JP2008033160A - 防音材 - Google Patents
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Abstract
【課題】重量、形状保持性、吸音性、透過損失、制振性の各特性を高次元で満足できる防音材とする。
【解決手段】多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなり面密度が低いソフト層1と、多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなりソフト層1より面密度が高いハード層2と、が積層されてなり、積層方向の全体の通気抵抗値を1000〜3000Ns/m3の範囲とし、ソフト層1の通気抵抗値に対するハード層2の通気抵抗値の比を5〜25の範囲とした。
ソフト層1は通気抵抗がきわめて低くかつ「バネ」として作用し、ハード層2は通気性を有しつつ「マス」として作用するので、材料自身がもつ音響特性に加えてマスバネ作用が奏される。
【選択図】図1
【解決手段】多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなり面密度が低いソフト層1と、多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなりソフト層1より面密度が高いハード層2と、が積層されてなり、積層方向の全体の通気抵抗値を1000〜3000Ns/m3の範囲とし、ソフト層1の通気抵抗値に対するハード層2の通気抵抗値の比を5〜25の範囲とした。
ソフト層1は通気抵抗がきわめて低くかつ「バネ」として作用し、ハード層2は通気性を有しつつ「マス」として作用するので、材料自身がもつ音響特性に加えてマスバネ作用が奏される。
【選択図】図1
Description
本発明は、ダッシュサイレンサー、フロアサイレンサーなどに用いられる防音材に関する。
自動車においては、エンジンルームと車室との間をダッシュパネルで仕切るとともに、ダッシュパネルを防音防振構造とすることで車室の騒音低減が図られている。このような防音防振構造として、ダッシュパネルの車室側表面にフェルトなどの軟質吸音層を積層し、軟質吸音層の表面に塩ビシート、樹脂板などの遮音層を積層したダッシュサイレンサーが知られている。
ところがフェルトなどから形成された軟質吸音層は、反発弾性が低く繰り返し圧縮による永久歪が大きいことに加え、密着性が低く制振性に劣るため、軟質吸音層として軟質ウレタンフォームを用いることが考えられる。ところが、発泡型により形成された軟質ウレタンフォームではフェルトなどに比べて通気性が低く、満足できる吸音性能は得られなかった。
そこで特開平02−063703号公報には、スラブウレタンチップと繊維とバインダーとの混合物から型成形によって防音材を製造する方法が提案されている。このようにして製造された防音材は、通気性が高く吸音特性に優れている。
また、特許第 2567597号公報には、軟質ウレタンフォームの細片にバインダーを混入して圧縮固化したチップウレタンからなる弾性層と、面重量が0.8kg/m2以上の拘束層とからなるダッシュサイレンサーが提案されており、マスとバネによる振動減衰の効果についても記載されている。
さらに、特開2004−90532号には、チップ状固形物からなる原材料と熱可塑性バインダーとの混合物である処理材を加熱して成形された密度の異なる成形体を積層した防音材が記載されている。
特許第 2567597号
特開平02−063703号
特開2004−90532号
ところが研究者の知見により、吸遮音には防音材全体の通気性やマスバネ効果が複雑に影響しており、単に通気性を有するのみの防音構造や、重量が異なる成形体を積層してマスバネモデルを形成した防音構造だけでは、十分な吸音性能を得ることが困難であることがわかってきた。
特許文献1には、ソフト層とハード層を積層させることによる吸音性が記載されておらず、特許文献2や特許文献3には、 PVCシートからなる拘束層や非通気層のフィルム層など、防音材全体の通気性が考慮されていないなど、せっかくチップウレタンによる通気性を確保されているにもかかわらず、その性能が十分に発揮されていない構造になっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、理想的な防音性能を得るために、通気性(流れ抵抗値)やマスバネ効果を含め、バランスのよい防音材とすることを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本発明の防音材の特徴は、多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなり面密度が低いソフト層と、多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなりソフト層より面密度が高いハード層と、が積層されてなる防音材であって、積層方向の全体の流れ抵抗値が1000〜3000Ns/m3の範囲にあり、ソフト層の流れ抵抗値に対するハード層の流れ抵抗値の比が5〜25の範囲にあることにある。
本発明の防音材は、ソフト層及びハード層が多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなるものである。したがってソフト層は流れ抵抗がきわめて低く、ハード層も厚さが薄くて流れ抵抗が低い。そのため、積層方向の全体の流れ抵抗値が1000〜3000Ns/m3の範囲と、車両用の防音材として最適な範囲にある。
さらに、面密度が低いソフト層と、面密度が高いハード層を有しているので、マスバネ作用が発現し、制振性が高い。また、全体の流れ抵抗値が1000〜3000Ns/m3の範囲であることに加えてソフト層の流れ抵抗値に対するハード層の流れ抵抗値の比が5〜25の範囲にあるので、ソフト層からハード層を通過する際に最適な流れ抵抗となり、防音効果がいっそう高くなる。
すなわち本発明の防音材によれば、ソフト層及びハード層の材料自身がもつ音響特性に加えてマスバネ作用も奏されるため、高い防音性能が発現される。また軽量であるとともにリサイクル性にも優れている。
本発明の防音材は、面密度が低いソフト層と、ソフト層より面密度が高いハード層と、が積層されている。ここで面密度とは、重量を表面の面積で除算した値をいう。ハード層の面密度は1000〜1500g/m2の範囲が好ましい。ハード層の面密度が1000g/m2より低いと「マス」としての効果が低くなり、1500g/m2より高くなると通気性が低下し重量が大きくなるので好ましくない。
ソフト層及びハード層は、共に多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合することで形成されている。このチップ状粒体としては、多孔質ポリウレタンフォームを含む車両シートや家具あるいは家電製品のシュレッダーダストから選別したもの、スラブウレタンを粉砕したものなどを用いることができる。その粒径は、特に制限がない。
バインダーとしては、湿気硬化性のウレタン樹脂を用いることができる。また液状の熱硬化性樹脂を用いてもよい。なお、バインダー量が多過ぎると全体の通気性にも影響を与えるため、剥離などの不具合が生じない程度に抑える必要がある。
ソフト層の厚さは、厚いほど吸音性が向上するので、特に制限されない。しかしハード層の厚さが厚くなると全体の流れ抵抗値が高くなり、吸音性が低下するとともにマスバネ作用が不十分となる。またハード層の厚さが薄くなると、マスバネ作用が不十分となるとともに形状保持性が低下する。したがってハード層の厚さは、2〜10mmの範囲とするのが好ましく、2〜5mmとするのがさらに好ましい。
ソフト層又はハード層を製造するには、例えばチップ状粒体とバインダーである湿気硬化性のウレタン樹脂とを混合し、成形型内に所定量充填した後に、蒸気により加熱して加圧することで製造することができる。チップ状粒体とバインダーとの比率、加圧による体積収縮程度などを調整することで、ソフト層又はハード層をそれぞれ製造することができる。
またソフト層とハード層とを積層するには、界面にウレタン系接着剤などの2液硬化性の接着剤や常温硬化性の接着剤を塗布し、両者を重ねて加圧することで積層することができる。なお界面に熱可塑性樹脂などのバインダーを介在させて両者を重ね、バインダーの融点以上に加熱して加圧することで積層してもよい。なお、ハード層を成形後、ソフト層の成形と同時にハード層との接合を行ってもよい。このようにすれば、ハード層とソフト層の接合工程を省くことができるので、安価に製造することができる。
本発明の最大の特徴は、積層方向の全体の流れ抵抗値が1000〜3000Ns/m3の範囲にあり、かつソフト層の流れ抵抗値に対するハード層の流れ抵抗値の比が5〜25の範囲にあるところにある。
全体の流れ抵抗値が1000Ns/m3より低いと遮音性が低下し、全体の流れ抵抗値が3000Ns/m3を超えると吸音性が低下する。全体の流れ抵抗値が1000〜3000Ns/m3の範囲にある場合に、両者のバランスがよく、高い防音性を備えた防音材とすることができる。
またソフト層の流れ抵抗値に対するハード層の流れ抵抗値の比(ハード層/ソフト層)が5より低いと、1層に近い構造になり、積層による効果が半減すると共に吸音と遮音のバランスがとりにくくなる。またこの比が25より高くなるとソフト層の流れ抵抗が低くなりすぎて吸音性能が悪くなるか、若しくはハード層の流れ抵抗が高くなりすぎて防音材全体の流れ抵抗を高くしてしまう。この比は、10〜20の範囲がさらに好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図1に本実施例の防音材の模式的断面図を示す。この防音材はダッシュサイレンサーとして用いられるものであり、密度 0.046g/cm3 、厚さ 22.18mmのソフト層1と、密度 0.320g/cm3 、厚さ3.89mmのハード層2とが積層されて構成されている。
図1に本実施例の防音材の模式的断面図を示す。この防音材はダッシュサイレンサーとして用いられるものであり、密度 0.046g/cm3 、厚さ 22.18mmのソフト層1と、密度 0.320g/cm3 、厚さ3.89mmのハード層2とが積層されて構成されている。
以下、この防音材の製造方法を説明し、構成の詳細な説明に代える。
車両の廃材であるシュレッダーダストから選別された軟質ポリウレタンフォームの細片に対し、バインダーとして湿気硬化性のウレタン樹脂を混合した。これを所定の金型に吹き込み充填し、90℃の蒸気による加熱を行い、みかけ体積の50%となるように圧縮し、60秒間加熱プレス成形してソフト層1を形成した。
一方、上記と同様の軟質ポリウレタンフォームの細片に対し、バインダーとして湿気硬化性のウレタン樹脂を混合した。これを所定の金型に吹き込み充填し、90℃の蒸気による加熱を行い、みかけ体積の10%となるように圧縮し、60秒間加熱プレス成形してハード層2を形成した。
次いで界面に一般のウレタン系接着剤を均一に介在させた状態でソフト層1とハード層2とを重ねて金型内に配置し、60秒間プレス成形して本実施例の防音材を得た。
実施例1の防音材と、ソフト層1とハード層2のそれぞれについて、面密度を測定するとともにソフト層1の面密度に対するハード層2の面密度の比を算出した。また実施例1の防音材と、用いたソフト層1とハード層2のそれぞれについて、流れ抵抗値( AFR)を測定するとともにソフト層1の流れ抵抗値に対するハード層2の流れ抵抗値の比を算出した。結果をそれぞれ表1に示す。なお流れ抵抗値の測定は、ISO9053に基づいて行った。
(比較例1)
ポリエーテルポリオールと、MDI/TDIとをインデックスが1.00となるように混合して発泡成形型に所定量注入し、発泡成形して密度 0.073、厚さ 22.00mmのソフト層を形成した。
ポリエーテルポリオールと、MDI/TDIとをインデックスが1.00となるように混合して発泡成形型に所定量注入し、発泡成形して密度 0.073、厚さ 22.00mmのソフト層を形成した。
一方、ハード層として、密度 0.345g/cm3 、厚さ3.21mmのPET製不織布を用いた。
これらのソフト層及びハード層を用い、実施例1と同様にプレス成形して積層し比較例1の防音材を得た。
比較例1の防音材と、用いたソフト層とハード層のそれぞれについて、面密度を測定するとともにソフト層の面密度に対するハード層の面密度の比を算出した。また比較例の防音材と、用いたソフト層とハード層のそれぞれについて、流れ抵抗値を測定するとともにソフト層の流れ抵抗値に対するハード層の流れ抵抗値の比を算出した。結果をそれぞれ表1に示す。
(比較例2)
実施例1と同様に製造され、密度 0.290g/cm3 、厚さ3.51mmであること以外は実施例1と同様のハード層2を用い、実施例1と同様のソフト層1と同様に積層して、比較例2の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
実施例1と同様に製造され、密度 0.290g/cm3 、厚さ3.51mmであること以外は実施例1と同様のハード層2を用い、実施例1と同様のソフト層1と同様に積層して、比較例2の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
(比較例3)
実施例1と同様に製造され、密度0.260g/cm3 、厚さ3.15mmであること以外は実施例1と同様のハード層2を用い、実施例1と同様のソフト層1と同様に積層して、比較例3の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
実施例1と同様に製造され、密度0.260g/cm3 、厚さ3.15mmであること以外は実施例1と同様のハード層2を用い、実施例1と同様のソフト層1と同様に積層して、比較例3の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
(比較例4)
実施例1と同様に製造され、流れ抵抗値が異なるハード層とソフト層を実施例1と同様に積層して、比較例4の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
実施例1と同様に製造され、流れ抵抗値が異なるハード層とソフト層を実施例1と同様に積層して、比較例4の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
(比較例5)
実施例1と同様に製造され、流れ抵抗値が異なるハード層とソフト層を実施例1と同様に積層して、比較例5の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
実施例1と同様に製造され、流れ抵抗値が異なるハード層とソフト層を実施例1と同様に積層して、比較例5の防音材を得た。結果をそれぞれ表1に示す。
<試験・評価>
また実施例及び比較例1〜3の防音材について、残響室吸音率を各周波数域で測定した。結果を吸収係数で図2に示す。なお残響室吸音率の測定は、JIS A1409に基づいて行った。
さらに、実施例及び比較例1〜3の防音材について、残響室・無響室法にて透過損失を測定した。結果を図3に示す。なお透過損失の測定は、JIS A1416に基づいて行った。
比較例1のソフト層は、モールド成形であるため、ソフト層の流れ抵抗値が大きくなり、全体の流れ抵抗値が3000Ns/m3を超えてしまい、AFR 比も5よりも下回ってしまう。さらに、面密度比も1より小さくなっている。その結果、図3の透過損失は問題ないが、図2のように 400Hzから1600Hzの吸音率が低くなり、結果としては要求を満足できない。
また比較例2と3については、AFR 比やトータル AFRに問題はないが、面密度比が1以下となり、その結果吸音率は問題ないが、図3の透過損失が低くなりすぎるため、問題がある。
比較例4については、AFR 比が低すぎると、ハード層とソフト層の差がなく、一層の状態に近くなるため、吸音率及び透過損失が低下するものと思われ、比較例5については、AFR 比が高すぎると、ソフト層の製作が困難となうばかりか、吸音と遮音に必要なAFR 値のバランスが崩れるため、吸音率が低下する。
このように実施例1の防音材が比較例の防音材より吸音特性に優れるのは、表1に示したように、適正な防音材の流れ抵抗値と、ソフト層の流れ抵抗値に対するハード層の流れ抵抗値の比に起因し、材料自体の吸音特性に加えてマスバネ作用が向上したためと考えられる。
本発明の防音材は、車両のダッシュサイレンサー、フロアサイレンサーなどに好適に用いることができる。
1:ソフト層 2:ハード層
Claims (1)
- 多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなり面密度が低いソフト層と、多孔質ポリウレタンフォームからなるチップ状粒体をバインダーにより接合してなり該ソフト層より面密度が高いハード層と、が積層されてなる防音材であって、
積層方向の全体の通気抵抗値が1000〜3000Ns/m3の範囲にあり、該ソフト層の通気抵抗値に対する該ハード層の通気抵抗値の比が5〜25の範囲にあることを特徴とする防音材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006208721A JP2008033160A (ja) | 2006-07-31 | 2006-07-31 | 防音材 |
Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015121631A (ja) * | 2013-12-23 | 2015-07-02 | 日本バイリーン株式会社 | 吸音材 |
WO2019244640A1 (ja) * | 2018-06-22 | 2019-12-26 | 株式会社ブリヂストン | 防音材、及び、防音材の製造方法 |
CN114013151A (zh) * | 2021-11-19 | 2022-02-08 | 成都迈科高分子材料股份有限公司 | 一种梯度多层阻尼材料及其制备方法 |
-
2006
- 2006-07-31 JP JP2006208721A patent/JP2008033160A/ja active Pending
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JP2015121631A (ja) * | 2013-12-23 | 2015-07-02 | 日本バイリーン株式会社 | 吸音材 |
WO2019244640A1 (ja) * | 2018-06-22 | 2019-12-26 | 株式会社ブリヂストン | 防音材、及び、防音材の製造方法 |
CN114013151A (zh) * | 2021-11-19 | 2022-02-08 | 成都迈科高分子材料股份有限公司 | 一种梯度多层阻尼材料及其制备方法 |
CN114013151B (zh) * | 2021-11-19 | 2023-11-07 | 成都迈科高分子材料股份有限公司 | 一种梯度多层阻尼材料及其制备方法 |
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