JP6610957B2 - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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本発明は、R−T−B系焼結磁石の製造方法に関する。
R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素のうちの少なくとも一種でありNdを必ず含む。Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む。Bは硼素である。)は永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品などに使用されている。
R−T−B系焼結磁石は主としてR14B化合物からなる主相とこの主相の粒界部分に位置する粒界相(以下、単に「粒界」という場合がある)とから構成されている。R14B化合物は高い磁化を持つ強磁性相でありR−T−B系焼結磁石の特性の根幹をなしている。
R−T−B系焼結磁石は、高温で保磁力HcJ(以下、単に「保磁力」または「HcJ」という場合がある)が低下するため不可逆熱減磁が起こるという問題がある。そのため、特に電気自動車用モータに使用されるR−T−B系焼結磁石では、高温下でも高いHcJを有する、すなわち室温においてより高いHcJを有することが要求されている。
R−T−B系焼結磁石において、R14B化合物中のRに含まれる軽希土類元素(主としてNdおよび/またはPr)の一部を重希土類元素(主としてDyおよび/またはTb)で置換すると、HcJが向上することが知られている。重希土類元素の置換量の増加に伴いHcJは向上する。
しかし、R14B化合物中の軽希土類元素RLを重希土類元素で置換するとR−T−B系焼結磁石のHcJが向上する一方、残留磁束密度Br(以下、単に「Br」という場合がある)が低下する。また、重希土類元素、特にDyなどは資源存在量が少ないうえ産出地が限定されているなどの理由から供給が安定しておらず、価格が大きく変動するなどの問題を有している。そのため、近年、ユーザーから重希土類元素をできるだけ使用することなくHcJを向上させることが求められている。
特許文献1には、融点が800℃以下となるRE−M合金をRE−T−B系焼結体に接触させ、M元素の蒸気圧曲線の50〜200℃高い温度で熱処理することによって、Dy等の重希土類元素を使用することなく保磁力を向上させることが開示されている。この熱処理により、RE−M合金の融液からRE元素が成形体内に拡散浸透する。特許文献1には、M元素が処理中に蒸発することにより磁石内部への導入が抑制され、RE元素のみを効率的に導入されることが示されている。特許文献1には、具体的な実施例として、Nd−20at%Gaを用いて850℃で15時間熱処理することが開示されている。
特許文献2には、焼結体に異方性を与えるために熱間加工を加えた成型体を、希土類金属を含む低融点合金融液に接触させて熱処理することによって、Dy,Tbなどの希少金属を多量添加することなく保磁力を向上させることが開示されている。具体的な実施例として、低融点合金融液にNd−Znを用いて成型体に接触させ、580℃で熱処理することが開示されている。
特許文献3には、希土類系の焼結磁石の表面に、Dy及びTbの少なくとも一方を含む金属蒸発材料を蒸発させ、この蒸発した金属原子を付着させる成膜工程と、熱処理を施して表面に付着した前記金属原子を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させる拡散工程を行うことによって保磁力を向上させることが開示されている。具体的な実施例として、金属蒸発材料にDy−Nd−Zn及びTb-Nd−Znを用いて850℃及び950℃で熱処理することが開示されている。
特開2014−086529号公報 国際公開第2012/036294号 国際公開第2008/032667号
特許文献1に記載されている方法は、重希土類元素を全く用いずにR−T−B系焼結磁石を高保磁力化できる点で注目に値する。しかし、高保磁力化されるのは磁石表面近傍のみであり、磁石内部の保磁力はほとんど向上していない。特許文献1に記載されているように、磁石表面から磁石内部に向かって粒界(特に二つの主相の間に存在する粒界、以下、「二粒子粒界」という場合がある)の厚さが急激に薄くなっており、そのため、粒界の厚い磁石表面近傍と磁石内部とで保磁力が大きく異なっている。そして、一般的な磁石の製造工程において磁石寸法調整のために行われる表面研削などによって、その高保磁力化した部分が除去されてしまうと、保磁力向上効果が大きく損なわれるという問題がある。
特許文献2は特許文献1と同じ出願人により提案されたものであり、対象とするR−T−B系焼結磁石が、焼結体に異方性を与えるための熱間加工を加えて得られる成型体である点で特許文献1とは異なるものの、両者とも希土類金属として主としてNdを用いた低融点合金融液(特許文献1ではRE(Nd)−M合金)を接触させる点で共通している。従って、特許文献2に記載されている方法においても、特許文献1と同様に高保磁力化されるのは磁石表面近傍のみであり、磁石内部の保磁力はほとんど向上していないと考えられる。
特許文献3に記載されている方法によれば、拡散工程を短時間で行うことができ、Dy、Tbの収率を高くできるなど、高い生産性でかつ低いコストで高い保磁力を有するR−T−B系焼結磁石が得られるものの、重希土類元素をできるだけ使用することなくBrを低下させずにHcJを向上させるという要求を満足するものではない。
本開示の実施形態は、磁石表面近傍のみならず、磁石内部の保磁力を向上させることができ(二粒子粒界を厚くすることができ)、磁石寸法調整のための表面研削によっても保磁力向上効果が大きく損なわれることがない、重希土類元素を用いずとも高い保磁力を有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供する。
本開示の限定的でない例示的なR−T−B系焼結磁石の製造方法は、R−T−B(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含み、Bの一部をCで置換することができる)系焼結磁石の製造方法であって、
R1−T1−X(R1は希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含み、27mass%以上35mass%以下であり、T1はFeまたはFeとMであり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Agから選択される一種以上であり、XはBでありBの一部をCで置換することができ、[T1]/[X]のmol比が13.0以上である)系合金焼結体を準備する工程と、
R2−Zn(R2は希土類元素のうち少なくとも一種であり必ずPrをR2全体の50mol%以上含み、R2は60mol%以上85mol%以下であり、Znは15mol%以上40mol%以下であり、Zn全体の50mol%以下をCuで置換することができる)系合金を準備する工程と、
前記R1−T1−X系合金焼結体の表面の少なくとも一部に、前記R2−Zn系合金の少なくとも一部を接触させ、真空又は不活性ガス雰囲気中、450℃以上800℃以下の温度で熱処理をする工程と、を含む。
ある実施形態において、前記R2−Zn系合金は重希土類元素を含有していない。
ある実施形態において、前記R2−Zn系合金中のR2がPrのみからなる(不可避的不純物を含む)。
ある実施形態において、前記R1−T1−X系合金焼結体における[T1]/[X]のmol比は13.0以上15.0以下である。
ある実施形態において、前記R1−T1−X系合金焼結体における[T1]/[X]のmol比は14.0以上である。
ある実施形態において、R1−T1−X系合金焼結体中の重希土類元素は1mass%以下である。
ある実施形態において、前記R1−T1−X系合金焼結体を準備する工程は、原料合金を3μm以上10μm以下に粉砕した後、磁界中で成形し、焼結を行うことを含む。
ある実施形態において、前記熱処理をする工程において、R1−T1−X系合金焼結体中のR1T114X相とR2−Zn系合金中から生成した液相とが反応することにより、焼結磁石内部の少なくとも一部にR13Zn相を生成させる。
本開示によれば、磁石表面近傍のみならず、磁石内部の保磁力を向上させることができ(二粒子粒界も厚くすることができ)、磁石寸法調整のための表面研削後によっても保磁力向上効果が大きく損なわれることがない、重希土類元素を用いずとも高い保磁力を有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することができる。
R−T−B系焼結磁石の主相と粒界相を示す模式図である。 図1Aの破線矩形領域内を更に拡大した模式図である。 熱処理工程におけるR1−T1−X系合金焼結体とR2−Zn系合金との配置形態を模式的に示す説明図である。 サンプルNo.3−2の磁石表層部を走査電子顕微鏡で観察した写真である。 サンプルNo.3−2の磁石中央部を走査電子顕微鏡で観察した写真である。 サンプルNo.3−8の磁石表層部を走査電子顕微鏡で観察した写真である。 サンプルNo.3−8の磁石中央部を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、一般的なR−T−B系焼結磁石の主相の化学量論組成であるR14Bよりも、TがリッチでB(Cを含有する場合はBとCの合計)がプアな組成([T]/[B]のmol比が14.0以上)の合金焼結体に、Prを主体とするR2と15mol以上40mol以下のZnを含有するR2−Zn系合金を接触させて熱処理する方法を見出した。この方法により、前記R2−Zn系合金から生成した液相を、焼結体中の粒界を経由して焼結体表面から内部に拡散導入する際に、R2中のPrの存在が粒界拡散を促進し、磁石内部の奥深くまでPrとZnを拡散させることが可能になることを見出した。そして、上記特定組成の合金焼結体にZnを拡散させることにより、Znを含む厚い二粒子粒界を合金焼結体の内部まで容易に形成することができることがわかった。このような構造を形成すると、主相結晶粒間の磁気的な結合が大幅に弱められるため、重希土類元素を用いずとも非常に高い保磁力を有するR−T−B系焼結磁石が得られる。さらに、これらの知見を基に、後述するように、[X]における特にCの粒界への分配比率を考慮した結果、前記合金焼結体における[T1]/[X]のmol比が13.0以上14.0未満の範囲であっても、[T1]/[X]のmol比が14.0以上の合金焼結体を用いて作製したR−T−B系焼結磁石に近い保磁力を示すことを見出した。
特許文献1及び2に記載されている方法では、拡散を受ける母材(特許文献1における成型体、特許文献2における焼結磁石)の組成はいずれも主相の化学量論組成であるR14BよりもTがプアーでBがリッチな組成であり、Cに関しても何ら考慮されていない。さらに、拡散源としてPrとZnの両方を含む合金を使用すること及び本発明の特定組成に対してPrとZnの両方を含む合金を拡散させることによる効果(厚い二粒子粒界を焼結体の内部まで容易に形成することができる)について記載も示唆もない。
まず、R−T−B系焼結磁石の製造方法の実施形態を説明する前に、R−T−B系焼結磁石の基本構造を説明する。
R−T−B系焼結磁石は、原料合金の粉末粒子が焼結によって結合した構造を有しており、主としてR14B化合物からなる主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相とから構成されている。
図1Aは、R−T−B系焼結磁石の主相と粒界相を示す模式図であり、図1Bは図1Aの破線矩形領域内を更に拡大した模式図である。図1Aには、一例として長さ5μmの矢印が大きさを示す基準の長さとして参考のために記載されている。図1Aおよび図1Bに示されるように、R−T−B系焼結磁石は、主としてR14B化合物からなる主相12と、主相12の粒界部分に位置する粒界相14とから構成されている。また、粒界相14は、図1Bに示されるように、2つのR14B化合物粒子(グレイン)が隣接する二粒子粒界相14aと、3つのR14B化合物粒子が隣接する粒界三重点14bとを含む。
主相12であるR14B化合物は高い飽和磁化と異方性磁界を持つ強磁性材料である。したがって、R−T−B系焼結磁石では、主相12であるR14B化合物の存在比率を高めることによってBを向上させることができる。R14B化合物の存在比率を高めるためには、原料合金中のR量、T量、B量を、R14B化合物の化学量論比(R量:T量:B量=2:14:1)に近づければよい。R14B化合物を形成するためのB量またはR量が化学量論比を下回ると、一般的には、粒界相14にFe相またはR17相等の異方性磁界の小さな強磁性体が生成し、HcJが急激に低下する。
以下、本開示の限定的ではない例示的な実施形態を説明する。
(1)R1−T1−X系合金焼結体を準備する工程
R1−T1−X系合金焼結体(以下、単に「焼結体」という場合がある)を準備する工程において、焼結体の組成は、R1は希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含み、27mass%以上35mass%以下であり、T1はFeまたはFeとMであり、MはGa、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、Nb、Mo、Agから選択される一種以上であり、XはBでありBの一部をCで置換することができ、[T1]/[X]のmol比が13.0以上、好ましくは13.6以上であり、更に好ましくは14.0以上である。
R1は希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む。Nd以外の希土類元素としては例えばPrが挙げられる。さらにR−T−B系焼結磁石の保磁力を向上させるために一般的に用いられるDy、Tb、Gd、Hoなどの重希土類元素を少量含有してもよい。但し、本発明によれば、前記重希土類元素を多量に用いずとも十分に高い保磁力を得ることができる。そのため、前記重希土類元素の含有量はR1−T1−X系合金焼結体全体の1mass%以下(R1−T1−X系合金焼結体中の重希土類元素が1mass%以下)であることが好ましく、0.5mass%以下であることがより好ましく、含有しない(実質的に0mass%)ことがさらに好ましい。
R1はR1−T1−X系合金焼結体全体の27mass%以上35mass%以下であることが好ましい。R1が27mass%未満では焼結過程で液相が十分に生成せず、焼結体を十分に緻密化することが困難になる。一方、R1が35mass%を超えても本発明の効果を得ることはできるが、焼結体の製造工程中における合金粉末が非常に活性になり、合金粉末の著しい酸化や発火などを生じることがあるため、35mass%以下が好ましい。R1は28mass%以上33mass%以下であることがより好ましく、28.5mass%以上32mass%以下であることがさらに好ましい。
T1はFeまたはFeとMであり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Agから選択される一種以上である。すなわち、T1はFeのみ(不可避的不純物は含む)であってもよいし、FeとMからなってもよい(不可避的不純物は含む)。T1がFeとMからなる場合、T1全体に対するFe量は80mol%以上であることが好ましい。また、T1がFeとMからなる場合は、Mは、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Agから選択される一種以上であってもよい。
XはBでありBの一部をC(炭素)で置換することができる。Bの一部をCで置換する場合、焼結体の製造工程中に積極的に添加するものだけでなく、焼結体の製造工程中で用いられる固体または液体の潤滑剤や、湿式成形の場合に用いられる分散媒などに由来して焼結体に残存するものも含まれる。潤滑剤や分散媒などに由来するCは不可避ではあるものの、一定の範囲に制御が可能(添加量や脱炭処理の調整)であるため、それらの量を考慮して、後述するT1とXとの関係を満たすようにB量や積極的に添加するC量を設定すればよい。焼結体の製造工程中に積極的にCを添加するには、例えば、原料合金を作製する際の原料としてCを添加する(Cが含有された原料合金を作製する)、あるいは、製造工程中の合金粉末(後述するジェットミルなどによる粉砕前の粗粉砕粉または粉砕後の微粉砕粉)に特定量のカーボンブラックなどのC源(炭素源)を添加するなどが挙げられる。なお、BはX全体に対して80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上がより好ましい。また、XはR1−T1−X系合金焼結体全体の0.8mass%以上1.0mass%以下が好ましい。Xが0.8mass%未満でも本発明の効果を得ることはできるが、Brの大幅な低下を招くため好ましくない。一方、Xが1.0mass%を超えると後述する[T1]/[X]のmol比を13.0以上にできず本発明の効果が得られないため好ましくない。Xは0.83mass%以上0.98mass%以下であることがより好ましく、0.85mass%以上0.95mass%以下であることがさらに好ましい。
前記T1とXとは、[T1]/[X]のmol比が14.0以上となるように設定することが好ましい。すなわち、この条件は、一般的なR−T−B系焼結磁石の主相の化学量論組成であるR14Bの[T]/[B]のモル比(=14.0)と同等もしくはTがリッチでBがプアであることを示している。発明者らは、主相の化学量論組成であるR14BよりもTがリッチでBがプア(もしくは[T]と[B]のmol比が化学量論組成と同等)である組成の合金焼結体に対して、R2−Zn系合金を拡散させることにより、磁石内部の奥深くまでPrとZnが拡散してR−T−Zn相(例えばR13Zn相)が生成され、磁石表面近傍と磁石内部の二粒子粒界を厚くすることができることを見出した。そして、さらに研究を重ねた結果、一般的なR−T−B系焼結磁石の主相の化学量論組成であるR14Bの[T]/[B]のmol比よりもTがプアでBがリッチであっても、[T1]/[X]のmol比が13.0以上であれば、14.0以上の合金焼結体を用いた際に得られる保磁力を超えることはできないものの、それに近い保磁力が得られることを見出した。これは、[T1]/[X]のmol比が14.0以上という設定は、Xを構成するBとCが全て主相の形成に使われることを想定したものであるが、一般的にX(特にC)はその全てが主相の形成に使われる訳ではなく粒界相中にも存在する。従って、実際は[X]を若干多め(TがプアでBがリッチ)に設定しても、つまり、[T1]/[X]のmol比を13.0以上としても、高い保磁力が得られることを見出した。主相と粒界相へのXの分配比率を正確に求めることは困難であるが、[T1]/[X]のmol比が13.0以上を満たしているとき、主相形成に使われているXのmol比を[X’](このとき前記[X’]≦[X]になる)とすると、[T1]/[X’]が14.0以上となっていると考えられる。Cは上述したように積極的に添加しなくても焼結体の製造工程中において不可避的に含有されるものであるため、焼結体に含有されるC量を考慮して[T1]/[X]のmol比を13.0以上にする必要がある。[T1]/[X]のmol比が13.0未満であると、前記[T1]/[X’]を14.0以上とすることが出来ない恐れがあり、最終的に得られるR−T−B系焼結磁石において、磁石表面近傍と磁石内部の二粒子粒界を厚くすることができず、重希土類元素を用いることなく高い保磁力を有するR−T−B系焼結磁石を得ることが困難となる恐れがある。なお、上述したように[T1]/[X]のmol比は13.0以上で高い保磁力が得られるが、さらに高い保磁力を得るため、および、量産工程で安定的に高い保磁力を得るためには、[T1]/[X]のmol比を13.6以上とすることが好ましく、13.8以上とすることがより好ましく、14.0以上とすることがさらに好ましい。また、[T1]/[X]のmol比が15.0を超えるとXを構成するB量が少なすぎて保磁力が大幅に低下する恐れがあるため、[T1]/[X]のmol比は15.0以下であることが好ましい。
R1−T1−X系合金焼結体は、Nd−Fe−B系焼結磁石に代表される一般的なR−T−B系焼結磁石の製造方法を用いて準備することができる。一例を挙げると、ストリップキャスト法などで作製された原料合金を、ジェットミルなどを用いて3μm以上10μm以下に粉砕した後、磁界中で成形し、900℃以上1100℃以下の温度で焼結することにより準備することができる。なお、得られた焼結体においては保磁力が非常に低くても差し支えない。原料合金の粉砕粒径(気流分散式レーザー回折法による測定で得られる体積中心値=D50)が3μm未満では粉砕粉を作製するのが非常に困難であり、生産効率が大幅に低下するため好ましくない。一方、粉砕粒径が10μmを超えると最終的に得られるR−T−B系焼結磁石の結晶粒径が大きくなり過ぎ、厚い二粒子粒界が形成されても高い保磁力を得ることが困難となるため好ましくない。
R1−T1−X系合金焼結体は、前記の各条件を満たしていれば、一種類の原料合金(単一原料合金)から作製してもよいし、二種類以上の原料合金を用いてそれらを混合する方法(ブレンド法)によって作製してもよい。また、R1−T1−X系焼結体には、O(酸素)、N(窒素)など、原料合金に存在したり製造工程で導入される不可避的不純物を含んでいてもよい。
また、R1−T1−X系合金焼結体を準備する際には、焼結後に、400℃以上、焼結温度未満の温度でさらに熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことで、最終的なR−T−X系焼結磁石の磁気特性をさらに向上させることができる場合がある。特に、R1−T1−X系合金焼結体のT1中にM元素としてSi、Ga、Al、Zn、Agのうち少なくとも一種を0.1mass%以上含むときには、700℃以上1000℃以下の高温熱処理を行うことが好ましい。この様な高温熱処理は焼結体にGaを含むときに特に有効である。
(2)R2−Zn系合金を準備する工程
R2−Zn系合金を準備する工程において、R2−Zn系合金の組成は、R2は希土類元素のうち少なくとも一種であり必ずPrをR2全体の50mol%以上含み、R2は60mol%以上85mol%以下であり、Znは15mol%以上40mol%以下であり、Zn全体の50mol%以下をCuで置換することができる。R2は70mol%以上85mol%以下であることが好ましく、70mol%以上85mol%以下であることがさらに好ましい。より高い保磁力を得ることが出来るからである。
R2は希土類元素のうち少なくとも一種であり必ずPrをR2全体の50mol%以上含む。なお、本発明における「PrをR2全体の50mol%以上含む」とは、R2−Zn系合金中のRの含有量(mol%)を100%とし、そのうち50%以上がPrであることを意味する。例えばR2−Zn系合金中のR2が60mol%であればPrを30mol%以上含有する。PrがR2全体の50mol%未満であると、最終的に得られるR−T−B系焼結磁石において、磁石内部の二粒子粒界を厚くすることができず、重希土類元素を用いることなく高い保磁力を有するR−T−B系焼結磁石を得ることができない。好ましくは、R2−Zn系合金中のR2はPrのみからなる。より高い保磁力を得ることが出来るからである。R2にはR−T−B系焼結磁石の保磁力を向上させるために一般的に用いられるDy、Tb、Gd、Hoなどの重希土類元素を少量含有してもよい。但し、本発明によれば、前記重希土類元素を多量に用いずとも十分に高い保磁力を得ることができる。そのため、前記重希土類元素の含有量はR2−Zn系合金全体の10mol%以下(R2−Zn系合金中の重希土類元素が10mol%以下)であることが好ましく、5mol%以下であることがより好ましく、含有しない(実質的に0mol%)ことがさらに好ましい。R2−Zn系合金のR2に前記重希土類元素を含有する場合も、R2の50mol%以上がPrであることが好ましく、重希土類元素を除いたR2がPrのみ(不可避的不純物は含む)であることがより好ましい。また、Znは15mol%以上40mol%以下であり、Zn全体の50mol%以下をCuで置換することができる。なお、本発明における「Zn全体の50mol%以下をCuで置換することができる」とは、R2−Zn系合金中のZnの含有量(mol%)を100%とし、そのうち50%以下をCuで置換することができることを意味する。例えば、R2−Zn系合金中のZnが30mol%であれば、Cuを15mol%以下まで置換することができる。
R2−Zn系合金には、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Agなどが少量含まれていてもよい。また、Feは少量含まれてもよいし、Feを20質量%以下含有しても本発明の効果を得ることができる。但し、Feの含有量が20質量%を超えると保磁力が低下する恐れがある。また、O(酸素)、N(窒素)、C(炭素)などの不可避的不純物を含んでいてもよい。
R2−Zn系合金は、一般的なR−T−B系焼結磁石の製造方法において採用されている原料合金の作製方法、例えば、金型鋳造法やストリップキャスト法や単ロール超急冷法(メルトスピニング法)やアトマイズ法などを用いて準備することができる。また、R2−Zn系合金は、前記によって得られた合金をピンミルなどの公知の粉砕手段によって粉砕されたものであってもよい。
(3)熱処理する工程
前記によって準備したR1−T1−X系合金焼結体の表面の少なくとも一部に、前記によって準備したR2−Zn系合金の少なくとも一部を接触させ、真空または不活性ガス雰囲気中、450℃以上800℃以下の温度で熱処理する。これにより、R2−Zn系合金から液相が生成し、その液相が焼結体中の粒界を経由して焼結体表面から内部に拡散導入されて、主相であるR1T114X相の結晶粒間にZnを含む厚い二粒子粒界を焼結体の内部まで容易に形成することができ、主相結晶粒間の磁気的な結合が大幅に弱められる。そのため、重希土類元素を用いずとも非常に高い保磁力を有するR−T−B系焼結磁石が得られる。熱処理する温度は、好ましくは、480℃以上560℃以下である。より高い保磁力を有することができる。
なお、一般的に、磁石寸法調整のための表面研削を行うと、焼結体表面から200μm程度の領域が除去されるため、厚い二粒子粒界がR1−T1−X系合金焼結体の表面から250μm程度の領域を含んでいれば、本発明の効果を得ることができる。ただし、このような場合(厚い二粒子粒界が形成されている領域が焼結体表面から250μm程度の場合)には、熱処理後のR−T−X系焼結体中央付近のHcJが十分向上しないために、減磁曲線の角形性が悪化する可能性がある。このため、R1−T1−X系合金焼結体中央付近のHcJが、R2−Zn系合金と接触せずに450℃以上600℃以下の温度で熱処理(一般的なR−T−B系焼結磁石の保磁力を向上させるための熱処理)を行ったときに、HcJ≧1200kA/mが得られることが好ましく、HcJ≧1360kA/mが得られることがさらに好ましい。このような焼結体を使うことで、R2−Zn合金の導入量が小さくても磁石全体として高いHcJと優れた減磁曲線の角形性を得ることが可能となり、結果、高いBrと高いHcJの両立が容易に実現できる。
R1−T1−X系合金焼結体中央付近のHcJが、R2−Zn系合金と接触せずに450℃以上600℃以下の温度で熱処理を行ったときに、HcJ≧1200kA/mが得られるR1−T1−X系焼結体は、T1にGaを含むときに容易に得ることができる。R1−T1−X系焼結体全体に対するGaの含有量は0.05質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.8質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上0.6質量%以下がさらに好ましい。
前記の熱処理する工程において、R1−T1−X系合金焼結体の表面の少なくとも一部に、R2−Zn系合金のみを接触させてもよいし、例えば、R2−Zn系合金の粉末を有機溶媒などに分散させ、これをR1−T1−X系合金焼結体表面に塗布する方法や、R−Zn系合金の粉末をR1−T1―X系合金焼結体表面に散布する方法などを採用してもよい。
R2−Zn系合金粉末を、R1−T1−X系合金焼結体表面の少なくとも一部に散布および/または塗布することにより、より簡便にR1−T1−X系合金焼結体表面の少なくとも一部に前記R−Zn系合金の少なくとも一部を接触させることができる。
R1−T1−X系合金焼結体へのR2−Zn系合金から生成した液相の導入量は、保持温度や保持時間により制御することができる。焼結体の表面にR2−Zn系合金を散布および/または塗布する場合には、散布量または塗布量を制御することが好ましい。R2−Zn系合金の散布または塗布量は、R1−T1−X系合金焼結体100質量部に対して0.2質量部以上5.0質量部以下とすることが好ましく、0.2質量部以上3.0質量部以下とすることがより好ましい。このような条件とすることで、高いBrと高いHcJの両立が容易に実現できる。なお、R1−T1−X系合金焼結体の表面の一部にのみR2−Zn系合金を散布または塗布する場合には、配向方向に垂直な面に散布または塗布することが好ましい。
熱処理は、真空または不活性ガス雰囲気中、450℃以上800℃以下の温度で保持した後冷却する。450℃以上800℃以下の温度で熱処理を行うことにより、R2−Zn系合金の少なくとも一部が溶解し、生成した液相が焼結体表面から内部に焼結体中の粒界を経由して拡散導入されて、厚い二粒子粒界を形成させることが可能となる。熱処理温度が450℃未満であると液相が全く生成せず厚い二粒子粒界が得られない。また、800℃を超えても厚い二粒子粒界を形成することが困難となる。なお、800℃を超える温度で熱処理を行った場合に、厚い二粒子粒界を形成することが困難となる理由は今のところ定かではないが、焼結体に導入された液相による主相の溶解や、R13Zn相(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありPrおよび/またはNdを必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む)の生成などの反応速度が何らかの関与をしていると思われる。なお、熱処理時間はR1−T1−X系合金焼結体の組成や寸法、R2−Zn系合金の組成、熱処理温度などによって適正値を設定するが、5分以上10時間以下が好ましく、10分以上7時間以下がより好ましく、30分以上5時間以下がさらに好ましい。
前記の熱処理する工程によって得られたR−T−B系焼結磁石は、切断や切削など公知の機械加工を行ったり、耐食性を付与するためのめっきなど、公知の表面処理を行うことができる。
主相の結晶粒間に厚い二粒子粒界が形成されて、非常に高い保磁力が得られるメカニズムについては未だ不明な点もある。現在までに得られている知見を基に本発明者らが考えるメカニズムについて以下に説明する。以下のメカニズムについての説明は本発明の技術的範囲を制限することを目的とするものではないことに留意されたい。
前記の通り、R1−T1−X系合金焼結体の組成を化学量論組成(R1T114X)よりもT1がリッチでXがプアにしておくことで、熱処理により厚い二粒子粒界が容易に得られるようになる。これは、前記の組成域で、R2−Zn合金から生成した液相が、R2中のPrの存在が粒界拡散を促進し、焼結体内部の二粒子粒界にまで拡散導入され、Znが二粒子粒界に導入されることにより焼結体中の二粒子粒界近傍の主相が溶解し、これらが450℃以上800℃以下の熱処理により容易にR13Zn相を生成して安定化される。これにより、冷却後も厚い二粒子粒界を維持することができ、非常に高い保磁力の発現につながると考えられる。なお、先述したとおり、一般的にXは全て主相形成に使われないため、[T1]/[X]が13.0以上であれば、厚い二粒子粒界相の形成を維持することができ、高い保磁力を発現する。
これに対し、R1−T1−X系合金焼結体の組成が化学量論組成(R1T114X)よりもT1がプアでXがリッチ、特に[T1]/[X]が13.0未満であると、厚い二粒子粒界が得られ難くなる。これは、一旦溶解した主相(R1T114X相)が再び主相として再析出しやすくなり、これが、粒界が厚くなるのを妨げているからであると考えられる。
なお、前記のR13Zn相(R13Zn化合物)において、Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありPrおよび/またはNdを必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む。R13Zn化合物は代表的にはPrFe13Zn化合物である。また、R13Zn化合物はLaCo11Ga型結晶構造を有する。R13Zn化合物はその状態によってはR13−δZn1+δ化合物になっている場合がある。なお、R−T−B系焼結磁石中にCu、Al、GaおよびSiが含有される場合、R13−δ(Zn1−a−b−c−dCuaAlbSicGa1+δになっている場合がある。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実験例1
[R1−T1−X系合金焼結体の準備]
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、フェロカーボン合金、電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、焼結体がおよそ表1に示す符号1−Aから1−Iの組成(AlとSiとMnを除く)となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚さ0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を水素粉砕した後、550℃まで真空中で加熱後冷却する脱水素処理を施し粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100mass%に対して0.04mass%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粉砕粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、粉砕粒径D50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた体積中心値(体積基準メジアン径)である。焼結体におけるC量を調整するために、得られた微粉砕粉の一部にカーボンブラックを添加した。
前記微粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100mass%に対して0.05mass%添加、混合した後磁界中で成形し成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交するいわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を、真空中、1000℃以上1040℃以下(サンプル毎に焼結による緻密化が十分起こる温度を選定)で4時間焼結した後急冷し、R1−T1−X系合金焼結体を得た。得られた焼結体の密度は7.5Mg/m3 以上であった。得られた焼結体の成分、ガス分析(C(炭素量))の結果を表1に示す。なお、表1における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法によるガス分析装置を使用して測定した。なお、焼結体の酸素量をガス融解−赤外線吸収法で測定した結果、すべて0.4mass%前後であることを確認した。表1における「[T1]/[X]」は、T1を構成する各元素(不可避の不純物を含む、本実験例ではAl、Si、Mn)に対し、分析値(mass%)をその元素の原子量で除したものを求め、それらの値を合計したもの(a)と、BおよびCの分析値(mass%)をそれぞれの元素の原子量で除したものを求め、それらの値を合計したもの(b)との比(a/b)である。以下の全ての表も同様である。なお、表1の各組成を合計しても100mass%にはならない。これは、前記の通り、各成分によって分析方法が異なるため、さらには、表1に挙げた成分以外の成分(例えばO(酸素)やN(窒素)など)が存在するためである。その他表についても同様である。
[R2−Zn系合金の準備]
Prメタル、Znメタルを用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、合金がおよそ表2に示す符号1−aの組成になるように配合し、それらの原料を溶解して、単ロール超急冷法(メルトスピニング法)により、リボンまたはフレーク状の合金を得た。得られた合金を乳鉢を用いてアルゴン雰囲気中で粉砕した後、目開き425μmの篩を通過させ、R2−Zn系合金を準備した。得られたR2−Zn系合金の組成を表2に示す。
[熱処理]
表1の符号1−Aから1−IのR1−T1−X系合金焼結体を切断、切削加工し、11.0mm×5.0mm×4.4mm(配向方向)の直方体とした。次に、図2に示すように、ニオブ箔により作製した処理容器3中に、主にR1−T1−X系合金焼結体1の配向方向(図中の矢印方向)と垂直な面がR2−Zn系合金2と接触するように、表2に示す符号1−aのR2−Zn系合金を、符号1−Aから1−IのR1−T1−X系合金焼結体のそれぞれの上下に配置した。
その後、管状流気炉を用いて、200Paに制御した減圧アルゴン中で、表3に示す熱処理温度及び時間で熱処理を行った後、冷却した。熱処理後の各サンプルの表面近傍に存在するR2−Zn系合金の濃化部を除去するため、表面研削盤を用いて各サンプルを全面を0.2mmずつ切削加工し、4.0mm×4.0mm×4.0mmの立方体状のサンプル(R−T−B系焼結磁石)を得た。
[サンプル評価]
得られたサンプルを、BHトレーサーにより保磁力(HcJ)を測定した。測定結果を表3に示す。表3の通り、R1−T1−X系合金焼結体における[T1]/[X]のmol比を13.0以上としたときに高いHcJが得られた。特に14.0以上では1600kA/mを超える極めて高いHcJが得られた。
表3に示すサンプルのうち、[T1]/[X]のmol比が13.0以上である符号1−AのR1−T1−X系合金焼結体を用いたサンプルNo.1−1(本発明例)と[T1]/[X]のmol比が13.0未満である符号1−DのR1−T1−X系合金焼結体を用いたサンプルNo.1−4(比較例)の断面を走査電子顕微鏡(SEM:日本電子製JCM−6000)で観察した。その結果、サンプルNo.1−1(本発明例)では、磁石表面近傍から磁石の中央部まで100nm以上の厚い二粒子粒界が形成されていた。これに対し、サンプルNo.1−4(比較例)では、厚い二粒子粒界の形成は磁石表面近傍のみにとどまっていた。さらに、本発明例であるサンプルNo.1−1の断面に対しSEM付属装置によるエネルギー分散X線分光分析(EDS)を実施した結果、磁石中央部の粒界からもZnが検出されるとともに、その一部は含有量から、R13Zn相と解釈された。
実験例2
焼結体がおよそ表4に示す符号2−Aの組成(AlとSiとMnを除く)となるように配合する以外は実験例1と同様の方法でR1−T1−X系合金焼結体を複数個作製した。得られた焼結体の成分、ガス分析(C(炭素量))の結果を表4に示す。
合金がおよそ表5に示す符号2−aから2−jの組成となるように配合する以外は実験例1と同様の方法でR2−Zn系合金を作製した。得られたR2−Zn系合金の組成を表5に示す。
複数個のR1−T1−X系合金焼結体を実験例1と同様に加工した後、実験例1と同様に符号2−aから2−jのR2−Zn系合金と符号2−AのR1−T1−X系合金焼結体とが接触するよう配置し、実験例1と同様に熱処理および加工を行い、サンプル(R−T−B系焼結磁石)を得た。得られたサンプルを実験例1と同様な方法により測定し、保磁力(HcJ)を求めた。その結果を表6に示す。表6の通り、R2−Zn系合金のR2を60mol%以上85mol%以下としたときに高いHcJが得られた。また、R2として、PrがR2全体に対して50mol%以上とした本発明例はいずれも高いHcJが得られたのに対し、PrがR2全体の50mol%未満であるサンプルNo.2−9及び2−10は高いHcJが得られなかった。
実験例3
焼結体がおよそ表7に示す符号3−Aの組成(AlとSiとMnを除く)となるように配合する以外は実験例1と同様の方法でR1−T1−X系合金焼結体を作製した。得られた焼結体の成分、ガス分析(C(炭素量))の結果を表7に示す。
合金がおよそ表8に示す符号3−aから3−dの組成となるように配合する以外は実験例1と同様の方法でR2−Zn系合金を作製した。得られたR2−Zn系合金の組成を表8に示す。
R1−T1−X系合金焼結体を実験例1と同様に加工した後、実験例1と同様に符号3−aから3−dのR2−Zn系合金と符号3−AのR1−T1−X系合金焼結体とが接触するよう配置し、表9に示す熱処理温度とする以外は実験例1と同様に熱処理および加工を行い、サンプル(R−T−B系焼結磁石)を得た。得られたサンプルを実験例1と同様な方法により測定し、保磁力(HcJ)を求めた。その結果を表9に示す。表9の通り、熱処理温度が450℃以上800℃以下のときに高いHcJが得られた。特に熱処理温度が480℃から560℃のときにさらに高いHcJが得られた。
表9に示すサンプルNo.3−2(本発明例)及び3−8(比較例)の断面を走査電子顕微鏡(SEM:日本電子製JCM−6000)で観察した。その結果を図3〜図6示す。図3はサンプルNo.3−2の磁石表面近傍を観察した写真であり、図4はサンプルNo.3−2の磁石中央部を観察した写真である。また、図5はサンプルNo.3−8の磁石表面近傍を観察した写真であり、図6はサンプルNo.3−8の磁石中央部を観察した写真である。図3〜図6に示すように、サンプルNo.3−2(本発明例)では、図3に示す磁石表面近傍及び図4に示す磁石中央部(表面から2.0mm以上の距離)で100nm以上の厚い二粒子粒界が形成されているのに対し、サンプル3−8(比較例)では、図6に示す磁石中央部(表面から2.0mm以上の距離)において100nm以上の厚い二粒子粒界が得られていない。
本発明により得られたR−T−B系焼結磁石は、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品などに好適に利用することができる。
1 R1−T1−X系合金焼結体
2 R2−Zn系合金
3 処理容器

Claims (8)

  1. R−T−B(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含み、Bの一部をCで置換することができる)系焼結磁石の製造方法であって、
    R1−T1−X(R1は希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含み、27mass%以上35mass%以下であり、T1はFeまたはFeとMであり、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Agから選択される一種以上であり、XはBでありBの一部をCで置換することができ、[T1]/[X]のmol比が13.0以上である)系合金焼結体を準備する工程と、
    R2−Zn(R2は希土類元素のうち少なくとも一種であり必ずPrをR2全体の50mol%以上含み、R2は60mol%以上85mol%以下であり、Znは15mol%以上40mol%以下であり、Zn全体の50mol%以下をCuで置換することができる)系合金を準備する工程と、
    前記R1−T1−X系合金焼結体の表面の少なくとも一部に、前記R2−Zn系合金の少なくとも一部を接触させ、真空又は不活性ガス雰囲気中、450℃以上800℃以下の温度で熱処理をする工程と、
    を含むR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記R2−Zn系合金は重希土類元素を含有していない請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記R2−Zn系合金中のR2がPrのみからなる(不可避的不純物を含む)請求項1又は2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  4. 前記R1−T1−X系合金焼結体における[T1]/[X]のmol比は13.0以上15.0以下である、請求項1から3のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  5. 前記R1−T1−X系合金焼結体における[T1]/[X]のmol比は14.0以上である、請求項1から4のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  6. 前記R1−T1−X系合金焼結体中の重希土類元素は1mass%以下である請求項1から5のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  7. 前記R1−T1−X系合金焼結体を準備する工程は、原料合金を3μm以上10μm以下に粉砕した後、磁界中で成形し、焼結を行うことを含む、請求項1から6のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  8. 前記熱処理をする工程において、R1−T1−X系合金焼結体中のR1T114X相とR2−Zn系合金中から生成した液相とが反応することにより、焼結磁石内部の少なくとも一部にR13Zn相を生成させる請求項1から7のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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