JP2012132068A - 希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 - Google Patents

希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】合金粉末全体に窒素を均一に供給することにより、均一に窒化され磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法、工業的量産性に適した製造装置及び得られる希土類−遷移金属−窒素磁石粉末、それを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石を提供する。
【解決手段】下記の一般式(1)で表されるピニングタイプの希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得る製造方法において、該粉末を窒化する際、窒化炉1に設けられた2箇所以上の供給口10から窒化用ガスを流通することを特徴とする磁石粉末の製造方法などにより上記課題を解決する。RαFe(100−α−β−γ)βγ・・・式(1)(式(1)中、Rは希土類元素の一種または二種以上、MはCu、Mn、Co、Cr、Ti、NiおよびZrからなる群から選択される一種または二種以上、α、β、γは原子%であり、4≦α≦18、0.3≦β≦23、15≦γ≦25を満たす。)
【選択図】図2

Description

本発明は、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石に関し、さらに詳しくは、希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、該合金粉末全体に窒素を均一に供給することにより、均一に窒化され磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法、工業的量産性に適した製造装置及び得られる希土類−遷移金属−窒素磁石粉末、それを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石に関する。
近年のさまざまな電気機器類、例えば携帯電話やデジタルカメラ、デジタルビデオなど多くの家電製品などは小型化、軽量化、高性能化が要求されており、その要求は高まるばかりである。さらに地球温暖化防止の観点からも軽量化、効率化の要望は非常に強くなってきている。このような小型化、軽量化を実現するためには、上記家電製品に用いられている永久磁石の小型化、高特性化が重要な課題の一つとなっている。さらに上記家電製品では、コスト競争も激しさを増しており、用いられる永久磁石に要求される事項として、軽量化、高特性化、さらには価格(安価)が加えられるようになっている。
永久磁石材料として、価格面では従来から使われているフェライト磁石が最も有利であるが、最大エネルギー積(BH)maxが15〜20kJ・m−3(数MGOe)と非常に低く、軽量化、高特性化の要求には到底応えきれていない。特性面では、フェライト磁石などの低特性磁石に比較し数10倍の磁気特性を有する希土類磁石が知られている。該希土類磁石も上記背景のもと需要が伸びており、1993年にはフェライト磁石を抜いて使用量が最も多い磁石となっている。このうちNd−Fe−B系焼結磁石は、440kJ・m−3(55MGOe)を超える最大エネルギー積(BH)maxを有し、希土類磁石の中でも最も需要が高い。さらに、磁石粉末の磁気特性では、理論上、Nd−Fe−B系磁石に並ぶ磁石として、菱面体晶系、六方晶系、正方晶系、又は単斜晶系の結晶構造を有する希土類−遷移金属金属間化合物に窒素を導入した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末が、永久磁石材料として優れた磁気特性を有することから注目されており、需要を伸ばしている。
例えば、R−Fe−N(R:Y、Th、及び全てのランタノイド元素からなる群の中から選ばれた1種または2種以上)で表される永久磁石(特許文献1参照)、また、六方晶系あるいは菱面体晶系の結晶構造を有するR−Fe−N−H(R:イットリウムを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)で表される高い磁気異方性を有する材料が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、菱面体晶系、六方晶系、又は正方晶系の結晶構造を有するThZn17型、TbCu型、又はThMn12型金属間化合物に窒素等を含有させた希土類磁石材料が知られ、これらの磁石材料の磁気特性等を改善するために、種々の添加物を用いることも検討されている。
例えば、六方晶系あるいは菱面体晶系の結晶構造を有するR−Fe−N−H−M(R:Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種;M:Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Pd、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、Biの元素、及びこれらの元素並びにRの酸化物、フッ化物、炭化物、窒化物、水素化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、塩化物、硝酸塩のうち少なくとも1種)で表される磁石粉末が知られている(特許文献3参照)。
また、六方晶系あるいは菱面体晶系の結晶構造を有するR−Fe−N−H−O−M(R:Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種;M:Mg、Ti、Zr、Cu、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Biの元素、及びこれらの元素並びにRの酸化物、フッ化物、炭化物、窒化物、水素化物のうち少なくとも1種)で表される磁性材料が知られている(特許文献4参照)。
これらの希土類−遷移金属−窒素磁性材料の多くは、保磁力発生機構がニュークリエーションタイプであるため、平均粒径1〜10μmの微細な粉末として使用される。この理由は、平均粒径が10μmを超えると、必要な保磁力が得られないか、ボンド磁石にしたとき該ボンド磁石の表面が粗くなって表面にある磁石粉末の脱落が起こりやすくなってしまうためである。一方、平均粒径が1μm未満では、磁石粉末の酸化による発熱やそれに伴う発火の恐れがあり、さらにThZn17型結晶構造を有する主相の分解による磁気特性の低下が起こるため好ましくないとされている。
一方、耐熱性という観点からは、SmCo系、Nd−Fe―B系などの希土類磁石の中に、一般的に耐熱性が高いとされるSmCo、SmCo17などもあるが、これらのSmCo系はコストが高いうえCoの安定供給も難しいとされており、また、Nd−Fe−B系は耐熱性、耐食性に劣るため、耐食性改善のために成形品にNiなどのコーティングをしなければならないという欠点もある。さらに耐熱特性、例えば保磁力の温度係数を上げることは材料の本質的な値であり改善は困難である。この他にDyを添加して温度係数を改善したNd−Fe―B系の材料もあるがDyが非常に高価なため、磁石材料の値段が高くなってしまう。
そのような中、高特性、高耐熱性かつ比較的安価な磁石材料という観点から、保磁力発生機構がピニングタイプの希土類−遷移金属−窒素系磁石材料が注目されている。例えば、SmFeMnN系磁石がある。SmFeMnNはSmCo系に匹敵する磁気特性、耐熱性を有するが、理論値では(BH)maxで40〜50MGOe以上と推測されており、まだその半分程度にしか至っていないのが実状である。
上記希土類−遷移金属−窒素磁性材料の原料として用いられる希土類−遷移金属母合金粉末は、溶解鋳造法、液体急冷法、還元拡散法等により製造される。このうち溶解鋳造法では、希土類金属、遷移金属、必要に応じてその他の金属を所定の比率で調合して不活性ガス雰囲気中で高周波溶解し、得られた合金インゴットを均一化熱処理した後、ジョークラッシャー等で所定の粒度に粉砕して製造されている(例えば、特許文献5参照)。また、液体急冷法では、上記合金インゴットを用い液体急冷で合金薄帯を作製し、これを粉砕して製造されている(例えば、特許文献6参照)。
また、還元拡散法では、希土類酸化物粉末、遷移金属粉末、及び還元剤からなる混合物を非酸化性雰囲気下で加熱処理し還元、拡散反応を起こさせる。その後、還元拡散反応生成物(以下、還元物と記す場合がある)は非常に硬く取り扱いづらいため、崩壊させ粉状または小さな塊状にする。例えば、還元物を密閉容器に装入し、密閉容器内を減圧して雰囲気ガスを排出し、水素を充填させて大気圧よりも0.01〜0.11MPa高い圧力とし合金を自己発熱させ、合金が実質的に発熱しなくなるまで水素で大気圧より高くなるように加圧を続けることにより崩壊させる(特許文献7)。さらにその崩壊物から還元剤を取り除くために湿式処理し、続いて窒化、微粉砕を行い磁石粉末とする。
SmFeMnN系磁石の製造方法も同様であり、数μm〜数100μmを超える平均粒径を有する希土類−遷移金属系の母合金粉末を製造した後、窒素原子を導入するため、窒素やアンモニア、又はこれらと水素との混合ガス雰囲気中で200〜700℃に加熱する窒化処理を行い、次いで、上記所定の粒度に微粉化して製造されている。
上記の溶解鋳造法、液体急冷法などは、原料に高価な希土類金属を用いるため磁石価格を低く抑えることは難しく、それに比較して、還元拡散法では、原料に安価な希土類酸化物を使うため価格面では有利とされている。
しかし、安価な製造方法である還元拡散法においても課題は存在する。希土類−遷移金属系母合金粉末は湿式処理、乾燥後に窒化をされるが、湿式処理時、水洗、酸洗をするためにどうしても粉末表面の酸化を避けられず、酸化膜の厚さも均一ではなく、かなりのバラツキがあると考えられる。このように粉末表面が酸化していると窒化の際、窒素が均一に入りづらく、どうしても過窒化と未窒化の部分ができてしまい特性低下を招いてしまう。加えて粉末粒径がブロードである場合、例えば数〜数100μmの粒度分布を持つ場合などは、さらに均一な窒化が難しい。このように窒化を均一に行い特性を向上させることは還元拡散法において大きな課題と言える。
ところで、窒化反応を行う反応装置には、横型、縦型の管状炉、ロータリー式反応炉、密閉式反応炉などが使用されているが、いずれの反応装置を用いる場合でも、雰囲気ガスは炉の一方から導入され、他方から排出されていた。そのため、合金の窒化ガスが触れる箇所だけ窒化が進行し過窒化になってしまい、窒化ガスが触れない箇所においては窒素が供給されず、未窒化になってしまい、特性を大きく落としていた。
また、窒化技術に関しては、例えば、ガス切換バルブによりガス導入口と排出口を切り替えることにより双方向から窒化ガスを流通し、被窒化物である案内管の内面に全体にわたって所望の厚さで均一な質の窒化層を形成する装置(例えば、特許文献8参照)や、被処理品と補助電極との間の空間に存するガス噴出口を有するガス供給管を被処理品および補助電極に対し相対的に移動させながら、ガス供給管のガス噴出口からガス物質を空間内に供給するイオン表面処理方法などが提案されている(例えば、特許文献9参照)。しかし、これらの装置は、原子炉計測素子用の案内管の内面を窒化することができる装置であるか、被処理品の表面に処理層を形成するイオン表面処理装置であって、希土類−遷移金属母合金の窒化に使用することはできない。
以上のように、還元拡散法により、希土類−遷移金属母合金の窒化を均一に行うことができ磁気特性を確実に向上させることができ、工業的にも量産性に適した希土類−遷移金属−窒素磁性材料の製造方法の確立が強く望まれていた。
特開昭60−131949号公報 特開平2−57663号公報 特開平6−279915号公報 特開平3−153852号公報 特開平5−258928号公報 特開平5−13207号公報 特開2004−204285号公報 特公平6−80183号公報 特公平4−27294号公報
本発明は、このような状況に鑑み、希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、該合金粉末全体に窒素を均一に供給することにより、均一に窒化され磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法、低コストで工業的量産性に適した製造装置及び得られる希土類−遷移金属−窒素磁石粉末、それを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、希土類−遷移金属母合金粉末を窒化して希土類−遷移金属−窒素磁性材料を製造する窒化工程において、窒化用ガスを窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口からガス供給することにより、母合金粉末が均一に窒化用ガスと接触するようになり、得られる磁石粉末の磁気特性を従来よりも高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の一般式(1)で表されるピニングタイプの希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得る製造方法において、希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口から窒化用ガスを流通することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
αFe(100−α−β−γ)βγ ・・・式(1)
(式(1)中、Rは希土類元素の一種または二種以上、MはCu、Mn、Co、Cr、Ti、NiおよびZrからなる群から選択される一種または二種以上、α、β、γは原子%であり、4≦α≦18、0.3≦β≦23、15≦γ≦25を満たす。)
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記希土類−遷移金属合金粉末が、還元拡散法により製造されることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記式(1)において、βとγの範囲が1≦β≦6、18≦γ≦23であることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、窒化用ガスが、アンモニア−水素混合ガスであることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
一方、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明の製造方法に使用され、希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物を装入する窒化炉本体と、炉内に装入された還元拡散反応生成物を所定の温度に加熱するヒーターと、炉内に窒化用ガスを供給・排出する手段を有しており、前記窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えてなる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、窒化用ガスを供給・排出する手段が、窒化用ガスの供給口と排気口を切り替える制御手段を具備することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明の製造方法によって得られ、希土類−遷移金属−窒素合金粉末の平均粒径が、1〜40μmであることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明の希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石用組成物を圧縮成形又は射出成形して得られる希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石が提供される。
本発明によれば、希土類−遷移金属合金の原料混合物に対して還元拡散処理を行い、これにより得られた希土類−遷移金属合金粉末に湿式処理を行ってから窒化処理を行う希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法において、窒化用ガスが、窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口から流通されることにより、希土類−遷移金属合金粉末に窒素が入りやすくなり、均一な窒化が実現できる。
その結果、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末が高い磁石特性を有するようになり、小型化、高特性化を実現した永久磁石が得られる。この希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を用いれば、高磁石特性を有するボンド磁石用組成物、並びに磁気特性に優れたボンド磁石を得ることができ、携帯電話やデジタルカメラ、デジタルビデオなどを始めとする家電製品の小型化、軽量化、高性能化に対応できる。
また、本発明の磁石粉末の製造装置は、窒化炉が窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えている他は複雑な機構を持たず、比較的簡素であることから低コストであり、実用性の高い技術であって工業的に貢献度が高い。
希土類−遷移金属母合金を窒化するための従来の窒化装置と、それを用いた窒化合金の製造を示す説明図である。 希土類−遷移金属母合金を窒化するための本発明の窒化装置と、それを用いた窒化合金の製造の一実施態様を示す説明図である。 希土類−遷移金属母合金を窒化するための本発明の窒化装置と、それを用いた窒化合金を製造する他の実施態様を示す説明図である。
以下、本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末とその製造方法、製造装置及びこれを用いたボンド磁石用組成物、およびボンド磁石について、図面を用いて詳しく説明する。
1.希土類−遷移金属−窒素磁石粉末
本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、後で詳述する製造方法によって得られ、希土類元素、遷移金属元素、及び窒素から構成されている。
すなわち、本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、次の一般式(1)で表される希土類−遷移金属−窒素合金からなる、ピニングイプの磁石粉末である。
αFe(100−α−β−γ)βγ ・・・(1)
(式(1)中、Rは希土類元素の一種または二種以上、MはCu、Mn、Co、Cr、Ti、NiおよびZrからなる群から選択される一種または二種以上、α、β、γは原子%であり、4≦α≦18、0.3≦β≦23、15≦γ≦25を満たす。)
(希土類元素)
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を構成する、主要成分の希土類元素(R)は、磁気異方性を発現させ、保磁力を発生させる上で本質的な役割を果たす元素である。
希土類元素としては、Yを含むランタノイド元素のいずれか1種または2種以上であり、例えば、Y、La、Ce、Pr、Nd、およびSmの群から選ばれる少なくとも1種以上の元素が挙げられる。これらの中でも、Sm及び/又はNdが好ましい。また、これらとEu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbの群から選ばれる少なくとも1種の元素とを組み合わせれば、磁気特性を高めることができる。
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の希土類元素は、4原子%以上18原子%以下であることが必要である。4原子%よりも少なければ、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになり高い保磁力が得にくくなり、18原子%を超えると主相となる合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下するため好ましくない。
希土類元素の中では、特に、Smが好ましく、Smが希土類元素の50原子%以上含むと高い保磁力を持つ材料が得られる。ここで用いる希土類元素は、工業的生産により入手可能な純度でよく、製造上、混入が避けられない元素、例えば、O、H、C、Al、Si、F、Na、Mg、Ca、Liなどが含まれていても差し支えない。
(遷移金属元素)
遷移金属粉末原料としては、Fe、Ni、Coなどが挙げられるが、磁気特性から鉄が最も好ましい。鉄は、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の必須成分であるが、磁気特性を損なうことなく温度特性や耐食性を改善する目的で、その一部をCoまたはNiの一種以上で置換してもよい。粒度分布は目標製品粒度に近い分布のものを用いることが好ましい。
Feは磁性材料の強磁性を担う基本元素であり、34原子%以上、約81原子%よりも少なく含有する必要がある。34原子%より少ないと磁化が低くなり好ましくない。81原子%を超えると希土類元素の割合が少なくなりすぎ高い保磁力が得られず好ましくない。鉄成分の組成範囲が55〜80原子%であれば、保磁力と磁化のバランスのとれた材料となり特に好ましい。
(添加元素M)
Mは、Mn、Cu、Co、Cr、Ti、Ni、Zr、Hfの少なくとも一種以上を示す元素であり、粗い合金粉末で高い保磁力を出すために必須である。
M元素を添加し過剰に窒素を入れた希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末は、粒子内部で部分的にアモルファス化し、その中に数〜数100nmの結晶が微細に混在した状態になる。このような微結晶構造になるとアモルファス部は非磁性であるため粒子内の各微結晶間の磁気的な結合が切られ、低保磁力の強磁性層に表面を覆われた場合と異なり、高い保磁力が得られると考えられている。さらに上記微結晶部は飽和磁化の高いSmFe17に近い強磁性相となっているため、本発明の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末は粗い合金粉末であっても高い飽和磁化、保磁力が得られ、保磁力発生機構はSmFe17磁性材料のニュークリエーション型とは異なり、ピンニング型となる。
M量は0.3〜23原子%が好ましい。Mが0.3原子%より少ないと結晶性のある部分を残さずに大部分がアモルファス化してしまい磁気特性が低くなってしまう。23原子%より多いと非磁性相の割合が多くなりすぎ、磁化が低くなってしまう。
(窒素)
希土類−遷移金属−窒素系磁性材料において、窒素は15〜25原子%含有する。窒素が15原子%を超えると非磁性と考えられるアモルファス相の割合が多くなりすぎ保磁力は高くなるものの磁化が低くなりすぎてしまう。15原子%以下では軟磁性体に近い状態で高い保磁力を得ることができない。
2.希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法
本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の製造方法は、希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口から窒化用ガスを流通することを特徴とする。
本発明で用いる希土類−遷移金属合金は、製造法によって特に限定されず、例えば溶解鋳造法、液体急冷法、もしくは還元拡散法で製造できる。溶解鋳造法では、希土類金属、遷移金属、必要に応じてその他の金属を所定の比率で調合して不活性ガス雰囲気中で高周波溶解し、得られた合金インゴットを均一化熱処理した後、ジョークラッシャー等で所定の粒度に粉砕して製造される。また、液体急冷法では、上記合金インゴットから合金薄帯を作製、これを粉砕して製造され、還元拡散法では、希土類酸化物粉末、還元剤、遷移金属粉、必要に応じてその他の金属粉及び/又は金属酸化物を出発原料として製造される。
以下、本発明で好ましい還元拡散法による希土類−遷移金属合金の製造方法を詳述する。還元拡散法では、遷移金属合金粉末、希土類酸化物粉末、及び該希土類酸化物を還元するための還元剤を混合し、該混合物を非酸化性雰囲気中で加熱焼成して希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物とする工程と、この還元拡散反応生成物を窒化炉に装入し、引き続き、窒化用ガスを流通しながら加熱し、窒化処理して磁石粉末とする工程と、前記還元拡散反応生成物又は磁石粉末を湿式処理して還元剤を取り除く工程を含んでいる。
2−1.還元拡散工程
還元拡散工程では、遷移金属合金粉末、希土類酸化物粉末、及び該希土類酸化物を還元するための還元剤を混合した後、該混合物を非酸化性雰囲気中で加熱焼成して、希土類−遷移金属母合金を含む還元物を得る。
(希土類酸化物)
希土類酸化物は、前記希土類元素、すなわち、例えば、Y、La、Ce、Pr、Nd、およびSmの群から選ばれる少なくとも1種以上の元素の酸化物である。
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の希土類元素は、4原子%以上18原子%以下であることが必要である。4原子%よりも少なければ、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになり高い保磁力が得にくくなり、18原子%を超えると主相となる希土類−遷移金属−窒素合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下するため好ましくない。
希土類元素の中では、特に、Smが好ましく、Smが希土類元素の50原子%以上含むと高い保磁力を持つ材料が得られる。
希土類酸化物は、目標組成より2〜20%程度多く入れることが好ましい。この理由は希土類元素の投入量が少ないと還元剤を除去する湿式処理時に希土類元素成分がより多く溶け出てしまうため、希土類元素量が目標組成以下となって希土類が不足し軟磁性相が出現してしまい保磁力を下げてしまうからである。一方、希土類成分が上記範囲より多すぎると非磁性相が多くなり磁化が下がってしまうため好ましくない。
(遷移金属合金粉末)
遷移金属合金粉末としては、Fe及び、Cu、Mn、Co、Cr、Ti、Ni、Zr、Hfの少なくとも一種以上などを含有するものが挙げられる。Feの量は、30〜80原子%が好ましい。Feが30原子%未満であると磁化が低くなり、一方、80原子%より多くなっても保磁力が低くなってしまう。
(添加元素M)
さらに、希土類−遷移金属系合金粉末の必須成分であるFeの一部を、磁気特性を損なうことなく温度特性や耐食性を改善する目的で、Cu、Mn、Co、Cr、Ti、Ni、Zrから選択された一種以上の添加元素Mで置換する。添加元素Mは、粗い合金粉末で高い保磁力を出すためには必須であり、これらの中でも、Cu及びMnのいずれかの元素が好ましい。
Mの量は、前記のとおり0.3〜23原子%となるようにすることが好ましい。Mが0.3原子%より少ないと、結晶性のある部分を残さずに大部分がアモルファス化してしまい磁気特性が低くなってしまう。一方、23原子%より多いと非磁性相の割合が多くなりすぎ、磁化が低くなってしまう。原料としては粒径0.1〜10μmの粉末が全体の80%以上を占めるMn酸化物粉末が好ましい。
(還元剤)
還元剤としては、Li及び/又はCa、あるいはこれらの元素とNa、K、Mg、Sr又はBaから選ばれる少なくとも一種からなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属元素が使用できる。これら還元剤は、還元剤としての投入量、還元剤および希土類酸化物の粉体性状、各種原料粉末の混合状態、還元拡散反応の温度と時間を注意深く制御することによって使用される。なお、上記還元剤の中では、取り扱いの安全性とコストの点から、金属Li又はCaが好ましく、特にCaが好ましい。
還元拡散工程では、上記希土類酸化物粉末、鉄粉末、及び、上記希土類酸化物を還元するための還元剤が配合されている混合物を、非酸化性雰囲気中において、上記還元剤が溶融状態になる温度まで昇温保持し加熱焼成することにより(Caの融点は838℃、沸点は1480℃であるので、実際の処理温度は1000〜1250℃程度とし、還元剤は溶解するが、沸騰しない温度で処理する)、上記希土類酸化物を希土類元素に還元するとともにこの希土類元素が鉄粉中に拡散された希土類−遷移金属合金が合成される。
(水素処理)
この希土類−鉄合金を含んだ反応生成物(以下、還元物という)は、非常に硬いため粉砕が困難である。さらに水中での崩壊性を改善するために、通常水素処理を行い、還元物を粉状にしている。水素処理では、希土類−遷移金属合金を含んだ還元物をステンレス容器に入れ、アルゴンガスを封入し、その後、水素に置換し、所定の時間水素ガスを流し続ける。
2−2.湿式処理工程
上記還元物は、次の湿式処理工程で水中に投入(水砕)し、デカンテーションにより洗浄して還元剤を除去し、次いで酸洗、水洗、アルコール洗浄、固液分離、乾燥を行い、希土類−遷移金属母合金粉末を得る。
(水洗、デカンテーション、酸洗)
その後、得られた還元物1kgあたり約1リットルの水中に投入し、1時間攪拌し還元物を崩壊させる。その後、得られたスラリーを粗い篩を通し水洗槽に移入する。このときスラリー溶液のpHは11〜12程度であり、還元物はほとんど崩壊しており、篩上に残るロス分は非常に少なくなる。
この後、デカンテーションを5回繰り返す。デカンテーション条件は注水し、攪拌1分、静置分離2分、排水することを1回とする。
その後、スラリーのpHが5〜6になるように酢酸を添加し、酸洗を行い、さらに酢酸を除去するため水洗を3回行う。さらに乾燥を速めるなどの目的でアルコール洗浄した後、固液分離し、乾燥して希土類−遷移金属合金粉末を得る。還元剤として用いたCaは、非磁性であり磁気特性を下げるのでできるだけ少ない方が好ましい。
次に、上記で得られた希土類−鉄合金粉は窒化して磁石粉にするが、この際に窒化を効率よく行うために、通常100μm程度以下の粒子を用いることが好ましく、必要によっては解砕を行うことが好ましい。凝集・融着部を実質的に含まない平均粒径10〜100μmの粉末であればよく、粒径の大きな希土類−遷移金属系合金粉末をさらに微粉化(解砕を含む)して製造してもよい。粒径が10μmよりも細かいと発火し易く取り扱いが難しくなる。また、粒径が粗くなるに従い均一な窒化を行いずらくなり、磁気特性が低くなってしまう。
合金粉末を微粉化する方法としては、特に制限されず、例えば、湿式粉砕法ではボールミル粉砕や媒体攪拌型ミル粉砕等を、乾式粉砕法では不活性ガスによるジェットミル粉砕等を用いることができる。
これらの中でも、粉末の凝集が少ないジェットミル粉砕が特に好ましい。また、粉末の凝集をさらに少なくするため、例えば、ジェットミル粉砕では、不活性ガス中に5vol%以下の酸素を導入して微粉化することが、ボールミル粉砕や媒体攪拌ミル粉砕等では、小径の粉砕ボール、あるいはステンレス鋼等ではなくジルコニア等の低比重のセラミックス粉砕ボールを用いて微粉化することができる。
(窒化処理前の熱処理)
なお、上記希土類−遷移金属母合金を粉砕処理して得られた合金粉末には、粉砕により生じた結晶の歪みが残留し、次の窒化工程においてα−Fe等の軟磁性相が発生する原因となる場合がある。α−Fe等の軟磁性相が発生すると保磁力や角型性が低下するため、さらに磁気特性を向上させるためには、得られた合金微粉末を、窒化処理に先立って、アルゴン、ヘリウム、真空等の非酸化性かつ非窒化性雰囲気中、600℃以下で熱処理し、結晶の歪みを除去することが好ましい。特に窒化処理と同時に400〜600℃で熱処理を行うと処理コストを下げられるためメリットが大きい。窒化処理と同時の場合は、熱処理温度が400℃未満であると、残留する結晶の歪みを除去する効果が十分でなく、一方、600℃を超えると、非酸化性雰囲気とはいえ工業的な製造方法では実質的に酸素が若干含まれていたり、炉内に吸着した酸素、水分等が存在していたりするため、合金が酸化し、希土類元素の窒化物 酸化物と鉄に分解するので好ましくない。
2−3.窒化処理工程
得られた希土類−遷移金属母合金粉末は、窒化反応を行う反応装置(窒化炉)に装入し、予め窒素ガス又はアンモニア、あるいはアンモニア−水素混合ガスのいずれかを含む含窒素雰囲気とした後、特定の温度で特定時間加熱して窒化処理を行う。
窒素は、本磁性材料において重要な役割を果たす。その役割について、Sm(Fe,Mn)17母合金を窒化した材料を例に説明する。Sm(Fe,Mn)17母合金を窒化した場合、窒素はSm(Fe,Mn)17単位格子当たり5〜6個までであれば結晶構造を壊すことなく格子を広げ侵入型として固溶する。そして、窒素が単位格子あたり3個入った場合、強い一軸磁気異方性が発現するとともに、飽和磁化、キュリ−温度も上昇する。さらに窒化を進め窒素が単位格子当たり5〜6個を超えて入るとこの結晶構造が壊れはじめ、結晶がアモルファス化していく。アモルファス相は非磁性だと考えられており、このアモルファスがSm(Fe,Mn)17結晶を取り囲むように形成されていくと粉末内部で微結晶化が進み、さらにアモルファスにより各微結晶間の磁気的な結合が切断され、粗い粉末であっても高い保磁力を発現させる。
本発明における希土類−遷移金属合金粉末の窒化は、均一な窒化を行うためロータリー式窒化炉を用い、窒化用ガスを窒化中に少なくとも1回以上2箇所以上からガス供給することを特徴とし、これによりレトルト内のアンモニアの供給、つまり窒素の供給の場所によるバラツキを少なくし、これによって窒化を均一に行い磁気特性を向上させることを特徴とする。さらに窒化の際、主相(上記の例ではSm(Fe,Mn)17)とアモルファス相の形成条件を変え、つまりアモルファス相を形成させる際の窒化はSm(Fe,Mn)17を形成させる場合より、窒素が入り易い条件とするとさらに好ましい。
窒化工程に関して、Sm(Fe,Mn)17磁石粉末を例に挙げてさらに詳しく説明する。まず、希土類−遷移金属合金粉末をロータリー式窒化炉に投入し炉を回転させながら、アンモニア−水素混合ガスを流しながら、例えば470℃まで上げ所定時間保持し窒化を行う。この際、窒化の初期で主相であるSm(Fe,Mn)17合金が形成され、その後、窒素が3〜5入り、さらに窒化が進むと部分的にアモルファス化していく。窒化時間が長くなり過ぎたり、アンモニア分圧が高すぎたりすると主相に微細化するためのアモルファス相が微結晶のまわりにきれいに形成されず、磁気特性が低くなってしまう。
窒化処理は、該希土類−遷移金属母合金粉末を含窒素雰囲気中で、例えば、250〜700℃に加熱する。加熱温度は、300〜600℃が好ましく、さらに好ましくは350〜550℃である。250℃未満では十分に母合金を窒化するまでの窒化速度が遅く、700℃を超える温度では希土類の窒化物と鉄とに分解してしまうので好ましくない。
加熱時間は、1〜8時間とすることが必要である。1時間よりも短いと窒化で入る窒素が少なく、磁石粉末の磁気特性が不十分となり、加熱時間が8時間よりも長いと他の窒化条件にもよるが、窒化で入る窒素量が多くなり磁石粉末の磁気特性は良好になるが、処理コストがかかり好ましくない。
窒化ガスは、窒素、またはアンモニアを用いることができる。特に、アンモニアは希土類−遷移金属合金粉末を窒化しやすく、短時間で窒化できるため好ましい。この際、水素との混合ガスとして窒化するとさらに好ましい。
本発明では、窒化ガスとして、アンモニアと水素のほかに、反応をコントロールするためにアルゴン、窒素、ヘリウムなどを混合することができる。アンモニア−水素混合ガスを用いるとアンモニアだけで窒化した場合と比較し、アンモニア分圧が下がり、表面付近が過窒化になりづらく粉末内部まで均一に窒化できる。窒化ガスの量は、磁石粉末中の窒素量が3.3〜3.7重量%となるに十分な量であることが好ましい。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.3〜0.7、好ましくは0.4〜0.6となるようにする。アンモニア分圧がこの範囲であると、母合金の窒化が進み、窒素量を3.3〜3.7重量%とすることができ、十分に磁石粉末の飽和磁化と保磁力を向上できる。
加熱時間は、1〜8時間とすることが必要であるが、加熱は複数回繰り返して行うことができ、1回の加熱時間を1〜3.5時間とすることが好ましい。1時間よりも短いと1回の窒化で入る窒素が少なく、窒化回数が増えて非効率的になってしまう。ただし、窒化を3回以上に分けても窒化を1回で行う場合に比較し特性は高くなり、窒化回数を複数回に分ける効果は十分にある。加熱時間が3.5時間よりも長いと窒化条件によっては1回目の窒化で入る窒素量が多くなり複数回で窒化する効果が薄れてしまう。
以上、還元拡散反応生成物の湿式処理を行った後で窒化処理を行うとしたが、本発明では、湿式処理工程と窒化処理工程の順を入れ替えて、先に還元拡散反応生成物の窒化処理を行っても良い。
このようにすることにより粉末表面が還元され、粉末表面に酸化膜がほとんど存在しないか、または非常に薄い状態で窒化できるため、均一に窒化でき特性を向上し易い。ただし、窒化反応に関与せず、また非常に微細でもある還元剤の酸化物をも窒化工程に入れることになる可能性があるので、例えば還元拡散反応生成物を窒化炉に投入する際、多量に粉塵が舞ったり、窒化時に還元剤酸化物の微粉が配管に詰まりトラブルの原因になることがあり注意を要する。したがって、湿式工程と窒化工程の順番は磁石粉の特性、設備やハンドリング性等を総合的に考え、状況に合わせ最適な方法を取ればよく、とくに限定されるわけではない。
3.希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置
本発明の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置は、希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物を装入する窒化炉本体と、炉内に装入された還元拡散反応生成物を所定の温度に加熱するヒーターと、炉内に窒化用ガスを供給・排出する手段を有しており、前記窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えている。
すなわち、窒化反応を行う反応装置は、窒化炉本体、ヒーター、窒化ガス供給・制御手段を有しており、窒化用ガスが2箇所以上から供給できれば形式によって特に限定されず、横型、縦型の管状炉、ロータリー式反応炉、密閉式反応炉などが使用できる。
何れの装置においても、希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を調製することが可能であるが、本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を調製するためには、ロータリー式反応炉であることが望ましい。特に窒素組成分布の揃った粉体を得るためには、被窒化物が炉内に静置してあっては、窒化ガスが触れる箇所だけ窒化が進行し過窒化になってしまい、窒化ガスが触れない箇所においては窒素が供給されず、未窒化になってしまい、特性を大きく落としてしまうからである。ロータリー式反応炉であれば、被窒化物が炉内で流動するために窒化ガスが触れる箇所が増え、窒化がより均一に進行しやすくなる。図1〜3には、回転軸が横軸のロータリー式反応炉を示している。本発明では、この他に縦軸のロータリー式反応炉を用いることもできる。
従来のロータリー式反応炉を示している図1では、窒化炉の炉体1の容器(レトルト)2に装入された磁石粉末が、左側の回転支持体(ロータリージョイント)3に内包された一方の供給口10から供給された窒化用ガスと接触して、右側の回転支持体(ロータリージョイント)4に内包された他方の排出口12から排出される。窒化用ガスの流通が一方向であるために、窒化ガスと接触しやすい入り口側の被窒化物では窒化が進行し過窒化になり、窒化ガスが触れない箇所や窒化ガスが消費された排出口側においては窒素が供給されず、未窒化になってしまい、窒素組成分布の揃った粉体を得ることができない。
さらに均一に窒化するためには窒化用ガスの流通を多方向として、粉末全体に均一な含窒素雰囲気にすることが重要であり、これを実現するために、本発明では窒化用ガスを窒化炉の2箇所以上から供給するようにしている。
窒化用ガスを2箇所以上から供給するには、例えば、次のような装置構成にすることができる。第一の装置構成は、窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されるように構成すること、第二の装置構成は、ガス導入口と排出口を切り替えるように構成することである。
第一の装置構成では、図2に示す回転軸が横軸のロータリー式反応炉において、窒化用ガスを供給する手段が、内管10’と外管10の長さが異なる二重管構造であるようにする。ガス導入管を二重管にして内管10’を外管10より長くなるように管の長さを調整して、窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されるように構成すれば、窒化炉の排出口付近で窒化されづらい被窒化物が、窒化炉の中央付近で供給される窒化ガスと触れる機会ができ、窒化がより進行しやすくなる。また、内管を流れるガス流量、内管と外管の間を流れるガス流量を制御すれば、被窒化物全体に均一な含窒素雰囲気を供給できる。なお、図2では、内管10’の先端が出口側を向いているが、下向きにすれば被窒化物が窒化ガスと触れる機会が増えて、窒化がより進行しやすくなる。
ところで、管径を変化することができるガス供給管を用いた窒化技術には、前記特許文献9のように、ガス供給管を移動可能とし、かつガス供給管を複数有するようにした装置がある。しかし、これは被処理品の表面処理、特に高温を要するCVD被膜形成や浸炭処理などに使用されるものであり、被処理品と補助電極との間の空間に存するガス噴出口を有するガス供給管を被処理品および補助電極に対し相対的に移動させながら、ガス供給管のガス噴出口からガス物質を空間内に供給するようにしている。これにより、均一かつ効率的に単一または複数の表面処理層を形成できるが、構造が非常に複雑で高価であり、磁石用合金粉末の窒化には適用しにくい。とくにアンモニアのように毒性、腐食性を有するガスを使用する場合は装置を複雑にすると故障や事故を起こす可能性が高くなり好ましくない。
第二の装置構成では、図3に示す回転軸が横軸のロータリー式反応炉において、窒化用ガスを供給・排出する手段が、窒化用ガスの供給口と排気口を切り替える制御手段20,21を具備している。このような手段を用いれば、(i)窒化炉の炉体に装入された磁石粉末が、左側の回転支持体(ロータリージョイント)3に内包された供給口から導入された窒化用ガスと接触して、右側の回転支持体(ロータリージョイント)4に内包された他方の供給口から排出される。窒化用ガスの供給口と排気口は、制御手段20,21、および管体に設置されたバルブによって切り替えられる。その後、(ii)ガス導入口と排出口を切り替え、窒化炉の炉体に装入された磁石粉末が、反対側(回転支持体)4から供給された窒化用ガスと接触して、他方(左側の回転支持体)3から排出される。こうして、回転している被窒化物を窒素集中にガスの導入口と排出口を切り替えることにより、常にガスの入り口付近の窒素濃度が高く、出口付近が低い状態を解消でき、均一に窒化でき、よって磁気特性の優れた磁石粉末を得ることができる。この場合の切り替え時間(間隔)は特に制限されず、均一に窒化できる時間を選定すればよいのであるが、間隔が長くすぎると切り替えた効果が発揮されない。例えば1〜10分間とし、2〜5分間とすることが好ましく、この範囲で均一な窒化ができることを確認している。
ロータリー式反応炉の回転数は、特に限定されないが、例えば0.5〜10rpm、好ましくは1〜5rpmとすることができる。この範囲内であれば、磁石粉末の攪拌が十分に行われ、製造コストがかさむことなく、保守作業が少なくてすむ。
窒化処理は、一回だけでもよいが、本発明においては、上記窒化処理を2回以上、すなわち繰り返して行うことができる。窒化処理を2回以上に分ければ、希土類−遷移金属母合金粉末の窒化がより均一に行えるので好ましい。例えば、200℃以上で窒化後、一旦、100℃以下まで冷却し、その後また200℃以上で窒化を行うことにより、希土類−遷移金属合金粉末の熱膨張・収縮と窒素導入による膨張、さらには水素が出入りによる膨張・収縮により、粉末が割れ、酸化皮膜に覆われていない新生面が現れ窒素が入りやすくなり、窒化が均一に行えて磁気特性が向上する。
上記窒化処理において、1回目の窒化終了後、窒化途中の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を酸素、大気に触れさせずに2回目以降の窒化を行うことが好ましい。すなわち、反応装置から取り出したり、雰囲気ガスを変更したりしないで2回目以降の窒化を行うことである。窒化途中の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を酸素、大気に触れさせずに2回目以降の窒化を行うことにより、粉末の酸化を抑制し、磁気特性の優れた希土類−遷移金属−窒素磁石粉末が得られる。
4.希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の後処理
上記のとおり、窒化後、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末から過剰な窒素を取り除き、さらに過剰な水素を取り除く。
(水素アニール、アルゴンアニール)
上記窒化処理の終了後、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末に水素アニール、アルゴンアニールをすることが好ましい。例えば、水素アニールを0.5〜2時間、アルゴンアニールを0.3〜1時間行い、アルゴンを流した状態で室温まで自然または強制冷却をすればよい。
水素アニールは、希土類−遷移金属−窒素合金主相に過剰に入った窒素を抜きだす効果があり、また、アルゴンアニールは、希土類−遷移金属−窒素合金主相に過剰に入った水素を抜く効果がある。これにより該合金粉末の過剰な窒素、水素が抜け、理論上最も磁気特性の高い組成に近づかせることができる。
なお、上記のように、アンモニア−水素混合ガス中で窒化した後の合金粉中には水素が高含有量で残留している場合があり、水素残留量が多いままでは磁気特性が低下するため、必要によって真空加熱を行うなどの方法で十分に水素除去しておく必要がある。
(解砕又は微粉砕)
ピニングタイプの磁石粉末は粒子中に微結晶を有し、その微結晶がアモルファス相によって磁気的に分断されているため粗粉末であっても高い保磁力を得ることができる。しかし、還元拡散法などで製造された希土類−遷移金属粉末を窒化した場合、二次粒子を含んでおり、これらを解砕することにより各粉末の結晶方向を揃えた形で配向できるため磁化が上がり好ましい。さらにピニングタイプの粗粉末を粉砕したところで、例えば0.1μm以下のように細かくしなければ磁気特性を落とすことはない。したがって必要に応じて解砕、粉砕を行うことが好ましい。
微粉砕を行う方法は特に限定されないが、例えば湿式粉砕機、乾式粉砕機、ジェットミル、アトライターなどが挙げられる。アトライターは適当な粉砕溶媒を選択することにより合金粉末を安価に微粉砕できるので好ましい装置といえる。この際、微粉末を乾燥する必要があるが、真空中で乾燥すれば短時間で効率的に乾燥できるので好ましい。
粉砕溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールは価格が安く、毒性も低いためが好ましい。粉砕後に所定の目開きのフィルターを用いて、ろ過、乾燥して希土類−鉄−窒素系磁石微粉末を得る。
(磁石粉末の表面処理)
得られた希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、空気中、温度や湿度の高い雰囲気中に置かれると錆びたり劣化したりして磁気特性が低下する場合があるため、燐酸や有機燐酸エステル系化合物、亜鉛などの金属粉末、シリルイソシアネート系化合物、あるいはチタネート系、アルミニウム系、シラン系など各種カップリング剤によって表面処理することが望ましい。
例えば、希土類−鉄−窒素磁石粉末に亜鉛粉末とカップリング剤を加えたものを、有機溶媒を媒液として湿式粉砕することができる。希土類−遷移金属−窒素磁石粉末の粉砕時に亜鉛粉末及びカップリング剤が存在すると、粉砕された磁石粉末表面にカップリング剤及び亜鉛粉末がコ−ティングされ、粒子同士の付着が防止されて粉砕速度が早くなる。また、亜鉛粉末がコ−ティングされることにより、磁石粉末表面近傍の変質層が磁気的に無害なものになるため、高い磁気特性が得られる。
また、表面処理剤として有機燐酸エステル系化合物あるいはシリルイソシアネート系化合物を用いる場合、被覆または塗布手段は特に限定されないが、例えば、まず処理剤を磁性粉100重量部に対して約5〜10重量部の溶媒に溶解した後、磁性粉と充分に混合撹拌し、24時間以上真空または減圧乾燥することにより行うことができる。この時、溶媒としては、アルコール類、ケトン類、低級炭化水素類、芳香族類、またはこれらの混合系有機溶媒等が用いられる。
5.ボンド磁石用組成物
本発明のボンド磁石用組成物は、上記製造方法により得られた希土類−遷移金属−窒素磁石粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする。すなわち前記した本発明の希土類−遷移金属−窒素磁石粉末は、樹脂バインダー成分を配合し、混合することにより、優れた特性を有するボンド磁石用組成物となる。
熱可塑性樹脂としては、4−6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ふっ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどを用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型フッ素樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂などを用いることができる。
さらに、バインダー成分の種類にもよるが、重合禁止剤、低収縮化剤、反応性樹脂、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、変性剤、増粘剤、滑剤、カップリング剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、無機充填剤や顔料などを添加することができる。
本発明のボンド磁石用組成物を調製する際に用いられる混合機としては、特に制限がなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサー、フラッシュミキサー、ナウターミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウェットミル、ジェットミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いることができる。各成分を粉砕しながら混合する方法も有効である。
6.ボンド磁石
本発明のボンド磁石は、上記ボンド磁石用組成物を圧縮成形又は射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素ボンド磁石である。すなわち、上記希土類−遷移金属−窒素磁石粉末を含むボンド磁石用組成物は、混練後、下記の要領で成形してボンド磁石とすることができる。
熱硬化性樹脂を配合したボンド磁石用組成物を用いる場合は、圧縮成形または射出成形によることが好ましい。圧縮成形の場合は、得られるボンド磁石全重量に対する樹脂量としては1〜5重量%、射出成形では、樹脂粘度の調整や金型の温度等の最適条件を選択する必要があるが、7〜15重量%が好ましい。
圧縮成形する場合は、前記混合比で、例えば、混合機(例えば、井上製作所(製))で混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用い、金型に800kA/m(10kOe)以上の磁界を印加しながら、4ton/cmの圧力でプレス成形する。
また、射出成形の場合では、前記混合比で加熱加圧ニーダー装置を用いて混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用いて成形する。組成物を、例えば、30〜80℃の成形温度に加温したシリンダー中で溶融し、800kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形して、樹脂の硬化温度まで加熱し、一定時間保持して硬化させる。
一方、熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物を用いる場合は、射出成形によることが好ましく、樹脂量としては5〜20重量%が好ましい。熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物は、溶融温度、例えば210℃以上に加温したシリンダー中で組成物を溶融し、800kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形し、冷却後、固化した成形物を取り出せば良い。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。窒化により得られた磁石粉末は、次の方法で測定した。
<磁気特性評価>
希土類−遷移金属−窒素磁石粉末試料の磁気特性は、次のように測定した。まず、パラフィンを詰めたサンプルケースを準備し、それに磁石粉末を詰め、その後、加熱配向、冷却固化を行い、サンプルを作製した。次に振動試料型磁力計(VSM)(東英工業(株)製)を用い、ヒステリシスループを描かせた(最大印加磁場:1670kA/m(21kOe))。
射出成形ボンド磁石に関しては、cioffi型自記磁束計(東英工業(株)製)を用いて磁気特性を測定した(最大磁場:1830kA/m(23kOe))。
<平均粒径の測定>
磁石粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(Sympatec社製)を用いて行った。
(実施例1)
次に示す製造方法でSm−Fe−Mn−N合金粉末を作製した。まず、出発原料として、Fe粉(平均粒径:38.5μm、純度:99.0%以上、酸素<0.1%)、Sm(平均粒径:3.2μm、純度:99.0wt%以上、炭素<0.05wt%、SiO<0.01wt%)、MnO(純度:99.0wt%以上)を準備した。上記原料に、還元剤として、このSm、MnOを還元するに足るCa(粒度:5mm以下、純度99.1%以上)を加え混合機で1時間混合した。
その後、得られた混合物を反応容器に入れ、さらに還元拡散容器に入れた後、電気炉(還元拡散炉)に装入し、アルゴン置換した後、アルゴン流量0.5〜1L/分として、1200℃で8時間保持し、その後室温まで冷却してSm−Fe−Mn還元物を製造した。
次に、各還元物1kgを真空引きできるステンレス製容器に入れ、0.001MPaまで真空引きしたのち、水素を入れ反応させ崩壊させた。
次に、還元物1kgに対し10Lの水とともに水槽に入れ、10分攪拌後、上澄みを抜き、この作業を10回繰り返してCaを除去し、酢酸を用いて酸洗処理を行った。その後、アルコールでデカンテーションし、真空中100℃、3時間乾燥し、Sm−Fe−Mn母合金粉末を得た。
その後、図2に示す窒化炉を有する反応装置(ロータリー式窒化炉)の炉体(レトルト)に、Sm−Fe−Mn母合金粉末を装入し、炉体(レトルト)を回転させ(窒化時レトルト回転数:3rpm)、表2に示すように片側2箇所からガス供給を行い、反対側からガスを排気して、表1に示す条件で窒化を行った。つまり、Sm−Fe−Mn母合金粉末を炉体に装入し、アンモニア−水素混合ガスを2箇所から(それぞれ水素0.15L/分/kg、アンモニア0.20L/分/kg)流しながら470℃で5.5時間窒化を行った。窒化後、全量回収してから均等に混ざるように十分に混合したうえでSm−Fe−Mn−N粗粉末をサンプリングし、特性を評価した。結果を表3に示す。
なお、本実施例では窒化中に少なくとも1回以上2箇所以上からガス供給することで磁気特性を向上させることを説明することが主眼であるため、主相とアモルファス相の窒化条件は同じ温度、アンモニア流量、アンモニア分圧とした。
(実施例2〜6)
図3に示す窒化炉を有する反応装置(ロータリー式窒化炉)を用意し、定期的にガス供給とガス排気が切り替わるようにして、実施例1と同じSm−Fe−Mn母合金粉末を炉体(レトルト)に装入し、炉体(レトルト)を回転させ(窒化時レトルト回転数:3rpm)、表2に示すように片側からガス供給を行い反対側からガスを排気し、さらにロータリー式窒化炉を用いて、表1に示す条件で窒化を行った。アンモニア−水素混合ガスをガス供給とガス排気を3分間隔で切り替え、交互に流しながら470℃で6時間、Sm−Fe−Mn母合金粉末の窒化を行った。
窒化後、試料を表2に示すようにそれぞれサンプリングし、特性を評価した。結果を表3に示す。レトルトのガス供給側からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を実施例2とし、レトルトの中心付近からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を実施例3、レトルトのガス排気側からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を実施例4、また、全量回収してから均等に混ざるように十分に混合したうえでサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を実施例5とした。
(比較例1〜4)
図1に示す従来の窒化炉を有する反応装置(ロータリー式窒化炉)を用意し、実施例1と同じSm−Fe−Mn母合金粉末を炉体(レトルト)に装入し、回転しているレトルトに片側からガス供給を行い反対側からガスを排気しながら(窒化時レトルト回転数:3rpm)、表1の条件で窒化を行った。Sm−Fe−Mn母合金粉末にアンモニア−水素混合ガス(水素:0.3L/分/kg、アンモニア:0.40L/分/kg)流しながら470℃で6時間窒化を行った。窒化後、試料を表2に示すようにそれぞれサンプリングし、特性を評価した。結果を表3に示す。
レトルトのガス供給側からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を比較例1とし、レトルトの中心付近からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を比較例2、レトルトのガス排気側からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を比較例3、また、全量回収してから均等に混ざるように十分に混合したうえでサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末を比較例4とした。
Figure 2012132068
Figure 2012132068
Figure 2012132068
表3に示す比較例1〜4、実施例1〜5のSm−Fe−Mn合金粉末の平均粒径、Sm−Fe−Mn−N粗粉末の平均粒径、組成分析結果は、窒化後の磁石粉末をアニール処理したものである。すなわち、水素アニール(水素流量:合金1kgあたり1L/分)1時間、アルゴンアニール(アルゴン流量:合金1kgあたり1L/分)0.5時間行い、アルゴンを流した状態で室温まで自然冷却している。
比較例1は、ガス供給側からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末であるため、比較例2,4と比べて、アンモニアつまり窒素の供給が相対的に多く、過窒化で窒素量が多いことが分かる。さらに窒化にともない粒が割れ平均粒径も小さいことが分かる。比較例3は、ガス排気側からサンプリングしたSm−Fe−Mn−N粗粉末であるため、アンモニア供給つまり窒素の供給が相対的に少なく、未窒化で窒素量が少ないことが分かる。さらに平均粒径も大きいことが分かる。
一方、これら比較例に比べ、実施例1は、ガス供給が2箇所であるため、比較的均一に窒素が試料に供給されており、均一に窒化が進んでいることが分かる。また、実施例2〜5は、ガスの供給・排気を交互に行うため、ガス供給・排気の両側である実施例2、実施例4、中心部の実施例3や実施例5と全て同じような平均粒径、組成になっており均一に窒化が進んでいることが分かる。さらに平均粒径も小さいことが分かる。
(実施例6〜10、比較例5〜8)
実施例5をアルコールで粉砕し、その後、真空乾燥を行い、得られたSm−Fe−Mn−N微粉末を実施例6とした。
実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例4の試料の磁気測定を行った結果を表4に示す。比較例4(ガス供給1箇所、全量回収)に比較し、2箇所からガス供給を行った実施例1は全ての特性で高いことが分かる。
同様にガス供給・排気を交互に切り替えて行った実施例2〜実施例5についても特性のバラツキが小さいうえ、高いことが分かる。
さらに解砕を行った実施例6は比較例4、実施例5よりもとくに飽和磁化が高く解砕の効果が認められる。
以上より、本発明の実施例は比較例に比べ非常に高い特性を示しており効果が十分認められると言える。
Figure 2012132068
(実施例7〜12、比較例5〜8)
比較例1〜4、実施例1〜6で製造したSm−Fe−Mn−N微粉末をそれぞれ90.7重量%採り、これに熱可塑性樹脂12ナイロン(PA12(宇部興産(株)製)を9.3重量%の割合で混合し、ボンド磁石用組成物を調製した。
次に、このボンド磁石用組成物をナカタニ混練機(ナカタニ製)で190℃−1パス、その後、シリンダー温度210℃、成形圧力1tonでφ20×13mmの形状に射出成形した。比較例1〜4、実施例1〜6のSm−Fe−N微粉末を用いて、それぞれ比較例5〜8、実施例7〜12の成形体1〜10とした。得られた射出成形ボンド磁石の磁気特性を表5に示す。
Figure 2012132068
表5の射出成形ボンド磁石の磁気特性に示すとおり、実施例7の成形体5は比較例8の成形体4に比較し磁気特性が高く、ガスを2箇所から供給することにより射出成形体でも特性が向上することが分かる。
同様に実施例8〜11の成形体6〜9は比較例8の成形体4に比較し磁気特性が高く、ガスの供給・排気を交互に行うことにより特性が向上することが分かる。
さらに解砕を行った実施例12の成形体19は成形体4、実施例11の成形体9よりもとくに飽和磁化が高く解砕の効果が認められる。
以上より、本発明の実施例は比較例に比べ非常に高い特性を示しており射出成形体においても効果が十分認められると言える。
1 窒化炉(炉体)
2 レトルト(容器)
3、4 回転支持体
10 窒化用ガス供給口
11 ガス排出口
20,21 窒化用ガス制御器

Claims (10)

  1. 下記の一般式(1)で表されるピニングタイプの希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を得る製造方法において、希土類−遷移金属合金粉末を窒化する際、窒化炉に設けられた2箇所以上の供給口から窒化用ガスを流通することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
    αFe(100−α−β−γ)βγ ・・・式(1)
    (式(1)中、Rは希土類元素の一種または二種以上、MはCu、Mn、Co、Cr、Ti、NiおよびZrからなる群から選択される一種または二種以上、α、β、γは原子%であり、4≦α≦18、0.3≦β≦23、15≦γ≦25を満たす。)
  2. 前記希土類−遷移金属合金粉末が、還元拡散法により製造されることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  3. 前記式(1)において、βとγの範囲が1≦β≦6、18≦γ≦23であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  4. 窒化用ガスが、アンモニア−水素混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  5. 窒化用ガスが、窒化炉の入り口と中央付近に供給されることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造方法。
  6. 希土類−遷移金属系母合金からなる還元拡散反応生成物を装入する窒化炉本体と、炉内に装入された還元拡散反応生成物を所定の温度に加熱するヒーターと、炉内に窒化用ガスを供給・排出する手段を有しており、前記窒化用ガスの供給口を2箇所以上備えてなる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法に使用される希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置。
  7. 窒化用ガスを供給・排出する手段が、窒化用ガスの供給口と排気口を切り替える制御手段を具備することを特徴とする請求項6に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の製造装置。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって得られる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末であって、希土類−遷移金属−窒素合金粉末の平均粒径が、1〜40μmであることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末。
  9. 請求項8に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石用組成物。
  10. 請求項9に記載のボンド磁石用組成物を圧縮成形又は射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石。
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