にある。一方、含浸温度が高すぎる場合には、樹脂粒子が扁平となり易くなる傾向がある。
スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば次のようにして測定できる。
即ち、まずキシレン200mlを収容するフラスコに、発泡性改質樹脂粒子1.0gを添加し、マントルヒーターで8時間加熱し、ソックスレー抽出を行う。抽出したキシレン溶液をアセトン600mlへ投下し、デカンテーション、減圧蒸発乾固を行い、アセトン可溶分としてスチレン系樹脂を得る。得られたスチレン系樹脂2〜4mgをについて、ティ・エイ・インスツルメント社製の2010型DSC測定器を用い、JIS K7121(1987年)により熱流束示差走査熱量測定を行う。そして、加熱速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求めることができる。
また、物理発泡剤含浸後には、発泡性改質樹脂粒子を脱水乾燥し、必要に応じて表面被覆剤を被覆させることができる。
表面被覆剤としては、例えばジンクステアレート、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油、帯電防止剤などがある。上記表面被覆剤の添加量は、上記発泡性改質樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2質量部であることが好ましい。
上記発泡性改質樹脂粒子を加熱媒体により加熱して発泡させることにより、上記改質樹脂発泡粒子を得ることができる。具体的には、水蒸気(スチーム)等の加熱媒体を発泡性改質樹脂粒子に供給することにより、該発泡性改質樹脂粒子を発泡させることができる。なお、得られる改質樹脂発泡粒子の見かけ密度は10〜200kg/m3が好ましく、20〜100kg/m3であることがより好ましい。
なお、本発明の発泡性改質樹脂粒子を発泡させて得られる改質樹脂発泡粒子において、ATR法赤外分光分析により測定された発泡粒子の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm-1及び2850cm-1での吸光度比(D698/D2850)が2.0〜10の範囲であることが好ましい。より好ましくは2.5〜7.5の範囲である。該発泡粒子の吸光度比D698/D2850が上記範囲内の場合には、発泡剤の逸散性が更に小さく、割れ難く強度特性に優れる発泡粒子成形体を得ることができる。
上記改質樹脂発泡粒子の吸光度比D698/D2850の値は、測定試料を発泡性改質樹脂粒子から改質樹脂発泡粒子へ変更する以外は、前述の発泡性改質樹脂粒子吸光度比D698/D2850の測定方法と同様にして求めることができる。この方法により求められる改質樹脂発泡粒子の吸光度比D698/D2850の値から、改質樹脂発泡粒子の表面におけるスチレン系樹脂とエチレン系樹脂との割合を、発泡性改質樹脂粒子と同様に推定することができる。
また、上記改質樹脂発泡粒子を周知の成形手段により型内成形することにより、改質樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。なお、得られる改質樹脂発泡粒子成形体の密度は10〜200kg/m3であることが好ましく、20〜100kg/m3であることがより好ましい。
以下に、本発明に関する実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
本例においては、発泡性改質樹脂粒子を作製し、これを用いて改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製する。
図1に、本例の発泡性改質樹脂粒子の内部を構成している改質樹脂の断面構造を模式的に示す。同図に示すごとく、発泡性改質樹脂粒子1は、エチレン系樹脂を主成分とする連続相2中にスチレン系樹脂を主成分とする分散相3が分散されてなる改質樹脂を基材樹脂とし、物理発泡剤を含有する。
以下、本例の発泡性改質樹脂粒子の製造方法につき、説明する。
(1)核粒子の作製
酢酸ビニルを15重量%含有したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA:東ソー社製「ウルトラセン626」)5kg、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE:東ソー社製「ニポロン9P51A」)15kg、および分散相拡大剤としてアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS:電気化学工業(株)製「AS−XGS」、重量平均分子量:10.9万、アクリロニトリル成分量:28質量%、MFR(200℃、5kgf):2.8g/10min)1kgをヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製;型式FM−75E)に投入し、5分間混合した。
次いで、この樹脂混合物を押出機(アイケージー(株)製;型式MS50−28;50mmφ単軸押出機、マドックタイプのスクリュ)にて温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により0.4〜0.6mg/個(平均0.5mg/個)に切断し、ポリエチレン系樹脂よりなる核粒子を得た。
(2)発泡性改質樹脂粒子の作製
撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6.7gを加えて溶解させた後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物14.6gを加え、室温で30分撹拌して懸濁剤としてピロリン酸マグネシウムスラリーを合成した。
次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)1.0g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム(1質量%水溶液)5.0g、及び核粒子150gを投入した。
次いで、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル1.675g(日本油脂(株)製「ナイパーBW」、水希釈粉体品)と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート0.25g(日本油脂社製「パーブチルE」)、架橋剤としての1,1−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)シクロヘキサン(アルケマ吉富(株)製「ルペロックス331M70」)4.25gを、スチレン系モノマーとしてのスチレン335g及びビニルモノマーとしてのアクリル酸ブチル15gに溶解させ、撹拌速度500rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の懸濁剤中に投入した。
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間半かけて86℃まで昇温させた。昇温後、この温度86℃で30分間保持した後、撹拌速度を450rpmに下げ、重合温度80℃まで15分かけて冷却した。冷却後、この重合温度80℃で5時間保持した。次いで、温度120℃まで2時間かけて昇温させ、そのまま温度120℃で5時間保持した。
その後、温度90℃まで1時間かけて冷却し、撹拌速度を400rpmに下げ、そのまま温度90℃で3時間保持した。そして、温度90℃到達時に、発泡剤としてシクロヘキサン12gとブタン(ノルマルブタン約20体積%、イソブタン約80体積%の混合物)50gを約30分かけてオートクレーブ内に添加した。さらに、温度105℃まで2時間かけて昇温し、そのまま温度105℃で5時間保持した後、30℃まで約6時間かけて冷却した。
冷却後、内容物を取り出し、硝酸を添加し発泡性改質樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去し、平均粒径(d63)が約1.6mmの発泡性改質樹脂粒子を得た。
得られた発泡性改質樹脂粒子を篩いにかけて直径が0.7〜2.0mmの粒子を取り出し、発泡性改質樹脂粒子100質量部に対して、帯電防止剤であるN,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.008質量部を添加し、さらにステアリン酸亜鉛0.12質量部、グリセリンモノステアレート0.04質量部、グリセリンジステアレート0.04質量部の混合物で被覆した。
このようにして得られた発泡性改質樹脂粒子について、吸光度比(D698/D2850)と表面のポリスチレン量を調べた。その結果を後述の表1に示す。
吸光度比の測定にあたっては、まず、日本分光(株)製のFT/IR-460plus(ATR PRO 450−S型、プリズム:ZnSe、入射角:45°)で、発泡性改質樹脂粒子を170kg/cm2の圧力でプリズムに密着させて赤外スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトル(ATR補正なし)を得た。
このようにして得られた発泡性改質樹脂粒子について、下記のような評価を行った。
「分散相の体積平均径」
発泡性改質樹脂粒子から顕微鏡観察用のサンプルを該発泡性改質樹脂粒子の中心部から切り出し、エポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウム染色後、ウルトラミクロトームにより超薄切片を作製した。この超薄切片をグリッドに載せ、発泡性改質樹脂粒子内部断面のモルフォロジーを倍率10000倍の透過型電子顕微鏡(日本電子社製のJEM1010)で観察し、断面写真(TEM写真)を撮影した。
次に、断面写真をスキャナ(600dpi/カラー写真)で取込んだ。取り込んだ画像を、画像処理ソフト(ナノシステム(株)のNanoHunter NS2K−Pro)で解析し、分散相(ポリスチレン相)1つ当りの面積を求め、その面積と同面積の真円相当径を分散相1つ当りの分散径(代表径)とし、前述の通りに体積平均径を求めた。その結果を後述の表2に示す。なお、画像処理ソフトにより分散相(ポリスチレン相)の分散径を求めるための処理条件は、(1)モノクロ変換→(2)平滑化フィルタ(3×3、8近傍、処理回数=1)→(3)NS法2値化(背景より明るい、鮮明度=100、感度=5、ノイズ除去、濃度範囲=0〜255)→(4)穴埋め→(5)収縮(8近傍、処理回数=3)→(6)特徴量(面積)による画像のみ選択(0.01〜∞μm2、8近傍)→(7)隣と隣接しない膨張(8近傍、処理回数=3)→(8)円相当径計測(面積から計算、8近傍)とした。
「表皮層の平均厚み」
100mlビーカーに50mlのテトラヒドロフランを入れ、23℃で2時間以上放置する。次に、カッターを使用して発泡性改質樹脂粒子を粒子の表面から該粒子の中心を通って二分割する。そして、二分割した切断片の一方を100mlビーカー内に入れてテトラヒドロフランに4時間浸漬した。次に、80メッシュの金網で切断片とテトラヒドロフランをろ過し、金網上の切断片はそのまま23℃で4時間以上放置して切断片中のテトラヒドロフランを自然乾燥させる。その後、金網から切断片を取り出して、走査電子顕微鏡(SEM)により、切断面の画像を撮影(500〜1000倍)して表皮層の厚みを測定する。5個の切断片を使用し、これらの平均値を算出して平均厚み(μm)とした。その結果を後述の表1に示す。
「吸光度比(D698/D2850)及び表面ポリスチレン量」
上記のようにして得られた発泡性改質樹脂粒子について、赤外吸収スペクトルから得られる波長698cm-1での吸光度D698と、波長2850cm-1での吸光度D2850を測定し、吸光度比(D698/D2850)を求めた。その結果を表1に示す。
次に、上記測定で得られた発泡性改質樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850)に基づいて、図1に示す検量線から、発泡性改質樹脂粒子の表面のポリスチレン量を求めた。その結果を表1に示す。
「発泡剤量及び発泡剤中のイソブタンの割合」
次に、温度23℃で1日及び7日間熟成させた発泡性改質樹脂粒子をについて、それぞれ発泡剤量及び発泡剤中のイソブタンが占める割合を測定した。
具体的には、まず、発泡性改質樹脂粒子を温度23℃で1日間又は7日間熟成させた。これらの熟成させた発泡性改質樹脂粒子を、ジメチルホルムアミドに溶解させ、ガスクロマトグラフィーにて、添加した発泡剤成分の含有量を測定し、各成分の含有量(質量%)を求めた。次に、発泡性改質樹脂粒子が含有する全発泡剤量を定量した。そして、発泡性改質樹脂粒子が含有するイソブタンの量(D(質量%))を、発泡性改質樹脂粒子が含有する全発泡剤量(C(質量%))で除して、発泡剤中のイソブタンが占める割合(%)を次式(2)から求めた。その結果を表1に示す。
発泡剤中のイソブタンが占める割合=D(質量%)/C(質量%)×100・・・(2)
(3)改質樹脂発泡粒子の作製
次に、上記のように温度23℃で1日間及び7日間熟成させた発泡性改質樹脂粒子をそれぞれ容積30L常圧バッチ発泡機内に入れ、この発泡機内にスチームを供給した。これにより、発泡性改質樹脂粒子を見かけ密度約33.0kg/m3まで発泡させ、改質樹脂発泡粒子を得た。
なお、改質樹脂発泡粒子の見かけ密度(kg/m3)は、1Lのメスシリンダーを用意し、空のメスシリンダー中に改質樹脂発泡粒子を1Lの標線まで充填し、1Lあたりの改質樹脂発泡粒子の重量を測定することより求めた。
「吸光度比(D698/D2850)」
上記のようにして得られた発泡樹脂粒子について、赤外吸収スペクトルから得られる波長698cm-1での吸光度D698と、波長2850cm-1での吸光度D2850を測定し、吸光度比(D698/D2850)を求めた。その結果を表1に示す。
(4)改質樹脂発泡粒子成形体の作製
次に、各種評価用に用いる成形体を作製した。
具体的には、上記のようにして得られた改質樹脂発泡粒子を、型物成形機(ダイセン工業(株)製のVS500)で、300mm×75mm×25mmの直方体形状の成形体に成形した。得られた改質樹脂発泡粒子成形体を温度60℃で3時間乾燥後、さらに温度23℃で1日養生してから各種評価に用いた。
「内部融着率(%)の評価」
300mm×75mm×25mmの改質樹脂発泡粒子成形体を割って破断面を観察した。破断面における発泡粒子100個以上について、目視により内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子数をそれぞれ計測し、内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子の合計数に対する内部で破断した発泡粒子の割合を内部融着率(%)とした。その結果を表1に示す。
「最大曲げ強さ(MPa)の評価」
JIS K 7221に準拠して3点曲げ試験を行なった。
すなわち、改質樹脂発泡粒子(見かけ密度:33.0kg/m3)を温度23℃で1日熟成した後、成形機(ダイセン工業(株)製のVS−500)を用いて成形し改質樹脂発泡粒子成形体を得た。金型寸法は300×75×25mmとした。そして、3点曲げ試験(スパン200mm)を行って最大の曲げ強さ(MPa)を測定した。同様の試験を5点の試験片について行い、これらの測定値を平均して最大の曲げ強さ(MPa)を求めた。その結果を表1に示す。
「寸法安定性の評価」
成形直後の成形品を温度60℃で3時間乾燥後、温度23℃で放置し、14日後に試験片の寸法を測定し、下記の式より寸法収縮率を求めた。そして、下記基準にて評価した。その結果を表1に示す。
寸法収縮率(%)=(金型寸法−成形品寸法)/金型寸法
◎:0.8%未満、○:0.8%以上〜1.2%未満
△:1.2%以上〜1.6%未満、×:1.6%以上
(実施例2)
本例においては、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、懸濁剤として第3リン酸カルシウムを20g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(1%水溶液)5.5g、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を1.0g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例3)
本例においては、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を2.5g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例4)
本例においては、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を7.5g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体(成形品)についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例5)
本例においては、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を10.0g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例1)
本例においては、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を12.5g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例2)
本例においては、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を15.0g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例3)
本例においては、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤を用いなかった点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例4)
本例においては、分散相拡大剤を用いずに核粒子を作製し、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を12.5g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例5)
本例においては、分散相拡大剤を用いずに核粒子を作製し、核粒子から発泡性改質樹脂粒子を作製する際に、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム(1%水溶液)を5.0g用いた点を除いては実施例1と同様にして発泡性改質樹脂粒子を作製した。そして、この発泡性改質樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして改質樹脂発泡粒子及び改質樹脂発泡粒子成形体を作製した。
本例において作製した発泡性改質樹脂粒子、改質樹脂発泡粒子、及び改質樹脂発泡粒子成形体についても、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2011256244
Figure 2011256244
表1より知られるごとく、本発明の実施例(実施例1〜5)にかかる発泡性改質樹脂粒子は、発泡剤の保持性能に優れていた。そのため、実施例1〜5の発泡性改質樹脂粒子は、密閉容器に入れた状態において、発泡力を十分に保持したまま長期間の保存が可能になる。特に常温での保管も可能になる。それ故、上記発泡性改質樹脂粒子の製造後短時間で該発泡性改質樹脂粒子を発泡させて発泡粒子にする必要がなくなり、上記発泡性改質樹脂粒子の状態での輸送及び保管が可能になる。また、上記発泡性改質樹脂粒子を例えば常温で7日間保管した後に発泡させ、成形しても高い融着率で発泡粒子が融着し、強度が高く、寸法安定性に優れた発泡粒子成形体が得られる。
これに対し、表2より知られるごとく、比較例1及び2の発泡性樹脂粒子においては、吸光度比D698/D2850が低すぎるため、発泡剤の逸散性防止効果が十分に得られなくなり、発泡剤の保持性能が低下していた。
また、比較例3の発泡性樹脂粒子においては、吸光度比D698/D2850が高すぎるため、発泡後に得られる発泡粒子同士が融着し難くなり、発泡粒子成形体の強度が低下していた。
また、比較例4及び5の発泡性樹脂粒子においては、分散相拡大剤を用いておらず、分散相の体積平均径を十分に大きくすることができず、その結果、発泡剤の逸散性防止効果が十分に得られなくなり、発泡剤の保持性能が低下していた。
以上のように、本発明の実施例にかかる発泡性改質樹脂粒子は、発泡剤の保持性に優れ、該発泡性改質樹脂粒子を発泡、成形することにより優れた粘り強さを維持しつつ強度に優れた成形体を得られることがわかる。
1 発泡性改質樹脂粒子
2 連続相
3 分散相

Claims (8)

  1. エチレン系樹脂を主成分とする連続相中にスチレン系樹脂を主成分とする体積平均径0.55μm以上の分散相が分散されてなる改質樹脂を基材樹脂とし、物理発泡剤を含有する発泡性改質樹脂粒子において、
    上記改質樹脂は、上記エチレン系樹脂と上記スチレン系樹脂との合計量を100質量部とすると、上記エチレン系樹脂20〜50質量部に対して、上記スチレン系樹脂を80〜50質量部含有し、
    上記分散相は、該分散相の上記体積平均径を拡大させる作用を有する熱可塑性重合体からなる分散相拡大剤を含有し、
    上記改質樹脂中における上記分散相拡大剤の含有量は、上記エチレン系樹脂100質量部に対して1〜10質量部であり、
    全反射吸収の赤外分光分析により測定された樹脂粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm-1及び2850cm-1での吸光度比(D698/D2850)が0.4〜5.0の範囲にあることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子。
  2. 請求項1に記載の発泡性改質樹脂粒子において、上記吸光度比(D698/D2850)が0.5〜3.0の範囲にあることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子。
  3. 請求項1または2に記載の発泡性改質樹脂粒子の表面には、テトラヒドロフラン抽出法にて確認される平均厚みが1〜10μmの表皮層が形成されていることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡性改質樹脂粒子において、上記エチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体からなることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡性改質樹脂粒子において、上記物理発泡剤は、イソブタン30〜100質量%と炭素数4〜6の炭化水素0〜70質量%とからなることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の発泡性改質樹脂粒子において、上記物理発泡剤の含有量は、上記改質樹脂100質量部に対して2〜10質量部であることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡性改質樹脂粒子において、上記分散相拡大剤は、上記分散相の主成分とは異なるスチレン系樹脂、スチレン系エラストマー、及び塩化ビニル系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする発泡性改質樹脂粒子。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の上記発泡性改質樹脂粒子を加熱媒体にて加熱し発泡させて得られ、見かけ密度が10〜200kg/m3であることを特徴とする改質樹脂発泡粒子。
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