JP2015113481A - 希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法、および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 - Google Patents
希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法、および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 Download PDFInfo
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Description
R−Fe−N系永久磁石の原料にはR−Fe−N系合金粉末が使用されるが、この合金粉末の製造法として溶解法と還元拡散法とがある。
特許文献4には、金属Fe粉末と希土類元素を含む酸化物粉末の混合原料を、金属Caにより還元拡散を行う工程を有する希土類Fe系合金粉末の製造方法において、前記混合原料のタップ密度は1.5〜2.0g/mlの範囲で、金属Caを前記混合原料の等量に対して1.0〜3.0倍量加え、600〜1300℃の範囲の温度で加熱して希土類Fe系合金粉末を得る製造方法が記載されている。
この方法によれば、アモルファス相と微小強磁性相と粒界とを有する粒子が焼結した希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を解砕処理し、該解砕処理は希土類−遷移金属−窒素系合金の焼結部、粒界、もしくはアモルファス相部が砕け、結晶部分が実質的に砕けない条件で行うことにより、アモルファス相と結晶方向が揃った微小強磁性相を有する平均粒径が10μm以上の合金粒子を80体積%以上含有する合金粉末を得ることができるとしている。
しかし、還元拡散法には、前記のような利点があるものの、溶解法と同様に、平均粒径が10μm以上の粗大粒子が多いために、アトライターやビーズミルなどによるメカニカル粉砕が必須であり、しかも保磁力は10kOe前後であり十分とは言えなかった。
しかし、RイオンおよびTイオンを有する溶液に、不溶性の塩を生成することが可能な沈殿剤を添加するため、沈殿が生成され過飽和度まで溶解析出を繰り返すことによって生成される磁性粒子の粒子径が不均一となり、その結果、その磁気特性は満足すべきものではなかった。
熟成された沈澱物に水を加えて洗浄し、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し行った後、乾燥して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体を得る第2の工程と、
該複合酸化物の前駆体を、酸化性雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得る第3の工程と、
該希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を、還元性雰囲気下で加熱処理して、複合酸化物の一部を希土類−遷移金属系合金に還元し、部分還元複合酸化物とする第4の工程と、
該部分還元複合酸化物に、酸化物を還元するに必要な化学量論量の1.1倍以上のアルカリ土類金属を混合し、不活性ガス雰囲気中で該混合物を900℃以上1200℃以下で加熱処理して希土類−遷移金属系合金粉末を得る第5の工程と、
該希土類−遷移金属系合金粉末を350℃以上500℃以下で、窒素またはアンモニアと水素とを含むガス雰囲気下で窒化熱処理して希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を得る第6の工程と、
該希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を水で洗浄し、酸洗浄後に乾燥する第7の工程と、
該乾燥して得た希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を、燐酸を含む有機溶媒で処理して、表面にP含有量が元素換算で0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜を形成する第8の工程と、を含むことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
kA/m以上で、最大エネルギー積(BH)maxが239kJ/m3以上であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末が提供される。
また、それを窒化し、最終工程で燐酸塩被膜を形成すると、磁気特性と耐熱性共に良好な希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を効率的に高い生産性をもって製造できる。
1.希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法
本発明に係る希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法は、アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加して、生成する沈殿物を攪拌しながら熟成させる第1の工程と、
熟成された沈澱物に水を加えて洗浄し、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し行った後、乾燥して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体を得る第2の工程と、
該複合酸化物の前駆体を、酸化性雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得る第3の工程と、
該希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を、還元性雰囲気下で加熱処理して、複合酸化物の一部を希土類−遷移金属系合金に還元し、部分還元複合酸化物とする第4の工程と、
該部分還元複合酸化物に、粒状または粉末状のアルカリ土類金属を混合し、不活性ガス雰囲気中で該混合物を900℃以上1200℃以下で加熱処理して希土類−遷移金属系合金粉末を得る第5の工程と、
該希土類−遷移金属系合金粉末を350℃以上500℃以下で、窒素またはアンモニアと水素とを含むガス雰囲気下で窒化熱処理して希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を得る第6の工程と、
該希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を水で洗浄し、酸洗浄後に乾燥する第7の工程と、
該希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を、燐酸を含む有機溶媒で処理して、表面にP含有量が元素換算で0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜を形成する第8の工程と、を含むことを特徴とする。
本発明においては、先ずアルカリ溶液に、原料化合物である希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加すると共に、継続的に攪拌しながら熟成させて沈殿物を得る。
ここで、アルカリ溶液に対する希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液の添加時間は、特に制限はないが、生産性の観点から60分以下、好ましくは50分以下とする。
その後、沈澱物を水洗浄し、デカンテーションによって沈澱物から不純物を除去する。
本発明においては、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し実施することが重要である。即ち、沈殿物を十分洗浄して、沈殿物中に残留する塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオンなどの不純物を可能な限り除去することである。好ましい導電率は0.7mS/cm以下、より好ましい導電率は0.5mS/cm以下である。
上記知見により、不純物量は、1.5重量%以下とすることが好ましく、1重量%以下とすることがより好ましい。不純物の含有量が1.5重量%よりも多いと、希土類−遷移金属系合金粉末の磁気特性に影響し、所望とする磁気特性が得られなくなる。
得られた該複合酸化物前駆体は、酸化性ガス雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物とする。
本発明では、上記により得られた複合酸化物の一部を還元して、希土類−遷移金属系合金を含む部分還元粉末複合酸化物とする。還元ガス種は特に限定されず、例えばH2やCOなどが挙げられる。この時の加熱温度は、低過ぎると部分的にしか還元が進まず、逆に高過ぎると粒成長が顕著となるため、400℃から900℃の範囲が好ましい。また、加熱時間は、処理量と加熱温度にもよるが、0.5〜10時間が好ましく、1〜7時間がより好ましい。
こうして得られた部分還元複合酸化物もしくは前記複合酸化物には、Ti、Zr、Alから選択される少なくとも一種の元素を含む粉末を添加・混合することができる。これらの添加元素は、上記希土類元素、Fe元素が還元拡散により合金化する際、粒成長を抑制する。これら添加元素は、磁気特性の向上にもある程度は寄与することから、含有量は、元素換算で0.01〜3質量%が好ましく、0.03質量%以上3質量%以下がより好ましい。0.01質量%以上であれば、還元拡散後の合金粉末の顕著な粒成長を抑制できるが、3質量%を超えると磁気特性に悪影響を生じることがあり好ましくない。
Ti、Zr、Alの各元素の原料は、特に限定されず、金属、合金、酸化物のいずれでもよいが、原料コストや還元拡散法での使用を考慮すると酸化物が好ましい。また、その粒径は小さいほど好ましく、1〜300nmの範囲が好ましい。より好ましいのは3〜100nmの範囲であり、5〜80nmの範囲が特に好ましい。
その後、得られた希土類−遷移金属系合金を含む複合酸化物の混合物(部分還元複合酸化物)に、還元剤としてCaなどのアルカリ土類金属元素を混合して所定の温度に加熱して部分還元複合酸化物を還元拡散する。上記還元剤は粒状もしくは粉末状のものが用いられるが、粒度は最大粒径5mm以下のものが好ましい。還元剤は、少な過ぎると酸化物原料のまま残留し、合金内部に未反応鉄が生じるため1.1倍量以上とする。一方、多過ぎると洗浄時間が長くなり生産性が低くなるため、1.1〜2倍量が好ましい。
加熱処理が900℃未満では拡散が不十分となり、逆に1200℃を超えると粒成長が顕著となる結果、いずれの場合でも所望の磁気特性を有する合金粉末が得られない。なお、加熱処理時間は、処理量、加熱温度などによって異なるが、30分間〜15時間とすることが望ましい。
次に、上記で得られた希土類−遷移金属合金粉末を窒化する。希土類−遷移金属合金粉末は、合金粉をキルンに投入し、窒素またはアンモニアと水素との混合ガス雰囲気下で窒化する。以下、アンモニアと水素との混合ガスで窒化する例について詳述する。
アンモニアと水素との混合割合は、10〜70:30〜90、好ましくは20〜60:40〜80が好ましい。この範囲を外れ、アンモニアが少な過ぎると窒化の効率が低下し、一方、アンモニアの割合が多過ぎると部分的に窒化が進み均一な窒化を行うことができない。窒化した後の合金粉中に水素が多く残留していると、この合金粉を磁石化しても磁気特性が低下するために、場合によっては真空加熱を行うなどの方法で十分に脱水素しておく必要がある。
その後、窒化された合金粉末を、例えば合金粉末1kgあたり約1リットルの水中に投入し、0.1〜3時間攪拌し、反応生成物を崩壊させる。その後、得られたスラリーを粗い篩を通し水洗槽に移す。この時スラリーのpHは11〜12程度であり、崩壊せずに残留する塊はなく、篩上に残ったロスは非常に少なくなる。
上記により得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、必要に応じて解砕することができる。この場合には、得られた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、媒体攪拌ミルに入れ、有機溶媒中で粉砕媒体によって解砕する。
媒体攪拌ミルは、有機溶媒と合金粉末を混合して形成されたスラリーを解砕するものであり、例えば、ボール、ビーズ等の粉砕媒体を充填したミルを、攪拌棒、回転ディスク等によって強制的に攪拌することにより、解砕を行う装置が挙げられる。
有機溶媒を装置内に入れておき、これに磁石粗粉末を加えてから装置を回転させてもよいし、予め有機溶媒と磁石粉末を混合機によりプレミキシングしてスラリーを形成しておき、これをポンプにより媒体攪拌ミルに送って解砕処理してもよい。
この媒体攪拌ミル内では、有機溶媒によって磁石粉末とボールがスラリー状態となって攪拌による攪拌作用を受ける。そして、磁石粉末同士あるいはボールとの摩擦により、磁石粉末は解砕される。
このとき有機溶媒には、表面安定化剤として燐酸やその化合物を添加する。燐酸などを添加することで、磁石粉末が解砕されるとともにその表面には燐酸塩の被膜が形成される。燐酸の添加量は、長時間大気に晒しても安定で磁気特性に優れた合金粉末を得るには、合金粉末への被膜が平均1〜20nm程度となる量が好ましく、合金粉末中の元素換算でのP含有量は0.2質量%以上1質量%以下とする。
一方、媒体攪拌ミルの一種であるビーズミルは、本発明で使用する粒径の合金粉末の解砕に適したミルであり、バッチ法または連続法で操作される典型的なビーズミルであれば特に限定されず、垂直流動もしくは水平流動を支持するように設計された任意の装置を採用することができる。
ビーズミルは、典型的には、シリカサンド、ガラスビーズ、セラミックス解砕媒体または鋼球を解砕媒体として使用する解砕機である。解砕された合金粉末からの解砕媒体の分離は、解砕媒体と合金粉末との間に存在する沈降速度、粒子の大きさ、もしくは両パラメータ間の差に基づいて行うことができる。ビーズミルの中には、他の媒体攪拌ミルと同様に有機溶媒を供給する。セラミックス解砕媒体には、ジルコニア、窒化珪素、アルミナなどが例示される。
また、粉砕時間が1分未満では表面処理が不十分となり、10分を超えると合金粉末の平均粒径が小さくなることがあるので好ましくない。より好ましい粉砕時間は、1〜5分間である。
上記の方法で製造された希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の平均粒径は、1〜10μmであり、2〜8μmが好ましい。この範囲であれば、残留磁束密度Br、保磁力iHc、および最大エネルギー積(BH)maxがいずれも高い磁気特性を有する。
本発明のボンド磁石用組成物は、上記希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したものである。すなわち、前記した本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、バインダー成分として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを配合し、混合することにより、優れた特性を有するボンド磁石用組成物となる。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型フッ素樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂などを用いることができる。
本発明のボンド磁石用組成物を調製する際に用いられる混合機としては、特に制限がなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシャルミキサー、フラッシュミキサー、ナウターミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウェットミル、ジェットミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いることができる。各成分を粉砕しながら混合する方法も有効である。
本発明のボンド磁石は、上記ボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石である。すなわち、上記希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石用組成物は、混練後、下記の要領で成形してボンド磁石とすることができる。
圧縮成形する場合は、前記混合比で、例えば、混合機(例えば、井上製作所製)で混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用い、金型に800kA/m(10kOe)以上の磁界を印加しながら、4ton/cm2の圧力でプレス成形する。
また、射出成形の場合では、前記混合比で加熱加圧ニーダー装置を用いて混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用いて成形する。組成物を、例えば、30〜80℃の成形温度に加温したシリンダー中で溶融し、800kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形して、樹脂の硬化温度まで加熱し、一定時間保持して硬化させる。
水2.5LにSm(NO3)36H2Oを1255.2gとFe(NO3)39H2Oを7594.3g溶解した溶液を、6NのNaOH水溶液9.6Lに30分間かけて添加して沈殿を生成させた後、さらに10分間攪拌を継続して沈殿を熟成した。
次に、水素を吸蔵した合金粉末をキルンに投入してNH30.4L/minと水素1.6L/minフィードしながら445℃で200分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて60分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて60分保持して合金粉末を窒化後、冷却した。窒化反応後の合金粉末は、水に添加してデカンテーションによる水洗を6回繰り返し行った後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で15分間撹拌を行った。その後、脱酢酸洗浄として純水中でデンカンテーションによる洗浄を3回行った。その後、イソプロピルアルコールで置換して濾過し、50℃で5時間真空乾燥することにより、平均粒径(D50)が3.5μmの合金粉末を得た。得られた合金粉末15gを、イソプロピルアルコール100mlおよび85%燐酸0.22gと共に、5mmφのYTZ−S((株)ニッカトー製)を230g充填した振動式ボールミルに入れて3分間の表面処理を行うことにより、P含有量が0.4質量%の合金粉末aを得た。
以上、実施例1の結果を表1に示す。
実施例1の還元拡散工程において、粒状の金属Caを114.4gとした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る合金粉末bを得た。
以上、実施例2の結果を表1に示す。
実施例1の還元拡散工程において、粒状の金属Caを104.8gとした以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る合金粉末cを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末cのX線回折測定を行った結果、Sm2Fe17N3単一相であった。また、合金粉末の磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.26Tで、保磁力iHcが1180.1kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが283.5kJ/m3であり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例3の結果を表1に示す。
実施例1において、複合酸化物に800℃で5時間還元処理を行って部分還元複合酸化物とした以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る合金粉末dを得た。
以上、実施例4の結果を表1に示す。
実施例1において、大気雰囲気下800℃で5時間焼成し、複合酸化物とした以外は、実施例1と同様にして実施例5に係るP含有量が0.4質量%の合金粉末eを得た。また、大気雰囲気下1000℃で4時間焼成し複合酸化物とした以外は、実施例1と同様にして実施例6に係るP含有量が0.4質量%の合金粉末fを得た。
以上、実施例5と実施例6の結果を表1に併せて示す。
実施例1の還元拡散工程において、アルゴンガス雰囲気下1050℃で30分保持して還元拡散反応を行った以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る合金粉末gを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末gのX線回折測定を行った結果、Sm2Fe17N3単一相であった。また、合金粉末gの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.28Tで、保磁力iHcが1185.7kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが294.6kJ/m3であり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例7の結果を表1に示す。
実施例1の還元拡散工程において、アルゴンガス雰囲気下1000℃で60分保持して還元拡散反応を行った以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る合金粉末hを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末hのX線回折測定を行った結果、Sm2Fe17N3単一相であった。また、合金粉末hの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.23Tで、保磁力iHcが1152.3kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが273.2kJ/m3であり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例8の結果を表1に示す。
実施例1の窒化工程において、455℃で150分保持して窒化反応を行った以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る合金粉末iを得た。
以上、実施例9の結果を表1に示す。
実施例1の窒化工程において、NH30.4L/minと水素1.6L/minからなる窒化反応のガス組成に替えて、N22L/minで900分とした以外は、実施例1と同様にして実施例10に係る合金粉末jを得た。
以上、実施例10の結果を表1に示す。
実施例1において、乾燥処理を施した沈殿物(複合酸化物の前駆体)に平均粒径(D50)36nmの酸化チタン粉末2.4gをヘンシェルミキサーで混合した以外は、実施例1と同様にして実施例11に係る合金粉末kを得た。また、複合酸化物に平均粒径(D50)36nmの酸化チタン粉末3.5gをヘンシェルミキサーで混合した以外は、実施例1と同様にして実施例12に係る合金粉末lを得た。
また、実施例1において、複合酸化物の前駆体とする工程で、デカンテーションによる沈殿物の洗浄を繰り返し、上澄み液の導電率が0.2mS/cmとなった時点で終了させた以外は、実施例1と同様にして実施例13に係る合金粉末mを得た。沈殿物中に残留する硝酸イオンの不純物が除去されたことが確認できた。
以上、実施例13の結果をまとめて表1に示す。
実施例1の最後の工程において、85%燐酸0.33gとした以外は、実施例1と同様にして実施例14に係る合金粉末nを得た。
以上、実施例14の結果を表1に示す。
実施例1の最後の工程において、燐酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてPを含有しない比較例1に係る合金粉末oを得た。
以上、比較例1の結果を表1に示す。
実施例1の還元拡散工程において、粒状金属Ca95.3gとした以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る合金粉末pを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末pのX線回折測定を行った結果、主相はSm2Fe17N3であったが、α−Feも認められた。また、合金粉末pの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.21Tで、保磁力iHcが1090.2kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが261.6kJ/m3であり、耐熱試験はα−Feが認められたことから測定しなかった。
以上、比較例2の結果を表1に示す。
実施例1の還元拡散工程において、粒状金属Ca76.2gとした以外は、実施例1と同様にして比較例3係る合金粉末qを得た。
実施例1において、窒化反応の温度を300℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例4係る合金粉末rを得た。
以上、比較例4の結果を表1に示す。
実施例1において、窒化反応の温度を500℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例5係る合金粉末s得た。
以上、比較例5の結果をまとめて表1に示す。
実施例1において、還元拡散反応を850℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例6に係る合金粉末tを得、還元拡散反応を1250℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例7に係る合金粉末uを得た。
以上、比較例6と比較例7の結果を併せて表1に示す。
実施例1において、複合酸化物の前駆体とする工程で、デカンテーションによる沈殿物の洗浄を繰り返し、上澄み液の導電率が2mS/cmとなった時点で終了させた以外は実施例1と同様にして比較例7に係る合金粉末vを得た。なお、沈殿物中に硝酸イオンの不純物が除去されずに存在していることが確認できた。
以上、比較例8の結果をまとめて表1に示す。
実施例1で製造した合金粉末a91.0重量%に対して、熱可塑性樹脂12ナイロンを9.0重量%の割合で混合し、ボンド磁石用組成物を調製した。
次に、このボンド磁石用組成物をナカタニ混練機(ナカタニ製)で190℃−1パス行い、その後、シリンダー温度210℃、成形圧力1tonでφ20×13mmの形状に射出成形することによって成形体1を得た。
以上、実施例15の結果をまとめて表2に示す。
実施例15において、比較例1で製造した燐酸塩被膜のない合金粉末oを用いた以外は、実施例15と同様にして比較例9に係る成形体2を得た。
以上、比較例9の結果をまとめて表2に示す。
上記の表1から明らかなように、本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法による実施例1〜14では、合金粉末aからnが本発明の工程、条件で製造されたために、所定量のPを含有し、合金結晶がSm2Fe17N3単一相であり、保磁力iHcが1114kA/m以上で、かつ最大エネルギー積(BH)maxが239kJ/m3以上、保磁力iHcの変化率も3%以下と優れた磁気特性を有していた。
さらに、前記の表2から明らかなように、本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末から製造したボンド磁石の実施例15は、発錆は認められず、十分な耐候性を有しており、一方、本発明の方法から外れた条件で製造したボンド磁石の比較例9は、Pを含有しないので発錆が認められ、耐候性が不十分であった。
Claims (11)
- アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加して、生成する沈殿物を攪拌しながら熟成させる第1の工程と、
熟成された沈澱物に水を加えて洗浄し、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し行った後、乾燥して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体を得る第2の工程と、
該複合酸化物の前駆体を、酸化性雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得る第3の工程と、
該希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を、還元性雰囲気下で加熱処理して、複合酸化物の一部を希土類−遷移金属系合金に還元し、部分還元複合酸化物とする第4の工程と、
該部分還元複合酸化物に、酸化物を還元するに必要な化学量論量の1.1倍以上のアルカリ土類金属を混合し、不活性ガス雰囲気中で該混合物を900℃以上1200℃以下で加熱処理して希土類−遷移金属系合金粉末を得る第5の工程と、
該希土類−遷移金属系合金粉末を350℃以上500℃以下で、窒素またはアンモニアと水素とを含むガス雰囲気下で窒化熱処理して希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を得る第6の工程と、
該希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を水で洗浄し、酸洗浄後に乾燥する第7の工程と、
該乾燥した希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を、燐酸を含む有機溶媒で処理して、表面にP含有量が元素換算で0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜を形成する第8の工程と、を含むことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。 - 第1の工程において、アルカリ溶液は、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液のpHが7.5以上となるに十分な濃度であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
- 第1の工程において、アルカリ溶液は、希土類化合物と遷移金属化合物に対して、両者が均一に混合するように、十分な時間をかけて添加することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
- 第1の工程において、溶液温度が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
- 第2の工程において、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体に含まれる不純物含有量が元素換算として、1.5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
- 第3の工程もしくは第4の工程において、得られた複合酸化物もしくは部分還元複合酸化物とTi、Zr、Alから選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物粉末を混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末。
- 保磁力iHcが1114kA/m以上で、最大エネルギー積(BH)maxが239
kJ/m3以上であることを特徴とする請求項7に記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末。 - 希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の加熱前後の保磁力iHcの差の割合から算出した変化率ΔiHcが10%以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末。
- 請求項7〜9のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石用組成物。
- 請求項10に記載のボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石。
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