JP2012089774A - 希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 - Google Patents

希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法、製造装置及び得られる希土類−遷移金属−窒素磁石粉末、それを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石を提供。
【解決手段】還元拡散法により、遷移金属合金粉末、希土類酸化物粉末、及び該希土類酸化物を還元するための還元剤を混合し、該混合物を非酸化性雰囲気中で加熱焼成して希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物とする工程と、この還元拡散反応生成物を窒化炉に装入し、窒化用ガスを流通しながら加熱し、窒化処理して希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得る製造方法において、前記希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、窒化用ガスが、窒化炉1に設けられた2箇所以上の供給口10から流通され窒化を均一に行う。
【選択図】図2

Description

本発明は、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石に関し、さらに詳しくは、希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、該合金粉末全体に窒素を均一に供給することにより、均一に窒化され磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法、工業的量産性に適した製造装置及び得られる希土類−遷移金属−窒素磁石粉末、それを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石に関する。
近年のさまざまな電気機器類、例えば携帯電話やデジタルカメラ、デジタルビデオなど多くの家電製品などは小型化、軽量化、高性能化が要求されており、その要求は高まるばかりである。さらに地球温暖化防止の観点からも軽量化、効率化の要望は非常に強くなってきている。このような小型化、軽量化を実現するためには、上記家電製品に用いられている永久磁石の小型化、高特性化が重要な課題の一つとなっている。さらに上記家電製品では、コスト競争も激しさを増しており、用いられる永久磁石に要求される事項として、軽量化、高特性化、さらには価格(安価)が加えられるようになっている。
永久磁石材料として、価格面では従来から使われているフェライト磁石が最も有利であるが、最大エネルギー積(BH)maxが15〜20kJ・m−3(数MGOe)と非常に低く、軽量化、高特性化の要求には到底応えきれていない。特性面では、フェライト磁石などの低特性磁石に比較し数10倍の磁気特性を有する希土類磁石が知られている。該希土類磁石も上記背景のもと需要が伸びており、1993年にはフェライト磁石を抜いて使用量が最も多い磁石となっている。このうちNd−Fe−B系焼結磁石は、440kJ・m−3(55MGOe)を超える最大エネルギー積(BH)maxを有し、希土類磁石の中でも最も需要が高い。さらに、磁石粉末の磁気特性では、理論上、Nd−Fe−B系磁石に並ぶ磁石として、菱面体晶系、六方晶系、正方晶系、又は単斜晶系の結晶構造を有する希土類−遷移金属金属間化合物に窒素を導入した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末が、永久磁石材料として優れた磁気特性を有することから注目されており、需要を伸ばしている。
例えば、R−Fe−N(R:Y、Th、及び全てのランタノイド元素からなる群の中から選ばれた1種または2種以上)で表される永久磁石(特許文献1参照)、また、六方晶系あるいは菱面体晶系の結晶構造を有するR−Fe−N−H(R:イットリウムを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)で表される高い磁気異方性を有する材料が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、菱面体晶系、六方晶系、又は正方晶系の結晶構造を有するThZn17型、TbCu型、又はThMn12型金属間化合物に窒素等を含有させた希土類磁石材料が知られ、これらの磁石材料の磁気特性等を改善するために、種々の添加物を用いることも検討されている。
例えば、六方晶系あるいは菱面体晶系の結晶構造を有するR−Fe−N−H−M(R:Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種;M:Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Pd、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、Biの元素、及びこれらの元素並びにRの酸化物、フッ化物、炭化物、窒化物、水素化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、塩化物、硝酸塩のうち少なくとも1種)で表される磁石粉末が知られている(特許文献3参照)。
また、六方晶系あるいは菱面体晶系の結晶構造を有するR−Fe−N−H−O−M(R:Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種;M:Mg、Ti、Zr、Cu、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Biの元素、及びこれらの元素並びにRの酸化物、フッ化物、炭化物、窒化物、水素化物のうち少なくとも1種)で表される磁性材料が知られている(特許文献4参照)。
これらの希土類−遷移金属−窒素磁性材料の多くは、保磁力発生機構がニュークリエーションタイプであるため、平均粒径1〜10μmの微細な粉末として使用される。この理由は、平均粒径が10μmを超えると、必要な保磁力が得られないか、ボンド磁石にしたとき該ボンド磁石の表面が粗くなって表面にある磁石粉末の脱落が起こりやすくなってしまうためである。一方、平均粒径が1μm未満では、磁石粉末の酸化による発熱やそれに伴う発火の恐れがあり、さらにThZn17型結晶構造を有する主相の分解による磁気特性の低下が起こるため好ましくないとされている。
上記のニュークリエーションタイプの希土類−遷移金属−窒素磁性材料は、数μmあるいは数10μmを超える平均粒径を有する希土類−遷移金属母合金粉末を製造した後、窒素原子を導入するため、窒素やアンモニア、又はこれらと水素との混合ガス雰囲気中で200〜700℃に加熱する窒化処理を行い、次いで、上記所定の粒度に微粉化して製造されている。
上記希土類−遷移金属−窒素磁性材料の原料として用いられる希土類−遷移金属母合金粉末は、溶解鋳造法、液体急冷法、還元拡散法等により製造される。このうち溶解鋳造法では、希土類金属、遷移金属、必要に応じてその他の金属を所定の比率で調合して不活性ガス雰囲気中で高周波溶解し、得られた合金インゴットを均一化熱処理した後、ジョークラッシャー等で所定の粒度に粉砕して製造されている(例えば、特許文献5参照)。また、液体急冷法では、上記合金インゴットを用い液体急冷で合金薄帯を作製し、これを粉砕して製造されている(例えば、特許文献6参照)。
また、還元拡散法では、希土類酸化物粉末、遷移金属粉末、及び還元剤からなる混合物を非酸化性雰囲気下で加熱処理し還元、拡散反応を起こさせる。その後、還元拡散反応生成物(以下、還元物と記す場合がある)は非常に硬く取り扱いづらいため、崩壊させ粉状または小さな塊状にする。例えば、還元物を密閉容器に装入し、密閉容器内を減圧して雰囲気ガスを排出し、水素を充填させて大気圧よりも0.01〜0.11MPa高い圧力とし合金を自己発熱させ、合金が実質的に発熱しなくなるまで水素で大気圧より高くなるように加圧を続けることにより崩壊させる(特許文献7)。さらにその崩壊物から還元剤を取り除くために湿式処理し、続いて窒化、微粉砕を行い磁石粉末とする。
上記の溶解鋳造法、液体急冷法などは、原料に高価な希土類金属を用いるため磁石価格を低く抑えることは難しく、それに比較して、還元拡散法では、原料に安価な希土類酸化物を使うため価格面では有利とされている。
しかし、安価な製造方法である還元拡散法においても課題は存在する。その一つが窒化処理である。希土類−遷移金属母合金粉末は、還元拡散反応生成物から還元剤を取り除く湿式処理を行い、乾燥後に窒化をされるが、該湿式処理時、水洗、酸洗をするためにどうしても粉末表面の酸化が避けられないことにある。合金粉末表面が酸化していると窒化の際、窒素が均一に入りづらく、合金に、どうしても過窒化と未窒化の部分ができてしまい特性特性の低下を招いてしまう。したがって、還元拡散法により希土類−遷移金属−窒素磁性材料を得る場合、希土類−遷移金属母合金の窒化を均一に行うことが磁気特性を向上させるためには大きな課題と言える。
従来、希土類−遷移金属母合金の窒化においては、反応炉(窒化炉)内に導入される雰囲気ガスとしてアンモニアガスが使用され、適宜、反応速度を調節するための水素ガスを含んだ混合ガスが用いられている。この雰囲気ガスに酸素、水蒸気等の不純物が多く混入していると、窒化対象物の合金が酸化してしまい、得られる窒化合金の磁石特性劣化等の要因となる。そこで、通常は、できるかぎり高純度の原料ガスが用いられる。
しかし、アンモニアガス、水素ガスはいずれも高純度のものは高価であり、特に製造コストを引き上げていた。そのため、本出願人は、希土類−鉄系合金を窒化炉内に置き、該窒化炉内にアンモニアガスを含む雰囲気ガスを導入すると共に該窒化炉内のガスを排出して該窒化炉内を窒素雰囲気とし、且つ該窒化炉内を所定温度に保持して、窒化炉内に導入する雰囲気ガスの一部として前記窒化炉からの排ガスを利用すると共に、窒化炉内に導入される雰囲気ガス中のアンモニアガスの分圧と、反応炉から排出される排ガス中のアンモニアガスの分圧との差を特定範囲とすることを提案している(例えば、特許文献10参照)。これにより、得られる合金の特性を酸素、水蒸気等の不純物によって低下させることなく、原料ガスの使用量を節約して、希土類−鉄−窒素系合金の製造コストを低減できるようになった。
ところで、窒化反応を行う反応装置には、横型、縦型の管状炉、ロータリー式反応炉、密閉式反応炉などが使用されているが、いずれの反応装置を用いる場合でも、雰囲気ガスは炉の一方から導入され、他方から排出されていた。そのため、合金の窒化ガスが触れる箇所だけ窒化が進行し過窒化になってしまい、窒化ガスが触れない箇所においては窒素が供給されず、未窒化になってしまい、特性を大きく落としていた。
また、窒化技術に関しては、例えば、ガス切換バルブによりガス導入口と排出口を切り替えることにより双方向から窒化ガスを流通し、被窒化物である案内管の内面に全体にわたって所望の厚さで均一な質の窒化層を形成する装置(例えば、特許文献8参照)や、被処理品と補助電極との間の空間に存するガス噴出口を有するガス供給管を被処理品および補助電極に対し相対的に移動させながら、ガス供給管のガス噴出口からガス物質を空間内に供給するイオン表面処理方法などが提案されている(例えば、特許文献9参照)。しかし、これらの装置は、原子炉計測素子用の案内管の内面を窒化することができる装置であるか、被処理品の表面に処理層を形成するイオン表面処理装置であって、希土類−遷移金属母合金の窒化に使用することはできない。
以上のように、還元拡散法により、希土類−遷移金属母合金の窒化を均一に行うことができ磁気特性を確実に向上させることができ、工業的にも量産性に適した希土類−遷移金属−窒素磁性材料の製造方法の確立が強く望まれていた。
特開昭60−131949号公報 特開平2−57663号公報 特開平6−279915号公報 特開平3−153852号公報 特開平5−258928号公報 特開平5−13207号公報 特開2004−204285号公報 特公平6−80183号公報 特公平4−27294号公報 特開平10−18019号公報
本発明は、このような状況に鑑み、希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、該合金粉末全体に窒素を均一に供給することにより、均一に窒化され磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法、工業的量産性に適した製造装置及び得られる希土類−遷移金属−窒素磁石粉末、それを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、希土類−遷移金属母合金粉末を窒化して希土類−遷移金属−窒素磁性材料を製造する窒化工程において、窒化用ガスを窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口からガス供給することにより、母合金粉末が均一に窒化用ガスと接触するようになり、得られる磁石粉末の磁気特性を従来よりも高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、還元拡散法により、遷移金属合金粉末、希土類酸化物粉末、及び該希土類酸化物を還元するための還元剤を混合し、該混合物を非酸化性雰囲気中で加熱焼成して希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物とする工程と、この還元拡散反応生成物を窒化炉に装入し、引き続き、窒化用ガスを流通しながら加熱し、窒化処理して磁石粉末とする工程と、前記還元拡散反応生成物又は磁石粉末を湿式処理して還元剤を取り除く工程を含む、下記の一般式(1)で表されるニュークリエーションタイプの希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得る製造方法において、前記希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、窒化用ガスが、窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口から流通されることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
(100−a−b) …(1)
(式(1)中、Rは1種または2種以上の希土類元素、Xは1種または2種以上の遷移金属元素であり、また、a、bは原子%で、4≦a≦18、10≦b≦17を満たす。)
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、窒化用ガスが、アンモニア−水素混合ガスであることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、還元拡散反応生成物が、250〜700℃に加熱して窒化処理されることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の製造方法に使用され、希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物を装入する窒化炉本体と、炉内に装入された還元拡散反応生成物を所定の温度に加熱するヒーターと、炉内に窒化用ガスを供給・排出する手段を有しており、前記窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えてなる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、窒化用ガスを供給する手段が、内管と外管の長さが異なる二重管構造であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明において、窒化用ガスを供給・排出する手段が、窒化用ガスの供給口と排気口を切り替える制御手段を具備することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の製造方法によって得られ、希土類−遷移金属−窒素合金粉末の平均粒径が、1〜40μmであることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明の希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石用組成物を圧縮成形又は射出成形して得られる希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石が提供される。
本発明によれば、希土類−遷移金属合金の原料混合物に対して還元拡散処理を行い、これにより得られた希土類−遷移金属合金粉末に湿式処理を行ってから窒化処理を行う希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法において、窒化用ガスが、窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口から流通されることにより、希土類−遷移金属合金粉末に窒素が入りやすくなり、均一な窒化が実現できる。
その結果、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末が高磁石特性を有するようになり、小型化、高特性化を実現した永久磁石が得られる。この希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を用いれば、高磁石特性を有するボンド磁石用組成物、並びに磁気特性に優れたボンド磁石を得ることができ、携帯電話やデジタルカメラ、デジタルビデオなどを始めとする家電製品の小型化、軽量化、高性能化に対応できる。
また、本発明の磁石粉末の製造装置は、窒化炉が窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えている他は複雑な機構を持たず、比較的簡素であることから低コストであり、実用性の高い技術であって工業的に貢献度が高い。
希土類−遷移金属母合金を窒化するための従来の窒化装置と、それを用いた窒化合金の製造を示す説明図である。 希土類−遷移金属母合金を窒化するための本発明の窒化装置と、それを用いた窒化合金の製造の一実施態様を示す説明図である。 希土類−遷移金属母合金を窒化するための本発明の窒化装置と、それを用いた窒化合金を製造する他の実施態様を示す説明図である。
以下、本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びこれを用いたボンド磁石用組成物、およびボンド磁石について、図面を用いて詳しく説明する。
1.希土類−遷移金属−窒素磁石粉末
本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、後で詳述する製造方法によって得られ、希土類元素、遷移金属元素、及び窒素から構成されている。
すなわち、本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、次の一般式(1)で表される希土類−遷移金属−窒素合金からなる、保磁力発生機構がニュークリエーションタイプの磁石粉末である。
(100−a−b) …(1)
(式(1)中、Rは1種または2種以上の希土類元素、Xは1種または2種以上の遷移金属元素であり、また、a、bは原子%で、4≦a≦18、10≦b≦17を満たす。)
(希土類元素)
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を構成する、主要成分の希土類元素(R)は、磁気異方性を発現させ、保磁力を発生させる上で本質的な役割を果たす元素である。
希土類元素としては、Yを含むランタノイド元素のいずれか1種または2種以上であり、例えば、Y、La、Ce、Pr、Nd、およびSmの群から選ばれる少なくとも1種以上の元素が挙げられる。これらの中でも、Sm及び/又はNdが好ましい。また、これらとEu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbの群から選ばれる少なくとも1種の元素とを組み合わせれば、磁気特性を高めることができる。
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の希土類元素は、4原子%以上18原子%以下であることが必要である。4原子%よりも少なければ、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになり高い保磁力が得にくくなり、18原子%を超えると主相となる合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下するため好ましくない。
希土類元素の中では、特に、Smが好ましく、Smが希土類元素の50原子%以上含むと高い保磁力を持つ材料が得られる。ここで用いる希土類元素は、工業的生産により入手可能な純度でよく、製造上、混入が避けられない元素、例えば、O、H、C、Al、Si、F、Na、Mg、Ca、Liなどが含まれていても差し支えない。
(遷移金属元素)
本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を構成する主要な遷移金属元素としては、具体的には、鉄(Fe)が挙げられ、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の必須成分であるが、磁気特性を損なうことなく温度特性や耐食性を改善する目的で、その一部をCoまたはNiの1種以上で置換してもよい。Fe単独、またはFeの一部をCoまたはNiの1種以上で置換した合金をまとめて以下、Fe成分と称する。
Fe成分は、強磁性を担う基本元素であり、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末としたとき、65原子%以上、約86原子%以下含有する必要がある。Fe成分が、65原子%より少ないと磁化が低くなり好ましくない。また、Fe成分が86原子%を超えると希土類元素の割合が少なくなり過ぎ、高い保磁力が得られず好ましくない。Fe成分の組成範囲が70〜80原子%であれば、保磁力と磁化のバランスのとれた材料となり、特に好ましい。
(窒素)
窒素は、本発明で得られた希土類−遷移金属母合金を窒化して、磁石化するために必要な元素であり、10〜17原子%含有する必要がある。窒素が10原子%未満では9eサイトに窒素が埋まりきらず高い磁気特性が得られず、窒素が17原子%より多く入ってしまうと結晶構造が壊れ磁気特性が下がってしまう。本発明では、窒素が希土類−遷移金属母合金に対して均一に含有されているので、窒素が不足していたり、過剰に入っていたりすることがなく、高い磁気特性を有する希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を実現できるのである。
2.希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法
本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法は、遷移金属合金粉末、希土類酸化物粉末、及び該希土類酸化物を還元するための還元剤を混合し、該混合物を非酸化性雰囲気中で加熱焼成して希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物とする工程と、この還元拡散反応生成物を窒化炉に装入し、引き続き、窒化用ガスを流通しながら加熱し、窒化処理して磁石粉末とする工程と、前記還元拡散反応生成物又は磁石粉末を湿式処理して還元剤を取り除く工程を含んでいる。本発明では、得られた窒化物を必要によりアニールする工程、微粉砕又は解砕して所定の粒径を有する希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とする工程を含むことができる。
2−1 還元拡散工程
本発明では、遷移金属合金粉末、希土類酸化物粉末、及び該希土類酸化物を還元するための還元剤を混合した後、該混合物を非酸化性雰囲気中で加熱焼成して、希土類−遷移金属母合金を含む還元物を得る還元拡散法を採用する。
(希土類酸化物)
希土類酸化物は、前記希土類元素、すなわち、例えば、Y、La、Ce、Pr、Nd、およびSmの群から選ばれる少なくとも1種以上の元素の酸化物である。
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の希土類元素は、4原子%以上18原子%以下であることが必要である。4原子%よりも少なければ、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになり高い保磁力が得にくくなり、18原子%を超えると主相となる希土類−遷移金属−窒素合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下するため好ましくない。
希土類元素の中では、特に、Smが好ましく、Smが希土類元素の50原子%以上含むと高い保磁力を持つ材料が得られる。
希土類酸化物は、目標組成より2〜20%程度多く入れることが好ましい。これは希土類元素の投入量が少ないと還元剤を除去する湿式処理時に希土類元素成分がより多く溶け出てしまうため、希土類元素量が目標組成以下となって希土類が不足し軟磁性相が出現してしまい保磁力を下げてしまうからである。一方、希土類成分が上記範囲より多すぎると非磁性相が多くなり磁化が下がってしまうため好ましくない。
(遷移金属合金粉末)
遷移金属合金粉末としては、鉄粉末を必須として、鉄酸化物粉末、コバルト粉末、ニッケル粉末などを混合することができる。鉄粉末としては、例えば還元鉄粉、ガスアトマイズ粉、水アトマイズ粉、電解鉄粉などが使用でき、必要に応じて最適な粒度になるように分級する。
ここで鉄粉末の30重量%までを鉄酸化物粉末として投入し、還元拡散反応の発熱量を調整することもできる。また、Feの20重量%以下をCoで置換した組成の希土類−鉄−コバルト−窒素系磁石粉末を製造する場合には、Co源としてコバルト粉末および/またはコバルト酸化物粉末および/または鉄−コバルト合金粉末を用いる。コバルト酸化物としては、たとえば酸化第一コバルトや四三酸化コバルト、これらの混合物で、上記粒度を持つものが使用できる。鉄粉末には製造上、混入が避けられない元素、例えば、O、H、C、Al、Si、F、Na、Mg、Ca、Liなどが0.1wt%程度まで含まれていても差し支えない。
原料として用いる遷移金属合金粉末の粒度分布は、特に制限されるわけではないが、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の目標の粒度分布に近いものを用いることが好ましい。特に、鉄粉末は、粒径が10〜70μmの粉末が全体の80%以上を占めるようにすることが好ましい。鉄粉末は、粒径70μmを超えるものが多くなると、希土類−鉄母合金粉末中に希土類元素が拡散していない鉄部が多くなるとともに母合金粉末の粒径も大きくなり、窒素分布が不均一になって、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末の角形性が低下しやすい。
これに対し、希土類酸化物粉末、コバルト酸化物粉末は、これらの中でもっとも多い希土類酸化物粉末でも組成が30重量%未満であることから、還元拡散反応時に、反応容器内部で上記鉄粉末の周りに均一に分布存在していることが望ましい。したがって、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の80%以上を占めるものであることが好ましい。
粒径が0.1μm未満の粉末が多くなると、製造中に粉末が舞い上がって取り扱いにくくなる。また、10μmを超えるものが多くなると、還元拡散法で得られた希土類−鉄−母合金粉末中の希土類元素が拡散していない鉄部が多くなる。
(還元剤)
還元剤は、希土類酸化物を還元する機能を有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属である。例えば、Li及び/又はCa、あるいはこれらの元素とNa、K、Mg、Sr又はBaから選ばれる少なくとも1種が使用できる。
これら還元剤は、その投入量と粉体性状、希土類酸化物の粉体性状、各種原料粉末の混合状態、還元拡散反応の温度と時間を注意深く制御して使用することが望ましい。なお、上記還元剤の中では、取り扱いの安全性とコストの点から、金属Li又はCaが好ましく、特にCaが好ましい。
還元剤の投入量は、該希土類酸化物を還元するに足るように、反応当量よりも若干過剰とすることが好ましい。還元剤を当量より過剰にしないと容器内の残存酸素や水分により還元剤が酸化し、希土類酸化物を十分還元できなくなり磁石粉末特性を低下させてしまう。
上記各原料の混合方法は、特に限定されないが、Sブレンダー、Vブレンダー、各種ミキサー等を用いて行うことができる。例えば、各原料を所定の量、秤量し、Vブレンダーで1時間程度混合すれば良い。
上記混合物を、還元拡散を行うための反応容器に移す際には、希土類酸化物などは平均粒径が数μmと細かく粉が飛散しやすく、飛散を防止するためにカバー等を取り付けることが好ましい。この操作により合金粉に組成ずれを起こすことが抑制できる。その後、還元拡散工程で上記混合物を投入した反応容器を還元拡散炉に入れ、酸素が実質的に存在しない非酸化性雰囲気とすることが好ましい。
還元拡散工程では、まず原料である希土類酸化物粉末、遷移金属粉末に、希土類酸化物を還元するために足る還元剤を配合し、該原料混合物を反応容器に入れる。この際、原料を圧縮すると還元時間を短縮できる。圧縮するために使用する装置に特に限定はないが、例えば、ノッカー、バイブレーター、プレス機などが挙げられる。バイブレーターを使用する際は棒タイプのものを反応容器に入れた該原料混合物に突き刺すなどすると効率的に圧縮できる。
次に上記原料混合物の入った反応容器を還元拡散炉に入れ、非酸化性雰囲気中、例えば、アルゴンを流しながら還元拡散炉で上記還元剤が溶融状態になる温度まで昇温し加熱焼成する。
加熱温度は1000〜1250℃程度として処理することが好ましい。還元剤としてCaを選定した場合、Caの融点が838℃、沸点が1480℃であるため、1000〜1250℃の温度範囲内であれば還元剤は溶解するが、蒸気にはならずに処理することができる。
この加熱焼成により、上記混合物中の希土類酸化物が希土類元素に還元されるとともに、該希土類元素が遷移金属合金粉中に拡散され、希土類−遷移金属母合金が合成される。この還元拡散反応が起きる際、原料混合物が圧縮されていると圧縮されていない場合に比較して、原料混合物が炉内の底部、つまり高温部で、温度分布の小さい範囲に配置され、均一に熱がかかることにより場所による反応のばらつきが小さくなり、よって組成ばらつきが小さい還元物が得られ、ひいては磁気特性の優れた合金粉末が得られることになる。さらに原料混合物が圧縮されていることにより各原料粒子間の距離が短いため熱伝導がよく、短時間で還元拡散反応が起こり昇温時間も短くなる。還元拡散時間が長い場合、蒸気圧の高い希土類元素は高温部で揮発し、低温部に濃縮し組成のばらつき原因になる。したがって、このように短時間で還元拡散反応できることは特性を向上させる大きな要因となる。希土類−遷移金属母合金を生成後は、速やかに反応容器内を室温まで冷却し、希土類−遷移金属母合金を含む還元拡散反応生成物(還元物)を取り出す。希土類−遷移金属母合金中の酸素含有量は、少ないほど好ましく、例えば0.10wt%以下であることが好ましい。
(水素処理)
上記還元物は、非常に硬いうえ、反応容器に溶着しており取り扱いづらい。このため、還元物を水砕する際、水中での崩壊性を改善するために、水中投入前に水素処理等を行うことが好ましい。水素処理を行わずに水砕を行うと、還元物の塊が残り、篩収率が悪くなり、還元剤などが微量に残留した状態で希土類−遷移金属母合金が得られることにもなり磁気特性の低下にも繋がってしまうことがある。
還元物の水素処理は以下のように行う。上記希土類−遷移金属母合金を含む還元物を真空引きできる密閉式のステンレス製容器に入れ、該容器を0.001MPa以下まで真空引きし、リークチェックを行う。その後、アルゴンガスを0.14MPaまで封入し、加圧状態でリークチェックを行う。その後、0.001MPa以下まで真空引きし容器内に水素を入れる。水素は、水素吸蔵性を有する希土類−遷移金属母合金に吸収され、希土類リッチ相と主相の膨張率の違い、還元剤の酸化、母合金の表面酸化等により、還元物は崩壊する。容器内温度が40℃以下になったらこの還元物を取り出す。
2−2 湿式処理工程
上記還元物は、次の湿式処理工程で水中に投入(水砕)し、デカンテーションにより洗浄して還元剤を除去し、次いで酸洗、固液分離、乾燥を行い、希土類−遷移金属母合金粉末を得る。
水砕では、例えば、得られた粉状還元物を、還元物1kgあたり約1リットルの水の割合で水中に投入し、1〜3時間攪拌し還元物を崩壊させ、スラリー化させる。得られたスラリーを粗い篩を通し水洗槽に移入する。このときスラリー溶液のpHは11〜12程度であり、還元物はほとんど崩壊しており、篩上に残るロス分は非常に少なくなり、還元物を水で処理し過剰還元剤を酸化させていると、水と反応し水素がでることなく安全に作業できる。
この後、デカンテーションを5〜10回程度繰り返す。デカンテーション条件は、例えば、該スラリー溶液に注水し、攪拌1分、静置分離2分、排水することを1回とする。デカンテーション条件は、この方法に限定されるわけでなく、スラリー溶液の状態に合わせて適宜選定すればよい。
その後、スラリーのpHが5〜6になるように酢酸を添加し、酸洗を行うことで固液分離し、固相分を乾燥して希土類−遷移金属母合金粉末を得る。還元剤として用いたCaは非磁性であり、希土類−遷移金属母合金粉末の粒界や粒子表面に存在するCaは磁気特性を下げるので、できるだけ除去することが好ましい。
2−3 窒化処理工程
得られた希土類−遷移金属母合金粉末は、窒化反応を行う反応装置(窒化炉)に装入し、予め窒素ガス又はアンモニア、あるいはアンモニア−水素混合ガスのいずれかを含む含窒素雰囲気とした後、特定の温度で特定時間加熱して窒化処理を行う。
希土類−遷移金属母合金粉末の大きさは特に制限されないが、窒化を効率よく行うためには、通常100μm程度以下の粒径の母合金粉末を用いることが好ましい。凝集・融着部を実質的に含まない平均粒径10〜100μmの粉末であればなお好ましい。このため、希土類−遷移金属母合金粉末の凝集・融着部をなくすために解砕しておくことが好ましく、粒径の大きな希土類−遷移金属合金粉末をさらに微粉化(解砕を含む)して製造してもよい。粒径が10μmよりも細かいと発火し易く取り扱いが難しくなる。また、粒径が100μmよりも粗いと粒子内を均一に窒化することが行いづらくなり、磁気特性が低くなってしまう。
希土類−遷移金属母合金粉末を粉砕、解砕する方法は、特に制限されず、例えば、湿式粉砕法ではボールミル粉砕や媒体攪拌型ミル粉砕等を、乾式粉砕法では不活性ガスによるジェットミル粉砕等を用いることができる。これらの中でも、粉末の凝集を少なくできるジェットミル粉砕が特に好ましい。
また、希土類−遷移金属母合金粉末の凝集をさらに少なくするため、例えば、ジェットミル粉砕では、不活性ガス中に5体積%以下の酸素を導入することで微粉化することができる。酸素は必ずしも導入する必要はないが、粉末の微細化後、回収時に発火の可能性が高い場合は酸素導入を行う。当然、均一に窒化するためには導入する酸素量を少なくして粉末の酸化膜を薄くすることがよく、希土類−遷移金属母合金粉末の酸素量が0.10質量%以下となるようにすることが好ましい。また、ボールミル粉砕や媒体攪拌ミル粉砕等では、小径の粉砕ボール、あるいはステンレス鋼等ではなくジルコニア等の低比重のセラミックス粉砕ボールを用いることによって微粉化することができる。
なお、上記希土類−遷移金属母合金粉末の粉砕処理を行った場合は、得られた希土類−遷移金属母合金粉末には、粉砕により生じた結晶の歪みが残留し、次の窒化工程においてα−Fe等の軟磁性相が発生する原因となる場合がある。α−Fe等の軟磁性相が発生すると保磁力や角型性が低下するため、磁気特性を向上させるためには、粉砕により得られた母合金微粉末を、窒化処理に先立って、アルゴン、ヘリウム、真空等の非酸化性かつ非窒化性雰囲気中、600℃以下で熱処理し、結晶の歪みを除去しておくことが好ましい。
窒化処理は、該希土類−遷移金属母合金粉末を含窒素雰囲気中で、例えば、250〜700℃に加熱する。加熱温度は、300〜600℃が好ましく、さらに好ましくは350〜550℃である。250℃未満では十分に母合金を窒化するまでの窒化速度が遅く、700℃を超える温度では希土類の窒化物と鉄とに分解してしまうので好ましくない。
加熱時間は、1〜8時間とすることが必要である。1時間よりも短いと窒化で入る窒素が少なく、磁石粉末の磁気特性が不十分となり、加熱時間が8時間よりも長いと他の窒化条件にもよるが、窒化で入る窒素量が多くなり磁石粉末の磁気特性は良好になるが、処理コストがかかり好ましくない。
窒化ガスは、窒素、またはアンモニアを用いることができる。特に、アンモニアは希土類−遷移金属合金粉末を窒化しやすく、短時間で窒化できるため好ましい。この際、水素との混合ガスとして窒化するとさらに好ましい。
本発明では、窒化ガスとして、アンモニアと水素のほかに、反応をコントロールするためにアルゴン、窒素、ヘリウムなどを混合することができる。アンモニア−水素混合ガスを用いるとアンモニアだけで窒化した場合と比較し、アンモニア分圧が下がり、表面付近が過窒化になりづらく粉末内部まで均一に窒化できる。窒化ガスの量は、磁石粉末中の窒素量が3.3〜3.7重量%となるに十分な量であることが好ましい。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.3〜0.7、好ましくは0.4〜0.6となるようにする。アンモニア分圧がこの範囲であると、母合金の窒化が進み、窒素量を3.3〜3.7重量%とすることができ、十分に磁石粉末の飽和磁化と保磁力を向上できる。
加えて窒化を2回以上に分けて行うと、窒化がさらに均一に行えて好ましい。例えば、200℃以上で窒化後、一旦、100℃以下まで冷却しその後また200以上で窒化を行う。このように2回以上に分けて窒化することにより希土類−遷移金属合金粉末の熱膨張・収縮とN導入による膨張、さらには水素が出入りによる膨張・収縮により粉末が割れ、酸化皮膜に覆われていない新生面が現れ窒素が入りやすくなり、窒化が均一に行えて磁気特性が向上する。
加熱時間は、1〜8時間とすることが必要であるが、加熱は複数回繰り返して行うことができ、1回の加熱時間を1〜3.5時間とすることが好ましい。1時間よりも短いと1回の窒化で入る窒素が少なく、窒化回数が増えて非効率的になってしまう。ただし、窒化を3回以上に分けても窒化を1回で行う場合に比較し特性は高くなり、窒化回数を複数回に分ける効果は十分にある。加熱時間が3.5時間よりも長いと窒化条件によっては1回目の窒化で入る窒素量が多くなり複数回で窒化する効果が薄れてしまう。
以上、還元拡散反応生成物の湿式処理を行った後で窒化処理を行うとしたが、本発明では、湿式処理工程と窒化処理工程の順を入れ替えて、先に還元拡散反応生成物の窒化処理を行っても良い。
このようにすることにより粉末表面が還元され、粉末表面に酸化膜がほとんど存在しないか、または非常に薄い状態で窒化できるため、均一に窒化でき特性を向上し易い。ただし、窒化反応に関与せず、また非常に微細でもある還元剤の酸化物をも窒化工程に入れることになる可能性があるので、例えば還元拡散反応生成物を窒化炉に投入する際、多量に粉塵が舞ったり、窒化時に還元剤酸化物の微粉が配管に詰まりトラブルの原因になることがあり注意を要する。したがって、湿式工程と窒化工程の順番は磁石粉の特性、設備やハンドリング性等を総合的に考え、状況に合わせ最適な方法を取ればよく、とくに限定されるわけではない。
3 希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置
本発明の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置は、希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物を装入する窒化炉本体と、炉内に装入された還元拡散反応生成物を所定の温度に加熱するヒーターと、炉内に窒化用ガスを供給・排出する手段を有しており、前記窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えている。
すなわち、窒化反応を行う反応装置は、窒化炉本体、ヒーター、窒化ガス供給・制御手段を有しており、窒化用ガスが2箇所以上から供給できれば形式によって特に限定されず、横型、縦型の管状炉、ロータリー式反応炉、密閉式反応炉などが使用できる。
何れの装置においても、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を調製することが可能であるが、本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を調製するためには、ロータリー式反応炉であることが望ましい。特に窒素組成分布の揃った粉体を得るためには、被窒化物が炉内に静置してあっては、窒化ガスが触れる箇所だけ窒化が進行し過窒化になってしまい、窒化ガスが触れない箇所においては窒素が供給されず、未窒化になってしまい、特性を大きく落としてしまうからである。ロータリー式反応炉であれば、被窒化物が炉内で流動するために窒化ガスが触れる箇所が増え、窒化がより進行しやすくなる。図1〜3には、回転軸が横軸のロータリー式反応炉を示している。本発明では、この他に縦軸のロータリー式反応炉を用いることもできる。
従来のロータリー式反応炉を示している図1では、窒化炉の炉体1の容器(レトルト)2に装入された磁石粉末が、左側の回転支持体(ロータリージョイント)3に内包された一方の供給口10から供給された窒化用ガスと接触して、右側の回転支持体(ロータリージョイント)4に内包された他方の排出口12から排出される。窒化用ガスの流通が一方向であるために、窒化ガスと接触しやすい入り口側の被窒化物では窒化が進行し過窒化になり、窒化ガスが触れない箇所や窒化ガスが消費された排出口側においては窒素が供給されず、未窒化になってしまい、窒素組成分布の揃った粉体を得ることができない。
さらに均一に窒化するためには窒化用ガスの流通を多方向として、粉末全体に均一な含窒素雰囲気にすることが重要であり、これを実現するために、本発明では窒化用ガスを窒化炉の2箇所以上から供給するようにしている。
窒化用ガスを2箇所以上から供給するには、例えば、次のような装置構成にすることができる。第一の装置構成は、窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されるように構成すること、第二の装置構成は、ガス導入口と排出口を切り替えるように構成することである。
第一の装置構成では、図2に示す回転軸が横軸のロータリー式反応炉において、窒化用ガスを供給する手段が、内管10’と外管10の長さが異なる二重管構造であるようにする。ガス導入管を二重管にして内管10’を外管10より長くなるように管の長さを調整して、窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されるように構成すれば、窒化炉の入り口で窒化されなかった被窒化物が窒化炉の中央付近で窒化ガスと触れる機会ができ、窒化がより進行しやすくなる。また、内管を流れるガス流量、内管と外管の間を流れるガス流量を制御すれば、被窒化物全体に均一な含窒素雰囲気を供給できる。なお、図2では、内管10’の先端が出口側を向いているが、下向きにすれば被窒化物が窒化ガスと触れる機会が増えて、窒化がより進行しやすくなる。
ところで、管径を変化することができるガス供給管を用いた窒化技術には、前記特許文献9のように、ガス供給管を移動可能とし、かつガス供給管を複数有するようにした装置がある。しかし、これは被処理品の表面処理、特に高温を要するCVD被膜形成や浸炭処理などに使用されるものであり、被処理品と補助電極との間の空間に存するガス噴出口を有するガス供給管を被処理品および補助電極に対し相対的に移動させながら、ガス供給管のガス噴出口からガス物質を空間内に供給するようにしている。これにより、均一かつ効率的に単一または複数の表面処理層を形成できるが、構造が非常に複雑で高価であり、磁石用合金粉末の窒化には適用しにくい。
第二の装置構成では、図3に示す回転軸が横軸のロータリー式反応炉において、窒化用ガスを供給・排出する手段が、窒化用ガスの供給口と排気口を切り替える制御手段20,21を具備している。このような手段を用いれば、(i)窒化炉の炉体に装入された磁石粉末が、左側の回転支持体(ロータリージョイント)3に内包された供給口から導入された窒化用ガスと接触して、右側の回転支持体(ロータリージョイント)4に内包された他方の供給口から排出される。窒化用ガスの供給口と排気口は、制御手段20,21、および管体に設置されたバルブによって切り替えられる。その後、(ii)ガス導入口と排出口を切り替え、窒化炉の炉体に装入された磁石粉末が、反対側(回転支持体)4から供給された窒化用ガスと接触して、他方(左側の回転支持体)3から排出される。こうして、回転している被窒化物を窒素集中にガスの導入口と排出口を切り替えることにより、常にガスの入り口付近の窒素濃度が高く、出口付近が低い状態を解消でき、均一に窒化でき、よって磁気特性の優れた磁石粉末を得ることができる。この場合の切り替え時間(間隔)は特に制限されないが、例えば1〜10分間とし、2〜5分間とすることが好ましい。
ロータリー式反応炉の回転数は、特に限定されないが、例えば0.5〜10rpm、好ましくは1〜5rpmとすることができる。この範囲内であれば、磁石粉末の攪拌が十分に行われ、製造コストがかさむことなく、保守作業が少なくてすむ。
窒化処理は、一回だけでもよいが、本発明においては、上記窒化処理を2回以上、すなわち繰り返して行うことができる。窒化処理を2回以上に分ければ、希土類−遷移金属母合金粉末の窒化がより均一に行えるので好ましい。例えば、200℃以上で窒化後、一旦、100℃以下まで冷却し、その後また200℃以上で窒化を行うことにより、希土類−遷移金属合金粉末の熱膨張・収縮と窒素導入による膨張、さらには水素が出入りによる膨張・収縮により、粉末が割れ、酸化皮膜に覆われていない新生面が現れ窒素が入りやすくなり、窒化が均一に行えて磁気特性が向上する。
上記窒化処理において、1回目の窒化終了後、窒化途中の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を酸素、大気に触れさせずに2回目以降の窒化を行うことが好ましい。すなわち、反応装置から取り出したり、雰囲気ガスを変更したりしないで2回目以降の窒化を行うことである。窒化途中の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を酸素、大気に触れさせずに2回目以降の窒化を行うことにより、粉末の酸化を抑制し、磁気特性の優れた希土類−遷移金属−窒素磁石粉末が得られる。
4.希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の後処理
(水素アニール、アルゴンアニール)
上記窒化処理の終了後、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末に水素アニール、アルゴンアニールをすることが好ましい。例えば、水素アニールを0.5〜2時間、アルゴンアニールを0.3〜1時間行い、アルゴンを流した状態で室温まで自然または強制冷却をすればよい。
水素アニールは、希土類−遷移金属−窒素合金主相に過剰に入った窒素を抜きだす効果があり、また、アルゴンアニールは、希土類−遷移金属−窒素合金主相に過剰に入った水素を抜く効果がある。これにより該合金粉末の過剰な窒素、水素が抜け、理論上最も磁気特性の高い組成に近づかせることができる。
なお、上記のように、アンモニア−水素混合ガス中で窒化した後の合金粉中には水素が高含有量で残留している場合があり、水素残留量が多いままでは磁気特性が低下するため、必要によって真空加熱を行うなどの方法で十分に水素除去しておく必要がある。
(解砕又は微粉砕)
ニュークリエーションタイプの磁石粉末は、上記の方法で得られた粗粉末では高い保磁力を得ることができないため、平均粒径が1〜40μmになるように微粉砕を行うことが必要になる。微粉砕を行う方法は特に限定されないが、例えば湿式粉砕機、乾式粉砕機、ジェットミル、アトライターなどが挙げられる。アトライターは適当な粉砕溶媒を選択することにより合金粉末を安価に微粉砕できるので好ましい装置といえる。この際、微粉末を乾燥する必要があるが、真空中で乾燥すれば短時間で効率的に乾燥できるので好ましい。
粉砕溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。粉砕後に所定の目開きのフィルターを用いて、ろ過、乾燥して希土類−鉄−窒素系磁石微粉末を得る。
(磁石粉末の表面処理)
得られた希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、空気中、温度や湿度の高い雰囲気中に置かれると錆びたり劣化したりして磁気特性が低下する場合があるため、燐酸や有機燐酸エステル系化合物、亜鉛などの金属粉末、シリルイソシアネート系化合物、あるいはチタネート系、アルミニウム系、シラン系など各種カップリング剤によって表面処理することが望ましい。
例えば、希土類−鉄−窒素磁石粉末に亜鉛粉末とカップリング剤を加えたものを、有機溶媒を媒液として湿式粉砕することができる。希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の粉砕時に亜鉛粉末及びカップリング剤が存在すると、粉砕された磁石粉末表面にカップリング剤及び亜鉛粉末がコ−ティングされ、粒子同士の付着が防止されて粉砕速度が早くなる。また、亜鉛粉末がコ−ティングされることにより、磁石粉末表面近傍の変質層が磁気的に無害なものになるため、高い磁気特性が得られる。
また、表面処理剤として有機燐酸エステル系化合物あるいはシリルイソシアネート系化合物を用いる場合、被覆または塗布手段は特に限定されないが、例えば、まず処理剤を磁性粉100重量部に対して約5〜10重量部の溶媒に溶解した後、磁性粉と充分に混合撹拌し、24時間以上真空または減圧乾燥することにより行うことができる。この時、溶媒としては、アルコール類、ケトン類、低級炭化水素類、芳香族類、またはこれらの混合系有機溶媒等が用いられる。
5.ボンド磁石用組成物
本発明のボンド磁石用組成物は、上記製造方法により得られた希土類−遷移金属−窒素磁石粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする。すなわち前記した本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、樹脂バインダー成分を配合し、混合することにより、優れた特性を有するボンド磁石用組成物となる。
熱可塑性樹脂としては、4−6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ふっ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどを用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型フッ素樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂などを用いることができる。
さらに、バインダー成分の種類にもよるが、重合禁止剤、低収縮化剤、反応性樹脂、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、変性剤、増粘剤、滑剤、カップリング剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、無機充填剤や顔料などを添加することができる。
本発明のボンド磁石用組成物を調製する際に用いられる混合機としては、特に制限がなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサー、フラッシュミキサー、ナウターミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウェットミル、ジェットミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いることができる。各成分を粉砕しながら混合する方法も有効である。
6.ボンド磁石
本発明のボンド磁石は、上記ボンド磁石用組成物を圧縮成形又は射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石である。すなわち、上記希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を含むボンド磁石用組成物は、混練後、下記の要領で成形してボンド磁石とすることができる。
熱硬化性樹脂を配合したボンド磁石用組成物を用いる場合は、圧縮成形または射出成形によることが好ましい。圧縮成形の場合は、得られるボンド磁石全重量に対する樹脂量としては1〜5重量%、射出成形では、樹脂粘度の調整や金型の温度等の最適条件を選択する必要があるが、7〜15重量%が好ましい。
圧縮成形する場合は、前記混合比で、例えば、混合機(例えば、井上製作所(製))で混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用い、金型に800kA/m(10kOe)以上の磁界を印加しながら、4ton/cmの圧力でプレス成形する。
また、射出成形の場合では、前記混合比で加熱加圧ニーダー装置を用いて混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用いて成形する。組成物を、例えば、30〜80℃の成形温度に加温したシリンダー中で溶融し、800kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形して、樹脂の硬化温度まで加熱し、一定時間保持して硬化させる。
一方、熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物を用いる場合は、射出成形によることが好ましく、樹脂量としては5〜20重量%が好ましい。熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物は、溶融温度、例えば210℃以上に加温したシリンダー中で組成物を溶融し、800kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形し、冷却後、固化した成形物を取り出せば良い。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。窒化により得られた磁石粉末は、次の方法で測定した。
<磁気特性評価>
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末試料の磁気特性は、次のように測定した。まず、パラフィンを詰めたサンプルケースを準備し、それに磁石粉末を詰め、その後、加熱配向、冷却固化を行い、サンプルを作製した。次に振動試料型磁力計(VSM)(東英工業(株)製)を用い、ヒステリシスループを描かせた(最大印加磁場:1670kA/m(21kOe))。
射出成形ボンド磁石に関しては、cioffi型自記磁束計(東英工業(株)製)を用いて磁気特性を測定した(最大磁場:1830kA/m(23kOe))。
<平均粒径の測定>
磁石粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(Sympatec社製)を用いて行った。
(実施例1)
次に示す製造方法でSm−Fe−N合金粉末を作製した。まず、出発原料として、Fe粉(平均粒径:38.3μm、純度:99.0%以上、酸素<0.1%)、Sm(平均粒径:3.1μm、純度:99.0wt%以上、炭素<0.05wt%、SiO<0.01wt%)を準備した。上記原料に、還元剤として、このSmを還元するに足るCa(粒度:5mm以下、純度99.1%以上)を加え混合機で1時間混合した。
その後、得られた混合物を反応容器に入れ、さらに還元拡散容器に入れた後、電気炉(還元拡散炉)に装入し、アルゴン置換した後、アルゴン流量0.5〜1L/分として、1200℃で8時間保持し、その後室温まで冷却してSm−Fe還元物を製造した。
次に、各還元物1kgを真空引きできるステンレス製容器に入れ、0.001MPaまで真空引きしたのち、水素を入れ反応させ崩壊させた。
次に、還元物1kgに対し10Lの水とともに水槽に入れ、10分攪拌後、上澄みを抜き、この作業を10回繰り返してCaを除去し、酢酸を用いて酸洗処理を行った。その後、アルコールでデカンテーションし、真空中100℃、3時間乾燥し、Sm−Fe母合金粉末を得た。
次に、図2に示す窒化炉を有する反応装置(ロータリー式窒化炉)を用意し、Sm−Fe母合金粉末を炉体(レトルト)に装入し、炉体(レトルト)を回転させ(窒化時レトルト回転数:3rpm)、表2に示すように片側2箇所からガス供給を行い、反対側からガスを排気して、表1に示す条件で窒化を行った。つまり、Sm−Fe母合金粉末を炉体に装入し、アンモニア−水素混合ガスを2箇所から各0.40L/分/kg(2箇所から、水素とアンモニアを各0.20L/分/kg)流しながら470℃で4.5時間窒化を行った。窒化後、全量回収してから均等に混ざるように十分に混合したうえでSm−Fe−N粗粉末をサンプリングし、特性を評価した。結果を表3に示す。
(実施例2〜5)
図3に示す窒化炉を有する反応装置(ロータリー式窒化炉)を用意し、定期的にガス供給とガス排気が切り替わるようにして、実施例1と同じSm−Fe母合金粉末を炉体(レトルト)に装入し、炉体(レトルト)を回転させ(窒化時レトルト回転数:3rpm)、表2に示すように片側からガス供給を行い反対側からガスを排気し、さらにロータリー式窒化炉を用いて、表1に示す条件で窒化を行った。アンモニア−水素混合ガスをガス供給とガス排気を3分間隔で切り替え、交互に流しながら470℃でSm−Fe母合金粉末の窒化を行った。
窒化後、試料を表2に示すようにそれぞれサンプリングし、特性を評価した。結果を表3に示す。
レトルトのガス供給側からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を実施例2とし、レトルトの中心付近からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を実施例3、レトルトのガス排気側からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を実施例4、また、全量回収してから均等に混ざるように十分に混合したうえでサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を実施例5とした。
(比較例1〜4)
図1に示す従来の窒化炉を有する反応装置(ロータリー式窒化炉)を用意し、実施例1と同じSm−Fe母合金粉末を炉体(レトルト)に装入し、回転しているレトルトに片側からガス供給を行い反対側からガスを排気しながら(窒化時レトルト回転数:3rpm)、表1の条件で窒化を行った。Sm−Fe母合金粉末にアンモニア−水素混合ガスを各0.40L/分/kg流しながら470℃で5時間窒化を行った。窒化後、試料を表2に示すようにそれぞれサンプリングし、特性を評価した。結果を表3に示す。
レトルトのガス供給側からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を比較例1とし、レトルトの中心付近からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を比較例2、レトルトのガス排気側からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を比較例3、また、全量回収してから均等に混ざるように十分に混合したうえでサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末を比較例4とした。
Figure 2012089774
Figure 2012089774
Figure 2012089774
表3に示す比較例1〜4、実施例1〜5のSm−Fe合金粉末の平均粒径、Sm−Fe−N粗粉末の平均粒径、組成分析結果は、窒化後の磁石粉末をアニール処理したものである。すなわち、水素アニール(水素流量:合金1kgあたり1L/分)1時間、アルゴンアニール(アルゴン流量:合金1kgあたり1L/分)0.5時間行い、アルゴンを流した状態で室温まで自然冷却している。
比較例1は、ガス供給側からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末であるため、比較例2,4と比べて、アンモニアつまり窒素の供給が相対的に多く、過窒化で窒素量が多いことが分かる。さらに窒化にともない粒が割れ平均粒径も小さいことが分かる。比較例3は、ガス排気側からサンプリングしたSm−Fe−N粗粉末であるため、アンモニア供給つまり窒素の供給が相対的に少なく、未窒化で窒素量が少ないことが分かる。さらに平均粒径も大きいことが分かる。
一方、これら比較例に比べ、実施例1は、ガス供給が2箇所であるため、比較的均一に窒素が試料に供給されており、均一に窒化が進んでいることが分かる。また、実施例2〜5は、ガスの供給・排気を交互に行うため、ガス供給・排気の両側である実施例2、実施例4、中心部の実施例3や実施例5と全て同じような平均粒径、組成になっており均一に窒化が進んでいることが分かる。さらに平均粒径も小さいことが分かる。
(実施例6〜10、比較例5〜8)
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例4をアルコールで粉砕し、その後、真空乾燥を行い、得られたSm−Fe−N微粉末をそれぞれ比較例5〜8、実施例6〜10とした。
これらの試料の磁気測定を行った結果を表4に示す。比較例8(全量回収)に比較し、2箇所から窒化用ガスを供給した実施例6は、全ての特性で高いことが分かる。同様に窒化用ガスの供給・排気を交互に切り替えて行った実施例7〜実施例10についても、特性のバラツキが小さいうえ、高いことが分かる。
Figure 2012089774
(実施例11〜15、比較例9〜12)
比較例5〜8、実施例6〜10で製造したSm−Fe−N微粉末をそれぞれ90.7重量%採り、これに熱可塑性樹脂12ナイロン(PA12(宇部興産(株)製)を9.3重量%の割合で混合し、ボンド磁石用組成物を調製した。
次に、このボンド磁石用組成物をナカタニ混練機(ナカタニ製)で190℃−1パス、その後、シリンダー温度210℃、成形圧力1tonでφ20×13mmの形状に射出成形した。比較例5〜8、実施例6〜10のSm−Fe−N微粉末を用いて、それぞれ比較例9〜12、実施例11〜15の成形体1〜9とした。得られた射出成形ボンド磁石の磁気特性を表5に示す。
Figure 2012089774
表5の射出成形ボンド磁石の磁気特性に示すとおり、実施例11の成形体5は比較例12の成形体4に比較し磁気特性が高いことから、窒化用ガスを2箇所から供給することにより特性が向上することが分かる。同様に実施例12〜15の成形体6からは、成形体4に比較し磁気特性が高く、窒化ガスの供給・排気を交互に行うことにより特性が向上することが分かる。
1 窒化炉(炉体)
2 レトルト(容器)
3、4 回転支持体
10 窒化用ガス供給口
11 ガス排出口
20,21 窒化用ガス制御器

Claims (10)

  1. 還元拡散法により、遷移金属合金粉末、希土類酸化物粉末、及び該希土類酸化物を還元するための還元剤を混合し、該混合物を非酸化性雰囲気中で加熱焼成して希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物とする工程と、この還元拡散反応生成物を窒化炉に装入し、引き続き、窒化用ガスを流通しながら加熱し、窒化処理して磁石粉末とする工程と、前記還元拡散反応生成物又は磁石粉末を湿式処理して還元剤を取り除く工程を含む、下記の一般式(1)で表されるニュークリエーションタイプの希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得る製造方法において、
    前記希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、窒化用ガスが、窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口から流通されることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
    (100−a−b) …(1)
    (式(1)中、Rは1種または2種以上の希土類元素、Xは1種または2種以上の遷移金属元素であり、また、a、bは原子%で、4≦a≦18、10≦b≦17を満たす。)
  2. 窒化用ガスが、アンモニア−水素混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  3. 窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  4. 還元拡散反応生成物が、250〜700℃に加熱して窒化処理されることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  5. 希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物を装入する窒化炉本体と、炉内に装入された還元拡散反応生成物を所定の温度に加熱するヒーターと、炉内に窒化用ガスを供給・排出する手段を有しており、前記窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えてなる請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法に使用される希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置。
  6. 窒化用ガスを供給する手段が、内管と外管の長さが異なる二重管構造であることを特徴とする請求項5に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置。
  7. 窒化用ガスを供給・排出する手段が、窒化用ガスの供給口と排気口を切り替える制御手段を具備することを特徴とする請求項5に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって得られる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末であって、希土類−遷移金属−窒素合金粉末の平均粒径が、1〜40μmであることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末。
  9. 請求項8に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石用組成物。
  10. 請求項9に記載のボンド磁石用組成物を圧縮成形又は射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105825989A (zh) * 2016-05-24 2016-08-03 郑精武 一种含n稀土-过渡金属磁性粉末的制备方法
JP2017082275A (ja) * 2015-10-27 2017-05-18 光洋サーモシステム株式会社 窒化処理装置、および、窒化処理方法
CN107641783A (zh) * 2017-08-31 2018-01-30 安徽信息工程学院 磁性材料氮化装置

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