JP6221246B2 - R−t−b系焼結磁石およびその製造方法 - Google Patents
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Description
このため、例えば特許文献1〜3に示すようにR−T−B系焼結磁石の表面から内部にジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を拡散させて主相結晶粒の粒界近傍(主相結晶粒の外殻部)にジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を濃化させて高温でも高いHcJを得る方法が採られている。
これは、例えばR2Fe14BのRがPrの場合とNdの場合とで異方性磁界(この値が大きいほどHcJが大きくなる)の温度依存性を比べた実験結果(例えば、文献名:J.Appl.Phys.,Vol.59,No.3、P.873(1986)に示されるグラフ)からも理解できる。すなわち、室温(300K)ではRがPrの場合の方が、RがNdの場合より高い異方性磁界の値を示すが、例えば160℃(433K)のような高温では、RがNdの場合の方が、RがPrの場合より高い異方性磁界の値を示している。
このため、高温におけるHcJを向上させることを目的にPrを添加することは好ましくないと考えられていた。
一般式: R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。)
一般式: R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。)
なお、本明細書における用語「表層部」は、文字「層」を含んでいるが、層状となった組織を有することを規定するものではなく(層状の組織を必須とするものではなく)、断面において、表面およびその近傍を意味する(「表面部」または「表面近傍部」と言い換えることができる)。得ようとするR−T−B系焼結磁石の寸法および詳細を後述するPr拡散処理の条件や拡散処理後の磁石研削量等にもよるが、多くの場合、本発明のR−T−B系焼結磁石は表面から100μmの間に、より確実に上述した特徴を有する本発明に係る表層部を形成する傾向がある。
1−1.焼結体の作製
(1)焼結体の組成
焼結体は、Ndを含む希土類元素と、Feと、Bとを含むR−T−B系焼結磁石として知られている任意の組成であってよい。以下に好ましいR−T−B系焼結磁石の組成を示す。
Rは、希土類元素であり、Ndが必須であり、Rのうち質量比で50%以上をNdとする。Prを質量比で50%以上含有すると、高温のHcJが大きく低下するため、本発明の効果を得られない恐れがある。また、NdおよびPr以外の希土類金属を含んでよい。
焼結体全体でNdと他の希土類元素を合計して25質量%以上35質量%以下であることが好ましい。25質量%未満では焼結ができない場合があり、35質量%を超えるとBrが著しく低下する場合があるためである。
Nd以外の希土類元素は、例えば、ミッシュメタルおよび/またはジジム合金(Nd−Pr合金)を用いることにより含まれる。例えば、ジジム合金を用いると、焼結体はPrを含む。この場合、焼結体がPrを含んだ状態で後述する拡散処理を行うこととなる。
Tの含有量は、RとBあるいはRとBと後述するMとの残部を占めてよい。
上述の焼結体の組成と実質的に同じ組成を有する合金粉末を作製する。
合金粉末は、例えば、溶解法により、所望の組成を有するR−T−B系焼結磁石用原料合金のインゴットまたはフレークを作製し、この合金インゴットおよびフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕粉を得る。
そして、粗粉砕粉をジェットミル等により更に粉砕して微粉細粉(合金粉末)を得ることができる。
最終的に必要な組成となるように事前に調整した金属を溶解し、鋳型にいれるインゴット鋳造法により合金インゴットを得ることができる。
また、溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスクまたは回転円筒鋳型等に接触させて急冷し、インゴット法で作られた合金よりも薄い凝固合金を作製するストリップキャスト法または遠心鋳造法に代表される急冷法により合金フレークを製造することができる。
急冷法によって作製したR−T−B系焼結磁石用原料合金(急冷合金)の厚さは、通常0.01mm〜3mmの範囲にあり、フレーク形状である。合金溶湯は冷却ロールの接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)に比較して、短時間で凝固されているため、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。急冷合金を水素粉砕することで、水素粉砕粉(粗粉砕粉)のサイズを例えば1.0mm以下とすることができる。
ジェットミルは、(a)酸素含有量が実質的に0%の窒素ガスおよび/またはアルゴンガス(Arガス)からなる雰囲気中、または(b)酸素含有量が0.005〜3%の窒素ガスおよび/またはArガスからなる雰囲気中で行うのが好ましい。
得られた合金粉末を用いて磁界中プレス成形を行い、成形体を得る。磁界中プレス成形は、磁界を印加した金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入しプレスする乾式法、および金型のキャビティー内にスラリーを挿入し、スラリーの分散媒を排出しながらプレスする湿式法を含む既知の任意の方法を用いてよい。
成形体を焼結することにより焼結体を得る。
成形体の焼結は、公知のR−T−B系焼結磁石の製造方法と同様の方法を用いることができる。なお、焼結による酸化を防止するために、雰囲気ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより置換しておくことが好ましい。
そして、主相結晶粒は、焼結体の断面観察において、50%(体積比または断面の面積比)以上、好ましくは70%(体積比または断面の面積比)以上存在している。
R2T14B (1)
ここで、RはNdを質量比で50%以上含有する1種類以上の希土類元素であり(すなわち、R全体の50質量%以上がNd)、TはFeまたはFeとCoである。
次に得られた焼結体に拡散処理を施す。焼結体の表面から内部にPrを供給し、焼結磁石の表層部において、粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を、当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より20パーセントポイント以上高くし、かつ表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を75%以下にする。また、好ましくは表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を60%以下にする。高温におけるHcJ向上効果をより一層高くできるからである。
さらに、焼結体に拡散処理を実施して得たR−T−B系焼結磁石は、焼結体の表面からPrを供給するために、Prの濃度が中央部よりも高くなっている表層部を有することになる。
以下に拡散処理の詳細を説明する。
プラセオジム供給源として、Prを含む固体、スラリーなどの任意の形態のプラセオジム供給源を用いてよい。
好ましいプラセオジム供給源は、PrメタルまたはPrを含む合金である。合金を用いる場合、Prが30質量%以上含まれていることが好ましい。
プラセオジム供給源として用いることができる合金としてPr−Fe合金、Pr−Al合金を例示できる。
プラセオジム供給源の形状、サイズは拡散処理方法によって適宜選定すればよく、薄膜や粉末などでもよい。
拡散処理は、加熱中にプラセオジム供給源と焼結体とを接触させてプラセオジム供給源から焼結体にPrを粒界拡散させる方法が好ましい。
念のために言及するが、本明細書において、「20パーセントポイント以上高い」とは、パーセント(質量%)で示される含有量において、その値が20以上大きいことを意味する。例えば、対象物AのR中のPrの含有量が40質量%であり、対象物BのPrの含有量が対象物Aより20パーセントポイント以上高いとは、対象物BのR中のPrの含有量が60質量%以上であることを意味する。
しかし、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、焼結体の一部をマスクすることにより、および/または焼結体の一部を冷却し他の部分より温度を低くする等により、得られたR−T−B系焼結磁石の表面の一部分(または表面直下部の一部)にのみ本発明に係る表層部を形成する実施形態も含む。
例えば、Prの濃度が中央部よりも高い表層部が、R−T−B系焼結磁石の表面の全体ではなく、一部分(または表面直下部の一部)に形成される実施形態、およびPrの濃度が中央部よりも高い表層部の全てではなく、一部分のみにおいて結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より20パーセントポイント以上高く、金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下である実施形態も本発明に含まれる。
また、Coを含有する焼結磁石では、Coを含む金属相も存在するが、本発明の効果は、Coを含まない金属相において規定したPr濃度範囲で得られるものである。
得られた焼結磁石は、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などの熱処理条件は、R−T−B系焼結磁石の焼結後の熱処理条件として公知の条件(例えば、500℃で3時間)を採用することができる。なお、最終的な磁石寸法の調整を研削などの機械加工等により行ってもよい。
この場合、熱処理の前に行っても、後に行ってもよい。
上述の製造方法により得たR−T−B系焼結磁石は、いくつかの特徴を示す。
拡散処理前の焼結体は、Prを含有しないため、拡散処理により増加したPr量がそのまま得られたR−T−B系焼結磁石のPr含有量となる。Prを焼結体の表面から内部に拡散させたことから、得られたR−T−B系焼結磁石は中央部よりPrの濃度が高くなっている表層部を有する。中央部および表層部のPr濃度は、例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA)等の分光法により、結晶粒を10個〜100個含む(結晶粒を含む)断面の濃度測定を行うことで求めることができる。この場合、「結晶粒を10個〜100個」は、断面上に表れた結晶粒を意味し、断面に表れた結晶粒の下(深さ方向)に別の結晶粒があり、喩え、EPMA分析に当該別の結晶粒が寄与したとしてもこの結晶粒は「結晶粒を10個〜100個」のなかに含まない。
拡散処理前の焼結体について、例えば、そのR(希土類元素)がジジム合金により供給された場合、もともと結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は20%程度である。
そして、拡散処理では、Prは焼結体の表面から主として粒界に拡散し、結晶粒内にはあまり拡散しない。 すなわち、拡散処理前の焼結体がPrを実質的に含有しない場合と同様に、Prを焼結体の表面から内部に拡散させることにより、得られるR−T−B系焼結磁石は中央部よりPrの濃度が高くなっている表層部を有し、当該表層部において、結晶粒の粒界多重点における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率を当該金属相に隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率より20パーセントポイント以上高く、表層部における金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率が75%以下となる。
一方、このような場合においても金属相と隣接する結晶粒が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、20%程度と拡散処理の前とほとんど変わらない。
また、このどちらの場合も、焼結体全体の組成はNdがPrで置換されただけであるから、Pr以外の元素の濃度について、その好ましい範囲は上述の焼結体について示した好ましい範囲の数値を用いても実用上問題ない。
ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕粉し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。
そして、この合金粉末から乾式法により成形体を作製し、これを真空炉により1020℃で4時間の焼結を行い、長さ21.0mm×幅16.0mm×厚さ3.4mmの焼結体を得た。
焼結体の組成は、Nd:31.7質量%、B:0.95質量%、Co:0.9質量%、Al:0.1質量%、Cu:0.1質量%、Ga:0.1質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度は、それぞれ、酸素:5000ppm、窒素:300ppm、炭素:700ppmであった。
拡散処理は、処理容器内に焼結体を載置し、21.0mm×16.0mmの両面にプラセオジム供給源としてPrメタルの粉末を散布した。散布したPrメタルの粒径は篩い目で100μm以下であった。
処理温度(プラセオジム供給源と焼結体の温度)と、処理時間と、焼結体に散布したプラセオジム供給源の量であるPr散布量と、拡散処理前後のサンプルについてICP発光分析を行い求めた。Pr増加量と、ICP発光分析により求めた拡散処理後の総希土類量(=Nd+Pr質量%)とを表1に示す。ここで、Pr増加量とは、Prを拡散処理した後の焼結磁石に含まれるPr量からPrを拡散処理する前の焼結体に含まれるPr量を差し引いた量である。
図1は、試料No.3のR−T−B系焼結磁石の表層部(表面から深さ50μm)を観察したDF−STEM像を示す。図1の黒味がかった灰色の部分が粒界多重点であり、白い灰色の部分が結晶粒である。図1から明らかなように、3つの結晶粒の粒界多重点を観察することができる。さらに図1の元素マッピング像を図2に示す。図2から明らかなように、粒界多重点には、酸素(O)が多く存在する酸化物相(薄い灰色の部分)と、酸素(O)の存在量がほとんどない金属相(図1における粒界多重点から酸化物相を除いた部分)が存在する。さらに図2のPrマッピング像から明らかなように、Prは、粒界多重点に濃化していると考えられる(Prマッピング像における白い灰色の部分)。ただし、ここでは酸化物相の中央部(酸化物相の黒色の部分)は、Prがほとんどない存在していない。参考までに、図3に図2における金属相と酸化物相の位置を示す。
溶解時にPrを添加した試料No.8〜10は、Pr増加量が増加すると、結晶粒、金属相共に希土類元素に占めるPrの質量比率が上昇している。さらに、試料No.8〜10は、いずれも金属相(A点)が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、当該金属相に隣接する結晶粒(B点)における希土類元素に占めるPrの質量比率と比べて高いが、大きな差はなく20パーセントポイント未満高いだけである。
これに対し、表4に示すように、本発明の試料はは、160℃、180℃といった更なる高温においても、Prを含有していない磁石(試料No.7)と比べて、同様のHcJ向上効果が得られている。
焼結体の厚さを3.4mmから5.4mmにした以外は、実施例1と同じ条件で焼結体を準備した。
拡散処理は、処理容器内に焼結体を載置し、21.0mm×16.0mmの両面にプラセオジム供給源としてPrメタルを散布した。散布したPrメタルの粒径は篩い目で100μm以下であった。
処理温度(プラセオジム供給源と焼結体の温度)と、処理時間と、焼結体に散布したプラセオジム供給源の量であるPr散布量と、拡散処理前後のサンプルについてICP発光分析を行い求めたPr増加量と、ICP発光分析により求めた拡散処理後の総希土類量(=Nd+Pr質量%)とを表6に示す。
溶解時にPrを添加した試料No.18〜20は、Pr増加量が増加すると、結晶粒および金属相共に希土類元素に占めるPrの質量比率が増加している。さらに、試料No.18〜20は、いずれも金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率は、当該金属相に隣接する結晶粒における希土類元素に占めるPrの質量比率と比べて20パーセントポイント未満高いだけである。
これに対し、表9に示すように、本発明の試料は、160℃および180℃とより高温においても、Prを含有していない磁石(試料No.17)と比べて、同様のHcJ向上効果が得られている。
原料にジジム合金を用いストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕粉し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により1020℃で4時間の焼結を行い、長さ21.0mm×幅16.0mm×厚さ3.4mmの焼結体を得た。焼結体の組成は、Nd:22.5質量%、Pr:6.3質量%、Dy:0.6質量%、B:0.94質量%、Co:2.0質量%、Al:0.1質量%、Cu:0.1質量%、Ga:0.1質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度はそれぞれ、酸素:800ppm、窒素:300ppm、炭素:1100ppmであった。
拡散処理は、処理容器内に焼結体を載置し、厚さ方向の両面(長さ21.0mm×幅16.0mmの2つの面)にプラセオジム供給源としてPrメタルの粉末を散布した。散布したPrメタルの粒径は篩い目で100μm以下であった。
処理温度(プラセオジム供給源と焼結体の温度)と、処理時間と、焼結体に散布したプラセオジム供給源の量であるPr散布量と、拡散処理前後のサンプルについてICP発光分析を行い求めたPr増加量と、ICP発光分析により求めた拡散処理後の総希土類量(=Nd+Pr質量%)とを表11に示す。
さらに、表13に示すように、本発明は、160℃および180℃のさらなる高温においても、Prを拡散処理していない磁石(試料No.26)と比べて、同様のHcJ向上効果が得られている。
表15に示す組成(ICPにより測定した組成)および酸素、窒素、炭素濃度を含有する焼結体を準備した。
そして、表16の条件でPrメタル粉末を用いPr拡散処理を行った。さらに460℃〜560℃で3時間熱処理を行い、得られた焼結磁石の140℃におけるHcJを測定した。また、表15に示す組成および酸素、窒素、炭素濃度を含有する焼結体を別に用意してPr拡散処理を行わずに460℃〜560℃で3時間熱処理を行い、得られた焼結体の140℃におけるHcJを測定した。なお、焼結体の寸法、磁気特性測定サンプルの寸法および磁気特性測定方法は実施例1と同じにした。測定結果を表17に示す。
Prメタルと電解Feを用いて急冷法によりPr−Fe合金薄帯を作製し、スタンプミルで粉砕してPr−Fe合金の粉末を得た。実施例1で用いた組成の焼結体(試料No.7)に対して、得られたPr−Fe粉末を80mg散布し、700℃で4時間熱処理することで、Pr拡散処理を行い、試料No,41〜43を得た。散布したPr−Fe合金粉末の粒径は篩い目で150μm以下であった。試料No,41〜44に対し500℃で3時間熱処理を行った後、室温(23℃)および140℃のHcJを測定した。用いたPr−Fe合金の組成とPr増加量および室温(23℃)、140℃のHcJを表18に示す。なお、焼結体の寸法、磁気特性測定サンプルの寸法および磁気特性測定方法は実施例1と同様に行った。また、試料No.41〜43について、上述した実施例1と同様に、焼結磁石の表層部における、粒界多重点の金属相が含有する希土類元素に占めるPrの質量比率と、当該金属相に隣接する結晶粒の質量比率をTEM−EDX分析により求めた。結果を表19に示す。
組成がNd:30.0質量%、Dy:1.0質量%、B:0.95質量%、Co:2.0質量%、Al:0.1質量%、Cu:0.1質量%、Ga:0.1質量%、Fe:残部からなる焼結体が得られるように原料合金を準備した。原料合金はストリップキャスト法で作製した0.3mm〜0.4mmの鋳片で、これを水素粉砕により大きさ約500μm以下の粉末に粗粉砕した後、ジェットミルによる微粉砕を行い、粉末の平均粒径が約4.0μmの微粉末を作製した。
Claims (10)
- ネオジム(Nd)およびプラセオジム(Pr)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石であって、
前記金属間化合物の結晶粒を10個〜100個含む断面における分光法による濃度測定において、プラセオジム(Pr)の濃度が前記R−T−B系焼結磁石の中央部よりも高くなっている表層部を有し、
該表層部の少なくとも一部分において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が75%以下であり、かつ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高いことを特徴とするR−T−B系焼結磁石。
一般式: R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。) - 前記表層部において前記金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が60%以下であることを特徴とする請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石。
- 前記結晶粒を10個〜100個含む断面における分光法による濃度測定において、プラセオジム(Pr)の濃度が中央部よりも高くなっている前記表層部の全体に亘り、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が75%以下であり、かつ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高いことを特徴とする請求項1または2に記載のR−T−B系焼結磁石。
- 1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、
2)プラセオジム(Pr)を含むプラセオジム供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該プラセオジム供給源と該焼結体とを加熱し、該プラセオジム供給源から該焼結体にプラセオジム(Pr)を拡散させることにより、前記金属間化合物の結晶粒を10個〜100個含む断面における分光法による濃度測定において、プラセオジム(Pr)の濃度がR−T−B系焼結磁石の中央部よりも高くなっている表層部を形成し、該表層部の少なくとも一部分において、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が75%以下で且つ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高くなるようにする工程と、
を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法。
一般式: R2T14B
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。) - 前記表層部において前記金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が60%以下である請求項4に記載の製造方法。
- 前記結晶粒を10個〜100個含む断面における分光法による濃度測定において、プラセオジム(Pr)の濃度が中央部よりも高くなっている前記表層部の全体に亘り、前記結晶粒の粒界多重点に存在する金属相が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率が75%以下であり、かつ前記金属相に隣接する前記結晶粒が含有する希土類元素に占めるプラセオジム(Pr)の質量比率よりも20パーセントポイント以上高くすることを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
- 前記工程2)において、前記焼結体のプラセオジム(Pr)含有量が質量比で0.3パーセントポイント〜1.5パーセントポイント増加することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記プラセオジム供給源は、プラセオジム(Pr)を30質量%以上含有していることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記プラセオジム供給源は、Pr−Fe合金であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記プラセオジム供給源は、Pr−Al合金であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
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