JP6493276B2 - 吸音材 - Google Patents
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(1)上記した従来の内装基材、複合強化繊維基材および3層積層シートを吸音材として使用しても、十分な吸音性は得られなかった。
(2)ナノオーダーの繊維径を有するナノ繊維を例えば90%以上の高空隙率で不織布化すると、吸音性能が劇的に改善した。特に100nm以下の繊維径を有するナノ繊維を用いると断熱性能も劇的に改善した。しかしながら、ナノ繊維のみからなる高空隙率の不織布は、弾性が過度に低いため、変形後の復元が困難であったり、形状の維持が困難であったりした。その結果、取り扱いが困難である、という新たな課題が生じた。
(3)そこでガラス繊維などの無機繊維のみからなる不織布を吸音材として使用すると、十分な吸音性は得られなかった。このため、無機繊維のみからなる不織布において、無機繊維の繊維径を低減すると、低周波数から高周波数までの広い周波数域で吸音性が向上するが、中周波数域(1kHz周辺)において、共振により、吸音性が低下し、十分な吸音性が得られない、という新たな課題が生じた。
前記ナノ繊維が92〜99.9%の空隙率を有する、吸音材に関する。
本発明の吸音材はまた、変形復元性および形状維持性に優れている。
本発明の吸音材はさらに、優れた断熱性を有する。
本発明の吸音材は、マイクロオーダーの繊維径を有するマイクロ繊維およびナノオーダーの繊維径を有するナノ繊維を含み、不織布形態を有している。不織布とは、複数の繊維を互いに絡み合わせたまたは結合させたランダム配向のシート状繊維群のことである。
(ナノ繊維付着型吸音材の製造方法)
ナノ繊維付着型吸音材は、例えば、マイクロ繊維不織布を一旦、製造した後で、当該マイクロ繊維不織布に、比較的短いナノ繊維の分散液を含浸させ、乾燥することにより得ることができる。
ナノ繊維絡合型吸音材は、例えば、マイクロ繊維およびナノ繊維の混合繊維を用いて不織布を製造し、ナノ繊維とマイクロ繊維とを機械的に絡み合わせることにより得ることができる。
(a1)ナノ繊維付着型吸音材の空隙率
メトラー社製 電子天秤 AE160を使用し、複合処理前後の重量の測定を行い、素材の比重と試験片の体積から空隙率(サンプル材料中の空気の体積含有率)を算出した。複合処理前の不織布の重量をw1(g)、複合処理後の不織布の重量をw2(g)、マイクロ繊維の比重をc1(g/cm3)、ナノ繊維の比重をc2(g/cm3)、吸音率測定試験片の体積をv(cm3)としたとき、マイクロ繊維の空隙率k1(%)、ナノ繊維の空隙率k2(%)および吸音材の空隙率Ka(%)は以下の式により算出される。
マイクロ繊維の空隙率k1(%)={1−w1/(c1×v)}×100
ナノ繊維の空隙率k2(%)={1−(w2−w1)/(c2×v×k1/100)}×100
吸音材の空隙率Ka(%)={(k1/100)×(k2/100)}×100
複合処理前後の重量の測定を行う代わりに、使用されるマイクロ繊維の重量W3(g)およびナノ繊維の重量W4(g)の測定を行うこと、およびマイクロ繊維の空隙率k3(%)、ナノ繊維の空隙率k4(%)および吸音材の空隙率Kb(%)は以下の式により算出されること以外、上記付着型吸音材の空隙率の算出方法と同様の方法により、絡合型吸音材の空隙率を算出した)。
マイクロ繊維の空隙率k3(%)={1−w3/(c1×v)}×100
ナノ繊維の空隙率k4(%)={1−w4/(c2×v)}×100
吸音材の空隙率Kb(%)=(v−w3/c1−w4/c2)/v×100
日本音響エンジニアリング社製 垂直入射吸音率測定システム WinZacMTXを使用し、測定周波数範囲 200〜4800Hz(1/3オクターブバンド)、内径40mmの音響管を用いた垂直入射吸音率測定(JIS A 1405−2、ISO 10534−2準拠)を行い、500〜1600Hzの平均垂直入射吸音率を算出した。マイクロ繊維の空隙率が同じ吸音材について、ナノ繊維を使用しなかったときの吸音率からの増加率を合わせて算出した。
初期の厚みに対し90%の厚みになるまで荷重を印加して圧縮変形し、除荷後24時間放置した。その後、初期厚みに対し95%以上まで厚みが復元していれば○、それ以外を×とした。
縦20mm×横70mm×厚みt=5mm(又は2.5mm×2枚)の短冊状試験片を作製した。試験片が水平になるように、治具にて、長手方向(70mm方向)の一方の側を20mm幅で保持および固定した。保持していない他方の側の自由端の撓みによる変位を測定した。詳しくは、試験片の自由端について、自由端の下表面の初期高さを0mmとしたとき、自由端の下端辺の高さ(厚み)方向の変位が5mm以内であれば○、それ以外を×とした。
吸音材について、厚み方向の熱伝導率をJIS A1412−2第2部熱流計法に基づいて測定した。
実施例1〜4における製造条件はそれぞれ表1〜表4に示す。
表に示す材種、平均繊維径のマイクロ繊維を、空隙率99%、厚み5mmになるよう、ニードルパンチにてシート状に成形し、不織布(A)を得た。不織布(A)を直径40mm、厚み5mmの円柱状にくり抜いて円柱状不織布(B)を作製し、電子天秤にて重量を測定した。その後、表に示す材種のナノ繊維材(TEMPO触媒酸化法で作製した繊維径0.004〜0.02μmのセルロースナノファイバ)の分散液を純水で表に示す固形分濃度になるよう希釈し、分散液を得た。分散液を円柱状不織布(B)の空隙部に完全に含浸させた。分散液から取り出した円柱状不織布(B)を恒温恒湿槽(エスペック社製 PSL−2K)に投入し、0℃×5時間→−20℃×20時間の条件で凍結させ、分散液凍結円柱状不織布(C)を得た。分散液凍結円柱状不織布(C)を真空凍結乾燥機(東京理化器械社製 FDU−830)に投入し、72時間放置して完全に乾燥させ、基材となる円柱状不織布(B)の空隙部にナノ繊維の不織布が形成された吸音率測定試験片(D)を得た。吸音率測定試験片(D)の重量を測定しナノ繊維の不織布の空隙率を算出した。その後、走査型電子顕微鏡で観察し、基材となるマイクロ繊維の不織布の空隙部に、直径0.004〜0.4μmのナノ繊維またはナノ繊維群(凝集束)の不織布が形成されており、かつ、ナノ繊維の不織布は基材となる不織布の繊維表面に付着(接着)していることを確認した。吸音率測定試験片(D)を2枚重ねて吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、吸音率測定試験片(D)と同様の製法で縦20mm×横70mm×厚みt=5mmの短冊状試験片を作製し、形状維持性を評価した結果を表に示した。
実施例5〜7における製造条件は表2に示す。
平均繊維径約3〜4μmからなるグラスウール(マイクロ繊維)を、表に示す空隙率で厚み5mmになるよう、ニードルパンチにてシート状に成形し、不織布(E)を得た。不織布(E)を直径40mm、厚み5mmの円柱状にくり抜いて円柱状不織布(F)を作製し、電子天秤にて重量を測定した。その後、表に示す材種のナノ繊維材(TEMPO触媒酸化法で作製した繊維径0.004〜0.02μmのセルロースナノファイバ)の分散液を表に示す固形分濃度になるよう調整し分散液を得た。分散液を円柱状不織布(F)の空隙部に完全に含浸させた。分散液から取り出した円柱状不織布(F)を恒温恒湿槽(エスペック社製 PSL−2K)に投入し、0℃×5時間→−20℃×20時間の条件で凍結させ、分散液凍結円柱状不織布(G)を得た。分散液凍結円柱状不織布(G)を真空凍結乾燥機(東京理化器械社製 FDU−830)に投入し、72時間放置して完全に乾燥させ、基材となる円柱状不織布(F)の空隙部にナノ繊維の不織布が形成された吸音率測定試験片(H)を得た。吸音率測定試験片(H)の重量を測定しナノ繊維の不織布の空隙率を算出した。その後、走査型電子顕微鏡で観察し、基材となる不織布の空隙部に、直径0.004〜0.4μmのナノ繊維またはナノ繊維群(凝集束)の不織布が形成されており、かつ、ナノ繊維の不織布は基材となる不織布の繊維に付着(接着)していることを確認した。吸音率測定試験片(H)を2枚重ねて吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、吸音率測定試験片(H)と同様の製法で縦20mm×横70mm×厚みt=5mmの短冊状試験片を作製し、形状維持性を評価した結果を表に示した。
実施例8における製造条件は表2に示す。
表に示す製造条件を採用したこと以外、実施例5〜7の吸音率測定試験片(H)と同様の製法により、直径40mm、厚みt=2.5mmの吸音率測定試験片(I)を得た。吸音率測定試験片(I)の重量を測定しナノ繊維の不織布の空隙率を算出した。その後、吸音率測定試験片(I)を4枚重ねて吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、吸音率測定試験片(I)と同様の製法で縦20mm×70mm×厚みt=2.5mmの短冊状試験片を作製し、2枚重ねて形状維持性を評価した結果を表に示した。
実施例9における製造条件は表2に示す。
平均繊維径約3〜4μmからなる2枚のグラスウール(マイクロ繊維)で表に示す材種のナノ繊維材(メルトブローン法で作製した繊維径0.4〜0.8μmからなるPP繊維)で挟持し、グラスウールの空隙率99%、ナノ繊維材の空隙率98%、トータル厚み5mmになるよう、ニードルパンチにてシート状に成形し、不織布(J)を得た。不織布(J)を直径40mm、厚み5mmの円柱状にくり抜いて吸音率測定試験片(K)を作製した。吸音率測定試験片(K)を走査型電子顕微鏡で観察し、基材となる不織布の空隙部に、直径0.4〜0.8μmのナノ繊維の不織布が形成されており、かつ、ナノ繊維の不織布は基材となる不織布の繊維と機械的に絡み合っていることを確認した。吸音率測定試験片(K)を2枚重ねて吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、吸音率測定試験片(K)と同様の製法で縦20mm×横70mm×厚みt=5mmの短冊状試験片を作製し、形状維持性を評価した結果を表に示した。
比較例1〜4における製造条件はそれぞれ表1〜表4に示す。
比較例1〜4においてはそれぞれ実施例1〜4で作製した円柱状不織布(B)をそのまま用いた。
実施例1〜4で作製した円柱状不織布(B)を2枚重ねて吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、円柱状不織布(B)と同様の製法で縦20mm×横70mm×厚みt=5mmの短冊状試験片を作製し、形状維持性を評価した結果を表に示した。
比較例5における製造条件は表5に示す。
表に示す材種のナノ繊維材(TEMPO触媒酸化法で作製した繊維径0.004〜0.02μmのセルロースナノファイバ)の分散液を、表に示す固形分濃度になるよう調整した。分散液を直径約90mm、深さ20mmのステンレスシャーレ内に深さ10mmまで注水して、恒温恒湿槽(エスペック社製 PSL−2K)に投入し、0℃×5時間→−20℃×20時間の条件で凍結させ、円柱状凍結分散液(L)を得た。円柱状凍結分散液(L)を真空凍結乾燥機(東京理化器械社製 FDU−830)に投入し、72時間放置して完全に乾燥させ、直径40mm、厚み10mmの円柱状にくり抜いて吸音率測定試験片(M)を作製した。吸音率測定試験片(M)の吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、吸音率測定試験片(M)と同様の製法で縦20mm×横70mm×厚みt=5mmの短冊状試験片を作製し、形状維持性を評価した結果を表に示した。
比較例6における製造条件は表2に示す。
表に示す製造条件を採用したこと以外、実施例5〜7の吸音率測定試験片(H)と同様の製法により、直径40mm、厚みt=2.5mmの吸音率測定試験片(N)を得た。吸音率測定試験片(N)の重量を測定しナノ繊維の不織布の空隙率を算出した。その後、吸音率測定試験片(N)を4枚重ねて吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、吸音率測定試験片(N)と同様の製法で縦20mm×横70mm×厚みt=2.5mmの短冊状試験片を作製し、2枚重ねて形状維持性を評価した結果を表に示した。
比較例7における製造条件は表5に示す。
表に示す材種のナノ繊維材(メルトブローン法で作製した繊維径0.4〜0.8μmからなるPP繊維)をシート状に紡出し、空隙率98%の不織布(O)を得た。不織布(O)を直径40mm、厚み10mmの円柱状にくり抜いて吸音率測定試験片(P)を作製した。吸音率測定試験片(P)の吸音率を測定した結果、および、変形復元性を評価した結果を表に示した。また、吸音率測定試験片(P)と同様の製法で縦20mm×横70mm×厚みt=5mmの短冊状試験片を作製し、形状維持性を評価した結果を表に示した。
グラスウールA:平均繊維径約1〜2μmおよび平均繊維長30〜150mmからなる硝子繊維
グラスウールB:平均繊維径約3〜4μmおよび平均繊維長30〜150mmからなる硝子繊維
PET不織布:繊維長51mm、繊度2.2デニール(繊維径約16μm)のPET繊維
ステンレスウール:平均繊維径約150μmおよび平均繊維長30〜150mmからなるステンレス繊維
ナノファイバA:繊維径4〜20nmおよび平均繊維長2〜8μmのセルロースナノファイバ
ナノファイバB:繊維径400〜800nmおよび平均繊維長30〜150mmからなるPP繊維
Claims (12)
- マイクロオーダーの繊維径を有するマイクロ繊維およびナノオーダーの繊維径を有するナノ繊維を含み、不織布形態を有する吸音材であって、
前記ナノ繊維が92〜99.9%の空隙率を有し、
前記マイクロ繊維が不織布形態を有しながら前記吸音材の不織布形態を形成し、
該マイクロ繊維不織布の空隙部内で、前記ナノ繊維が不織布形態を有しながら存在しており、
前記マイクロ繊維不織布内において、前記ナノ繊維が前記マイクロ繊維の表面に付着しながら、任意の方向で前記空隙部を横切ったり、かつ/または前記空隙部に向かって突出し、不織布形態を有しており、
前記ナノ繊維の平均繊維長が0.1〜30μmである、吸音材。 - 前記マイクロ繊維が1〜180μmの平均繊維径を有し、
前記ナノ繊維が1〜900nmの平均繊維径を有する、請求項1に記載の吸音材。 - 前記マイクロ繊維が88〜99.9%の空隙率を有する、請求項1または2に記載の吸音材。
- 前記マイクロ繊維の平均繊維径と前記ナノ繊維の平均繊維径との差が900nm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の吸音材。
- 前記マイクロ繊維が無機繊維、有機繊維およびこれらの混合繊維からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の吸音材。
- 前記ナノ繊維が有機繊維である、請求項1〜5のいずれかに記載の吸音材。
- 前記ナノ繊維が、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維またはこれらの混合繊維である、請求項1〜6のいずれかに記載の吸音材。
- 前記吸音材が85〜99.8%の空隙率を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の吸音材。
- 前記吸音材におけるナノ繊維の重量比率(ナノ繊維重量/(マイクロ繊維重量+ナノ繊維重量))が0.3〜90%である、請求項1〜8のいずれかに記載の吸音材。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の吸音材の製造方法であって、
前記マイクロ繊維からなる不織布に、前記ナノ繊維の分散液を含浸させた後、乾燥する、吸音材の製造方法。 - 前記乾燥をフリーズドライ法により行う、請求項10に記載の吸音材の製造方法。
- 請求項10または11に記載の吸音材の製造方法により製造される吸音材。
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