JP2018127716A - 希土類鉄窒素系磁性粉末とその製造方法 - Google Patents

希土類鉄窒素系磁性粉末とその製造方法 Download PDF

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【課題】耐熱性および磁気特性、特に保磁力と磁化に優れる希土類鉄窒素系磁性粉末とその製造方法を提供する。【解決手段】希土類元素R、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、Th2Zn17型、Th2Ni17型、TbCu7型のいずれかの結晶構造を有する平均粒径が1μm以上10μm以下の磁性粉末であって、粉末の粒子表面に、平均的な組成としてFeの2原子%以上20原子%以下がMnで置換されNが16原子%以上24原子%以下であり、かつ厚みが10nm以上で粉末平均粒径の10%未満のシェル層が形成されていることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末などによって提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性および磁気特性、特に保磁力と磁化に優れる希土類鉄窒素系磁性粉末とその製造方法に関する。
希土類鉄窒素系のThZn17型、ThNi17型、TbCu型結晶構造を有するRFe17(Rは希土類元素)窒化化合物は、優れた磁気特性を有する磁性材料として知られている。
中でもRとしてSm、x=3のSmFe17を主相化合物とする磁性粉末は、高性能の永久磁石用磁性粉末で、ポリアミド12やエチレンエチルアクリレートなどの熱可塑性樹脂、あるいはエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとするボンド磁石として多方面で応用されている。
一方で、このRFe17窒化化合物磁性材料には、耐熱性(耐酸化性)が悪いという欠点がある。例えば、特許文献1には、SmFe17磁性粉末で保磁力8.7kOe(0.69MA/m)、飽和磁化125emu/g(125Am/kg)であるが、耐酸化性試験で粉末を110℃の恒温槽に200時間放置後に測定すると、保磁力が加熱前の60%に低下している(比較例1参照)。
この問題を解決するために、希土類−遷移金属−窒素系磁性材料において、Feの一部を種々の元素で置換すること(特許文献1)、粉末の表面に耐酸化性被膜を形成して耐酸化性を改善することなどが数多く提案されてきた。また、FeにCr、Mnなどを添加すると、添加元素は主相SmFe17化合物のFeを置換する形で存在すると考えられている(非特許文献1、2参照)。
前記特許文献1では、MnでFeを置換する試みとして、Mnを0.5〜25原子%含み、Nを17〜25原子%とし、平均粒径10μm以上の粉末とすることが提案され、耐酸化性能が高められており注目に値する。
しかしながら、この場合、得られた粉末の耐熱性は改善されるが、保磁力を高めると磁化が低下してしまう問題点があった。非特許文献1、2には、添加元素が主相の磁化を低下させると示されており、特許文献1の場合、実施例1では保磁力6.6kOe(0.53MA/m)の粉体の飽和磁化が84emu/g(84Am/kg)であるが、実施例4ではMnを増量した結果、保磁力7.5kOe(0.60MA/m)となり温度特性も向上したが、飽和磁化が72emu/g(72Am/kg)に低下している。
また、Feの0.6〜36原子%がMnで置換されNが17〜25原子%である化合物は、Mnで置換されていない化合物に比べて、耐熱性が高いとされ(前記非特許文献2および特許文献1参照)、さらに非特許文献3によれば、このような化合物は、個々の粒子がSm(Fe,Mn)17化合物結晶相からなる10〜30nmのセル状微結晶粒と、窒素とマンガン組成が結晶相に比べてかなり高いアモルファスのセル境界相とからなる金属組織を呈するとされている。
一方、セル状微結晶粒とは別に、特許文献3および4には、Sm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織を呈することでも高い耐熱性が得られることが示されている。
ところで、前記特許文献1では、RFe17(Rは希土類元素)型の磁石が高純度のSm、Fe、Mnなどの金属を用い高周波溶解炉で溶解混合する溶解法で製造されているが、製造コストを低減するために、一般には合金粉末は還元拡散法で製造されている(特許文献2参照)。
還元拡散法による磁石粉末の製造に関して、特許文献2には、希土類金属(R)と遷移金属(TM)を含む母合金を、平均粒径が1〜10μmの粉末に粉砕する工程、粉砕された母合金粉末に希土類酸化物粉末と還元剤とを混合し、不活性ガス中800〜1200℃の温度で加熱処理する工程、得られた反応生成物を水素ガス雰囲気中で脆化・粉砕する工程、得られた反応生成物粉末を窒素またはアンモニアを用いて窒化し磁石合金粉末を得る工程を含む製造方法が記載され、これにより機械的粉砕が不要なほどに粒度分布の狭い希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得ることができ、耐熱性、耐候性だけでなく磁気特性にも優れた磁石粉末が得られている。
しかし、磁石粉末に樹脂バインダーを混合して成形される希土類元素を含む鉄系ボンド磁石では、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器等に至る幅広い分野において需要が拡大しており、材料の保管や輸送、製品の使用条件も厳しくなっていることから、さらに耐熱性に優れ保磁力などの特性が高いものが必要とされている。
特開平8−055712号公報 特開2005−272986号公報 特開2007−073842号公報 特開2009−088121号公報
電気学会論文誌A、124(2004)881 Proc. 12th Int. Workshop on RE Magnets and their Applications、Camberra、(1992)218 J.Appl.Phys.81(1997)4530
本発明の目的は、磁性粉末の耐熱性および磁気特性、特に保磁力と磁化に優れる希土類鉄窒素系磁性粉末とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上述したニュークリエーション型の保磁力機構を持つSmFe17磁性粉末における課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、粒子表面層(シェル)として耐熱性が高い、添加元素Mnを含有するR(Fe、Mn)17化合物相を存在させ、その内部の主たる体積部(コア)を飽和磁化の大きなRFe17化合物相とする、コアシェル構造を形成することによって、高い耐熱性と磁気特性が両立できるようになることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類元素R、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、ThZn17型、ThNi17型、TbCu型のいずれかの結晶構造を有する平均粒径が1μm以上10μm以下の磁性粉末であって、粉末の粒子表面に、平均的な組成としてFeの2原子%以上20原子%以下がMnで置換されNが16原子%以上24原子%以下であり、かつ厚みが10nm以上で粉末平均粒径の10%未満のシェル層が形成されていることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、希土類元素Rは、SmまたはNdのいずれかを含むことを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記シェル層の表面には、さらに燐酸系化合物被膜を有することを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、平均粒径が0.5〜10μmのRFe17希土類鉄合金粉末、平均粒径が1μm以下の希土類酸化物粉末、平均粒径が1μm以下のMn酸化物粉末を用意し、これら原料物質の混合物に還元剤として金属Caを加え、不活性ガス中にて還元拡散処理する工程を含む希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法であって、
前記還元拡散処理の工程で、希土類鉄合金粉末の100重量部に対して、希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末とがそれぞれ1〜20重量部の割合となり、金属Caが希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末の還元に必要な量に対して1.1〜10倍となるように混合し、730〜1000℃の温度範囲、かつCaによって還元されたMnがRFe17希土類鉄合金粉末内部まで拡散しない条件にて加熱処理し、RFe17希土類鉄合金がコア部となり、その表面でMnの拡散反応を促進させてR(Fe、Mn)17シェル層を形成させ、
次に、得られた還元拡散反応生成物を必要により解砕した後、窒素ガス及び/又はアンモニアと水素の混合ガスを供給し、この気流中で該反応生成物を300〜500℃の温度で所定の時間窒化熱処理する工程と、次に得られた窒化熱処理生成物の塊を水中に投入して湿式処理し崩壊させ、得られた磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化する工程をさらに含むことを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、前記RFe17希土類鉄合金粉末の平均粒径が8μm以下、かつMn酸化物粉末の平均粒径が0.1μm以下であることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第4の発明において、前記窒化温度が400〜450℃であることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第4の発明において、前記原料物質は、含有水分量が1質量%以下であることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第4の発明において、前記の還元拡散処理の工程において、加熱処理条件を2段階とし、前段で730〜810℃の温度において0.5〜4時間保持し、後段では、さらに温度を上げて800〜1000℃の温度において3時間以内保持することを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第4又は6の発明において、前記窒化熱処理工程において、窒素気流中で処理を開始し、途中でアンモニア、アンモニアと水素の混合ガス、またはアンモニアと窒素と水素の混合ガスに切り替えることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
一方、本発明の第10の発明によれば、RFe17希土類鉄合金粉末を希土類金属とMnによりプラズマ蒸着処理する工程を含む希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法であって、
平均粒径が0.5〜10μmのRFe17希土類鉄合金粉末を処理容器に入れてから、希土類金属とMnをターゲットとして備えたプラズマ蒸着装置に装入して、真空条件下、ターゲットから蒸発する希土類金属とMnの微粒子をRFe17希土類鉄合金粉末の表面全体に付着させ、引き続き、形成された希土類金属とMnが含まれる蒸着膜を480〜630℃の温度範囲で加熱処理し、RFe17希土類鉄合金粉末がコア部となり、その表面でMnの拡散反応を促進させてR(Fe、Mn)17シェル層を形成させ、
次に、得られた反応生成物を必要により解砕した後、窒素ガス及び/又はアンモニアと水素の混合ガスを供給し、十分な量の窒素ガスを含む気流中で該反応生成物を300〜500℃の温度で所定の時間窒化熱処理する工程と、次に得られた窒化熱処理生成物の磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化する工程をさらに含むことを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、前記プラズマ蒸着処理する工程において、処理容器を振動させて、RFe17希土類鉄合金粉末を撹拌することを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第10の発明において、前記プラズマ蒸着処理する工程において、微粒子の大きさが1μm以下、かつ組成の(希土類)/(希土類+Mn)が原子比で2/17以上であることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第13の発明によれば、第10の発明において、前記窒化熱処理工程において、窒素気流中で処理を開始し、途中でアンモニア、アンモニアと水素の混合ガス、またはアンモニアと窒素と水素の混合ガスに切り替えることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法が提供される。
本発明によれば、従来のSmFe17磁性粉末に比べて高い耐熱性を有し、また公知の高耐熱性のR(Fe、M)17磁性粉末(M=Cr、Mn)に比べても同等以上の磁気特性を有する磁性粉末が実現できる。
そのため、樹脂そのものの耐熱性が高い、ポリフェニレンサルファイド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとする高性能・高耐熱ボンド磁石の調製に、原料粉末として使用でき、高温での成形が可能になる。また、磁性粉末を圧粉成形し焼結した磁石においても、従来のような保磁力劣化が抑制されバインダレスの高性能磁石が可能となる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。
≪希土類鉄窒素系磁性粉末≫
本実施の形態に係る希土類鉄窒素系磁性粉末は、希土類元素R、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、ThZn17型、ThNi17型、TbCu型のいずれかの結晶構造を有する平均粒径が1〜10μmの磁性粉末であって、コア部となる粒子表面に、平均的な組成としてFeの2〜20原子%がMnで置換され、Nが15〜24原子%である、厚みが10nm以上で粉末平均粒径の10%未満の層(シェル層)が形成されている。
希土類元素Rとしては、特に制限されないが、Sm、Pr、Nd、Gd、Tb、およびCeから選ばれる少なくとも1種の元素、あるいは、さらにDy、Ho、Er、Tm、およびYbから選ばれる少なくとも1種の元素が含まれるものが好ましい。中でもSmあるいはNdが含まれるものは、本発明の効果を顕著に発揮させるので特に好ましく、ボンド磁石に応用される場合には、その50原子%以上がSmであること、高周波磁性材料に応用される場合にはその50原子%以上がNdであることが望ましい。
前記の非特許文献2および特許文献1によれば、Feの0.6〜36原子%がMnで置換されNが17〜25原子%である化合物は、Mnで置換されていない化合物に比べて、耐熱性が高い。また、前記非特許文献3によれば、このような化合物は、個々の粒子がSm(Fe,Mn)17化合物結晶相からなる10〜30nmのセル状微結晶粒と、窒素とマンガン組成が結晶相に比べてかなり高いアモルファスのセル境界相とからなる金属組織を呈するとされている。
一方、セル状微結晶粒とは別に、前記特許文献3および4によれば、Sm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織を呈することでも高い耐熱性が得られることが示されている。
本発明は、これらの金属組織を有するシェル層を、平均粒径が1〜10μmの粒子のコア部表面に、10nm以上で粉末平均粒径の10%未満の厚みで存在させることにより、耐熱性と磁気特性を両立させようとするものである。
ここで磁性粉末の平均粒径が1μm未満では取扱いが困難であり、また粒子全体積に占める磁気特性の高いコアの体積比率が小さくなって磁気特性を高めにくい。また10μmより大きくなると磁性材料として十分高い保磁力Hを得にくい。好ましい平均粒径は1〜10μmであり、より好ましい平均粒径は2〜9μmである。
シェル層の厚みは、10nm未満ではシェル層の形成されない部分ができてしまい磁性粉末粒子の耐熱性を十分改善できず、厚みが平均粒径の10%を超えると磁性粉末粒子全体に占めるシェル層の体積比率が大きくなって、すなわち磁気特性の高いコアの体積比率が小さくなって、耐熱性が改善されても磁気特性を高めることができない。シェル層の好ましい厚みは、11nm以上であり、平均粒径の10%以下、さらに好ましくは7%以下である。
また、シェル層において平均的な組成としてFeに対するMnの置換量が2原子%未満ではシェル層そのものの耐熱性が上がらず、20原子%を超えると磁化ばかりではなくシェル層自体の保磁力も低下して、磁性粉末粒子の残留磁化と保磁力が低下する。Feに対するMnの好ましい置換量は、3〜20原子%であり、より好ましい置換量は、5〜19原子%である。
シェル層において平均的な組成として、Nが16原子%未満であるか24原子%を超えると、シェル層自体の保磁力が低下して、磁性粉末粒子の保磁力が低下する。好ましいN量は17〜23原子%であり、より好ましいN量は19〜22原子%である。
ここで「平均的な組成」というのは、シェル層が上述した、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織、またはSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部に長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織のいずれか、あるいは両方の金属組織を呈するときがあり、いずれの金属組織でもアモルファス相は、周囲の結晶相に比べてMnおよびNの濃度が高いため、結晶相とアモルファス相の両方の組成が、どちらかに偏ることなく全体として捉えられるように評価した組成という意味である。
シェル層の内側のコアの部分については、Feの20原子%以下をCoで置換することができる。Co置換によってコア部の飽和磁化とキュリー温度を高めることができる。キュリー温度を高める効果は、シェル部についても同様であり、Feの一部をCoに置換することができる。
本発明の磁性粉末は、上記の形態を有しており、耐熱性が高い、添加元素Mnを含有するR(Fe、Mn)17化合物相を粒子表面層(シェル)として存在させ、その内部の主たる体積部(コア)が、飽和磁化の大きなRFe17化合物相とするコアシェル構造をとることによって、高い耐熱性と磁気特性を両立できるようになる。
すなわち、いわゆるニュークリエーション型の保磁力機構を持つSmFe17磁性粉末では、Mnは主相SmFe17化合物のFeを置換する形で存在すると考えられ、主相の磁化を低下させることから、添加元素によって耐熱性が改善されても磁気特性が低下するが、本発明の磁性粉末は、コア部にMnが存在せず、シェル層への添加元素によって耐熱性が改善され、かつ磁気特性が低下しない。
本発明では、磁性粉末のシェル層の外側に公知の燐酸系化合物被膜を設けると、湿度環境下での安定性を高めることができる。燐酸系化合物被膜の厚みは、シェル層の厚みよりも薄いことが望ましい。例えば30nm以下とし、5〜20nmが好ましい。燐酸系化合物被膜の厚みが厚く30nmを超えると磁気特性が低下することがある。
本発明の希土類鉄窒素系磁性粉末は、上記形態を有するために、残留磁化σが105Am/kg以上、保磁力Hが410kA/m以上、粉末を300℃で加熱した後の保磁力Hc,300と加熱前の保磁力Hとの比:Hc,300/Hが80%を超える高い耐熱性を示すようになる。
≪希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法≫
本発明の希土類鉄窒素系磁性粉末は、特定の条件を採用する還元拡散法やプラズマ蒸着法などにより製造できる。
還元拡散法による場合、平均粒径が0.5〜10μmのRFe17希土類鉄合金粉末、平均粒径が1μm以下の希土類酸化物粉末、平均粒径が1μm以下のMn酸化物粉末を用意し、これらの混合物に還元剤としてアルカリ土類金属を加え、不活性ガス中にて還元拡散処理する工程を含んでいる。
本発明では、この還元拡散処理の工程で、RFe17希土類鉄合金粉末の100重量部に対して、希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末とがそれぞれ1〜20重量部の割合となり、金属Caが、RFe17希土類鉄合金粉末に含有される酸素、希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末の還元に必要な量に対して1.1〜10倍となるように混合し、730〜1000℃の温度範囲、かつCaによって還元されたMnがRFe17希土類鉄合金粉末中心まで拡散しない条件にて加熱処理し、RFe17希土類鉄合金がコア部となり、その表面でMnの拡散反応を促進させてR(Fe、Mn)17シェル層を形成させる。
そして、得られた還元拡散反応生成物を必要により解砕した後、アンモニアと水素の混合ガス、窒素ガス、アンモニアと窒素の混合ガス、窒素と水素の混合ガス、またはアンモニアと窒素と水素の混合ガスを供給し、この気流中で該反応生成物を300〜500℃の温度で所定の時間窒化熱処理する工程と、次に得られた窒化熱処理生成物の塊を水中に投入して湿式処理し崩壊させ、得られた磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化する工程をさらに含んでいる。
(原料物質)
まず、原料物質として、RFe17希土類鉄合金粉末、希土類酸化物粉末、Mnの酸化物粉末を用意する。
Fe17希土類鉄合金粉末は、磁性粉末のコアになる原料で、その平均粒径が0.5〜10μmであって、本発明の希土類鉄窒素系磁性粉末の目標粒径に対して90%未満であるのが望ましい。RFe17希土類鉄合金粉末を製造するには、公知技術である還元拡散法、あるいは溶解鋳造法、液体急冷法などによることができる。
還元拡散法であれば、その原料である鉄粒子の大きさと還元拡散反応の温度等の条件を調整することで、所望とする粒径の合金粉末を直接製造できる。あるいは、より大きな粒径の合金粉末や合金塊を出発として所望の粒径まで粉砕して製造することもできる。磁粉の平均粒径が前記の通り1〜10μmであることを考えれば、原料として用いる合金粉は、シェルが形成される分だけ若干小さいから、平均粒径が0.5〜10μmのものが好ましい。
なお還元拡散法によるRFe17希土類鉄合金粉末では製造条件によって、金属間化合物中に水素が含まれRFe17希土類鉄合金粉末となって、結晶構造は変わらないが格子定数がRFe17希土類鉄合金粉末より大きくなっている場合もある。また溶解鋳造法や液体急冷法の合金においても、粉末化するのに水素を吸蔵させて粉砕した粉末では、同様に格子定数が大きなRFe17希土類鉄合金粉末となっている場合がある。合金粉末がこのような水素を含有する状態でも差支えない。ただしRFe17希土類鉄合金粉末の含有水分量は1質量%未満であることが重要である。
希土類酸化物粉末とMnの酸化物粉末については、シェル層を所望の厚みで均一に形成するためには、微細な粉末である必要がある。希土類酸化物粉末としては、その平均粒径が1μm以下で、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。ここでの粒径は、後述する混合・粉砕後のSEMで見た平均粒径である。
Mnの酸化物粉末にはMnO、Mn、Mn、MnO、MnOがあるが、安定性と取り扱いやすさからMnが望ましい。Mnの微粒子は、製法によって制限されず公知の乾式法、湿式法によることができ、例えば酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン、炭酸マンガンなどのマンガン化合物の水溶液、有機溶媒、または多溶媒系などを含む液相で反応させ粒子成長させて調製することができる。
一例として、Mn微粒子の作製法を説明する。まず、オレイルアミン100重量部に対して、ステアリン酸を10〜30重量部、酢酸マンガン水和物を2〜20重量部秤量し、オレイルアミンの容積の2〜10倍量のキシレンに溶解する。酢酸マンガン水和物としてはMn(CHCOO)・4HOやMn(CHCOO)・2HOがある。
この溶液を60〜130℃で攪拌しながら加温し、攪拌したまま2〜15重量部のイオン交換水を滴下して、そのまま1〜10時間保持した後、冷却するとMn微粒子のコロイドが生成する。攪拌には、スターラーのような撹拌子を使うこともできるし、超音波振動による攪拌、湿式ジェットミルなど強いせん断を与えて攪拌することもできる。
冷却後の溶液に、キシレンの2〜5倍量の容積のメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールを加えてさらに攪拌するとMn微粒子コロイドが凝集し沈殿する。この沈殿を遠心分離器にかけて可能な限り上澄みを除去する。これに同量のアルコールを加えて攪拌し、再び遠心分離器にかけて上澄みを捨てる。
この操作を繰り返して、最終的に得られるMn微粒子中のC量が1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下になるようにする。上澄みを捨てた沈降物を減圧加熱乾燥すれば乾燥粉末が得られるが、凝集しやすいため、この沈降物のまま湿式でRFe17希土類鉄合金粉末、希土類酸化物粉末と混合し、混合物を乾燥してから還元剤を加えるのが望ましい。
なお、最初の工程で、酢酸マンガン水和物、オレイルアミン、ステアリン酸、キシレンを使用したが、同様な機能を有する有機化合物を用いることができる。例えば、酢酸マンガン水和物の代わりに硝酸マンガン六水和物などの硝酸マンガン水和物、硫酸マンガン水和物、塩化マンガン四水和物などの塩化マンガン水和物、炭酸マンガン水和物;オレイルアミンの代わりにリノールアミン、リノレンアミンなどの直鎖状、分岐状あるいは環状の不飽和脂肪族1級、2級または3級アミン;ステアリン酸の代わりに、ギ酸、シュウ酸、酢酸、オレイン酸、リノール酸などのカルボン酸;キシレンの代わりに、ベンゼン、トルエン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類を挙げることができる。
また、Mnの酸化物粉末の平均粒径は1μm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。この粒径も混合・粉砕後のSEMで見た平均粒径である(以下、同様である)。希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末との複合酸化物粉末も利用でき、その平均粒径も1μm以下であり、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下で、これらの酸化物粉末を複合的に使うこともできる。また、これら希土類酸化物粉末とMnの酸化物粉末の含有水分量および残留するC量は、1質量%未満であることが好ましい。
(原料混合)
本発明では、平均粒径が0.5〜10μmのRFe17希土類鉄合金粉末と、所望の希土類酸化物粉末、Mnの酸化物粉末、及び/または希土類マンガン複合酸化物粉末との混合操作が重要で、均一なシェル層を付与するには酸化物原料の粒度をなるべく微細にするとともに均一に分散させる必要がある。
乾式の混合機としては、不活性ガス雰囲気中で、ヘンシェルミキサー、コンピックス、メカノハイブリッド、メカノフュージョン、ノビルタ、ハイブリダイゼーションシステム、ミラーロ、タンブラーミキサー、シータ・コンポーザ、スパルタンミキサーなどが用いられる。湿式の混合機としては、ビーズミル、ボールミル、ナノマイザー、湿式サイクロン、ホモジナイザー、ディゾルバー、フィルミックスなどが用いられる。
ここで、RFe17希土類鉄合金粉末を微粉砕して平均粒径が0.5〜10μmのものを作製する場合には、微粉砕時に所望の希土類酸化物粉末、Mnの酸化物粉末、及び/または希土類マンガン複合酸化物粉末を加えて、同時に微粉砕することで均一な混合物を得ることができる。なお、平均粒径の下限が1μmで、シェルの厚さの下限が10nmである磁粉は、平均粒径0.5μmの小さな合金粉を用いても、粒の結合や成長によって、磁粉の平均粒径が1μm以上に大きくなる。
本発明では、以下の還元拡散処理により、厚みが10nm以上で粉末平均粒径の10%未満のシェル層が形成されるように、RFe17希土類鉄合金粉末の平均粒径が8μm以下、かつMn酸化物粉末の平均粒径が0.1μm以下であることが好ましい。
微粉砕には、ジェットミルなどの乾式粉砕機も使用可能であるが、エタノールまたはイソプロピルアルコール等のアルコール類、ケトン類、へキサンなどの低級炭化水素類、トルエンなどの芳香族類、フッ素系不活性液体類、またはこれらの混合物などの有機溶媒を用いて振動ミル、回転ボールミル、媒体攪拌ミルで湿式微粉砕することも可能である。これらの微粉砕混合では、希土類酸化物粉末やMn酸化物粉末、あるいは希土類マンガン複合酸化物粉末も微粉砕され、それらが均一に分散するので好ましい。湿式法では微粉砕後のスラリーから有機溶媒を乾燥除去し、得られた混合粉末に対して不活性ガス雰囲気下、あるいは徐酸化して大気中で必要量のCa粒を加えてVブレンダー、Sブレンダー、リボンミキサ、ボールミル、ヘンシェルミキサーなどで再び混合することで良好な混合物となる。
この際、微粉混合物中の含有水分量が1質量%未満であることが望ましく、そのため含まれる水分だけでなく炭素を十分に除去するために減圧で乾燥させることが望ましい。
本発明において含有水分量とは、乾燥後の混合粉末の含有不純物量であり、試料50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αを測定したものである。水分が主体であるため含有水分量と呼ぶが、混合時に用いられる有機溶媒、分散助剤、取扱いプロセスの種類によっては炭素も含まれうる。これらの総量を、試料50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αとして評価し、それが1質量%未満になるようにする。これら水分、炭素化合物の和が1質量%以上になると、還元拡散処理中に水蒸気や炭酸ガスとなって還元拡散反応に悪影響を及ぼすことがある。
(還元拡散処理)
還元拡散処理では、RFe17希土類鉄合金粉末の含有酸素、希土類酸化物粉末、Mnの酸化物粉末、またはこれらの複合酸化物粉末の還元剤として、Mg、Ca、SrまたはBaおよびこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属が用いられる。これらの中では特にCaが有用であるので、以下Caを例に記述する。またこれらの還元剤は粒状で供給されることが多いが、0.5〜10mmのものを使用するのが望ましい。
そして、RFe17希土類鉄合金粉末に、希土類酸化物粉末、Mn酸化物粉末とCa粒とを混合する。その際の混合割合は、合金粉末の100重量部に対して、希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末とがそれぞれ1〜20重量部の割合となるようにすることが好ましい。還元剤であるCaは、RFe17希土類鉄合金粉末の含有酸素、希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末の還元に必要な量に対して1.1〜10倍とするのが望ましい。さらにRFe17希土類鉄合金粉末に混合する、希土類酸化物粉末、Mn酸化物粉末の混合粉末の含有水分量が1質量%未満であることが望ましい。
希土類酸化物粉末が1重量部未満であると、還元拡散処理後にRFe17希土類鉄合金粉末表面にFeおよび/またはMnリッチ相が生成し、最終的に得られる希土類鉄窒素系磁性粉末の保磁力が低下する。一方で、希土類酸化物粉末が20重量部を超えるとRFe17希土類鉄合金よりもRリッチなRFeおよび/またはRFe化合物が多く生成し、最終的に得られる希土類鉄窒素系磁性粉末の収率が低下する。Mn酸化物粉末が1重量部未満であると最終的に得られる希土類鉄窒素系磁性粉末の耐熱性が改善されず、20重量部を超えると優れた磁気特性を得ることができない。一方、Caが1.1倍未満であると酸化物が還元された後に拡散が進みにくく、10倍を超えるとCaに起因する残留物が多くなりその除去に手間がかかるために好ましくない。
Fe17希土類鉄合金粉末に、希土類酸化物粉末、Mn酸化物粉末を混合した粉末の含有水分量が1質量%を超えると、還元拡散処理中に水蒸気や炭酸ガスとなってCaを酸化させ、還元拡散反応を抑制し、最終的に得られる希土類鉄窒素系磁性粉末にα‐Feが生成して優れた磁気特性が得られないことがある。混合粉末は十分に減圧乾燥することが望ましい。
これらの原料物質およびCa粒を混合するが、本発明においては均一な混合が行われることが重要である。混合器としてはVブレンダー、Sブレンダー、リボンミキサ、ボールミル、ヘンシェルミキサー、メカノフュージョン、ノビルタ、ハイブリダイゼーションシステム、ミラーロなどが使用できるが、均一に混合され、特に原料であるRFe17希土類鉄合金粉末に、希土類酸化物粉末、Mn酸化物粉末の偏析がないように混合する必要がある。酸化物粉末が偏析すると、シェル層の厚みのばらつきの原因になる。
得られた混合物は、鉄製るつぼに装填し、該るつぼを反応容器に入れ電気炉に設置する。混合から電気炉への設置まで、可能な限り大気や水蒸気との接触を避けるのが好ましい。混合物内に残留する大気や水蒸気を除去するため、反応容器内を真空引きしてHe、Arなどの不活性ガスで置換することが好ましい。
その後、反応容器内を再度真空引きするか、He、Arなどの不活性ガスを容器内にフローしながら混合物を還元拡散処理する。この熱処理は、730〜1000℃の温度範囲で、好ましくは750〜1000℃であり、かつCaによって還元されたMnがRFe17希土類鉄合金粉末内部まで拡散しない条件とすることが必要である。
730℃より低い温度ではCaで希土類酸化物やMn酸化物の還元は進んでも、RFe17希土類鉄合金粉末表面での拡散反応によるシェル層の形成が進み難く、最終的に得られる磁性粉末において耐熱性の向上が望めない。一方、1000℃を超えると、還元されたMnがRFe17希土類鉄合金粉末の中心部にまで拡散してしまい所期の厚みを持ったシェル層が得られず、最終的に得られる磁性粉末において耐熱性の向上が望めない。
また、混合物の加熱保持時間も、Mnの拡散によるシェル層の厚みを調整するように加熱温度と併せて設定される。すなわち設定温度で0〜8時間保持する。保持時間は、0〜5時間が好ましく、より好ましくは0〜3時間とする。この「0時間」とは、設定温度に到達後、すぐに冷却することを意味する。8時間を超えるとMnの拡散によるシェル層の厚みが増大し目的とする粒子性状を得ることが難しくなることがある。
粒子表面にα−Feなどの軟磁性相や結晶磁気異方性を低下させる結晶欠陥などが存在すると、そこが逆磁区の発生核となって粒子保磁力が低下する。磁性粉末の耐熱性が悪いのは、加熱によって表面のRFe17化合物相が分解してα−FeやFeの窒化物などの軟磁性相が生成し、それが逆磁区発生核になるためであるが、本発明では、磁性粉末表面のシェル層にMnを含有させR(Fe、Mn)17化合物相としたことにより、その化合物相の加熱による分解がRFe17化合物相の場合より起こりにくくなるため、磁性粉末の耐熱性(耐酸化性)が改善される。この効果は、例えば加熱処理条件を2段階としたときに有利に得ることができる。
すなわち、前記の還元拡散処理の工程において、加熱処理条件を2段階とし、前段で730〜810℃の温度において0.5〜4時間保持し、後段では、さらに温度を上げて800〜1000℃の温度において3時間以内保持することができる。この条件にすれば、希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末とがそれぞれ希土類金属とMn金属に還元され、しかもCaによって還元されたMnがRFe17希土類鉄合金粉末内部までは拡散せず、RFe17希土類鉄合金がコア部となり、その表面でMnの拡散反応が促進されてR(Fe、Mn)17シェル層が形成される。
ただし、還元拡散処理の条件は、Mn酸化物粉末の大きさによってシェル層の形成に差が生じることがある。Mn酸化物粉末の平均粒径が0.01μm以下と小さい場合は、0.02μm以上と大きい場合よりもマイルドな条件を採用することが望ましい。
例えば、前記の還元拡散処理の工程において、Mn酸化物粉末の平均粒径が0.01μm以下の場合は、前段で730〜810℃の温度において1〜4時間保持し、後段では、さらに温度を上げて800〜1000℃の温度において3時間以内保持することが好ましい。
一方、前記の還元拡散処理の工程において、Mn酸化物粉末の平均粒径が0.02μm以上の場合は、前段で750〜850℃の温度において0.5〜5時間保持し、後段では、さらに温度を上げて830〜1000℃の温度において3時間以内保持することが好ましい。
本発明で、加熱処理条件を2段階とする場合、用いたMn酸化物粉末の平均粒径に応じて、前段と後段の加熱条件を上記の範囲に設定して行うことで、磁性粉末表面のシェル層にMnを含有させた後、窒化してR(Fe、Mn)17化合物相とする。R(Fe、Mn)17化合物相は、コア部よりも過剰に窒素を導入しx=4.0〜5.5とすることにより、相内に周囲よりMnとNに富むアモルファス相が生成し、R(Fe、Mn)17化合物の微結晶粒が集合した組織に変化する。この微結晶組織が高い耐熱性を示すため、磁性粉末全体の耐熱性(耐酸化性)が確実に改善される。
以上の加熱処理が終了した反応生成物は、Feの2〜20原子%がMnで置換され、厚み10nm以上で粉末平均粒径の10%未満のシェル層を表面に有するRFe17希土類鉄合金粒子、RFeおよび/またはRFe化合物、副生したCaO粒子、未反応残留Caからなる焼結体である。
なお、前記特許文献2(特開2005−272986号公報)には、希土類酸化物粉末に保磁力の向上、生産性の向上、さらに低コスト化のため、7重量%以下のMnなどを添加してもよいとの記載がある(段落0030)。しかしながら、このMnなどを添加して製造される希土類−遷移金属系母合金は、シェル層の形成を意図したものではなく、Mnがコアの部分に含有されるから、本発明とは全く異なる構造になり、耐熱性の向上には貢献しない。
(窒化熱処理)
次に、還元拡散処理の反応生成物に対して、窒化熱処理を施す。窒化熱処理には、公知の方法を用いることができ、例えば、Nガス雰囲気、NガスとHガスの混合雰囲気、NHガス雰囲気、NHガスとHガスの混合雰囲気、NHガスとNガスの混合ガス雰囲気、NHガスとNガスとHガスの混合ガス雰囲気が採用できる。
好ましいのはNガス雰囲気、およびNHガスとHガスの混合雰囲気であり、まずNガス雰囲気中、300〜500℃の温度範囲で反応生成物を加熱して、粒子全体をRFe172.4〜3.4の原子比(N:10〜15原子%)となるようにし、次にNHガスを含む雰囲気ガスに変えて、シェル層のみがR(Fe、Mn)173.5〜5.7の原子比(N:16〜24原子%)となるように加熱することがより好ましい。
このとき加熱温度が300℃未満では窒化が進まず、一方、500℃を超えると合金が希土類元素の窒化物と鉄に分解するので好ましくない。好ましいのは、350〜480℃であり、より好ましいのは、400〜450℃である。
また、処理時間は、ガス種、ガス流量と加熱温度に関係し、ガス流量と加熱温度が小さいほど長時間とする。NHガスとHガスの混合雰囲気の場合は、例えば180〜340分が好ましく、200〜320分がより好ましい。また、ガスを切り替える場合の処理時間は、Nガス雰囲気では、例えば110〜280分とし、NHガスとHガスとの混合雰囲気では、2〜30分とするのが好ましい。
反応生成物には微細な空隙があるので、焼結した塊状でも内部のRFe17希土類鉄合金粒子まで窒化することは可能であるが、より均一な窒化を目的として塊状反応生成物を解砕してから窒化熱処理することもできる。解砕には、機械的に解砕する方法、反応生成物を水素ガス雰囲気中に置きRFeおよび/またはRFe化合物の水素吸収による体積膨張を利用して解砕する方法、などいずれでもよい。またコア部における均一な窒素分布を得て磁石粉末の角形性を向上させるために、必要に応じ、窒化熱処理に続いて、真空中、又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で磁石粉末を加熱し、磁石粉末に過剰に導入された窒素や水素を排出させてもよい。
窒化熱処理における、これらの温度、雰囲気、処理時間を調整することによって、Mnが拡散していないコア部においては、RFe172.4〜3.4の原子比(N:10〜15原子%)となるようにし、Mnが拡散したシェル層においては、R(Fe、Mn)173.5〜5.7の原子比(N:16〜24原子%)となるようにする。
Mnは窒素との親和性が高くシェル層にのみ存在するのでN量のコントロールは可能である。ただしシェル層を十分な窒素量のR(Fe、Mn)173.5〜5.7とするには、窒化熱処理における雰囲気ガスにNHガスが含まれている必要がある。このときNHガスまたはHが含まれた雰囲気ガスだけを供給すると、窒化温度や時間の条件によっては、シェル層に存在していたMnが、窒化熱処理後にコアにまで拡散して、シェル層が消失してしまうことがある。
そのような懸念がある場合には、Hを含まないNガス雰囲気で昇温すると共に所定の温度で保持し、その後NHガス雰囲気、NHガスとHガスの混合雰囲気、NHガスとNガスの混合ガス雰囲気、またはNHガスとNガスとHガスの混合ガス雰囲気に切り替えて、シェル層を所定のN量とする。
この雰囲気の切替えにあたっては、一旦温度を下げて、切り替えた雰囲気中で再度昇温してもよいし、温度を下げることなく所定の温度に保ったままで雰囲気ガスのみを切り替えてもよい。シェル層が所定のN量になったら、Nガス雰囲気またはArガス雰囲気に切り替えて冷却する。なお冷却前に、Nガス雰囲気またはArガス雰囲気で磁石粉末を加熱すれば、磁石粉末に過剰に導入された窒素や水素を排出させることができる。
以上により、シェル層が上述の、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織、および/またはSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部に長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織を呈する構造となる。
このような金属組織の構造が形成される製造条件については、まだ十分に解明されたわけではないが、還元拡散反応生成物の希土類元素、Fe、Mnを成分とする菱面体晶または六方晶の結晶構造を有する相からなる主相に何らかの構造欠陥が生じると、これを起点として、その後の窒化により、主相内部でアモルファス相がワイヤー状形態となるものと考えられる。
本発明では、コア部に対するシェル層が占める割合が大きくはないので、このように主相に何らかの構造欠陥を生じさせるかどうかは任意である。Sm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部に長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織の割合を増加させるには、手段として、還元拡散反応生成物を急冷すること、還元拡散反応生成物を徐冷する途中に一定温度で長時間保持すること、圧力や冷却雰囲気を急変させること、冷却された合金が急速に水素を吸収する条件で水素処理することなどが考えられる。
(湿式処理)
次に、窒化熱処理後に冷却し回収された反応生成物を水中に投入し、0.1〜24時間放置すると、細かく崩壊しスラリー化する。このときスラリーのpHは10〜12程度であり、pHが10以下になるまで注水、攪拌と上澄み除去のデカンテーションを繰り返す。その後、スラリーのpHが5〜6になるように酢酸などの酸を添加しスラリー中のCa(OH)を溶解除去する。スラリー中にRFeおよび/またはRFe化合物由来の余剰窒化物が含まれている場合には、pHが5〜6を保つように酸を添加しながら攪拌洗浄を続けて、これら余剰窒化物も溶解除去する。その後、残留する酸成分を水で洗浄除去してから固液分離し乾燥する。乾燥は、真空中または不活性ガス雰囲気中で、100〜300℃、好ましくは150〜250℃に加熱して行う。
(解砕・微粉末化処理)
このようにして得られた粉末は、希土類元素R、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、ThZn17型、ThNi17型、TbCu型のいずれかの結晶構造を有する平均粒径が1〜10μmの磁性粉末であって、粒子表面に、結晶構造は同じであるがFeの2〜20原子%がMnで置換されNが16〜24原子%である、厚み10〜1000nmの層(シェル層)が形成された磁性粉末となっている。
還元拡散処理の条件によっては、得られた粉末が焼結してネッキングを起こしていることがある。異方性の磁石材料に応用する場合には、ネッキングにより磁性粉末の磁界中配向性が悪化するため、解砕するのが好ましい。解砕には、ジェットミルなどの乾式粉砕機や媒体攪拌ミルなどの湿式粉砕機が利用できる。いずれも強いせん断や衝突による粉砕となる条件は避けて、ネッキングした部分を解く程度の弱粉砕条件で運転する必要がある。
また粉末が高湿度環境下で応用される場合には、得られた希土類鉄窒素系磁性粉末の外側に公知の燐酸系化合物被膜を設けると安定性を高めることができる。燐酸系化合物被膜を形成する方法は、本出願人による特許第5071160号、特許第4407047号、特許第4345588号、特許第4241461号に詳細に記載されている。本発明では、シェル層を考慮して薄目にする。20nmよりも厚いと磁化が低下することがあるので、5〜20nm程度の皮膜にするのが望ましい。
本発明では、以上のような、RFe17希土類鉄合金微粉末に、希土類酸化物粉末、Mn酸化物粉末を混合しCa還元拡散処理でコアシェル構造を形成する方法が好ましいが、同様なコアシェル構造が形成できる方法であれば、限定されず、プラズマ蒸着法など還元拡散処理以外の方法によることも可能である。
(プラズマ蒸着法)
本発明では、アークプラズマでRとMnターゲットから蒸発させたRとMnの微粒子をRFe17合金微粉末表面に付着させ拡散処理するプラズマ蒸着法で、表面層にR(Fe,Mn)17シェル層を形成し、その後、窒化熱処理することで本発明の希土類鉄窒素系磁性粉末を得ることができる。
この方法は、平均粒径が0.5〜10μmのRFe17希土類鉄合金粉末を処理容器に入れてから、希土類金属とMn、および/または希土類金属とMnの合金をターゲットとして備えたプラズマ蒸着装置に装入して、真空条件下、ターゲットから蒸発する希土類金属とMnの微粒子をRFe17希土類鉄合金粉末の表面全体に付着させ、引き続き、形成された希土類金属とMnが含まれる蒸着物を480〜630℃の温度範囲で加熱処理し、RFe17希土類鉄合金粉末がコア部となり、その表面でMnの拡散反応を促進させてR(Fe,Mn)17シェル層を形成させる工程を含んでいる。
プラズマ蒸着には、RFe17希土類鉄合金微粉末を攪拌しながら希土類金属とMn金属を蒸着してこれらの微粒子を付着させる機能を有する装置であれば、各種装置を使用できるが、特にナノ粒子のような微小粒子の表面に金属層を形成するための真空アークプラズマ蒸着装置を使用することが好ましい。
本発明におけるプラズマ蒸着処理工程では、真空下で高純度の希土類とMn、および/または希土類金属とMnの合金、をターゲットとした蒸着源に向けてパルス状にプラズマアークを放電させる。各ターゲットには夫々所定の電圧をかけ、各10000〜50000ショット放電することで同時に蒸着することができる。なお、ショット回数は多いほど得られるシェル層の厚みを大きくすることができるが、処理する合金粉末の粒径や処理量などによっても調整する必要がある。
蒸着法では、コアとなるRFe17希土類鉄合金微粉末を十分攪拌して表面に万遍なく希土類微粒子とMn微粒子を付着させることが重要である。そのため、本発明においてプラズマ蒸着処理中、装置内では、RFe17希土類鉄合金微粉末を入れた処理容器を振動させて、RFe17希土類鉄合金粉末を撹拌することが好ましい。
振動方法に制限はないが、例えば深さが5mm以下と比較的底が浅い容器に、RFe17希土類鉄合金微粉末を入れ、容器を振動(ローリング)させることが望ましい。5mmを超えるような深い容器に多量のRFe17希土類鉄合金粉末を入れると、容器の底部付近に位置する粉末は蒸着処理が受けられにくい。また、容器に強い上下運動を作用させると、粉末が容器外に流出したり不均一な蒸着が行われやすい。本発明ではコアとなるRFe17希土類鉄合金微粉末を十分攪拌して表面に万遍なく希土類微粒子とMn微粒子を付着させることが重要である。
蒸着法では、RFe17希土類鉄合金微粉末に付着させる蒸着微粒子のサイズが、300nm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下であることが望ましい。微粒子の大きさが300nmを超えると、その後の熱処理で形成されるシェル層が厚くなって、最終的に得られる磁性粉末の磁気特性を悪くすることがある。
また蒸着微粒子の組成は、原子比で(希土類)/(希土類+Mn)が2/17より希土類に富む組成であることが必要である。2/17以下であると、拡散処理後にRFe17希土類鉄合金微粉末にα−Feまたはα−(Fe,Mn)が生成し、窒化熱処理しても優れた磁気特性が得られない。
希土類とMnの微粒子が蒸着した合金粉末は、その後、加熱装置に移して、480℃〜630℃で10〜60分間加熱し微粒子表面に希土類とMnを拡散させてシェル層を形成する。真空下に500℃〜600℃で20〜40分間加熱するとシェル層が均質化しやすいので好ましい。
本発明では、前記還元拡散法による場合と同様、窒化熱処理工程において、窒素気流中で処理が行われる。気流中に水素が含まれるとシェル構造が消失する恐れがある。アンモニアだけでも反応過程で水素が生成する。そのため水素を含まない窒素気流中で処理を開始し、十分に窒化を進めてから、アンモニア、アンモニアと水素の混合ガス、アンモニアと窒素の混合ガス、またはアンモニアと窒素と水素の混合ガスに切り替えることが好ましい。
例えば、Nガス気流中により300℃〜500℃で2時間〜8時間の熱処理を行い、その後に300℃〜500℃で2分〜100分間、アンモニア、アンモニアと水素の混合ガス、アンモニアと窒素の混合ガス、またはアンモニアと窒素と水素の混合ガスに切り替えることにより、これらの雰囲気で熱処理するようにすれば、水素の浸入が減りシェル層の消失を防ぐことができる。好ましいのは、Nガス気流中に350℃〜490℃で2時間〜8時間熱処理し、その後にアンモニアを含むガスに切り替えて、350℃〜490℃で3分〜60分間の熱処理を行うことである。
以上によりRFe17希土類鉄合金粉末がコア部となり、その表面で熱処理により希土類とMnの拡散反応を促進させてR(Fe、Mn)17シェル層を形成するが、この拡散処理により、得られた粉末が焼結してネッキングを起こしていることがある。そのため、前記の還元拡散法の場合と同様に、窒化熱処理後に得られた磁石粉末を粉砕機に装入し解砕する。解砕には、乾式ジェットミル、湿式ジェットミル、ビーズミルなどの媒体攪拌ミル、汎用のスラリー分散機などが利用できる。いずれも強いせん断や衝突による粉砕となる条件は避けて、ネッキングした部分を解く程度の弱粉砕条件で運転する必要がある。また、さらに湿式表面処理を行い、リン酸塩系化合物被膜を形成することができる。
≪ボンド磁石≫
本発明のボンド磁石は、上記のようにして得られた希土類鉄窒素系磁性粉末を、樹脂バインダーと混合してボンド磁石用コンパウンドとし、これを射出成形、押出成形、又は圧縮成形したものである。特に好ましい成形方法は、射出成形である。
上記の希土類鉄窒素系磁性粉末には、その求められる磁気特性に合わせてフェライト磁石粉、アルニコ磁石粉等、通常、ボンド磁石の原料となる各種の磁石粉末を混合しても良い。異方性磁石だけでなく、等方性磁石粉末も混合できるが、異方性磁場Hが4.0MA/m(50kOe)以上の磁石粉末を用いることが好ましい。
ボンド磁石に用いられる樹脂バインダーは、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。
熱可塑性樹脂系バインダーは、特にその種類に限定されることはなく、例えば、6ナイロン、6−6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6−12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性、または共重合化した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、前出の各樹脂系エラストマー等が挙げられ、これらの単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
これらの中では、得られる成形体の種々の特性やその製造方法の難易性から12ナイロンおよびその変性ナイロン、ナイロン系エラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂の使用が好ましい。これら熱可塑性樹脂の2種類以上のブレンド等も当然使用可能である。
本発明では、原料粉末として、従来のSmFe17磁性粉末に比べて高い耐熱性を有し、また公知の高耐熱性のR(Fe、M)17磁性粉末(M=Cr、Mn)に比べても同等以上の磁気特性を有する磁性粉末を使用する。磁性粉末が高い耐熱性を有するので、樹脂そのものの耐熱性が高い、ポリフェニレンサルファイド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂をバインダーとすれば、高温での成形が可能になり、高性能高耐熱ボンド磁石の調製に有効である。
樹脂バインダーの配合量は、特に制限されるものではないが、ボンド磁石用コンパウンド100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは3〜50重量部とする。さらには、5〜30重量部、特に、7〜20重量部がより好ましい。樹脂バインダーが1重量部よりも少ないと著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招いて成形困難になるだけでなく、磁気特性が不十分であり、50重量部よりも多いと、所望の磁気特性が得られないので好ましくない。
ボンド磁石用コンパウンドには、本発明の目的を損なわない範囲で、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、増粘剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤や種々の安定剤などの添加剤、充填材を配合することができる。ボンド磁石用コンパウンドを溶融混練するには、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機などが使用される。
上記のボンド磁石用コンパウンドを射出成形する場合、最高履歴温度が330℃以下、好ましくは310℃以下、より好ましくは300℃以下となる条件とする。最高履歴温度が330℃を超えると、磁気特性が低下するという問題が生じるので好ましくない。
ボンド磁石用コンパウンドが異方性の磁性粉末を含有する場合には、成形機の金型に磁気回路を組み込み、コンパウンドの成形空間(金型キャビティ)に配向磁界がかかるようにすると、異方性のボンド磁石が製造できる。このとき配向磁界は、400kA/m以上、好ましくは800kA/m以上とすることによって高い磁気特性のボンド磁石が得られる。ボンド磁石用コンパウンドが等方性の磁性粉末を含有する場合には、コンパウンドの成形空間(金型キャビティ)に配向磁界をかけないで行う。
また、本発明によれば、磁性粉末として、高い耐熱性を有し、高い磁気特性を有するものを用いるため、磁性粉末を圧粉成形し焼結した磁石においても、従来のような保磁力劣化が抑制されバインダレスの高性能磁石が可能となる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例、比較例における、粉末の平均粒径、および希土類鉄窒素系磁性粉末の磁気特性や耐熱性を以下のように評価した。
(粉末の平均粒径)
粉末の平均粒径は、特別に記述した場合を除いて、レーザー回折粒度分布計(株式会社日本レーザー製,HELOS&RODOS)で測定された50%粒子径(D50)とした。また混合粉末の場合には、SEM反射電子像において、そのコントラストからそれぞれの成分粒子を判別し、任意に選んだ100粒子の長軸径の平均値を平均粒径とした。
(磁気特性)
粉末の磁気特性(残留磁化σと保磁力H)は、振動試料型磁力計で測定した。その際、20mgほどの粉末試料を内径2mm長さ7mmの透明アクリルでできたケースにパラフィンと一緒に入れて、長さ方向に磁界を印加しながら、ドライヤーなどで加熱してパラフィンを溶かし、粉末を配向させたのち、パラフィンを固めて作製した。
(耐熱性)
粉末の耐熱性は、粉末を油回転ポンプによる1Paの減圧真空下300℃で1時間加熱し、加熱前後の保磁力を比較することで評価した。
(粉末の結晶構造)
粉末の結晶構造については、Cuターゲットで加速電圧45kV、電流40mAとし、2θを2min./deg.でスキャンした粉末X線回折(XRD)パターンを解析して評価した。
(シェル層のMnとN組成)
粉末のシェル層のMnとN組成は、X線光電子分光装置により算出される。本実施例においてはX線光電子分光装置としてESCALAB220i−XL、VG Scientificを用いて評価した。粉末から直径10mm高さ2mm程度の圧粉体試料を作製し、直径10mmの圧粉体面内について直径600μmの領域を表面からArエッチングしながら深さ方向に分析した。得られたスペクトルにおいて、各元素のピーク面積強度にVG Scientificの相対感度係数を乗じ算出した半定量分析結果を基に、Sm、Fe、Mn、Nで合計100原子%として、Feに対するMnの置換量であるMn/(Fe+Mn)原子比と、N原子%を算出し評価した。
(シェル層の平均厚みと金属組織)
シェル層の平均厚みと金属組織は、FIB加工して薄片化した試料について、透過型電子顕微鏡TEM(HF−2200、日立ハイテクノロジーズ)で観察評価した。平均厚みについては、EDS線分析(VANTAGE、Noran)した結果から評価した。
(SmFe17合金粉末の作製)
平均粒径(D50)が2.3μmの酸化サマリウムSm粉末0.44kg、平均粒径(D50)が40μmの鉄粉1.0kg、粒状金属カルシウム0.23kgをミキサー混合し、鉄るつぼに入れて、アルゴンガス雰囲気下、1100℃で7時間加熱処理した。
冷却後に取り出した反応生成物を2Lの水中に投入してアルゴンガス雰囲気中、12時間放置しスラリー化した。このスラリーの上澄みを捨て、新たに水を2L加えて攪拌し、SmFe合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作をpHが10以下になるまで繰り返した。次に合金粉と水2Lとが攪拌されている状態でpHが5になるまで酢酸を添加し、その状態で30分間攪拌を続けた。その後、上澄みを捨てて再び水2Lを加え攪拌する操作を5回行い、最後にアルコールで水を置換した後、ヌッチェで合金粉を回収した。これをミキサーに入れて、減圧しながら400℃で10時間攪拌乾燥し、平均粒径が28μmのSmFe17合金粉末1.3kgを得た。
この合金粉は、平均粒径(D50)が30μmで、Smが24.5質量%、Oが0.15質量%、Hが0.54質量%、Caが0.01質量%未満、残部鉄の組成を持ち、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17である。また含有水分量として、この合金粉末50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αを測定したところ0.1質量%だった。
[実施例1]
上記の方法で作製されたSmFe17合金粉末700gをジェットミルに装入し、Nガスをキャリアガスとして用いて、平均粒径(D50)3.3μmになるまで粉砕した。得られたSmFe17合金微粉末500g秤量し、平均粒径(D50)が1.5μmの酸化サマリウムSm粉末33.0gと、平均粒径(D50)が0.3μmのMn粉末13.0gを、メカノフュージョンにてArガスをフローしながら2500rpm20min混合した。回収された混合物の含有水分量を、混合粉末50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αとして求めると、0.2質量%だった。混合物の平均粒径は、SEM観察により、SmFe17合金粉末で3.0μm、酸化サマリウムで0.3μm、Mn粉末で0.1μmだった。
この混合粉末に対してArガス雰囲気中で1〜2mmの粒状金属カルシウム140gを加えてロッキングミキサーで30min混合し、還元拡散処理として、鉄るつぼに入れてArガス雰囲気下で加熱し、840℃で1.5時間保持して冷却した。
回収された反応生成物を10mm以下になるよう解砕し、窒化熱処理として、管状炉に入れてNHガス0.2L/min、Hガス0.2L/minの混合ガス気流中で昇温し、420℃で250min、その後、同じ温度でArガス0.2L/minの気流中に切り替えて60min保持して冷却した。
冷却後に管状炉から回収された窒化反応生成物を、1Lの水中に投入しArガス雰囲気中12時間放置しスラリー化した。このスラリーの上澄みを捨て、新たに水を1L加えて攪拌し、窒化合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作をpHが10以下になるまで繰り返した。次に窒化合金粉と水1Lとが攪拌されている状態でpHが6になるまで酢酸を添加し、その状態で5分間攪拌を続けた。その後、上澄みを捨てて再び水1Lを加え攪拌する操作を5回行い、最後にアルコールで水を置換しろ過したケーキをミキサーに入れて減圧しながら140℃で1時間攪拌乾燥した。
得られた窒化合金粉100gを、直径0.2mmのアルミナボールを媒体、400gのエチルアルコールを溶媒とし、2gのリン酸水溶液を加えて媒体攪拌ミルで解砕し、ろ過したスラリーを減圧下140℃で1時間乾燥した。
以上の作製条件を表1に示す。
このようにして得られた希土類鉄窒素系磁性粉末は、ThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。そしてこのシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織と、Sm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。また、燐酸系化合物被膜の厚みは、シェル層の厚みよりも薄い、5〜20nmであった。
磁性粉末の平均粒径(D50)、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%を表2に示す。またこの磁性粉末の耐熱性として、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表2に示す。
[実施例2]
(Mn微粒子の作製)
まず実施例1で用いたMn粉末に代わる、Mn微粒子を作製するため、オレイルアミン100重量部に対して、ステアリン酸を20重量部、酢酸マンガン4水和物を9重量部だけ秤量し、オレイルアミンの容積の5倍量のキシレンに溶解した。90℃のオイルバスで加温しながら攪拌し、6重量部のイオン交換水を滴下してそのまま3時間保持した後、冷却した。冷却後の溶液に、キシレンの2倍量の容積のエタノールを加えて攪拌し、その後10000rpmで5分間遠心分離器にかけて上澄みを除去した。これに同量のイソプロピルアルコールを加えて攪拌し、再び10000rpmで5分間遠心分離器にかけて上澄みを捨てる。この操作を3回繰り返した。この処理物0.5gを100℃で減圧乾燥し、得られた粉末の成分をEDS分析したところMn、Oが検出され、粉末X線回折でMnに相当するピークが確認された。またそのTEM観察写真からSEM同様に解析したところ平均粒径D50は6nmだった。したがって得られる粉末は、平均粒径6nmのMn微粒子と理解される。
(希土類鉄窒素系磁性粉末の作製)
実施例1と同じSmFe17合金粉末500gに対して、平均粒径(D50)が2.3μmの酸化サマリウム30.3gをロッキングミキサーで予備混合し、その混合物を2kgのフッ素系不活性液体を溶媒として媒体攪拌ミルで粉砕した。このとき粉砕を開始した直後に上記により作製した平均粒径6nmのMn微粒子を1.1g含むスラリーを加えて、全体が均一に混合されるよう粉砕した。
粉砕後のスラリーをミキサーに入れ減圧しながら加温して溶媒を蒸発させ冷却した。その後、ミキサーで攪拌を続けながら酸素濃度2体積%の窒素ガスをフローし、混合粉末の酸化発熱が40℃を超えないよう注意しながら酸素濃度を徐々に15体積%まで高めた。発熱が終了したのを確認し粉砕混合物を回収した。次に、回収された粉砕混合物を管状炉に入れて真空中300℃で加熱したところ、ガス放出による真空度の悪化が確認された。ガスの発生が終わり、真空度が戻ったところで冷却して取り出した。この粉砕混合物をSEMおよびTEM観察したところ、SmFe17合金粉末で1.3μm、酸化サマリウムで0.08μm、Mn微粒子で0.006μmだった。また混合物50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αは0.4質量%だった。
この粉砕混合物に粒状金属カルシウム100gを加えてさらに混合し、鉄るつぼに入れて還元拡散処理としてアルゴンガス雰囲気下で加熱し750℃で3時間保持し、続いて820℃で1時間保持して冷却した。
回収された反応生成物を20mm以下になるよう解砕し、窒化熱処理として、管状炉に入れてNHガス0.2L/min、Hガス0.2L/minの混合ガス気流中で昇温し420℃で230min保持し、その後、同じ温度でArガス0.2L/minの気流に切り替えて100min保持して冷却した。
冷却後に管状炉から回収された窒化反応生成物を、1Lの水中に投入しアルゴンガス雰囲気中12時間放置しスラリー化した。このスラリーの上澄みを捨て、新たに水を1L加えて攪拌し、窒化合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作をpHが10以下になるまで繰り返した。次に窒化合金粉と水1Lとが攪拌されている状態でpHが6になるまで酢酸を添加し、酢酸の添加量を調整してpH=6を保ちながら5分間攪拌を続けた。その後、上澄みを捨てて再び水1Lを加え攪拌する操作を5回行い、最後にアルコールで水を置換しろ過したケーキをミキサーに入れて減圧しながら150℃で1時間攪拌乾燥した。
得られた窒化合金粉100gに対し、直径0.2mmのアルミナボールを媒体、400gのエチルアルコールを溶媒とし、2gのリン酸水溶液を加えて媒体攪拌ミルで解砕し、ろ過したスラリーを減圧下140℃で1時間乾燥した。
以上の作製条件を表1に示す。
このようにして得られた希土類鉄窒素系磁性粉末は、XRDによりThZn17型の結晶構造であること、TEMにより表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。そして、このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。また、燐酸系化合物被膜の厚みは、シェル層の厚みよりも薄い、5〜20nmであった。
磁性粉末の平均粒径(D50)、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%を表2に示す。またこの磁性粉末の耐熱性として、保磁力Hと300℃で1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表2に示す。
[実施例3〜4]
実施例2において、媒体攪拌ミルにより粉砕した、SmFe17合金粉末、酸化サマリウム粉末、Mn粉末の平均粒径とそれらの混合量、粒状金属カルシウムの投入量、還元拡散処理条件、窒化熱処理時間を、それぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして希土類鉄窒素系磁性粉末を作製した。
これらの粉末は、すべてXRDによりThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。そして、このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。それぞれの磁性粉末の平均粒径、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表2に示す。
[実施例5]
実施例2において、Mn粉末として平均粒径(D50)が0.3μmの粉末を、SmFe17合金粉末、酸化サマリウムSm粉末と共にロッキングミキサーで予備混合し、続いて媒体攪拌ミルにより粉砕し、平均粒径とそれらの混合量、粒状金属カルシウムの投入量を変えるとともに、還元拡散処理条件、窒化熱処理時間を、それぞれ表1に示すように変更した。このとき粉砕混合物50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αは0.2質量%だった。それ以外は、実施例2と同様にして希土類鉄窒素系磁性粉末を作製した。
これらの粉末は、XRDによりThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。そして、このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。それぞれの磁性粉末の平均粒径、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表2に示す。
[実施例6]
実施例5において、媒体攪拌ミルの粉砕時間を変えることでSmFe17合金粉末、酸化サマリウムSm粉末とMn粉末の平均粒径を変えて、さらに、それらの混合量、粒状金属カルシウムの投入量を変えるとともに、還元拡散処理条件、窒化熱処理時間を、それぞれ表1に示すように変更して希土類鉄窒素系磁性粉末を作製した。
これらの粉末は、XRDによりThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。そして、このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。それぞれの磁性粉末の平均粒径、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表2に示す。
[比較例1〜7]
実施例2において、媒体攪拌ミルにより粉砕した、SmFe17合金粉末、酸化サマリウム粉末、Mn粉末の平均粒径とそれらの混合量、粒状金属カルシウムの投入量、還元拡散処理条件、窒化熱処理時間を、それぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして希土類鉄窒素系磁性粉末を作製した。
これらの粉末は、すべてThZn17型の結晶構造であり、比較例1では、TEM観察で磁性粉末表面にコアシェル構造が見られない部分が散見されたが、比較例2〜7では、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。
それぞれの磁性粉末の平均粒径、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表2に示す。
[比較例8]
媒体攪拌ミルによる粉砕混合物を管状炉に入れて真空中300℃で加熱する操作を省いた以外は実施例4と同様にして希土類鉄窒素系磁性粉末を作製した。粒状金属カルシウムを加える前の混合物50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αは1.2質量%だった。
得られた磁性粉末のXRD測定を行ったところ、ThZn17型の結晶構造を主相とするものだったが、α‐Feのピークが強く観察された。またTEM観察をしても粒子表面にはSm(Fe1−xMn17シェル層は確認できなかった。磁性粉末の平均粒径、残留磁化σr、保磁力H、保磁力Hと300℃で1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表2に示す。
Figure 2018127716
Figure 2018127716
[実施例7]
実施例5と同様に、SmFe17合金粉末500gに対して、平均粒径(D50)が2.3μmの酸化サマリウム40gと、平均粒径(D50)が0.3μmのMn粉末4gをロッキングミキサーで予備混合し、2kgのフッ素系不活性液体を溶媒として媒体攪拌ミル粉砕した。粉砕物の平均粒径は、SEM観察により、SmFe17合金粉末で1.1μm、酸化サマリウムで0.1μm、Mn粉末で0.01μmだった。
得られたスラリーを実施例1〜6よりもさらに十分に減圧乾燥した後、アルゴンガス雰囲気中で粒状金属カルシウム120gを加えて混合し、還元拡散処理として、鉄るつぼに入れてアルゴンガス雰囲気下で加熱し、750℃で0.5時間保持し、続いて830℃で0.05時間保持して冷却した。粒状金属カルシウムを加える前に、乾燥物から抜き取った混合粉末50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αは0.07質量%だった。
回収された反応生成物を20mm以下になるよう解砕し、窒化熱処理として、管状炉に入れてNガス気流中で昇温し、440℃で180min保持した後、NHガス0.2L/min、Hガス0.2L/minの混合ガス気流に切り替え5min保持し、さらに同じ温度でArガス0.2L/minの気流に切り替えて100min保持して冷却した。
冷却後に管状炉から回収された窒化反応生成物を、1Lの水中に投入しアルゴンガス雰囲気中12時間放置しスラリー化した。このスラリーの上澄みを捨て、新たに水を1L加えて攪拌し、窒化合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作をpHが10以下になるまで繰り返した。次に窒化合金粉と水1Lとが攪拌されている状態でpHが6になるまで酢酸を添加し、その状態で5分間攪拌を続けた。その後、上澄みを捨てて再び水1Lを加え攪拌する操作を5回行い、最後にアルコールで水を置換し、ろ過したケーキをミキサーに入れて減圧しながら140℃で1時間攪拌乾燥した。
得られた窒化合金粉100gを、直径0.2mmのアルミナボールを媒体とし、400gのエチルアルコールを溶媒として、2gのリン酸水溶液を加えて媒体攪拌ミルで解砕し、ろ過したスラリーを減圧下140℃で1時間乾燥した。
以上の製造条件を表3に示す。
このようにして得られた希土類鉄窒素系磁性粉末は、ThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。そして、このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。磁性粉末の平均粒径(D50)、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%を表4に示す。またこの磁性粉末の耐熱性として、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表4に示す。
[実施例8〜14、比較例9〜11]
実施例7において、それぞれの原料と還元剤である粒状金属カルシウムの混合量、還元拡散処理の温度と時間、そして窒化熱処理の温度、時間、雰囲気を表3のように変えた以外は、実施例7と同様にして希土類鉄窒素系磁性粉末を作製した。なお粒状金属カルシウムを加える前に、乾燥物から抜き取った混合粉末50gを真空中400℃で5時間加熱したときの減量αを測定した。
実施例8〜14の希土類鉄窒素系磁性粉末では、ThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。これらのシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。それぞれの磁性粉末の平均粒径、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表4に示す。
比較例9および10の磁性粉末では、TEM観察をしても粒子表面にはSm(Fe1−xMn17シェル層は確認できず、Mnは粒子の中心まで拡散しているのが認められた。また比較例11ではNガスのみで窒化しているため、シェル層のN組成が12原子%に留まっていた。磁性粉末の平均粒径、残留磁化σr、保磁力H、保磁力Hと300℃で1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表4に示す。
Figure 2018127716
Figure 2018127716
[実施例15]
実施例1で使用したのと同じSmFe17合金粉末を、不純物酸素量が0.2ppm未満、水分が3ppm未満、圧力0.6MPaのNガスをキャリアとして、スパイラルジェットミルに2回かけることで、D50が2.4μmの微粉末とした。
この微粉末3gをテフロン(登録商標)容器に入れ、アークプラズマ法ナノ粒子形成装置にセットした。この装置には、セットした微粉末容器の上方に純度99.9質量%の金属Smと金属Mnがターゲットとして取り付けられているので、容器を振動させながら微粉末全面にSmとMnをアークプラズマ蒸着できる。Smターゲットには150V、Mnターゲットには200Vの電圧をかけ1HzでSmとMnを各20000ショット同時蒸着した。
蒸着後の微粉末の表面をSEM観察すると、微細なSmとMnが付着しており、EDXによる表面組成がSm 12.4原子%、Mn 2.4原子%、Fe 85.2原子%であることが確認された。表面に付着したSmとMnをSmFe17合金微粉末表層に拡散させてシェル層を形成するため、蒸着微粉末を管状炉に入れてArガス雰囲気中500℃に昇温し、30min保持した後に急冷した。続いて窒化熱処理として、0.2L/minのNガス気流中で430℃に昇温し240min保持した後、NHガス0.2L/min、Hガス0.2L/minの混合ガス気流に切り替え8min保持し、さらに同じ温度でArガス0.2L/minの気流に切り替えて60minアニール処理して冷却した。
なおジェットミルによる微粉砕から窒化熱処理までは、Nグローブボックス中で大気に暴露しないように扱っている。以上の作製条件を表5に示す。
回収された窒化後の微粉末は、100gのエチルアルコールに0.5gのリン酸水溶液を加えた溶液に浸漬し、特殊機化工業製T.K.フィルミックス30−25型を用い10,000rpmで1min解砕処理し、ろ過したスラリーを減圧下140℃で1時間乾燥した。
このようにして得られた希土類鉄窒素系磁性粉末は、ThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。磁性粉末の平均粒径(D50)、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%を表6に示す。またこの磁性粉末の耐熱性として、保磁力Hと300℃で1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表6に示す。
[実施例16〜24、比較例12〜18]
実施例15において、アークプラズマ蒸着のショット回数、拡散処理の温度、そして窒化熱処理の温度、時間、雰囲気を表5のように変えた以外は、実施例15と同様にして希土類鉄窒素系磁性粉末を作製した。
実施例16〜24の希土類鉄窒素系磁性粉末では、ThZn17型の結晶構造で、TEM観察により表面にSm(Fe1−xMn17層を有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。これらのシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織とSm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。
比較例12では、SmとMnが表面に付着したままでシェル層の形成が認められなかった。比較例13では還元拡散処理が終了した時点でMnが粒子の中心部まで拡散してシェル層が形成されなかった。比較例14〜16では、還元拡散処理によってシェル層が形成されたが、窒化熱処理が終了した時点でMnが粒子中心部まで拡散してシェル層が消失していた。比較例17では窒化が進まずシェル層のN組成も1原子%未満だった。比較例18では、磁性粉末のXRD測定を行ったところ、ThZn17型の結晶構造を主相とするものだったが、α‐Feのピークが強く観察された。またTEM観察をしても粒子表面にはSm(Fe1−xMn17シェル層は確認できなかった。
それぞれの磁性粉末の平均粒径、残留磁化σ、保磁力H、シェル層の平均厚み、Mn/(Fe+Mn)原子比、N原子%、保磁力Hと300℃1時間加熱した後の保磁力Hc,300の比であるHc,300/Hの値を表6に示す。
Figure 2018127716
Figure 2018127716
(評価)
上記製造条件を示す表1、3、5、それにより得られた磁性粉末の物性を示す表2、4、6から次のことが分かる。
本発明の実施例1〜6では、希土類Sm、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、ThZn17型結晶構造を有する平均粒径が2.0〜9.2μmの磁性粉末であって、粒子表面に、希土類Sm、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、Feの6〜19原子%がMnで置換され、Nが18〜23原子%であり、厚みが12nm以上であって粉末平均粒径の9.2%未満の層が形成されている希土類鉄窒素系磁性粉末が得られている。そして、この磁性粉末は、106Am/kg以上の残留磁化σと414kA/m以上の保磁力Hを有し、粉末を300℃で加熱した後においてもHc,300/H比が81%以上の高い耐熱性を示している。
これに対して、比較例1では、還元拡散条件が低温であるため、シェル層の厚みが10nm未満であり、コアシェル構造が形成されていない部分が認められ、耐熱試験に基づくHc,300/H比が62%と悪化している。また、比較例2では、還元拡散条件が高温であるため、シェル層の厚みが粉末平均粒径の10%を超え、残留磁化σが85Am/kgと低くなっている。
比較例3では、酸化マンガンの添加量が少な過ぎるため、シェル層のMn/(Fe+Mn)原子比が2%未満であり、耐熱試験に基づくHc,300/H比が57%と悪化している。比較例4では、酸化マンガンの添加量が多過ぎるため、シェル層のMn/(Fe+Mn)原子比が20%を超え、残留磁化σが92Am/kg、保磁力Hが350kA/mと低くなっている。
比較例5では、窒化時間が短かったため、シェル層のN組成が16原子%未満であり、耐熱試験に基づくHc,300/H比が55%と悪化している。比較例6では、窒化時間が長過ぎるため、シェル層のN組成が24原子%を超え、残留磁化σが80Am/kg、保磁力Hが597kA/mと低くなっている。
比較例7では、コア粒子となるSmFe17合金粉末の粒径が大きく、還元拡散条件が高温、長時間であるため、磁性粉末の平均粒径が10μmを超え、残留磁化σが121Am/kg、保磁力Hが294kA/mと低くなっている。
比較例8では、原料混合物の加熱減量αが1質量%を超えているため、シェル層が形成されず、α‐Feが析出して、残留磁化σが68Am/kg、保磁力Hが374kA/mと低くなっている。
また、本発明の実施例7〜14、比較例9〜11では、実施例1〜6よりも加熱減量の小さな原料混合物を使用している。実施例7〜14では、希土類Sm、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、ThZn17型結晶構造を有する平均粒径が1.8〜2.7μmの磁性粉末であって、粒子表面に、希土類Sm、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、Feの7〜14原子%がMnで置換され、Nが18〜24原子%であり、厚みが35nm以上であって粉末平均粒径の8.8%以下の層が形成されている希土類鉄窒素系磁性粉末が得られている。そして、この磁性粉末は、100Am/kg以上の残留磁化σと907kA/m以上の保磁力Hを有し、粉末を300℃で加熱した後においてもHc,300/H比が82%以上の高い耐熱性を示している。
これに対して比較例9では、還元拡散条件が高温であるためシェル層が形成されず、耐熱試験に基づくHc,300/H比が48%と悪化している。
比較例10では、460℃の高温でNHとHの混合ガス気流中のみで窒化熱処理したため、粒子の中心までMnが拡散し還元拡散処理で生成したシェル層が消失してしまった。その結果、耐熱試験に基づくHc,300/H比が46%と悪化している。
一方、比較例11では、Nガス気流中のみで窒化熱処理しているので、シェル層のN組成が12原子%で、Sm(Fe、Mn)173.5〜5.7の原子比(N:16〜24原子%)とならず、耐熱試験に基づくHc,300/H比が46%と悪化している。
本発明の実施例15〜24、比較例12〜18は、プラズマ蒸着法による実施例である。実施例15〜24では、希土類Sm、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、ThZn17型結晶構造を有する平均粒径が2.4〜2.7μmの磁性粉末であって、粒子表面に、希土類Sm、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、Feの3〜12原子%がMnで置換され、Nが16〜23原子%であり、厚みが20nm以上であって粉末平均粒径の8.4%以下の層が形成されている希土類鉄窒素系磁性粉末が得られている。そして、この磁性粉末は、137Am/kg以上の残留磁化σと637kA/m以上の保磁力Hを有し、粉末を300℃で加熱した後においてもHc,300/H比が80%以上という高い耐熱性を示している。
これに対して比較例12では、還元拡散条件が低温であるためシェル層が形成されず、蒸着したSmとMnが表面に残っている。耐熱試験に基づくHc,300/H比が48%と悪化している。反対に比較例13では、還元拡散温度が高すぎるため粒子の中心までMnが拡散しシェル層が形成されなかった。その結果、耐熱試験に基づくHc,300/H比が47%と悪化している。
比較例14〜16では、460℃以上の高温でHガスを含む気流中で窒化熱処理しているので還元拡散処理で形成されたシェル層が消失している。そのため耐熱試験に基づくHc,300/H比が48%以下に悪化している。
比較例17では、窒化熱処理温度が低いので粒子が窒化されず、残留磁化σが47Am/kg、保磁力Hが223kA/mと低くなっている。比較例18では、窒化熱処理温度が高いので一部の化合物が分解してα−Feが生成し、また還元拡散処理で形成されたシェル層も消失している。そのため残留磁化σが41Am/kg、保磁力Hが271kA/mと低くなっている。
本発明の磁性粉末は、耐熱性に優れ保磁力などの特性が高いので、樹脂バインダーを混合して希土類元素を含む鉄系ボンド磁石を成形することができ、得られるボンド磁石は、自動車、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器等に至る幅広い分野において極めて有用である。

Claims (13)

  1. 希土類元素R、鉄Fe、窒素Nを主構成成分とし、ThZn17型、ThNi17型、TbCu型のいずれかの結晶構造を有する平均粒径が1μm以上10μm以下の磁性粉末であって、
    粉末の粒子表面に、平均的な組成としてFeの2原子%以上20原子%以下がMnで置換されNが16原子%以上24原子%以下であり、かつ厚みが10nm以上で粉末平均粒径の10%未満のシェル層が形成されていることを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末。
  2. 希土類元素Rは、SmまたはNdのいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載の希土類鉄窒素系磁性粉末。
  3. 前記シェル層の表面には、さらに燐酸系化合物被膜を有することを特徴とする請求項1記載の希土類鉄窒素系磁性粉末。
  4. 平均粒径が0.5〜10μmのRFe17希土類鉄合金粉末、平均粒径が1μm以下の希土類酸化物粉末、平均粒径が1μm以下のMn酸化物粉末を用意し、これら原料物質の混合物に還元剤として金属Caを加え、不活性ガス中にて還元拡散処理する工程を含む希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法であって、
    前記還元拡散処理の工程で、希土類鉄合金粉末の100重量部に対して、希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末とがそれぞれ1〜20重量部の割合となり、金属Caが希土類酸化物粉末とMn酸化物粉末の還元に必要な量に対して1.1〜10倍となるように混合し、730〜1000℃の温度範囲、かつCaによって還元されたMnがRFe17希土類鉄合金粉末内部まで拡散しない条件にて加熱処理し、RFe17希土類鉄合金がコア部となり、その表面でMnの拡散反応を促進させてR(Fe、Mn)17シェル層を形成させ、
    次に、得られた還元拡散反応生成物を必要により解砕した後、窒素ガス及び/又はアンモニアと水素の混合ガスを供給し、この気流中で該反応生成物を300〜500℃の温度で所定の時間窒化熱処理する工程と、次に得られた窒化熱処理生成物の塊を水中に投入して湿式処理し崩壊させ、得られた磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化する工程をさらに含むことを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  5. 前記RFe17希土類鉄合金粉末の平均粒径が8μm以下、かつMn酸化物粉末の平均粒径が0.1μm以下であることを特徴とする請求項4記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  6. 前記窒化温度が400〜450℃であることを特徴とする請求項4記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  7. 前記原料物質は、含有水分量が1質量%以下であることを特徴とする請求項4記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  8. 前記の還元拡散処理の工程において、加熱処理条件を2段階とし、前段で730〜810℃の温度において0.5〜4時間保持し、後段では、さらに温度を上げて800〜1000℃の温度において3時間以内保持することを特徴とする請求項4記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  9. 前記の窒化熱処理処理の工程において、窒素気流中で処理を開始し、途中でアンモニア、アンモニアと水素の混合ガス、またはアンモニアと窒素と水素の混合ガスに切り替えることを特徴とする請求項4又は6記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  10. R2Fe17希土類鉄合金粉末を希土類金属とMnによりプラズマ蒸着処理する工程を含む希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法であって、
    平均粒径が0.5〜10μmのRFe17希土類鉄合金粉末を処理容器に入れてから、希土類金属とMnをターゲットとして備えたプラズマ蒸着装置に装入して、真空条件下、ターゲットから蒸発する希土類金属とMnの微粒子をRFe17希土類鉄合金粉末の表面全体に付着させ、引き続き、形成された希土類金属とMnが含まれる蒸着膜を480〜630℃の温度範囲で加熱処理し、RFe17希土類鉄合金粉末がコア部となり、その表面でMnの拡散反応を促進させてR(Fe、Mn)17シェル層を形成させ、
    次に、得られた反応生成物を必要により解砕した後、窒素ガス及び/又はアンモニアと水素の混合ガスを供給し、十分な量の窒素ガスを含む気流中で該反応生成物を300〜500℃の温度で所定の時間窒化熱処理する工程と、次に得られた窒化熱処理生成物の磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化する工程をさらに含むことを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  11. 前記プラズマ蒸着処理する工程において、処理容器を振動させて、RFe17希土類鉄合金粉末を撹拌することを特徴とする請求項10記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  12. 前記プラズマ蒸着処理する工程において、微粒子の大きさが1μm以下、かつ組成の(希土類)/(希土類+Mn)が原子比で2/17以上であることを特徴とする請求項10記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
  13. 前記窒化熱処理工程において、窒素気流中で処理を開始し、途中でアンモニア、アンモニアと水素の混合ガス、またはアンモニアと窒素と水素の混合ガスに切り替えることを特徴とする請求項10記載の希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
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