JP2016037611A - 希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法及び希土類−鉄−窒素系磁石粉末 - Google Patents
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Abstract
【課題】特に磁気特性が高く、表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得ることができる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法は、原料粉末であるカルボニル鉄粉末及び希土類元素の酸化物粉末と、その酸化物を還元するに必要な化学量論量以上のアルカリ土類金属とを混合して還元拡散法により得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、有機媒体及び粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、粉砕物を乾燥させる製造方法であって、カルボニル鉄粉末は多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるト−タル不純物量が1.0質量%以下であり、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法は、原料粉末であるカルボニル鉄粉末及び希土類元素の酸化物粉末と、その酸化物を還元するに必要な化学量論量以上のアルカリ土類金属とを混合して還元拡散法により得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、有機媒体及び粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、粉砕物を乾燥させる製造方法であって、カルボニル鉄粉末は多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるト−タル不純物量が1.0質量%以下であり、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法及び希土類−鉄−窒素系磁石粉末に関し、より詳しくは、鉄原料として特定のカルボニル鉄粉末を用いることにより、磁気特性が高く、表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法及びその希土類−鉄−窒素系磁石粉末に関する。
SmFeNで代表される希土類−遷移金属−窒素系磁石は、高性能でかつ安価な希土類−遷移金属−窒素系磁石として知られている。
従来、この希土類−遷移金属−窒素系磁石は、希土類金属と遷移金属を溶解して合金を作製する溶解法や、希土類酸化物と遷移金属とを含む原料にアルカリ土類金属を還元剤として配合し、高温で希土類酸化物を金属に還元するとともに遷移金属と合金化する還元拡散法によって製造されている。しかしながら、溶解法では、原料として使用する希土類金属が高価であるため経済的ではなく、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法がより望ましい方法であると考えられている。
すなわち、還元拡散法では、先ず、希土類酸化物粉末原料、遷移金属粉末原料、及び希土類酸化物の還元剤であるアルカリ土類金属を配合した混合物を、非酸化性雰囲気中で焼成して希土類−遷移金属系合金を合成する。次に、得られた希土類−遷移金属系合金を水素吸蔵させてから湿式処理して粉末状にした後、この粉末状の希土類−遷移金属系合金を窒化処理する方法、もしくは窒化処理と湿式処理の順番を入れ替えた方法により、所望の希土類−遷移金属−窒素系磁石が製造される。
その後、得られた粉末状の希土類−遷移金属−窒素系磁石は、特定の粒度になるまで微粉砕処理される。このとき、希土類−遷移金属−窒素系磁石は、保磁力発生機構がニュークリエーション型であることから、磁気特性の一つである減磁曲線の角形性や保磁力を高めるためには、微粉砕された後の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の粒度を揃えることが必要とされている。
磁石粉末の粒度を揃えるために、出発原料として微細な鉄粉や酸化鉄粉が用いられているが、例えば、特許文献1及び特許文献2には、共沈法で微細水酸化物を作製してからM成分(Al、Ti、Mn等)を添加して焼成し、得られた微細粉末を原料粉末として還元拡散法で合金化して窒化することで、粉砕することなく高性能磁石粉末を製造する技術が開示されている。しかしながら、この方法では、金属Caで還元拡散を行う前に沈殿生成物の洗浄、大気焼成及び水素還元を行うものであるため、プロセスが長く、製造コストが高くなるという欠点を有している。
一方、希土類−遷移金属系磁石粉末を粉砕する場合は、例えば、特許文献3には、不活性ガス雰囲気に保持したハンマーミル、ディスクミル、振動ミル、アトライター、ジェットミルあるいはボールミルで効率的に行うことができるといった記載がある。具体的に、その実施例1では、湿式ボールミルと乾式ジェットミル粉砕を行って微粉砕し、平均粉末粒径2.0〜3.0μmの磁粉を得ている。しかしながら、平均粉末粒径が2.0〜3.0μmとなるまで粉砕する過程で、0.5〜30μmといった粉末粒径分布の広い粉末となり、その結果、磁気的なバラツキが生じるという問題がある。
このため、例えば、特許文献4では、SmFeN合金粒子を微粉砕する際に、または最後の分級の際に、磁石粒子の温度を300〜650℃に保つようにして磁石粒子の凝集を防ぐ方法が提案されている。また、特許文献5では、SmFeN合金粒子の表面をフッ素化合物皮膜、ポリシラザン硬化皮膜、酸化ケイ素皮膜、窒化ケイ素皮膜のいずれかで被覆して保護層を形成することによって、耐酸化性を向上させ、微粉同士の凝集を抑制した高磁気特性の合金粉末が提案されている。
しかしながら、これらの方法では、製造時において温度調整や皮膜条件等をコントロールすることが難しく、製造工程も長くなり、バラツキが大きくなり易いといった問題があり、保磁力はいずれも10kOe未満で、かつ表面安定性に優れた磁石粉末を得ることが困難である。
そこで、本件出願人は、先に上述した課題を解決する方法として、磁石粉末を特定の粒度分布に揃えることで凝集度が低くなり、磁気特性が向上した希土類―遷移金属―窒素系磁石粉末、また磁石粉末を特定の装置・条件で粉砕することによって効率的に磁石粉末を製造することができる方法を提案している(特許文献6)。
この方法では、希土類−遷移金属−窒素系磁石の粗粉末を媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、次いで粉砕機の中で0.1〜1mmの金属ボール又はセラミックスボールの粉砕媒体と共に回転させ、特定の条件で微粉砕して、磁石粉末の平均粒径(D50)が2〜4μmで、粒度(D20−D70)幅が4μm以下の粒度分布に揃えるようにしており、このことにより凝集を抑制して、従来法よりも磁気特性を向上させている。しかしながら、粉砕媒体のボール径が0.1〜1mmと小さいために、粉砕能力が低く、かつハンドリングの問題もある。
一方、特許文献7では、カルボニル鉄粉を鉄原料として用いた還元拡散法で、還元拡散反応を650℃から880℃の温度範囲で行うことで焼結を抑制し、機械的粉砕によらない希土類−鉄系母合金粉末の製造方法が提案されている。しかしながら、還元拡散温度が低く、未反応鉄の残留と推察される要因によって保磁力は10kOe未満と低くなる。
このため、磁気特性が高く、表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を効率的に得ることができる製造方法と、その希土類−鉄−窒素系磁石粉末が必要とされている。
本発明は、このような従来の状況に鑑みてなされたものであり、特に磁気特性が高く、表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得ることができる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法とその希土類−鉄−窒素系磁石粉末を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の粒子構造を有し、かつ炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量が所定量以下のカルボニル鉄粉を鉄原料に用いた還元拡散反応により希土類−鉄系合金を得て、それを窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、粉砕媒体により粉末の平均粒径(D50)が所定範囲となるように粉砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得ることで、磁気特性が高く、表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を容易に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明に係る第1の発明は、原料粉末であるカルボニル鉄粉末及び希土類元素の酸化物粉末と、該希土類元素の酸化物を還元するに必要な化学量論量以上のアルカリ土類金属とを混合して還元拡散法により得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、有機媒体及び粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、得られた粉砕物を乾燥させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、前記カルボニル鉄粉末は多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるト−タル不純物量が1.0質量%以下であり、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法である。
(2)本発明に係る第2の発明は、上述した第1の発明において、900℃以上1150℃以下の温度で還元拡散反応を行うことを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法である。
(3)本発明に係る第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、前記粉砕の際に、前記有機媒体に燐酸を添加することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法である。
(4)本発明に係る第4の発明は、上述した第1乃至第3のいずれかの発明に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法によって得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末である。
(5)本発明に係る第5の発明は、上述した第4の発明において、その表面に、P含有量が元素換算で0.1質量%以上1.0質量%以下である燐酸塩皮膜が形成されていることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末である。
(6)本発明に係る第6の発明は、上述した第4又は第5の発明において、残留磁束密度Brが1.3T以上で、保磁力iHcが860kA/m以上で、該Brの90%に対応する磁場が330kA/m以上であり、かつ、最大エネルギー積(BH)maxが280kj/m3以上であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末である。
本発明によれば、鉄原料として特定のカルボニル鉄粉末を用いて還元拡散反応を行うことで得られた希土類−鉄合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、媒体攪拌ミル等の粉砕機に入れて特定サイズに粉砕することで、安定的に磁石粉末を生産できる。そして、この製造方法により得られる、平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、Br、iHc、Hk、及び(BH)maxがいずれも高く優れた磁気特性を有するとともに、表面安定性に優れた磁石粉末となる。
また、このような高い磁気特性を有し、表面安定性に優れた磁石粉末は、ボンド磁石等の材料として有用であり、比較的低コストで安定的にかつ効率的に生産できることから、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法≫
本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法では、原料粉末であるカルボニル鉄粉末及び希土類元素の酸化物粉末と、その希土類元素の酸化物を還元するに必要な化学量論量以上のアルカリ土類金属とを混合して還元拡散法により得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、有機媒体及び粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、得られた粉砕物を乾燥させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法である。そして、この製造方法では、その原料粉末であるカルボニル鉄粉末として、多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるト−タル不純物量が1.0質量%以下であるものと用いる。また、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕することを特徴とする。
本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法では、原料粉末であるカルボニル鉄粉末及び希土類元素の酸化物粉末と、その希土類元素の酸化物を還元するに必要な化学量論量以上のアルカリ土類金属とを混合して還元拡散法により得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、有機媒体及び粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、得られた粉砕物を乾燥させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法である。そして、この製造方法では、その原料粉末であるカルボニル鉄粉末として、多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるト−タル不純物量が1.0質量%以下であるものと用いる。また、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕することを特徴とする。
(1)希土類−鉄−窒素系磁石粉末の調製
原料の希土類粉末としては、通常、希土類酸化物粉末を用いることができる。希土類酸化物粉末の粒径としては、反応性、作業性等の面から平均粒径(D50)が10μm以下であることが好ましい。また、平均粒径としては、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。平均粒径が10μmを越えると、例えば還元拡散法で得られる合金生成物中に、希土類元素が拡散していない未反応鉄部が多くなる。
原料の希土類粉末としては、通常、希土類酸化物粉末を用いることができる。希土類酸化物粉末の粒径としては、反応性、作業性等の面から平均粒径(D50)が10μm以下であることが好ましい。また、平均粒径としては、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。平均粒径が10μmを越えると、例えば還元拡散法で得られる合金生成物中に、希土類元素が拡散していない未反応鉄部が多くなる。
原料として用いるカルボニル鉄粉末は、磁気特性の観点から多結晶粒子構造を有するものである。また、このカルボニル鉄粉末は、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量が1.0質量wt%以下、好ましくは0.5質量%以下である。特に、窒素と酸素は、例えばSm−Fe−N(SFN)磁性粉末製造時における還元拡散プロセスで用いるCa(還元剤)と反応する。そのため、実際には、上述した不純物と反応する分を見込んだCaを添加する必要があり、未反応の鉄がないSFN磁粉を製造する上ではCa当量を高くしなければならない。Caは、後のプロセスで洗浄除去されるが、高Ca当量であるほど洗浄効率の低下やSFN磁粉中に残留するCaが多くなって磁気特性が低下する。
ここで、カルボニル鉄粉中に含まれる不純物である窒素、酸素の含有量については、例えば不活性ガス融解法等の方法で測定することができる。また、炭素の含有量については、燃焼・非分散型赤外線吸収法等の方法で測定することができる。
還元剤としては、Ca等のアルカリ土類金属を用いることができる。還元剤は、粒状もしくは粉末状のものが用いられるが、粒度が最大粒径5mm以下のものが好ましい。
上述した希土類元素を含む希土類酸化物粉末原料と、カルボニル鉄粉末と、その他原料粉末とを秤量して反応容器に入れて混合し、さらに希土類酸化物を還元するのに十分な量の還元剤を添加し混合する。このときの反応当量としては、少な過ぎると酸化物原料のまま残留して合金内部に未反応鉄が残るため1.1倍量以上とすることが好ましい。一方で、多過ぎると洗浄時間が長くなって生産効率が低くなる。そのため、反応当量としては、残留Ca量が多くなって磁気特性の低下を防ぐ観点から、1.1倍量以上2.0倍量以下であることが好ましく、1.2倍量以上1.7倍量以下であることがより好ましい。
次に、原料混合物の入った反応容器を還元拡散炉に移し、不活性ガス雰囲気中において、例えばアルゴン(Ar)ガスを流しながら還元拡散炉で還元剤が溶融状態になる温度まで昇温して加熱焼成する。加熱温度としては、特に限定されないが、900℃以上1150℃以下であることが好ましく、1050℃以上1100℃以下の温度で3時間以上10時間に亘って処理することがより好ましい。また、還元剤として上述したようにCaを選定した場合には、カルボニル鉄粉末に対する希土類元素の十分な拡散と焼結による粒成長抑制の観点から、900℃以上1150℃以下の温度範囲とすることが必要となる。加熱温度が900℃未満である場合や、1150℃を超える場合では、所望とする高い磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得ることができない可能性がある。
この加熱焼成により、混合物中の希土類酸化物が希土類元素に還元されるとともに、その希土類元素がカルボニル鉄粉末中に拡散して、希土類−鉄母合金が合成される。この還元拡散反応が起きる際、原料混合物が圧縮処理されていると、圧縮されていない場合と比較して、原料混合物が炉内の底部、すなわち高温部では温度分布の小さい範囲に配置され、均一に熱がかかることになる。これにより、場所による反応のばらつきが小さくなり、組成ばらつきが小さい還元物を得ることができ、延いては磁気特性の優れた合金粉末を得ることができるようになる。さらに、原料が適度に圧縮されていることにより、各原料粒子間の距離が短くなるため、熱伝導がよく、短時間で還元拡散反応が起こる。還元拡散時間が長いと、蒸気圧の高い希土類元素は高温部で揮発し、低温部に濃縮し組成のばらつき原因になるため、このように還元拡散反応が短時間で生じるようにすることは、特性を向上させる大きな要因となる。
次に、この希土類−鉄系合金に対して、必要により水素吸蔵を行う。希土類−鉄系合金は、少なくとも水素を含有する雰囲気の温度が500℃以下となるように冷却する。500℃を超えると消費エネルギーが大きくなり、しかも、目的の希土類−鉄母合金が分解したり、副反応生成物が生じたりすることがあるからである。反応生成物に水素を吸蔵させるにあたっては、室温でも十分行うことができる。反応生成物が水素を吸蔵すると自己発熱を起こして材料温度が上昇するため、500℃を超えないように留意することが好ましい。
また、水素吸蔵においては、還元拡散処理を行った後、冷却した反応生成物を炉内に入れたまま、還元拡散処理で用いた不活性ガスを水素雰囲気ガスに置換し、この水素を含む雰囲気ガスで加圧するか、あるいはガスを流しながら一定時間吸蔵処理することにより行う。このとき、次工程の窒化処理に悪影響を与えない範囲で加熱しても構わない。水素ガスの置換は、炉内にある不活性ガスを脱気し、真空に引いてから水素ガスを導入することにより、短時間で水素ガスに完全に置換させることができるため好ましい。このときの真空度としては、大気圧に対して−30kPa以下とすることが好ましく、−100kPa以下とすることがより好ましい。
なお、アルゴンガスは、水素ガスよりも比重が大きいため、反応生成物の底部まで完全に水素ガスで置換しきれないと、水素吸蔵が効果的に行えず、水素吸蔵後も大きな塊のまま存在することがあるため注意を要する。
不活性ガスを水素を含む雰囲気ガスで置換した後、水素の吸蔵を促進するために、炉内の圧力を大気圧に対して+5kPa以上に加圧しておくことが好ましい。また、大気圧に対して+10kPa以上50kPa以下に加圧することがより好ましい。加圧した状態で放置して反応生成物が水素を吸蔵していくようになると、その圧力が初期加圧圧力から徐々に低下するため、水素吸蔵の進行を容易に確認することができる。
窒化ガスには、窒素又はアンモニアを用いることが好ましい。特に、アンモニアは、希土類−鉄合金粉末を窒化しやすく、短時間で窒化できるため好ましい。本実施の形態においては、その窒化ガスが少なくともアンモニアと水素とを含有していることが好ましく、反応をコントロールするためにアルゴン、窒素、ヘリウム等を混合することができる。アンモニア−水素混合ガスを用いると、アンモニアだけで窒化した場合と比較してアンモニア分圧が下がり、表面付近が過窒化になり難くなり、粉末内部まで均一に窒化することができる。窒化ガスの量としては、磁石粉末中の窒素量が3.0質量%以上3.6質量%以下となるのに十分な量であることが好ましい。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)としては、0.1以上0.7以下とすることが好ましく、0.2以上0.6以下となるようにすることがより好ましい。アンモニア分圧がこのような範囲であると、母合金の窒化がより効果的に進み、十分に磁石粉末の飽和磁化と保磁力を向上させることができる。
窒化反応を行う反応装置としては、特に限定されず、横型、縦型の管状炉、回転式反応炉、密閉式反応炉等が挙げられる。これらのいずれの装置においても、本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素磁石粉末を調製することが可能であるが、その中でも特に、窒素組成分布の揃った粉体を得るためにはキルンのような回転式反応炉を用いるのが好ましい。
窒化処理においては、希土類―鉄母合金粉末を含窒素雰囲気中で、例えば300℃以上700℃以下の温度に加熱する。加熱温度としては、350℃以上600℃以下とすることがより好ましく、400℃以上500℃以下とすることがさらに好ましい。加熱温度が300℃未満であると、母合金の窒化速度が遅くなり、一方で700℃を超えると、希土類の窒化物と鉄とに分解してしまう可能性がある。加熱時間としては、処理量に応じて適宣設定すればよいが、例えば1時間以上10時間以下とする。
窒化をより効率的に行うためには、通常、80μm程度以下の希土類−鉄母合金粉末を用いることが好ましい。粒子の大きさとしては、特に制限されないが、凝集・融着部を実質的に含まない平均粒径3μm以上50μm以下の粉末を用いることがさらに好ましい。このため、希土類−鉄母合金粉末の凝集・融着部をなくすために、必要に応じて解砕しておくことができ、粒径の大きな希土類−鉄母合金粉末をさらに微粉砕(解砕を含む)して製造してもよい。粉末の粒径が80μmよりも粗いと、粒子表面から内部まで均一に窒化し難くなり、磁気特性が低くなってしまう可能性がある。なお、粉末の粒径の下限値としては、特に限定されないが、1μm以上とすることが好ましい。粒径が1μmより細かいと、発火や表面酸化し易く取り扱いが難しくなる。
その後、窒化処理した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を純水中に投じ、水素イオン濃度pHが11以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返す。その後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で攪拌を行う。そして、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末をアルコール置換し、続いて乾燥処理を施すことで、所望の希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を得ることができる。
なお、水素吸蔵工程後における窒化処理工程と水中デカンテーション工程との順番は逆であってもよい。
(2)磁石粉末の粉砕
次に、本実施の形態に係る製造方法では、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、有機溶媒中で粉砕媒体によって粉砕する。磁石粉末の粉砕後の粒径としては、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように粉砕する。このことにより、高い磁気特性を有する磁石微粉末を製造することができる。
次に、本実施の形態に係る製造方法では、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、有機溶媒中で粉砕媒体によって粉砕する。磁石粉末の粉砕後の粒径としては、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように粉砕する。このことにより、高い磁気特性を有する磁石微粉末を製造することができる。
使用する磁石粉末の粉砕機としては、種類によって特に限定されるわけではないが、その中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で、媒体攪拌ミルが好適である。
具体的には、媒体攪拌ミルは、有機溶媒と磁石粗粉末とを含む混合物を微粉砕するものであり、例えばボール等の粉砕媒体を充填したミルを、攪拌棒、回転ディスク等によって強制的に攪拌することにより、粉砕を行う装置が挙げられる。
媒体攪拌ミルにおいては、有機溶媒を装置内に入れておき、これに磁石粗粉末を加えてから装置を回転させてもよいし、予め有機溶媒と磁石粉末とを混合機によりプレミキシングしてスラリーを形成しておき、これをポンプにより媒体攪拌ミルに送って粉砕処理してもよい。有機溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等のいずれかを使用できるが、その中でも特に、イソプロピルアルコールを用いた場合には好ましい磁石微粉末を得ることができる。
媒体攪拌ミル内では、有機溶媒によって磁石粗粉末とボ−ルとがスラリー状態となって攪拌による攪拌作用を受ける。そして、磁石粗粉末同士あるいはボールとの摩擦によって、磁石粗粉末は粉砕される。
このとき、有機溶媒には、表面安定化剤として燐酸系化合物を添加することができる。有機溶媒に燐酸系化合物を添加することによって、磁石粉末が粉砕されるとともにその表面に燐酸塩の皮膜を形成させることができる。燐酸の添加量としては、長時間大気に晒したり、特にボンド磁石用樹脂と混練する環境下や実用上重要な温湿度環境下に晒しても安定で磁気特性に優れた磁石が得られるように、磁石微粉末への皮膜が平均1nm以上20nm以下程度となる量であることが好ましく、具体的には、磁石粉末の表面に、燐(P)含有量が0.1質量%以上1.0質量%以下である燐酸塩皮膜が形成されるようにすることが好ましい。
なお、燐酸系化合物としては、特に限定されないが、燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ピロ燐酸、直鎖状のポリ燐酸、環状のメタ燐酸等が挙げられる。
また、所望とする粉末粒度や処理量に応じて、媒体攪拌ミル1台で循環処理したり、あるいは複数台を設置して連続処理することもできる。媒体攪拌ミルを複数設置する場合、ミルの型式や運転条件(メディア径、主軸回転数、吐出量等)を変化させてもよい。
また、所望とする粒度の磁石粉末を得るために、媒体攪拌ミルの粉砕機中での粉砕にあたって、粉砕媒体として金属ボールやジルコニア等のセラミックスボールを入れて粉砕することができるが、その際、粉砕媒体のボール径が0.1mm未満であると、粉砕能力が落ちたり、ハンドリング性が悪くなる問題がある。また、ボール系の上限値としては、所望とする粒径までの粉砕を考慮すると、10mm以下とすることが好ましく、8mm以下とすることがさらに好ましく、6mm以下とすることが特に好ましい。また、ボール充填率としては、粉砕機の種類や粉砕能力等によっても異なるものの、容積の40%以上70%以下とすることが好ましい。
粉砕時間としては、処理量等によって異なり一概に規定できず、適宜設定すればよい。
(3)加熱乾燥
次に、本実施の形態に係る製造方法では、粉砕された磁石粉末を含むスラリーから磁石粉末を分離して乾燥する。乾燥条件としては、特に制限されないが、磁石粉末を乾燥機に入れ、真空中あるいは不活性ガス雰囲気下において、130℃以上160℃以下の温度条件で、30分以上480分以下の時間加熱することが好ましい。
次に、本実施の形態に係る製造方法では、粉砕された磁石粉末を含むスラリーから磁石粉末を分離して乾燥する。乾燥条件としては、特に制限されないが、磁石粉末を乾燥機に入れ、真空中あるいは不活性ガス雰囲気下において、130℃以上160℃以下の温度条件で、30分以上480分以下の時間加熱することが好ましい。
以上詳述した本実施の形態に係る製造方法によれば、平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満であり、残留磁束密度Br(以後、単に「Br」と記す)、保磁力iHc(以後、単に「iHc」と記す)、Brの90%の磁場(以後、単に「Hk」と記す)、最大エネルギー積(BH)max(以後、単に「(BH)max」と記す)といったいずれの磁気特性も高くなり、優れた磁気特性を有し、かつ大気に暴露しても安定で発火しない表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造することができる。
具体的には、Brが1.3T以上で、iHcが860kA/m以上で、Hkが330kA/m以上で、(BH)maxが280kj/m3であり、大気に暴露しても安定で発火せず表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を、低コストで生産性良く製造することができる。
≪2.希土類−鉄−窒素系磁石粉末≫
本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、上述したように、多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量が1.0質量%以下のカルボニル鉄粉を鉄原料に用いた還元拡散反応によって得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、平均粒径が2.0μm以上3.5μm未満の大きさとなるように粉砕し、その粉砕物を加熱乾燥することによって得られる。このようにして製造することにより、希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、高い磁気特性と優れた表面安定性を有するものとなる。
本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、上述したように、多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量が1.0質量%以下のカルボニル鉄粉を鉄原料に用いた還元拡散反応によって得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、平均粒径が2.0μm以上3.5μm未満の大きさとなるように粉砕し、その粉砕物を加熱乾燥することによって得られる。このようにして製造することにより、希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、高い磁気特性と優れた表面安定性を有するものとなる。
希土類元素には、Sm、Gd、Tb、Ceのうちの少なくとも1種、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのうちの1種以上を含むものが好ましい。その中でもSmが含まれるものであると、磁気特性と表面安定性の向上効果をより著しく発揮させることができる。
この希土類元素は、単独若しくは混合物として使用することができ、その含有量としては、特に限定されないが、23.0質量%以上25.0質量%以下とすることが好ましい。希土類元素の含有量が23.0質量%未満であると、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになって高い保磁力が得難くなる。一方で、含有量が25.0質量%を超えると、主相となる合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下することがある。
遷移金属である鉄(Fe)の含有量としては、特に限定されないが、70質量%以上の割合で含有するものであることが好ましい。さらに、磁気特性を損なうことなく磁石の温度特性を改善する目的で、Feの一部をCoで置換することが好ましい。Fe成分の含有量が70質量%未満であると、磁化が低くなり好ましくない。一方で、Fe成分の含有量が80質量%を超えると、希土類元素の割合が少なくなり過ぎてしまい、高い保磁力が得られないことがある。このことから、Fe成分の組成範囲としては、70質量%以上80質量%以下であることが好ましく、特に、含有量が70質量%以上76質量%以下であることにより、保磁力と磁化のバランスの取れた材料となりさらに好ましい。
なお、遷移金属として、Feのほかに、Co、Ni、Mnを含有させてもよい。
また、上述した成分に加えて、保磁力の向上、生産性の向上、並びに低コスト化のために、Ca、Cr、Nb、Mo、Sb、Ge、V、Si、Ta、Cu等から選ばれた1種以上を添加してもよい。このときの添加量としては、遷移金属全体に対して7質量%以下とすることが好ましい。また、不可避的不純物として、CあるいはB等が5質量%以下で含有されていてもよい。
また、窒素(N)の含有量としては、磁気特性の観点から3.0質量%以上3.6質量%以下とすることが好ましい。窒素の含有量が3.0質量%未満であると、9eサイトに窒素が全て入らないため高い磁気特性が得られない可能性がある。一方で、含有量が3.6wt%より多くなると、結晶構造が壊れ磁気特性が下がってしまうことがある。
また、燐(P)の含有量としては、元素換算で0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましい。希土類−鉄−窒素系磁石粉末において、Pは表面安定成分として作用し、上述した含有量範囲で含まれていることにより、高い磁気特性とより優れた表面安定性を有するものとなる。
本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満である。平均粒径(D50)の範囲がこの範囲を外れると、いずれの場合でも所望とする磁気特性が得られず、また2.0μm未満であると表面安定性が低下する。
希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)は、例えばHELOS粒度分布測定装置を用いて測定することができる。HELOS粒度分布測定装置は、粒度分布を測定する際に、被測定粉末に一定の圧力の窒素を噴射させて凝集した粉末を解凝して測定するものである。このときの窒素圧を分散力という。なお、平均粒径(D50)は、例えば、窒素圧力を3.0×105Paとして噴射して測定することができる。
また、本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、Brが1.3T以上で、iHcが860kA/m以上で、Hkが330kA/m以上で、(BH)maxが280kj/m3以上であって優れた磁気特性を有しており、しかも表面安定性に優れているため、例えば大気中に暴露しても発火しない。
この希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、フェライト、アルニコ等の、通常ボンド磁石の原料となる各種の磁石粉末と混合してもよい。具体的に、異方性磁石粉末だけでなく、等方性磁石粉末も対象とすることができるが、その中でも、異方性磁場(HA)が3979kA/m(50kOe)以上の磁石粉末を混合させることが好ましい。また、これら処理を施した磁石粉末に、熱化塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム組成物等を配合して射出成形、押出し成形等を行うことによって、樹脂結合型磁石、すなわちボンド磁石を容易に製造することができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
≪磁石粉末の評価試験方法≫
後述する実施例、比較例にて得られた磁石粉末について、下記の試験方法に基づいて特性を評価した。
後述する実施例、比較例にて得られた磁石粉末について、下記の試験方法に基づいて特性を評価した。
(i)磁石粉末の磁気特性
日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、得られた磁石粉末の磁気特性を測定した。
日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、得られた磁石粉末の磁気特性を測定した。
(ii)平均粒径(D50)
平均粒径(D50)は、HELOS粒度分布測定装置(SYMPATEC GmbH社製,商品名:レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS)を用いて、被測定粉末に3.0×105Paの圧力の窒素を噴射させて、凝集した磁石粉末を解凝して測定した。
平均粒径(D50)は、HELOS粒度分布測定装置(SYMPATEC GmbH社製,商品名:レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS)を用いて、被測定粉末に3.0×105Paの圧力の窒素を噴射させて、凝集した磁石粉末を解凝して測定した。
(iii)磁石粉末の表面安定性
磁石粉末の表面安定性について、得られた磁石粉末の一部(5g)を大気中に30分放置し、発火しない場合を良好(○)、発火する場合を不良(×)として評価した。
磁石粉末の表面安定性について、得られた磁石粉末の一部(5g)を大気中に30分放置し、発火しない場合を良好(○)、発火する場合を不良(×)として評価した。
≪実施例、比較例≫
[実施例1]
磁石原料粉末として、図1に示す多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)4μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.43質量%)1050.2gと、平均粒径(D50)3μmの酸化サマリウム粉末(Sm2O3純度99.5%)424.8gとをヘンシェルミキサーで混合した。得られた混合粉末から960gを分取し、そこに粒状金属カルシウム(Ca純度99%)123.9gを添加してロッキングミキサーを用いて10分混合した。
[実施例1]
磁石原料粉末として、図1に示す多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)4μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.43質量%)1050.2gと、平均粒径(D50)3μmの酸化サマリウム粉末(Sm2O3純度99.5%)424.8gとをヘンシェルミキサーで混合した。得られた混合粉末から960gを分取し、そこに粒状金属カルシウム(Ca純度99%)123.9gを添加してロッキングミキサーを用いて10分混合した。
得られた混合物を円筒形のステンレス容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1100℃で5時間の加熱処理を施し、SmFe合金を含む還元拡散生成物を得た。この還元拡散生成物を室温まで冷却した後、アルゴンガスを排出しながら水素ガスを供給し、ガス圧力約0.01MPaとして水素を吸蔵させた。これにより、還元拡散生成物が崩壊して、粒度が1mm以下になった。
次に、水素を吸蔵した還元拡散生成物をアンモニア分圧が0.2のアンモニア−水素混合ガス雰囲気下で昇温し、465℃で200分間保持した。その後、同温度で水素ガスに切り替えて60分間保持した。さらに、窒素ガスに切り替えて60分間保持して、還元拡散生成物中の合金を窒化した後、冷却して磁石粉末を得た。
次に、窒化処理した磁石粉末を純粋中に投じたところ、崩壊してスラリーが得られた。水素イオン濃度pHが12以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返し行った後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で15分間攪拌を行った。その後、脱酢酸洗浄として純水中で洗浄を行い、真空乾燥機を用い50℃で5時間保持して乾燥し、磁石粗粉末を得た。
得られた磁石粗粉末15gを、イソプロピルアルコール100mlと共に、直径5mmの部分安定化ZrO2ボール(密度6g/cm3)230gを充填した振動式ボールミルに入れて、270分間粉砕を行った。その後、スラリーを取り出して濾過し、真空乾燥機を用いて50℃で5時間保持して乾燥し、磁石粉末aを得た。
得られた磁石粉末aは、大気に晒しても安定であった。
また、得られた磁石粉末aに分散力を作用させて平均粒径(D50)を測定するとともに、Br、Hk、iHc、及び(BH)maxを測定した。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例2]
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径3mmの部分安定化ZrO2を用いて330分間粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末bを得た。この磁石粉末bは、大気晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径3mmの部分安定化ZrO2を用いて330分間粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末bを得た。この磁石粉末bは、大気晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例3]
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径7mmの部分安定化ZrO2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末cを得た。この磁石粉末cは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径7mmの部分安定化ZrO2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末cを得た。この磁石粉末cは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例4]
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径4.76mmのSUJ−2ボールを用いて130分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末dを得た。この磁石粉末dは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径4.76mmのSUJ−2ボールを用いて130分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末dを得た。この磁石粉末dは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例5]
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径2mmのSUJ−2ボールを用いて390分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして磁石粉末eを得た。この磁石粉末eは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径2mmのSUJ−2ボールを用いて390分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして磁石粉末eを得た。この磁石粉末eは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例6]
多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)5μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.34質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末fを得た。この磁石粉末fは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)5μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.34質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末fを得た。この磁石粉末fは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例7]
粉砕時間を192分間としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末gを得た。この磁石粉末gは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
粉砕時間を192分間としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末gを得た。この磁石粉末gは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例8]
還元拡散反応温度を1050℃とし、4.76mmSUJ−2ボールで114分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末hを得た。この磁石粉末hは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
還元拡散反応温度を1050℃とし、4.76mmSUJ−2ボールで114分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末hを得た。この磁石粉末hは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例9]
粉砕時間を140分間としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末iを得た。この磁石粉末iは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
粉砕時間を140分間としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末iを得た。この磁石粉末iは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例10]
還元拡散反応温度を1150℃とし、4.76mmSUJ−2ボールで86分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして磁石粉末jを得た。この磁石粉末jは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
還元拡散反応温度を1150℃とし、4.76mmSUJ−2ボールで86分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして磁石粉末jを得た。この磁石粉末jは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例11]
磁石粗粉末の粉砕の際に、85%燐酸0.18gを添加したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末kを得た。この磁石粉末kは、大気に晒しても安定であった。なお、定量分析の結果、磁石粉末k中のP量は0.3質量%であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
磁石粗粉末の粉砕の際に、85%燐酸0.18gを添加したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末kを得た。この磁石粉末kは、大気に晒しても安定であった。なお、定量分析の結果、磁石粉末k中のP量は0.3質量%であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[比較例1]
多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)4μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.43質量%)に代えて、図2に示すオニオンスキン構造を有する平均粒径(D50)5μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧98.0%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量1.99質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末lを得た。この磁石粉末lは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)4μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.43質量%)に代えて、図2に示すオニオンスキン構造を有する平均粒径(D50)5μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧98.0%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量1.99質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末lを得た。この磁石粉末lは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[比較例2]
多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)4μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.43質量%)に代えて、図2に示すオニオンスキン構造を有する平均粒径(D50)5μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧98.0%、炭素、窒素および酸素からなるトータル不純物量1.99質量%)を用い、還元拡散反応の温度を1050℃とし、さらに4.76mmSUJ−2ボールで90分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末mを得た。この磁石粉末mは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
多結晶粒子構造を有する平均粒径(D50)4μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧99.5%、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量0.43質量%)に代えて、図2に示すオニオンスキン構造を有する平均粒径(D50)5μmのカルボニル鉄粉末(Fe純度≧98.0%、炭素、窒素および酸素からなるトータル不純物量1.99質量%)を用い、還元拡散反応の温度を1050℃とし、さらに4.76mmSUJ−2ボールで90分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末mを得た。この磁石粉末mは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[比較例3]
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径4.76mmのSUJ−2ボールを用いて、製造される希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm未満となるように161分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末nを得た。この磁石粉末nは、大気に晒したところ部分的に発火が見られた。
直径5mmの部分安定化ZrO2ボールに代えて直径4.76mmのSUJ−2ボールを用いて、製造される希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm未満となるように161分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末nを得た。この磁石粉末nは、大気に晒したところ部分的に発火が見られた。
[比較例4]
4.76mmSUJ−2ボールを用いて、製造される希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が3.5μmを超えるように50分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末oを得た。この磁石粉末oは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
4.76mmSUJ−2ボールを用いて、製造される希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が3.5μmを超えるように50分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末oを得た。この磁石粉末oは、大気に晒しても安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[参考例1]
参考例1では、アルゴンガス雰囲気下において850℃で5時間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして還元拡散反応を行い、SmFe合金粉末を得た。そして、その合金粉末の断面観察を行った結果、粒子の中心部に多数の未反応鉄が観察されたため、以後の窒化処理は行わなかった。
参考例1では、アルゴンガス雰囲気下において850℃で5時間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして還元拡散反応を行い、SmFe合金粉末を得た。そして、その合金粉末の断面観察を行った結果、粒子の中心部に多数の未反応鉄が観察されたため、以後の窒化処理は行わなかった。
≪評価≫
表2に示す評価結果から分かるように、実施例1〜11では、多結晶粒子構造を有し、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量が1.0質量%以下であり、平均粒径(D50)が特定の範囲となるように粉砕して磁石粉末を製造したことにより、Br、iHc、Hk、(BH)maxといった磁気特性が高く、しかも表面安定性にも優れたものとなったことが分かる。
表2に示す評価結果から分かるように、実施例1〜11では、多結晶粒子構造を有し、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量が1.0質量%以下であり、平均粒径(D50)が特定の範囲となるように粉砕して磁石粉末を製造したことにより、Br、iHc、Hk、(BH)maxといった磁気特性が高く、しかも表面安定性にも優れたものとなったことが分かる。
これに対して、比較例1、2、及び4では、カルボニル鉄粉の粒子構造、炭素、窒素、及び酸素からなるトータル不純物量、及び平均粒径(D50)のいずれかが上述した範囲から外れているために、Br、iHc、Hk、(BH)maxのいずれかが低いことがわかる。また、比較例3では、平均粒径(D50)が2.0μm未満と小さかったため、表面安定性に劣るものとなってしまったと考えられる。
なお、参考例1では、多数の未反応鉄が観察されたことから、窒化処理するに至らなかった。このことは、還元拡散温度が低過ぎたためと考えられる。
本発明に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法によれば、磁気特性が高く、表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を簡易に得ることができる。このような希土類−鉄−窒素系磁石粉末によれば、民生用あるいは産業用の各種機器に組み込まれるボンド磁石の原料として好適に使用することができ、その工業的価値は極めて高い。
Claims (6)
- 原料粉末であるカルボニル鉄粉末及び希土類元素の酸化物粉末と、該希土類元素の酸化物を還元するに必要な化学量論量以上のアルカリ土類金属とを混合して還元拡散法により得られた希土類−鉄系合金を窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、有機媒体及び粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、得られた粉砕物を乾燥させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
前記カルボニル鉄粉末は多結晶粒子構造を有し、かつ、炭素、窒素、及び酸素からなるト−タル不純物量が1.0質量%以下であり、
得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径(D50)が2.0μm以上3.5μm未満となるように前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕する
ことを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。 - 900℃以上1150℃以下の温度で還元拡散反応を行うことを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 前記粉砕の際に、前記有機媒体に燐酸を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法によって得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末。
- その表面に、P含有量が元素換算で0.1質量%以上1.0質量%以下である燐酸塩皮膜が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末。
- 残留磁束密度Brが1.3T以上で、保磁力iHcが860kA/m以上で、該Brの90%に対応する磁場が330kA/m以上であり、かつ、最大エネルギー積(BH)maxが280kj/m3以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末。
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JP2014159341A JP2016037611A (ja) | 2014-08-05 | 2014-08-05 | 希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法及び希土類−鉄−窒素系磁石粉末 |
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