JP2014130888A - R−t−b系焼結磁石およびその製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温において、より高い固有保磁力HcJを発現することができるR−T−B系焼結磁石およびその製造方法を提供する。
【解決手段】希土類元素と、Feと、Bとを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石であって、Ndと、DyおよびTbの少なくとも一方と、Prとを含み、前記金属間化合物の結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方が濃化しており、R−T−B系焼結磁石の表層部の少なくとも一部分において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が、75%以下で且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率よりも10パーセント以上高くする。一般式:R14B(ここで、RはNdが質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、TはFeまたはFeとCo。)
【選択図】図2

Description

本発明は、R−T−B系焼結磁石およびその製造方法、とりわけ希土類元素としてネオジムを含むR−T−B系焼結磁石およびその製造方法に関する。
14B型化合物を主相とし、主相結晶粒の結晶粒界にRリッチ相(希土類元素リッチ相)を有するR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素(イットリウム(Y)を含む概念)の少なくとも1種でネオジム(Nd)を必ず含み、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)、Bはホウ素を意味する)は、高い残留磁束密度B(以下、単に「B」という場合がある)と高い固有保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」という場合がある)とを有し、これまでに知られている各種磁石の中でも最も高い磁気エネルギー積を示すという利点に加えて、比較的安価であるという利点も有している。
このため、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ、ハイブリッド自動車用モータ、電気自動車用モータ等の各種モータならびに家電製品等など多種多様な用途に用いられている。
このように、用途が広がるにつれ、例えばハイブリッド自動車用モータ、電気自動車用モータ等の各種モータ等に用いる場合等、例えば140℃〜180℃のような高温下に曝される用途への適用が拡がっている。
しかし、R−T−B系焼結磁石は、高温になるとHcJが低下し、不可逆熱減磁が起こるという問題がある。
このため、例えば特許文献1〜3に示すようにR−T−B系焼結磁石の表面から内部に重希土類元素(以下、重希土類元素のことを「RH」という場合がある)であるジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を拡散させて主相結晶粒の粒界近傍(主相結晶粒の外殻部)にジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を濃化させて高温でも高いHcJを得る方法が採られている。
また、特許文献4〜6には、ジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)のようなRH以外に、プラセオジム(Pr)のような軽希土類元素を表面から内部に拡散させることが記載されている。
WO2007/102391号公報 WO2011/007758号公報 WO2006/043348号公報 特開2005−11973号公報 特開2007−287875号公報 特開2008−263179号公報
特許文献1〜3に記載の方法によりHcJを向上させることができる。しかし、多くの用途でよりいっそうの小型化・軽量化と高効率化が求められており、高温においてより高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石が強く求められている。
一方、引例4〜6が開示する方法については、従来、Nd原子の一部をPr原子に置換することにより、室温ではHcJ向上の効果があると想像されるが、しかし高温でのHcJ向上の効果は極めて限定的であると広く考えられていた。
これは、例えばRFe14BのRがPrの場合とNdの場合とで異方性磁界(この値が大きいほどHcJが大きくなる)の温度依存性を比べた実験結果(例えば、J.Appl.Phys.,59,873(1986)に示されるグラフ)からも理解できる。すなわち、室温(300K)ではRがPrの場合の方が、RがNdの場合より高い異方性磁界の値を示すが、例えば160℃(433K)のような高温では、RがNdの場合の方が、RがPrの場合より高い異方性磁界の値を示している。
このため、高温におけるHcJを向上させることを目的にPrを添加することは好ましくないと考えられていた。
従って、表面から内部にDyまたはTbを拡散させて主相結晶粒の粒界近傍にDyまたはTbを濃化させる方法が上述の問題を有するにもかかわらず、R−T−B系焼結磁石において高温でより高いHcJを確保できる実用的な数少ない方法であった。そして、高温において、この方法で得られるHcJと比べて、より高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を用いたいとの要求は益々高くなっていた。
そこで、本発明は、高温において、より高い固有保磁力HcJを発現することができるR−T−B系焼結磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石であって、ネオジム(Nd)と、ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方と、プラセオジム(Pr)とを含み、前記金属間化合物の結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方が濃化しており、R−T−B系焼結磁石の表層部の少なくとも一部分において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が、75%以下であり且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも10パーセントポイント以上高いことを特徴とするR−T−B系焼結磁石である。
一般式: R14
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。)
本発明の態様2は、前記結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)が濃化していることを特徴とする態様1に記載のR−T−B系焼結磁石である。
本発明の態様3は、前記金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が、該金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高いことを特徴とする態様1または2に記載のR−T−B系焼結磁石である。
本発明の態様4は、1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、2)ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させることにより、前記金属間化合物の結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を濃化させる工程と、3)前記工程2)の後に、プラセオジム(Pr)を含むプラセオジム供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該プラセオジム供給源と該焼結体とを加熱し、該プラセオジム供給源から該焼結体にプラセオジム(Pr)を拡散させることにより、該焼結体の表層部の少なくとも一部分において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が、10%〜75%で且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも10パーセントポイント以上高くなるようにする工程と、を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
一般式: R14
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。)
本発明の態様5は、前記工程2)において、前記焼結体のプラセオジム(Pr)含有量が0.2〜1.5質量%増加することを特徴とする態様4に記載の製造方法である。
本発明の態様6は、前記工程3)において、前記焼結体と前記プラセオジム供給源とを600℃〜800℃に加熱することを特徴とする、態様4または5に記載の製造方法である。
本発明により、高温でより高いHcJを発現するR−T−B系焼結磁石およびその製造方法を提供することができる。
図1(a)は、重希土類拡散処理(Dy拡散処理)を行った後の焼結体の透過電子顕微鏡観察結果(DF−STEM像)であり、図1(b)は、図1(a)に示した領域のDy元素のマッピング像である。 図2は、希土類焼結磁石の表層部におけるDF−STEM像を示す写真である。 図3は、TEM−EDXによる元素マッピング像を示す写真である。 図4は、金属相と酸化物相の領域を示すDF−STEM像である。 図5は、金属相および結晶粒の点分析位置を示したDF−STEM像である。
本発明者らは鋭意検討した結果、希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記(1)式で表される金属間化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石において、高温で高いHcJを得るために上述したように従来から行われている手法、すなわち、主相の結晶粒(以下、単に「結晶粒」という場合、および「主相結晶粒」という場合がある。)の外殻部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を濃化させることを目的に、焼結磁石の表面から内部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させることに加えて、軽希土類元素であるプラセオジム(Pr)を以下に詳細を示すように拡散させることにより例えば140℃のような高温において、より高いHcJを発現するR−T−B系焼結磁石を得ることができることを見出した。

一般式: R14B (1)
Prについては、R−T−B系焼結磁石の表層部の少なくとも一部分において、主相結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が、75%以下であり且つ当該金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率よりも10パーセントポイント以上(好ましくは20パーセントポイント以上)高くなるように拡散させることが重要である。
すなわち、重希土類元素であるDyおよび/またはTbを焼結体の表面から拡散させ、主相結晶粒の外殻部にこれら重希土類元素を濃化させるという従来から知られていた手段に加えて、従来は、高温で高いHcJ向上効果を得ることは困難と考えられていたPrを焼結体の表面から粒界拡散させ、焼結体の表層部における粒界の金属相にPrを適切な濃度範囲で含有させることで、高温でのHcJをさらに向上できることを見出したものである。
本願発明者らは、更に、DyおよびTbの少なくとも一方の拡散と、Prの拡散について、まず、DyおよびTbの少なくとも一方を拡散する工程を実施した後、Prを拡散するための工程を実施することで、DyおよびTbの少なくとも一方と、Prとをそれぞれ上記の所望の状態に確実に拡散できることを見出したのである。
重希土類元素であるDyおよび/またはTbをR−T−B系焼結磁石に添加すると、同焼結磁石の主相結晶粒が含有するNd等の軽希土類元素がDyおよび/またはTbにより置換されるため、室温および例えば140℃のような高温において、異方性磁界が向上する。しかし、焼結に用いる粉末を得るための合金材を溶製する段階でDyおよび/またはTbを添加すると、結晶粒内部にまでにDyおよび/またはTbが存在してしまうことから、得られた焼結磁石の残留磁束密度Bが低下してしまう。
そこで、焼結体を得た後、表面からDyおよび/またはTbを拡散させて、焼結体(希土類焼結磁石)の表層部から内部に向かってDyおよびTbの少なくとも一方の濃度が減少するように濃度勾配を形成することにより、結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方を濃化させている。
これにより高温で高いHcJが得られると共に、残留磁束密度Bの低下を確実に抑制できる。
なお、本明細書において、「結晶粒の外殻部」とは、結晶粒に隣接した結晶粒界および結晶粒の表層部の両方を含む概念である。従って、例えば、Dyが結晶粒の外殻部に濃化するとは、結晶粒界または結晶粒の表層部の少なくとも一方においてDyが濃化している(結晶粒の中央部に比べて濃度が高くなっている)ことを意味する。このような結晶粒の外殻部での濃化は、例えば、透過電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)より測定可能である。TEM−EDXによりDyおよびTbの元素マッピング像を得た場合、DyおよびTbの濃化が結晶粒界、結晶粒の表層部および結晶粒界と結晶粒の表層部の両方のいずれで生じているかが分からない場合があるが、このような場合であっても「結晶粒の外殻部で濃化している」に該当する。
なお、本願発明は、このような、DyおよびTbの濃化に加えて、粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が、75%以下であり且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率よりも10パーセントポイント以上高いことを特徴としているが、この特徴についてもTEM−EDX(例えば、金属相についてはその中心部を点分析)により確認することができる。
本願発明のR−T−B系焼結磁石の主相は、一般式:R14Bで表される金属間化合物である。一般に、焼結磁石などの磁性材料においては、その磁性材料の特性(物性、磁気特性など)を決定づけている化合物が「主相」と定義される。本発明における主相、すなわち、一般式:R14Bで表される金属間化合物も、本発明のR−T−B系焼結磁石の物性、磁気特性などの基本部分を決定づけている。また、本明細書において「主相結晶粒」とは、前記主相から構成される結晶粒のことである。主相結晶粒は、R−T−B系焼結磁石の断面観察において、面積比で50%以上、好ましくは70%以上存在している。面積比は、R−T−B系焼結磁石の代表的な部分(または特異でない部分)の断面において、面積0.05mm以上の部分において測定し求める。
上述のように、従来は、Ndを主な希土類元素とするR−T−B系焼結磁石においてPrを添加すると、高温で高いHcJを得ることは困難と考えられていた。焼結体の表面からPrを粒界拡散させ、焼結体の表層部における粒界の金属相にPrを適切な範囲に含有させることで、高温でのHcJが向上するという本発明は従来の常識を覆すものである。
従って、焼結体の表面からPrを粒界拡散させた本発明に係るR−T−B系焼結磁石が高温で高いHcJを有するメカニズムについては、未だ不明な点もある。現在までに得られている知見を基に本願発明者らが考えるメカニズムについて以下に説明する。以下のメカニズムについての説明は本発明の技術的範囲を制限することを目的とするものではないことに留意されたい。
R−T−B系焼結磁石では、その磁化方向と反対方向の外部磁界を受けて磁化が反転する場合、磁化の反転は主相結晶粒内で起こる。磁化反転の過程で、ある主相結晶粒内で磁化が反転し、それが隣接する主相結晶粒に伝搬していくことが磁石全体の磁化反転の一要因となる。つまり、主相結晶粒間の磁気的結合がHcJを決定する一因となる。そして、このような隣接する主相結晶粒への伝搬を、Prを所定量含有する金属相が結晶粒界に存在することにより抑制させることができると考えられる。その結果、磁石全体のHcJを高めることができると考えられる。
しかし、その一方で、結晶粒界にPrの濃度が高い濃化領域を形成するように多量のPrを焼結体表面から内部に拡散させると、その一部は結晶粒界に留まることができずに結晶粒内に入り、結晶粒の外殻部にPrの濃度が高い領域を広範囲に亘り形成すると考えられる。
そして、上述したように高温においては、RFe14B化合物のRがNdの場合の方が、RがPrの場合より高い異方性磁界の値を示している(HcJが高い)ことからも判るように結晶粒の外殻部にPrの濃度が高い領域が広範囲に亘り形成されることにより、磁石表面からPrを拡散させても高温でのHcJの向上が認められないという広く知られた事象が現れると考えられる。
すなわち、磁石表面から焼結体内部に拡散させたPr量、とりわけ結晶粒界に拡散させたPr量が適正な範囲にある場合のみ、結晶粒界に濃化したPrの効果を引き出すことができると考えられる。そしてこの適正な範囲が、焼結磁石の表層部において、結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下(好ましくは20%〜60%)、であり、且つ当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率よりも10パーセントポイント以上(好ましくは、20パーセントポイント以上)高い状態である。
なお、当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率よりも10パーセントポイント以上高いことから、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は実質的に10%以上である。
磁石の表層部において、結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と比べて10パーセントポイント未満だけ高いと、結晶粒界に十分な量のPrを濃化させることができず十分な効果が得られない。一方、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%を超えると、結晶粒界に十分な量のPrが濃化するが、結晶粒内(とりわけ結晶粒の表面近傍)にPrの高濃度領域が広範囲に亘り形成され、結晶粒界に濃化したPrによる高温でのHcJ向上の効果は、結晶粒の表面近傍におけるPrの高濃度領域により損なわれる。その結果、高温でのHcJ向上効果が低下してしまう。また、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が10%未満だと結晶粒界におけるPrの拡散量が十分でなく所望の効果を得ることができない。
なお、本明細書における用語「表層部」は、文字「層」を含んでいるが、層状となった組織を有することを規定するものではなく(層状の組織を必須とするものではなく)、断面において、表面およびその近傍を意味する(「表面部」または「表面近傍部」と言い換えることができる)。得ようとするR−T−B系焼結磁石の寸法および詳細を後述するPr拡散処理の条件や拡散処理後の磁石研削量等にもよるが、多くの場合、本発明のR−T−B系焼結磁石は表面から100μmの間に、より確実に上述した特徴を有する本発明に係る「R−T−B系焼結磁石の表層部」を形成する傾向がある。
以下に本願発明に係るR−T−B系焼結磁石の製造方法およびR−T−B系焼結磁石の詳細を説明する。
1.製造方法
以下に詳述するように本発明に係る製造方法では、焼結体に、その表面からDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理と、その表面からPrを拡散させるPr拡散処理とを実施する。本明細書では、焼結体に重希土類元素拡散処理およびPr拡散処理のいずれか一方を行った状態でも「焼結体」と呼ぶ場合があり(「××処理を行った焼結体」と言う場合もある)、焼結体に重希土類元素拡散処理とPr拡散処理の両方を行った状態を「磁石」と呼ぶ場合がある(「焼結磁石」または「R−T−B系焼結磁石」という場合もある。)。
1−1.焼結体の作製
(1)焼結体の組成
焼結体は、Ndを含む希土類元素と、Feと、Bとを含むR−T−B系焼結磁石として知られている任意の組成であってよい。
以下に好ましいR−T−B系焼結磁石の組成を示す。
Rは、希土類元素であり、Ndが必須であり、Rのうち質量比で50%以上をNdとする。Prを質量比で50%以上含有すると、高温のHcJが大きく低下するため、本発明の効果を得られない恐れがある。また、NdおよびPr以外の希土類元素を含んでよい。
焼結体全体でNdと他の希土類元素を合計して25質量%以上35質量%以下含有することが好ましい。25質量%未満では焼結ができない場合があり、35質量%を超えるとBが著しく低下する場合があるためである。
また、拡散処理を行う前の焼結体の段階で、DyおよびTbのような重希土類元素を多く含むと、最終的に得られたR−T−B系焼結磁石のBが低下することから、重希土類元素は合計で10質量%以下であることが好ましい。
Nd以外の希土類元素は、例えば、ミッシュメタルおよび/またはジジム合金(Nd−Pr合金)を用いることにより含まれることが多い。例えば、ジジム合金を用いると、焼結体はPrを含む。この場合、焼結体がPrを含んだ状態で後述する拡散処理を行うこととなる。
Tは、鉄を含み、質量比率でその50%以下をCoで置換してもよい。Coは温度特性の向上、耐食性の向上に有効であり、焼結体は10質量%以下のCoを含んでよい。
Tの含有量は、Rとボロン(B)あるいはRとBと後述するMとの残部を占めてよい。
ボロン(B)の含有量についても公知の含有量で差し支えなく、例えば、0.9質量%〜1.2質量%が好ましい範囲である。0.9質量%未満では高いHcJが得られない場合があり、1.2質量%を超えるとBが低下する場合がある。なお、Bの一部はC(炭素)で置換することができる。Cによる置換は磁石の耐食性を向上させることができる場合がある。B+Cとした場合(BとCの両方含む場合)の合計含有量は、Cの置換原子数をBの原子数で換算し、上記のB濃度の範囲内に設定されることが好ましい。
上記元素に加え、HcJ向上のためにM元素を添加することができる。M元素は、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、TaおよびWからなる群から選択される一種以上である。M元素の添加量は2.0質量%以下が好ましい。また、不可避的不純物も許容することができる。
(2)合金粉末の作製
上述の焼結体の組成と実質的に同じ組成を有する合金粉末を作製する。
合金粉末は、例えば、溶解法により、所望の組成を有するR−T−B系焼結磁石用原料合金のインゴットまたはフレークを作製し、この合金インゴットおよびフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕粉を得る。
そして、粗粉砕粉をジェットミル等により更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得ることができる。
R−T−B系焼結磁石用原料合金の製造方法を例示する。
最終的に必要な組成となるように事前に調整した金属を溶解し、鋳型にいれるインゴット鋳造法により合金インゴットを得ることができる。
また、溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスクまたは回転円筒鋳型等に接触させて急冷し、インゴット法で作られた合金よりも薄い凝固合金を作製するストリップキャスト法または遠心鋳造法に代表される急冷法により合金フレークを製造することができる。
本発明においては、インゴット法と急冷法のどちらの方法により製造された材料も使用可能であるが、急冷法により製造されるものが好ましい。
急冷法によって作製したR−T−B系焼結磁石用原料合金(急冷合金)の厚さは、通常0.01mm〜3mmの範囲にあり、フレーク形状である。合金溶湯は冷却ロールの接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)に比較して、短時間で凝固されているため、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。急冷合金を水素粉砕することで、水素粉砕粉(粗粉砕粉)のサイズを例えば1.0mm以下とすることができる。
このようにして得た粗粉砕粉をジェットミル等により粉砕することで、例えば気流分散式レーザー解析法によるD50粒径で3〜7μmの合金粉末を得ることができる。
ジェットミルは、(a)酸素含有量が実質的に0%の窒素ガスおよび/またはアルゴンガス(Arガス)からなる雰囲気中、または(b)酸素含有量が0.005〜3%の窒素ガスおよび/またはArガスからなる雰囲気中で行うのが好ましい。
得られた合金粉末は、乾燥したまま回収してもよく、また油等の分散媒中に分散させてスラリーとして回収してもよい。
また、粗粉砕粉、ジェットミル粉砕中及びジェットミル粉砕後の微粉砕粉に助剤として公知の潤滑剤を使用してもよい。
(3)プレス成形
得られた粉末を用いて磁場中プレス成形を行い、成形体を得る。磁界中プレス成形は、磁界を印加した金型のキャビティー内に乾燥した粉末を挿入しプレスする乾式法、および金型のキャビティー内にスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながらプレスする湿式法を含む既知の任意の方法を用いてよい。
なお、湿式法により得た成形体は、焼結を行う前に成形体中に残存する分散媒(油等)を除去する脱油処理を施すことが好ましい。脱油処理は、好ましくは50〜500℃、より好ましくは50〜250℃でかつ圧力13.3Pa(10−1Torr)以下の条件で30分以上保持して行う。成形体に残留する分散媒を充分に除去することができるからである。
(4)焼結
成形体を焼結することにより焼結体を得る。
成形体の焼結は、公知のR−T−B系焼結磁石の製造方法と同様の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、雰囲気ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより置換しておくことが好ましい。
焼結体は、Ndを含む希土類元素と、Feと、Bとを含み、下記(1)式で表される金属間化合物を主相とする。
そして、主相結晶粒は、焼結体の断面観察において、50%(体積比または断面の面積比)以上、好ましくは70%(体積比または断面の面積比)以上存在している。
14B (1)
ここで、RはNdを質量比で50%以上含有する1種類以上の希土類元素であり(すなわち、R全体の50質量%以上がNd)、TはFeまたはFeとCoである。
1−2.拡散処理
次に、焼結体にDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理と、焼結体にPrを拡散させるPr拡散処理を行う。なお、焼結体を研削等の機械加工をした後に拡散処理を行ってもよい。
以下に、重希土類元素拡散処理とPr拡散処理の詳細を示す。
なお、以下に示すように、重希土類元素拡散処理を行った後、Pr拡散処理を行う。これにより、DyおよびTbの少なくとも一方とPrとをより容易に所望の状態に拡散できるからである。
Pr拡散処理の際に焼結体を加熱する温度は、重希土類元素拡散処理の際に焼結体を加熱する温度よりも低い方が好ましい。後のPr拡散の際の加熱温度が高いと、所望の状態に拡散されたDyおよびTbの少なくとも一方が、粒内への拡散が進行するなどして、所望の状態を維持できなくなるからである。この場合、Pr拡散処理の際に焼結体を加熱する温度は、重希土類元素拡散処理の際に焼結体を加熱する温度より50℃〜350℃低いとより好ましい。
1−2−1.重希土類元素拡散処理
DyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面から拡散し、結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方を濃化できる既知の任意の方法を用いてよい。多くの既知の拡散方法は、同じ処理室内に、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源と焼結体とを配置し、重希土類元素供給源および焼結体を加熱することにより重希土類元素拡散処理を行っている。このような処理として、特許文献1〜6に記載されている拡散処理および本願の実施例に示すメタル粉末を焼結体表面に散布する方法を例示できる。
これらのうち、特許文献1〜3に記載されている方法および金属粉末を焼結体表面に散布する方法の詳細を以下に示す。
なお、このような重希土類元素拡散処理を行うことで、当然ながら焼結体全体でもDyおよびTbの少なくとも一方の含有量は増加する。焼結体全体としてDyおよびTbの少なくとも一方の含有量がどの程度増加するかは、焼結体の体積等の要因によって異なる。しかし、例えば、縦、横および高さのうちの最小寸法が10mm以下の一般的な形態のR−T−B系焼結磁石であれば、本願発明に係る拡散処理を行うことにより、多くの場合、焼結体全体でDyおよびTbの少なくとも一方の含有量が0.1質量%〜2.0質量%増加する。さらに重希土類元素拡散処理の後に追加で熱処理を施すことが好ましい。重希土類元素をさらに焼結体内部へ拡散させることができるからである。処理温度は、800℃以上950℃以下で行うことが好ましい。
以下に拡散処理の詳細を説明する。
(1)特許文献1に記載の方法
特許文献1に記載の方法は、焼結体と、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源とをNb製の網等を介して離間して配置し、焼結体と重希土類元素供給源とを所定温度に加熱することにより、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面に供給しつつ、焼結体の内部に拡散させる方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
特許文献1に記載の方法を用いる場合、重希土類元素供給源は、例えば、Dyメタル、Dy−Fe合金、Tbメタル、TbFe合金などから選択される1つ以上である。重希土類元素供給源の形状は、例えば、板状、ブロック状、球状など任意であり、大きさも特に限定されない。
焼結体および重希土類元素供給源を加熱する温度は、それぞれ、850℃以上1000℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、10−5Pa以上500Pa以下が好ましい。なお、本明細書における「雰囲気ガス」とは、真空または不活性ガスを含むものとする。また、「不活性ガス」とは、例えば、アルゴン(Ar)などの希ガスであるが、焼結体、重希土類元素供給源と化学的に反応しないガス(例えば、窒素ガス)は、「不活性ガス」に含まれ得る。
(2)特許文献2に記載の方法
特許文献2に記載された方法は、焼結体と重希土類元素供給源とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理容器内に挿入し、焼結体と重希土類元素供給源とを処理容器内にて連続的または断続的に移動させながら、焼結体および重希土類元素供給源を加熱することにより、重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散する方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
特許文献2に記載された方法を用いる場合、重希土類元素供給源は、DyおよびTbの少なくとも一方を含む合金であることが好ましい。例えば、Dy−Fe合金、Tb−Fe合金などである。重希土類元素供給源の形状は、球状、楕円球状、円柱状などの表面に曲面が形成されている形状が好ましい。重希土類元素供給源は、粒子状であってもよいが、粒径が200μm以上であることが好ましい。粒径が200μm未満であると、焼結体との溶着が生じやすく傾向があるためである。
焼結体と重希土類元素供給源を加熱する温度は、500℃以上850℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、大気圧以下で実施でき、100kPa以下で行うのが好ましく、例えば10−3Pa以上10Pa以下の範囲内に設定することができる。
(3)特許文献3に記載の方法
特許文献3に記載された方法は、重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させた状態で焼結温度よりも低い温度で加熱することで、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散させる方法である。
特許文献3に記載された方法を用いる場合、重希土類元素供給源は、Dy−Fe、Dy−Fe−Hなどが好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて酸化物、フッ化物、酸フッ化物を含有させてもよい。重希土類元素供給源は、粒子状であることが好ましく、その平均粒径は、100μm以下、好ましくは10μm以下である。
重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させる方法としては、例えば、粒子状の重希土類元素供給源をそのまま焼結体表面に吹き付ける方法、同供給源を溶媒に溶解した溶液を焼結体表面に塗布する方法、同供給源を分散媒に分散させたスラリーを焼結体表面に塗布する方法等があげられる。スラリーに用いる分散媒としては、例えばアルコール、アルデヒド、エタノール、ケトン等が挙げられる。
焼結体と重希土類元素供給源を加熱する温度は、焼結温度以下であり、具体的には、600℃以上1000℃以下が好ましい。焼結温度より高い温度であると、焼結体の組織が変質し、高い磁気特性が得られない場合または焼結体が熱変形を引き起こす場合があるため、1000℃以下が好ましい。加熱する温度の下限は適宜選定され得るが、温度が低すぎると処理時間が長くなり、量産性が悪化する。そのため、600℃以上が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、大気圧以下であることが好ましい。
1−2−2.Pr拡散処理
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体にPr拡散処理を施す。焼結体の表面から内部にPrを供給し、焼結体の表層部において、粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を、当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より10パーセントポイント(好ましくは、20パーセントポイント以上)以上高くし、かつ表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を75%以下にする。また、好ましくは表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を20%〜60%にする。高温におけるHcJ向上効果をより一層高くできるからである。
Pr拡散処理は、Prを含むプラセオジム供給源と焼結体とを容器内に配置し、プラセオジム供給源と焼結体とを加熱し、プラセオジム供給源から焼結体にPrを拡散させることができる限り任意の拡散処理を行ってよい。
このようなPr拡散処理を行うことで、当然ながら焼結体全体でもPrの含有量は増加する。焼結体全体としてPr含有量がどの程度増加するかは、焼結体の体積等の要因によって異なる。しかし、例えば、縦、横および高さのうちの最小寸法が10mm以下の一般的な形態のR−T−B系焼結磁石であれば、本願発明に係る拡散処理を行うことにより、多くの場合、焼結体全体でPr含有量が0.2質量%〜1.5質量%増加する。
以下に拡散処理の詳細を説明する。
(1)プラセオジム供給源
プラセオジム供給源として、Prを含む固体、スラリー等、任意の形態のプラセオジム供給源を用いてよい。
好ましいプラセオジム供給源は、PrメタルまたはPrを含む合金である。合金を用いる場合、Prが30質量%以上含まれていることが好ましい。
プラセオジム供給源として用いることができる合金としてPr−Fe合金を例示できる。プラセオジム供給源の形状、サイズは拡散処理方法によって適宜選定すればよく、薄膜や粉末などでもよい。
(2)拡散処理方法
Pr拡散処理は、加熱中にプラセオジム供給源と焼結体とを接触させてプラセオジム供給源から焼結体にPrを粒界拡散させる方法が好ましい。
プラセオジム供給源は、任意の形状を有してよいが、好ましくは球状や粒子状(粉末状)である。プラセオジム供給源と焼結体との接触面積を増やすことができるからである。粒子状の場合、好ましい粒子径は100μm以下、より好ましくは10μm以下である。より確実に接触面積を増やすことができるからである。ただし、微粒子の場合は、酸化し易いため、酸化を抑制する分散媒などを用いることが好ましい。
粒子状のプラセオジム供給源を用いる場合、プラセオジム供給源をそのまま焼結体表面に散布または吹き付けることによりプラセオジム供給源と焼結体とを接触させてもよく、またプラセオジム供給源を分散媒中に分散させたスラリーを焼結体表面に塗布した後、分散媒を蒸発させてプラセオジム供給源と焼結体とを接触させてもよい。なお、分散媒として、アルコール(エタノール等)、アルデヒド、ケトンを例示できる。
プラセオジム供給源と焼結体の温度は、500℃〜1000℃、好ましくは600℃〜800℃に加熱する。1000℃より高い温度に加熱するとPrの主相結晶粒内への拡散を進行させてしまう可能性が高まるからであり、一方、温度が500℃未満だとPrが十分に粒界拡散せず、本発明に係る表層部を形成しない場合があるからである。
また、処理容器内(すなわち拡散処理を行う)雰囲気ガスの圧力は、不活性ガス雰囲気(例えば、アルゴン(Ar)などの希ガス)ならば特に問わず、真空圧でも大気圧以上でもよい。
なお、焼結体の表層部において、粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より10パーセントポイント以上高くし、表層部に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を75%以下にするためには、焼結体の大きさおよび用いるプラセオジム供給源の種類等に応じて、焼結体の温度、プラセオジム供給源の温度、プラセオジム供給源の量、粒子径(プラセオジム供給源が粒子状の場合)、処理時間等の各種条件を調整してよい。これらのなかでも、焼結体の温度、プラセオジム供給源の量または処理時間を調整することにより比較的容易にPrの導入量(増加量)を制御できる。
念のために言及するが、本明細書において、「10パーセントポイント以上高い」とは、パーセント(質量%)で示される含有量において、その数値が10以上大きいことを意味する。例えば、対象物Aの希土類元素中のPrの含有量が10質量%である場合、対象物BのPrの含有量が対象物Aより10パーセントポイント以上高いとは、対象物Bの希土類元素中のPrの含有量が20質量%以上であることを意味する。
焼結体をプラセオジム供給源から離間させて容器内に配置する方法を用いる場合、すなわち、一旦Prの蒸気(気相)を形成し、この気相が焼結体表面に達し、焼結体表面から内部にPrを拡散させる場合は、Prが気化しにくいため、プラセオジム供給源を高真空中(10−3〜10−4)で1100℃〜1200℃に加熱することが好ましい。この場合においても、焼結体の温度は上述した理由により、500℃〜1000℃、より好ましくは600℃〜800℃に保持することが好ましいため、焼結体とプラセオジム供給源とを別々の温度で制御することが好ましい。
結晶粒界の多重点(粒界多重点)は、いわゆるRリッチ相(希土類元素リッチ相)となっており、希土類元素を含有する金属相を有している。
なお、粒界多重点は、例えばR−T−B系焼結磁石の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察することで結晶粒に囲まれた領域として観察できる。そして、この粒界多重点に位置する金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率および金属相と隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、例えば透過電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)を用いて組成分析を行うことで求めることができる。
なお、原料としてジジム合金を用いて得た焼結体は、例えば5〜7質量%程度のPrを含有している。そして、拡散処理を行う前でも、結晶粒内よりも粒界多重点を含む結晶粒界の方が、含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が高くなる傾向がある。しかし、それでも結晶粒の粒界多重点に位置する金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と金属相と隣接する当該結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率との差は10パーセントポイントよりも遙かに小さい。
以上に示した拡散処理を行うことにより、通常は、得られたR−T−B系焼結磁石の表面全体(または表面直下部全体)に本発明に係る表層部、すなわち、結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より10パーセントポイント以上高く、かつ金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下である表層部を形成できる。
しかし、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、焼結体の一部をマスクすることにより、および/または焼結体の一部を冷却し他の部分より温度を低くする等により、得られたR−T−B系焼結磁石の表面の一部分(または表面直下部の一部)にのみ本発明に係る表層部を形成する実施形態も含む。
例えば、R−T−B系焼結磁石の表面の全体ではなく、一部分(または表面直下部の一部)のみにおいて結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より10パーセントポイント以上高く、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下である実施形態も本発明に含まれる。
また、Coを含有する磁石では、Coを含む金属相も存在するが、本発明の効果は、Coを含まない金属相において規定したPr濃度範囲で得られるものである。
重希土類拡散後やPr拡散処理後の焼結磁石の表面は、粗面化される場合がある。またこれら拡散処理時に重希土類元素やPrと相互拡散したNdなどが焼結磁石表面に染み出し、固化して酸化し易い状態になっていることが多い。このような場合、表面を切削、研磨等の機械加工(面出し加工)を行うことが好ましい。
(3)熱処理
Pr拡散処理を行った後の焼結磁石は、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などの熱処理条件は、R−T−B系焼結磁石の焼結後の熱処理条件として公知の条件(例えば、500℃で3時間)を採用することができる。なお、最終的な磁石寸法の調整を研削などの機械加工等により行ってもよい。この場合、熱処理の前に行っても、後に行ってもよい。
2.得られたR−T−B系焼結磁石の特徴
上述の製造方法により得たR−T−B系焼結磁石は、いくつかの特徴を示す。
2−1.DyおよびTbの少なくとも一方の拡散について
上述の重希土類元素拡散処理を行った結果、最終的に得られる希土類系焼結磁石では、結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方が濃化している。ここで「濃化」とは、濃度が高くなることを意味し、DyおよびTbの少なくとも一方の濃度が高い領域(例えば結晶粒の中央部と比べて)が結晶粒の外殻部(結晶粒の外殻部の少なくとも一部)に存在する。
重希土類元素拡散処理では、上述のように焼結体の表面からDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させることから、拡散処理の条件にもよるが、このような濃化部は、得られた希土類系焼結磁石の中央部と比べ、表層部の方により多く存在する傾向がある。
2−2.Prの拡散について
2−2−1.Pr拡散処理前の焼結体がPrを実質的に含有しない場合
Pr拡散処理前の焼結体は、Prを含有しないため、Pr拡散処理により増加したPr量がそのまま得られたR−T−B系焼結磁石のPr含有量となる。Prを焼結体の表面から内部に拡散させたことから、得られたR−T−B系焼結磁石は表層部の方が中央部よりPrの濃度が高くなる傾向がある。中央部および表層部のPr濃度は、例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA)等の分光法により、結晶粒を10個〜100個含む(結晶粒を含む)断面の濃度測定を行うことで求めることができる。この場合、「結晶粒を10個〜100個」は、断面上に表れた結晶粒を意味し、断面に表れた結晶粒の下(深さ方向)に別の結晶粒があり、喩え、EPMA分析に当該別の結晶粒が寄与したとしてもこの結晶粒は「結晶粒を10個〜100個」のなかに含まれない。
表層部において、結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より10パーセントポイント以上高く、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下となる。これは、拡散処理により粒界多重点の金属相にPrの濃化領域が形成されていることに対応する。
2−2−2.拡散処理前の焼結体が意図的に添加されたPrを含有する場合
Pr拡散処理前の焼結体について、例えば、そのR(希土類元素)がジジム合金により供給された場合、もともと結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は20%程度である。
そして、拡散処理では、Prは焼結体の表面から主として粒界に拡散し、結晶粒内にはあまり拡散しない。
すなわち、Pr拡散処理前の焼結体がPrを実質的に含有しない場合と同様に、Prを焼結体の表面から内部に拡散させることにより、R−T−B系焼結磁石の表層部において、結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を当該結晶粒に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より10パーセントポイント以上高く、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下となる。
一方、このような場合においても金属相と隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、20%程度と拡散処理の前とほとんど変わらない。
なお、Pr拡散処理前の焼結体がPrを実質的に含有しない場合およびPr拡散処理前の焼結体が意図的に添加されたPrを含有する場合のどちらであっても、粒界多重点の金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と、当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は上述のようにTEM−EDXを用いることで求めることができる。
また、このどちらの場合も、焼結体全体の組成はNdがPrで置換されただけであるから、Pr以外の元素の濃度について、その好ましい範囲は上述の焼結体について示した好ましい範囲の数値を用いても実用上問題ない。
これについては、重希土類元素拡散処理についても同様である。すなわち、焼結体全体の組成はNdがDyおよび/またはTbで置換されただけであるから、DyおよびTb以外の元素の濃度について、その好ましい範囲は上述の焼結体について示した好ましい範囲の数値を用いても実用上問題ない。
1.実施例1
ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕粉し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。
そして、この合金粉末から乾式法により成形体を作製し、これを真空炉により1020℃で4時間の焼結を行い、長さ21.0mm×幅16.0mm×厚さ3.4mmの焼結体を得た。
焼結体の組成は、Nd:31.7質量%、B:0.95質量%、Co:0.9質量%、Al:0.1質量%、Cu:0.1質量%、Ga:0.1質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度は、それぞれ、酸素:5000ppm、窒素:300ppm、炭素:700ppmであった。
得られた焼結体を用いて、重希土類元素拡散処理として、Dyをこの焼結体に拡散させた。重希土類元素(Dy)拡散処理は、焼結体とほぼ同寸法のDyメタルを準備し、容器内へ前記焼結体と前記DyメタルとをNb製の網を介して離間配置して、加熱することにより行った。重希土類元素(Dy)拡散処理後の焼結体に対し、Dyをさらに焼結体内部へ拡散させるため、900℃で6時間の熱処理を行った。重希土類元素拡散処理の処理温度及び処理時間を表1に示す。
図1(a)は、重希土類元素拡散処理を行った後の焼結体の透過電子顕微鏡観察結果(DF−STEM像)であり、6つの結晶粒が含まれる。図1(b)は、図1(a)に示した領域のEDXによるDyの元素マッピング像である。ここで、明るい色の領域ほどDyが多く存在することを表している。なお、図1(b)に示す元素マッピングについては、定性的な濃度をより詳細に理解できるように、色により濃度の違いを識別できる元素マッピングの原図を物件提出書として本願と同時に提出している。必要に応じてこの原図も参照されたい。図1(b)から明らかなようにDyが結晶粒の外殻部に濃化している。
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体に対して、Pr拡散処理を行った。Pr拡散処理は、処理容器内に焼結体を載置し、21.0mm×16.0mmの両面にプラセオジム供給源としてPrメタルの粉末を散布し、加熱することにより行った。Prメタル粉の大きさは、篩い目で100μm以下のものを使用した。
Pr拡散処理の条件(散布量および処理温度、処理時間)を表1に示す。
次に、それぞれのサンプルについて、500℃で3時間熱処理し焼結磁石を得た。
次に、拡散処理を行った21.0mm×16.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、7mm×7mm×厚さ3.0mmの評価試料を得た。この試料について、ICP発光分光分析を行った。この結果から、拡散処理を施していない基の焼結体に対するDyの増加量およびPrの増加量、総希土類量(=Nd+Dy+Pr質量%)とを算出した値を表1に示す。
Figure 2014130888
Pr拡散処理後のサンプル(希土類系焼結磁石)のTEM観察を行った結果を示す。
図2は試料No.1−4の希土類系焼結磁石の表層部(表面から深さ50μm)のDF−STEM像を示す。図2は、2つの結晶粒20と粒界多重点10を示している。さらに図2の視野における、Feおよび酸素(O)、Nd、Prの元素マッピング像を図3に示す。ここで、明るい色の領域ほど各元素が多く存在することを表している。図3において、粒界多重点は、ほとんどFeが存在しない、いわゆる希土類リッチな相である。図3から明らかなように、粒界多重点には酸素(O)が多く存在する酸化物相と、酸素(O)の存在量がほとんどない金属相(図2における粒界多重点から酸化物相を除いた部分)が存在する。さらに図3のPrマッピング像から明らかなように、Prは、粒界多重点の金属相に濃化している(Prマッピング像における最も明るい色の領域)。参考までに、図4に図3に示す元素分析結果により明らかになった金属相12と酸化物相14の領域を示す。
以上TEM観察の結果で示したように、希土類系焼結磁石には、粒界多重点が存在し、さらに粒界多重点には、金属相と酸化物相が存在し、これらを識別できる。
次に、図5に示すように金属相内のA点およびA点を含む金属相に隣接する結晶粒内のB点においてTEM−EDXにより定量分析を行い、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と、金属相に隣接する結晶粒における、希土類元素に占めるPrの質量比率を求めた。ここで、金属相は、粒界多重点においてCoを含む金属相と含まない金属相の存在が確認されたが、Coを含まない金属相を測定した。測定した試料No.1−4の結果と同様にして、試料No.1−1〜1−3、1−5〜1−13について、上述の定量分析を行った結果を表2に示す。
Figure 2014130888
表2に示すように、Pr拡散処理によりPrを0.2〜2.0質量%導入させた試料No.1−1〜1−10、1−12は、Pr増加量が大きくなる程、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が上昇する傾向がある。(20%〜81%)。一方、試料No.1−11、1−13は、Pr拡散処理を行っていないため、どちらもPrが検出されなかった。
得られた磁石の磁気特性測定結果を表3に示す。表3における「HcJ 140℃」は140℃におけるHcJの値であり、「HcJ160℃」は160℃におけるHcJの値であり、「HcJ180℃」は180℃におけるHcJの値であり、「HcJ室温」は室温(23℃)におけるHcJの値である。「B室温」は室温(23℃)におけるBの値である。これらB、HcJの値は、サンプルをそれぞれ21.0mm×16.0mmの面の中心部から7mm×7mm×3.0mmに加工し、BHトレーサにより測定した。「H/HcJ」は、角型比を示す。また、表中の「−」の部分は、測定を行わなかったことを示す。
Figure 2014130888
表3に示すように、重希土類元素拡散処理後に、同処理を行った焼結体とPr供給源とを加熱してPr拡散処理することにより、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を75%以下に増加させた、本発明サンプルである試料No.1−1〜1−8は、重希土類元素拡散処理を行った後、Pr拡散処理をしていないサンプル(試料No.1−11)と比べて、140℃において高いHcJ向上効果を得ることができた。また、600℃〜800℃でPr拡散処理を行い、Pr増加量が0.5質量%である試料No.1−3〜1−5の方が、880℃の高温でPr拡散処理を行い、Pr増加量が0.5質量%である試料No.1−8よりも140℃において高いHcJ向上効果が得られた。さらに、試料No.1−3〜1−5は、重希土類元素拡散処理を行った後、Pr拡散処理をしていないサンプル(試料No.1−11)と比べて、Bが低下することなくHcJが向上しているが、試料No.1−8は、Bが低下している。このことは、Pr拡散処理の処理温度は、600℃〜800℃が好ましいことを示している。
試料No.1−9は、試料No.1−7と同様に、Pr拡散処理によるPr増加量が1.5質量%であったが、重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていないサンプル(試料No.1−11)と比べて140℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかった。これは、試料No.1−9は、Pr散布量が多かったためPr拡散処理時に多量のPrが焼結体内に拡散してしまい、焼結体の表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%を超え、結晶粒界から結晶粒内(とりわけ、結晶粒の表面近傍)にPrの濃度が高い領域が広範囲に亘り形成されたためであると考えられる。その結果、高温での主相の異方性磁界が低下し、140℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかったと考えられる。
試料No.1−10は、Pr拡散処理により、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75質量%を超えているため、重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていないサンプル(試料No.1−11)と比べて140℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかった。
表3に示すように、重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行うと、重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていないサンプル(試料No.1−13)と比べて角型比(H/HcJ)は、同等以上である。ここで、角型比とは、H/HcJで表される値であり、Hとは、磁気ヒステリスループ(4πI−Hカーブ)の第2象限における磁化がBの90%となるときの磁界強度である。この比が小さいと、減磁の程度が大きい性質を意味する。
重希土類元素拡散処理後の焼結体に対して、600℃〜800℃に加熱してPr拡散処理を行い、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比を75%以下に増加させることにより、重希土類元素拡散処理とPr拡散処理の相乗効果を得ることができる。以下に具体的に説明する。
試料No.1−13は、重希土類元素拡散処理及びPr拡散処理前の焼結体である。試料No.1−13にDy増加量が0.4質量%である重希土類元素拡散処理を行った試料No.1−11は、140℃におけるHcJが517kA/mと試料No.1−13から197kA/mほどHcJが向上している。また、試料No.1−13にPr増加量が0.5質量%であるPr拡散処理を行った試料No.1−12は、140℃におけるHcJが、381kA/mと試料No.1−13から61kA/mほどHcJが向上している。これらの向上値を合計すると258(197+61)kA/mとなる。このため、相乗効果がなく、重希土類元素拡散処理の効果とPr拡散処理の効果を単純に加算すると(念のため断っておくが、単純に加算できるというだけでも顕著な効果である)、試料No.1−13の焼結体に対し、Dy増加量が0.4質量%である重希土類元素拡散処理を行い、さらにPr増加量が0.5質量%であるPr拡散処理をした場合の140℃におけるHcJは、試料No.1−13の140℃におけるHcJ320kA/mに258kA/mを足した値=578kA/mとなるはずである。しかし、Dy増加量が0.4質量%である重希土類元素拡散処理を行った後、600℃〜800℃に加熱してPr増加量が0.5質量%であるPr拡散処理を行った本発明に係る試料No.1−3〜1−5の140℃におけるHcJは、596〜612kA/mと、いずれも578kA/mより明らかに高くなっている。これは、重希土類元素拡散処理後の焼結体に対して、600℃〜800℃に加熱してPr拡散処理を行うことにより粒界近傍に存在するDyがなんらかの挙動を起こしその結果、HcJが向上したものと考えられる。すなわち、これは重希土類元素拡散処理とPr拡散処理の相乗効果によるものであると考えられる。
2.実施例2
焼結体の厚さを3.4mmから5.4mmにした以外は、実施例1と同じ条件で焼結体を準備した。
得られた焼結体を用いて、重希土類元素拡散処理として、Dyをこの焼結体に拡散させた。重希土類元素(Dy)拡散処理は、実施例1と同様の方法で行った。重希土類元素(Dy)拡散処理後の焼結体に対し、Dyをさらに焼結体内部へ拡散させるため、900℃で6時間の熱処理を行った。
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体に対して、Pr拡散処理を行った。Pr拡散処理は、実施例1と同様の方法で行った。Pr拡散処理の条件(散布量および処理温度、処理時間)を表4に示す。次に、それぞれのサンプルについて、500℃で3時間熱処理し焼結磁石を得た。次に、拡散処理を行った21.0mm×16.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、7mm×7mm×厚さ5.0mmの評価試料を得た。この試料について、ICP発光分光分析を行った。この結果から、拡散処理を施していない基の焼結体に対するDyの増加量およびPrの増加量、総希土類量(=Nd+Dy+Pr質量%)とを算出した値を表4に示す。
Figure 2014130888
次に、試料No.2−1〜2−8について、実施例1と同様に、焼結体の表層部における、粒界多重点の金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と、当該金属相に隣接する結晶粒の中心部における、含有する希土類元素に占めるPrの質量比率をTEM−EDX分析により求めた。結果を表5に示す。
Figure 2014130888
表5に示すように、拡散処理によりPrを0.2〜2.0質量%導入させた試料No.2−1〜2−7は、Pr増加量が大きくなる程、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が上昇する傾向がある。(18%→82%)。一方、試料No.2−8は、Pr拡散処理を行っていないため、Prが検出されなかった。
得られた磁石の磁気特性測定結果を表6に示す。表6における「HcJ 140℃」は140℃におけるHcJの値であり、「HcJ160℃」は160℃におけるHcJの値であり、「HcJ180℃」は180℃におけるHcJの値であり、「HcJ室温」は室温(23℃)におけるHcJの値である。「B室温」は室温(23℃)におけるBの値である。これらB、HcJの値は、サンプルをそれぞれ21.0mm×16.0mmの面の中心部から7mm×7mm×5.0mmに加工し、BHトレーサにより測定した。「H/HcJ」は、角型比を示す。また、表中の「−」の部分は、測定を行わなかったことを意味する。
Figure 2014130888
表6に示すように、重希土類元素拡散処理後に、同処理を行った焼結体とPr供給源とを加熱してPr拡散処理することにより、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を75%以下に増加させた、本発明である試料No.2−1〜2−6は、重希土類元素拡散処理を行った後、Pr拡散処理していないサンプル(試料No.2−8)と比べて、140℃において高いHcJ向上効果を得ることができた。また、上述したように600℃〜800℃の好ましい温度範囲でPr拡散処理を行い、Pr増加量が0.5質量%である試料No.2−3(800℃)の方が900℃でPr拡散処理を行い、Pr増加量が0.5質量%である試料No.2−6よりも140℃において高いHcJ向上効果が得られた。さらに、試料No.2−3は、Bの低下なくHcJを向上させているが、試料No.2−6ではBの低下が認められる。
試料No.2−7は、Pr拡散処理を行った結果、表層部において、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%を超えているため、重希土類元素拡散処理後、Pr拡散処理を行っていないサンプル(試料No.2−8)と比べて140℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかった。
また、表6に示すように、比較例サンプルは160℃、180℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかったが、本発明サンプルは160℃、180℃においても同様に高いHcJ向上効果を得ることができた。
表6に示すように、重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行うと、重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていないサンプル(試料No.2−8)と比べて角型比(H/HcJ)は、同等以上である。
3.実施例3
原料にジジム合金を用いストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕粉し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により1020℃で4時間の焼結を行い、長さ21.0mm×幅16.0mm×厚さ4.4mmの焼結体を得た。
焼結体の組成は、Nd:22.5質量%、Pr:6.3質量%、Dy:0.6質量%、B:0.94質量%、Co:2.0質量%、Al:0.1質量%、Cu:0.1質量%、Ga:0.1質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度はそれぞれ、酸素:800ppm、窒素:300ppm、炭素:1100ppmであった。
得られた焼結体を用い、重希土類元素拡散処理として、Dyをこの焼結体に拡散させた。重希土類元素(Dy)拡散処理は、実施例1と同様の方法で行った。重希土類元素(Dy)拡散処理後の焼結体に対し、Dyをさらに焼結体内部へ拡散させるため、900℃で6時間の熱処理を行った。
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体に対して、Pr拡散処理を行った。Pr拡散処理は、実施例1と同様の方法で行った。Pr拡散処理の条件(散布量および処理温度、処理時間)を表7に示す。次に、それぞれのサンプルについて、500℃で3時間熱処理し焼結磁石を得た。次に、拡散処理を行った21.0mm×16.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、7mm×7mm×厚さ4.0mmの評価試料を得た。この試料について、ICP発光分光分析を行った。この結果から、拡散処理を施していない基の焼結体に対するDyの増加量およびPrの増加量、総希土類量(=Nd+Dy+Pr質量%)とを算出した値を表7に示す。
Figure 2014130888
次に、試料No.3−1〜3−8について、実施例1と同様に、焼結体の表層部における、粒界多重点の金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と、当該金属相に隣接する結晶粒の中心部における、含有する希土類元素に占めるPrの質量比率をTEM−EDX分析により求めた。結果を表8に示す。
Figure 2014130888
表8に示すように、拡散処理によりPrを0.2〜2.0質量%導入させた試料No.3−1〜3−7は、Pr増加量が増加しても、結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比は同じ(22%)で変わらず、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、Pr増加量が大きくなるとともに上昇している傾向がある。(42%→82%)。
得られた磁石の磁気特性測定結果を表9に示す。表9における「HcJ 140℃」は140℃におけるHcJの値であり、「HcJ160℃」は160℃におけるHcJの値であり、「HcJ180℃」は180℃におけるHcJの値であり、「HcJ室温」は室温(23℃)におけるHcJの値である。「B室温」は室温(23℃)におけるBの値である。これらB、HcJの値は、サンプルをそれぞれ21.0mm×16.0mmの面の中心部から7mm×7mm×4.0mmに加工し、BHトレーサにより測定した。「H/HcJ」は、角型比を示す。また、表中の「−」の部分は、測定を行わなかったことを意味する。
Figure 2014130888
表9に示すように、重希土類元素拡散処理後に、同処理を行った焼結体とPr供給源とを加熱してPr拡散処理することにより、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を75%以下に増加させた、本発明である試料No.3−1〜6は、重希土類元素拡散処理を行った後、Pr拡散処理していないサンプル(試料No.3−8)と比べて、140℃において高いHcJ向上効果を得ることができた。また、上述したように600℃〜800℃の好ましい温度範囲でPr拡散処理を行い、Pr増加量が0.5質量%である試料No.3−3(720℃)の方が880℃でPr拡散処理を行い、Pr増加量が0.5質量%である試料No.3−6よりも140℃において高いHcJ向上効果が得られた。さらに、試料No.3−3は、Bの低下なくHcJを向上させているが、試料No.3−6ではBの低下が認められる。
試料No.3−7は、Pr拡散処理を行った結果、表層部において、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%を超えているため、重希土類元素拡散処理後、Pr拡散処理を行っていないサンプル(試料No.3−8)と比べて140℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかった。
また、表9に示すように、比較例は160℃、180℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかった、本発明のサンプルは160℃、180℃においても同様に高いHcJ向上効果を得ることができた。
表9に示すように、重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行うと、重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていないサンプル(試料No.3−8)と比べて角型比(H/HcJ)は同等以上である。
4.実施例4
実施例1および実施例3で用いた組成の、長さ21.0mm×幅16.0mm×厚さ3.4mmの焼結体を準備し、重希土類元素拡散およびPr拡散処理を行った。重希土類元素拡散処理として、Dyを焼結体に拡散させた。重希土類元素(Dy)拡散処理は、処理容器内に焼結体を載置し、その21.0mm×16.0mmの両面にDyメタルの粉末を散布し、加熱することにより行った。散布したDyメタルの粉末は、Dyメタルを切断する際に発生する切粉を篩いにかけ、篩い目で100μm以下のものを使用した。また、Pr拡散処理は、実施例1と同様の方法で行った。
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体に対して、Pr拡散処理を行った。Pr拡散処理は、実施例1と同様の方法で行った。Pr拡散処理の条件(散布量、処理温度および処理時間)を表10に示す。次に、それぞれのサンプルについて、500℃で3時間熱処理し焼結磁石を得た。次に、拡散処理を行った21.0mm×16.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、7mm×7mm×厚さ3.0mmの評価試料を得た。この試料について、ICP発光分光分析を行った。この結果から、拡散処理を施していない基の焼結体に対するDyの増加量およびPrの増加量、総希土類量(=Nd+Dy+Pr質量%)とを算出した値を表10に示す
ここで表10に示した試料の作製経緯を説明する。試料No.4−1〜4−4は、実施例1で用いた組成の上記寸法の焼結体に対して、重希土類元素(Dy)拡散処理およびPr拡散処理、並びに、重希土類元素(Dy)拡散処理のみを行った、焼結磁石および焼結体である。また、試料No.4−5〜4−8は、実施例3で用いた組成の上記寸法の焼結体に対して、重希土類元素(Dy)拡散処理およびPr拡散処理、並びに、重希土類元素(Dy)拡散処理のみを行った、焼結磁石および焼結体である。
試料No.4−1および4−5は重希土類元素(Dy)拡散処理後、Dyをさらに焼結体内部へ拡散させるため、900℃で6時間の熱処理を行った後、Pr拡散処理を行った試料である。
試料No.4−2および4−6は、Pr拡散処理を行った後に、重希土類元素拡散処理を行い、900℃で6時間の熱処理を行った試料である。
試料No.4−3および4−7は、重希土類元素(Dy)拡散処理およびPr拡散処理を同時に行った後、900℃で6時間の熱処理を行った試料である。
試料No.4−4および4−8は、重希土類元素(Dy)拡散処理後、900℃で6時間の熱処理を行った試料である。
Figure 2014130888
次に、試料No.4−1〜4−8について、実施例1と同様に、焼結体の表層部における、粒界多重点の金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と、当該金属相に隣接する結晶粒の中心部における、含有する希土類元素に占めるPrの質量比率をTEM−EDX分析により求めた。結果を表11に示す。
Figure 2014130888
表11に示すように、実施例1で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行った本発明である試料No.4−1は、実施例1で用いた組成の焼結体に対しPr拡散処理後に重希土類拡散処理を行った試料No.4−2や、重希土類元素拡散処理およびPr拡散処理を同時に行った試料No.4−3に比べて、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が高くなっていることがわかる。
表10に示したように、試料No.4−1〜4−3におけるPr拡散処理によって増加したPr量は同量であるため、重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行った本発明である試料No.4−1は、Pr拡散処理後に重希土類元素拡散処理を行った試料No.4−2および重希土類元素拡散処理およびPr拡散処理を同時に行った試料No.4−3に比べて、Prが主として粒界に存在していると考えられる。
同様に、表11に示すように、実施例3で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行った本発明である試料No.4−5は、実施例3で用いた組成の焼結体に対しPr拡散処理後に重希土類拡散処理を行った試料No.4−6および重希土類元素拡散処理およびPr拡散処理を同時に行った試料No.4−7に比べて、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が高くなっていることがわかる。
表10に示したように、試料No.4−5〜4−7におけるPr拡散処理によって増加したPr量は同量であるため、重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行った本発明である試料No.4−5は、Pr拡散処理後に重希土類元素拡散処理を行った試料No.4−6および重希土類元素拡散処理およびPr拡散処理を同時に行った試料No.4−7に比べて、Prが主として粒界に存在していると考えられる。
得られた磁石の磁気特性測定結果を表12に示す。表12における「HcJ 140℃」は140℃におけるHcJの値であり、「HcJ160℃」は160℃におけるHcJの値であり、「HcJ180℃」は180℃におけるHcJの値であり、「HcJ室温」は室温(23℃)におけるHcJの値である。「B室温」は室温(23℃)におけるBの値である。これらB、HcJの値は、サンプルをそれぞれ21.0mm×16.0mmの面の中心部から7mm×7mm×3.0mmに加工し、BHトレーサにより測定した。「H/HcJ」は、角型比を示す。
Figure 2014130888
表12に示すように、実施例1で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行った本発明である試料No.4−1は、実施例1で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていない試料No.4−4に比べて、140℃において高いHcJ向上効果が得られたのに対して、実施例1で用いた組成の焼結体に対しPr拡散処理後に重希土類元素拡散処理を行った試料No.4−2では、高いHcJ向上効果が得られなかった。このサンプルでは、Pr拡散処理後に同処理温度よりも高い880℃で重希土類元素拡散処理を行ったことから、Pr拡散処理時に結晶粒界に導入されたPrが、重希土類元素拡散処理時に結晶粒内(とりわけ、結晶粒の表面近傍)に入り、結晶粒内にPrの濃度が高い領域を広範囲に亘り形成したためと考えられる。
さらに、実施例1で用いた組成の焼結体に対し処理温度880℃で重希土類元素拡散処理とPr拡散処理を同時に行った試料No.4−3は、実施例1で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていない試料No.4−4に比べて、高いHcJ向上効果が得られなかった。これも上述したPr拡散処理後に同処理の処理温度より高い温度で重希土類元素拡散処理を行った場合と同様に、処理温度が高いため、結晶粒内にPrの濃度が高い領域が広範囲に亘り形成されたためと考えられる。また、表12に示すように、比較例サンプルは160℃、180℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかったが、本発明サンプルは160℃、180℃においても同様に高いHcJ向上効果を得ることができた。
同様に、表12に示すように、実施例3で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行った本発明である試料No.4−5は、実施例3で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていない試料No.4−8に比べて、140℃において高いHcJ向上効果が得られたのに対して、実施例3で用いた組成の焼結体に対しPr拡散処理後に重希土類元素拡散処理を行った試料No.4−6では、高いHcJ向上効果が得られなかった。このサンプルでは、Pr拡散処理後に同処理温度よりも高い900℃で重希土類元素拡散処理を行ったことから、Pr拡散処理時に結晶粒界に導入されたPrが、重希土類元素拡散処理時に結晶粒内(とりわけ、結晶粒の表面近傍)に入り、結晶粒内にPrの濃度が高い領域を広範囲に亘り形成したためと考えられる。
さらに、実施例3で用いた組成の焼結体に対し処理温度900℃で重希土類元素拡散処理とPr拡散処理を同時に行った試料No.4−7は、実施例3で用いた組成の焼結体に対し重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていない試料No.4−8に比べて、高いHcJ向上効果が得られなかった。これも上述したPr拡散処理後に同処理の処理温度より高い温度で重希土類元素拡散処理を行った場合と同様に、処理温度が高いため、結晶粒内にPrの濃度が高い領域が広範囲に亘り形成されたためと考えられる。また、表12に示すように、比較例サンプルは160℃、180℃において高いHcJ向上効果を得ることができなかったが、本発明サンプルは160℃、180℃においても同様に高いHcJ向上効果を得ることができた。
また表12に示すように、重希土類元素拡散処理後にPr拡散処理を行った本発明である試料No.4−1および4−5は、Pr拡散処理後に重希土類元素拡散処理を行った試料No.4−2および4−6や、処理温度880℃または900℃で重希土類元素拡散処理とPr拡散処理を同時に行った試料No.4−3および4−7ならびに、重希土類元素拡散処理の後にPr拡散処理を行っていない試料No.4−4および4−8の比較例サンプルに比べて、角型比(H/HcJ)が大きく向上している。
5.実施例5
実施例1と同様の方法で重希土類元素(Dy)拡散処理を行い、表13に示す組成および酸素、窒素、炭素濃度を含有する焼結体を作製した。この重希土類元素拡散処理後の焼結体(試料No.5−1〜5−9)に対してPr拡散処理を行い、試料No.5−1P〜5−9Pの焼結磁石を得た。重希土類元素拡散処理ならびにPr拡散処理の条件(試料No.5−1P〜5−9Pの焼結磁石作製条件)を表14に示す。さらに、試料No.5−1〜5−9の焼結体および5−1P〜5−9Pの焼結磁石に対し460℃〜560℃で3時間熱処理を行い、得られた焼結磁石の140℃におけるHcJを測定した。なお、焼結体の寸法、磁気特性測定サンプルの寸法および磁気特性測定方法は実施例1と同様に行った。Pr拡散処理なし(試料No.5−1〜5−9)およびPr拡散処理後(試料No.5−1P〜5−9P)の140℃におけるHcJ測定結果を表15に示す。
Figure 2014130888
Figure 2014130888
Figure 2014130888
表15に示すように、いずれの焼結磁石についても140℃において高いHcJ向上効果が得られていることがわかる。また、試料No.5−1P〜5−9Pに示したPr拡散処理したR−T−B系焼結磁石の表層部における、粒界多重点の金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジウム(Pr)の質量比率を実施例1と同様にTEM−EDX分析により求めた。その結果、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、44%〜55%であり、上述した本発明の範囲内であった。

Claims (6)

  1. 希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石であって、
    ネオジム(Nd)と、ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方と、プラセオジム(Pr)とを含み、
    前記金属間化合物の結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方が濃化しており、
    R−T−B系焼結磁石の表層部の少なくとも一部分において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が、75%以下であり且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも10パーセントポイント以上高いことを特徴とするR−T−B系焼結磁石。
    一般式: R14
    (ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。)
  2. 前記結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)が濃化していることを特徴とする請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石。
  3. 前記金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が、該金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高いことを特徴とする請求項1または2に記載のR−T−B系焼結磁石。
  4. 1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、
    2)ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させることにより、前記金属間化合物の結晶粒の外殻部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を濃化させる工程と、
    3)前記工程2)の後に、プラセオジム(Pr)を含むプラセオジム供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該プラセオジム供給源と該焼結体とを加熱し、該プラセオジム供給源から該焼結体にプラセオジム(Pr)を拡散させることにより、該焼結体の表層部の少なくとも一部分において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が75%以下で且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも10パーセントポイント以上高くなるようにする工程と、
    を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法。
    一般式: R14
    (ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。)
  5. 前記工程3)において、前記焼結体のプラセオジム(Pr)含有量が0.2〜1.5質量%増加することを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記工程3)において、前記焼結体と前記プラセオジム供給源とを600℃〜800℃に加熱することを特徴とする、請求項4または5に記載の製造方法。
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