JP2020161811A - R−t−b系永久磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】 Coの含有量が少なくても磁気特性および耐食性が優れており、さらに粒界拡散に適したR−T−B系永久磁石を提供する。【解決手段】 RがNd,Pr,DyおよびTbから選択される1種以上を含む希土類元素であり、TがFeおよびCoであり、Bがホウ素であるR−T−B系永久磁石である。R−T−B系永久磁石は、さらにZrを含む。R−T−B系永久磁石全体を100質量%として、Nd,Pr,DyおよびTbの合計含有量が29.5質量%〜31.5質量%、Coの含有量が0.35質量%〜1.50質量%、Zrの含有量が0.21質量%〜0.85質量%、Bの含有量が0.90質量%〜1.02質量%である。【選択図】 図1

Description

本発明は、R−T−B系永久磁石に関する。
特許文献1には、残留磁束密度および保磁力が高く、耐食性および製造安定性も優れており、さらに、重希土類元素を粒界拡散させたときの残留磁束密度の低下幅が小さく、保磁力の増加幅が大きいR−T−B系永久磁石が開示されている。
特許文献2には、残留磁束密度および保磁力が高く、さらに、重希土類元素を粒界拡散させた後の残留磁束密度および保磁力も高いR−T−B系永久磁石が開示されている。
特開2017−73463号公報 特開2018−93201号公報
本発明は、Coの含有量が少なくても磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力HcJ、角形比Hk/HcJ)および耐食性が優れており、さらに粒界拡散に適したR−T−B系永久磁石を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明のR−T−B系永久磁石は、
RがNd,Pr,DyおよびTbから選択される1種以上を含む希土類元素であり、TがFeおよびCoであり、Bがホウ素であるR−T−B系永久磁石であって、
前記R−T−B系永久磁石は、さらにZrを含み、
前記R−T−B系永久磁石全体を100質量%として、
Nd,Pr,DyおよびTbの合計含有量が29.5質量%〜31.5質量%、
Coの含有量が0.35質量%〜1.50質量%、
Zrの含有量が0.21質量%〜0.85質量%、
Bの含有量が0.90質量%〜1.02質量%であることを特徴とする。
本発明のR−T−B系永久磁石は、上記の範囲内の組成を有することで、Coの含有量が少なくても磁気特性および耐食性が良好なR−T−B系永久磁石となる。さらに、当該R−T−B系永久磁石は、重希土類元素を粒界拡散させることによるHcJ向上効果も大きく、粒界拡散に適した磁石である。
前記R−T−B系永久磁石は、さらにCuを含んでもよく、
Cuの含有量が0.02質量%〜0.32質量%であってもよい。
前記R−T−B系永久磁石は、さらにMnを含んでもよく、
Mnの含有量が0.02質量%〜0.10質量%であってもよい。
前記R−T−B系永久磁石は、さらにAlを含んでもよく、
Alの含有量が0.07質量%〜0.35質量%であってもよい。
前記R−T−B系永久磁石は、さらにGaを含んでもよく、
Gaの含有量が0.02質量%〜0.15質量%であってもよい。
前記R−T−B系永久磁石は重希土類元素を含んでもよく、
重希土類元素の含有量が1.0質量%以下であってもよい。
前記R−T−B系永久磁石は重希土類元素を含まなくてもよい。
前記R−T−B系永久磁石は重希土類元素を含んでもよく、
磁石表面から内部に向かって低下する重希土類元素の濃度勾配を有していてもよい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の模式図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<R−T−B系永久磁石>
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、R14B型結晶構造を有する結晶粒子からなる主相粒子を有する。さらに、隣り合う2つ以上の主相粒子によって形成される粒界を有する。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の形状には特に制限はない。
そして、複数の特定の元素を特定の範囲の含有量で含有することにより、残留磁束密度Br、保磁力HcJ、角形比Hk/HcJおよび耐食性を向上させることができる。さらに、後述する粒界拡散におけるHcJの増加幅を大きくすることができる。すなわち、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、粒界拡散なしでも優れた特性を有し、かつ、粒界拡散にも適したR−T−B系永久磁石である。また、粒界拡散を行う場合には、HcJを向上させる観点から、重希土類元素を粒界拡散させることが好ましい。
また、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、重希土類元素の濃度が、R−T−B系永久磁石の外側から内側に向かって低下する濃度分布を有していてもよい。
具体的には、図1で示すように、本実施形態に係る直方体形状のR−T−B系永久磁石1は表面部および中心部を有し、表面部における重希土類元素の含有量を、中心部における重希土類元素の含有量よりも2%以上高くすることができ、5%以上高くすることができ、10%以上高くすることができる。なお、表面部とは、R−T−B系永久磁石1の表面をいう。例えば、図1のPOINT C,C´(図1の互いに向かい合う表面の重心)は表面部である。中心部とは、R−T−B系永久磁石1の中心をいう。例えば、R−T−B系永久磁石1の厚みの半分の部分をいう。例えば、図1のPOINT M(POINT CとPOINT C´との中点)は中心部である。なお、図1のPOINT C,C´は、R−T−B系永久磁石1の表面のうち最も面積が広い表面の重心、および当該表面に向かい合う表面の重心であってもよい。
一般に希土類元素は軽希土類元素と重希土類元素とに分類される。本実施形態に係るR−T−B系永久磁石における軽希土類元素はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Euであり、重希土類元素はGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luである。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石に前述の重希土類元素の濃度分布を形成させる方法に特に制限はない。例えば、後述する重希土類元素の粒界拡散によりR−T−B系永久磁石内に重希土類元素の濃度分布を形成させることができる。
また、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の主相粒子は、コアと、コアを被覆するシェルとからなるコアシェル粒子であってもよい。そして、少なくともシェルには重希土類元素が存在してもよく、DyまたはTbが存在していてもよく、Tbが存在してもよい。
重希土類元素をシェルに存在させることで、効率的にR−T−B系永久磁石の磁気特性を向上させることができる。
本実施形態においては、軽希土類元素(例えばNd,Pr)に対する重希土類元素(例えばDy,Tb)の割合(重希土類元素/軽希土類元素(モル比))が、主相粒子中心部(コア)における前記割合の2倍以上となっている部分をシェルと規定する。
シェルの厚みには特に制限はないが、平均で500nm以下であってもよい。また、主相粒子の粒径にも特に制限はないが、平均で1.0μm以上6.5μm以下であってもよい。
主相粒子を上記のコアシェル粒子とする方法には特に制限はない。例えば、後述する粒界拡散による方法がある。重希土類元素が粒界拡散し、当該重希土類元素が主相粒子の表面の希土類元素Rと置換することで重希土類元素の割合が高いシェルが形成され、前記のコアシェル粒子となる。
RはNd,Pr,DyおよびTbから選択される1種以上を含む希土類元素である。また、RとしてNdを含むことが好ましい。
TはFeおよびCoである。
Bは、ホウ素である。また、R−T−B系永久磁石のBサイトに含まれるホウ素の一部が炭素(C)に置換されていてもよい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石におけるNd,Pr,DyおよびTbの合計含有量(TRE)は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、29.5質量%以上31.5質量%以下である。TREが少なすぎる場合には、HcJが低下する。TREが多すぎる場合には、BrおよびHk/HcJが低下する。さらに、粒界拡散によるHcJの増加幅が小さくなる。
また、本実施形態のR−T−B系永久磁石における重希土類元素(例えば、DyおよびTbから選択される1種以上)の含有量には特に制限はない。重希土類元素としては実質的にTbのみを含んでもよい。重希土類元素を合計で1.0質量%以下、含んでもよく、0.5質量%以下、含んでもよく、0.1質量%以下、含んでもよい。重希土類元素を含有しなくてもよい。重希土類元素の含有量が小さいほど、Brを良好にしやすい。また、高価である重希土類元素の含有量を小さくすることで、R−T−B系永久磁石を低コストで製造しやすくなる。
本実施形態のR−T−B系永久磁石は、Rとして少なくともNdおよびPrを含有してもよい。Prの含有量は0.0質量%以上10.0質量%以下であってもよい。さらに、0.0質量%以上7.6質量%以下であってもよい。また、Prの含有量が10.0質量%以下である場合にはHcJの温度変化率が小さくなる。特に高温でのHcJを高くする観点からはPrの含有量を0.0質量%〜7.6質量%とするのが好ましい。
本実施形態のR−T−B系永久磁石は、Prの含有量が5.8質量%以上であってもよく、5.8質量%未満であってもよい。Prの含有量が5.8質量%以上である場合にはHcJが向上する。Prの含有量が5.8質量%未満である場合には、HcJの温度変化率が小さくなる。
Prの含有量が5.8質量%以上である場合には、Prの含有量が5.8質量%以上7.6質量%以下であってもよい。また、Pr/(Nd+Pr)が質量比で0.19以上0.25以下であってもよい。Prの含有量、および/または、Pr/(Nd+Pr)が上記の範囲内である場合には、HcJが向上する。
Prを意図的に含まなくてもよい。Prを意図的に含まないことで、HcJの温度変化率が特に優れ、高温でのHcJが高くなる。なお、Prを意図的に含まない場合には、不純物としてPrを0.2質量%未満、含んでもよく、0.1質量%以下、含んでもよい。
Coの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.35質量%以上1.5質量%以下である。0.35質量%以上0.50質量%以下であってもよい。本実施形態では、高価であるCoを少なくしても高い耐食性を有するR−T−B系永久磁石を得ることができる。その結果、耐食性の高いR−T−B系永久磁石を低コストで製造しやすくなる。Coが少なすぎる場合には、Zrの含有量を後述する範囲内としても耐食性が低下する。Coが多すぎる場合には、耐食性改善の効果が頭打ちとなるとともに高コストとなる。
Feの含有量はR−T−B系永久磁石の実質的な残部である。実質的な残部であるとは、前述のRおよびCoと、後述のB,Zr,Mおよび他元素と、を除いた残部であるという意味である。
Bの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.90質量%以上1.02質量%以下である。0.92質量%以上1.00質量%以下であってもよい。Bが少なすぎる場合にはHk/HcJが低下しやすくなる。Bが多すぎる場合には、HcJが低下しやすくなる。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、さらにZrを含む。Zrの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.21質量%以上0.85質量%以下である。Zrを上記の範囲内で含有することで、焼結時の異常粒成長を抑制し、Hk/HcJおよび低磁場下での着磁率が改善される。そしてCoの含有量を上記の範囲内としても耐食性を良好にすることができる。Zrが少なすぎる場合には、焼結時に異常粒成長が生じやすくなり、Hk/HcJおよび低磁場下での着磁率が悪化する。さらに、耐食性が低下する。Zrが多すぎる場合には、BrおよびHk/HcJが低下しやすくなる。
Zr/Co比は0.27以上1.70以下であってもよい。さらに、0.41以上1.20以下であってもよく、0.62以上1.20以下であってもよい。Zr/Co比を上記の範囲内で含有することで、高価であるCoを少なくしても高い耐食性を有するR−T−B系永久磁石を得ることができる。その結果、耐食性の高いR−T−B系永久磁石を低コストで製造しやすくなる。Zr/Co比が大きすぎる場合には、Zrの含有量を上記の範囲内としても耐食性が低下する。Zr/Co比が小さすぎる場合には、耐食性改善の効果が頭打ちとなるとともに高コストとなる。特に、Zr/Co比が0.62以上であることにより、HcJが大きくなる傾向がある。また、Zr/Co比が1.20以下であることにより、Brが大きくなる傾向がある。
一般的に、R−T−B系永久磁石の粒界相にはRの質量濃度が主相よりも多いRリッチ相が含まれる。水蒸気による磁石の腐食では、腐食反応で発生する水素が磁石中の粒界に存在するRリッチ相に吸蔵される。そして、水素がRリッチ相に吸蔵されることにより、Rリッチ相に含まれるRが水酸化物に変化しやすくなる。Rリッチ相に含まれるRが水酸化物に変化することで、Rリッチ相の体積が膨張する。Rリッチ相の体積が膨張することで主相粒子の脱落が生じる。そして、主相粒子の脱落により、腐食が加速度的に磁石内部に進行していくと考えられる。
ここで、R−T−B系永久磁石におけるZrの含有量が0.21質量%以上である場合には、R−T−B系永久磁石におけるZrの含有量が0.21質量%未満である場合と比較して、Rリッチ相におけるRの質量濃度が低下しやすく、かつ、Feの質量濃度およびZrの質量濃度が増加しやすくなる。R−T−B系永久磁石がCuを含む場合には、Rリッチ相におけるCuの質量濃度も増加しやすくなる。R−T−B系永久磁石におけるZrの含有量が0.21質量%未満である場合には、Rリッチ相におけるRの質量濃度が65質量%以上となりやすい。これに対し、Zrの含有量が0.21質量%以上である場合には、Rリッチ相におけるRの質量濃度が低くなりやすく、例えば55質量%以下となりやすい。
そして、Rの質量濃度が比較的低く、Fe,ZrおよびCuの各元素の質量濃度が比較的高いRリッチ相を含む場合には、Rの質量濃度が65質量%以上でありFe,ZrおよびCuの各元素の質量濃度が比較的低いRリッチ相を含む場合と比較して、水素が吸蔵されにくくなる。その結果、Coの含有量を少なくしても高い耐食性を有するR−T−B系永久磁石を得ることができる。
なお、Zrの含有量は0.25質量%以上0.65質量%以下であってもよく、0.31質量%以上0.60質量%以下であってもよい。特にZrの含有量を0.25質量%以上とすることで、焼結安定温度範囲が広くなる。すなわち、焼結時において異常粒成長抑制効果がさらに大きくなる。そして、特性のバラツキが小さくなり、製造安定性が向上する。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、さらにMを含んでも良い。MはCu,Mn,Al,Gaから選択される少なくとも1種である。Mの含有量には特に制限はない。Mを含まなくてもよい。R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0質量%以上1.0質量%以下であってもよい。
Cuの含有量には特に制限はない。Cuを含有しなくてもよい。Cuの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.02質量%以上0.32質量%以下であってもよく、0.05質量%以上0.22質量%以下であってもよく、0.05質量%以上0.20質量%以下であってもよい。Cuが少ない場合には、BrおよびHcJが低下しやすい。Cuが多い場合には、HcJが低下しやすい。さらに、後述する粒界拡散におけるHcJの向上幅ΔHcJが小さくなりやすい。
Mnの含有量には特に制限はない。Mnを含有しなくてもよい。Mnの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.02質量%以上0.10質量%以下であってもよく、0.02質量%以上0.06質量%以下であってもよく、0.02質量%以上0.04質量%以下であってもよい。Mnが少ない場合にはBrおよびHcJが低下しやすくなる。Mnが多い場合には、HcJが低下しやすくなる。
Alの含有量には特に制限はない。Alを含有しなくてもよい。Alの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.07質量%以上0.35質量%以下であってもよく、0.10質量%以上0.30質量%以下であってもよく、0.15質量%以上0.23質量%以下であってもよい。Alが少ない場合には、HcJが低下しやすくなる。さらに、後述する製造時の時効温度や粒界拡散後の熱処理温度の変化に対する磁気特性(特にHcJ)の変化が大きくなり、製造安定性が低下しやすくなる。Alが多い場合には、Brが低下しやすくなる。なお、Alの含有量が0.10質量%以上0.30質量%以下であることで、後述する製造時の時効温度や粒界拡散後の熱処理温度の変化に対する磁気特性(特にHcJ)の変化がさらに小さくなり、製造安定性が向上する。
Gaの含有量には特に制限はない。Gaを含有しなくてもよい。Gaの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.02質量%以上0.15質量%以下であってもよく、0.04質量%以上0.15質量%以下であってもよい。Gaが少ない場合には、HcJが低下しやすい。Gaが多い場合には、粒界にR−T−Ga相などの副相が含まれやすくなり、Brが低下しやすくなる。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、上記したNd,Pr,Dy,Tb,T,B,ZrおよびM以外の元素を他元素として含んでもよい。他元素の含有量には特に制限はなく、R−T−B系永久磁石の磁気特性や耐食性に大きな影響を与えない量であればよい。例えば、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、合計で1.0質量%以下であってもよい。なお、Nd,Pr,DyおよびTb以外の希土類元素の含有量は合計で0.3質量%以下であってもよい。
以下、他元素の一例として炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の含有量について述べる。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石におけるCの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.15質量%以下であってもよく、0.13質量%以下、または0.11質量%以下であってもよい。また、Cの含有量は、0.06質量%以上0.15質量%以下、0.06質量%以上0.13質量%以下、0.06質量%以上0.11質量%以下であってもよい。Cの含有量を0.15質量%以下とすることでHcJが向上する傾向にある。特にHcJを向上させる観点からは、Cの含有量を0.11質量%以下としてもよい。また、Cの含有量が0.06質量%未満であるR−T−B系永久磁石を製造することはプロセスに対する負荷が大きい。したがって、Cの含有量が0.06質量%未満であるR−T−B系永久磁石は低コストで製造しにくい。なお、特にHk/HcJを向上させる観点からは、Cの含有量を0.10質量%以上0.15質量%以下としてもよい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石におけるNの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.12質量%以下であってもよく、0.11質量%以下、または0.105質量%以下であってもよい。また、0.025質量%以上0.12質量%以下、0.025質量%以上0.11質量%以下、0.025質量%以上0.105質量%以下であってもよい。Nの含有量が少ないほどHcJが向上しやすくなる。また、Nの含有量が0.025質量%未満であるR−T−B系永久磁石を製造することはプロセスに対する負荷が大きい。したがって、Nの含有量が0.025質量%未満であるR−T−B系永久磁石は低コストで製造しにくい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石におけるOの含有量は、R−T−B系永久磁石全体の質量を100質量%として、0.10質量%以下であってもよく、0.08質量%以下であってもよく、0.07質量%以下であってもよく、0.05質量%以下であってもよい。また、0.035質量%以上0.05質量%以下であってもよい。また、Oの含有量が0.035質量%未満であるR−T−B系永久磁石を製造することはプロセスに対する負荷が大きい。したがって、Oの含有量が0.035質量%未満であるR−T−B系永久磁石は低コストで製造しにくい。
なお、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石中に含まれる各種成分の測定法は、従来から一般的に知られている方法を用いることができる。各種元素量については、例えば、蛍光X線分析および誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP分析)等により測定される。Oの含有量は、例えば、不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法により測定される。Cの含有量は、例えば、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法により測定される。Nの含有量は、例えば、不活性ガス融解−熱伝導度法により測定される。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の形状には特に制限はない。例えば、直方体などの形状が挙げられる。
以下、R−T−B系永久磁石の製造方法について詳しく説明していくが、R−T−B系永久磁石の製造方法は下記の方法に限定されず、その他の公知の方法を用いてもよい。
[原料粉末の準備工程]
原料粉末は、公知の方法により作製することができる。本実施形態では、単独の合金を使用する1合金法の場合について説明するが、組成の異なる2種類以上の合金を混合して原料粉末を作製するいわゆる2合金法でもよい。
まず、R−T−B系永久磁石の原料合金を準備する(合金準備工程)。合金準備工程では、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の組成に対応する原料金属を公知の方法で溶解した後、鋳造することによって所望の組成を有する原料合金を作製する。
原料金属としては、例えば、希土類元素の単体、Fe、Co、Cu等の金属元素の単体、複数種類の金属からなる合金(例えばFe−Co合金)、または複数種類の元素からなる化合物(例えばフェロボロン)等を適宜、使用することができる。原料金属から原料合金を鋳造する鋳造方法には特に制限はない。磁気特性の高いR−T−B系永久磁石を得るためにストリップキャスト法を用いてもよい。得られた原料合金は、必要に応じて既知の方法で均質化処理を行ってもよい。
前記原料合金を作製した後、粉砕する(粉砕工程)。なお、粉砕工程から焼結工程までの各工程の雰囲気は、高い磁気特性を得る観点から、低酸素濃度とすることができる。例えば、各工程での雰囲気中の酸素濃度を200ppm以下としてもよい。各工程での雰囲気中の酸素濃度を制御することで、R−T−B系永久磁石におけるOの含有量を制御することができる。
以下、前記粉砕工程として、粒径が数百μm〜数mm程度になるまで粉砕する粗粉砕工程と、粒径が数μm程度になるまで微粉砕する微粉砕工程の2段階で実施する場合を以下に記述するが、微粉砕工程のみの1段階で実施してもよい。
粗粉砕工程では、粒径が数百μm〜数mm程度になるまで粗粉砕する。これにより、粗粉砕粉末を得る。粗粉砕の方法には特に限定はなく、水素吸蔵粉砕を行う方法や粗粉砕機を用いる方法など、公知の方法で行うことができる。水素吸蔵粉砕を行う場合、脱水素処理時の雰囲気中の窒素ガス濃度の制御を行うことで、R−T−B系永久磁石におけるNの含有量を制御することができる。
次に、得られた粗粉砕粉末を平均粒子径が数μm程度になるまで微粉砕する(微粉砕工程)。これにより、微粉砕粉末(原料粉末)を得る。前記微粉砕粉末の平均粒径は、1μm以上10μm以下、2μm以上6μm以下、または2μm以上4μm以下であってもよい。微粉砕工程での雰囲気中の窒素ガス濃度の制御を行うことで、R−T−B系永久磁石におけるNの含有量を制御することができる。
微粉砕の方法には特に制限はない。例えば、各種微粉砕機を用いる方法で実施される。
前記粗粉砕粉末を微粉砕する際、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の各種粉砕助剤を添加することにより、磁場中で加圧して成形する際に結晶粒子が特定の方向に配向しやすい微粉砕粉末を得ることができる。また、粉砕助剤の添加量を変化させることにより、R−T−B系永久磁石におけるCの含有量を制御することができる。
[成形工程]
成形工程では、上記微粉砕粉末を目的の形状に成形する。成形方法には特に制限はない。本実施形態では、上記微粉砕粉末を金型内に充填し、磁場中で加圧する。これにより得られた成形体は、結晶粒子が特定方向に配向しているので、よりBrの高いR−T−B系永久磁石が得られる。
成形時の加圧は、20MPa以上300MPa以下で行うことができる。印加する磁場は、950kA/m以上とすることができ、950kA/m以上1600kA/m以下とすることもできる。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場とを併用することもできる。
なお、成形方法としては、上記のように微粉砕粉末をそのまま成形する乾式成形の他、微粉砕粉末を油等の溶媒に分散させたスラリーを成形する湿式成形を適用することもできる。
微粉砕粉末を成形して得られる成形体の形状には特に制限はない。また、この時点での成形体の密度は4.0Mg/m〜4.3Mg/mとすることができる。
[焼結工程]
焼結工程は、成形体を真空中または不活性ガス雰囲気中で焼結し、焼結体を得る工程である。焼結条件は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要がある。例えば、成形体に対して、例えば、真空中または不活性ガス雰囲気中、1000℃以上1200℃以下、1時間以上20時間以下で加熱する処理を行うことにより焼結する。上記の焼結条件で焼結することにより、高密度の焼結体が得られる。本実施形態では、少なくとも7.45Mg/m以上の密度の焼結体を得る。焼結体の密度は7.50Mg/m以上であってもよい。
[時効処理工程]
時効処理工程は、焼結体を焼結温度より低温で熱処理(時効処理)する工程である。時効処理を行うか否かには特に制限はなく、時効処理の回数にも特に制限はなく、所望の磁気特性に応じて適宜実施する。また、後述する粒界拡散工程が時効処理工程を兼ねてもよい。以下、時効処理を2回行う実施形態について説明する。
1回目の時効工程を第一時効工程、2回目の時効工程を第二時効工程とし、第一時効工程の時効温度をT1、第二時効工程の時効温度をT2とする。
第一時効工程におけるT1および時効時間には、特に制限はない。T1は700℃以上900℃以下とすることができる。時効時間は1時間以上10時間以下とすることができる。
第二時効工程におけるT2および時効時間には、特に制限はない。T2は450℃以上700℃以下とすることができる。時効時間は1時間以上10時間以下とすることができる。
このような時効処理によって、最終的に得られるR−T−B系永久磁石の磁気特性、特にHcJを向上させることができる。
このようにして得られる本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、所望の特性を有する。具体的には、Br、HcJおよびHk/HcJが高く、耐食性も優れている。さらに、後述する粒界拡散工程を実施する場合には、重希土類元素を粒界拡散させたときのBrの低下幅が小さく、HcJの向上幅(ΔHcJ)が大きい。すなわち、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、粒界拡散に適した磁石である。
なお、以上の方法により得られた本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、着磁することにより、磁気を帯びたR−T−B系永久磁石となる。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、モーター、発電機等の用途に好適に用いられる。
なお、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以上の方法によりR−T−B系永久磁石が得られるが、R−T−B系永久磁石の製造方法は上記の方法に制限されず、適宜変更してもよい。例えば、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は熱間加工によって製造されていてもよい。熱間加工によってR−T−B系永久磁石を製造する方法は、以下の工程を有する。
(a)原料金属を溶解し、得られた浴湯を急冷して薄帯を得る溶解急冷工程
(b)薄帯を粉砕してフレーク状の原料粉末を得る粉砕工程
(c)粉砕した原料粉末を冷間成形する冷間成形工程
(d)冷間成形体を予備加熱する予備加熱工程
(e)予備加熱した冷間成形体を熱間成形する熱間成形工程
(f)熱間成形体を所定の形状に塑性変形させる熱間塑性加工工程。
(g)R−T−B系永久磁石を時効処理する時効処理工程
以下、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石に重希土類元素を粒界拡散させる方法について説明する。以下、粒界拡散前のR−T−B系永久磁石のことを基材と呼ぶことがある。
[加工工程(粒界拡散前)]
必要に応じて、本実施形態に係る基材を所望の形状に加工する工程を有してもよい。加工方法は、例えば切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などが挙げられる。
[粒界拡散工程]
粒界拡散工程は、基材の表面に、拡散材を付着させ、拡散材が付着した基材を加熱することにより、実施できる。本実施形態では、拡散材の種類には特に制限はない。拡散材が重希土類元素(例えばTbおよび/またはDy)を含んでいてもよく、拡散材が下記の第1成分〜第3成分を全て含んでもよい。第1成分は、Tbの水素化物および/またはDyの水素化物である。第2成分は、Ndの水素化物および/またはPrの水素化物である。第3成分は、Cuの単体、Cuを含む合金、および/または、Cuを含む化合物である。
拡散工程では、温度上昇に伴い、磁石基材の粒界に存在する希土類元素Rの濃度が高い粒界相が液相となり、その液相へ拡散材が溶解することにより、拡散材の成分が磁石基材の表面から磁石基材の内部へと拡散する。仮に拡散材として、重希土類元素RHの水素化物が用いられた場合、磁石基材の表面に付着したRH水素化物は、温度上昇により脱水素反応が起こった際に、磁石基材から表面に染み出してきた液相に対して急激に溶解し易い。その結果、磁石基材の表面付近においてRHの濃度が急上昇し、磁石基材の表面近傍に位置する主相粒子内部へのRHの拡散が起こりやすくなる。その結果、RHは磁石基材の表面近傍に位置する主相粒子内部に停滞しやすくなり、磁石基材の内部へ拡散し難い。そのため、磁石内部に拡散するRHが少なくなり、永久磁石の保磁力の伸びが少なくなる。
拡散材が、第1成分(重希土類元素RH)、第2成分(軽希土類元素RL)及び第3成分(Cu)を含む場合、磁石基材で発生したRの濃度が高い液相が表面の拡散材近傍まで染み出してきた際、CuとRの共晶温度が低いため、拡散材に含まれるCuが液相に対して先に溶解しやすい。そのため、最初に液相に対するCuの溶解が起こり、磁石基材表面付近の液相中のCu濃度が上昇する。その結果、磁石基材表面付近にR−Cuリッチ液相が生成し、さらに磁石基材内部の液相へとCuが拡散していく。第2成分であるRLと第1成分であるRHについては、水素化物の脱水素反応が起こった後にR−Cuリッチ液相への溶解が生じる。第2成分であるRLとCuの共晶温度は500℃付近、第1成分であるRHとCuの共晶温度は700〜800℃付近である。そのため、Cuに続いて第2成分であるRLが磁石基材表面付近のR−Cuリッチ液相に対して溶解し、その後、第1成分であるRHが溶解する順序となる。Cuに続いて第2成分であるRLが溶解することにより、Cuの磁石内部への拡散が促進され、磁石基材の粒界内にR‐Cuリッチ液相が生成する。
第1成分(RH)、第2成分(RL)及び第3成分(Cu)のうち第1成分(RH)は液相中に最後に溶解し易い。したがって、第1成分に由来するRHは、Cu、RLに続いて磁石基材内部の液相へ拡散していくため、Cu、RLがない場合と比べて、磁石基材表面近傍でのRH濃度の急上昇が抑えられる。そのため、磁石基材の表面近傍に位置する主相粒子内部へのRHの拡散を抑制することができる。その結果、磁石内部に拡散するRHが多くなり、永久磁石の保磁力が向上しやすいという効果が得られる。
拡散材は、上記の第1成分〜第3成分に加えて溶媒を含むスラリーであってもよい。スラリーに含まれる溶媒は、水以外の溶媒であってもよい。例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン等の有機溶媒であってもよい。さらに、拡散材は、バインダを含んでもよい。バインダの種類には特に制限はない。例えば、アクリル樹脂等の樹脂をバインダとして含んでもよい。バインダを含むことにより、拡散材が基材の表面に付着しやすくなる。
拡散材は、上記の第1成分〜第3成分に加えて溶媒およびバインダを含むペーストであってもよい。ペーストは、流動性および高い粘性を有する。ペーストの粘性は、スラリーの粘性よりも高い。
粒界拡散前にスラリーまたはペーストを付着させた基材を乾燥させて溶媒を除去してもよい。
本実施形態に係る粒界拡散工程における拡散処理温度は、RLとCuの共晶温度以上であってよく、焼結温度未満であってよい。例えば、拡散処理温度は、800℃以上950℃以下であってよい。粒界拡散工程では、拡散処理温度よりも低い温度から拡散処理温度に至るまで、磁石基材の温度を徐々に上昇させてよい。
基材の温度が拡散処理温度で維持される時間(拡散処理時間)は、例えば、1時間以上50時間以下であってよい。拡散処理工程における基材周囲の雰囲気は、非酸化的雰囲気であってよい。非酸化的雰囲気は、例えば、アルゴン等の希ガスであってよい。拡散工程における磁石基材周囲の雰囲気の圧力は、1kPa以下であってよい。このような減圧雰囲気とすることで、水素化物の脱水素反応が促進され、液相への拡散材の溶解が進行しやすい。
また、拡散処理後に、さらに熱処理を施してもよい。その場合の熱処理温度は450℃以上600℃以下としてもよい。熱処理時間は1時間以上10時間以下としてもよい。このような熱処理を行うことによって、最終的に得られるR−T−B系永久磁石の磁気特性、特にHcJを向上させることができる。
また、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の製造安定性は、例えば、粒界拡散工程における拡散処理温度および/または重希土類拡散後の熱処理温度の変化に対する磁気特性の変化量の大きさで確認できる。
[加工工程(粒界拡散後)]
粒界拡散工程の後には、R−T−B系永久磁石の表面に残存する拡散材を除去するために研磨を行ってもよい。また、R−T−B系永久磁石に対してその他の加工を行ってもよい。例えば切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などの表面加工を行ってもよい。
なお、本実施形態では、粒界拡散前および粒界拡散後の加工工程を行っているが、これらの工程は、必ずしも行う必要はない。また、最終的に粒界拡散後のR−T−B系永久磁石を得る場合には、粒界拡散工程が時効工程を兼ねてもよい。粒界拡散工程が時効工程を兼ねる場合の加熱温度には、特に限定はない。粒界拡散工程において好ましい温度であり、かつ、時効工程においても好ましい温度で実施することが特に好ましい。
特に、粒界拡散を行った後のR−T−B系永久磁石は、重希土類元素の濃度が、R−T−B系永久磁石の外側から内側に向かって低下する濃度分布を有しやすい。また、粒界拡散を行った後のR−T−B系永久磁石に含まれる主相粒子は上記のコアシェル構造を有しやすい。
以上の方法により得られた本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、着磁することにより、磁気を帯びたR−T−B系永久磁石となる。このようにして得られる本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、所望の特性を有する。具体的には、BrおよびHcJが高く、耐食性も優れている。本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、モーター、発電機等の用途に好適に用いられる。なお、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に制限されない。
(R−T−B系永久磁石の作製)
ストリップキャスト法により、最終的に得られる基材組成が後述する表1、表3および表5に示す各実施例および比較例の組成となるように原料合金を作製した。なお、表1、表3に記載の実験例では、全てPrの含有量が0質量%であった。表1、表3および表5に記載していない他元素としてO、N、C、H、Si、Ca、La、Ce、Cr等が検出される場合がある。Siは主にフェロボロン原料および合金溶解時のるつぼから混入する。Ca、La、Ceは希土類の原料から混入する。また、Crは電解鉄から混入する可能性がある。表1〜表6においてFeの含有量をbal.と記載しているのは、Feの含有量がこれらの他元素を含む基材全体を100質量%とした場合の残部であることを示すためである。
次いで、前記原料合金に対して室温で1時間、水素ガスをフローさせて水素を吸蔵させた。次いで雰囲気をArガスに切り替え、600℃で1時間、脱水素処理を行い、原料合金を水素吸蔵粉砕した。
次いで、原料合金の粉末に対し、質量比で0.1%のオレイン酸アミドを粉砕助剤として添加し、ナウタミキサを用いて混合した。
次いで、衝突板式のジェットミル装置を用いて窒素気流中で微粉砕し、平均粒径が3.0μm程度である微粉(原料粉末)を得た。なお、前記平均粒径は、レーザ回折式の粒度分布計で測定した平均粒径D50である。
得られた微粉を磁界中で成形して成形体を作製した。このときの印加磁場は1200kA/mの静磁界である。また、成形時の加圧力は120MPaとした。なお、磁界印加方向と加圧方向とを直交させるようにした。
次に、前記成形体を焼結し、焼結体を得た。焼結条件は、組成等により最適条件が異なるが、1030℃〜1070℃の範囲内で4時間保持とした。焼結雰囲気は真空中とした。このとき焼結密度は7.51Mg/m〜7.55Mg/mの範囲にあった。その後、Ar雰囲気、大気圧中で、第一時効温度T1=850℃で1時間の第一時効処理を行い、さらに、第二時効温度T2=520℃〜540℃で1時間の第二時効処理を行った。以上より、表1、表3および表5に示す各試料のR−T−B系永久磁石(基材)を得た。
得られた基材の組成は蛍光X線分析で評価した。B(ホウ素)はICPで評価した。各基材の組成が表1、表3および表5の通りであることを確認した。
また、基材をバーチカルにより縦11mm×横11mm×厚さ4.2mm(磁化容易軸方向が4.2mm)に加工し、BHトレーサーで室温での磁気特性の評価を行った。なお、磁気特性の測定前に、4000kA/mのパルス磁場により基材を着磁した。また、基材の厚みが薄いため、基材を3枚重ねて磁気特性を評価した。
本実施例では、基材のBrは1435mT以上を良好とした。基材のHcJは1200kA/m以上を良好とした。基材のHk/HcJは98.0%以上を良好とした。なお、本実施例ではHk/HcJは磁化J−磁場H曲線の第2象限(J−H減磁曲線)において、磁化がBrの90%となったときの磁場をHk(kA/m)として、Hk/HcJ×100(%)で計算した。
基材のBr、HcJおよびHk/HcJが全て良好である場合に基材の磁気特性を可とした。Br、HcJおよびHk/HcJのいずれか一つ以上が良好ではない場合に基材の磁気特性を不可とした。
また、基材に対し、耐食性試験を行った。耐食性試験は、飽和蒸気圧下におけるPCT試験(プレッシャークッカー試験:Pressure Cooker Test)により実施した。具体的には、基材を2気圧、100%RHの環境下に1000時間おいて、試験前後での質量変化を測定した。基材の表面積あたりの質量減少が3mg/cm以下である場合に耐食性を可とした。基材の表面積あたりの質量減少が3mg/cm超である場合に耐食性を不可とした。
(拡散材ペーストの作製)
次に、粒界拡散に用いる拡散材ペーストを作製した。
まず、純度99.9%の金属Tbに対して室温で水素ガスをフローさせて水素を吸蔵させた。次いで雰囲気をArガスに切り替え、600℃で1時間、脱水素処理を行い、金属Tbを水素吸蔵粉砕した。次に、粉砕助剤として、ステアリン酸亜鉛を金属Tb100質量%に対して0.05質量%を添加し、ナウタミキサを用いて混合した。その後、酸素3000ppmを含んだ雰囲気中、ジェットミルを用いて微粉砕を行い、平均粒径が10.0μm程度であるTb水素化物の微粉砕粉末を得た。
次に、純度99.9%の金属Ndから平均粒径が10.0μm程度であるNd水素化物の微粉砕粉末を得た。Nd水素化物の微粉砕粉末を得る方法はTb水素化物の微粉砕粉末を得る方法と同一である。
Tb水素化物の微粉砕粉末46.8質量部と、Nd水素化物の微粉砕粉末17.0質量部と、金属Cu粉末11.2質量部と、アルコール23質量部と、アクリル樹脂2質量部と、を混練し、拡散材ペーストを作製した。なお、アルコールは溶媒であり、アクリル樹脂はバインダである。
(拡散材ペーストの塗布および熱処理)
上記の基材を、縦11mm×横11mm×厚み4.2mm(磁化容易軸方向厚み4.2mm)に加工した。そして、エタノール100質量%に対し硝酸3質量%とした硝酸とエタノールとの混合溶液に3分間浸漬させた後にエタノールに1分間浸漬するエッチング処理を行った。混合溶液に3分間浸漬させた後にエタノールに1分間浸漬させるエッチング処理は2回行った。
次いで、エッチング処理後の基材の全面に対し、上記の拡散材ペーストを塗布した。拡散材ペーストの塗布量は、基材100質量%に対するTbの質量(Tb塗布量)が表2、表4および表6に記載の質量割合となるようにした。
次に、拡散材ペーストを塗布した基材を160℃のオーブン中に放置し、拡散材ペースト中の溶媒を除去した。そして、大気圧(1atm)でArをフローしながら930℃で18時間、加熱した。その後、大気圧でArをフローしながら520〜540℃で4時間、加熱した。以上より、表2、表4および表6に示す各試料のTbを拡散したR−T−B系永久磁石(粒界拡散後磁石)を得た。なお、表2、表4に記載の実験例では、全てPrの含有量が0質量%であった。
粒界拡散後磁石の表面を各面あたり0.1mm削り落とした後に、基材と同様にして組成、磁気特性および耐食性を評価した。結果を表2、表4および表6に示す。
粒界拡散後磁石のBr、HcJ、およびHk/HcJが全て良好である場合に粒界拡散後磁石の磁気特性を可とした。Br、HcJおよびHk/HcJのいずれか一つ以上が良好ではない場合に粒界拡散後磁石の磁気特性を不可とした。
また、粒界拡散後磁石の表面積あたりの質量減少が3mg/cm以下である場合に耐食性を可とした。粒界拡散後磁石の表面積あたりの質量減少が3mg/cm超である場合に耐食性を不可とした。
また、本実施例ではTb拡散によるHcJの変化量をΔHcJとした。すなわち、ΔHcJ=(粒界拡散後磁石のHcJ)−(基材のHcJ)である。ΔHcJは表1、表3および表5に記載した。
Figure 2020161811
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Figure 2020161811
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表1および表2には、基材の組成を変化させた点以外は同条件で実施した実施例および比較例を記載した。特定の範囲内の組成を有する各実施例は全て磁気特性および耐食性が良好であった。これに対し、特定の範囲外の組成を有する各比較例は磁気特性または耐食性が良好ではなかった。さらに、TREが大きすぎる比較例4は、ΔHcJもTb塗布量が同一である他の実施例と比較して小さくなった。
表3および表4には、基材の組成が同一であり、Tb塗布量を変化させた実施例を記載した。表3および表4より、Tb塗布量が大きいほどΔHcJが大きくなり、拡散後のHk/HcJが低下する傾向が見られた。なお、Tb塗布量を変化させても耐食性は良好に維持された。
表5および表6には、実施例3のNdの一部をPrに置換させた実施例を記載した。表5および表6より、Prの含有量が大きいほど室温でのHcJが上昇するが147℃でのHcJが低下する傾向が見られた。
また、表2、表4および表6に記載した粒界拡散後磁石について、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いてTb濃度分布を測定した。その結果、粒界拡散後磁石は、Tbの濃度分布が、粒界拡散後磁石の外側から内側に向かって低下する濃度分布であることを確認した。
1…R−T−B系永久磁石

Claims (8)

  1. RがNd,Pr,DyおよびTbから選択される1種以上を含む希土類元素であり、TがFeおよびCoであり、Bがホウ素であるR−T−B系永久磁石であって、
    前記R−T−B系永久磁石は、さらにZrを含み、
    前記R−T−B系永久磁石全体を100質量%として、
    Nd,Pr,DyおよびTbの合計含有量が29.5質量%〜31.5質量%、
    Coの含有量が0.35質量%〜1.50質量%、
    Zrの含有量が0.21質量%〜0.85質量%、
    Bの含有量が0.90質量%〜1.02質量%であることを特徴とするR−T−B系永久磁石。
  2. 前記R−T−B系永久磁石は、さらにCuを含み、
    Cuの含有量が0.02質量%〜0.32質量%である請求項1に記載のR−T−B系永久磁石。
  3. 前記R−T−B系永久磁石は、さらにMnを含み、
    Mnの含有量が0.02質量%〜0.10質量%である請求項1または2に記載のR−T−B系永久磁石。
  4. 前記R−T−B系永久磁石は、さらにAlを含み、
    Alの含有量が0.07質量%〜0.35質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  5. 前記R−T−B系永久磁石は、さらにGaを含み、
    Gaの含有量が0.02質量%〜0.15質量%である請求項1〜4のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  6. 前記R−T−B系永久磁石は重希土類元素を含み、
    重希土類元素の含有量が1.0質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  7. 重希土類元素を含まない請求項1〜5のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  8. 前記R−T−B系永久磁石は重希土類元素を含み、
    磁石表面から内部に向かって低下する重希土類元素の濃度勾配を有する請求項1〜6のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
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