JP2014150119A - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1)Ndを含む希土類元素と、FeとBを含み、R2T14Bで表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成し、2)Dy、Tbの少なくとも一方を含む重希土類元素と該焼結体とを加熱し、該重希土類元素を拡散させて前記金属間化合物の結晶粒の外殻部に該重希土類元素を濃化させ、3)その後に、PrとAlを含む供給源と、該重希土類元素を拡散させた焼結体とを加熱し、該焼結体にPrとAlを拡散させ、該焼結体の表層部において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相の希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下であり且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒の希土類元素に占めるPrの質量比率よりも20%ポイント以上高くし、さらに、該焼結体に含有されるAlの質量比率を0.01〜0.05%ポイント増加させる。
【選択図】図2
Description
このため、例えば特許文献1〜3に示すようにR−T−B系焼結磁石の表面から内部に重希土類元素(以下、重希土類元素のことを「RH」という場合がある)であるジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を拡散させて主相結晶粒の粒界近傍(主相結晶粒の外殻部)にジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を濃化させて高温でも高いHcJを得る方法が採られている。
これは、例えばR2Fe14BのRがPrの場合とNdの場合とで異方性磁界(この値が大きいほどHcJが大きくなる)の温度依存性を比べた実験結果(例えば、J.Appl.Phys.,Vol.59,No.3,p.873(1986)に示されるグラフ)からも理解できる。すなわち、室温(300K)ではRがPrの場合の方が、RがNdの場合より高い異方性磁界の値を示すが、例えば160℃(433K)のような高温では、RがNdの場合の方が、RがPrの場合より高い異方性磁界の値を示している。
このため、高温におけるHcJを向上させることを目的にPrを添加することは好ましくないと考えられていた。
一般式:R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。)
一般式: R2T14B (1)
そこで、焼結体の表面からDyおよび/またはTbを拡散させて、結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方を濃化させる。
これにより高温で高いHcJが得られると共に、残留磁束密度Brの低下を確実に抑制できる。
ここで、PrやAlは粒界多重点の金属相だけでなく二粒子粒界(2つの主相結晶粒の間の粒界)にも配置され、Rリッチ(希土類リッチ)相全体に影響を及ぼしていると考えられる。しかし、幅が極めて狭く部位によって一定でない二粒子粒界あるいはその近傍に存在するPrおよびAlの濃度を精度よく測定することは、容易ではない。
幸いなことにPrについては、二粒子粒界よりも幅の広い粒界多重点であれば、部位によるばらつきが少なくTEM−EDX等により濃度を十分に高い精度で測定できる。従って、粒界多重点(特に金属相)において希土類元素に占めるPrの質量比を測定することで粒界のRリッチ(希土類リッチ)相におけるPrの挙動を反映した特性を得ることができると考える。また、Alについては、表面から拡散させると拡散量が少ないうちは粒界拡散が支配的であることもあり焼結体全体でのAlの増加量(拡散量)を測定することで、粒界のRリッチ(希土類リッチ)相等におけるAlの挙動を反映した特性を得ることができると考える。
以下に詳述するように本発明に係る製造方法では、焼結体に、その表面からDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理と、その表面からPrとAlを拡散させるPr−Al拡散処理とを実施する。本明細書では、焼結体に重希土類元素拡散処理およびPr−Al拡散処理のいずれか一方を行った状態でも「焼結体」と呼ぶ場合があり(「××処理を行った焼結体」と言う場合もある)、焼結体に重希土類元素拡散処理とPr−Al拡散処理の両方を行った状態を「磁石」と呼ぶ場合がある(「焼結磁石」または「R−T−B系焼結磁石」という場合もある。)。
(1)焼結体の組成
焼結体は、Ndを含む希土類元素と、Feと、Bとを含む焼結体として知られている任意の組成であってよい。以下に好ましい焼結体の組成を示す。
Rは、希土類元素であり、Ndが必須であって、Rのうち質量比で50%以上をNdとする。Nd以外の希土類元素を含んでよい。
焼結体全体でNdと他の希土類元素を合計して25質量%以上35質量%以下含有することが好ましい。25質量%未満では焼結ができない場合があり、35質量%を超えるとBrが著しく低下する場合があるためである。
また、拡散処理を行う前の焼結体の段階で、DyおよびTbのような重希土類元素を多く含むと、最終的に得られたR−T−B系焼結磁石のBrが低下することから、重希土類元素は合計でR−T−B系焼結磁石全体で10質量%以下であることが好ましい。
Nd以外の希土類元素は、例えば、ミッシュメタルおよび/またはジジム合金(Nd−Pr合金)を用いることにより含まれることが多い。例えば、ジジム合金を用いると、焼結体はPrを含む。この場合、焼結体がPrを含んだ状態で後述する拡散処理を行うこととなる。
Tの含有量は、Rとボロン(B)あるいはRとBと後述するM元素との残部を占めてよい。
(2)溶解・粉砕
最終的に必要な組成となるように事前に調整した金属を溶解し、鋳型にいれるインゴット鋳造法により合金インゴットを得ることができる。
また、溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスクまたは回転円筒鋳型等に接触させて急冷し、インゴット法で作られた合金よりも薄い凝固合金を作製するストリップキャスト法または遠心鋳造法に代表される急冷法により合金フレークを製造することができる。
急冷法によって作製したR−T−B系焼結磁石用原料合金(急冷合金)の厚さは、通常0.01mm〜3mmの範囲にあり、フレーク形状である。合金溶湯は冷却ロールの接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)に比較して、短時間で凝固されているため、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。急冷合金を水素粉砕することで、水素粉砕粉(粗粉砕粉)のサイズを例えば1.0mm以下とすることができる。
得られた合金粉末を用いて磁界中プレス成形を行い、成形体を得る。磁界中プレス成形は、磁界を印加した金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入しプレスする乾式法、および金型のキャビティー内にスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながらプレスする湿式法を含む既知の任意の方法を用いてよい。
成形体を焼結することにより焼結体を得る。
成形体の焼結は、公知の焼結体の製造方法と同様の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、雰囲気ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより置換しておくことが好ましい。
そして、主相結晶粒は、焼結体の断面観察において、50%(体積比または断面の面積比)以上、好ましくは70%(体積比または断面の面積比)以上存在している。
R2T14B (1)
ここで、RはNdを質量比で50%以上含有する1種類以上の希土類元素であり(すなわち、R全体の50質量%以上がNd)、TはFeまたはFeとCoである。
次に、焼結体にDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理と、焼結体にPrとAlを拡散させるPr−Al拡散処理を行う。なお、焼結体を研削等の機械加工をした後に拡散処理を行ってもよい。
以下に、重希土類元素拡散処理とPr−Al拡散処理の詳細を示す。
なお、以下に示すように、重希土類元素拡散処理を行った後、Pr−Al拡散処理を行う。これにより、DyおよびTbの少なくとも一方とPrとAlをより容易に所望の状態に拡散できるからである。
DyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面から拡散し、主相結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方を濃化できる既知の任意の方法を用いてよい。多くの既知の拡散方法は、同じ処理室内に、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源と焼結体とを配置し、重希土類元素供給源および焼結体を加熱することにより重希土類元素拡散処理を行っている。このような処理として、特許文献1〜6に記載されている拡散処理および本願の実施例に示す金属粉末を焼結体表面に散布する方法を例示できる。
これらのうち、特許文献1〜3に記載されている方法を焼結体表面に散布する方法の詳細を以下に示す。
なお、このような重希土類元素拡散処理を行うことで、当然ながら焼結体全体でもDyおよびTbの少なくとも一方の含有量は増加する。焼結体全体としてDyおよびTbの少なくとも一方の含有量がどの程度増加するかは、焼結体の体積等の要因によって異なる。しかし、例えば、縦、横および高さのうちの最小寸法が10mm以下の一般的な形態の焼結体であれば、本発明に係る拡散処理を行うことにより、多くの場合、焼結体全体でDyおよびTbの少なくとも一方の含有量が質量比率で0.1パーセントポイント〜2.0パーセントポイント増加する。さらに重希土類元素拡散処理の後に追加で熱処理(以下、「追加熱処理」と記載する場合がある。)を施すことが好ましい。なお、本発明における追加の熱処理とは、焼結体への重希土類元素の供給を行わずに拡散のみを行う処理のことをいう。重希土類元素をさらに焼結体内部へ拡散させることができるからである。処理温度は、800℃以上950℃以下で行うことが好ましい。
以下に拡散処理の詳細を説明する。
特許文献1に記載の方法は、焼結体と、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源とをNb製またはMo製の網等の耐熱材料からなるメッシュ部材を介して離間して配置し、焼結体と重希土類元素供給源とを所定温度に加熱することにより、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面に供給しつつ、焼結体の内部に拡散させる方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
焼結体および重希土類元素供給源を加熱する温度は、それぞれ、850℃以上1000℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、10−5Pa以上500Pa以下が好ましい。なお、本明細書における「雰囲気ガス」とは、真空または不活性ガスを含むものとする。また、「不活性ガス」とは、例えば、アルゴン(Ar)などの希ガスであるが、焼結体、重希土類元素供給源と化学的に反応しないガス(例えば、窒素ガス)は、「不活性ガス」に含まれ得る。
特許文献2に記載された方法は、焼結体と重希土類元素供給源とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理容器内に挿入し、焼結体と重希土類元素供給源とを処理容器内にて連続的または断続的に移動させながら、焼結体および重希土類元素供給源を加熱することにより、重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散する方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
焼結体と重希土類元素供給源を加熱する温度は、500℃以上850℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、大気圧以下で実施でき、100kPa以下で行うのが好ましく、例えば10−3Pa以上103Pa以下の範囲内に設定することができる。
特許文献3に記載された方法は、重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させた状態で焼結温度よりも低い温度で加熱することで、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散させる方法である。
重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させる方法としては、例えば、粒子状の重希土類元素供給源をそのまま焼結体表面に吹き付ける方法、同供給源を溶媒に溶解した溶液を焼結体表面に塗布する方法、同供給源を分散媒に分散させたスラリーを焼結体表面に塗布する方法等があげられる。スラリーに用いる分散媒としては、例えばアルコール、アルデヒド、エタノール、ケトン等が挙げられる。
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体にPr−Al拡散処理を施す。前記焼結体の表面から内部にPrとAlを供給し、前記焼結体の表層部において、粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を、当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より20パーセントポイント以上高くし、かつ前記表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を75%以下にする。さらに、焼結体に含有されるAlの質量比率を0.01パーセントポイント〜0.05パーセントポイント増加させる。
また、好ましくは焼焼結体の表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を20%〜60%にし、焼結体に含有されるAlの質量比率を0.01パーセントポイント〜0.03パーセントポイント増加させる。高温におけるHcJ向上効果をより一層高くできるからである。
以下に拡散処理の詳細を説明する。
Pr−Al供給源として、PrとAlを含む固体、スラリー等、任意の形態のPr−Al供給源を用いてよい。
好ましいPr−Al供給源は、PrとAlを含む合金である。合金を用いる場合、Pr含有量が30質量%以上、Al含有量が、2〜10質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、Al含有量は、2〜6質量%以下である。
Pr−Al供給源の形状、サイズは拡散処理方法によって適宜選定すればよく、薄膜、粉末または板状等のバルク状などでもよい。
Pr−Al拡散処理は、Pr−Al供給源と焼結体とを接触させてPr−Al供給源から焼結体にPrやAlを粒界拡散させる方法が好ましい。
念のために言及するが、本明細書において、「20パーセントポイント以上高い」とは、パーセント(質量%)で示される含有量において、その数値が20以上大きいことを意味する。例えば、対象物Aの希土類元素中のPrの含有量が10質量%である場合、対象物BのPrの含有量が対象物Aより20パーセントポイント以上高いとは、対象物Bの希土類元素中のPrの含有量が30質量%以上であることを意味する。
しかし、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、焼結体の一部をマスクすることにより、および/または焼結体の一部を冷却し他の部分より温度を低くする等により、得られたR−T−B系焼結磁石の表面の一部分(または表面直下部の一部)にのみ本発明に係る表層部を形成する実施形態も含む。
例えば、R−T−B系焼結磁石の表面の全体ではなく、一部分(または表面直下部の一部)のみにおいて結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より20パーセントポイント以上高く、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下である実施形態も本発明に含まれる。
また、Coを含有する焼結磁石では、Coを含む金属相も存在するが、本発明の効果は、Coを含まない金属相において規定したPr濃度範囲で得られるものである。
Pr−Al拡散処理を行った後の焼結磁石は、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などの熱処理条件は、焼結体の焼結後の熱処理条件として公知の条件(例えば、500℃で3時間)を採用することができる。なお、最終的な磁石寸法の調整を研削などの機械加工等により行ってもよい。この場合、熱処理の前に行っても、後に行ってもよい。
上述の製造方法により得たR−T−B系焼結磁石は、いくつかの特徴を示す。
重希土類元素拡散処理では、上述のように焼結体の表面からDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させることから、拡散処理の条件にもよるが、このような濃化部は、得られたR−T−B系焼結磁石の中央部と比べ、表層部の方により多く存在する傾向がある。
さらに、重希土類元素拡散処理後にPrとAlを焼結体の表面から内部に拡散させたことにより、得られたR−T−B系焼結磁石は表層部の方が中央部よりPrの濃度が若干高くなる傾向がある。しかしAlは、表層部と中央部の濃度差がほとんどない。例えば厚さ5mmの焼結体に対し、厚さ方向に両面から本発明の所定範囲でPr−Al拡散処理した場合の表層部と中央部におけるAlの濃度差はほとんど確認することができない。すなわち、焼結体全体において拡散処理によりAlの質量比率が0.01パーセントポイント〜0.05パーセントポイント増加すれば焼結体の多くの領域(焼結体の全てではないが、焼結体の大部分)において0.01パーセントポイント〜0.05パーセントポイントの範囲で増加させることになるため、得られたR−T−B系焼結磁石は本願の効果を奏することになる。
そして、拡散処理では、Prは焼結体の表面から主として粒界に拡散し、結晶粒内にはあまり拡散しない。すなわち、Pr拡散処理前の焼結体がPrを実質的に含有しない場合と同様に、Prを焼結体の表面から内部に拡散させることにより、焼結体の表層部において、結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を当該結晶粒に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より20パーセトポイント以上高く、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下となる。
一方、このような場合においても前記金属相と隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、20%程度と拡散処理の前とほとんど変わらない。
ストリップキャスト法により、厚さ0.3〜0.4mmの鋳片を作製し、これを水素粉砕により大きさ約500μm以下の粉末に粗粉砕した後、ジェットミルによる微粉砕を行い、粉末の平均粒径(D50)が4.9μmの微粉末を作製した。
焼結体の組成は、Nd:28.8質量%、Pr:0.14質量%、Dy:1.5質量%、B:0.97質量%、Co:2.0質量%、Cu:0.10質量%、Al:0.23質量%、Ga:0.06質量%、Fe:残部であった。この焼結体を研削加工して、厚さ4.0×幅15.0×長さ23.0(単位はmm)の焼結体を得た。
そして、前記焼結体の15.0mm×23.0mmの面にバインダーとなるヒドロキシプロピルセルロース2%水溶液を塗布した上からPr−Al合金粉末を散布し、温風乾燥させることで焼結体の表面にPrとAlの供給源を付着させた。これを両面(前記焼結体の15.0mm×23.0mmの2つ面について)行なった後、処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Pr−Al拡散を行った。Pr−Al拡散処理の条件(供給源(供給源の組成)および散布量合計、加熱温度・時間)を表1に示す。なお、散布量合計とは、いずれの試料も同じ分量のPr−Al合金粉末を片面ずつ塗布した合計の量で(2つ面の散布量)ある。例えば試料No.3は、散布量合計が120mgであるが、この場合は、片面60mgずつ散布している。
次に、得られた焼結磁石に対し磁気特性の向上を目的として行う熱処理を500℃で3時間施した後、長さ方向の中央部から切り出し加工を行い、さらに厚さおよび幅をそれぞれ片側0.2mmづつ(両側で0.4mm)研削して厚さ3.6mm×幅14.6mm×長さ7.0mmの焼結磁石を得た。これらの焼結磁石について、ICP発光分光分析を行った。試料No.1および試料No.14の組成は、いずれもNd:28.4質量%、Pr:0.14質量%、Dy:2.0質量%、B:0.97質量%、Co:2.0質量%、Cu:0.10質量%、Al:0.23質量%、Ga:0.06質量%、Fe:残部であった。焼結体に含まれる酸素、窒素濃度を酸素、窒素用ガス分析装置で、炭素濃度を炭素用ガス分析装置でそれぞれ測定した。測定結果は、酸素:800ppm、窒素:300ppm、炭素:900ppmであった。
その他の試料についてもICP発光分光分析を行い、Pr増加量およびAl増加量を求めた。ここで、Pr増加量とは、Pr−Al拡散処理により増加したPrの量であり、Pr−Al拡散処理後のPr含有量から、重希土類元素拡散処理後の焼結体のPrの含有量(0.14質量%)を引くことにより求めることができる。同様に、Al増加量とは、Pr−Al拡散処理により増加したAlの量であり、Pr−Al拡散処理後のAl含有量から、重希土類元素拡散処理後の焼結体のAlの含有量(0.23質量%)を引くことにより求めることができる。
また、Pr−Al供給源を用いず(すなわち、Pr−Al拡散処理を行わず)Pr−Al拡散処理と同等の熱履歴を与えた試料No.14は、試料No.1に比べ、140℃におけるHcJが低下している。
実施例1と同じ組成かつ寸法の厚さ4.0mm×幅15.0mm×長さ23.0mmの焼結体を準備した。そして、前記焼結体の15.0mm×23.0mmの面にバインダーとなるヒドロキシプロピルセルロース2%水溶液を塗布した上から試料No.21用にDyメタル粉末を、試料No.22用にDy−Pr−Al合金粉末を、それぞれ散布し、温風乾燥させることで焼結体の表面に供給源を付着させた。これを両面行なった後、処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Dy拡散処理(重希土類元素拡散処理)およびDy−Pr−Al拡散処理(重希土類拡散処理とPr−Al拡散処理を同時に行うことに相当)を行った。これらの焼結体および焼結磁石へ磁気特性の向上を目的として行う熱処理を500℃で3時間施した。得られた焼結磁石に対して、実施例1と同様の加工を行い、3.6mm×幅14.6mm×長さ7.0mmに仕上げた後、ICP発光分光分析を行った。これらの拡散処理条件(供給源および散布量合計、加熱温度・時間)、Pr増加量、Al増加量の結果を表5に示す。なお、試料No.21、22の焼結磁石に含まれるDy量は、2.0質量%であった。
さらに、試料No.23として、試料No.21(Dy拡散処理した焼結体)にPr−Al合金粉末を塗布し、Pr−Al拡散処理を行なった。なお、散布量合計とは、いずれの試料も2つの面のそれぞれに同じ分量の拡散源の合金粉末を塗布した合計の量である。例えば試料No.21は、供給源の合金粉末の散布量合計が100mgであるが、この場合は、片面それぞれに50mgずつ散布している。さらに、得られた焼結磁石の磁気特性測定結果を表6に示す。表6における「HcJ(140℃)」、「Br(140℃)」は高温BHトレーサーによる140℃におけるHcJおよびBrを測定した値である。
12 金属相
14 酸化物相
20 結晶粒
Claims (9)
- 1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、
2)ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させることにより、前記金属間化合物の結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を濃化させる工程と、
3)前記工程2)の後に、プラセオジム(Pr)とアルミニウム(Al)を含むPr−Al供給源と、ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体とを容器内に配置し、該Pr−Al供給源と該焼結体とを加熱し、該Pr−Al供給源から該焼結体にプラセオジム(Pr)とアルミニウム(Al)を拡散させることにより、該焼結体の表層部の少なくとも一部において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が75%以下であり且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高くし、さらに、該焼結体に含有されるアルミニウム(Al)の質量比率を0.01パーセントポイント〜0.05パーセントポイント増加させる工程と、
を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法。
一般式:R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。) - 前記工程3)において、前記焼結体の表層部の全体に亘り、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が75%以下であり、かつ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高くすることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記表層部において前記金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が60%以下である請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記工程3)において、前記焼結体に含有されるプラセオジム(Pr)の質量比率を0.4パーセントポイント〜1.5パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記工程3)において、前記焼結体に含有されるアルミニウム(Al)の質量比率を0.01パーセントポイント〜0.03パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項1〜4のいずれ一項に記載の製造方法。
- 前記工程3)において、前記Pr−Al供給源と前記焼結体とを600℃〜850℃に加熱することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記工程3)において、前記Pr−Al供給源と前記焼結体とを600℃〜760℃に加熱することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
- 前記Pr−Al供給源は、アルミニウム(Al)が2〜6質量%のPr−Al合金であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記工程2)において、ジスプロシウム(Dy)を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)を拡散させることにより、前記金属間化合物の結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)を濃化させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
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