JP2016025312A - 高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法及びその高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末 - Google Patents

高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法及びその高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】高い磁気特性を維持しながら希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の耐候性を向上させ、その磁石粉末を80℃相対湿度90%の条件下に長時間暴露した場合でも保磁力の低下がない高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法の製造方法は、希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末を、その磁石粗粉末の重量に対して0.1mol/kgを超え2.0mol/kg未満の燐酸系化合物を添加した有機溶媒と粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満となるように粉砕させながら、磁石粉末の表面に燐酸塩皮膜を形成し、得られた粉砕物を乾燥させた後、少なくとも最終的に大気雰囲気下100℃以上200℃未満で加熱処理する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法及びその高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末に関し、より詳しくは、希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末を燐酸と共に粉砕させながら燐酸塩皮膜を形成し、最終的に大気雰囲気下で加熱処理することより、高い磁気特性を維持しながら磁石粉末の耐候性を向上させることができる高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法及びその高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末に関するものである。
SmFeNで代表される希土類−遷移金属−窒素系磁石は、高性能でかつ安価な希土類−遷移金属−窒素系磁石として知られている。
従来、この希土類−遷移金属−窒素系磁石は、希土類金属と遷移金属を溶解して合金を作製する溶解法や、希土類酸化物と遷移金属とを含む原料にアルカリ土類金属を還元剤として配合し、高温で希土類酸化物を金属に還元するとともに遷移金属と合金化する還元拡散法によって製造されている。しかしながら、溶解法では、原料として使用する希土類金属が高価であるため経済的ではなく、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法がより望ましい方法であると考えられている。
すなわち、還元拡散法では、先ず、希土類酸化物粉末原料、遷移金属粉末原料、及び希土類酸化物の還元剤であるアルカリ土類金属を配合した混合物を、非酸化性雰囲気中で焼成して希土類−遷移金属系合金を合成する。次に、得られた希土類−遷移金属系合金を水素吸蔵させてから湿式処理して粉末状にした後、この粉末状の希土類−遷移金属系合金を窒化処理する方法、もしくは窒化処理と湿式処理の順番を入れ替えた方法により、所望の希土類−遷移金属−窒素系磁石が製造される。
その後、得られた粉末状の希土類−遷移金属−窒素系磁石は、特定の粒度になるまで微粉砕処理される。ところが、このようにして微粉砕された磁石粉末は、磁粉表面や内部へのダメージによって磁気特性が低下する。また、粒度が小さ過ぎると表面活性が極めて高くなり、安定性に劣るものとなる。
そのため、例えば特許文献1では、粉砕後の強磁性金属窒化物微粉末をオルト燐酸で処理する耐熱処理強磁性微粉末が提案されている。また、特許文献2では、粉砕後の金属微粉末に燐酸エステルあるいは燐酸エステルを含む有機溶媒を添加して燐酸エステル系の金属錯化合物の薄皮膜を形成した後、大気中で300℃〜450℃に加熱して燐酸系金属錯化合物の薄膜を形成する金属微粉末の表面処理方法が提案されている。また、特許文献3や特許文献4では、粉砕後の磁性粉に燐酸塩で被覆処理する方法が提案されている。さらに、特許文献5では、磁粉と燐酸系化合物を混合乾燥して、燐酸系化合物で被覆した後に、大気中又は酸素を含む雰囲気下において130℃〜300℃の範囲で加熱する方法が提案されている。
しかしながら、これらの先行技術に示される方法では、凝集した粉末表面に皮膜が形成されているために、残留磁束密度Br、保磁力iHc、及びBrの90%に対応する磁場Hkがすべて高い磁気特性が得られない。また、コンパウンド化の際、ボンド磁石用樹脂組成物を混練すると、せん断力で凝集体が一部解砕されて皮膜のない粉末表面が露出してしまい、その結果、混練時でも表面酸化が進んで磁気特性が低下する。
本件出願人は、このような問題点に対して、磁石粉を粉砕中に燐酸を添加することにより、燐酸塩皮膜の機能、形態が従来よりも改良された希土類元素−鉄−窒素系磁石粉を製造する方法を提案している(特許文献6、特許文献7)。しかしながら、これらの方法では、数nmから10nmの燐酸皮膜が形成されているものの、燐酸由来の水素(H)の残留によって磁気特性が低下することがあり、また緻密な連続膜に欠けるために、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を用いたボンド磁石が暴露される高温高湿雰囲気下での磁気特性は十分満足するものではない。
こうした状況下、近年、小型モーター、音響機器等に用いられるボンド磁石には、機器の小型化の要請から磁気特性に優れたものが要求されている。しかしながら、従来の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末から得られるボンド磁石の磁気特性は、これらの用途に使用するには不十分であり、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の耐候性の改善が強く望まれている。
特開2000−260616号公報 特許第2602883号公報 特開平11−251124号公報 特許第2602979号公報 特開2002−43109号公報 特許第3882490号公報 特許第4135447号公報
本発明は、このような従来の状況に鑑みてなされたものであり、高い磁気特性を維持しながら希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の耐候性を向上させ、その磁石粉末を80℃相対湿度90%の条件下に長時間暴露した場合でも保磁力の低下がない高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法とその高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を所定の大きさに粉砕させながら、その表面に燐酸塩皮膜を形成した後、少なくとも最終的に大気雰囲気下で加熱処理することにより、高温高湿雰囲気下であっても優れた耐候性を有する希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を容易に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明に係る第1の発明は、希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末を、該磁石粗粉末の重量に対して0.1mol/kgを超え2.0mol/kg未満の燐酸系化合物を添加した有機溶媒と粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満となるように粉砕させながら、該磁石粉末の表面に燐酸塩皮膜を形成し、得られた粉砕物を乾燥させた後、少なくとも最終的に大気雰囲気下100℃以上200℃未満で加熱処理することを特徴とする高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法である。
(2)本発明に係る第2の発明は、上述した第1の発明において、前記大気雰囲気下での加熱処理の前に、真空中又は不活性ガス雰囲気下において室温以上200℃未満で乾燥することを特徴とする高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法である。
(3)本発明に係る第3の発明は、上述した第1及び第2の発明に係る高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法によって得られる高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末である。
(4)本発明に係る第4の発明は、上述した第3の発明において、前記磁石粉末中のP含有量が、元素換算で0.3質量%を超え6.0質量%未満であることを特徴とする高耐候性希土類―遷移金属―窒素系磁石粉末である。
(5)本発明に係る第5の発明は、上述した第3又は第4の発明において、平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満であり、残留磁束密度Brが1.3T以上で、保磁力iHcが970kA/m以上で、該Brの90%に対応する磁場Hkが465kA/m以上であることを特徴とする高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末である。
(6)本発明に係る第6の発明は、上述した第3乃至第5のいずれかの発明において、80℃相対湿度90%の環境下に24時間暴露前後の保磁力iHcの差の割合から求められるΔiHcが、0.9%未満であることを特徴とする高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末である。
本発明によれば、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の表面に、粉砕させながら燐酸塩から成る皮膜を形成し、乾燥後、少なくとも最終的に大気雰囲気下で加熱処理することにより、高い磁気特性を維持しながら高温高湿雰囲気下でも優れた耐候性を有する磁石粉末を得ることができ、その工業的価値は極めて大きい。
また、得られた高耐候性希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、ボンド磁石や焼結磁石に成形されて、高い磁気特性と優れた耐候性が必要とされる一般家電製品、通信、自動車、音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする製品のモーター等の各種用途に好適に適用することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法≫
本実施の形態に係る希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法では、例えば還元拡散法によって希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末を得た後、粉砕媒体を用いて、その希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末を粉砕させながら、溶液中に燐酸系化合物を添加することによって、磁石粉末表面に燐酸塩皮膜を形成する。そして、得られた粉砕物を乾燥させた後、その粉砕物を少なくとも最終的に大気雰囲気下において加熱処理することにより、高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得る。
(1)希土類−遷移金属(鉄)−窒素系磁石粉末の調製
原料の希土類粉末としては、通常、希土類酸化物粉末を用いることができる。希土類酸化物粉末の粒径としては、反応性、作業性等の面から平均粒径(D50)が10μm以下であることが好ましい。また、平均粒径としては、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。平均粒径が10μmを越えると、例えば還元拡散法で得られる合金生成物中に、希土類元素が拡散していない未反応遷移金属部が多くなる。
また、原料として用いる遷移金属粉末としては、例えば鉄粉末等を用いることができ、一般的にはアトマイズ法、電解法等により製造されるが、粉末状のものであれば、その製法は特に限定されない。遷移金属粉末の粒径としては、反応性、作業性等の面から平均粒径(D50)が50μm以下であることが好ましい。平均粒径が50μmを越えると、例えば還元拡散法で得られる合金生成物中に、希土類元素が拡散していない未反応遷移金属部が多くなる。なお、以下では、遷移金属として鉄を用いた場合を例に挙げて、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法について説明を続ける。
還元剤としては、Ca等のアルカリ土類金属を用いることができる。還元剤は、粒状もしくは粉末状のものが用いられるが、粒度が最大粒径5mm以下のものが好ましい。
上述した原料粉末を用いて、先ず、希土類元素を含む希土類酸化物粉末と、鉄粉末とを秤量して反応容器に入れて混合し、さらに希土類酸化物を還元するのに十分な量の還元剤を添加して混合する。このときの反応当量としては、少な過ぎると希土類酸化物のまま残留して合金内部に未反応鉄が生じるため、1.1倍量以上とすることが好ましい。一方で、多過ぎると洗浄時間が長くなり生産性が低くなる。そのため、反応当量としては、1.1倍量以上2.0倍量以下であることが好ましく、1.2倍量以上1.7倍量以下であることがより好ましい。
次に、原料混合物の入った反応容器を還元拡散炉に移し、不活性ガス雰囲気中において、例えばアルゴン(Ar)ガスを流しながら還元拡散炉で還元剤が溶融状態になる温度まで昇温して加熱焼成する。加熱温度としては、特に限定されないが、950℃以上1200℃以下として3時間以上10時間以下の条件で処理することが好ましい。また、加熱温度としては、1000℃以上1200℃以下とすることがより好ましく、1100℃以上1150℃以下とすることが特に好ましい。また、還元剤として上述したようなCaを選定した場合には、Caの融点が838℃であり、沸点が1480℃であるため、加熱温度として950℃以上1200℃以下の範囲であることにより、還元剤は溶融するが蒸気にはならないように処理することができる。なお、加熱時間としては、3時間以上9時間以下であることがより好ましく、3時間以上8時間以下であることがさらに好ましい。
この加熱焼成により、混合物中の希土類酸化物が希土類元素に還元されるとともに、その希土類元素が鉄粉中に拡散して、希土類−鉄母合金が合成される。この還元拡散反応が起きる際、原料混合物が圧縮処理されていると、原料混合物が炉内の温度分布の小さい範囲に置かれ、均一に熱がかかることになる。これにより、場所による反応のばらつきが小さくなり、組成ばらつきが小さい希土類−鉄母合金粉末を得ることができ、延いては磁気特性の高い粉末を得ることができるようになる。さらに、原料が適度に圧縮処理されていることにより、各原料粒子間の距離が短くなるため、熱伝導がよく、短時間で反応して昇温時間も短くなる。還元拡散時間が長いと、蒸気圧の高い希土類元素は高温部で揮発し、低温部に濃縮して組成のばらつきの原因になるため、このように還元拡散反応が短時間で生じるようにすることは、特性を向上させる大きな要因となる。
次に、この希土類−鉄系合金に対して、必要により水素吸蔵を行う。水素吸蔵においては、少なくとも水素を含有する雰囲気の温度が500℃以下となるように冷却する。500℃を越えると消費エネルギーが大きくなり、しかも、目的の希土類−鉄系合金が分解したり、副反応生成物が生じたりすることがあるからである。反応生成物に水素を吸蔵させるにあたっては、室温でも十分行うことができる。反応生成物が水素を吸蔵すると自己発熱を起こして材料温度が上昇するため、500℃を越えないように留意することが好ましい。
また、水素吸蔵においては、還元拡散処理を行った後、冷却した反応生成物を炉内に入れたまま、還元拡散処理で用いた不活性ガスを水素雰囲気ガスに置換し、この水素を含む雰囲気ガスで加圧するか、あるいはガスを流しながら一定時間吸蔵処理することにより行う。このとき、次工程の窒化処理に悪影響を与えない範囲で加熱しても構わない。水素ガスの置換は、炉内にある不活性ガスを脱気し、真空に引いてから水素ガスを導入することにより、短時間で水素ガスに完全に置換させることができるため好ましい。このときの真空度としては、大気圧に対して−30kPa以下とすることが好ましく、−100kPa以下とすることがより好ましい。
なお、アルゴンガスは、水素ガスよりも比重が大きいため、反応生成物の底部まで完全に水素ガスで置換しきれないと、水素吸蔵が効果的に行えず、水素吸蔵後も大きな塊のまま存在することがあるため注意を要する。
不活性ガスを水素を含む雰囲気ガスで置換した後、水素の吸蔵を促進するために、炉内の圧力を大気圧に対して+5kPa以上に加圧しておくことが好ましい。また、大気圧に対して+10kPa以上50kPa以下に加圧することがより好ましい。加圧した状態で放置して反応生成物が水素を吸蔵していくようになると、その圧力が初期加圧圧力から徐々に低下するため、水素吸蔵の進行を容易に確認することができる。
反応生成物は、通常、主相であるSmFe17相の周りにSmリッチ相で覆われている状態となっている。上述した水素吸蔵を行うことにより、水素はSmリッチ相等の結晶格子内に入るが、Smリッチ相は主相よりも膨張率が大きいためにSmリッチ相と主相の粒界から割れて崩壊する。また、強固に凝集している反応生成物の周りにある未反応還元剤や酸化カルシウム等が水素と反応して、凝集がほぐれて崩壊していく。
そして、取り出した崩壊物の粒径が10mm以下、好ましくは1mm以下になるように反応温度と時間を設定することが好ましい。崩壊物の粒径が10mmを越える状態では、窒化処理工程において均一な窒化が困難になり、磁気特性の角形が低下してしまい、水素吸蔵の効果が十分に得られない可能性がある。
このように、水素吸蔵させた反応生成物は、その水素処理後に、容器から取り出した時点で既に崩壊しており、引き続き行われる窒化工程での崩壊性も向上している。そのため、生成した主相であるSmFe17相磁性粉末の凝集が小さく、崩壊してその磁性粉末の表面が活性となっており、その後の窒化処理において合金粉末内の窒素の分布が均一になり、結果として、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が良好なものとなる。
また、水素吸蔵で崩壊した後、窒化処理して得られる希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、窒素の分布が均一となるので、磁気特性を低下させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末が少なくなり、収率が高くなる。
窒化ガスには、窒素又はアンモニアを用いることが好ましい。特に、アンモニアは、希土類−鉄合金粉末を窒化しやすく、短時間で窒化できるため好ましい。本実施の形態においては、その窒化ガスが少なくともアンモニアと水素とを含有していることが好ましく、反応をコントロールするためにアルゴン、窒素、ヘリウム等を混合することができる。アンモニア−水素混合ガスを用いると、アンモニアだけで窒化した場合と比較してアンモニア分圧が下がり、表面付近が過窒化になり難くなり、粉末内部まで均一に窒化することができる。窒化ガスの量としては、磁石粉末中の窒素量が3.0質量%以上3.6質量%以下となるのに十分な量であることが好ましい。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)としては、0.1以上0.7以下とすることが好ましく、0.2以上0.6以下となるようにすることがより好ましい。アンモニア分圧がこのような範囲であると、母合金の窒化がより効果的に進み、十分に磁石粉末の飽和磁化と保磁力を向上させることができる。
窒化反応を行う反応装置としては、特に限定されず、横型、縦型の管状炉、回転式反応炉、密閉式反応炉等が挙げられる。これらのいずれの装置においても、本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素磁石粉末を調製することが可能であるが、その中でも特に、窒素組成分布の揃った粉体を得るためにはキルンのような回転式反応炉を用いるのが好ましい。
窒化処理においては、希土類−鉄母合金粉末を含窒素雰囲気中で、例えば200℃以上700℃以下の温度に加熱する。加熱温度としては、300以上600℃以下とすることがより好ましく、350℃以上550℃以下とすることがさらに好ましい。加熱温度が200℃未満であると、母合金の窒化速度が遅くなり、一方で700℃を超えると、希土類の窒化物と鉄とに分解してしまう可能性がある。加熱時間としては、処理量に応じて適宜設定すればよいが、例えば1時間以上10時間以下とする。
窒化をより効率的に行うためには、通常、80μm程度以下の希土類−鉄合金粉末を用いることが好ましい。粒子の大きさとしては、特に制限されないが、凝集・融着部を実質的に含まない平均粒径3μm以上20μm以下の粉末を用いることがさらに好ましい。このため、希土類−鉄母合金粉末の凝集・融着部をなくすために、必要に応じて解砕しておくことができ、粒径の大きな希土類−鉄合金粉末をさらに微粉砕(解砕を含む)して製造してもよい。粉末の粒径が80μmよりも粗いと、粒子表面から内部まで均一に窒化し難くなり、磁気特性が低くなってしまう可能性がある。なお、粉末の粒径の下限値としては、特に限定されないが、1μm以上とすることが好ましい。粒径が1μmより細かいと、発火や表面酸化し易く取り扱いが難しくなる。
その後、窒化処理した希土類−鉄−窒素系磁石粉末を純水中に投じ、水素イオン濃度pHが11以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返す。その後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で攪拌を行う。そして、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末をアルコール置換し、続いて乾燥処理を施すことで、所望の希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を得ることができる。
なお、水素吸蔵工程後における窒化処理工程と水中デカンテーション工程との順番は逆であってもよい。
(2)磁石粉末の粉砕
次に、本実施の形態に係る製造方法では、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を、媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、有機溶媒中で粉砕媒体によって粉砕する。磁石粉末の粉砕後の粒径としては、その平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満となるように粉砕する。このことにより、高い磁気特性を有する磁石粉末を製造することができる。
使用する磁石粉末の粉砕機としては、種類によって特に限定されるわけではないが、その中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で、媒体攪拌ミルが好適である。
具体的には、媒体攪拌ミルは、有機溶媒と磁石粗粉末とを含む混合物を微粉砕するものであり、例えばボール等の粉砕媒体を充填したミルを、攪拌棒、回転ディスク等によって強制的に攪拌することにより、粉砕を行う装置が挙げられる。
媒体攪拌ミルにおいては、有機溶媒を装置内に入れておき、これに磁石粗粉末を加えてから装置を回転させてもよいし、予め有機溶媒と磁石粉末とを混合機によりプレミキシングしてスラリーを形成しておき、これをポンプにより媒体攪拌ミルに送って粉砕処理してもよい。有機溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等のいずれかを使用できるが、その中でも特に、イソプロピルアルコールを用いた場合には好ましい磁石微粉末を得ることができる。
媒体攪拌ミル内では、有機溶媒によって磁石粗粉末とボ−ルとがスラリー状態となって攪拌による攪拌作用を受ける。そして、磁石粗粉末同士あるいはボールとの摩擦によって、磁石粗粉末は粉砕される。
このとき、本実施の形態に係る製造方法においては、有機溶媒に、表面安定化剤として、磁石粗粉末の重量に対して0.1mol/kgを超え2.0mol/kg未満の燐酸系化合物を添加して、その有機溶媒と共に磁石粗粉末を粉砕する。燐酸系化合物を添加するタイミングとしては、粉砕開始前又は粉砕途中、あるいは、粉砕開始前、粉砕途中、及び粉砕終了前から選択される段階で複数回に分けて添加してもよい。このように有機溶媒に燐酸系化合物を添加することで、粉砕させながら磁石粉末表面に燐酸塩皮膜を形成させることができる。
燐酸系化合物としては、特に限定されないが、燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ピロ燐酸、直鎖状のポリ燐酸、環状のメタ燐酸等が挙げられる。その中でも特に、燐酸を用いることによって、優れた耐候性を発現させることができる。また、高い磁気特性と優れた耐候性を併せ持つ磁石粉末を得るために、磁石粉末中の燐(P)含有量として元素換算で0.3重量%を超え6.0重量%未満となるように燐酸系化合物を有機溶媒に添加することが好ましい。
また、所望とする粉末粒度や処理量に応じて、媒体攪拌ミル1台で循環処理したり、あるいは複数台を設置して連続処理することもできる。媒体攪拌ミルを複数設置する場合、ミルの型式や運転条件(メディア径、主軸回転数、吐出量等)を変化させてもよい。
また、所望とする粒度の磁石粉末を得るために、媒体攪拌ミルの粉砕機中での粉砕にあたって、粉砕媒体として金属ボールやジルコニア等のセラミックスボールを入れて粉砕することができるが、その中でもセラミックスボールを用いて希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕することが好ましい。
すなわち、粉砕媒体が密度7.0g/cmを超える高炭素クロム鋼等の剛球では、磁石粗粉末を所望とする粒径まで粉砕する際に、粉砕エネルギーが強過ぎて、磁石粗粉末の表面や内部への歪の導入が多くなってしまう。これに対して、密度が7.0g/cm未満のセラミックスボールでは、粉砕がマイルドに生じるため、磁石粗粉末の表面や内部への歪の導入を抑制することができる。また、セラミックスの方が、高硬度で耐摩耗性を有するため物理的に安定であり、かつ耐食性、耐薬品性等の化学的性質にも優れているため、セラミックスボールで粉砕するのが好ましい。
なお、その際のセラミックスボールのボール径としては、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。ボール径が0.1mm未満であると、粉砕能力が落ちたり、ハンドリング性が悪くなるという問題がある。一方で、ボール径の上限値としては、所望とする粒径までの粉砕を考慮すると、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、7mm以下であることがさらに好ましい。また、ボール充填率としては、粉砕機の種類や粉砕能力等によっても異なるものの、容積の40%以上70%以下とすることが好ましい。
粉砕時間としては、処理量等によって異なり一概に規定できず、適宜設定すればよい。
(3)加熱乾燥
次に、本実施の形態に係る製造方法では、上述したように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕しながら燐酸系化合物から成る皮膜を形成した後に、粉砕スラリーを濾過・乾燥し、少なくとも最終的に大気雰囲気下において所定の温度条件で加熱処理を施すことを特徴としており、これにより、安定な表面処理皮膜からなる強固な膜とする。
加熱雰囲気としては、少なくとも最終的には大気雰囲気下とするが、その大気雰囲気下での加熱処理の前に、真空中、又は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において加熱乾燥処理を施すようにすることができる。
加熱処理温度は、大気雰囲気下の場合、100℃以上200℃未満とする。ここで、大気雰囲気下において磁気特性が良くなる現象は、雰囲気中の酸素による磁石粉末の表面酸化が、例えばP含有量が0.3重量%を超え6.0重量%未満の範囲で形成された燐酸皮膜(酸素が内部へ拡散するバリア層)で抑制されることにより、燐酸添加由来の残留Hの脱水素が進んだ効果と、燐酸皮膜が緻密な連続膜とはなり難く、燐酸皮膜が付いていない磁石粉末表面に薄い酸化膜が形成された効果との相乗的な効果によるものと推察される。加熱処理温度が100℃未満であると、脱水素反応が十分に進まず、残留Hによって安定な表面皮膜の形成が阻害される。一方で、加熱処理温度が200℃以上であると、脱水素がさらに進むものの、磁石粉末が酸化を伴う熱的なダメージを受けて磁気特性が低下する。このことから、100℃以上200℃未満の温度範囲で加熱処理を施すことによって、安定した強固な膜を形成することができる。
一方、大気雰囲気下での加熱処理の前に、真空中又は不活性ガス雰囲気下において加熱乾燥処理を行う場合には、室温以上200℃未満の温度で行うことが好ましい。なお、加熱乾燥時間としては、加熱乾燥温度や処理量等によって異なり一概に規定できず、適宜選択すればよい。
以上詳述した本実施の形態に係る製造方法によれば、平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満であり、残留磁束密度Br(以後、単に「Br」と記す)、保磁力iHc(以後、単に「iHc」と記す)、及びBrの90%の磁場(以後、単に「Hk」と記す)といったいずれの磁気特性も高くなり、表面安定性と耐候性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造することができる。
具体的には、Brが1.3T以上で、iHcが970kA/m以上で、Hkが465kA/m以上であり、大気に暴露しても安定で発火せず、かつ高温高湿雰囲気下でも安定な希土類−鉄−窒素系磁石粉末を、低コストで生産性良く製造することができる。
≪2.希土類−鉄−窒素系磁石粉末≫
本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、上述したように、例えば還元拡散法で製造された磁石母合金を窒化して得られる磁石粗粉末を、粉砕しながら燐酸系化合物で表面処理して燐酸塩皮膜を形成し、乾燥させた後、少なくとも大気雰囲気下で加熱処理することによって得られる。このようにして製造することにより、希土類−鉄−窒素系磁石粉末は優れた耐候性を有するものとなる。
希土類元素には、Sm、Gd、Tb、Ceのうちの少なくとも1種、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのうちの1種以上を含むものが好ましい。その中でもSmが含まれるものであると、耐候性の向上効果をより著しく発揮させることができる。
この希土類元素は、単独若しくは混合物として使用することができ、その含有量としては、特に限定されないが、23.0質量%以上25.0質量%以下とすることが好ましい。希土類元素の含有量が23.0質量%未満であると、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになって高い保磁力が得難くなる。一方で、含有量が25.0質量%を超えると、主相となる合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下することがある。
また、燐(P)の含有量としては、元素換算で0.3重量%を超え6.0重量%未満であることが好ましい。P含有量がこのような範囲であることにより、高い磁気特性とより優れた耐候性を併せ持つ磁石粉末となる。
また、窒素(N)の含有量としては、磁気特性の観点から3.0質量%以上3.6質量%以下とすることが好ましい。窒素の含有量が3.0質量%未満であると、9eサイトに窒素が全て入らないため高い磁気特性が得られない可能性がある。一方で、含有量が3.6wt%より多くなると、結晶構造が壊れ磁気特性が下がってしまうことがある。
なお、上述した成分に加えて、さらにAl、Cu、Ti、Mn、Zn、Zrから選択される1種以上を、0.01質量%以上3.0質量%以下の割合で含有するものであることにより、耐熱性をより高めることができる。
本実施の形態に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、特に限定されないが、平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満であることが好ましい。
また、この希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、Brが1.3T以上で、iHcが970kA/m以上で、Hkが465kA/m以上という高い磁気特性を有している。しかも、磁石粉末表面に強固な燐酸塩皮膜が形成されていることから、表面安定性に優れ、かつ80℃相対湿度90%の環境下に24時間暴露した後のiHcは、実質的に暴露前と変化なく優れた耐候性を有している。具体的に、80℃相対湿度90%の環境下に24時間暴露前後のiHcの差の割合から求められるΔiHcは0.9%未満である。
この希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、フェライト、アルニコ等の、通常ボンド磁石の原料となる各種の磁石粉末と混合してもよい。具体的に、異方性磁石粉末だけでなく、等方性磁石粉末も対象とすることができるが、その中でも、異方性磁場(HA)が3979kA/m(50kOe)以上の磁石粉末を混合させることが好ましい。また、これら処理を施した磁石粉末に、熱化塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム組成物等を配合して射出成形、押出し成形等を行うことによって、樹脂結合型磁石、すなわちボンド磁石を容易に製造することができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
≪磁石粉末の評価試験方法≫
後述する実施例、比較例にて得られた磁石粉末について、下記の試験方法に基づいて特性を評価した。
(i)磁石粉末の磁気特性
日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、得られた磁石粉末の磁気特性を測定した。
(ii)平均粒径(D50)
平均粒径(D50)は、HELOS粒度分布測定装置(SYMPATEC GmbH社製,商品名:レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS)を用いて、被測定粉末に3.0×10Paの圧力の窒素を噴射させて、凝集した磁石粉末を解凝して測定した。
(iii)磁石粉末の表面安定性
磁石粉末の表面安定性について、得られた磁石粉末の一部(5g)を大気中に30分放置し、発火しない場合を良好(○)、発火する場合を不良(×)として評価した。
(iv)耐候性
耐候性は、得られた磁石粉末を80℃相対湿度90%の恒温恒湿槽中に24時間暴露し、暴露前後のiHcの差の割合からΔiHcを算出して評価した。
≪実施例、比較例≫
[実施例1]
磁石原料粉末として、平均粒径(D50)50μmの鉄粉末(Fe純度98%)1050.2gと、平均粒径(D50)3μmの酸化サマリウム粉末(Sm純度99.5%)424.8gとをヘンシェルミキサーで混合した。得られた混合粉末から960gを分取し、そこに粒状金属カルシウム(Ca純度99%)123.9gを添加してロッキングミキサーを用いて60分混合した。
得られた混合物を円筒形のステンレス容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1150℃で6.5時間の加熱処理を施し、SmFe合金を含む還元拡散生成物を得た。この還元拡散生成物を室温まで冷却した後、アルゴンガスを排出しながら水素ガスを供給し、ガス圧力約0.01MPaとして水素を吸蔵させた。これにより、還元拡散生成物が崩壊して、粒度が1mm以下になった。
次に、水素を吸蔵した還元拡散生成物をアンモニア分圧が0.2のアンモニア−水素混合ガス雰囲気下で昇温し、465℃で200分間保持した。その後、同温度で水素ガスに切り替えて60分間保持した。さらに、窒素ガスに切り替えて60分間保持して、還元拡散生成物中の合金を窒化した後、冷却して磁石粉末を得た。
次に、窒化処理した磁石粉末を純水中に投じたところ、崩壊してスラリーが得られた。水素イオン濃度pHが12以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返し行った後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で15分間攪拌を行った。その後、脱酢酸洗浄として純水中で洗浄を行い、真空乾燥機を用いて50℃で5時間保持して乾燥し、磁石粉末を得た。
得られた磁石粉末15gを、85%燐酸水溶液0.44g(0.25mol/kg)及びイソプロピルアルコール100mlと共に、粉砕媒体として直径が5mmの部分安定化ジルコニア(ZrO)(密度:6.0g/cm)230gを充填した振動式ボールミルに入れて、360分間粉砕を行った。その後、スラリーを取り出して濾過し、室温で3時間真空乾燥を行い、大気雰囲気下150℃で1時間加熱処理して磁石粉末aを得た。
この磁石粉末aは、大気に晒しても発熱せず安定であった。
得られた磁石粉末aの平均粒径(D50)、磁石粉末aの磁気特性を測定し、また耐候性試験前後のiHcの測定を行ってΔiHcを算出した。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に評価結果を示す。
[実施例2]
85%燐酸水溶液の添加量を0.52g(0.30mol/kg)としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末bを得た。この磁石粉末bは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[実施例3]
85%燐酸水溶液の添加量を1.04g(0.60mol/kg)としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末cを得た。この磁石粉末cは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[実施例4]
直径5mmの部分安定化ジルコニアに替えて、直径4.76mmSUJ−2(高炭素クロム鋼)300g用いて、160分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末dを得た。この磁石粉末dは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[実施例5]
粉砕時間を610分としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末eを得た。この磁石粉末eは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[実施例6]
直径5mmの部分安定化ジルコニアに替えて、直径3mmの部分安定化ジルコニアを用いて、453分間粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末fを得た。この磁石粉末fは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[実施例7]
大気雰囲気下での加熱温度を100℃としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末gを得た。この磁石粉末gは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[実施例8]
大気雰囲気下150℃で1時間加熱処理する前に、真空中で150℃1時間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末hを得た。この磁石粉末hは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[実施例9]
大気雰囲気下150℃で1時間加熱処理する前に、窒素中で150℃1時間加熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末iを得た。この磁石粉末iは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例1]
大気雰囲気下での加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末jを得た。この磁石粉末jは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例2]
85%燐酸水溶液の添加量を0.18g(0.10mol/kg)としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末kを得た。この磁石粉末kは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例3]
85%燐酸水溶液の添加量を3.46g(2.00mol/kg)としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末lを得た。しかしながら、この磁石粉末lは、溶解が認められたため以後の評価を行わなかった。なお、下記表1に磁石粉末の製造条件を示す。
[比較例4]
大気雰囲気下での加熱温度を200℃としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末mを得た。この磁石粉末mは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例5]
大気雰囲気下に替えて窒素雰囲気下で加熱したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末nを得た。この磁石粉末nは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例6]
大気雰囲気下に替えてアルゴン雰囲気下で加熱したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末oを得た。この磁石粉末oは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例7]
大気雰囲気下に替えて真空中で加熱したこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末pを得た。この磁石粉末pは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例8]
大気雰囲気下での加熱温度を70℃としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、磁石粉末qを得た。この磁石粉末qは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
[比較例9]
平均粒径(D50)が3.5μmとなるように粉砕したこと以外は、実施例1と同様にして磁石粉末rを得た。この磁石粉末rは、大気に晒しても発熱せず安定であった。下記表1に磁石粉末の製造条件を示し、下記表2に実施例1と同様に評価した結果を示す。
Figure 2016025312
Figure 2016025312
≪評価≫
表2に示す評価結果から分かるように、実施例1〜9では、磁石粗粉末を、燐酸系化合物を0.1mol/kgを超え2.0mol/kg未満の添加量で添加した有機溶媒と共に攪拌ミルに入れて、粉砕しながら表面処理して燐酸塩皮膜を形成し、乾燥させた後に、少なくとも大気雰囲気下で100℃以上200℃以下の温度で加熱処理して磁石粉末を製造したことにより、その磁石粉末のBr、iHc、及びHkの値はいずれも高く、表面安定性に優れ、しかも高温高湿雰囲気下といった環境下でもiHcの変化がなく、優れた耐候性を示した。
これに対して、比較例1、2、5〜6、及び8では、製造条件のいずれかが上述した範囲から外れているため、得られた磁石粉末のBr、iHc、及びHkの値のいずれかが所望とする特性よりも低く、かつ耐候性も低かった。また、比較例3では、磁石粉末の溶解が認められたため、初期特性も耐候性も評価することができなかった。また、比較例7では、得られた磁石粉末のBr、iHc、及びHkの値は高かったものの、最終的に大気で加熱処理していないために耐候性が低かった。さらに、比較例4及び9では、最終的に大気で加熱処理しているために耐候性は優れていたものの、他の製造条件のいずれかが上述した範囲から外れているため、得られた磁石粉末のBr、iHc、及びHkの値のいずれかが所望とする特性よりも低かった。
本発明に係る希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法によれば、Br、iHc、及びHkがいずれも高く優れた磁気特性を有するとともに、表面安定性及び耐候性に優れた希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を簡易に得ることができる。このような希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末によれば、民生用あるいは産業用の各種機器に組み込まれるボンド磁石の原料として好適に使用することができ、その工業的価値は極めて高い。

Claims (6)

  1. 希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末を、該磁石粗粉末の重量に対して0.1mol/kgを超え2.0mol/kg未満の燐酸系化合物を添加した有機溶媒と粉砕媒体と共に粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満となるように粉砕させながら、該磁石粉末の表面に燐酸塩皮膜を形成し、得られた粉砕物を乾燥させた後、少なくとも最終的に大気雰囲気下100℃以上200℃未満で加熱処理することを特徴とする高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  2. 前記大気雰囲気下での加熱処理の前に、真空中又は不活性ガス雰囲気下において室温以上200℃未満で加熱することを特徴とする請求項1に記載の高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法によって得られる高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末。
  4. 前記磁石粉末中のP含有量が、元素換算で0.3質量%を超え6.0質量%未満であることを特徴とする請求項3に記載の高耐候性希土類―遷移金属―窒素系磁石粉末。
  5. 平均粒径(D50)が1.0μm以上3.5μm未満であり、残留磁束密度Brが1.3T以上で、保磁力iHcが970kA/m以上で、該Brの90%に対応する磁場Hkが465kA/m以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末。
  6. 80℃相対湿度90%の環境下に24時間暴露前後の保磁力iHcの差の割合から求められるΔiHcが、0.9%未満であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の高耐候性希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末。
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