JP2015188802A - 酸化物触媒及びその製造方法、並びにアクリロニトリルの製造方法 - Google Patents

酸化物触媒及びその製造方法、並びにアクリロニトリルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プロピレンを原料とするアクリロニトリルの製造において、適切なアンモニア燃焼率と、高いアクリロニトリル収率を両立する酸化物触媒及びその製造方法、並びに該酸化物触媒を用いたアクリロニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させてアクリロニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素Aを含有し、
前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1.0≦a≦5.0であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6.0であり、前記コバルトの原子比cが2.0≦c≦8.0であり、前記ランタノイド元素Aの原子比dが0.50≦d≦5.0であり、
前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記ランタノイド元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含み、
X線回折のリートベルト解析により求められる前記disorder相の含有量が、10〜60質量%である、酸化物触媒。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸化物触媒及びその製造方法、並びに該酸化物触媒を用いたアクリロニトリルの製造方法に関する。
モリブデン、ビスマス、鉄等の遷移金属は、それぞれが単独で酸化することによって得られる酸化物の他に、複数種の金属が固溶体となって得られるいわゆる複合酸化物になることが知られている。複合酸化物は、単独の金属の酸化物とは異なる特性を有し、その特性が金属種の選択や組成比等によっても大きく変化することから、触媒、顔料、電池の電極材料等、様々な分野で検討が進められている。
例えば、モリブデン、ビスマス、及び鉄を含む金属酸化物触媒は、オレフィンやアルコールを酸化して、不飽和ニトリルを製造する触媒としてこれまでに数多く報告されている。例えば、特許文献1には、モリブデン、ビスマス及び鉄を含有する触媒が記載されている。
非特許文献1によると、disorder相とは、無秩序相や準安定構造であり、例えば、Bi、Mo、Feの3成分系の複合酸化物の場合、MoサイトにFeがランダムに置換した構造であり、Mo原子とFe原子が同じ酸素4面体構造を形成することを特徴とする。
非特許文献1に記載されたdisorder相Bi3Fe1Mo212の結晶構造を図1に示す。シーライト型結晶(CaWO4型)の正方晶系であり、単位胞の格子定数については、2本の長さは等しく、3本のそれぞれのなす角は90度である(A=B≠C、α=β=γ=90度)。また、酸素四面体で囲まれたXサイト、酸素で囲まれていないYサイトの2つのサイトを有し、XサイトにはMoとFeがランダム、又はある確率分布を持って占有している。Yサイトは、Bi及びその他元素若しくは格子欠陥がランダム又はある確率分布を持って占有している。AB面内の各層は、XサイトとYサイトが、それぞれA軸、B軸方向の格子定数と等しい長さの平面正方格子を作っており、互いに、面内で格子定数の1/2ずつ、A軸方向、B軸方向それぞれにずれた位置を占めている。C軸方向の積層は、各AB面内の層が、(A/2,0)、(0.B/2)それぞれずれることを繰り返し重なっている。積層の際、Xサイトの周りの酸素4面体は、内包する原子を中心にC軸の周りに90度ずつ回転しながら、配置される。
disorder相Bi3Fe1Mo212のX線回折(XRD)を図2に示す。X線回折(XRD)でdisorder相の結晶のX線回折角2θ=10°〜60°の範囲を測定すると、少なくとも18.30°±0.2°(101)面、28.20°±0.2°(112)面、33.65°±0.2°(200)面、46.15°±0.2°(204)面、に単一なピークを示す。
特許第5361034号
Acta.Cryst(1976).B32,p1163−p1170
特許文献1には、アクリロニトリルの製造にMo−Bi−Fe系の酸化物触媒を用いることが記載されている。Mo−Bi−Fe系の酸化物触媒を用いて、高いアクリロニトリル収率を得るには、プロピレンに対して過剰量のアンモニアが必要である。過剰量のアンモニアを反応器に供給すると、未反応アンモニアが増加する。当該未反応アンモニアは、反応器出口以降のプロセスで硫酸と反応させて硫酸アンモニウムとして廃棄する必要がある。未反応アンモニアの廃棄プロセスは複雑でコストも高いため、未反応アンモニアが少ないことが望ましい。
しかしながら、上述したとおり、高いアクリロニトリル収率を得るには、過剰量のアンモニアが必須であり、アンモニアの供給量を削減することはできない。未反応アンモニアを削減するには、反応器内でアンモニアを選択的に燃焼させることが望ましい。
ところが、反応器内におけるアンモニア燃焼率を高めると、アクリロニトリルも燃焼されやすくなる傾向があり、適切なアンモニア燃焼率と高いアクリロニトリル収率の両立は極めて困難であった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、プロピレンを原料とするアクリロニトリルの製造において、適切なアンモニア燃焼率と、高いアクリロニトリル収率を両立する酸化物触媒及びその製造方法、並びに該酸化物触媒を用いたアクリロニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討をした。その結果、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びランタノイド元素を含む酸化物触媒中に、所定量のdisorder相が含まれるときに、適切なアンモニア燃焼率を示し、目的生成物の収率も高くなる傾向を見出した。
さらに、本発明者らは、酸化物触媒のdisorder相の結晶量のコントロールを達成するための手段を鋭意検討した結果、キレート剤の利用と、焼成条件の工夫により、酸化物触媒中に含まれるdisorder相の結晶の量を自由にコントロールできる酸化物触媒を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
〔1〕
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させてアクリロニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素Aを含有し、
前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1.0≦a≦5.0であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6.0であり、前記コバルトの原子比cが2.0≦c≦8.0であり、前記ランタノイド元素Aの原子比dが0.50≦d≦5.0であり、
前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記ランタノイド元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含み、
X線回折のリートベルト解析により求められる前記disorder相の含有量が、10〜60質量%である、酸化物触媒。
〔2〕
X線回折により確認される単一ピークが、18.30°±0.2°、28.20°±0.2°、33.65°±0.2°、及び46.15°±0.2°の各回折角(2θ)の範囲に存在する、前項〔1〕に記載の酸化物触媒。
〔3〕
下記組成式(1)で表される組成を有する金属酸化物を含む、前項〔1〕又は〔2〕に記載の酸化物触媒。
Mo12BiaFebCocdefg (1)
(式中、Moは前記モリブデン、Biは前記ビスマス、Feは前記鉄、Coは前記コバルト、Aは前記ランタノイド元素Aを示し、Bはマグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、クロム、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Cはカリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜gは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、前記ビスマスの原子比aは1.0≦a≦5.0であり、前記鉄の原子比bは1.5≦b≦6.0であり、前記コバルトの原子比cは2.0≦c≦8.0であり、前記ランタノイド元素Aの原子比dは0.50≦d≦5.0であり、元素Bの原子比eは0≦e<3.0であり、元素Cの原子比fは0.010≦f≦2.0であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
〔4〕
前記金属酸化物と、該金属酸化物を担持するシリカ担体と、を有し、
該シリカ担体の含有量が、前記金属酸化物と前記シリカ担体の合計質量に対して、20〜80質量%である、前項〔3〕に記載の酸化物触媒。
〔5〕
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素Aを含む酸化物触媒を構成する原料と、キレート剤と、を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
得られた前記原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
得られた前記乾燥体を仮焼成する仮焼成工程と、
を有し、
前記仮焼成工程が、前記乾燥体を100℃から200℃まで徐々に昇温する第1仮焼成工程と、前記乾燥体を200℃から450℃まで徐々に昇温する第2仮焼成工程と、を含む、酸化物触媒の製造方法。
〔6〕
前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、流動層反応器内で、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造するアクリロニトリル製造工程を有する、アクリロニトリルの製造方法。
本発明によれば、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアと、反応させてアクリロニトリルを得る製造方法において、適切なアンモニア燃焼率と、高いアクリロニトリル収率を両立する酸化物触媒及びその製造方法並びに該酸化物触媒を用いたアクリロニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
disorder相Bi3Fe1Mo212の結晶構造を示す図である。 (a)disorder相Bi3Fe1Mo212と(b)order相Bi3Fe1Mo212のX線回折を示す図である。 実施例1の酸化物触媒のX線回折パターン及びリートベルト解析を行って結晶相の割合を算出した図である。 比較例5の酸化物触媒のX線回折パターン及びリートベルト解析を行って結晶相の割合を算出した図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
〔酸化物触媒〕
本実施形態に係る酸化物触媒は、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させてアクリロニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、モリブデン(以下、「Mo」ともいう。)、ビスマス(以下、「Bi」ともいう。)、鉄(以下、「Fe」ともいう。)、コバルト(以下、「Co」ともいう。)、及びランタノイド元素A(以下、「A」ともいう。)を含有し、前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1.0≦a≦5.0であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6.0であり、前記コバルトの原子比cが2.0≦c≦8.0であり、前記ランタノイド元素Aの原子比dが0.50≦d≦5.0であり、前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記ランタノイド元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含み、X線回折のリートベルト解析により求められる前記disorder相の含有量が、10〜60質量%である。
〔disorder相〕
本実施形態に係る酸化物触媒は、モリブデン、ビスマス、鉄、及びランタノイド元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含む。X線回折のリートベルト解析により求められるdisorder相の含有量(結晶の割合)は、10〜60質量%であり、好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは30〜40質量%である。disorder相の含有量が上記範囲内であることにより、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させるアクリロニトリルの製造において、アンモニア燃焼率を適切な範囲に調整でき、アクリロニトリルを高収率で生成させることができる。なお、disorder相の結晶の割合が60質量%を超えるとアンモニア燃焼率が低くなり、アクリロニトリルの収率が低下する傾向がある。一方、10質量%未満であるとアンモニア燃焼率が高くなり過ぎ、燃焼反応が促進され、アクリロニトリルの収率が低下する傾向にある。酸化物触媒中のdisorder相の含有量は、後述する酸化物触媒の製造方法の各条件を調整することにより、制御することができる。
適切なアンモニア燃焼率は10〜40%である。アンモニア燃焼率は下記の式で定義される。
アンモニア燃焼率=(生成した窒素のモル数)×2/(供給したアンモニアのモル数)×100
disorder相の含有量(結晶の割合)とは、酸化物触媒に含まれる結晶の総量に対するdisorder相の含有量で表される。例えば、disorder相の結晶の含有量が40質量%である場合、酸化物触媒に含まれる結晶相の40質量%がdisorder相の結晶であり、残り60質量%がdisorder相以外の結晶(例えば、Fe2Mo312、CoMoO4やBi2Mo312)である。
disorder相の含有量は、X線回折を行い、得られたX線回折パターンに対してリートベルト解析を行って結晶相の割合を求めることができる。より詳細には、実施例に記載の方法を用いることができる。
〔組成〕
酸化物触媒は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素を含有し、モリブデン12原子に対する、ビスマスの原子比aが1.0≦a≦5.0であり、鉄の原子比bが1.5≦b≦6.0であり、コバルトの原子比cが2.0≦c≦8.0であり、ランタノイド元素Aの原子比dが0.50≦d≦5.0である。このように、Mo−Bi系の金属酸化物において、Mo、Bi、Fe、Co、ランタノイド元素を含有することにより、各金属元素が複合酸化物を形成しうる。
酸化物触媒において、Bi及びMoは複合化して、気相接触酸化、アンモ酸化反応等の活性種とされているBi2Mo312、Bi2MoO6等のBi−Mo−O複合酸化物を形成しうる。Mo12原子に対するBiの原子比aは、上記活性種を形成させる観点から、1.0≦a≦5.0であり、好ましくは1.5≦a≦3.0であり、より好ましくは1.5≦a≦2.0である。原子比aが上記範囲であることにより、目的生成物の選択率がより向上する傾向にある。
Mo12原子に対するFeの原子比bは、1.5≦b≦6.0であり、好ましくは1.8≦b≦4.0であり、より好ましくは2.0≦b≦3.0である。原子比bが上記範囲であることにより、アクリロニトリルの選択率がより向上する傾向にある。
酸化物触媒はCoを含む。Coは、Mo、Bi、Feと同様に工業的に目的生成物を合成する上で必須となる元素である。酸化物触媒において、Coは、複合酸化物CoMoO4を形成し、該CoMoO4がdisorder相等の活性種を高分散させるための担体としての役割と、気相から酸素を取り込み、Bi−A−Mo−O等に供給する役割を果たしていると推定される。Mo、Bi、Fe、Co及びランタノイド元素Aを含む酸化物触媒で、アクリロニトリルを高収率で得るには、酸化物触媒において、CoはMoと複合化させ、複合酸化物CoMoO4を形成させることが好ましい。
Mo12原子に対するCoの原子比cは、2.0≦c≦8.0であり、好ましくは2.5≦c≦6.0であり、より好ましくは3.0≦c≦5.0である。原子比cが上記範囲であることにより、アクリロニトリルの収率がより向上する傾向にある。
酸化物触媒は、ランタノイド元素Aをさらに含む。上記Bi−Mo−O複合酸化物はFe及びランタノイド元素Aと複合化して、4成分系のdisorder相を形成しうる。このような複合酸化物は、耐熱性により優れる。耐熱性に優れることにより、高温における反応により適した酸化物触媒となる。Mo12原子に対するランタノイド元素の原子比dは、0.50≦d≦5.0であり、好ましくは0.80≦d≦3.0であり、より好ましくは1.0≦d≦2.0である。原子比dが上記範囲であることにより、アクリロニトリルの選択率がより向上する傾向にある。
本実施形態に係る酸化物触媒は、好ましくは、下記組成式(1)で表される組成を有する金属酸化物を含む。
Mo12BiaFebCocdefg (1)
(式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルトを示し、Aはランタノイド元素Aを示し、Bはマグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、クロム、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Cはカリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜gは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、ビスマスの原子比aは1.0≦a≦5.0であり、鉄の原子比bは1.5≦b≦6.0であり、コバルトの原子比cは2.0≦c≦8.0であり、ランタノイド元素Aの原子比dは0.50≦d≦5.0であり、元素Bの原子比eは0.010≦e≦2.0であり、元素Cの原子比fは0≦f≦2.0であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
Aはランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、及びユーロピウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のランタノイド元素を示す。Aが酸化物触媒に含まれることにより、モリブデン、ビスマス、鉄、及びランタノイド元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を形成でき、耐熱性がより向上する傾向にある。
Bはニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Bは酸化物触媒において、気相からの酸素取り込みを補助する役割を示すと考えられている。原子比eは、好ましくは0.010≦e≦2.0であり、より好ましくは0.030≦e≦1.0であり、さらに好ましくは0.050≦e≦0.40である。アルカリ元素の原子比eが上記数値範囲であることにより、組成式(1)で表される組成を有する酸化物触媒の触媒活性がより優れる傾向にある。また、アルカリ元素の原子比eが2.0以下であることにより、酸化物触媒が塩基性となりにくく、オプロピレンのアンモ酸化反応において、原料であるプロピレンが触媒に吸着され易くなり、触媒活性がより優れる傾向にある。
Cはカリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ元素を示す。Cは酸化物触媒において、複合化されなかったMoO3等の酸点を中和する役割を示すと考えられている。なお、セシウム、ルビジウム及びカリウムを含有してもしなくても、disorder相の含有量には影響を与えない。組成式(1)で表される組成において、Mo12原子に対するこれらの元素の原子比fは、好ましくは0≦f≦2.0であり、より好ましくは0.1≦f≦1.5であり、さらに好ましくは0.2≦f≦1.0である。原子比fが上記数値範囲であることにより、活性がより高くなる傾向にある。
酸化物触媒において、X線回折により確認される単一ピークが、18.30°±0.2°、28.20°±0.2°、33.65°±0.2°、及び46.15°±0.2°の各回折角(2θ)の範囲に存在することが好ましい。上記回折角(2θ)の範囲に単一ピークを有することにより、disorder相の存在を確認することができる。
〔担体〕
酸化物触媒は、金属酸化物と、該金属酸化物を担持する担体と、を有することが好ましい。担体を有することにより、酸化物触媒をより高分散化することができ、担持された酸化物触媒に、高い耐摩耗性を与えることができる。
担体としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが挙げられる。一般的にシリカは、それ自身不活性であり、他の担体に比べて、目的生成物に対する選択性を減ずることなく、上述の酸化物触媒に対し良好なバインド作用を有する点で好ましい担体である。シリカ源としてはシリカゾルが好ましい。
原料スラリー等のその他の成分が混合されていない状態におけるシリカゾルの濃度は、好ましくは10〜50質量%であり、好ましくは15〜45質量%であり、好ましくは20〜40質量%である。濃度が上記範囲内であることにより、シリカ粒子の分散性がより優れる傾向にある。
シリカゾルは、目的生成物の選択率の観点から、シリカ1次粒子の平均粒子直径が20〜55nm、好ましくは20〜50nmである少なくとも1種のシリカゾル(a)40〜100質量%と、シリカ1次粒子径の平均粒子直径が5nm〜20nmである少なくとも1種のシリカゾル(b)60〜0質量%と、を含むことが好ましい。
酸化物触媒をより高分散化することができ、担持された酸化物触媒に、高い耐摩耗性を与えることができるという観点から、担体を含むことが好ましい。酸化物触媒中の担体の含有量の上限は、金属酸化物と担体の合計質量に対して、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、酸化物触媒中の担体の含有量の下限は、金属酸化物と担体の合計質量に対して、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。担体の含有量が80質量%以下であることにより、disorder相の含有量に影響を与えにくく、見掛け比重を調整でき流動性がより向上する傾向にある。また、担体の含有量が20質量%以上であることにより、流動床反応用触媒のような強度を要する触媒として用いる場合、耐破砕性及び耐摩耗性等がより向上する傾向にある。
〔酸化物触媒の製造方法〕
本実施形態の酸化物触媒の製造方法は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素Aを含む酸化物触媒を構成する原料と、キレート剤と、を混合して原料スラリーを得る混合工程と、得られた前記原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、得られた前記乾燥体を仮焼成する仮焼成工程と、有し、前記仮焼成工程が、前記乾燥体を100℃から200℃まで徐々に昇温する第1仮焼成工程と、前記乾燥体を200℃から450℃まで徐々に昇温する第2仮焼成工程と、を含む。
上述のように、本発明者らは、disorder相の含有量を10〜60質量%の範囲にコントロールすることに着目し、酸化物触媒の組成比や調製方法を総合的に検討した。
単に、disorder相の結晶の構成元素であるモリブデン、ビスマス、鉄、及びランタノイド元素の含有量を制御しただけでは、disorder相の含有量をコントロールできないが、上記製造方法により、酸化物触媒中のdisorder相の含有量を10〜60質量%の範囲にコントロールすることができる。
本実施形態に係る製造方法により製造された酸化物触媒は、酸化物触媒中のdisorder相の含有量が適切に調整され、アンモニア燃焼率を向上させることができ、アクリロニトリルを高収率で得ることができる。以下、各工程について詳細に説明する。
〔混合工程〕
混合工程は、Mo、Bi、Fe、Co及びランタノイド元素Aを含む酸化物触媒を構成する原料と、キレート剤と、を混合して原料スラリーを得る工程である。また、最終的に得られる酸化物触媒において、Mo12原子に対する、ビスマスの原子比aが1.0≦a≦5.0となり、鉄の原子比bが1.5≦b≦6.0となり、コバルトの原子比cが2.0≦c≦8.0となり、ランタノイド元素Aの原子比dが0.50≦d≦5.0となるように各原料の混合割合を調整することが好ましい。
原料スラリーは、Mo、Bi、Fe、Co、並びにセリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、及びネオジム等のランタノイド元素Aを含むものであれば特に限定されないが、必要に応じて、セシウム、ルビジウム、カリウム、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛を含んでもよい。これら金属元素の触媒原料としては、水又は硝酸に可溶な、アンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、炭酸塩等が挙げられる。金属元素の触媒原料を酸化物として用いる場合は、当該酸化物が水又は有機溶媒に分散された分散液が好ましく、当該酸化物が水に分散された分散液がより好ましい。原料となる酸化物が水に分散されている場合、酸化物の凝集を抑制し、高分散させるために高分子等の界面活性剤が含まれていてもよい。酸化物の粒子径は好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜80nmである。担体を含有する酸化物触媒を製造する場合は、原料スラリーにシリカ原料としてシリカゾルを添加することが好ましい。
disorder相の含有量を10〜60質量%の範囲に制御しやすくするため、上記原料混合スラリーにキレート剤を添加する。キレート剤は、disorder相を構成する元素と錯体を形成し、スラリーに含まれるdisorder相を構成する元素の溶解が促進されると考えられている。disorder相を構成する元素は、スラリー中で、固形分として存在するよりも、溶解して存在した方が、disorder相の結晶の核となる前駆体を小さくすることができる。
キレート剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマー;アミノカルボン酸類、マロン酸、コハク酸等の多価カルボン酸;ヒドラジン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等のアミン類;グリコール酸、りんご酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントラミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸が挙げられる。これらキレート剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
キレート剤の添加量は、得られる酸化物触媒100質量%に対して、好ましくは1.0〜10質量%であり、より好ましくは1.0〜8.0質量%であり、さらに好ましくは2.0〜6.0質量%である。キレート剤の添加量が上記範囲であることにより、disorder相の含有量を10〜60質量%の範囲により制御しやすい傾向にある。また、キレート剤の添加量が10質量%以下であることにより、金属が過還元されることを抑制できる傾向にある。
原料スラリーの調製方法は通常用いられる方法であれば、特に限定されないが、例えば、Moのアンモニウム塩を温水に溶解させた溶液と、Bi、Fe、Co、ランタノイド元素A、及び必要に応じて用いるアルカリ金属を硝酸塩として水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液と、を混合することにより調製することができる。混合後のスラリー中の金属元素濃度は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは20〜35質量%である。金属元素濃度が上記範囲であることにより、触媒の均一性がより優れる傾向にある。
キレート剤をdisorder相の結晶の前駆体により配位しやすくするため、原料スラリーを、ホモジナイザーを用いて混合することが好ましい。金属元素の原料成分とキレート剤が存在するスラリーを、強力な剪断力を有するホモジナイザーを用いて混合することによって、disorder相の結晶の前駆体を粉砕・微細化し、disorder相の結晶の前駆体の表面積を大きくすることでキレート剤が配位し易くなる傾向にある。また、ホモジナーザー処理をすることで、disorder相の結晶の前駆体が小さくなるため、後述する本焼成工程においても大きな結晶が少なく、微結晶が多くなる確率が高くなる。結果としてdisorder相の含有量を10〜60質量%の範囲により制御しやすくなる。さらに、ホモジナイザーを用いることによって、広い温度範囲にわたって安定で、かつdisorder相の結晶の前駆体が均一に高分散したスラリーが得られる傾向にある。
混合工程では、より固形分粒子を微細化してdisorder相の結晶の前駆体にキレート剤を配位させる観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。高圧ホモジナイザーを用いる際の圧力は、好ましくは100〜1500barであり、より好ましくは500〜1300barであり、さらに好ましくは1000〜1200barである。圧力が1500bar以下であることにより、スラリー固形分が破砕されすぎることを抑制できる傾向にある。また、圧力が100bar以上であることにより、固形分粒子を十分に微細化することができる。
スラリー固形分のメジアン径は、好ましくは0.01〜10μmであり、より好ましくは0.5〜7μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。スラリー固形分のメジアン径が10μm以下であることにより、スラリー粘度が向上し、disorder相の結晶子サイズがより小さくなり、disorder相の含有量を10〜60質量%の範囲に制御しやすい傾向にある。また、スラリー固形分のメジアン径が0.1μm以上であることにより、スラリー粘度が低下し、スラリーから噴霧乾燥機へのラインが詰まることを抑制できる傾向にある。
スラリーの撹拌には、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。金属元素の原料成分とキレート剤が存在するスラリーを、強力な剪断力を有する高圧ホモジナイザーを用いて混合・粉砕することによって、広い温度範囲にわたって安定かつdisorder相の結晶の前駆体が均一に高分散したスラリーが得られる傾向にある。
〔乾燥工程〕
乾燥工程では、混合工程で得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体(例えば、乾燥粒子)を得る。乾燥方法は、特に制限はされず、一般に用いられている方法によって行うことができ、例えば、蒸発乾涸法、噴霧乾燥法、減圧乾燥法等の任意の方法で行なうことができる。噴霧乾燥法としては、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式及び高圧ノズル方式等を採用することができる。また、乾燥熱源としては、特に限定されないが、例えば、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。この際、噴霧乾燥装置の乾燥機入口の温度は、好ましくは150〜400℃、より好ましくは180〜400℃、さらに好ましくは200〜350℃である。上記温度範囲であることにより、複合酸化物がより形成されやすい傾向にある。
〔仮焼成工程〕
仮焼成工程では、乾燥工程で得られた乾燥体を仮焼成して仮焼成体を得る。仮焼成の目的は、乾燥体中に残存している水分、硝酸等の除去、アンモニウム塩等である原料及び硝酸塩等である原料に由来して生成する硝酸アンモニウム等、及びキレート剤、水に分散された酸化物を原料にした場合の界面活性剤等の有機物をおだやかに燃焼させることにある。仮焼成の雰囲気は、酸素を含んでいても、不活性ガスでもよい。
硝酸アンモニウムやキレート剤が燃焼する時は発熱を伴う。一気に燃焼させると大きな発熱を伴うため、一気にdisorder相の結晶化が進行してしまい、disorder相の含有量をコントロールしにくい傾向にある。このため、仮焼成工程は、乾燥体を100℃から200℃まで徐々に昇温する第1仮焼成工程と、前記乾燥体を200℃から450℃まで徐々に昇温する第2仮焼成工程とを有する。
第1仮焼成工程では、disorder相の前駆体である乾燥体を100℃から200℃まで徐々に昇温することにより、水分や硝酸、キレート剤の一部をおだやかに燃焼させる。本明細書中、「徐々に昇温」とは、昇温時間にして通常2h〜10hかけて設定温度まで昇温することをいう。昇温速度は常に一定である必要はない。昇温時間は、好ましくは2.5h〜8h、より好ましくは3h〜6hである。その後150〜200℃で1h以上保持し、第1焼成体を得る。
第2仮焼成工程では、第1仮焼成体を200から450℃まで徐々に昇温することにより、disorder相の前駆体に配位しているキレート剤をおだやかに燃焼させる。disorder相の含有量を10〜60質量%の範囲に制御しやすくする観点から、昇温時間は、2h〜10h、好ましくは2.5h〜8h、より好ましくは3h〜6hである。その後、450℃〜500℃で3h以上保持し、仮焼成体を得ることが好ましい。
この2段の昇温工程を設けず、初めから450℃以上の温度範囲で仮焼成を行った場合、disorder相の結晶構造が生成し難くなったり、大きいdisorder相の結晶が生成したりして、disorder相の含有量が制御できない。
〔本焼成工程〕
本焼成工程では、得られた仮焼成体を本焼成して本焼成体を得る。本焼成の目的は、所望の結晶構造を形成し易くすることにある。本発明者らの知見によると、結晶構造は焼成温度と焼成時間との積の影響を受けるため、焼成温度と焼成時間とを適切に設定することが好ましい。本焼成の雰囲気は、酸素を含んでいても、不活性ガスでもよい。
本焼成の温度は、disorder相の結晶を生成させる観点で仮焼成の温度より高くすることが好ましい。これにより、disorder相の含有量を10〜60質量%の範囲により容易に制御することができる。本焼成温度は、結晶を成長させる観点から、好ましくは450℃〜700℃であり、より好ましくは500℃〜650℃であり、さらに好ましくは530℃〜600℃である。また、本焼成時間は、好ましくは0.1〜24時間であり、より好ましくは2〜12時間であり、さらに好ましくは2〜10時間である。このように焼成温度と焼成時間との積を適切にすることにより、disorder相の結晶生成を促すことができる。
さらに、本焼成温度が450℃未満の低温の場合には、結晶構造の生成のために焼成温度及び焼成時間を適切にする観点から、24〜72時間程度の長時間の本焼成を行うことが好ましく、本焼成温度が700℃よりの高温の場合には、得られる酸化物触媒のdisorder相の結晶サイズが大きくなりすぎて触媒活性が下がってしまうのを防ぐ観点から、1時間以下の短時間の本焼成を行うことが好ましい。
上記酸化物触媒の製造方法により、モリブデン、ビスマス、鉄、及びランタノイド元素を含む結晶系からなるdisorder相の含有量が10〜60質量%となる酸化物触媒を得ることができる。
〔アクリロニトリルの製造方法〕
本実施形態のアクリロニトリルの製造方法は、上記酸化物触媒を用いて、流動層反応器内で、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造するアクリロニトリル製造工程を有する。反応は、例えば、所定の反応温度下、流動層反応器内に、プロピレンと、分子状酸素含有ガスと、アンモニアと、を含む混合ガスを導入することにより進行する。
原料のプロピレン及びアンモニアは、必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのものを使用することができる。
また、分子状酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、例えば、純酸素ガス、及びN2O、空気等の酸素を含むガス、酸素を空気と混合するなどして酸素濃度を高めたガスを用いることもできる。このなかでも、工業的観点から空気が好ましい。また、分子状酸素濃度は、混合ガス100体積%に対して、好ましくは1〜20体積%である。
希釈ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気及びこれらの混合ガスが挙げられる。水蒸気は、成形触媒へのコーキングを防ぐ観点からは含まれることが好ましいが、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸等のカルボン酸の副生を抑制するために、できるだけ混合ガス中の水蒸気濃度は低いことが好ましく、混合ガス100体積%に対して、好ましくは0〜30体積%であり、より好ましくは2〜20体積%であり、さらに好ましくは3〜10体積%である。
分子状酸素含有ガスと希釈ガスとの混合比に関しては、体積比で下記不等式の条件を満足することが好ましい。さらに、原料ガス全体における分子状酸素の濃度は1〜20体積%であることが好ましい。
0.01<分子状酸素含有ガス/(分子状酸素含有ガス+希釈ガス)<0.3
分子状酸素源が空気である場合、プロピレンに対するアンモニア及び空気のモル比(プロピレン/アンモニア/空気)は、好ましくは1/(0.8〜1.4)/(7〜12)、より好ましくは1/0.9〜1.3/8〜11の範囲である。
また、反応温度は、好ましくは350〜550℃であり、より好ましくは400〜500℃の範囲である。さらに、反応圧力は、好ましくは微減圧〜0.8MPaである。また、原料ガスと触媒との接触時間は、好ましくは0.5〜20(sec・g/cc)であり、より好ましくは1〜10(sec・g/cc)である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。また、各種物性の評価方法は下記に示すとおりである。
〔酸化物触媒の反応性能評価〕
反応装置として、外径23mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管を用いた。反応温度Tは430℃、反応圧力Pは0.15MPa、充填酸化物触媒量Wは40〜60g、全供給ガス量Fは250〜450mL/sec(NTP換算)とした。なお、接触時間は下記式により求められる。また、供給した原料ガスの組成(プロピレン/アンモニア/空気のモル比)は、1/0.7〜1.4/8.0〜11.0とし、反応ガス中の未反応アンモニア濃度が0.5%以下、未反応酸素濃度が0.2%以下になるよう供給ガス組成を上記範囲内で適宜変更して反応を実施した。原料供給開始より24時間後の反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析し酸化物触媒の反応性能を求めた。
接触時間(sec・g/mL)=(W/F)×273/(273+T)×P/0.10
実施例及び比較例において、反応成績を表すために用いた転化率、選択率、収率、アンモニア燃焼率は次式で定義した。
転化率=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
選択率=(生成した化合物のモル数/反応した原料のモル数)×100
収率=(生成した化合物のモル数/供給した原料のモル数)×100
アンモニア燃焼率=(生成した窒素のモル数)×2/(供給したアンモニアのモル数)×100
〔原料スラリーのメジアン径(平均粒子径)〕
原料スラリーのメジアン径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(Beckman Coulter社製、商品名「LS230」)により粒子径分布を測定し、その体積平均(メジアン径)として求めた。
〔disorder相の含有量(X線回折測定法及びリートベルト解析)〕
リートベルト解析とは、X線回折の結果から評価対象の試料中に含まれている結晶の種類およびその量を解析するものである。リートベルト法としては、例えば、「粉末X線解析の実際 第二版」朝倉書店、中井泉、泉富士夫編集の7章、8章、9章に記載されている方法を用いる。
X線回折測定:解析対象の試料を平坦な試料皿に詰め、光学配置をブラッグ・ブレンターノ法により測定した。入射X線としてCu−Kα線を用い、高次項除去のため、Niフィルターを用いた。このX線回折測定により、2θ=5°以上75°以下の範囲のX線回折パターンを取得した。リートベルト解析において、良好な結果を得るため、角度ステップ0.02°以下、最大強度20000カウント以上とした。
リートベルト解析:リートベルト解析は、中井泉氏により開発されたプログラム「RIETAN−FP」を用いることにより行った。初期結晶構造パラメータとしては以下の条件を用いた。
A相(Disorder相):正方晶系、CaWO4構造(Scheelite構造)
B相(Fe2Mo312相):単斜晶系
C相(β−CoMoO4相):単斜晶系
D相(α−Bi2Mo312相):単斜晶系(Scheelite構造)
リートベルト解析として精密化するパラメータは、測定の光学配置に起因する吸収因子、一定照射幅補正因子、ローレンツ・偏光因子、シフト因子に加え、強度に相当するスケール因子、バックグラウンドパラメータ、プロファイル関数、格子定数とした。精密化がおおよそ済んだところで、一致が悪いピーク強度に関しては、原子占有率を変えることで精密化した。以上の精密化の結果、測定結果とフィティングの結果の残差が4%以下であることを確認し、精密化を完了した。
精密化した結果を用いることで、評価対象の試料中に含まれている結晶の格子定数、および結晶の合計量に対するそれぞれの結晶の量(質量%)を評価した。
[実施例1]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gと、を混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水739.5gに、ヘプタモリブデン酸アンモニウム414.3gを溶解させ、28%のアンモニア水16.7gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス142.9g、硝酸セリウム84.8g、硝酸鉄204.3g、硝酸ルビジウム2.87g、及び硝酸コバルト288.4gを、16.6質量%の硝酸水溶液385.3gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、酒石酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を1200barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が2.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、3h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、590℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.31°、28.21°、33.65°、46.15°に単一ピークを有したことから、disorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=3.8(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.17/8.66とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
また、図3に、実施例1の酸化物触媒のX線回折パターン及びリートベルト解析を行って結晶相の割合を算出した結果を示す。
[実施例2]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、を混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水789.8gに、ヘプタモリブデン酸アンモニウム442.4gを溶解させ、28%のアンモニア水17.8gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス183.1g、硝酸セリウム72.4g、硝酸鉄243.4g、硝酸ルビジウム3.06g、硝酸ニッケル30.7g、及び硝酸コバルト277.2gを、16.6質量%の硝酸水溶液385.1gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、シュウ酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を1200barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が2.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、2h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、580℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.31°、28.25 °、33.68°、46.18°に単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.4(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/=1/1.21/8.94とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[実施例3]
高圧ホモジナイザーを使用しなかったこと以外は実施例1と同じ条件で酸化物触媒を得た。なお、原料スラリーのメジアン径は、7.0μmであった。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.32°、28.22 °、33.67°、46.17°に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.0(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.25/9.09とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[実施例4]
第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで2hかけて昇温した以外は実施例1と同じ条件で酸化物触媒を得た。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.29°、28.19 °、33.63°、46.12°に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.5(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.13/8.65とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[実施例5]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gとを混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水732.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム410.5gを溶解させ、28%のアンモニア水16.5gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス179.3g、硝酸セリウム84.1g、硝酸鉄163.6g、硝酸ルビジウム2.84g、硝酸ランタン17.2g及び硝酸コバルト240.1gを16.6質量%の硝酸水溶液380.0gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、ジエチレントラミンペンタ酢酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を900barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が6.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、3h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、590℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.25°、28.16°、33.58°、46.08°に単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.6(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.14/8.60とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[実施例6]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gとを混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水705.7gにヘプタモリブデン酸アンモニウム395.3gを溶解させ、28%のアンモニア水15.9gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス190.8g、硝酸セリウム113.3g、硝酸鉄112.5g、硝酸ルビジウム1.37g、硝酸マグネシウム24.2、硝酸セシウム0.72g及び硝酸コバルト275.2gを16.6質量%の硝酸水溶液378.7gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、酒石酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を1200barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が2.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、3h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、590℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.33°、28.25°、33.69°、46.19°の範囲に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.9(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.30/9.36とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[比較例1]
酒石酸を用いなかったこと以外は実施例1と同じ条件で酸化物触媒を得た。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.33°、28.24°、33.68°、46.16°に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.8(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.35/9.48とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[比較例2]
仮焼成を行わなかった以外は実施例1と同じ条件で酸化物触媒を得た。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.21°、28.12°、33.56°、46.09°に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.5(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.31/9.49とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[比較例3]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gとを混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水785.0gにヘプタモリブデン酸アンモニウム439.8gを溶解させ、28%のアンモニア水17.7gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス151.6g、硝酸鉄216.9g、硝酸ルビジウム3.04g、及び硝酸コバルト306.1gを16.6質量%の硝酸水溶液388.2gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、酒石酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を1200barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が2.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、3h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、590℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.30°±0.2°、28.20 °±0.2°、33.65°±0.2°、46.15°±0.2°の範囲に、単一ピークを有さなかったことから、disorder相の結晶が生成していないことを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=5.2(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.34/9.39とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[比較例4]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル833.3gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル833.3gとを混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水511.4gにヘプタモリブデン酸アンモニウム286.5gを溶解させ、28%のアンモニア水11.5gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス342.4g、硝酸セリウム105.6g、硝酸鉄173.9g、硝酸ルビジウム1.98g、及び硝酸コバルト119.7gを16.6質量%の硝酸水溶液366.0gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、酒石酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を1200barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が2.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、3h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、590℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.35°、28.26°、33.70°、46.19°に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.7(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.05/9.08とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
[比較例5]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gとを混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水636gにヘプタモリブデン酸アンモニウム356.3gを溶解させ、28%のアンモニア水14.3gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス262.1g、硝酸セリウム160.5、硝酸鉄216.3g、硝酸ルビジウム2.47g、及び硝酸コバルト129gを16.6質量%の硝酸水溶液372.2gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、酒石酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を1200barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が2.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、3h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、590℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.38°、28.27°、33.70°、46.21°に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.8(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.01/9.35とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
また、図4に、比較例5の酸化物触媒のX線回折パターン及びリートベルト解析を行って結晶相の割合を算出した結果を示す。
[比較例6]
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル750gとを混合してシリカゾルの混合液を得た。
約90℃の温水685.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム383.8gを溶解させ、28%のアンモニア水15.4gを添加した(A液)。また、硝酸ビスマス132.4g、硝酸セリウム78.6、硝酸鉄189.3g、硝酸ルビジウム2.66g、及び硝酸コバルト427.5gを16.6質量%の硝酸水溶液387.9gに溶解させた(B液)。
シリカゾルの混合液にA液を加え、混合液を得た。その混合液にB液を入れ、酒石酸を40.2g添加し、約50℃で約3時間程度撹拌混合した。この混合液を1200barで高圧ホモジナイザーを使用して処理し、メジアン径が2.0μmの原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度240℃、出口温度約135℃で噴霧乾燥し、噴霧乾燥体を得た。得られた噴霧乾燥体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、200℃で2時間保持して第1仮焼成体を得た。第2仮焼成として、得られた第1仮焼成体を200℃から450℃まで3hかけて昇温し、3h保持し、仮焼成体を得た。本焼成として仮焼成体を空気中、590℃で2h保持し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表1に示す。X線回折測定をしたところ、回折角(2θ)18.33°、28.24°、33.67°、46.17°に、単一ピークを有したことからdisorder相の結晶が生成していることを確認した。
酸化物触媒の反応評価として、この酸化物触媒50gを用いて、接触時間=4.0(sec・g/mL)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。原料組成(モル比)はプロピレン/アンモニア/空気=1/1.21/9.08とした。反応開始から24時間後の反応評価結果及び、X線回折パターンのリートベルト解析から得られたdisorder相の含有量を表1に示す。
本発明の酸化物触媒は、アクリロニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒として、産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させてアクリロニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、
    モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素Aを含有し、
    前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1.0≦a≦5.0であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6.0であり、前記コバルトの原子比cが2.0≦c≦8.0であり、前記ランタノイド元素Aの原子比dが0.50≦d≦5.0であり、
    前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記ランタノイド元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含み、
    X線回折のリートベルト解析により求められる前記disorder相の含有量が、10〜60質量%である、酸化物触媒。
  2. X線回折により確認される単一ピークが、18.30°±0.2°、28.20°±0.2°、33.65°±0.2°、及び46.15°±0.2°の各回折角(2θ)の範囲に存在する、請求項1に記載の酸化物触媒。
  3. 下記組成式(1)で表される組成を有する金属酸化物を含む、請求項1又は2に記載の酸化物触媒。
    Mo12BiaFebCocdefg (1)
    (式中、Moは前記モリブデン、Biは前記ビスマス、Feは前記鉄、Coは前記コバルト、Aは前記ランタノイド元素Aを示し、Bはマグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、クロム、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Cはカリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜gは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、前記ビスマスの原子比aは1.0≦a≦5.0であり、前記鉄の原子比bは1.5≦b≦6.0であり、前記コバルトの原子比cは2.0≦c≦8.0であり、前記ランタノイド元素Aの原子比dは0.50≦d≦5.0であり、元素Bの原子比eは0≦e<3.0であり、元素Cの原子比fは0.010≦f≦2.0であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
  4. 前記金属酸化物と、該金属酸化物を担持するシリカ担体と、を有し、
    該シリカ担体の含有量が、前記金属酸化物と前記シリカ担体の合計質量に対して、20〜80質量%である、請求項3に記載の酸化物触媒。
  5. モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素Aを含む酸化物触媒を構成する原料と、キレート剤と、を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
    得られた前記原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
    得られた前記乾燥体を仮焼成する仮焼成工程と、
    を有し、
    前記仮焼成工程が、前記乾燥体を100℃から200℃まで徐々に昇温する第1仮焼成工程と、前記乾燥体を200℃から450℃まで徐々に昇温する第2仮焼成工程と、を含む、酸化物触媒の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、流動層反応器内で、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造するアクリロニトリル製造工程を有する、アクリロニトリルの製造方法。
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