JP2015113481A - 希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法、および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 - Google Patents

希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法、および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】永久磁石用として優れた磁気特性を有する希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を効率的に製造できる方法および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びに各種機器を小型化、高特性化しうるボンド磁石を提供する。【解決手段】アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加すると共に攪拌して沈殿物を得た後、該沈澱物をデカンテーションし、上澄み液の導電率が特定値となるまでデカンテーションを繰り返し行い、引き続き洗浄された沈澱物を乾燥し希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体とし、この前駆体を加熱処理して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得るようにし、得られた複合酸化物の少なくとも一部を還元処理して、希土類−遷移金属系合金を含む部分還元複合酸化物とした後、これを還元拡散法の原料として用いること、かつ得られた希土類−遷移金属系合金粉末の表面に燐酸塩被膜を形成することによって耐熱性や耐候性が向上する希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法および得られる合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びに各種機器を小型化、高特性化しうるボンド磁石により提供。【選択図】なし

Description

本発明は、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法、および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石に関し、より詳しくは、永久磁石用として優れた磁気特性を有する希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を効率的に製造できる方法および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びに各種機器を小型化、高特性化しうるボンド磁石に関するものである。
希土類元素の少なくとも一種を構成成分とする永久磁石に、希土類元素−鉄−窒素(「R−Fe−N」)系永久磁石があり、ボンド磁石の材料として広く活用されている。このR−Fe−N系永久磁石は、RFe17相の時に大きな保磁力を発現することが知られている。
R−Fe−N系永久磁石の原料にはR−Fe−N系合金粉末が使用されるが、この合金粉末の製造法として溶解法と還元拡散法とがある。
溶解法は、特許文献1〜3に記載されているように、構成成分となる金属や母合金を目的組成に調合して溶解し、得られた合金インゴットをジョークラッシャーなどで所定の粒度に粉砕するものである。しかし、これらの方法では粉砕工程が必要であり、しかも希土類金属は酸化に対して高活性であるため粉砕過程で酸化が進行したり、歪が生成されたりして合金品質が低下するという欠点がある。
一方、還元拡散法は、希土類酸化物粉末、鉄、ニッケル、コバルトなどの金属粉末あるいは酸化鉄粉末と、還元剤としてのアルカリ土類金属とを混合し、加熱して原料酸化物を還元し、拡散反応で希土類金属と遷移金属などを合金化し、次いで窒化処理した後湿式処理あるいは湿式処理してから窒化処理して合金粉末を得るものであり、溶解法と比較すると、原料が安価で熱処理温度が低いため低コストであると共に、均一な組成の合金粉末が得られ、しかも合金の組織が緻密で、かつ組成の調整がしやすいといった多くの利点を有する。
このような還元拡散法による合金の製造方法として、例えば、特許文献4〜特許文献6には以下のような記載がある。
特許文献4には、金属Fe粉末と希土類元素を含む酸化物粉末の混合原料を、金属Caにより還元拡散を行う工程を有する希土類Fe系合金粉末の製造方法において、前記混合原料のタップ密度は1.5〜2.0g/mlの範囲で、金属Caを前記混合原料の等量に対して1.0〜3.0倍量加え、600〜1300℃の範囲の温度で加熱して希土類Fe系合金粉末を得る製造方法が記載されている。
また、特許文献5には、Sm成分原料と、Fe成分原料と、粒状金属カルシウムとを所定割合で混合した原料を還元拡散および窒化を行い反応物を得る工程と、水による処理によって前記反応物を固液分離し固形分を得る工程と、前記固形分を真空加熱処理して合金粉末を得る工程と、前記合金粉末をCOガスを含む雰囲気中で処理する工程と、を有するSm−Fe−N系合金粉末の製造方法が記載されている。
さらに、特許文献6には、酸化鉄粒子粉末と酸化サマリウム粒子粉末とを混合した後、当該混合物に還元反応を行って鉄粒子と酸化サマリウム粒子との混合物とし、次に30〜150℃の温度範囲、酸素含有雰囲気下で安定化処理を行って前記鉄粒子の粒子表面に1〜15重量%の酸化膜を形成した後、Caを混合して800〜1200℃の温度範囲、不活性ガス雰囲気下で還元拡散反応を行い、次いで、300〜600℃の温度範囲で窒化反応を行うボンド磁石用Sm−Fe−N系磁性粉末の製造方法が記載されている。
そして、本出願人も、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末および還元剤からなる混合物を非酸化性雰囲気下で加熱処理して還元反応を起こさせ、希土類金属を遷移金属粉末に拡散させる還元拡散法を用いて、一般式RαFe(100−α−β−γ)β(式中、Rは希土類元素の一種又は二種以上、MはCu、Mn、Co、Cr、Ti、Ni、及びZrからなる群から選択される一種又は二種以上、α、β、γは原子%であり、3≦α≦20、0.1≦β≦25、17≦γ≦25を満たす。)で表される希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を製造する方法を提案している(特許文献7)。
この方法によれば、アモルファス相と微小強磁性相と粒界とを有する粒子が焼結した希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を解砕処理し、該解砕処理は希土類−遷移金属−窒素系合金の焼結部、粒界、もしくはアモルファス相部が砕け、結晶部分が実質的に砕けない条件で行うことにより、アモルファス相と結晶方向が揃った微小強磁性相を有する平均粒径が10μm以上の合金粒子を80体積%以上含有する合金粉末を得ることができるとしている。
しかし、還元拡散法には、前記のような利点があるものの、溶解法と同様に、平均粒径が10μm以上の粗大粒子が多いために、アトライターやビーズミルなどによるメカニカル粉砕が必須であり、しかも保磁力は10kOe前後であり十分とは言えなかった。
一方、特許文献8には、一般式R100−x−y−zで表されるThZn17構造の磁性粒子の製造方法であって、RイオンおよびTイオンを有する溶液に、不溶性の塩を生成することが可能な沈殿剤を添加した後に、続いてM成分を添加する第一の工程、得られた沈殿物を焼成し、RおよびTの複合酸化物粉末を得る第二の工程と、粒度が10mm以下の金属カルシウムにて還元拡散反応を行う第三の工程、を有する磁性粉末の製造方法(但し、RはYを含む希土類元素のうちの少なくとも一種、Mは300℃〜1200℃において標準ギブスエネルギーが−80kcal〜−300kcalの範囲である少なくとも一種の元素あるいはその酸化物であり、3<x<30、5<y<15、0.001<z<5である。)が記載されている。
しかし、RイオンおよびTイオンを有する溶液に、不溶性の塩を生成することが可能な沈殿剤を添加するため、沈殿が生成され過飽和度まで溶解析出を繰り返すことによって生成される磁性粒子の粒子径が不均一となり、その結果、その磁気特性は満足すべきものではなかった。
このため、従来の溶解法や還元拡散法のように合金粉末のメカニカル粉砕を必要とすることなく、粒子径が均一となり、しかもその磁気特性も良好な希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を効率的に製造できる方法が切望されていた。
特開平3−153852号公報 特開昭60−131949号公報 特開昭60−34005号公報 特許第3567742号公報 特許第3931458号公報 特許第4296379号公報 特許第4127083号公報 特許第4590920号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、永久磁石用として優れた磁気特性を有する希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を効率的に製造できる方法および得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加すると共に攪拌して沈殿物を得た後、該沈澱物をデカンテーションし、上澄み液の導電率が特定値となるまでデカンテーションを繰り返し行い、引き続き洗浄された沈澱物を乾燥し希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体とし、この前駆体を加熱処理して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得るようにし、得られた複合酸化物の少なくとも一部を還元処理して、希土類−遷移金属系合金を含む部分還元複合酸化物とした後、これを還元拡散法の原料として用いると、粒径が比較的小さく、組成が均一な希土類−遷移金属系合金粉末を安定的に製造することができること、また得られた希土類−遷移金属系合金粉末の表面に燐酸塩被膜を形成することによって耐熱性や耐候性が向上することを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加して、生成する沈殿物を攪拌しながら熟成させる第1の工程と、
熟成された沈澱物に水を加えて洗浄し、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し行った後、乾燥して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体を得る第2の工程と、
該複合酸化物の前駆体を、酸化性雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得る第3の工程と、
該希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を、還元性雰囲気下で加熱処理して、複合酸化物の一部を希土類−遷移金属系合金に還元し、部分還元複合酸化物とする第4の工程と、
該部分還元複合酸化物に、酸化物を還元するに必要な化学量論量の1.1倍以上のアルカリ土類金属を混合し、不活性ガス雰囲気中で該混合物を900℃以上1200℃以下で加熱処理して希土類−遷移金属系合金粉末を得る第5の工程と、
該希土類−遷移金属系合金粉末を350℃以上500℃以下で、窒素またはアンモニアと水素とを含むガス雰囲気下で窒化熱処理して希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を得る第6の工程と、
該希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を水で洗浄し、酸洗浄後に乾燥する第7の工程と、
該乾燥して得た希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を、燐酸を含む有機溶媒で処理して、表面にP含有量が元素換算で0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜を形成する第8の工程と、を含むことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、第1の工程における、アルカリ溶液は、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液のpHが7.5以上となるに十分な濃度であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、第1の工程における、アルカリ溶液は、希土類化合物と遷移金属化合物に対して、両者が均一に混合するように、十分な時間をかけて添加することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、第1の工程における、溶液温度が100℃以下であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、第2の工程における、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体に含まれる不純物含有量が元素換算として、1.5重量%以下であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、第3の工程もしくは第4の工程における、得られた複合酸化物もしくは部分還元複合酸化物とTi、Zr、Aから選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物粉末を混合することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明の方法で得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、保磁力iHcが1114
kA/m以上で、最大エネルギー積(BH)maxが239kJ/m以上であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第6〜8のいずれかの発明において、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の加熱前後の保磁力iHcの差の割合から算出した変化率ΔiHcが10%以下であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第7〜9のいずれかの発明において、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、ボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石が提供される。
本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法によれば、アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加すると共に攪拌して沈殿物を得た後、該沈澱物をデカンテーションし、上澄み液の導電率が特定値となるまでデカンテーションを繰り返し行うので、不純物が十分に低減され、これを乾燥すると希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体となり、この複合酸化物の前駆体を加熱処理して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得て、得られた複合酸化物の少なくとも一部を還元処理して、希土類−遷移金属系合金を含む部分還元複合酸化物とした後、これを還元拡散法の原料として用いるので、従来の溶解法や還元拡散法のように合金粉末のメカニカル粉砕を必要とせず、粒子径が均一となる。
また、それを窒化し、最終工程で燐酸塩被膜を形成すると、磁気特性と耐熱性共に良好な希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を効率的に高い生産性をもって製造できる。
この希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、特に最大エネルギー積(BH)maxが高くいので、ボンド磁石や焼結磁石に成形されて、高い磁気特性が必要とされる一般家電製品、通信、自動車、音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする製品のモータなどの各種用途に適用することができる。
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。
1.希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法
本発明に係る希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法は、アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加して、生成する沈殿物を攪拌しながら熟成させる第1の工程と、
熟成された沈澱物に水を加えて洗浄し、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し行った後、乾燥して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体を得る第2の工程と、
該複合酸化物の前駆体を、酸化性雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得る第3の工程と、
該希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を、還元性雰囲気下で加熱処理して、複合酸化物の一部を希土類−遷移金属系合金に還元し、部分還元複合酸化物とする第4の工程と、
該部分還元複合酸化物に、粒状または粉末状のアルカリ土類金属を混合し、不活性ガス雰囲気中で該混合物を900℃以上1200℃以下で加熱処理して希土類−遷移金属系合金粉末を得る第5の工程と、
該希土類−遷移金属系合金粉末を350℃以上500℃以下で、窒素またはアンモニアと水素とを含むガス雰囲気下で窒化熱処理して希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を得る第6の工程と、
該希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を水で洗浄し、酸洗浄後に乾燥する第7の工程と、
該希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を、燐酸を含む有機溶媒で処理して、表面にP含有量が元素換算で0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜を形成する第8の工程と、を含むことを特徴とする。
以下、本発明に係る希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造について各工程毎に説明し、併せて希土類−遷移金属−窒素系合金粉末について説明する。
(1)原料化合物を含むアルカリ性溶液からの沈殿物の生成工程
本発明においては、先ずアルカリ溶液に、原料化合物である希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加すると共に、継続的に攪拌しながら熟成させて沈殿物を得る。
本発明において希土類化合物は、Yを含むランタノイド元素の一種または二種以上であり、例えば、Y、La、Ce、Pr、NdおよびSmの群から選択される一種以上の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩などが挙げられる。また、遷移金属化合物は、例えば、Fe、Cu、Mn、Co、Cr、Ti、Ni、Zrの群からFeを必須成分として含む一種以上の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩などが挙げられる。酸化物も使用できるが、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩などの方が水に溶解しやすく好ましい。
上記希土類化合物と遷移金属化合物は、磁気特性の観点から金属元素の原子比で2〜2.8:17の比率となるように水に溶解させればよい。また、希土類化合物の水溶液と遷移金属化合物の水溶液を混合する場合でも前記比率となるように混合する。溶液の温度は特に制限されないが、安定した沈殿物を得るために、100℃以下に保持することが好ましい。
一方、アルカリ溶液は、希土類化合物と遷移金属化合物をpH8以上のアルカリ性にできるものであれば特に限定されない。例えば、炭酸水素アンモニウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素などの各アルカリ溶液が挙げられる。アルカリ溶液の濃度は、各塩が、前駆体として水酸化物となるに必要な化学当量以上あれば良いが、以降の工程で残留アルカリ分を除去する際の洗浄時間を短縮し生産性を上げる観点から、当量〜当量の3倍の範囲とすることが好ましい。
ここで、アルカリ溶液に対する希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液の添加時間は、特に制限はないが、生産性の観点から60分以下、好ましくは50分以下とする。
また、アルカリ溶液と希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液の温度は100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下とする。溶液温度を100℃以下とするのは、溶液から水が蒸発して系内の成分濃度が変化することを回避するためである。溶液温度の下限は、特に限定されないが、生産性の観点から、通常室温とする。特に、液温を室温以下とすると、新たに冷却装置などが必要になってくることから、そのような装置を必要としない液温とすることが好ましい。
アルカリ溶液に希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加した後、系内の均一化を図るために、溶液を継続的に攪拌しながら熟成を行う。該熟成時の温度は上記温度と同程度、すなわち室温以上100℃以下とするのが好ましい。また、熟成時間は特に限定されないが、生産性の観点から30分以下で十分である。溶液のpHを7.5以上、好ましくは8以上に維持することにより、生成した沈殿物の再溶解を回避して良好な収率を維持することができる。
(2)沈澱物のデカンテーション
その後、沈澱物を水洗浄し、デカンテーションによって沈澱物から不純物を除去する。
本発明においては、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し実施することが重要である。即ち、沈殿物を十分洗浄して、沈殿物中に残留する塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオンなどの不純物を可能な限り除去することである。好ましい導電率は0.7mS/cm以下、より好ましい導電率は0.5mS/cm以下である。
また、本出願人は、該洗浄後の沈澱物中に残留する不純物量が1.5重量%以下であれば、上述した希土類−遷移金属系合金粉末の磁気特性に影響しないこと、そして該洗浄後の沈澱物中に残留する不純物量と、上澄み液の導電率との関連を検討した結果、該洗浄液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し実施すれば、沈澱物中に残留する不純物量を1.5重量%以下とすることができることを見出した。
上記知見により、不純物量は、1.5重量%以下とすることが好ましく、1重量%以下とすることがより好ましい。不純物の含有量が1.5重量%よりも多いと、希土類−遷移金属系合金粉末の磁気特性に影響し、所望とする磁気特性が得られなくなる。
次に、洗浄された沈澱物は、例えば非酸化性雰囲気下、80℃以上に加熱し乾燥させる。乾燥温度は、水分が効率的に除去できる温度、例えば100℃以上400℃以下が好ましい。高温になるほど乾燥時間を短縮することができ、この時減圧したり、乾燥用ガスを流通させることもできる。これにより、乾燥物は希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体となる。
(3)希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の形成
得られた該複合酸化物前駆体は、酸化性ガス雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物とする。
この時の加熱処理温度は、500℃以上1400℃以下が好ましく、700℃以上1200℃以下がより好ましい。500℃未満では複合酸化物前駆体が完全に酸化物とならず、1400℃を超えると粒成長が顕著となる。加熱時間は、処理量と加熱温度にもよるが、1〜10時間が好ましく、3〜8時間がより好ましい。また、酸化性ガスとして、10%以上の酸素を含むガスの供給が必要であるが、空気、空気と窒素や不活性ガスなどとの混合物から適宜選択すればよい。
(4)複合酸化物の予備的還元処理
本発明では、上記により得られた複合酸化物の一部を還元して、希土類−遷移金属系合金を含む部分還元粉末複合酸化物とする。還元ガス種は特に限定されず、例えばHやCOなどが挙げられる。この時の加熱温度は、低過ぎると部分的にしか還元が進まず、逆に高過ぎると粒成長が顕著となるため、400℃から900℃の範囲が好ましい。また、加熱時間は、処理量と加熱温度にもよるが、0.5〜10時間が好ましく、1〜7時間がより好ましい。
この還元処理により、複合酸化物の一部、すなわち10%以上が希土類−遷移金属系合金に還元され、部分還元複合酸化物となる。本発明においては、複合酸化物の30%以上、さらには50%以上が希土類−遷移金属系合金に還元されることが好ましい。
こうして得られた部分還元複合酸化物もしくは前記複合酸化物には、Ti、Zr、Alから選択される少なくとも一種の元素を含む粉末を添加・混合することができる。これらの添加元素は、上記希土類元素、Fe元素が還元拡散により合金化する際、粒成長を抑制する。これら添加元素は、磁気特性の向上にもある程度は寄与することから、含有量は、元素換算で0.01〜3質量%が好ましく、0.03質量%以上3質量%以下がより好ましい。0.01質量%以上であれば、還元拡散後の合金粉末の顕著な粒成長を抑制できるが、3質量%を超えると磁気特性に悪影響を生じることがあり好ましくない。
Ti、Zr、Alの各元素の原料は、特に限定されず、金属、合金、酸化物のいずれでもよいが、原料コストや還元拡散法での使用を考慮すると酸化物が好ましい。また、その粒径は小さいほど好ましく、1〜300nmの範囲が好ましい。より好ましいのは3〜100nmの範囲であり、5〜80nmの範囲が特に好ましい。
(5)還元拡散工程
その後、得られた希土類−遷移金属系合金を含む複合酸化物の混合物(部分還元複合酸化物)に、還元剤としてCaなどのアルカリ土類金属元素を混合して所定の温度に加熱して部分還元複合酸化物を還元拡散する。上記還元剤は粒状もしくは粉末状のものが用いられるが、粒度は最大粒径5mm以下のものが好ましい。還元剤は、少な過ぎると酸化物原料のまま残留し、合金内部に未反応鉄が生じるため1.1倍量以上とする。一方、多過ぎると洗浄時間が長くなり生産性が低くなるため、1.1〜2倍量が好ましい。
Caの融点は、838℃(沸点1480℃)であるので、加熱処理は900℃〜1200℃の温度範囲とする。この条件であれば、還元剤は溶解するが蒸気にはならないため効率的に処理できる。この加熱処理により、部分還元複合酸化物を構成する希土類酸化物と遷移金属酸化物が希土類元素と遷移金属に還元されると共に、還元された希土類元素が遷移金属に拡散して希土類−遷移金属系合金(合金の塊で焼成物ともいう)が合成される。
加熱処理が900℃未満では拡散が不十分となり、逆に1200℃を超えると粒成長が顕著となる結果、いずれの場合でも所望の磁気特性を有する合金粉末が得られない。なお、加熱処理時間は、処理量、加熱温度などによって異なるが、30分間〜15時間とすることが望ましい。
その後、得られた希土類、遷移金属を含む合金は、不活性ガス雰囲気下で300℃以下、好ましくは250℃以下に冷却する。不活性ガスの供給温度が300℃を超えると、以降に行う窒化反応が急激に進んでFeリッチ相を増加させることがあるので、300℃以下とすることが望ましい。これは300℃を超える温度では、活性な反応生成物が急激に窒化されるためにFeリッチ相とSmNとに分解されるためであると推測される。
なお、本発明においては、必要に応じて以下のような水中での崩壊性の改善を目的として、焼成物に水素処理を行うことができる。水素処理方法としては、希土類−遷移金属系合金粉末を実質的に酸素を含まない密閉容器内に装入し、容器内を10−3Pa以下の真空にした後、水素を充填して0.01〜0.11MPaとし、さらに外部より0.005〜0.02MPa加圧して水素を供給することが好ましい。前記合金と水素とを密閉容器内に封じることによって、反応生成物は自発的に水素吸蔵を開始し、自己発熱によって反応が促進されるため外部から加熱する必要がなくなる。水素を充填して0.01〜0.11MPaとした後、さらに外部より0.005〜0.02MPa加圧して、反応生成物が吸蔵した分の水素を常に供給するのは、供給量が上記範囲より少ないと水素吸蔵反応が促進できず、多いと反応熱が高くなり過ぎるためである。
(6)希土類−遷移金属合金粉末の窒化処理
次に、上記で得られた希土類−遷移金属合金粉末を窒化する。希土類−遷移金属合金粉末は、合金粉をキルンに投入し、窒素またはアンモニアと水素との混合ガス雰囲気下で窒化する。以下、アンモニアと水素との混合ガスで窒化する例について詳述する。
窒化工程では、還元拡散時の雰囲気ガスを不活性ガスから、少なくとも窒素またはアンモニアと水素とを含有する混合ガスに代えてから350℃〜500℃、好ましくは400℃〜480℃に昇温して窒化熱処理する。350℃未満であると窒化速度が遅く、500℃を超えると希土類の窒化物と鉄に分解するため前記温度範囲とする。
窒化熱処理の保持時間は、窒化温度や合金粉末の処理量に応じて適宜選択すればよいが、100〜1000分、好ましくは150〜900分、より好ましくは200〜550分とする。100分未満では、窒化が不十分となり、一方、1000分を超えると窒化が過度に進むので好ましくない。
アンモニアと水素との混合割合は、10〜70:30〜90、好ましくは20〜60:40〜80が好ましい。この範囲を外れ、アンモニアが少な過ぎると窒化の効率が低下し、一方、アンモニアの割合が多過ぎると部分的に窒化が進み均一な窒化を行うことができない。窒化した後の合金粉中に水素が多く残留していると、この合金粉を磁石化しても磁気特性が低下するために、場合によっては真空加熱を行うなどの方法で十分に脱水素しておく必要がある。
(7)水洗、デカンテーション、酸洗
その後、窒化された合金粉末を、例えば合金粉末1kgあたり約1リットルの水中に投入し、0.1〜3時間攪拌し、反応生成物を崩壊させる。その後、得られたスラリーを粗い篩を通し水洗槽に移す。この時スラリーのpHは11〜12程度であり、崩壊せずに残留する塊はなく、篩上に残ったロスは非常に少なくなる。
この後、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションによる洗浄を繰り返す。デカンテーション条件は、特に限定されるものではないが、本発明では、前記複合酸化物の前駆体に含まれる不純物が極めて少ないので、デカンテーションの回数は従来よりも大幅に減らすことができる。
その後、スラリーのpHが5〜7になるように酢酸などの鉱酸を添加し、さらに脱酸水洗を行った後、アルコールなどの有機溶媒で置換してから乾燥することにより、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末が得られる。乾燥条件は、30〜400°Cの真空中あるいは非酸化性ガス雰囲気下、1〜8時間加熱することが好ましい。より好ましいのは、40〜300°Cの真空中、1〜5時間の加熱である。
(8)解砕
上記により得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、必要に応じて解砕することができる。この場合には、得られた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、媒体攪拌ミルに入れ、有機溶媒中で粉砕媒体によって解砕する。
本発明で合金粉末の解砕機は、その種類によって特に限定されるわけではないが、中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で媒体攪拌ミルによる粉砕方法が好適である。
媒体攪拌ミルは、有機溶媒と合金粉末を混合して形成されたスラリーを解砕するものであり、例えば、ボール、ビーズ等の粉砕媒体を充填したミルを、攪拌棒、回転ディスク等によって強制的に攪拌することにより、解砕を行う装置が挙げられる。
有機溶媒を装置内に入れておき、これに磁石粗粉末を加えてから装置を回転させてもよいし、予め有機溶媒と磁石粉末を混合機によりプレミキシングしてスラリーを形成しておき、これをポンプにより媒体攪拌ミルに送って解砕処理してもよい。
有機溶媒は、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等のいずれかを使用できるが、特にイソプロピルアルコールを用いた場合、好ましい磁石微粉末を得ることができる。
この媒体攪拌ミル内では、有機溶媒によって磁石粉末とボールがスラリー状態となって攪拌による攪拌作用を受ける。そして、磁石粉末同士あるいはボールとの摩擦により、磁石粉末は解砕される。
このとき有機溶媒には、表面安定化剤として燐酸やその化合物を添加する。燐酸などを添加することで、磁石粉末が解砕されるとともにその表面には燐酸塩の被膜が形成される。燐酸の添加量は、長時間大気に晒しても安定で磁気特性に優れた合金粉末を得るには、合金粉末への被膜が平均1〜20nm程度となる量が好ましく、合金粉末中の元素換算でのP含有量は0.2質量%以上1質量%以下とする。
所望とする粉末粒度や処理量に応じて、媒体攪拌ミル1台で循環処理したり、あるいは複数台を設置して連続処理を行うこともできる。媒体攪拌ミルを複数設置する場合、ミルの型式や運転条件(メディア径、主軸回転数、吐出量等)を変化させてもよい。
一方、媒体攪拌ミルの一種であるビーズミルは、本発明で使用する粒径の合金粉末の解砕に適したミルであり、バッチ法または連続法で操作される典型的なビーズミルであれば特に限定されず、垂直流動もしくは水平流動を支持するように設計された任意の装置を採用することができる。
ビーズミルは、典型的には、シリカサンド、ガラスビーズ、セラミックス解砕媒体または鋼球を解砕媒体として使用する解砕機である。解砕された合金粉末からの解砕媒体の分離は、解砕媒体と合金粉末との間に存在する沈降速度、粒子の大きさ、もしくは両パラメータ間の差に基づいて行うことができる。ビーズミルの中には、他の媒体攪拌ミルと同様に有機溶媒を供給する。セラミックス解砕媒体には、ジルコニア、窒化珪素、アルミナなどが例示される。
上記粒度の合金粉末を得るためには、希土類−遷移金属−窒素系合金粗粉末を、媒体攪拌ミルの粉砕機の中に、金属ボールあるいはセラミックスボールなどの解砕媒体とともに入れて粉砕すればよいが、その際、粉砕媒体のボール径が1mmを超え5mm以下のもので例えば1〜10分間かけて粉砕する。粉砕媒体のボール径が1mm以下だと、粉砕能力が落ちたり、ハンドリングの問題があり、5mmを越えると所望とする粒径まで粉砕できない。また、ボール充填率は、粉砕機の種類や粉砕能力などによっても異なるが容積の40〜70%とすることが好ましい。
また、粉砕時間が1分未満では表面処理が不十分となり、10分を超えると合金粉末の平均粒径が小さくなることがあるので好ましくない。より好ましい粉砕時間は、1〜5分間である。
2.希土類−遷移金属−窒素系合金粉末
上記の方法で製造された希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の平均粒径は、1〜10μmであり、2〜8μmが好ましい。この範囲であれば、残留磁束密度Br、保磁力iHc、および最大エネルギー積(BH)maxがいずれも高い磁気特性を有する。
また、本発明の磁石合金粉末は、前記のように燐酸により表面処理されているので、十分な耐酸化特性を有している。この表面処理の他に、さらにTiカップリング剤、Siカップリング剤などによる被覆処理を行うことができ、より耐熱性に優れる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末が得られる。
3.ボンド磁石用組成物
本発明のボンド磁石用組成物は、上記希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したものである。すなわち、前記した本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、バインダー成分として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを配合し、混合することにより、優れた特性を有するボンド磁石用組成物となる。
熱可塑性樹脂としては、4−6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどを用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型フッ素樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂などを用いることができる。
さらに、バインダー成分の種類にもよるが、重合禁止剤、低収縮化剤、反応性樹脂、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、変性剤、増粘剤、滑剤、カップリング剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、無機充填剤や顔料などを添加することができる。
本発明のボンド磁石用組成物を調製する際に用いられる混合機としては、特に制限がなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシャルミキサー、フラッシュミキサー、ナウターミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウェットミル、ジェットミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いることができる。各成分を粉砕しながら混合する方法も有効である。
4.ボンド磁石
本発明のボンド磁石は、上記ボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石である。すなわち、上記希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石用組成物は、混練後、下記の要領で成形してボンド磁石とすることができる。
上記熱硬化性樹脂を含むボンド磁石用組成物を用いる場合は、圧縮成形または射出成形によることが好ましい。圧縮成形の場合は、得られるボンド磁石全重量に対する樹脂量としては1〜5重量%、射出成形では樹脂粘度の調整や金型の温度等の最適条件を選択する必要があるが、7〜15重量%が好ましい。
圧縮成形する場合は、前記混合比で、例えば、混合機(例えば、井上製作所製)で混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用い、金型に800kA/m(10kOe)以上の磁界を印加しながら、4ton/cmの圧力でプレス成形する。
また、射出成形の場合では、前記混合比で加熱加圧ニーダー装置を用いて混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用いて成形する。組成物を、例えば、30〜80℃の成形温度に加温したシリンダー中で溶融し、800kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形して、樹脂の硬化温度まで加熱し、一定時間保持して硬化させる。
一方、熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物を用いる場合は、射出成形によることが好ましく、樹脂量としては5〜20重量%が好ましい。熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物は、溶融温度、例えば210℃以上に加温したシリンダー中で組成物を溶融し、800kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形し、冷却後、固化した成形物を取り出せばよい。
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
沈殿物のデカンテーションによる洗浄後の上澄み液の導電率は、導電率計(堀場製作所社製、商品名ES−51)により測定し、沈殿物中に残留する硝酸イオンなどの不純物がどの程度除去されたかを、導電率の低下率により確認した。
なお、磁性粉末の磁気特性は、最大印加磁界1200kA/mの振動試料型磁力計(東英工業株式会社製、VSM−3)で測定した。この測定では、日本ボンド磁石工業協会ボンド磁石試験法ガイドブックBMG−2005に準じて1600kA/mの配向磁界をかけて試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁してから評価している。また、耐熱性は、得られた磁性粉末を300℃で1時間真空乾燥し、加熱前後の保磁力の差の割合からΔiHcを算出し、評価した。さらに、ボンド磁石の耐候性は、温度60℃−湿度80%の恒温恒湿槽内に成形したボンド磁石を7日間暴露し、発錆の有無について調べ、評価した。
[実施例1]
水2.5LにSm(NO6HOを1255.2gとFe(NO9HOを7594.3g溶解した溶液を、6NのNaOH水溶液9.6Lに30分間かけて添加して沈殿を生成させた後、さらに10分間攪拌を継続して沈殿を熟成した。
次に、生成した沈殿をデカンテーションにて洗浄を行った。該デカンテーションによる洗浄は、洗浄後の上澄み液の導電率が0.5mS/cm以下になるまで繰り返し行った。これにより、沈殿物中に残留する硝酸イオンが除去されたことが確認できた。洗浄終了後、沈殿物(複合酸化物の前駆体)を回収して105℃で乾燥した。
次に、乾燥処理を施した沈殿物を電気炉に入れ、大気雰囲気下900℃で5時間焼成し複合酸化物とした後、水素雰囲気下、700℃で5時間還元処理を行った。得られた還元処理物(部分還元複合酸化物)に粒状の金属Caを123.9g(化学量論量の1.3倍)添加して混合し、この混合物を鉄製坩堝に入れた後、アルゴンガス雰囲気下1100℃で30分保持して還元拡散反応を行った。
次に、この還元拡散合金粉末を室温まで冷却した後、水素ガスを供給し、ガス圧力約0.01MPaとして水素を吸蔵させた。これにより、合金粉末は崩壊し、粒度が10mm以下となった。
次に、水素を吸蔵した合金粉末をキルンに投入してNH0.4L/minと水素1.6L/minフィードしながら445℃で200分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて60分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて60分保持して合金粉末を窒化後、冷却した。窒化反応後の合金粉末は、水に添加してデカンテーションによる水洗を6回繰り返し行った後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で15分間撹拌を行った。その後、脱酢酸洗浄として純水中でデンカンテーションによる洗浄を3回行った。その後、イソプロピルアルコールで置換して濾過し、50℃で5時間真空乾燥することにより、平均粒径(D50)が3.5μmの合金粉末を得た。得られた合金粉末15gを、イソプロピルアルコール100mlおよび85%燐酸0.22gと共に、5mmφのYTZ−S((株)ニッカトー製)を230g充填した振動式ボールミルに入れて3分間の表面処理を行うことにより、P含有量が0.4質量%の合金粉末aを得た。
得られた合金粉末aの粉末X線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末aの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.26Tで、保磁力iHcが1176.9kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが288.9kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例1の結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1の還元拡散工程において、粒状の金属Caを114.4gとした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る合金粉末bを得た。
得られた合金粉末bのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、P含有量が0.4質量%の合金粉末bの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.25Tで、保磁力iHcが1180.9kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが277.2kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例2の結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1の還元拡散工程において、粒状の金属Caを104.8gとした以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る合金粉末cを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末cのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末の磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.26Tで、保磁力iHcが1180.1kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが283.5kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例3の結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、複合酸化物に800℃で5時間還元処理を行って部分還元複合酸化物とした以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る合金粉末dを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末dのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末dの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.24Tで、保磁力iHcが1188.1kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが275.9kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例4の結果を表1に示す。
[実施例5〜実施例6]
実施例1において、大気雰囲気下800℃で5時間焼成し、複合酸化物とした以外は、実施例1と同様にして実施例5に係るP含有量が0.4質量%の合金粉末eを得た。また、大気雰囲気下1000℃で4時間焼成し複合酸化物とした以外は、実施例1と同様にして実施例6に係るP含有量が0.4質量%の合金粉末fを得た。
得られた合金粉末eのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末eの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.21Tで、保磁力iHcが1132.4kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが263.0kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。また、実施例6の合金粉末fのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であり、合金粉末fの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.27Tで、保磁力iHcが1189.7kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが292.1kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例5と実施例6の結果を表1に併せて示す。
[実施例7]
実施例1の還元拡散工程において、アルゴンガス雰囲気下1050℃で30分保持して還元拡散反応を行った以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る合金粉末gを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末gのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末gの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.28Tで、保磁力iHcが1185.7kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが294.6kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例7の結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1の還元拡散工程において、アルゴンガス雰囲気下1000℃で60分保持して還元拡散反応を行った以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る合金粉末hを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末hのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末hの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.23Tで、保磁力iHcが1152.3kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが273.2kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例8の結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例1の窒化工程において、455℃で150分保持して窒化反応を行った以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る合金粉末iを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末iのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末iの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.22Tで、保磁力iHcが1157.8kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが265.2kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例9の結果を表1に示す。
[実施例10]
実施例1の窒化工程において、NH0.4L/minと水素1.6L/minからなる窒化反応のガス組成に替えて、N2L/minで900分とした以外は、実施例1と同様にして実施例10に係る合金粉末jを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末jのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末の磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.21Tで、保磁力iHcが1168.2kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが262.2kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例10の結果を表1に示す。
[実施例11〜実施例12]
実施例1において、乾燥処理を施した沈殿物(複合酸化物の前駆体)に平均粒径(D50)36nmの酸化チタン粉末2.4gをヘンシェルミキサーで混合した以外は、実施例1と同様にして実施例11に係る合金粉末kを得た。また、複合酸化物に平均粒径(D50)36nmの酸化チタン粉末3.5gをヘンシェルミキサーで混合した以外は、実施例1と同様にして実施例12に係る合金粉末lを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末kのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末kの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.23Tで、保磁力iHcが1212.8kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが273.8kJ/mであり、ΔiHcは2%であった。また、P含有量が0.4質量%の合金粉末lのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。合金粉末lの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.20Tで、保磁力iHcが1208.0kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが258.2kJ/mであり、ΔiHcは2%であった。以上、実施例11と実施例12の結果を併せて表1に示す。
[実施例13]
また、実施例1において、複合酸化物の前駆体とする工程で、デカンテーションによる沈殿物の洗浄を繰り返し、上澄み液の導電率が0.2mS/cmとなった時点で終了させた以外は、実施例1と同様にして実施例13に係る合金粉末mを得た。沈殿物中に残留する硝酸イオンの不純物が除去されたことが確認できた。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末mのX線回折測定を行った結果、いずれもSmFe17単一相であった。また、各合金粉末mの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.23Tで、保磁力iHcが1142.7kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが268.2kJ/mであり、ΔiHcは3%であった。
以上、実施例13の結果をまとめて表1に示す。
[実施例14]
実施例1の最後の工程において、85%燐酸0.33gとした以外は、実施例1と同様にして実施例14に係る合金粉末nを得た。
得られたP含有量が0.6質量%の合金粉末nのX線回折測定を行った結果、SmFe17単一相であった。また、合金粉末nの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.22Tで、保磁力iHcが1146.7kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが260.1kJ/mであり、ΔiHcは2%であった。
以上、実施例14の結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の最後の工程において、燐酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてPを含有しない比較例1に係る合金粉末oを得た。
得られた合金粉末oのX線回折測定を行った結果、SmFe17の単一相であった。また、磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.28Tで、保磁力iHcが1184.9kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが294.2kJ/mであり、ΔiHcは15%であった。
以上、比較例1の結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1の還元拡散工程において、粒状金属Ca95.3gとした以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る合金粉末pを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末pのX線回折測定を行った結果、主相はSmFe17であったが、α−Feも認められた。また、合金粉末pの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.21Tで、保磁力iHcが1090.2kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが261.6kJ/mであり、耐熱試験はα−Feが認められたことから測定しなかった。
以上、比較例2の結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1の還元拡散工程において、粒状金属Ca76.2gとした以外は、実施例1と同様にして比較例3係る合金粉末qを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末qのX線回折測定を行った結果、主相はSmFe17であったが、α−Feも認められた。また、合金粉末qの磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.22Tで、保磁力iHcが1076.7kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが252.9kJ/mであり、耐熱試験はα−Feが認められたことから測定しなかった。以上、比較例3の結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、窒化反応の温度を300℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例4係る合金粉末rを得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末rのX線回折測定を行った結果、SmFe17の単一相であったが、磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.12Tで、保磁力iHcが995.5kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが223.7kJ/mであり、ΔiHcは5%であった。
以上、比較例4の結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、窒化反応の温度を500℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例5係る合金粉末s得た。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末sのX線回折測定を行った結果、SmFe17の単一相であったが、磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.16Tで、保磁力iHcが1028.9kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが238.2kJ/mであり、ΔiHcは5%であった。
以上、比較例5の結果をまとめて表1に示す。
[比較例6〜比較例7]
実施例1において、還元拡散反応を850℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例6に係る合金粉末tを得、還元拡散反応を1250℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例7に係る合金粉末uを得た。
得られた合金粉末tと合金粉末uのX線回折測定を行った結果、いずれも主相SmFe17の他にα−Feが認められたため、磁気特性と耐熱性の評価を行わなかった。
以上、比較例6と比較例7の結果を併せて表1に示す。
[比較例8]
実施例1において、複合酸化物の前駆体とする工程で、デカンテーションによる沈殿物の洗浄を繰り返し、上澄み液の導電率が2mS/cmとなった時点で終了させた以外は実施例1と同様にして比較例7に係る合金粉末vを得た。なお、沈殿物中に硝酸イオンの不純物が除去されずに存在していることが確認できた。
得られたP含有量が0.4質量%の合金粉末vのX線回折測定を行った結果、SmFe17の単一相であったが、磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが1.15Tで、保磁力iHcが1110.1kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが225.7kJ/mであり、ΔiHcは4%であった。
以上、比較例8の結果をまとめて表1に示す。
[実施例15]
実施例1で製造した合金粉末a91.0重量%に対して、熱可塑性樹脂12ナイロンを9.0重量%の割合で混合し、ボンド磁石用組成物を調製した。
次に、このボンド磁石用組成物をナカタニ混練機(ナカタニ製)で190℃−1パス行い、その後、シリンダー温度210℃、成形圧力1tonでφ20×13mmの形状に射出成形することによって成形体1を得た。
得られた成形体1の磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが0.79Tで、保磁力iHcが1082.2kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが123.0kJ/mであった。また、耐候性評価の結果、発錆は認められなかった。
以上、実施例15の結果をまとめて表2に示す。
[比較例9]
実施例15において、比較例1で製造した燐酸塩被膜のない合金粉末oを用いた以外は、実施例15と同様にして比較例9に係る成形体2を得た。
得られた成形体2の磁気特性を測定したところ、残留磁束密度Brが0.81Tで、保磁力iHcが1067.9kA/mで、最大エネルギー積(BH)maxが128.2kJ/mであった。また、耐候性評価の結果、発錆が認められた。
以上、比較例9の結果をまとめて表2に示す。
Figure 2015113481
Figure 2015113481
[評価]
上記の表1から明らかなように、本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法による実施例1〜14では、合金粉末aからnが本発明の工程、条件で製造されたために、所定量のPを含有し、合金結晶がSmFe17単一相であり、保磁力iHcが1114kA/m以上で、かつ最大エネルギー積(BH)maxが239kJ/m以上、保磁力iHcの変化率も3%以下と優れた磁気特性を有していた。
一方、比較例1〜8では、比較例2の合金粉末p、比較例3の合金粉末q、比較例6の合金粉末tおよび比較例7の合金粉末uは、Ca当量が少な過ぎたり、還元拡散時の温度が高か過ぎたり、あるいは低過ぎたりして主相SmFe17の他にα−Feが混在し、特に保磁力iHcが1114kA/m未満と十分な磁気特性が得られなかった。また、比較例1の合金粉末o、比較例4の合金粉末r、比較例5の合金粉末sおよび比較例8の合金粉末vは、本発明の方法から外れた条件で製造されたために、いずれもSmFe17単一相であるが、保磁力iHcの変化率が10%を超えるか、保磁力iHcが1114kA/m未満と十分な磁気特性が得られなかった。
さらに、前記の表2から明らかなように、本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末から製造したボンド磁石の実施例15は、発錆は認められず、十分な耐候性を有しており、一方、本発明の方法から外れた条件で製造したボンド磁石の比較例9は、Pを含有しないので発錆が認められ、耐候性が不十分であった。
本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法で得られる合金粉末は、従来の方法で得られた合金粉末と異なり、優れた磁気特性を有する。従って、一般家電製品、通信、自動車、音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする製品のモータの磁石用合金粉末として利用でき、その工業的価値は極めて高い。

Claims (11)

  1. アルカリ溶液に、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液を添加して、生成する沈殿物を攪拌しながら熟成させる第1の工程と、
    熟成された沈澱物に水を加えて洗浄し、上澄み液の導電率が1mS/cm以下となるまでデカンテーションを繰り返し行った後、乾燥して希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体を得る第2の工程と、
    該複合酸化物の前駆体を、酸化性雰囲気下で加熱処理して、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を得る第3の工程と、
    該希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物を、還元性雰囲気下で加熱処理して、複合酸化物の一部を希土類−遷移金属系合金に還元し、部分還元複合酸化物とする第4の工程と、
    該部分還元複合酸化物に、酸化物を還元するに必要な化学量論量の1.1倍以上のアルカリ土類金属を混合し、不活性ガス雰囲気中で該混合物を900℃以上1200℃以下で加熱処理して希土類−遷移金属系合金粉末を得る第5の工程と、
    該希土類−遷移金属系合金粉末を350℃以上500℃以下で、窒素またはアンモニアと水素とを含むガス雰囲気下で窒化熱処理して希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を得る第6の工程と、
    該希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を水で洗浄し、酸洗浄後に乾燥する第7の工程と、
    該乾燥した希土類−遷移金属系窒化物を含む合金粉末を、燐酸を含む有機溶媒で処理して、表面にP含有量が元素換算で0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜を形成する第8の工程と、を含むことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  2. 第1の工程において、アルカリ溶液は、希土類化合物と遷移金属化合物とを含む溶液のpHが7.5以上となるに十分な濃度であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  3. 第1の工程において、アルカリ溶液は、希土類化合物と遷移金属化合物に対して、両者が均一に混合するように、十分な時間をかけて添加することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  4. 第1の工程において、溶液温度が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  5. 第2の工程において、希土類元素と遷移金属元素から成る複合酸化物の前駆体に含まれる不純物含有量が元素換算として、1.5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  6. 第3の工程もしくは第4の工程において、得られた複合酸化物もしくは部分還元複合酸化物とTi、Zr、Alから選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物粉末を混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末。
  8. 保磁力iHcが1114kA/m以上で、最大エネルギー積(BH)maxが239
    kJ/m以上であることを特徴とする請求項7に記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末。
  9. 希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の加熱前後の保磁力iHcの差の割合から算出した変化率ΔiHcが10%以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石用組成物。
  11. 請求項10に記載のボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石。
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