以下、本発明の実施形態を図1から図14に示す第1実施例から第10実施例に基づいて説明する。図1から図4は、本発明に係る車両用灯具の第1実施例を示し、図5は、第1実施例からLED光源ユニットを取り除いた車両用灯具の第2実施例を示す。図6〜図12は、第1及び第2実施例の車両用灯具に使用される描画システムを示す。図13は、DRLを有する車両用灯具の第9実施例を示す図であり、図14は、光学機構にAO素子を備えた車両用灯具の第10実施例を示す図である。尚、各図においては、ドライバーが運転席から見たと仮定した車両及び車両用灯具の各方向を(上方:下方:左方:右方:前方:後方=Up:Lo:Le:Ri:Fr:Re)として説明する。
図1と図2に示される第1実施例の車両用灯具1は、右側前照灯の一例を示すものであり、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、透光性を有する樹脂やガラス等で形成されランプボディ2の開口部に取り付けられる前面カバー3とを備える。ランプボディ2と前面カバー3に内側に形成された灯室Sの内側には、板状の支持部材4と、一対のLED光源ユニット(5,6)と、複数のレーザー光を出射して照射光の色を変更可能にした光源であるレーザー光源ユニット7と、レーザー光源ユニット7からのレーザー光を走査して照射先に線や図などの図形を描画する光学機構8と、レーザー光の出射と走査を制御する制御装置9と、エクステンションリフレクター34が収容される。
LED光源ユニット(5,6)は、支持部材4に固定される金属製のブラケット10と、ブラケット10にそれぞれ取り付けられるLED発光素子11、リフレクター12及び透明または半透明の投影レンズ13とを有し、LED光源ユニット5がハイビーム配光パターンを形成し、LED光源ユニット6がロービーム配光パターンを形成するように構成される。リフレクター12は、LED発光素子11を上方から覆い、投影レンズ13は、リフレクター12の前方に配置される。LED発光素子11を出射した光B1は、リフレクター12の反射面12aによって前方に反射され、投影レンズ13及び前面カバー3を通過して車両前方に出射する。
図1と図2に示されるレーザー光源ユニット7と光学機構8は、ロービーム配光パターンを形成するLED光源ユニット6の上方に位置するように支持部材4に取り付けられ、支持部材4は、複数(本実施例では3つ)のエイミングスクリュー14によってランプボディ2に取り付けられる。光学機構8は、支持部材4の前方に突出する固定部33の前端に固定される。制御装置9は、ランプボディ2に固定される。車両用灯具1は、各エイミングスクリュー14を回転させることにより、光軸を水平方向及び鉛直方向に調整される。
図3(a)に示されるレーザー光源ユニット7は、赤色光(符号Rを参照)を発生する第1光源15、緑色光(符号Gを参照)を発生する第2光源16、青色光(符号Bを参照)を発生する第3光源17、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属で形成された放熱部材18、第1集光レンズ20、第2集光レンズ21、第3集光レンズ22、第4集光レンズ23、及び集光部24を有する。放熱部材18は、同じく金属製の支持部材4に取り付けられ、レーザー光源ユニット7は、放熱部材18によって、支持部材4の前面に固定される。
図3(a)に示される第1光源15は、半導体レーザー素子である赤色レーザーダイオード15a及び基板15bから構成され、第2光源16は、半導体レーザー素子である緑色レーザーダイオード16a及び基板16bから構成され、第3光源17は、半導体レーザー素子である青色レーザーダイオード17a及び基板17bから構成される。第1から第3光源(15〜17)の基板(15b〜17b)は、それぞれ放熱部材18に取り付けられる。
尚、レーザー光源ユニット7の光源は、複数光源の合成色の色を変えられる構成であれば、RGBの3つの光源のみを有する構成に限られない。例えば、レーザー光源ユニット7の光源においては、RGBの3つの光源に橙色のレーザーダイオードを追加した4つの光源を備えるようにしたり、青色レーザーダイオ−ドの出射光を黄色の蛍光体に通過させる構成を備えることにより白色光を発生できるようにしてもよい。また、各光源は、レーザーダイオード以外の他のレーザー装置によって構成されてもよい。
図3(a)に示される第1から第4集光レンズ(20〜23)は、それぞれ、コリメートレンズ等で構成される。集光部24は、第1から第3ダイクロイックミラー(25〜27)を有する。各光源(15〜17)から出射した赤色レーザー光R、緑色レーザー光G及び青色レーザー光Bの光路上には、第1から第3集光レンズ(20〜22)と、第1〜第3ダイクロイックミラー(25〜27)とが順に配置される。第1ダイクロイックミラー25は、赤色光を反射しかつ青色光及び緑色光を透過させるように構成され、第2ダイクロイックミラー26は、緑色光を反射しかつ青色光を透過させるように構成され、第3ダイクロイックミラー27は、青色光を反射するように構成されている。
図3(a)に示すように第1光源15から出射した赤色レーザー光Rは、第1集光レンズ20を透過することで平行光に変換された後、第1ダイクロイックミラー25によって第4集光レンズ23に向けて直接反射される。第2光源16から出射した緑色レーザー光Gは、第2集光レンズ21を透過して平行光に変換された後、第2ダイクロイックミラー26によって反射され、第1ダイクロイックミラー25を透過した後、第4集光レンズ23に入射する。第3光源17を出射した青色レーザー光Bは、第3集光レンズ22を透過して平行光に変換された後、第3ダイクロイックミラー27によって第4集光レンズ23に向けて反射され、第2及び第1ダイクロイックミラー(26、25)を順に透過した後、第4集光レンズ23に入射する。
第4集光レンズ23は、レーザー光源ユニット7の筐体の開口部7aに取り付けられる。集光部24で反射された赤色レーザー光R、緑色レーザー光G及び青色レーザー光Bは、合成色からなるレーザー光B2となる。合成されたレーザー光B2は、第4集光レンズ23を透過して平行光に変換された後、光学機構8に向けて出射する。
灯室S内のエクステンションリフレクター34は、開口部34aを有する。LED光源ユニット(5,6)は、LED発光素子11による出射光B1を開口部34aから前方に出射させるため、各投影レンズ13を開口部34aの前方に露出させた状態で支持部材4に取り付けられる。レーザー光源ユニット7及び光学機構8は、共に開口部34aの上方でエクステンションリフレクター34の後方に配置されることで、車両前方から隠蔽されている。レーザー光源ユニット7による出射光B2は、開口部34aの上端縁部34b及びLED光源ユニット(5,6)との間に形成される隙間34cから前方に出射する。
図3(b)に示される光学機構8は、MEMSミラーであり、ベース部37、第1回動体38、第2回動体39、第1トーションバー40、第2トーションバー41、永久磁石42,43、端子部44を有する。板状の第2回動体39の前面には、銀蒸着やメッキなど処理等によって反射部32が形成される。板状のベース部37は、中央に開口部37aを有し、図2に示すように車両用灯具の前後方向に対して下方に傾斜した状態で支持部材4の固定部33に固定される。尚、光学機構8には、MEMSミラー以外にもガルバノミラー等の多様な光学機構を採用出来る。
板状の第1回動体38は、中央に開口部38aを有し、ベース部37の開口部37aに配置される。第1回動体38は、開口部37aの上下端部(37b,37c)に設けられた一対の第1トーションバー40により、ベース部37に対して左右に回動可能に支持される。第2回動体39は、第1回動体38の開口部38aに配置される。第2回動体39は、開口部38aの左右端部(38b,38c)に設けられた一対の第2トーションバー41により、第1回動体に対して上下に回動可能に支持される。
図3(b)に示されるようにベース部37には、第1トーションバー40が延びる方向と直交する位置に、一対の永久磁石42が設けられ、更に第2トーションバー41が延びる方向と直交する位置に、一対の永久磁石43が設けられる。第1及び第2回動体(38、39)にはそれぞれ図示しない第1及び第2のコイルが設けられる。永久磁石42は、第1トーションバー40と直交する磁界を形成し、永久磁石43は、第2トーションバー41と直交する磁界を形成する。図示しない第1及び第2のコイルは、端子部44を介して制御装置9に接続される。
第1コイル及び永久磁石42と、第2コイル及び永久磁石43は、後述する図5の走査用アクチュエータ35を構成する。走査用アクチュエータ35は、制御装置9のアクチュエータ制御部36によって第1コイル及び第2コイルに流れる駆動電流の大きさと向きを制御される。走査用アクチュエータ35は、第1コイルに流れる駆動電流の大きさと向きに基づいて第1回動体38をベース部37に対して上下に回動させ、かつ更に第2コイルに流れる駆動電流の大きさと向きに基づいて第2回動体39を第1回動体38に対して左右に回動させることにより、反射部32の向きを上下左右に変化させる。
図3(b)に示すように光学機構8は、図3(a)の第4集光レンズ23から出射したレーザー光B2を前方に出射する出射端である第2回動体39の反射部32において前方に反射させる。反射部32の発光部32a(反射点)において前方に反射されたレーザー光B2は、第2回動体39の反射部32を上下左右に往復回動させることにより、車両前方を走査する。第1実施例の車両用灯具1においては、LED光源ユニット(5,6)が、切り替えられることにより、所定形状のロービーム及びハイビームの白色配光パターンを形成する。また、光学機構8は、ロービーム配光パターンを補光する白色配光パターンや車両前方の路面や建造物等にドライバーの注意などを喚起する図形パターンを白色以外のレーザー光B2で走査する。
尚、図4には、第2実施例の車両用灯具45が記載されている。第2実施例の車両用灯具45は、第1実施例の車両用灯具1からLED光源ユニット(5,6)とエクステンションリフレクター34を省略したものであり、他の構成は、全て第1実施例の車両用灯具1と共通する。第2実施例の車両用灯具45においては、白色光以外のレーザー光によるドライバーへの注意喚起用の図形描画に加え、ロービーム及びハイビームの白色配光パターンもまた、レーザー光源ユニット7及び光学機構8で走査された白色レーザー光B2によって形成される。尚、第2実施例の車両用灯具45においては、レーザー光源ユニット7と光学機構8の組み合わせを2組設けることにより、ロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンを別々に形成させても良いし、レーザー光源ユニット7と光学機構8の組み合わせを3組以上設けてもよい。
次に図5により、制御装置9を説明する。制御装置9は、灯具ECU(電子制御装置)51、ROM52、RAM53等を有する。灯具ECU51は、アクチュエータ制御部36及びレーザー光源制御部54を有する。ROM52には、各種制御プログラムが記録され、灯具ECU51は、ROM52に記録された制御プログラムをRAM53において実行し、各種制御信号を生成する。
レーザー光源制御部54は、第1光源15、第2光源16及び第3光源17による各種レーザー光(R,G,B)の出射強度、点灯及び消灯を光源毎に独立に制御することにより、多彩な合成色のレーザー光を生成する。また、アクチュエータ制御部36は、光学機構8の走査用アクチュエータ35を制御し、合成光からなるレーザー光B2によって車両前方を走査し、所定形状の図形を車両の周囲の路面や建造物等に描画する。尚、前記所定形状の図形には、合成された白色レーザー光による車両用前照灯の配光パターンや、多彩な合成色により、自車両または他車両のドライバーや歩行者等に注意を喚起するためのマークや文字等が含まれる。
ここで、図6(a)(b)及び図7により、合成されたレーザー光による車両前方への図形描画を説明する。図6(a)は、第1実施例の車両用灯具1による図形描画の説明図であり、図6(b)は、第2実施例の車両用灯具45による図形描画の説明図である。図6(a)(b)に示される第1及び第2実施例の光学機構8は、それぞれ車両前方の矩形の走査領域(符号Sc1及びSc2)内において、上下の位置を少しずつ変えて、車両の左方向から右方向に向けた走査を繰り返し行うことが出来る。図6(b)に示す第2実施例の車両用灯具45には、水平方向から上方に向かう光をカットするエクステンションリフレクター34が光学機構8の前方に設けられていない。従って、第2実施例の光学機構8は、第1実施例の光学機構8の走査領域Sc1よりも上方に広い走査領域Sc2を走査出来ることにより、ハイビーム用の配光パターンや、より遠くの路面や障害物への図形描画を行うことが出来る。
符号S1は、光学機構8による走査線の奇跡を示す。図6(a)(b)に示すように、光学機構8は、反射部32(図3(b)を参照)を左方から右方に回動させて、左方から右方への走査を行った後、反射部32を左斜め下方に回動させて、最初の走査開始位置から微小距離d1だけ下方にずれた次の走査開始位置に反射部32の向きを戻し、再び左方から右方へ走査する動作を繰り返し行う。
また、図5に示されるレーザー光源制御部54は、図6(a)(b)における走査線S1を光学機構8によって左方から右方に移動させる際に第1から第3光源(15〜17)の点灯または消灯を行い、光学機構8によって走査線S1を右方から左斜め下の次の走査開始位置に戻す際に第1から第3光源(15〜17)を全て消灯させる。図6(a)(b)に記載した走査線S1の点線部分は、第1から第3光源(15〜17)を全て消灯させた範囲を示し、走査線S1の実戦部分は、第1から第3光源(15〜17)の一部または全部を点灯させ、レーザー光による図形を路面に描画する範囲を示す。尚、光学機構8における第1から第3光源(15〜17)の点灯または消灯制御については、走査線S1を右から左に移動させながら行っても良いし、左右往復させながら行っても良いし、本実施例のように左から右へ移動させる場合にのみ行うとは限らない。
図6(a)においては、車両の前方に第1白色光によるロービーム配光パターンLbと、ドライバーにレーンマークM1(二点鎖線で記載された部分)の位置を認識させる白色以外の色のラインL1をレーザー光で路面R1に描画した図を示す。例えば、ラインL1は、レーンマークM1上または、レーンマークM1に隣接した赤色等の線として描画される。尚、レーンマークM1等の位置の検出方法については、後述する。
第1実施例の車両用灯具1におけるロービーム配光パターンLbは、LED光源ユニット5による光B1と、白色に合成されて走査されたレーザー光B2とを合成して形成され、第2実施例の車両用灯具45におけるロービーム配光パターンLbは、白色に合成されて走査されたレーザー光B2のみによって形成される。
例えば、図6(a)において、光学機構8による左方から右方への走査を行う場合、レーザー光源制御部54は、まず、描画を行わないP1からP2までの区間において第1から第3光源(15〜17)を全て消灯させる。次に、レーザー光源制御部54は、ロービーム配光パターンLbを路面R1及び車両前方の物体に描画するP2からP3までの区間において、第1から第3光源(15〜17)の制御によって合成された白色レーザー光を発生させ、次に赤色レーザー光によるラインL1を路面に描画するP3からP4までの区間において、第2及び第3光源(16,17)による緑色及び青色レーザー光を消灯させると共に第1光源の照射強度を調節して所定の輝度の赤色レーザー光を発生させる。更にレーザー光源制御部54は、P4からP5の区間において、第1から第3光源(15〜17)に白色レーザー光を発生させ、P5からP6の区間において、第1光源に赤色レーザー光を発生させ、P6からP7の区間において、第1から第3光源(15〜17)に白色レーザー光を発生させ、描画終了後のP7からP8までの区間において第1から第3光源(15〜17)を全て消灯させる。
光学機構8が左から右方向へのこのような走査を高速で繰り返すことにより、レーザー光源ユニット7によって合成された白色レーザー光は、LED光源ユニット5による光と共に(第1実施例の場合)、または単独で(第2実施例の場合)前照灯のロービーム配光パターンLbを路面及び車両前方の物体に描画し、赤色レーザー光は、レーンマークM1の位置を示す2本のラインL1を路面に描画する。尚、レーザー光源ユニット7及び光学機構8においては、所定の走査により白色光のロービーム配光パターンを形成しても良いし、ラインL1の色には、赤色だけでなく、第1から第3光源(15〜17)のレーザー光を合成した多種多様な色を採用出来る。また、ドライバーに注意を促す図形描画の手段については、ラインL1に限られず、後述するような多種多様なマークが考えられる。
尚、白色のロービーム配光パターンLb及びハイビーム配光パターン(図示せず)の内側領域に赤色のラインL1を描画する場合においては、図6(b)に示されるように、路面R1上において、赤色のラインL1の左右両側に暗線形状の暗部D1を形成してラインL1を暗部D1の内側に描画することが望ましい。赤色のラインL1は、白色のロービーム配光パターンLbとの間に暗部D1を設けられることによってロービーム配光パターンLb内における輪郭が際立つため、視認性が向上する。尚、図6(b)は、図を見やすくするため、図6(a)のレーンマークM1を省略して暗部D1を追記した図である。
図6(b)及び図7により、白色のロービーム配光パターンLbの内側領域において、暗部D1を形成した内側に明部となる赤色のラインL1を形成する手順を説明する。図7における符号(R,G,B)は、第1から第3光源(15〜17)の各点灯状況及び消灯を示す。符号WとRは、光源の出力の大きさを示し、出力Rは、出力Wよりも照射強度が強い。各光源は、出力Wで全て点灯することによって白色レーザー光を発生させる。赤色レーザー光を発生させる第1光源15は、消灯されず所定のタイミングで出力Rまで照射強度を増強される。第2及び第3光源(16,17)は、「OFF」の位置において消灯される。
まず、図5のレーザー光源制御部54は、図6(b)に示す描画を行わないP11からP12までの区間と、P21からP22において第1から第3光源(15〜17)を全て消灯させ、P12からP21の区間において、白色レーザー光によるロービーム配光パターンLb、暗部D1及び赤色レーザー光による赤色のラインL1を路面や車両前方の物体に描画する。
図6(b)及び図7に示すように、レーザー光源制御部54は、P12からP13までの区間において、第1から第3光源(15〜17)を出力Wで点灯しながら白色レーザー光を発生させてロービーム配光パターンLbを形成する。
レーザー光源制御部54は、P13からP14の区間において、第1光源15の照射強度を変化させず、第2及び第3光源(16,17)のみを消灯させて、白色のロービーム配光パターンLb内に暗部D1を形成する。具体的には、LED光源ユニット5と白色に合成されたレーザー光によってロービーム配光パターンLbを形成する第1実施例の車両用灯具1においては、白色が減光されて暗部D1が形成される。また、白色レーザー光のみによってロービーム配光パターンLbを形成する第2実施例の車両用灯具45においては、白色が消灯されて暗部D1が形成される。また、レーザー光源制御部54は、P14からP15の区間において、第1光源15の出力を出力WからRまで増強させることにより、暗部D1に隣接する赤色レーザー光によるラインL1を形成する。
レーザー光源制御部54は、また、P15からP16の区間において、第1光源15の出力を再び出力RからWまで減少させることにより、赤色のラインL1に隣接する暗部D1を形成し、P16からP17までの区間において、第2及び第3光源(16,17)を再び出力Wで点灯させることによって同出力の第1光源と共に白色レーザー光を発生させ、暗部D1に連続する白色のロービーム配光パターンLbを形成する。その結果、白色のロービーム配光パターンLbの内側には、暗部D1に囲まれた赤色のラインL1が鮮明に描画される。
尚、レーザー光源制御部54は、また、上記と同一の制御を第1から第3光源(15〜17)に行うことにより、P17からP18の区間において、暗部D1を形成し、P18からP19の区間において赤色のラインL1を形成し、P19からP20の区間において暗部D1を形成し、P20からP21までの区間において、白色のロービーム配光パターンLbを形成する。
第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)においては、レーザー光源ユニット7が上記のような所定のタイミングで所定のレーザー光を発生しつつ、光学機構8が左から右方向への上記のような所定の走査を上下方向にスライドしながら高速で繰り返すことにより、前照灯としての所定形状の白色配光パターンやドライバー等に注意を促す所定形状の図形を多彩な色のレーザー光によって路面や車両前方の物体に描画する。
また、図5に示される灯具ECU51には、画像処理装置55、雨滴センサー56、ナビゲーションシステム57、速度計58、道路情報通信システム59、ターンシグナルランプスイッチ64、ステアリング動作検出機構65、アクセル開度検出機構71等が接続される。画像処理装置55には、車載カメラ60や道路監視カメラ61、等が接続される。
車載カメラ60には、自車または他車に車載されて車両周辺を動画または制止画で撮影するカメラ等が含まれ、道路監視カメラ61には、交差点に配置される交差点カメラや、道路の近辺に設置されて、路面状況、歩行者、自転車、バイク、自動車等の車両、障害物等を動画または静止画で撮影する監視カメラなどが含まれる。画像処理装置55は、インターネット等の通信回線を介して道路監視カメラ61に接続され、道路監視カメラ61による映像及び画像データを取得する。画像処理装置55は、車載カメラ60や道路監視カメラ61等によって撮影された映像等を解析処理したデータとして灯具ECU51に送り、雨滴センサー56は、車両走行時の雨量に関するデータ信号を灯具ECU51に送る。
ナビゲーションシステム57は、例えば、図示しないGPSや地図データ等を有することにより、自車両の現在位置に関するデータ信号を灯具ECU51に送る。また、灯具ECU51は、速度計58から自車両の走行速度に関する信号を受ける。道路情報通信システム59は、走行中の道路の雨量や、道路の凍結状況等、走行中の路面状況に関するデータをインターネット等の通信回線を介して受け、灯具ECU51に送る。
灯具ECU51は、上記の各データに基づく道路上の自車両等に関する状況
や、路面状況を解析した上で、自車両や他車両のドライバーに注意を促す所定の図形を路面等に描画するように、レーザー光源ユニット7と光学機構8を制御する。尚、第1実施例及び第2実施例の車両用灯具(1,45)を利用して自車両や他車両のドライバーに注意を促す所定の図形の描画する手段については、以下に列挙する。
図5と図8により、自車両の走行速度から自動で停止可能距離を算出し、停止可能な車間距離を示すマーク等をレーザー光で路面に描画する、第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)の描画システムに関する第3実施例を説明する。
走行中の車両のドライバーは、前方を走行中の他車両(以降は、単に前方車両とする)が急停止等によって急減速した場合において、追突すること無く自車を安全に停止出来るよう、前方車両との間に適切な車間距離を取って車両を走行させなければならない。しかし、道路に前方車両との車間距離を認識させる目標となるべき対象物が設けられていないような場合、ドライバーは他車両との車間距離を認識出来ない。また、車両の制動距離は、自車両の速度によって変化し、更に降雨や凍結などの路面状況によっても変化する。従って、実際に走行するドライバーは、前方車両との車間距離と、前方車両に追突せずに安全に停止出来る制動距離を認識しづらい。前方車両との車間距離を計測手段には、ミリ波レーダーや車載カメラによる画像解析システムを用いる方法がある。しかし、ミリ波レーダーは、車間距離150m程度の前方車両しか検知できず、車載カメラもまた遠方になるほど車両を捕らえにくくなる点で計測可能な車間距離に限度がある。
上記問題を考慮し、本実施例の描画システムにおいては、走行中の自車の制動距離を自車両の走行速度や路面状況に応じて自動的に計測した上で、前方車両との間に取るべき必要な車間距離を走行中のドライバーに認識させる図形をレーザー光によって路面描画する。
本実施例の描画システムにおいては、自車速度及び走行中の路面への降雨量や凍結の有無に応じた制動距離を算出した上で、自車両を緊急制動した際に実際に停止する位置、即ち車両から制動距離分前方の位置にレーザー光によるマーク等を描画するプログラムを図5のROMに記録しておく。灯具ECU51は、速度計58によって得られる自車速度に応じた制動距離を自動的に算出する。
算出される制動距離については、例えば、ゆるやかにブレーキを踏んで車両を停止出来る第1の制動距離と、通常の力でブレーキを踏んで車両を停止出来る第2の制動距離と、全力でブレーキを踏んで車両を停止出来る限界制動距離からなる第3の制動距離等、停止可能なマージンを考慮した複数の制動距離を算出することが望ましい。第1から第3の制動距離については、例えば、車両が乾燥した路面を時速60kmで走行する場合、灯具ECU51が、停止可能な最短の制動距離(第3の制動距離)を40m、第2の制動距離を50m、第1の制動距離を60m等と算出し、上記第1から第3の制動距離は、自車速度の変化に応じてそれぞれ増減させる。
また、降雨でウエット状態になった路面や、凍結の恐れがある路面を車両が走行する場合、灯具ECU51が、第1から第3の制動距離を乾燥時より長く算出するようにすることがより望ましい。具体的には、例えば、灯具ECU51が、走行中の道路の降雨量に関するデータを雨滴センサー56や道路情報通信システム59から受け、走行中の路面の凍結の有無に関するデータを道路情報通信システムから受けることにより、第1から第3の制動距離を乾燥時より長く算出するようにする。
例えば、車両が降雨等によるウエットの路面を時速60kmで走行する場合、灯具ECU51が、第3の制動距離を50m、第2の制動距離を70m、第1の制動距離を90m等として乾燥路面を走行する際よりも長い制動距離を算出するようにし、更に得られる降雨量データの変化に応じて各制動距離をそれぞれ増減させる。また、例えば、車両が凍結のおそれがある路面を時速60kmで走行する場合、灯具ECU51が、第3の制動距離を80m、第2の制動距離を120m、第1の制動距離を160m等としてウェットの路面を走行する際よりも更に長い制動距離を算出するようにする。
次に、図8により、前方車両との間に取るべき必要な車間距離を走行中のドライバーに認識させる図形をレーザー光によって路面描画する具体的な手段を説明する。符号R2は走行中の道路、符号Myは自車両、符号Otは他車両を示し、符号FrとReは、車両の前後方向を示す。一例として、自車両は、乾いた路面を時速60kmで走行しているものとする。
図5において、例えば、灯具ECU51から信号を受けたアクチュエータ制御部36は、時速60kmで走行する際に算出された第1から第3の制動距離に応じて、例えば、図8(a)に示すように、自車両Myの前方60mから車両前方40mに位置する路面R2上に矩形状の第1マーク62aを描画し、自車両Myの前方40mから車両前方20mに位置する路面R2上に矩形状の第2マーク62bを描画し、自車両Myの先端部(符号0の位置)から車両前方20mに位置する路面R2上に矩形状の第3マーク62cを描画するように、レーザー光を受けた光学機構8を動作させる。
尚、灯具ECU51から信号を受けたレーザー光源制御部54は、例えば、第1マーク62aを描画する際に緑色または青色のレーザー光を発生させ、第2マーク62bを描画する際に黄色のレーザー光を発生させ、第3マーク62cを描画する際に赤色のレーザー光を発生するようにする等、車間距離の安全度に対応したマーク毎に色を変化させることが望ましい。
第1マーク62aは、他車両Otが第1マーク62aに侵入することで、車間距離が第1制動距離より短くなったことを示し、第2マーク62bは、他車両Otの侵入によって車間距離が第2制動距離より短くなったことを示し、第3マーク62cは、他車両Otに侵入されると追突を回避出来ないレベルに車間距離が短くなったことを示すマークである。
ドライバーは、視認可能な第1マーク62aよりも他車両Otが前方にいるように車間を取れば、他車両Otが急停車等しても安全に止まれることを認識する。また、ドライバーは、他車両Otが第1から第3マーク(62a〜62c)のいずれかに侵入したことを視認すると、以下のような認識によって車間をもう少し長く取るべきことを知覚する。ドライバーは、車間距離が減少して他車両Otが第1マーク62aに侵入すると、他車両Otが急停車した際に追突を回避する制動に注意が必要になることを認識し、他車両Otが第2マーク62bに侵入すると、他車両Otが急停車した際の追突を回避するために全力の急制動が必要になる可能性があることを認識し、他車両Otが第3マーク62cに侵入すると、急制動をかけても追突を回避出来ないことを認識する。路面に描画された第1から第3のマーク(62a〜62c)は、ドライバーに前方の他車両Otが急停車した場合に回避可能な車間距離を認識させ、追突事故を減少させる。
尚、第1から第3マーク(62a〜62c)の描画範囲や描画位置は、自車両の速度や走行中の路面R2の状況(乾燥時、降雨時、凍結時等)に応じて変化させるが、描画範囲や描画位置については、路面状況に関するデータを得た灯具ECU51が、自動的に変化させても良いし、「乾燥路面モード」「ウェットモード」「凍結路面モード」等の灯具ECU51に連動したモード切り替えボタンを設けてドライバーに手動で切り替えさせてもよい。
第1から第3のマーク(62a〜62c)の幅は、一例として自車両Myと同じ長さに形成しているが、路面上の描画を最低限の範囲に限定するために、各マークの幅は、自車両Myの半分以下とすることが望ましい。
また、第1から第3のマーク(62a〜62c)については、他車両Otがマークの領域に侵入して車間距離の危険度が増していることをドライバーに認識させる形状であれば、多種多様な図形や文字等を採用してもよい。例えば、矩形の代わりに第1から第3の制動距離の位置に幅方向に描画された戦にしても良いし、矩形のマーク(62a〜62c)については、中空の枠体形状または中実の四角形としても良い。また、図8(b)に示すように、矩形の枠体からなる第1から第3のマーク(62a〜62c)の内側にそれぞれ符号(63a〜63c)にそれぞれ示す○、△、×の図形や「注意」「危険」「追突」等の文字を表記してもよい。
また、本描画システムにおいては、他車両Otが第1から第3マーク(61、63)に侵入する際に異なる音を発生させる警報音発生機構を設け、例えば、他車両Otが第1マーク62aに侵入すると、検知音を発し、第2マーク62bに侵入すると注意喚起を促す音を発し、第3マーク62cに侵入すると警告音を発生するようにする。
次に、図5と図9(a)により、自車両の車線変更を隣接レーンの後続車ドライバーに知らせるマーク等をレーザー光で路面に描画する、第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)の描画システムに関する第4実施例を説明する。
自車両が片側2車線以上の道路を走行中に車線変更を行う場合、隣接レーンにおいて自車両と並走する他車両のドライバーは、併走する自車両のターンシグナルランプが見えないために、車線変更を認識出来ずに追突事故や接触事故を起こす場合がある。本実施例は、レーザー光によって車線変更を知らせる図面を路面に描画することにより、隣接する車線の後続ドライバーに自車両の車線変更を認識しやすくするものである。
図5に示される灯具ECU51は、左右いずれのターンシグナルランプがONにされたかターンシグナルランプスイッチ64の動作を検出し、またはステアリング動作検出機構65によってステアリングが左右いずれの方向に回されたかを検出した信号に基づいて、路面に所定の色のレーザー光による所定形状のマークを形成する。尚、白色の配光パターンの内側に図形を描画する際のレーザー光の色は、白色にせず、赤色等にすることが望ましい。
例えば、図9(a)の符号Myは、2車線道路の左側の車線R11を走行する自車両を示し、符号Otrは、右側の車線R12のやや後方を並走する他車両Otrを示す。
例えば、自車ドライバーが右側の車線R12に車線変更しようとすると、図5に示す灯具ECU51は、右方向のターンシグナルランプの点灯またはステアリングが右折方向に回動することを検知して、レーザー光源ユニット7と光学機構8を駆動させる。レーザー光源ユニット7と光学機構8は、車線R11の自車両Myの前方に描画される前方を向いた第1矢印マーク66と、左右の車線(R11,R12)をまたいで描画される右斜め前方を向いた第2矢印マーク67と、右側の車線R12に描画される前向きの第3矢印マーク68とを連続して描画する。また、更に第1から第3矢印マーク(66〜68)左右には、各マークの向きに沿って延びる一対のライン(69,70)を描画する。
自車両Myのターンシグナルランプが見えない位置で隣接する車線R12を並走する他車両Otrのドライバーは、自車両Myのターンシグナルランプが見えなくても、右方向への車線変更を示す第1から第3矢印マーク(66〜68)とライン(69,70)を他車両Otrの前方の路面に視認出来ることによって、自車両Myの車両変更を認識するため、追突事故や接触事故を回避出来る。
尚、右車線から左車線に車線変更する場合(図示せず)、灯具ECU51は、右車線を走行する自車両の前方から、車線を区切るレーンマークL2にまたがった状態で連続する、第1から第3マーク(66〜68)及びライン(69,70)と左右対称のマークを形成する。また、第1から第3矢印マーク(66〜68)は、左右方向への車線変更を並走する他車両の前方に描画する図形であれば、多種多様な色や形状を有するマークまたは文字等を採用出来る。
次に、図9(b)により、自車両の車幅を知らせるマーク等をレーザー光で自車両の前方の路面に描画する、第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)の描画システムに関する第5実施例を説明する。
夜の道路を走行するドライバーは、自車両の車幅と車両前方の障害物との位置関係を認識出来ない場合、障害物に接触事故を起こすおそれがある。走行中の自車両の前方に車幅を示す目印を設けることが出来れば、ドライバーは、その目印を視認することで障害物との接触事故を未然に回避出来る。本実施例は、図10に示すように、レーザー光源ユニット7と光学機構8を動作させ、自車両Myの前方に車両の左右側端部(My1、MY2)に沿って車両の前方にレーザー光によるライン(L3,L4)を形成する。一対のライン(L3,L4)は、自車両Myの車幅間隔で車両前方の路面や障害物に描画される。従って、ドライバーは、図9(b)に示されるように、描画されるライン(L3,L4)が自車両Myの前方の障害物Msに接触ないようにステアリングを操作することで、障害物Msとの接触事故を未然に回避出来る。
尚、白色の配光パターンの内側に図形を描画する際のレーザー光は、白色を避けて赤色等にすることが望ましく、赤色のライン(L3,L4)を図6(b)に示すような暗部D1の内側に設けることが更に望ましい。また、ライン(L3,L4)については、ドライバーが車幅を認識出来るものであれば、代わりに矩形の図形を描画しても良い。
次に、図5と図10(a)(b)により、交差点近辺における車両や歩行者等の通行に関する注意喚起用のマーク等をレーザー光で路面に描画する、第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)の描画システムに関する第6実施例を説明する。
図10(a)は、対向車線の右折車に対向した状態で自車両が右折する場合の図を示している。符号Myは自車両、符号Ottは対向右折車線の他の右折車両、符号Otsは、対向車線の他の直進車両、符号Huは、横断中の歩行者、符号R3は、交差点の路面をそれぞれ示す。図10(a)に示すように右折レーンが存在する交差点で右折しようとすると、対向車線の右折車がブラインドになって、対向直進車Otsの存在が見えにくくなる。自車両Myのドライバーによる対向直進車Otsの認識の遅れは、右直事故を発生させる原因となり、横断歩道上の歩行者Huの認識の遅れは、歩行者を巻き込む事故の原因となる。
また、図10(b)は、左折しようとする自車両Myの左側方から二輪車Bkがすり抜けようとしているところを示す図である。すり抜けようとする二輪車のライダーにおいては、自車両Myの左側のターンシグナルランプ(図示せず)の点灯に気がつかないことがあり、自車両Myのドライバーは、すり抜けようとする二輪車に気がつかずに自車両Myを左折させて、巻き込み事故を起こす危険性がある。
本実施例においては、自車両の車載カメラや交差点カメラと連動し、対向車線の直進車両、横断歩道を横断する歩行者Huや自転車等(図示せず)及び自車両の左後方からすり抜けようとする二輪車Bkの存在に関する注意喚起を行うマーク等をレーザー光で自車両の周辺の路面R3に描画する。
まず、本実施例の描画システムにおいて、図5の画像処理装置55は、自車両Myの車載カメラ60や、交差点カメラである道路監視カメラ61によって撮影された映像や画像データを解析処理する。また、灯具ECU51は、画像処理装置55の解析データに基づいて、対向車の現在地や速度、横断歩道上の歩行者Huや自転車等(図示せず)の位置を算出する。また、灯具ECU51は、ターンシグナルランプスイッチ64の動作またはステアリング動作検出機構65によるステアリング操作を検出することにより、車両が左右どちらに曲がろうとしているか検出する。灯具ECU51は、レーザー光源制御部54とアクチュエータ制御部36を介してレーザー光源ユニット7と光学機構8をそれぞれ動作させ、左右所定の色のレーザー光によって所定形状のマークを車両が曲がろうとする進行方向の路面上に描画する。
例えば、図5の灯具ECU51が右側ターンシグナルの点灯に連動して自車両Myの右折動作を検出し、かつ画像処理装置55による交差点近辺の映像または画像データから図10(a)に示すような対向直進車Otsの接近が検出されたことで安全に曲がれない状況や、横断歩道上に横断中の歩行者Huや自転車等(図示せず)を検出した場合、灯具ECU51は、レーザー光源ユニット7と光学機構8により、自車両Myの前方や車両が進行しようとする右斜め前方の路面に「進行不能」を意味するマークStを路面R3に描画する。「進行不能」を意味するマークには、例えば「×」「(「止まれ」を意味する)手のマーク」「STOP」「Wait」等があり、危険をしらせる色の赤色レーザー光によって描画されることが望ましい。
また、灯具ECU51が画像処理装置55によるデータから対向直進車Otsが来ていないことや、既に通過したことによって交差点を安全に右折できる状況を検出し、かつ横断歩道上に横断中の歩行者Huや自転車等が検出しない場合、レーザー光源ユニット7と光学機構8は、自車両Myの前方や車両が進行しようとする右斜め前方の路面R3に「進行可能」を意味するマークを描画する。「進行可能」を意味するマークには、例えば「○」「(「右折可能」を意味する)矢印」「GO」等のマークがあり、安全を知らせる緑色や青色のレーザー光で描画されることが望ましい。
自車両Myのドライバーは、「進行可能」を知らせるマークを前方の路面R3に視認することによって、交差点を安全に右折でき、「進行不能」を知らせるマークを前方に視認することによって、対向直進車Otsとの右直事故や歩行者Huの巻き込み事故を回避出来る。
尚、「進行不能」および「進行可能」を知らせるマークは、右斜め前方の対向車線R13上に描画されることが望ましい。その場合、対向直進車Otsのドライバーは、走行中の車線上に描画されたマークを視認することで、右折車Myの有無を認識出来、横断歩道上の歩行者Hu等もまた、横断歩道近くの路面に描画されたマークを視認して右折車Myの有無を認識出来るため、事故が更におきにくくなる。また、例えば、灯具ECU51は、横断歩道上の歩行者等が車両後方または前方のいずれかから横断しているかを映像または画像データから解析し、レーザー光源ユニット7お呼び光学機構8においては、歩行者等の横断方向をドライバーに認識させるマークを描画するようにすることが望ましい。例えば、歩行者の横断方向を示すマークには、例えば、「進行不能」を示す赤色のマークの横に、横断者有りを示す人方のマークと、横断方向を示す矢印等のマークを併記することが望ましい。
また、「進行不能」を示すマークについては、例えば、自車両Myの車速が早いほど、加速度が大きいほど、またはアクセルの踏み白が大きい程、マークを大きく描画することによって、危険度が高いことをドライバーに知らせることが望ましい。また、本実施例の描画システムにおいては、「進行不能」や「進行可能」を示す路面描画に表記することに加えて進行の可否を知らせる音声案内を併用することも考えられる。また、各マークは、レーザー光を点灯し続けることで描画されてもよいし、明滅させることで描画されてもよい。
また、例えば、灯具ECU51が左側ターンシグナルの点灯に連動して自車両Myの左折動作を検出し、かつ画像処理装置55による交差点近辺の映像または画像データから自車両Myの後方から接近する二輪車Bkを検出した場合、レーザー光源ユニット7と光学機構8は、自車両Myの左斜め後方の路面に「すり抜け不可」を意味するマークSstを描画する。「すり抜け不可」を意味するマークSstには、例えば「×」「(「止まれ」を意味する)手のマーク」「STOP」「Wait」等があり、危険をしらせる色の赤色レーザー光によって描画されることが望ましい。また、同時に自車両Myの左斜め前方には、自車両Myがこれから左折することを意味する左向きの矢印などからなる「左折マークML」を青色や緑色のレーザー光などによって描画することや、左斜め後方から二輪車Bkが接近することを自車両Myのドライバーに知らせる「BIKE!」の文字表記等からなる「接近マークStb」を赤色のレーザー光などによって知らせることが望ましい。
二輪車Bkのライダーは、「すり抜け不可」のマークSstを視認することで、すり抜けの危険性を認識でき、更に前方の自車両Myの「左折マークML」を視認することで、左折に巻き込まれる危険性を併せて事前に認識出来る。また、自車両Myのドライバーもまた、進行方向である左前方に二輪車の「接近マークStb」を視認することで、左折時に二輪車を巻き込む危険性を事前に認識することが出来る。その結果、左折車両と二輪車との巻き込み事故が未然に防止される。
次に、図5、図11(a)〜(c)により、ドライバーに自車両における速度の出し過ぎを抑制させ、または渋滞解消のために速度の増加の喚起するためのマーク等をレーザー光で路面に描画する、第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)の描画システムに関する第7実施例を説明する。
走行中の車両の速度超過は、斜線逸脱による事故や、他車両への追突事故を増大させる原因となる。また、走行中の車両速度が遅すぎる場合、道路には、渋滞が発生する。本実施例の描画システムにおいては,このような課題を鑑みて、路面や道路上の建造物等にレーザー光で描画されたマークをドライバーに視認させることにより、減速または加速を促すようにしている。
まず、図11(a)から(c)においては、符号R4が路面を示し、符号L5が路面R4上の一対のレーンマークを示し、符号GLが道路左側のガードレールを示し、符号(M51〜M54)がレーザー光によって描画されたマークをそれぞれ示す。マーク(M51〜M53)は、路面の前後方向に断続的に描画される複数の矩形状のマークであり、マークM54は、ガードレールに対して前後方向に断続的に描画される複数の矩形状のマークである。
図5の灯具ECU51は、レーザー光源制御部54とアクチュエータ制御部36を介してレーザー光源ユニット7と光学機構8をそれぞれ動作させ、図11(a)から(c)に示すように前後方向に断続的に描画される複数の矩形状のマーク(M51〜M53)を路面R4の一対のレーンマークL5に接する位置に描画し、かつマークM54をガードレールGL上に描画する。その結果、自車両Myのドライバーは、マーク(M51〜M54)を視認することによって一対のレーンマークL5及びガードレールGLの設置位置及び設置方向を正確に認識することにより、自車両Myを車線から逸脱しないように運転出来る
また、図5の灯具ECU51は、地図データやGPSを有するナビゲーションシステム57による走行中の自車両の位置データや速度計の速度データから自車両の現在の速度を算出する。また、灯具ECU51は、車載カメラ60の映像等を画像処理装置55で処理することによって得られた道路近辺のガードレールGLなどの建造物のデータから、図11(a)〜(c)のマーク(M51〜M53)を描画する位置を算出する。更に灯具ECU51は、雨滴センサーによって得られる走行中の道路の雨量、道路情報通信システムから得られる道路の凍結状況、車載カメラ60で撮影した道路標識を解析して得たり、ナビゲーションシステム57や道路情報通信システム59等から得られた走行中の道路の制限速度や渋滞を解消すべき速度情報から、自車両Myが走行中の道路を走行すべき速度を算出する。
実際の走行速度が走行中の道路を走行すべき速度と異なる場合、灯具ECU51は、自車両Myに対する路上の物体の相対速度と異なる速度でマーク(M51〜M54)を後方に移動させるようにレーザー光源ユニット7と光学機構8をそれぞれ動作させることによって、走行中にドライバーに車両の加速または減速を促すことができる。
具体的には、ドライバーに車両の減速を促したい場合、灯具ECU51が、路面R4及びガードレールGLに描画したマーク(M51〜M54)を走行中の自車両Myの速度よりも速い速度で自車両の進行方向と逆方向に移動させるようにし、ドライバーに車両の加速を促したい場合、灯具ECU51が、路面R4及びガードレールGLに描画したマーク(M51〜M54)を走行中の自車両Myの速度よりも遅い速度で路面R4及びガードレール上GLに描画したマーク(M51〜M54)を車両の進行方向と逆方向に移動させるようにする。
以下に示す例は、時速60kmで走行中のドライバーに時速40kmまで減速することを促す場合「例1」と、時速40kmで走行中のドライバーに時速60kmまで加速すること促す場合の「例2」を示すものである。
まず「例1」を説明する、時速60kmで走行する車両Myのドライバーには、図11(a)に示すように道路上に固定されたガードレールGLが、相対速度VGL=時速60kmで後方に移動しているように見える。例えば、降雨で走行中の路面状態が滑りやすくなっていたり、走行中の道路の法定速度が時速40kmであって、時速40kmで走ることが望ましい場合、灯具ECU51は、レーザー光源ユニット7と光学機構8を動作する信号を発生させ、路面に対してV1=時速80kmの速度で車両の後方、つまり車両の進行方向と逆方向に移動するようにマーク(M51〜M54)を路面とガードレールにそれぞれ描画させる。その場合、マーク(M51〜M54)を視認した自車両Myのドライバーは、自車両Myの実際の速度より時速20km分速く走っているように感じるため、自車両のこれ以上の加速を抑制し、または減速すべきと感じやすくなる。このように、マーク(M51〜M54)は、ドライバーに走行中の車両速度を抑制すべきと感じさせる作用を生じ、交通事故を未然に防ぐ効果を生じる。
次に「例2」を説明する、時速40kmで走行する車両Myのドライバーには、図11(a)のガードレールGLが、相対速度VGL=時速40kmで後方に移動しているように見える。例えば、道路上の各車両の速度不足によって渋滞が生じており、渋滞を解消させるために時速60kmで走ることが望ましい場合、灯具ECU51は、レーザー光源ユニット7と光学機構8を動作させ、路面に対してV2=時速20kmの速度で車両の後方に移動するようにマーク(M51〜M54)を路面R4とガードレールGLにそれぞれ描画させる。その場合、マーク(M51〜M54)を視認した自車両Myのドライバーは、自車両Myの実際の速度より時速20km分遅く走っているように感じるため、自車両を加速すべきと感じやすくなる。この場合、マーク(M51〜M54)は、ドライバーに走行中の車両を加速させるべきと感じさせる作用を生じ、渋滞を解消させる効果を生じる。
また、図11(a)に示される路面R4に描画される複数のマーク(M51〜M53)は、自車両Myから近い位置ほど前後方向の長さを大きく描画され、遠い位置になるほど前後方向の長さを徐々に小さく描画される。ここで、図11(a)〜(c)においては、自車両Myから同等の距離だけ前方に描画されたマーク(M51〜M53)の前後長さをそれぞれ(L51〜L53)とした場合、L52<L51かつL53>L51となるようにマーク(M51〜M53)を描画した。
走行時のドライバーの視野は、自車両Myの速度を上げるほど狭くなり、視認出来る物体の進行方向に対する長さは、速度を上げるほど短く見える。従って、図5の灯具ECU51がレーザー光源ユニット7と光学機構8を動作させて、図11(a)(b)に示すように自車両Myから所定距離だけ離れた位置に形成されたマークM51を前後方向長さの短いマーク52に変化させた場合、ドライバーは、実際の速度よりも速く走っているように感じるため、自車両のこれ以上の加速を抑制しまたは減速すべきと感じやすくなる。一方、図11(a)(c)に示すように自車両Myから所定距離だけ離れた位置に形成されたマークM51を前後方向長さの長いマーク53に変化させた場合、ドライバーは、実際の速度よりも遅く走っているように感じるため、自車両を加速すべきと感じやすくなる。
このようにマーク(M51〜M54)は、走行中の車両の速度よりも早い速度で車両の進行方向と逆方向に移動するように路面に描画されることにより、そして描画されるマーク(M51〜M53)は、前後長さを走行中により短く調節されることにより、それぞれドライバーに車両のこれ以上の加速を抑制すること、または減速を促す作用を生じる。一方、マーク(M51〜M54)は、走行中の車両よりも遅い速度で車両の進行方向と逆方向に移動するように路面に描画されることにより、そして描画されるマーク(M51〜M53)は、前後長さを走行中により長く調節されることにより、ドライバーに速度の加速を促すことにより、ドライバーに車速をコントロールさせる作用を生じる。
尚、マーク(M51〜M53)は、自車両Myに近いほど前後に長く、自車両Myから離れるほど前後に短く形成されるため、他車両Otの近くに描画されたマークの前後長さをより長く変化させた場合、ドライバーには、前方を走行する他車両Otとの車間が短くなったように感じられる。従って、雨滴センサー56によって検知された降雨等を考慮して前方の他車両Otとの車間距離をより長くドライバーに取らせたい場合には、走行中にマーク(M51〜M53)の前後長さをより長く変化させ、前方の他車両Otとの車間が実際よりも短くなったように感じさせることにより、車間距離をより長く取るように促すことが望ましい。
尚、マーク(M51〜M54)を白色の配光パターンの内側に描画する場合、レーザー光の色は、白色を避けて赤色等にすることが望ましく、白色配光パターンの内側に形成されるマーク(M51〜M54)は、図6(b)に示すような暗部D1の内側に設けられることが更に望ましい。また、マーク(M51〜M54)の形状は、矩形に限られない。
尚、ここで、図6(a)(b)及び図11(a)〜(c)に示された、ライン(L1,L5)やラインL1を内側に描画された暗部D1をレーンマークM1に沿って描画する手段について補足説明する。
カーブなどの道路において、自車両が隣接車線にはみだすことは、他の車線を走行する車両と衝突事故に繋がるために危険である。しかし、不慣れな道路を運転するドライバーは、進行方向の道路がどの方向にどの程度曲がるか事前に知らないことにより、はみ出し事故を起こしやすい。図6(a)(b)及び図11(a)〜(c)に示されるレーザー光によるライン(M1,L5)を直線のみならず、カーブに形成されたレーンマークM1に沿って描画した場合、ドライバーは、進行方向のカーブの有無や曲がり具合などをいち早く視認して把握出来るため、慣れない道路を走行してもカーブ等で他の車線にはみ出しにくくなる。
図5に示す灯具ECU51は、車載カメラ60や交差点カメラである道路監視カメラ61で撮影されたデータによる画像処理装置55の解析結果から図5及び図11のレーンマーク(M1,L5)を検出し、検出結果に基づいてレーザー光源ユニット7と光学機構8を動作させ、レーンマーク(M1,L5)の上またはこれに隣接する位置にライン(L1、M51〜M53)を描画する。尚、描画するラインの色は、白色配光パターンの内側に描画することを考慮する場合、白色以外の赤色、黄色または青色などで形成することが望ましい。
また、例えば、居眠り運転等によって、ターンシグナルランプスイッチ64が操作されていないにも関わらず走行中の車両がレーンマーク(M1,L5)に接近したり、ステアリング動作検出機構65によって図示しないステアリングのふらつきが検出された場合においては、灯具ECU51が、レーザー光源ユニット7を動作させて赤色や黄色のライン(L1、M51〜M53)点滅動作させること等によってドライバーに車線から逸脱する危険性を知らせることが望ましい。
また、図5に示す、灯具ECU51は、速度計58やナビゲーションシステム57等から算出される自車両の速度と、車載カメラ60等で検出されたレーンマーク(M1,L5)に基づくカーブの曲がり具合から進行方向に存在するカーブを曲がる際の危険度を図6,図11に示されるライン(L1、M51〜M53)の色の変化等によってドライバーに予め注意喚起することが望ましい。例えば、カーブへの侵入速度が適切で容易に曲がれる場合には、ライン(L1、M51〜M53)を青色のレーザー光で描画し、侵入速度を少し減速した方が良い場合には、ライン(L1、M51〜M53)を黄色で描画し、侵入速度を大幅に落とした方が良い場合には、ライン(L1、M51〜M53)を赤色で描画し、全力でブレーキをかけなければ、他の車線に確実にはみ出す場合には、赤色のライン(L1、M51〜M53)を速い間隔で点滅させること等が望ましい。
尚、ドライバーがアクセルを急に大きく踏み込んだ場合、灯具ECU51においては、アクセル開度検出機構71による検出結果を受けて、例えばライン(L1、M51〜M53)を赤色に変化させたり、点滅させることにより、急加速することを注意喚起するようにすることが望ましい。
次に、図5及び図12(a)(b)により、レーザー光によって車両周辺に格子状のグリッド線図を描画することにより、路面上の建造物及び障害物の有無やその形状、並びに道幅等を容易に認識させる第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)の描画システムに関する第8実施例を説明する。図12(a)(b)の符号R5は、路面を示し、符号PGは、路面に格子状に描かれたグリッド線図を示し、符号PH及びPLは、LED灯具ユニット(5,6)による車両前方の白色光によるハイビーム配光パターン及びロービーム配光パターンを示し、符号C1は道路の側溝、符号C2は路面の陥没孔、符号C3はトラック等の車両から路上へ落下した落下物を示し、符号C4は、トンネルTNの前壁を示す。
図5の灯具ECU51は、レーザー光源ユニット7と光学機構を動作させることにより、図12(a)(b)に示すレーザー光による格子状のグリッド線図PGを車両前方の路面R5やトンネルの前壁C4に描画する。グリッド線図PGは、路面の凹みである側溝C1等や突起である落下物C3等に照射されることで湾曲または寸断されることにより、側溝C1等の形状を際立たせ、ドライバーにそれらの形状と位置を把握しやすくさせる。尚、グリッド線図PGは、配光パターン(PH,PL)の内側だけでなく外側に描画されてもよい。但し、配光パターン(PH,PL)の内側に描画する場合、グリッド線図PGは、白色以外の線とし、かつ暗部の内側に描画することが望ましい。
尚、レーザー光は、直視した人に非常に強い眩しさを感じさせる。また、前照灯の配光パターンは、白色光のみによって形成されなければいけない、という法規上、図3(b)に示される光学機構8の発光部32a(前方への光の出射端)は、白色光以外のレーザー光を反射することを考慮し、出来るだけ車両の前方から直視出来ないようにすることが望ましい。これらの観点から、図2に示すように光学機構8の前方に配置されるエクステンションリフレクター34は、発光部32aの上方から少なくとも水平位置まで開口部34aを覆うように、灯室S内に配置され、反射部32は、図2及び4に示すように斜め下方にレーザー光B2を反射するように斜め下方に向けられる。
この場合、車両用前照灯が一般的に人の目線より低い位置(例えば1m以下)に配置されやすいことと、水平方向より上方に向かうレーザー光B2の光束がエクステンションリフレクター34の上端縁部34bによってカットされることから、歩行者及び対向車のドライバーは、発光部32aを直視出来ない。その結果、車両前方の歩行者や対向車のドライバーは、レーザー光による眩しさを感じず、白色以外のレーザー光を反射する発光部32aが前照灯の光源を形成しているように認識しない。
また、第1実施例の車両用灯具1においては、前面カバー3において、LED光源ユニット(5,6)から出射した光B1の光束が通過する領域に反射部32を向けることが望ましい。その場合レーザー光B2は、前面カバー3に付着した汚れや傷などの凹凸によって乱反射しても、配光パターン形成用の輝度の強い白色光によって乱反射をかき消されるため、白色以外のレーザー光B2の乱反射が前方の歩行者等によって視認されない。
尚、図1に示す車両用灯具の第1実施例の車両用灯具1のLED光源ユニット(5,6)の光源は、図2のような単数のLED発光素子11によって構成せず、複数のLED発光素子によって構成しても良い。また、車両用灯具(1、45)には、図13に示すように複数のLED光源を面状またはライン上(図示せず)に配置して構成されたDRL(Daytime Running Lamps)を配置しても良い。
図13によりDRLを有する第9実施例の車両用灯具を説明する。図13の車両用灯具73は、ランプボディ74,前面レンズ75,エイミングスクリュー78と支持部材79を介してランプボディ74の内側に傾動可能に取り付けられたハイビーム及びロービーム形成用の2つのLED光源ユニット(76,77)、複数のLED発光素子81を有するDRLユニット80、図示しないレーザー光源ユニット、上下左右に傾動可能な反射部83を有する光学機構82を有する。光学機構82においては、図示しないレーザー光源ユニットからの光を反射部83によって反射してなる発光部84が、複数のLED発光素子81から前方に露出するようにランプボディ74に対して反射部83を配置する。そうすることにより、白色光以外のレーザー光を反射することで発光する発光部84は、輝度の高い複数のLED発光素子81によって発光色をうち消されるため、前方の歩行者や対向車のドライバーに視認されなくなる。
図10は、第1及び第2実施例の車両用灯具(1,45)に使用したMEMSミラーに代えて使用されるAO素子に関する第10実施例の説明図である。AO素子(Acousto-Optic-Device)は、音響光学素子ともよばれ、高周波電気信号を負荷されることによって周期的な屈折率の変化が生じる。高周波電気信号を付与されたAO素子を通過したレーザー光は、直線状に走査される。本実施例においては、図14に示すように高周波電気信号の付与手段(92,93)にそれぞれ接続された2つのAO素子(90,91)を直列に配置している。1つのAO素子によってレーザー光を屈折させられる範囲、即ち直線状の走査範囲には、限度があるが、複数のAO素子を直列に配置すると、AO素子90を通過した光は、AO素子91によって再度屈折させられるため、走査可能な範囲が広くなる。
尚、AO素子(90.91)の隣には、光の入射線方向を示す直線L6に対して90度回転させた状態でもう一組の同じAO素子(90,91)を直列に配置することが望ましい(もう一組のAO素子は図示せず)。その結果、例えば、一組目のAO素子(90,91)に入射して上下方向に線上に走査されたレーザー光B2は、90度回転して配置された二組目のAO素子(図示せず)に入射することで左右方向に走査される。このように90度回転した状態で直列に配置された複数のAO素子は、上下左右方向の面状のレーザー光の走査を可能にする。
MEMSミラー等の機械的な光学機構においては、集光レンズやダイクロイックミラー等が振動を受けて共振することにより、レーザー光による描画がゆがむおそれがある。しかし、AO素子を使用した光学機構は、振動による影響を受けにくいため、ゆがみの少ない路面描画を行う点で望ましいと言える。