JP2015035455A - 焼結磁石用原料合金、希土類焼結磁石およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Dyの使用量を抑制しつつ、希土類焼結磁石の磁気特性(特に保磁力)を効率的に向上させることができる焼結磁石用原料合金を提供する。
【解決手段】本発明の焼結磁石用原料合金は、第1希土類元素(R)、FeおよびBの正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相とこの結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有し、焼結されて希土類焼結磁石となる焼結磁石用原料合金であって、さらに、第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)が、主相中よりも粒界相で濃化していることを特徴とする。このような焼結磁石用原料合金は、ストリップキャストしたR−Fe−B系磁石合金箔へR’を拡散させることにより得られる。
【選択図】図4
【解決手段】本発明の焼結磁石用原料合金は、第1希土類元素(R)、FeおよびBの正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相とこの結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有し、焼結されて希土類焼結磁石となる焼結磁石用原料合金であって、さらに、第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)が、主相中よりも粒界相で濃化していることを特徴とする。このような焼結磁石用原料合金は、ストリップキャストしたR−Fe−B系磁石合金箔へR’を拡散させることにより得られる。
【選択図】図4
Description
本発明は、高性能な希土類焼結磁石と、その製造に適した焼結磁石用原料合金と、それらの製造方法に関する。
Nd−Fe−B系焼結磁石を代表とする希土類焼結磁石は、非常に高い磁気特性を発揮するため、小型化や高出力化等が要求される幅広い分野の製品(電磁機器や電動機等)に用いられている。このような希土類焼結磁石は、厳しい環境下でも高い残留磁束密度を長期的に安定して発揮する必要があることから、高保磁力が要求され、そのための研究開発が盛んに行われている。例えば、下記の文献にそれらに関連する記載がある。
上記の特許文献では、Nd−Fe−B系焼結磁石の表面からDyを内部へ拡散させて、その高保磁力化を図っている。しかし、このような方法では、Dyは焼結磁石の表面近傍で濃化されるのみで、内部まで十分に拡散しない。
なお、Nd−Fe−B系合金粉末とDy合金(またはDy化合物)粉末との混合粉末を、磁場中成形した成形体を焼結させることにより、焼結磁石の内部にもDyを均質的に分布させる方法(2合金法、ブレンド法)が提案されている。しかし、このような方法では、主相粒子内に固溶(体拡散)するDyが増加し、Dyの供給量に対して保磁力の向上率が小さくなり、また残留磁束密度または最大エネルギー積の低下も招く。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる発想に基づいて製造された高性能な希土類焼結磁石と、その希土類焼結磁石の製造に適した原料合金と、それらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、従来のように焼結後に拡散処理を行うのではなく、主相(例えば、Nd2Fe14B)を囲繞する粒界相(例えば、Ndリッチ相)へ、保磁力向上に有効な希土類元素(例えば、Dy)を予め導入した原料合金を用いて、焼結磁石を製造することを思いついた。そして、この原料合金を用いて高保磁力の焼結磁石を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《焼結磁石用原料合金》
(1)本発明の焼結磁石用原料合金は、第1希土類元素(R)、鉄(Fe)およびホウ素(B)の正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有し、焼結されて希土類焼結磁石となる焼結磁石用原料合金であって、さらに、前記第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)が前記主相中よりも前記粒界相で濃化していることを特徴とする。
(1)本発明の焼結磁石用原料合金は、第1希土類元素(R)、鉄(Fe)およびホウ素(B)の正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有し、焼結されて希土類焼結磁石となる焼結磁石用原料合金であって、さらに、前記第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)が前記主相中よりも前記粒界相で濃化していることを特徴とする。
(2)本発明の焼結磁石用原料合金(適宜、単に原料合金という。)では、主相を囲繞する粒界相に、異方性磁界が高いDy、Tb等の第2希土類元素(R’)が既に存在している。従って、本発明の原料合金またはこの原料合金を粉砕した原料粉末を用いれば、希土類焼結磁石(適宜、単に焼結磁石という。)の内部にある粒界にもR’を十分に分布させることが可能となり、表面部の粒界相と内部の粒界相との間でR’濃度傾斜のない均質的な希土類焼結磁石が容易に得られる。
なお、原料溶解時からR’を添加して得られた従来の磁石合金は、R’が磁石合金全体に分布し、大部分のR’が主相に存在した状態となっている。つまり、原料溶解時からR’を添加した従来の磁石合金では、本発明の原料合金のように粒界相にR’が濃化した状態とはなっていない。そして、このような原料合金の組織構造は焼結磁石の組織構造にも反映される。つまり、原料溶解時からR’を添加した従来の磁石合金を用いた場合、R’が粒界相のみならず主相にも均一的に分布した焼結磁石しか得られない。
こうして本発明の原料合金を用いれば、R’を主相(R2Fe14B)の周囲へ優先的に導入した焼結磁石を得ることが可能となり、Dyの使用量を抑制しつつ効率的に焼結磁石の高保磁力化を図れる。
《焼結磁石用原料合金の製造方法》
本発明は、上述した原料合金としてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、第1希土類元素(R)、FeおよびBの正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有する磁石合金へ、該第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)を拡散させる拡散処理工程を備え、上述した焼結磁石用原料合金が得られることを特徴とする焼結磁石用原料合金の製造方法でもよい。
本発明は、上述した原料合金としてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、第1希土類元素(R)、FeおよびBの正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有する磁石合金へ、該第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)を拡散させる拡散処理工程を備え、上述した焼結磁石用原料合金が得られることを特徴とする焼結磁石用原料合金の製造方法でもよい。
《希土類焼結磁石およびその製造方法》
また本発明は、上述した原料合金やその製造方法としてのみならず、その原料合金を用いて製造される希土類焼結磁石およびその製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、上述した焼結磁石用原料合金を粉砕した原料粉末を磁場中で成形した成形体を焼結させた焼結体からなることを特徴とする希土類焼結磁石でもよい。
また本発明は、上述した原料合金やその製造方法としてのみならず、その原料合金を用いて製造される希土類焼結磁石およびその製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、上述した焼結磁石用原料合金を粉砕した原料粉末を磁場中で成形した成形体を焼結させた焼結体からなることを特徴とする希土類焼結磁石でもよい。
また本発明は、上述した焼結磁石用原料合金を粉砕した原料粉末を得る粉砕工程と、該原料粉末を磁場中で成形した成形体を得る成形工程と、該成形体を焼結させた焼結体を得る焼結工程とを備え、該焼結体からなる希土類焼結磁石を得ることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法でもよい。
《その他》
(1)本発明の原料合金は、その形態を問わないが、ストリップキャスト等により製造された箔状(薄板状、箔片状)であると、低温短時間の拡散処理で原料合金の粒界相中へR’を十分に拡散、濃化させることが可能となる。
(1)本発明の原料合金は、その形態を問わないが、ストリップキャスト等により製造された箔状(薄板状、箔片状)であると、低温短時間の拡散処理で原料合金の粒界相中へR’を十分に拡散、濃化させることが可能となる。
本発明の原料合金は、鋳塊(箔片または粒子を含む。)のみならず、その鋳塊を粗粉砕または微粉砕した粉末も含む。この粉末粒子の大きさが主相を構成する結晶粒と同程度である場合、本発明でいう原料合金の粒界相は、主相の表層部またはその一部を意味する。
本発明に係る希土類元素は、Sc、Yまたはランタノイドの一種以上であれば足り、第2希土類元素(R’)は第1希土類元素(R)よりも焼結磁石の保磁力の向上に寄与するものであれば足る。もっとも通常、Rは飽和磁化の大きいNd、Pr、Smのいずれかであり、R’は異方性磁界の大きいDyまたはTbである。さらに資源の入手性も考慮すれば、Rは主にNdであり、R’は主にDyである。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
本明細書で説明する内容は、本発明の原料合金のみならず、それを用いて得られた希土類焼結磁石、さらにはそれらの製造方法にも該当し得る。製造方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセスクレームとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。そして上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《原料合金》
本発明に係る原料合金は、R、R’、FeおよびBを必須元素とし、正方晶化合物(R2Fe14B)からなる主相とR’を含む粒界相とが形成される限り、具体的な組成は問わない。例えば、原料合金全体を100原子%としたときに、R:12〜16原子%、R’:0.1〜5%、B:5〜12原子%、Fe:残部とするとよい。特にRがNdでR’がDyの場合、原料合金全体を100質量%としたときに、Nd:27〜35質量%、Dy:0.5〜3質量%、B:0.8〜1.5質量%、Fe:残部とするとよい。なお、本発明の原料合金は、希土類焼結磁石の特性改善に有効な種々の改質元素や不可避不純物を含み得る。またBの代替としてCを用いることもできる。
本発明に係る原料合金は、R、R’、FeおよびBを必須元素とし、正方晶化合物(R2Fe14B)からなる主相とR’を含む粒界相とが形成される限り、具体的な組成は問わない。例えば、原料合金全体を100原子%としたときに、R:12〜16原子%、R’:0.1〜5%、B:5〜12原子%、Fe:残部とするとよい。特にRがNdでR’がDyの場合、原料合金全体を100質量%としたときに、Nd:27〜35質量%、Dy:0.5〜3質量%、B:0.8〜1.5質量%、Fe:残部とするとよい。なお、本発明の原料合金は、希土類焼結磁石の特性改善に有効な種々の改質元素や不可避不純物を含み得る。またBの代替としてCを用いることもできる。
ちなみに、本発明の原料合金中の粒界相は、通常、(R、R’)リッチ相からなり、このリッチ相が成形体の焼結時に液相化して主相間(粒界)を流動する結果、Dyの濃化した粒界相によって各主相の外表面が囲繞された焼結磁石が得られる。従って、本発明の原料合金は、通常、正方晶化合物(R2Fe14B)の理論組成よりもR量が多くなっている。
本発明の原料合金は、主相と粒界相を有する金属組織からなるが、その形態や各相のサイズ等は問わない。例えば、本発明の原料合金がストリップキャストされた合金(適宜、ストリップキャスト合金という。)である場合、通常は、主相と粒界相が層状に形成されたラメラ組織となる。なお、通常、ストリップキャスト合金は、厚さが0.1〜1mmさらには0.2〜0.6mm程度の箔状(または箔片状)であるため、比較的低温または短時間の拡散処理により、Dyを粒界相に濃化させることが可能となり好ましい。
焼結磁石の原料合金は、そのようなストリップキャスト合金の他、所望組成の鋳塊やその鋳塊を機械粉砕または水素粉砕したようなものでもよい。本発明の原料合金が粉末状である場合、その粒子径は問わないが、例えば、平均粒径(累積質量が50%となるときの粒子径またはメジアン径)が1〜20μmさらには5〜15μm程度であると好ましい。なお、本明細書でいう粒径は、特に断らない限り、上記のメジアン径を意味する。
ちなみに、焼結磁石を製造する際に用いる原料粉末は、本発明の原料合金からなる粉末を含む限り、組成や形態等の異なる複数種の粉末を混合したものでもよい。例えば、その原料合金は、本発明の原料合金からなる粉末とR’を含まない磁石合金からなる粉末との混合粉末でもよい。
《原料合金の製造方法》
本発明の原料合金は、例えば、R−Fe−B系磁石合金へ、Rよりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を形成し得るR’の一種以上を拡散させる拡散処理工程を行うことにより得られる。拡散処理工程は、その具体的な方法を問わないが、例えば、R’化合物を表面に塗布した磁石合金を加熱する塗布法、R’化合物を含むスラリー等に浸漬した磁石合金を加熱する浸漬法、R’の蒸気に磁石合金を曝す蒸気法等により行うことができる。
本発明の原料合金は、例えば、R−Fe−B系磁石合金へ、Rよりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を形成し得るR’の一種以上を拡散させる拡散処理工程を行うことにより得られる。拡散処理工程は、その具体的な方法を問わないが、例えば、R’化合物を表面に塗布した磁石合金を加熱する塗布法、R’化合物を含むスラリー等に浸漬した磁石合金を加熱する浸漬法、R’の蒸気に磁石合金を曝す蒸気法等により行うことができる。
なお、R’化合物は、R’のフッ化物または酸フッ素化合物であると好適である。このようなR’化合物は、拡散処理工程中に分解してFが、磁石合金に混入または付着しているOを取り込み、安定的なR酸フッ化物となり易い。この結果、稀少なR’が酸化物となって無駄に消費されることが抑制され、焼結磁石の高保磁力化が効率的に達成される。
R’フッ化物粉末の粒子径は問わないが、平均粒径が0.01〜20μmさらには0.1〜10μm程度であると分散し易く好ましい。その粉末が凝集している場合は、二次粒子径が1〜100μmさらには1〜10μm程度であると好ましい。
拡散処理工程に係る処理温度や処理時間は、拡散方法に応じて適宜選択され得る。例えば、上述したR’フッ化物を用いる場合なら、750〜950℃、1〜4時間程度の加熱を行うと好適である。なお、磁石合金が合金溶湯を急冷凝固させたストリップキャスト合金の場合、箔状であるため、低温短時間の熱処理でR’を各粒界相へ十分に拡散させることが可能となる。
《希土類焼結磁石の製造方法》
本発明の希土類焼結磁石は、例えば、上述した焼結磁石用原料合金を粉砕した原料粉末を磁場中成形し、得られた成形体を加熱して焼結体とすることにより得られる。この際、焼結温度は、原料合金の粒界相が液相化する温度(例えば、950〜1050℃)で行うと好適である。Rリッチ相からなる粒界相が十分に液相化することにより、R’が十分に粒界へ流動した緻密な焼結磁石が得られる。この結果、保磁力のみならず残留磁束密度ひいては最大エネルギー積に優れる希土類焼結磁石が得られる。
本発明の希土類焼結磁石は、例えば、上述した焼結磁石用原料合金を粉砕した原料粉末を磁場中成形し、得られた成形体を加熱して焼結体とすることにより得られる。この際、焼結温度は、原料合金の粒界相が液相化する温度(例えば、950〜1050℃)で行うと好適である。Rリッチ相からなる粒界相が十分に液相化することにより、R’が十分に粒界へ流動した緻密な焼結磁石が得られる。この結果、保磁力のみならず残留磁束密度ひいては最大エネルギー積に優れる希土類焼結磁石が得られる。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《原料合金》
先ず、ストリップキャスト法により鋳造したFe−32%Nd−1%B(単位は質量%)からなる厚さ0.3〜0.5mmの磁石合金箔(合金試料C0)を用意した。次に、この磁石合金箔の一方の表面に、平均粒径10μmのDyF3粉末をアルコールに分散させてなるスラリーを塗布した。この塗布後の磁石合金箔を10−4Paの真空中で、820℃×2時間加熱した(拡散処理工程)。こうして得られた拡散処理後の磁石合金箔(合金試料1)を本実施例に係る原料合金とした。なお、本実施例の場合、原料合金全体を100質量%として、Dy拡散量は約0.9質量%とした。このDy拡散量は、拡散処理後の磁石合金箔から未拡散分のDyF3粉末を除去後、ICP分析および拡散前後の磁石合金箔の重量変化に基づいて算出したものである。
先ず、ストリップキャスト法により鋳造したFe−32%Nd−1%B(単位は質量%)からなる厚さ0.3〜0.5mmの磁石合金箔(合金試料C0)を用意した。次に、この磁石合金箔の一方の表面に、平均粒径10μmのDyF3粉末をアルコールに分散させてなるスラリーを塗布した。この塗布後の磁石合金箔を10−4Paの真空中で、820℃×2時間加熱した(拡散処理工程)。こうして得られた拡散処理後の磁石合金箔(合金試料1)を本実施例に係る原料合金とした。なお、本実施例の場合、原料合金全体を100質量%として、Dy拡散量は約0.9質量%とした。このDy拡散量は、拡散処理後の磁石合金箔から未拡散分のDyF3粉末を除去後、ICP分析および拡散前後の磁石合金箔の重量変化に基づいて算出したものである。
《希土類焼結磁石の製造方法》
上記の原料合金を水素粉砕した後、さらにジェットミルで粉砕することにより、平均粒径D50(メジアン径)=6μmの原料粉末を得た(粉砕工程)。ジェットミルによる粉砕は窒素雰囲気で行った。
上記の原料合金を水素粉砕した後、さらにジェットミルで粉砕することにより、平均粒径D50(メジアン径)=6μmの原料粉末を得た(粉砕工程)。ジェットミルによる粉砕は窒素雰囲気で行った。
この原料粉末を磁場中で成形して、直方体状の成形体(20x15x10mm)を得た(成形工程)。この際、印加した磁界は2T、成形面圧は14.7MPaとした。この成形体を10−3Pa以下の真空雰囲気中で1000℃x4時間加熱して焼結体を得た(焼結工程)。この焼結体を本実施例に係る希土類焼結磁石とした(磁石試料1)。
《比較例》
(1)Dyを原料溶解時から添加した磁石合金箔を、実施例(合金試料1)の場合と同様なストリップキャスト法により得た。NdおよびBの含有量は実施例と同様としたが、Dy量は0.9%(合金試料C1)、3.75%(合金試料C2)または7.5%(合金試料C3)とした。
(1)Dyを原料溶解時から添加した磁石合金箔を、実施例(合金試料1)の場合と同様なストリップキャスト法により得た。NdおよびBの含有量は実施例と同様としたが、Dy量は0.9%(合金試料C1)、3.75%(合金試料C2)または7.5%(合金試料C3)とした。
(2)合金試料C0と合金試料C1の磁石合金箔をそれぞれ用いて、実施例の場合と同様に希土類焼結磁石を製造した(磁石試料C0、磁石試料C1)。
(3)合金試料C3の磁石合金箔と試料C0の磁石合金箔とを実施例の場合と同様に粉砕したそれぞれの粉末を、質量比1:8の割合で混合した混合粉末を用意した。この混合粉末は、全体を100質量%としたときにDy量が約0.9%となるように調製したものである。この混合粉末を用いて、実施例の場合と同様に希土類焼結磁石を製造した(磁石試料C3)。
《観察・測定》
(1)原料合金
合金試料1の箔断面(厚さ方向)をEPMAにより観察した各像を図1A〜1Cに示した。図1AはBSE像(組成像)であり、図1Bはその自由放冷面側近傍を観察したDy、FおよびNdの各分布像であり、図1Cはその冷却面側近傍を観察したDy、FおよびNdの各分布像である。なお、ここでいう冷却面とは、ストリップキャストに用いた冷却ロールの冷却面に接して急冷凝固された磁石合金箔の一方面であり、自由放冷面はその反対面を意味する。前述した拡散処理は、この自由放冷面にDyF3スラリーを塗布して行った。
(1)原料合金
合金試料1の箔断面(厚さ方向)をEPMAにより観察した各像を図1A〜1Cに示した。図1AはBSE像(組成像)であり、図1Bはその自由放冷面側近傍を観察したDy、FおよびNdの各分布像であり、図1Cはその冷却面側近傍を観察したDy、FおよびNdの各分布像である。なお、ここでいう冷却面とは、ストリップキャストに用いた冷却ロールの冷却面に接して急冷凝固された磁石合金箔の一方面であり、自由放冷面はその反対面を意味する。前述した拡散処理は、この自由放冷面にDyF3スラリーを塗布して行った。
合金試料C2の箔断面(厚さ方向)を同様にEPMAにより観察した各像を図2に示した。
(2)焼結磁石
磁石試料1、C1およびC3の断面をEPMAにより観察したDyの分布像とDyの濃度勾配を示すグラフを図3にまとめて示した。なお、Dy濃度勾配は、Dy分布像中に示した任意に抽出した区間(棒線部分)に沿ってDy量を測定したものである。
磁石試料1、C1およびC3の断面をEPMAにより観察したDyの分布像とDyの濃度勾配を示すグラフを図3にまとめて示した。なお、Dy濃度勾配は、Dy分布像中に示した任意に抽出した区間(棒線部分)に沿ってDy量を測定したものである。
磁石試料1、C1およびC3について、パルス励磁型磁気特性測定装置を用いて保磁力を測定した。それらの結果を図4に示した。なお、図4中には、Dyレスの合金試料C0からなる磁石試料C0の保磁力も参考に示した。
《評価》
(1)原料合金
図1A〜1Cから明らかなように、本実施例に係る磁石合金箔(合金試料1)は、主相(Nd2Fe14B)と(Nd、Dy)リッチ相からなる粒界相とが層状に形成されたラメラ組織となっていることがわかる。換言すれば、拡散処理により導入したDyは主相内へはほとんど拡散せず、粒界相に沿って拡散し、粒界相でNdと共に濃化した状態となっていることがわかる。また、比較的低温短時間な拡散処理でも、DyF3スラリーを塗布した磁石合金箔の一方面側(自由放冷面側)から他面側(冷却面側)まで、Dyが十分に拡散することもわかった。
(1)原料合金
図1A〜1Cから明らかなように、本実施例に係る磁石合金箔(合金試料1)は、主相(Nd2Fe14B)と(Nd、Dy)リッチ相からなる粒界相とが層状に形成されたラメラ組織となっていることがわかる。換言すれば、拡散処理により導入したDyは主相内へはほとんど拡散せず、粒界相に沿って拡散し、粒界相でNdと共に濃化した状態となっていることがわかる。また、比較的低温短時間な拡散処理でも、DyF3スラリーを塗布した磁石合金箔の一方面側(自由放冷面側)から他面側(冷却面側)まで、Dyが十分に拡散することもわかった。
一方、図2から明らかなように、Dyを原料溶解時から導入した磁石合金箔(合金試料C2)は、主相(Nd2Fe14B)とNdリッチ相とのラメラ組織が形成されているものの、Dyは磁石合金箔全体に分布した状態となっており、粒界相で濃化した状態とはなっていないこともわかる。
(2)焼結磁石の組織
図3から明らかなように、上述した原料合金中におけるDyの分布状態が、焼結磁石においても継承または反映されることがわかる。具体的にいうと、本実施例に係る磁石試料1の場合、Dyは焼結磁石の主相中にはほとんど分布せずに、その粒界相中に濃化していることがわかる。このことは、図3に示したDy濃度勾配において、主相の両側にある粒界相部分でDy濃度がピーク的に高くなっていることからもわかる。
図3から明らかなように、上述した原料合金中におけるDyの分布状態が、焼結磁石においても継承または反映されることがわかる。具体的にいうと、本実施例に係る磁石試料1の場合、Dyは焼結磁石の主相中にはほとんど分布せずに、その粒界相中に濃化していることがわかる。このことは、図3に示したDy濃度勾配において、主相の両側にある粒界相部分でDy濃度がピーク的に高くなっていることからもわかる。
また、図3に示す磁石試料1のDy分布像から、Dyが均一的に濃化した粒界相により各主相がほぼ完全に囲繞された状態となっていることもわかる。これは合金試料1を用いることにより、Dyが特別な分解反応等を伴うことなく、焼結時に生じる液相によって主相の周囲へスムーズに流動したためと考えられる。
一方、磁石試料C1、C3では、それらの製造に用いた合金試料C1、C3中におけるDy分布が継承されており、主相同士を焼結させている粒界相中にDyの濃化は観られない。例えば、磁石試料C1の場合なら、合金試料C1の場合と同様に、Dyが主相全体に均一的に分布した状態となっている。また磁石試料C3の場合なら、ほとんどのDyが、Dyを含有していた合金試料C3の主相中でのみで均一的に分布した状態となっている。そして磁石試料C1、C3のいずれの場合でも、Dyが粒界相で濃化していないことは、図3に示したDy濃度勾配から明らかである。
(3)焼結磁石の保磁力
図4から明らかなように、本実施例に係る磁石試料1は、Dy含有量が同じ磁石試料C1、C31よりも、保磁力が大幅に向上している。なお、図3に示したように、本実施例に係る磁石試料1では、Dyが主に粒界相にあり、ほとんど主相中にないため、当然、残留磁束密度ひいては最大エネルギー積も、他の磁石試料C1、C3より大きい。
図4から明らかなように、本実施例に係る磁石試料1は、Dy含有量が同じ磁石試料C1、C31よりも、保磁力が大幅に向上している。なお、図3に示したように、本実施例に係る磁石試料1では、Dyが主に粒界相にあり、ほとんど主相中にないため、当然、残留磁束密度ひいては最大エネルギー積も、他の磁石試料C1、C3より大きい。
以上から、本発明に係る原料合金を用いることにより、Dy使用量を抑制しつつ、希土類焼結磁石の保磁力さらには磁気特性全体を効率的に向上させ得ることがわかった。
Claims (10)
- 第1希土類元素(R)、鉄(Fe)およびホウ素(B)の正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有し、焼結されて希土類焼結磁石となる焼結磁石用原料合金であって、
さらに、前記第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)が前記主相中よりも前記粒界相で濃化していることを特徴とする焼結磁石用原料合金。 - 箔状である請求項1に記載の焼結磁石用原料合金。
- 前記金属組織は、前記主相と前記粒界相が層状に形成されたラメラ組織である請求項1または2に記載の焼結磁石用原料合金。
- 前記粒界相は、前記第1希土類元素のリッチ相からなる請求項1または3に記載の焼結磁石用原料合金。
- 前記第1希土類元素はネオジム(Nd)であり、
前記第2希土類元素はジスプロシウム(Dy)である請求項1に記載の焼結磁石用原料合金。 - 第1希土類元素(R)、FeおよびBの正方晶化合物(R2Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とで構成された金属組織を有する磁石合金へ、該第1希土類元素よりも異方性磁界の大きな正方晶化合物を生成し得る第2希土類元素(R’)を拡散させる拡散処理工程を備え、
請求項1〜5のいずれかに記載の焼結磁石用原料合金が得られることを特徴とする焼結磁石用原料合金の製造方法。 - 前記磁石合金は、合金溶湯を箔状に急冷凝固させるストリップキャスト法により得られたストリップキャスト合金である請求項6に記載の焼結磁石用原料合金の製造方法。
- 前記拡散処理工程は、前記第2希土類元素の化合物を表面に塗布した前記磁石合金を加熱する塗布法によりなされる請求項6または7に記載の焼結磁石用原料合金の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の焼結磁石用原料合金を粉砕した原料粉末を磁場中で成形した成形体を焼結させた焼結体からなることを特徴とする希土類焼結磁石。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の焼結磁石用原料合金を粉砕した原料粉末を得る粉砕工程と、
該原料粉末を磁場中で成形した成形体を得る成形工程と、
該成形体を焼結させた焼結体を得る焼結工程とを備え、
該焼結体からなる希土類焼結磁石を得ることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。
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