JP2012079726A - R−t−b−m系焼結磁石用合金の製造方法およびr−t−b−m系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b−m系焼結磁石用合金の製造方法およびr−t−b−m系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高残留磁束密度、高保磁力の焼結磁石であるR−T−B−M系焼結磁石となるためのR−T−B−M系焼結磁石用合金を作製する。
【解決手段】焼結磁石全体に亘って結晶粒の主相外殻にDyの多いR14Bが存在するR−T−B−M系焼結磁石を作製できるように、R−T−B−M母合金1と重希土類元素RHの金属又は合金のRH拡散源2とを処理室3内にて連続的または断続的に移動させながら、雰囲気圧力10Pa以下600℃以上1000℃以下の熱処理を10分以上48時間以下行い、R−T−B−M系焼結磁石用合金の主相であるR214B化合物の結晶とそれ以外の相との界面部分に重希土類元素RHの濃度が高い領域を連続して生成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、R−T−B−M系焼結磁石用合金の製造方法およびR−T−B−M系焼結磁石の製造方法に関する。
214B型化合物を主相とするR−T−B−M系焼結磁石は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータや、ハイブリッド自動車用モータ等の各種モータや家電製品等に使用されている。
R−T−B−M系焼結磁石は、R214B相中の希土類元素Rの一部を重希土類元素RH(Dy、Tb)で置換すると保磁力が向上することが知られている。高温でも高い保磁力を得るためには、重希土類元素RHを多く添加する必要があった。
しかし、R−T−B−M系焼結磁石において、軽希土類元素RL(Nd、Pr)を重希土類元素RHで置換すると、保磁力が向上する一方、残留磁束密度が低下してしまう。また、重希土類元素RHは希少資源であるためその使用量は多くできない。
そのため、より少ない重希土類元素RHにて残留磁束密度を低下させず、R−T−B−M系焼結磁石の保磁力を向上させることが求められている。
R−T−B−M系焼結磁石の組織において、重希土類元素RHを効果的に分布させることで、少ない量の重希土類元素の添加でも保磁力を向上でき、残留磁束密度の低下を抑制することが研究されている。
特許文献1では、R−T−B系合金粉末に希土類金属粉末又は希土類化合物粉末を混合して得られた焼結体において、Dyが粒界相近傍に分布すると磁石特性が向上することが開示されている。特許文献2でも、複数の出発合金を用いて得られた外殻部の重希土類元素の濃度が内殻部より高くなっているコア・シェル構造の主相結晶粒子を有する焼結体において、Dyが粒界相近傍に分布すると磁石特性が向上することが開示されている。
特許文献3では、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有するR−Fe−B系希土類焼結磁石体を用意し、次に、焼結磁石体の表面に重希土類元素RH(Dy、Ho、Tbからなる群から選択された少なくとも1種)を供給しつつ、焼結磁石体を加熱し、表面から重希土類元素RHを希土類焼結磁石体の内部に拡散をさせることを開示している。
特開平4−155902号公報 WO2006/098204 WO2007/102391
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術は一般的に2合金法と呼ばれるものであるが、目的とするDy分布状態を得ることが困難であったり、異常に肥大した結晶粒が発生するため、磁石の特性改善が小幅にとどまる。
また、特許文献3の技術で作製された焼結磁石は、残留磁束密度の低下がほとんどなく、保磁力が向上した高残留磁束密度、高保磁力のR−Fe−B系焼結磁石を作製できるが、磁石表面からDyを拡散させるので磁石内部までDyを拡散させることが困難である。そのため適用可能な磁石の大きさ、用途に制約がある。
本発明の目的は、磁石全体で高残留磁束密度、高保磁力の焼結磁石であるR−T−B−M系焼結磁石となるためのR−T−B−M系焼結磁石用合金を作製することである。
本発明は、
R(ここでRはYを含む希土類元素であって、Rは軽希土類元素RL、重希土類元素RHの両方を含み、軽希土類元素RLとしてNd、Prのいずれか、重希土類元素RHとしてTb、Dy、Hoの少なくとも1種のいずれかを必ず含む)が12〜17原子%、B(ここでBの一部をCで置換してもよい)が5から8原子%、添加元素MとしてAl、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種を2原子%以下、残部がT(ここでTはFeを主とする遷移金属であって、Coを含んでもよい)およびその他不可避不純物の組成からなるR−T−B−M母合金と、
Tb、Dy、Hoの少なくとも1種からなる重希土類元素RHを20原子%以上含有する重希土類元素RHの金属又は合金とを準備する工程と、
前記R−T−B−M母合金と重希土類元素RHの金属又は合金とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理室内に装入し、前記R−T−B−M母合金と重希土類元素RHの金属又は合金とを前記処理室内にて連続的または断続的に移動させながら、雰囲気圧力を10Pa以下の雰囲気で600℃以上1000℃以下の熱処理を10分以上48時間以下行う工程、
を包含するR−T−B−M系焼結磁石用合金の製造方法である。
本発明の好ましい実施形態として、前記R−T−B−M母合金は、ストリップキャスト法により製造される。
その他の発明は、
前記R−T−B−M系焼結磁石用合金の製造方法にて作製されたR−T−B−M系焼結磁石用合金を粉砕し、R−T−B−M系焼結磁石用合金粉末を作製する工程と、
前記R−T−B−M系焼結磁石用合金粉末を所定形状の成形体に成形する工程と、
前記成形体を焼結する工程と、
を包含するR−T−B−M系焼結磁石の製造方法である。
その他の本発明は、前記R−T−B−M系焼結磁石の製造方法によって作製されたR−T−B−M系焼結磁石である。
本発明では、前記R−T−B−M母合金と重希土類元素RHの金属又は合金とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理室内に装入し、前記R−T−B−M母合金と重希土類元素RHの金属又は合金とを前記処理室内にて連続的または断続的に移動させながら、雰囲気圧力を10Pa以下の雰囲気で600℃以上1000℃以下の熱処理を10分以上48時間以下行うR−T−B−M系焼結磁石用合金を作製し、作製したR−T−B−M系焼結磁石用合金を用いてR−T−B−M系焼結磁石を作製すると、磁石全体で高残留磁束密度、高保磁力のR−T−B−M系焼結磁石を作製することができる。
本発明のRH拡散工程を行う処理装置の模式図 本発明のRH拡散工程を行うその他の処理装置の模式図
[R−T−B−M系焼結磁石用合金]
本発明で作製されるR−T−B−M系焼結磁石用合金は、R(ここでRはYを含む希土類元素であって、Rは軽希土類元素RL、重希土類元素RHの両方を含み、軽希土類元素RLとしてNd、Prのいずれか、重希土類元素RHとしてTb、Dy、Hoの少なくとも1種のいずれかを必ず含む)が12〜17原子%、B(ここでBの一部をCで置換してもよい)が5〜8原子%、添加元素MとしてAl、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種を2原子%以下、残部がT(ここでTはFeを主とする遷移金属であって、Coを含んでもよい)および不可避不純物の組成からなり、主相であるR14B化合物の結晶長軸方向に沿ってR14B化合物の結晶とRリッチ相との界面に、連続して10μm以上の長さにわたって重希土類元素RHの濃度が高い領域を有するR−T−B−M系焼結磁石用合金である。主相であるR14B化合物の結晶長軸方向に沿ってR14B化合物の結晶とRリッチ相との界面に連続して10μm以上の長さにわたって重希土類元素RHの濃度が高い領域を有することで、粉砕しても重希土類元素RHが高い領域を有するR−T−B−M系焼結磁石用合金粉末ができる。
本明細書中、R−T−B−M系磁石用原料合金と重希土類元素RHの金属又は合金とを処理空間内に配置し、102Pa以下の雰囲気圧力で600℃以上1000℃以下の熱処理を10分以上48時間以下行う工程を「RH拡散工程」とし、RH拡散工程前のR−T−B−M系焼結磁石用原料合金を「R−T−B−M母合金」、前記RH拡散工程が完了したものを「R−T−B−M系焼結磁石用合金」とする。
以下、本発明によるR−T−B−M系焼結磁石用合金およびR−T−B−M系焼結磁石を製造する方法の好ましい実施形態を説明する。
[処理空間]
まず、RH拡散工程に用いられる処理室について説明する。図1を参照しながら、本発明による拡散処理の好ましい例を説明する。図1では、R−T−B−M母合金1と重希土類元素RHの金属又は合金のバルク体(以下RH拡散源という)との配置例を示している。R−T−B−M系焼結磁石用合金と重希土類元素RHの金属又は合金のRH拡散源2とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理室3(または処理容器)内に図1の白抜き矢印方向に装入し処理室シャッターを黒下矢印方向に降ろしてから、それらを600℃超1000℃以下の温度(処理温度)に加熱保持する。好ましい処理温度は700℃以上900℃以下である。ここで、RH拡散源は、重希土類元素RH(DyおよびTbの少なくとも1種)と、30質量%以上80質量%以下のFeとを含有する合金である。このとき、例えば、処理室3を回転または揺動させたり、処理室に振動を加えたりすることにより、R−T−B−M母合金1とRH拡散源2とを前記処理室内にて連続的にまたは断続的に移動して、R−T−B−M母合金1とRH拡散源2との接触部の位置を変化させたり、R−T−B−M母合金1とRH拡散源2とを近接・離間させながら、重希土類元素RHの気化(昇華)による供給とR−T−B−M系焼結磁石用合金への拡散とを同時に実行する(RH拡散工程)。
本発明では、RH拡散源とR−T−B−M母合金とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理室内に装入し、連続的または断続的に移動させることができるので、R−T−B−M母合金とRH拡散源とを所定位置に並べる載置の時間が不要となる。
ここで、RH拡散工程においてR−T−B−M母合金1とRH拡散源2とを処理室内において連続的または断続的に移動させる方法としては、RH拡散源とR−T−B−M母合金との相互配置関係を変動させることが可能であれば、任意の方法を採用し得る。例えば、処理室を回転、揺動したり、外部から処理室に振動を加えたりする方法を採用できる。また、処理室内に攪拌手段を設けてもよい。
本発明によって作製されたR−T−B−M系焼結磁石用合金の主相結晶粒の外殻部における結晶磁気異方性が高められると、磁石全体の保磁力HcJが効果的に向上するとされている。本発明では、R−T−B−M系焼結磁石用合金の表面に近い領域だけでなく、R−T−B−M系焼結磁石用合金表面から離れた内部の領域においても重希土類置換層を主相外殻部に形成することができるため、R−T−B−M系焼結磁石用合金全体にわたって主相外殻部で効率良く重希土類元素RHが濃縮された層を形成することにより、保磁力HcJを向上させることが可能になると同時に、主相内部には重希土類元素RHの濃度の低い部分が残存するため、残留磁束密度Bを殆ど低下させない。
本発明では、上記のようにして僅かに気化した重希土類元素RHをR−T−B−M母合金の主相であるR14B化合物の結晶長軸方向に沿ってR14B化合物の結晶とRリッチ相との界面に濃化させる。
また、図2のようにR−T−B−M母合金1の作製後、すぐに処理室6内の回転槽7に投入するようにしてもよい。
熱処理時における処理室6内は不活性雰囲気中であることが好ましい。本明細書における「不活性雰囲気」とは、真空、または不活性ガスを含むものとする。また、「不活性ガス」は、たとえばアルゴン(Ar)などの希ガスであるが、RH拡散源およびR−T−B−M母合金との間で化学的に反応しないガスであれば、「不活性ガス」に含まれ得る。不活性ガスの圧力は、大気圧よりも低い値を示すように減圧される。処理室内の雰囲気圧力が大気圧に近いと、RH拡散源から重希土類元素RHがR−T−B−M母合金の表面に供給されにくくなるが、拡散量はR−T−B−M母合金表面から内部への拡散速度によって律速されるため、処理室内の雰囲気圧力は102Pa以下であれば充分で、それ以上処理室内の雰囲気圧力を下げても、重希土類元素RHの拡散量(保磁力の向上度)は大きくは影響されない。拡散量は、圧力よりもR−T−B−M母合金の温度に敏感である。
RH拡散源の形状・大きさは特に限定されず、板状であってもよいし、不定形であってもよい。RH拡散源が多孔質であってもよい。RH拡散源は重希土類元素RHまたは少なくとも1種の重希土類元素RHを20原子%以上含む合金から形成されていることが好ましい。重希土類元素RHを含む酸化物、フッ化物、窒化物などからRH拡散源を形成しても、保磁力向上効果は得られる。
[R−T−B−M母合金の組成]
R(ここでRはYを含む希土類元素であって、Rは軽希土類元素RL、重希土類元素RHの両方を含み、軽希土類元素RLとしてNd、Prのいずれか、重希土類元素RHとしてTb、Dy、Hoの少なくとも1種のいずれかを必ず含む)が12〜17原子%、B(ここでBの一部をCで置換してもよい)が5から8原子%、添加元素MとしてAl、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種を2原子%以下、残部がT(ここでTはFeを主とする遷移金属であって、Coを含んでもよい)およびその他不可避不純物の組成からなる合金を用意する。ここで、Rの一部は重希土類元素RHで置換されてもよい。
R−T−B−M母合金のその他不可避不純物として、O、C、N、H、Si、Ca、Mg、S、P等がある。
[R−T−B−M母合金の製造工程]
R−T−B−M母合金は、例えばストリップキャスト法によって作製される。以下、ストリップキャスト法によるR−T−B−M母合金の作製を説明する。なお、本発明のR−T−B−M母合金の製造に用いるストリップキャスト法は、例えば、米国特許第5、383、978号明細書に開示されている
まず、前述した組成を有するように素原料をそれぞれ秤量し、アルゴン雰囲気中において高周波溶解され、R−T−B−M母合金の溶湯となる。次に、この溶湯を1350℃程度に保持した後、単ロール法によって急冷し、例えば厚さ約0.3mmの鋳片状のR−T−B−M母合金を得る。ここで、鋳片状のR−T−B−M母合金の厚さは1mm以下であるのが好ましい。
[RH拡散工程]
次に、上記工程にて作製されたR−T−B−M母合金に重希土類元素RHを拡散しR−T−B−M系焼結磁石用合金を作製する。具体的には、図1に示すような処理室内にR−T−B−M母合金1と重希土類元素RHの金属又は合金のRH拡散源2とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理室(または処理容器)内に装入し、それらを600℃超1000℃以下の温度(処理温度)に加熱保持する。
本実施形態では、重希土類元素RHを含むRH拡散源2とR−T−B−M母合金1とをいっしょに回転させつつ、加熱することにより、RH拡散源2から重希土類元素RHをR−T−B−M母合金1の表面に供給しつつ、内部に拡散させることができる。 拡散処理時における処理室の内壁面の周速度は、例えば0.01m/s以上に設定され得る。回転速度が低くなると、R−T−B−M母合金とRH拡散源との接触部の移動が遅くなり、溶着が発生しやすくなる。このため、拡散温度が高いほど、処理室の回転速度を高めることが好ましい。好ましい回転速度は、拡散温度のみならず、RH拡散源の形状やサイズによっても異なる。
本発明では、主相外殻部が重希土類元素RHに対して有する高い親和力を利用して、主相であるR14B化合物の長軸方向に沿ってR14B化合物の結晶とRリッチ相との界面に連続して10μm以上の長さにわたって重希土類元素RHの濃度が高い領域を有する。
このような構造のR−T−B−M系焼結磁石用合金を焼結磁石の作製に用いると、磁石全体で高残留磁束密度、高保磁力のR−T−B−M系焼結磁石を作製することができる。
処理室内の雰囲気圧力は102Pa以下でRH拡散源およびR−T−B−M母合金の温度を600℃以上1000℃以下の範囲内に保持する。保持時間は、10分以上48時間以下の範囲に設定される。この温度範囲は、重希土類元素RHがR−T−B−M母合金2の粒界相を伝って内部へ拡散する好ましい温度領域であり、R−T−B−M母合金内部への拡散が効率的に行われることになる。
また、RH拡散工程時における雰囲気ガスの圧力は、効率的にRH拡散処理を行うためには、雰囲気ガスの圧力を10−3〜102Paの範囲内に設定することが好ましい。
ここで、保持時間は、RH拡散源およびR−T−B−M母合金の温度が600℃以上1000℃以下および圧力が102Pa以下にある時間を意味し、必ずしも特定の温度、圧力に保持される時間のみを表すのではない。
[粉砕]
本発明の磁石を得るための製造方法の一例として、粗粉砕と微粉砕の2段階の粉砕を行う場合を以下に示す。以下の記載は、他の製造方法を排除するものではない。
R−T−B−M系焼結磁石用合金の粗粉砕は、水素脆化処理が好ましい。これは、水素吸蔵に伴う合金の脆化現象と、体積膨張現象を利用して合金に微細なクラックを生じさせ、粉砕する方法であり、本発明のR−T−B−M系焼結磁石用合金では、主相とRリッチ相との水素吸蔵量の差、即ち体積変化量の差がクラック発生の要因となることから、主相の粒界で割れる確率が高くなるためである。
水素脆化処理は、通常、加圧水素に一定時間暴露することで行う。さらに、その後、温度を上げて過剰な水素を放出させる処理を行う場合がある。水素脆化処理後の粗粉末は、多数のクラックを内包し、比表面積が大幅に増大していることもあって、非常に活性であり、大気中の取り扱いでは酸素量の増大が著しくなるので、窒素、He、Arなどの不活性ガス中で取り扱うことが望ましい。また、高温では窒化反応も生じる可能性があるため、コストが許せばHe、Ar雰囲気中での取り扱いが好ましい。
粉砕工程においては、特に不可避に含まれる酸素量を管理する必要がある。酸素は不可避不純物のうち、磁石特性や製造工程に大きな影響を及ぼす。粉砕後のR−T−B−M系焼結磁石用合金の粉末、さらにそれらの混合物に含まれる酸素は、以降の工程で除去することができない。一般に完成した磁石においても粉末の状態での酸素量と同等の量を含有している。
微粉砕工程は、気流式粉砕機による乾式粉砕を用いることができる。この場合、一般に
は、粉砕ガスは窒素ガスが用いられるが、窒素の混入を最小限にするには、He、Arガスなどの希ガスを用いる方法が好ましい。特に、Heガスを用いると、格段に大きな粉砕エネルギーが得られ、容易に本発明に適した微粉砕粉を得ることができる。しかしながらHeガスは高価であるので、粉砕機にコンプレッサ等を組み入れて循環使用することが好ましい。水素ガスでも同様の効果が期待されるが、可燃性であるため、工業的には好ましくない。
[成形]
本発明の成形方法は、既知の方法を用いることができる。例えば、磁界中で前記微粉砕粉を金型を用いて加圧成形する方法である。酸素や炭素の取り込みを最小限とするため、潤滑剤等の使用は最小限にとどめることが望ましい。潤滑剤を用いる際は、焼結工程、またはその前に脱脂可能な、揮発性の高い潤滑剤を、公知のものから選択して用いることができる。
酸化を抑制する方策として、微粉末を溶媒に混合し、スラリーを形成し、そのスラリーを磁界中成形に供する方法を用いることができる。この場合、溶媒の揮発性を考慮し、次の焼結過程において、例えば250℃以下の真空中で略完全に揮発させることが可能な、低分子量の炭化水素を選ぶことができる。特に、パラフィンなどの飽和炭化水素が好ましい。また、スラリーを形成する場合は、微粉末を直接溶媒中に回収してスラリーとしてもよい。
成形時の加圧力は、特に限定するものではないが、例えば、9.8MPa以上、より好ましくは19.6MPa以上である。上限は245MPa以下、より好ましくは196MPa以下である。成形体密度が例えば3.5〜4.5Mg/m程度になるように設定される。印加する磁界の強度は、例えば0.8〜1.5MA/mである。
[焼結]
焼結過程における雰囲気は、真空中または大気圧以下の不活性ガス雰囲気とする。ここでの不活性ガスとは、Ar及びまたはHeガスを指す。
大気圧以下の不活性ガス雰囲気を保持する方法は、真空ポンプによる真空排気を行いつつ、不活性ガスを焼結炉内に導入する方法が好ましい。この場合、前記真空排気を間欠的に行ってもよく、不活性ガスの導入を間欠的に行ってもよい。また前記真空排気と前記導入の双方とも間欠的に行うこともできる。
本成形体から微粉砕工程や成形工程で用いた潤滑剤や溶媒を十分に除去するためには、300℃以下の温度域で30分以上8時間以下の時間、真空中または大気圧以下の不活性ガス中で保持する脱脂処理を行った後、焼結することが好ましい。前記脱脂処理は、焼結工程とは独立に行うこともできるが、処理の効率、酸化防止等の観点から、脱脂処理後、連続して焼結を行うことが好ましい。前記脱脂工程では、前記大気圧以下の不活性ガス雰囲気で行うことが、脱脂効率上好ましい。また、さらに脱脂処理を効率的に行うため、水素雰囲気中で熱処理を行うこともできる。
焼結工程では、成形体の昇温過程で、成形体からのガス放出現象が認められる。前記ガス放出は、主に水素脆化処理工程で導入された水素ガスの放出である。前記水素ガスが放出されて初めて液相が生成するので、水素ガスの放出を充分行わせることが好ましく、例えば700℃以上850℃以下の温度範囲で30分以上4時間以下の保持をすることが好ましい。
焼結時の昇温温度は650〜1000℃の範囲内の温度で10〜240分間保持する工程と、その後、上記の昇温温度よりも高い温度(例えば、1000〜1200℃)で焼結を更に進める工程とを順次行うことが好ましい。
[加工]
本発明のR−T−B−M系焼結磁石には、所定の形状、寸法を得るため、一般的な切断、研削等の機械加工を施すことができる。
[表面処理]
本発明のR−T−B−M系焼結磁石には、好ましくは防錆のための表面コーティング処理を施す。例えば、Niめっき、Snめっき、Znめっき、Al蒸着膜、Al系合金蒸着膜、樹脂塗装などを行うことができる。
[実施例1]
まず、ストリップキャスト法により表1のNo.1の組成を有するように配合したR−T−B−M母合金を作製した。R−T−B−M母合金はフレーク状であり、厚みは0.2〜0.4mmであった。
Figure 2012079726
表1のR−T−B−M母合金を図1に示す構成を有する処理容器内に配置した。処理容器の容積は:785000mm、R−T−B−M母合金の投入重量(又は投入個数):250g、RH拡散源の投入重量:250gであった。RH拡散源はDyFeの共晶合金からなる直径3mm以下の球形のものを用いた。
本実施例で使用する処理容器はMoから形成されており、複数のR−T−B−M母合金を支持する部材と、DyからなるRH拡散源を保持する部材とを備えている。
次に、図1の処理容器を真空熱処理炉にてRH拡散処理を行った。処理条件は、周速度0.02m/sの速度で処理容器を回転しながら、1×10−2PaのAr減圧雰囲気下でヒータ加熱をし、750℃で1〜3時間保持して、R−T−B−M母合金へのDy拡散(導入)量が0.5質量%となるよう調節することで、R−T−B−M系焼結磁石用合金を作製した。
次に、R−T−B−M系焼結磁石用合金の鋳片を容器に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことにより、室温で合金鋳片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、鋳片を脆化し、大きさ0.5mm以下の粗粉を作製した。
上記の水素処理により作製した粗粉砕粉末に対し粉砕助剤として0.05wt%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、粉末粒径が約3μmの粉末を作製した。
こうして作製した粉末をプレス装置により成形し、成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行った。こうして、厚さ50mm×縦50mm×横50mmの焼結磁石を得た。
[比較例1]
表2のNo.2に記載の所定の組成になるようにストリップキャスト法にて作製した。
Figure 2012079726
その後は、No.1と同様に印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行った。こうして、厚さ50mm×縦50mm×横50mmの焼結磁石を得た。
[比較例2]
表3のNo.3に記載の焼結後の組成になるようにR−T−B−M系焼結磁石用原料のA合金とB合金とを9:1の割合で混合し、水素処理装置に投入して粗粉砕してから気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、R−T−B−M系合金混合粉末を得た。
Figure 2012079726
その後は、No.1と同様に印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行った。こうして、厚さ50mm×縦50mm×横50mmの焼結磁石を得た。
No.1からNo.3にて作製した焼結磁石をそれぞれワイヤソー装置にて切断加工し、厚さ7mm×縦7mm×横7mmの焼結磁石125個に分割し、端部、中心部にあたる磁石の残留磁束密度:B、保磁力:HcJを測定した。測定には、3MA/mのパルス着磁を行った後、磁石特性(残留磁束密度:B、保磁力:HcJ)をB−Hトレーサーにて測定した。測定した結果を表4に示す。
Figure 2012079726
表4より、No.1、No.2、No.3とを比較すると、No.1では、端部と中心部とで残留磁束密度Brと保磁力HcJに違いはなく、残留磁束密度Bが1.36T、保磁力HcJが1500kA/mであった。No.2では、端部と中心部とで残留磁束密度Brと保磁力HcJに違いはなく、残留磁束密度Brが1.36T、保磁力HcJが1350kA/mであった。No.3では、端部と中心部とで残留磁束密度Bと保磁力HcJに違いはなく、残留磁束密度Bが1.36T、保磁力HcJが1380kA/mであった。
表4より本発明により作製されたNo.1が、本発明によらないNo.2、No.3と比べて、Dyを多く含んでいるにも関わらず、磁石の中心部、端部のいずれでも残留磁束密度Brの低下もなく保磁力HcJが大きく向上しているのがわかる。
[実施例2]
ストリップキャスト法により表1のNo.1と同様の組成を有するように配合したNo.4のR−T−B−M母合金を作製した。
その後は、実施例1のNo.1と同様の製造条件でRH拡散処理を経て、パーミアンス係数が1になるように、厚さ5mm×縦8mm×横8mmの寸法、厚さ10mm×縦16mm×横16mm、厚さ30mm×縦48mm×横48mmとなる3種類の寸法の焼結磁石を作製した。
[比較例3]
表5のNo.5の組成を有するR−T−B−M系焼結磁石体を作製した。前記R−T−B−M系焼結磁石体の製造方法は以下の通りである。
Figure 2012079726
表5のNo.5の組成になるようにストリップキャスト法にて作製し、作製したR−T−B−M母合金を水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことにより、室温で合金鋳片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、鋳片を脆化し、大きさ約0.15〜0.2mmの不定形粉末を作製した。
上記の水素処理により作製した粗粉砕粉末に対し粉砕助剤として0.05wt%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、粉末粒径が約3μmの粉末を作製した。
こうして作製した粉末をプレス装置により成形し、成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行った。こうして、パーミアンス係数が1になるように、厚さ5mm×縦8mm×横8mmの寸法、厚さ10mm×縦16mm×横16mm、厚さ30mm×縦48mm×横48mmとなる3種類の寸法の焼結磁石体を得た。
3種類の寸法のR−T−B−M系焼結磁石体を0.3%硝酸水溶液で酸洗し、乾燥させた後、特許文献3のWO2007/102391に記載されている処理容器内に配置した。処理容器はMoから形成されており、複数のR−T−B−M系焼結磁石体を支持する部材と、2枚のRH拡散源を保持する部材とを備えている。R−T−B−M系焼結磁石体とRH拡散源との間隔は5〜9mm程度に設定した。RH拡散源は、純度99.9%のDyから形成され、厚さ5mm×縦30mm×横30mmのサイズを有している。
次に、3種類の寸法のR−T−B−M系焼結磁石体を配置した処理容器を真空熱処理炉にて特許文献3のWO2007/102391に記載されているDyの拡散処理を行った。処理条件は、1×10−2Paの圧力下で昇温し、900℃でDy拡散(導入)量が0.5質量%となるようDy拡散処理を行った後、時効処理(圧力2Pa、500℃で120分)を行い、R−T−B−M系焼結磁石を作製した。
本発明によるNo.4と本発明によらないNo.5について、3つの寸法(厚さ5mm×縦8mm×横8mm、厚さ10mm×縦16mm×横16mm、厚さ30mm×縦48mm×横48mm)の熱減磁率を調べた。ここで熱減磁率は、3MA/mのパルス着磁を行った後、常温23℃のときの焼結磁石のトータルフラックス量を基準として、120℃に加熱した後の焼結磁石のトータルフラックス量がどれくらい減少したかで表している。測定した結果を表6に示す。
Figure 2012079726
表6の結果より、No.4は寸法が厚さ5mm×縦8mm×横8mmm、厚さ10mm×縦16mm×横16mm、厚さ30mm×縦48mm×横48mmと変わっても熱減磁は起きなかった。一方、No.5は寸法が厚さ5mm×縦8mm×横8mm、厚さ10mm×縦16mm×横16mm、厚さ30mm×縦48mm×横48mmと大きくなるに従って熱減磁率が大きくなっていた。
本発明によれば、磁石全体として高残留磁束密度、高保磁力のR−T−B−M系焼結磁石を作製することができる。高温下に晒されるハイブリッド車搭載用モータ等の各種モータや家電製品等に好適である。
1 R−T−B−M母合金
2 RH拡散源
3、6 処理室
4、7 回転槽
5 加熱手段
8 急冷合金製造室
9 ロール
10 坩堝
11 シャッター

Claims (4)

  1. R(ここでRはYを含む希土類元素であって、Rは軽希土類元素RL、重希土類元素RHの両方を含み、軽希土類元素RLとしてNd、Prのいずれか、重希土類元素RHとしてTb、Dy、Hoの少なくとも1種のいずれかを必ず含む)が12〜17原子%、B(ここでBの一部をCで置換してもよい)が5から8原子%、添加元素MとしてAl、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種を2原子%以下、残部がT(ここでTはFeを主とする遷移金属であって、Coを含んでもよい)およびその他不可避不純物の組成からなるR−T−B−M母合金と、
    Tb、Dy、Hoの少なくとも1種からなる重希土類元素RHを20原子%以上含有する重希土類元素RHの金属又は合金とを準備する工程と、
    前記R−T−B−M母合金と重希土類元素RHの金属又は合金とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理室内に装入し、前記R−T−B−M母合金と重希土類元素RHの金属又は合金とを前記処理室内にて連続的または断続的に移動させながら、雰囲気圧力を10Pa以下の雰囲気で600℃以上1000℃以下の熱処理を10分以上48時間以下行う工程、
    を包含するR−T−B−M系焼結磁石用合金の製造方法。
  2. 前記R−T−B−M母合金は、ストリップキャスト法により製造される、請求項1に記載のR−T−B−M系焼結磁石用合金の製造方法。
  3. 請求項1から2に記載のR−T−B−M系焼結磁石用合金の製造方法にて作製したR−T−B−M系焼結磁石用合金を粉砕し、R−T−B−M系焼結磁石用合金粉末を作製する工程と、
    前記R−T−B−M系焼結磁石用合金粉末を所定形状の成形体に成形する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、
    を包含するR−T−B−M系焼結磁石の製造方法。
  4. 前記請求項3に記載のR−T−B−M系焼結磁石の製造方法にて作製されたR−T−B−M系焼結磁石。
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