JP2015121631A - 吸音材 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、吸音性能に優れる吸音材の提供を目的として、通気性表皮材を通気性基材に積層した吸音材が検討されており、例えば、特開2008−8997号公報(以降、特許文献2と称することがある)には、吸音母材(通気性基材に相当)の嵩密度や厚さを増やすことなく、広い周波数帯域で良好な吸音特性を実現可能な複合吸音材として、ポリエステル繊維系の多孔質材料からなる吸音母材の、音波が入射する側に不織布(通気性表皮材に相当)を積層してなる複合吸音材が開示されている。
なお、特許文献2には、単位厚さあたりの通気抵抗が0.3〜7×104N・s/m4の吸音母材を採用できること、そして、単位厚さあたりの通気抵抗が0.5〜5×104N・s/m4の不織布を採用できることが開示されているものの、吸音母材と不織布における最適な単位厚さあたりの通気抵抗の組み合わせについては言及されていない。
「通気性表皮材を通気性基材に積層した吸音材であって、
前記通気性表皮材の単位厚さあたりの通気抵抗が、前記通気性基材の単位厚さあたりの通気抵抗の、20倍以上2514倍未満の大きさである、吸音材。」
である。
そして、通気性表皮材の単位厚さあたりの通気抵抗が、通気性基材の単位厚さあたりの通気抵抗の20倍以上2514倍未満の大きさである場合に、通気性表皮材の積層により吸音材の吸音性能を効果的に向上できることを見出した。
そのため、本発明によって、吸音性能に優れる吸音材を提供できる。
布帛は構成繊維として接着繊維を含んでいてもよい。接着繊維を含むことで、布帛の圧縮硬さを調整して吸音材の吸音性能を効果的に向上でき、また、布帛から繊維が脱離するのを抑制して意図しない変形の発生に伴う吸音性能の低下が生じるのを防止でき好ましい。接着繊維の種類は適宜選択するが、例えば、芯鞘型接着繊維、サイドバイサイド型接着繊維、あるいは、全溶融型接着繊維を採用することができる。
なお、本発明でいう「平均繊維径」は、繊維を含んだ構造物(繊維を含んだ通気性表皮材や、繊維を含んだ通気性基材など)の主面や断面の電子顕微鏡写真を分析し、無作為に選んだ100本の繊維の繊維直径の算術平均値であり、繊維直径は繊維の断面積と同じ面積をもつ円の直径をいう。
通気性表皮材の厚さは、2.5μm〜12mmであるのが好ましく、0.5〜2mmであるのが最も好ましい。また、通気性表皮材の目付は、例えば、1.75〜3000g/m2であるのが好ましく、40〜150g/m2であるのが最も好ましい。
通気性基材の厚さは、2〜100mmであるのが好ましく、4〜20mmであるのが最も好ましい。通気性基材の目付は、例えば、50〜3000g/m2であるのが好ましく、70〜1000g/m2であるのが最も好ましい。
なお、本発明において厚さとは、測定対象物の主面からもう一方の主面に向けて、主面上へφ29mmの面積あたり0.0157Nの荷重を付加した時の、測定対象物における荷重が作用する方向の長さを高精度デジタル測長機で測定した値をいう。
また、本発明において目付とは、測定対象物の一番広い主面における1m2あたりの質量をいう。
(通気度の測定方法)
1.JIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の「通気性」A法(フラジール形法)において、通気度の測定に使用可能なフラジール型通気度試験機を準備する。なお、前記フラジール型通気度試験機における、通気部分の大きさは直径70mmの円形である。
2.測定対象(通気性表皮材や通気性基材)を打ち抜き、直径29mmの円板状の試験片を採取する。
3.中央に直径29mmの円形の開口を有する平板(縦:100mm、横:100mm)の中央に、円筒(外径:35mm、内径:29mm、高さ20mm)の一方の端部が接続一体化した形状の、治具を準備する。
4.治具における円筒部分の内部に試験片を収め、円筒部分と試験片との接触部分にOリング(外径:29mm、内径:25mm)を配置することで、通気度の測定時に円筒部分と試験片の接触部分に通気が生じないようにする。
5.フラジール型通気度試験機における通気部分の中心と、治具に納められている試験片の中心とが重なるようにして、フラジール型通気度試験機における通気部分の上に治具を設置する。なお、この時、フラジール型通気度試験機と治具の接触部分に通気が生じないようにする。
6.差圧が125Paとなる条件で、通気度の測定を行う。なお、このときの試験片の通気部分は直径25mmの円形形状(Oリングの内周形状)である。
7.測定結果を7.84倍し換算することで、測定対象の通気度(単位:cm3/cm2/s)を算出する。なお、7.84倍とは、フラジール型通気度試験機の通気部分(直径70mm)の面積を、試験片の通気部分(直径25mm)の面積で除した値である。
σ:単位厚さあたりの通気抵抗(単位:N・s/m4)
ΔP:差圧(125Pa)
Q:通気度(単位:cm3/cm2/s)
t:厚さ(単位:mm)
上述した数値範囲内において、吸音性能に優れる吸音材を提供できるようにこの値は適宜調整する。そして、前記値が大きいほど効果的に吸音率を向上できる傾向がある。
1.吸音材の厚さと、吸音材を構成している通気性基材の厚さ(以下、通気性基材の本来厚さと称する)を測定する。
2.吸音材の厚さの値から通気性基材の本来厚さの値を引き、その値を通気性表皮材の厚さとする。
3.吸音材を上述した(通気度の測定方法)へ供して通気度を測定する。
4.吸音材から通気性基材の主面と平行をなす方向に通気性基材を切り取り、通気性基材の試験片を採取する。そして、試験片の厚さを測定し、試験片を上述した(通気度の測定方法)へ供して通気度を測定する。
5.吸音材の通気度の値、および、試験片の通気度の値を以下の式に代入することで、吸音材の通気抵抗、および、試験片の通気抵抗を算出する。
R:通気抵抗(単位:N・s/m3)
ΔP:差圧(125Pa)
Q:通気度(単位:cm3/cm2/s)
6.算出された試験片の通気抵抗の値を、通気性基材の本来厚さにおける通気抵抗の値に換算する。
7.吸音材の通気抵抗の値から、通気性基材の本来厚さにおける通気抵抗の値を引き、その値を通気性表皮材の通気抵抗とする。
8.通気性表皮材の通気抵抗の値から、通気性表皮材の通気度を算出する。
特に、通気性表皮材と通気性基材が蜘蛛の巣状(ウェブ状)のバインダで接着した態様であると、通気性表皮材と通気性基材の間に存在するバインダが通気性表皮材の通気性に影響を及ぼし難く、通気性表皮材と通気性基材の間の通気性が低下し難い傾向があることから、例えば1000Hz以上の高周波帯域など広い周波数帯域において優れた吸音性能を発揮する吸音材となり、好ましい。
吸音材の厚さは、2.5〜112mmであるのが好ましく、4.5〜22mmであるのが最も好ましい。
また、吸音材の目付は、例えば、90〜6000g/m2であるのが好ましく、110〜1150g/m2であるのが最も好ましい。
そして、吸音材の通気度は、1.6〜400cm3/cm2/sであるのが好ましく、3〜272cm3/cm2/sであるのが最も好ましくい。
(通気性表皮材の準備)
溶融したポリプロピレン樹脂を紡糸液として使用し、メルトブロー法を用いて紡糸すると共に捕集してなる、メルトブロー不織布A〜Cを準備した。
・メルトブロー不織布A(平均繊維径:1.2μm、通気度:5.3cm3/cm2・s、厚さ:1.1mm、単位厚さあたりの通気抵抗:2.1×106N・s/m4、目付:83g/m2)
・メルトブロー不織布B(平均繊維径:3.4μm、通気度:45.2cm3/cm2・s、厚さ:1.4mm、単位厚さあたりの通気抵抗:2×105N・s/m4、目付:84g/m2)
・メルトブロー不織布C(平均繊維径:9.8μm、通気度:143.8cm3/cm2・s、厚さ:1.4mm、単位厚さあたりの通気抵抗:6.2×104N・s/m4、目付:85g/m2)
また、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解させたポリエーテルスルホン樹脂溶液を紡糸液として使用し、静電紡糸法を用いて紡糸すると共に捕集してなる、静電紡糸不織布を準備した。
・静電紡糸不織布(平均繊維径:0.4μm、通気度:1.3cm3/cm2・s、厚さ:0.1mm、単位厚さあたりの通気抵抗:8.8×107N・s/m4、目付:5g/m2)
(通気性基材の準備)
ポリエステル繊維(繊度:0.9dtex、繊維長:38mm)50質量%とポリエステル中空繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:64mm)20質量%および芯鞘型接着繊維(芯部:ポリエステル樹脂、鞘部:共重合ポリエステル樹脂、繊度:4.4dtex、繊維長:51mm)30質量%とを混合した繊維群を、エアレイ装置に供することで繊維を絡み合わせて乾式不織布a〜bを調製した。
・乾式不織布a(通気度:34cm3/cm2・s、厚さ:10.6mm、単位厚さあたりの通気抵抗:3.5×104N・s/m4、目付:505g/m2)
・乾式不織布b(通気度:130cm3/cm2・s、厚さ:9.8mm、単位厚さあたりの通気抵抗:9.8×103N・s/m4、目付:245g/m2)
また、ポリエステル繊維(繊度:22dtex、繊維長:76mm)50質量%とポリエステル繊維(繊度:17dtex、繊維長:51mm)10質量%およびモダアクリル繊維(繊度:17dtex、繊維長:64mm)40質量%を混合した繊維群をカード機へ供した後、ニードルパンチ処理を施すことで乾式ウェブを調製した。
そして、乾式ウェブに塩ビ系バインダをスプレー塗布および含浸して乾式不織布c(通気度:463cm3/cm2・s、厚さ:10.5mm、単位厚さあたりの通気抵抗:2.6×103N・s/m4、目付:307g/m2)を調製した。
(吸音材の調製)
表1に記載する組み合わせの通気性表皮材と通気性基材を、接着することなく積層して吸音材を調製した。
なお、比較例4、6−7では、通気性基材単体を吸音材として使用した。
実施例2で使用した通気性表皮材と通気性基材の積層面同士の間に、蜘蛛の巣状の共重合オレフィン系ホットメルト樹脂(目付:5g/m2、軟化点:153℃)を介在させ、通気性表皮材と通気性基材を接着一体化し、実施例7の吸音材(厚さ:10.9mm、通気度:5.2cm3/cm2/s)を調製した。
蜘蛛の巣状の共重合オレフィン系ホットメルト樹脂(目付:20g/m2、軟化点:153℃)を介在させ、通気性表皮材と通気性基材を接着一体化したこと以外は実施例7と同様にして、実施例8(厚さ:10.9mm、通気度:5.3cm3/cm2/s)の吸音材を調製した。
なお、実施例7−8で調製した吸音材を構成する、通気性基材と接着成分が付着した通気性表皮材の通気度は、上述した方法によって算出した。また、通気度の算出を行うため吸音材から切り取った通気性基材の厚さ(特定厚さ)は、5.0mmであった。
測定の結果、調製した実施例7−8の吸音材から算出した、通気性表皮材および通気性基材の、各々の厚さ、通気度、単位厚さあたりの通気抵抗は、吸音材を調製するために使用した、通気性表皮材および通気性基材の、各々の厚さ、通気度、単位厚さあたりの通気抵抗と同じ値であった。
(通気性基材の準備)
ポリエステル繊維(繊度:0.9dtex、繊維長:38mm)20質量%とモダアクリル難燃繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:52mm)60質量%および芯鞘型接着繊維(芯部:ポリエステル樹脂、鞘部:共重合ポリエステル樹脂、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)20質量%とを混合した繊維群を、エアレイ装置に供することで繊維を絡み合わせて乾式不織布d(通気度:36cm3/cm2・s、厚さ:9.6mm、単位厚さあたりの通気抵抗:3.6×104N・s/m4、目付:512g/m2)を調製した。
また、ポリエステル繊維(繊度:0.9dtex、繊維長:38mm)50質量%とモダアクリル難燃繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:52mm)30質量%および芯鞘型接着繊維(芯部:ポリエステル樹脂、鞘部:共重合ポリエステル樹脂、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)20質量%とを混合した繊維群を、エアレイ装置に供することで繊維を絡み合わせて乾式不織布e〜fを調製した。
・乾式不織布e(通気度:70cm3/cm2・s、厚さ:7.2mm、単位厚さあたりの通気抵抗:2.5×104N・s/m4、目付:216g/m2)
・乾式不織布f(通気度:143cm3/cm2・s、厚さ:5.1mm、単位厚さあたりの通気抵抗:1.7×104N・s/m4、目付:95g/m2)
(吸音材の調製)
表2に記載する組み合わせの通気性表皮材と通気性基材の積層面同士の間に、蜘蛛の巣状の共重合オレフィン系ホットメルト樹脂(目付:5g/m2、軟化点:153℃)を介在させ、通気性表皮材と通気性基材を接着一体化し、吸音材を調製した。
なお、実施例9−11で調製した吸音材を構成する、通気性基材と接着成分が付着した通気性表皮材の通気度は、上述した方法によって算出した。また、通気度の算出を行うため吸音材から切り取った通気性基材の厚さ(特定厚さ)は、3.0mmであった。
測定の結果、調製した実施例9−11の吸音材から算出した、通気性表皮材および通気性基材の、各々の厚さ、通気度、単位厚さあたりの通気抵抗は、吸音材を調製するために使用した、通気性表皮材および通気性基材の、各々の厚さ、通気度、単位厚さあたりの通気抵抗と同じ値であった。
なお、比較例8−10では、通気性基材単体を吸音材として使用した。
実施例9−11の吸音材を、JIS K6400−6:2004「軟質発泡材料−物理特性の求め方−第6部:燃焼性」に記載の水平燃焼特性の測定へ供した。
その結果、実施例9−11の吸音材は以下に記載の難燃性のクラスHF−1を満足するものであり難燃性に優れていた。
上述のようにして調製した吸音材から、直径29mmの円形の試験片を採取した。
そして試験片をJIS A1405−1:2007に準拠した測定方法に供し、試験片の垂直入射吸音率(%)を測定することで、500〜6300Hzの周波数帯域における吸音材の吸音率の挙動を測定した。
なお、実施例の吸音材から採取した試験片を測定する際には、音源側に通気性表皮材が露出するように吸音材の設置方向を調整した。
500〜6300Hzの周波数帯域において、調製した各吸音材が発揮した吸音率をまとめ、このようにしてまとめたデータをグラフ化し、図1、3、5、7、9に図示した。
500〜6300Hzの周波数帯域において、実施例1および比較例1−3で調製した吸音材が発揮した吸音率を比較例4で調製した吸音材の吸音率で除することで、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上比率を算出した。このようにして算出したデータをまとめ、グラフ化し図2に図示した。
500〜6300Hzの周波数帯域において、実施例2−3および比較例5で調製した吸音材が発揮した吸音率を比較例6で調製した吸音材の吸音率で除することで、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上比率を算出した。このようにして算出したデータをまとめ、グラフ化し図4に図示した。
500〜6300Hzの周波数帯域において、実施例4−6で調製した吸音材が発揮した吸音率を比較例7で調製した吸音材の吸音率で除することで、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上比率を算出した。このようにして算出したデータをまとめ、グラフ化し図6に図示した。
500〜6300Hzの周波数帯域において、実施例2および7−8で調製した吸音材が発揮した吸音率を比較例6で調製した吸音材の吸音率で除することで、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上比率を算出した。このようにして算出したデータをまとめ、グラフ化し図8に図示した。
500〜6300Hzの周波数帯域において、実施例9で調製した吸音材が発揮した吸音率を比較例8で調製した吸音材の吸音率で除することで、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上比率を算出した。同様に、実施例10で調製した吸音材が発揮した吸音率を、比較例9で調製した吸音材の吸音率で除することで、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上比率を算出した。同様に、実施例11で調製した吸音材が発揮した吸音率を、比較例10で調製した吸音材の吸音率で除することで、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上比率を算出した。このようにして算出したデータをまとめ、グラフ化し図10に図示した。
そして、1000Hz以上の高周波帯域において「吸音性能の向上比率」の数値が2以上となった吸音材を、通気性表皮材の積層による通気性基材の吸音性能の向上に優れた、吸音性能に優れる吸音材であると評価した。
Claims (1)
- 通気性表皮材を通気性基材に積層した吸音材であって、
前記通気性表皮層の単位厚さあたりの通気抵抗が、前記通気性基材の単位厚さあたりの通気抵抗の、20倍以上2514倍未満の大きさである、吸音材。
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