JP5974975B2 - 希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
従来、この希土類−遷移金属−窒素系磁石は、希土類金属と遷移金属を溶解して合金を作製する溶解法や、希土類酸化物と遷移金属からなる原料にアルカリ土類金属を還元剤として配合し、高温で希土類酸化物を金属に還元するとともに遷移金属と合金化する還元拡散法によって製造されている。しかし、溶解法では、原料として使用する希土類金属が高価であるため経済的ではなく、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法が望ましい方法であると考えられている。
磁石粉末の粒度を揃えるために、出発原料として微細な鉄粉や酸化鉄粉が用いられているが、例えば、特許文献1および特許文献2には、共沈法で微細水酸化物を作製してから焼成して得られた微細粉末を原料粉末とし、還元拡散法で合金化して窒化することで、粉砕することなく高性能磁石粉末を製造していた。
しかしながら、この方法では、微細な鉄粉や酸化鉄粉を用いるために製造コストが高く、かつ合成時に磁石の微細粉末が凝集しやすくなり、結果として、残留磁束密度や減磁曲線の角形性が低下するという欠点を有していた。
また、アトライタ等の粉砕機を用い、鉄系ボールと溶媒、磁石粉末を混合し、0.3〜1.0m/s程度の回転周速度で粉砕を行った場合には、サブミクロンの微粉末が発生し粒度分布が広がってしまう傾向にあった。このため、希土類−遷移金属系磁石粉末に凝集が起こり、最終的に得られる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の磁気特性の低下が起こっていた。
さらに、特許文献6では、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉を粉砕中に、特定量の燐酸化合物を含む有機溶剤で特定時間接触処理して、粉砕により生じる新生面に、メカノケミカル的な作用で燐酸塩皮膜を形成させ、微粉化された該鉄系磁石粉の表面の80%以上を平均5〜100nmの厚さで均一に被覆することが提案されている。
しかしながら、特許文献4,5の方法では、製造時に温度調整や皮膜条件などをコントロ−ルするのが難しく、製造工程も長くなり、また、特許文献6の方法では燐酸化合物を含む有機溶剤との接触時間が短く、バラツキが大きくなりやすいなどの問題があり、いずれも所望の磁気特性を有する磁石粉末を得ることが困難であった。
この方法では、希土類−遷移金属−窒素系磁石の粗粉末を媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、次いで、粉砕機の中で金属ボール又はセラミックスボールの粉砕媒体とともに回転させ、その際、粉砕機の回転周速度を10〜20m/sとすることにより、希土類−遷移金属−窒素系磁石の粗粉末を特定時間で微粉砕している。これにより磁石粉末の平均粒径(D50)が2〜4μmとなり、従来法と比較すると磁気特性は向上したものの、まだ保磁力、角形性などに改善の余地が残されていた。
前記媒体攪拌ミルの粉砕媒体としてボール径が0.1〜1mmのセラミックスボールを用い、粉砕機の回転数を1000rpm以上とし、1200分以内の粉砕時間で磁石粗粉末を微粉砕することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末の製造方法が提供される。
この磁気特性や耐酸化安定性が改善された磁石微粉末は、特定量の磁石粗粉末を燐酸とともに媒体攪拌ミルなどの粉砕機に入れ、回転数1000rpm以上の条件で特定時間粉砕することで、比較的低コストで安定的に該磁石合金粉末を生産できることからその工業的価値は極めて大きい。
本発明に係る希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末は、微粉砕された磁石粉末の粒度が特定範囲に揃えられて、優れた磁気特性と表面の酸化安定性を有している磁石粉末である。磁石粉末は、希土類元素を含む遷移金属−窒素系磁石合金の粉末であり、例えば、希土類−鉄−窒素系の各種磁石粉末等を使用できる。
遷移金属が、70質量%より少ないと磁化が低くなり好ましくないが、80質量%を超えると希土類元素の割合が少なくなり過ぎ、高い保磁力が得られず好ましくない。
遷移金属の組成範囲が70〜76質量%であれば、保磁力と磁化のバランスのとれた材料となり、特に好ましい。
また、保磁力の向上、生産性の向上並びに低コスト化のために、Ca、Cr、Nb、Mo、Sb、Ge、Zr、V、Si、Al、Ta、Ti、Zn又はCu等から選ばれた一種以上の元素(M元素)を添加してもよい。この場合、M元素の添加量は、遷移金属全重量に対して7質量%以下とすることが望ましい。また、不可避的不純物としてCあるいはB等が5質量%以下含有されていてもよい。
本発明において好ましい平均粒径(D50)は、1〜1.8μmであり、より好ましい平均粒径(D50)は、1〜1.6μmである。また、1μm以下の粒度の割合は、23〜46%がより好ましい。
本発明の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末は、還元拡散法によって希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末を製造した後、燐酸とともに特定の粉砕装置・条件で微粉砕して、乾燥後に徐酸化し、平均粒径と1μm以下の粒度の割合が特定範囲の微粉末となるように粒度を揃えることによって製造される。
原料の希土類粉末としては、希土類酸化物粉末が使用される。希土類酸化物粉末の粒径は、特に制限されないが、反応性、作業性等の面から10μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、希土類酸化物粉末は、粒径0.1〜10μmの粉末が希土類酸化物粉末全体の80質量%以上を占める粉末を用いるようにする。粒径が1μm未満の粉末が多くなると、製造中に粉末が舞い上がり取り扱いにくくなる。また、10μmを越えるものが多くなると、還元拡散法で、希土類元素が拡散していない遷移金属(鉄部)が多くなる。
上記希土類元素を含む希土類酸化物粉末原料と、その粒径が1μm〜100μmの範囲に粒度調整された遷移金属粉末原料および、その他原料粉末を秤量して反応容器に入れて混合し、さらに希土類元素を還元するのに十分な量の還元剤を添加し混合する。
加熱焼成は1000〜1250℃程度の温度として、所定の時間、例えば4〜10時間処理することが好ましい。還元剤として上記のようにCaを選定した場合、Caの融点が838℃、沸点が1480℃であるため、1000〜1250℃の温度範囲内であれば還元剤は溶解するが、蒸気にはならずに処理することができる。
この加熱焼成により、上記混合物中の希土類酸化物が希土類元素に還元されるとともに、該希土類元素が鉄粉中に拡散され、希土類−遷移金属系合金(希土類−鉄母合金)が合成される。
この還元拡散反応が起きる際、原料混合物が圧縮されていると、圧縮されていない場合に比較して、原料混合物が炉内の底部、すなわち高温部で、温度分布の小さい範囲に配置され、均一に熱がかかることにより場所による反応のばらつきが小さくなり、よって組成ばらつきが小さい還元物が得られ、ひいては磁気特性の優れた合金粉末が得られることになる。さらに原料混合物が圧縮されていることにより各原料粒子間の距離が短いため熱伝導がよく、短時間で還元拡散反応が起こり昇温時間も短くなる。還元拡散時間が長すぎると、蒸気圧の高い希土類元素は高温部で揮発し、低温部に濃縮し組成がばらつく原因になる。したがって、このように短時間で還元拡散反応できることは特性を向上させる大きな要因となる。
水素吸蔵では、還元拡散処理を行った後、冷却した反応生成物を炉内に入れたまま、還元拡散処理で用いた不活性ガスを水素雰囲気ガスに置換し、この水素を含む雰囲気ガスで加圧するか、あるいは流しながら一定時間吸蔵処理することにより行う。この時、次工程の窒化処理に悪影響を与えない範囲で加熱しても構わない。水素ガスの置換は、炉内にある不活性ガスを脱気し、真空に引いてから水素ガスを導入した方が短時間で水素ガスに完全に置換できるので好ましい。この時の真空度は、大気圧に対して−30kPa以下が好ましく、−100kPa以下がさらに好ましい。
アルゴンガスは、水素ガスよりも比重が大きいため反応生成物の底部まで完全に水素ガスで置換しきれないと、水素吸蔵が効果的に行えず、水素吸蔵後も大きな塊のまま存在することがあるから、注意を要する。
次に、水素を含む雰囲気ガスで置換後、水素の吸蔵を促進するために炉内の圧力を大気圧に対して+5kPa以上に加圧しておくことが好ましい。加圧は大気圧に対して+10〜50kPaがより好ましい。加圧した状態で放置し、反応生成物が水素を吸蔵していくと、初期加圧圧力から徐々に低下していくことで水素吸蔵が進行していくことが確認できる。
焙焼物では、主相であるSm2Fe17相の周りにSmリッチ相で覆われている状態が通常である。上記水素吸蔵を行うことにより、水素がSmリッチ相等の結晶格子内に入ることで、Smリッチ相は主相よりも膨張率が大きいために、Smリッチ相と主相の粒界から割れて崩壊する。また、強固に凝集している反応生成物の周りにある未反応還元剤や酸化カルシウム等が水素と反応して、凝集がほぐれて崩壊していく。
取り出した崩壊物の粒径が10mm以下、好ましくは1mm以下になるように反応温度と時間を設定することが好ましい。崩壊物の粒径が10mmを越える状態では、窒化処理工程で均一な窒化が困難になり、磁気特性の角形が低下してしまい、水素吸蔵の効果がない。
このように、水素吸蔵させた反応生成物は、該水素処理後、容器から取り出した時点で既に崩壊しており、引き続き行われる窒化工程での崩壊性も向上している。そのため、生成した主相であるSm2Fe17相磁性粉末の凝集が小さく、崩壊して、該磁性粉末の表面が活性となっており、その後の窒化処理において該磁性粉末合金内の窒素の分布が均一になり、結果として、微粉砕して得られる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が良好なものとなる。
また、水素吸蔵で崩壊した後、窒化処理して得られる希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末は、窒素の分布が均一となるので、磁気特性を低下させる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末が少なくなるので収率が高くなる。
その後、得られた希土類−遷移金属系合金を乾燥して粉末状にした後、この粉末状の希土類−遷移金属合金を窒化処理して希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末が製造される。
窒化処理では、希土類−鉄母合金粉末を装入した反応容器を予め窒素ガス又はアンモニア、あるいはアンモニア−水素混合ガスのいずれかを含む含窒素雰囲気とした後、加熱を行う。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.3〜0.7、好ましくは0.4〜0.6となるようにする。アンモニア分圧がこの範囲であると、母合金の窒化が進み、十分に磁石粉末の飽和磁化と保磁力を向上できる。
窒化処理は、希土類−鉄母合金粉末を含窒素雰囲気中で、例えば、200〜700℃に加熱する。加熱温度は、300〜600℃が好ましく、さらに好ましくは350〜550℃とする。200℃未満では母合金の窒化速度が遅くなり、700℃を超える温度では希土類の窒化物と鉄とに分解してしまうので好ましくない。加熱時間は、例えば2〜10時間とし、5〜10時間とするのが好ましく、より好ましくは7〜10時間とする。
ここで、前記の通り水素吸蔵工程、水中デカンテーション工程と窒化処理工程の順番としたが、処理すべき焙焼物の種類や粒径によっては、先に窒化処理工程を行ってから水素吸蔵工程、あるいは水中デカンテーション工程を行うようにしてもよい。
得られた希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末は、媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、燐酸を含む有機溶媒中で粉砕媒体によって微粉砕する。磁石粗粉末を、その平均粒径(D50)が1〜2μm、かつ1μm以下の粒度の割合が20〜48%となるように微粉砕することで、優れた磁気特性の磁石微粉末を製造することができる。
媒体攪拌ミルは、有機溶媒と磁石粗粉末を混合して形成されたスラリーを微粉砕するものであり、例えば、ボール、ビーズ等の粉砕媒体を充填したミルを、攪拌棒、回転ディスク等によって強制的に攪拌することにより、粉砕を行う装置が挙げられる。
この媒体攪拌ミル内では、有機溶媒によって磁石粉末とボールがスラリー状態となって攪拌による攪拌作用を受ける。そして、磁石粉末同士あるいはボールとの摩擦により、磁石粉末はさらに細かく粉砕される。
燐酸などを添加することで、磁石微粉末が粉砕されるとともに燐酸塩の被膜が形成される。燐酸の添加量は、磁石微粉末への被膜が平均1〜20nm程度となる量が好ましく、所望とする磁気特性の観点から磁石微粉末中の元素換算でのP含有量は1質量%以下とする。
一方、媒体攪拌ミルの一種であるビーズミルは、本発明で使用する小さな粒径の磁石粉末の粉砕に適したミルであり、バッチ法または連続法で操作される典型的なビーズミルであれば特に限定されず、垂直流動もしくは水平流動を支持するように設計された任意の装置を採用することができる。
ビーズミルは、典型的には、シリカサンド、ガラスビーズ、セラミックス粉砕媒体または鋼球を粉砕媒体として使用する粉砕機である。微粉砕された磁石粉末からの粉砕媒体の分離は、粉砕媒体と磁石粉末との間に存在する沈降速度、粒子の大きさ、もしくは両パラメータ間の差に基づいて行うことができる。ビーズミルの中には、他の媒体攪拌ミルと同様に有機溶媒を供給する。セラミックス粉砕媒体には、ジルコニア、窒化珪素、アルミナなどが例示される。
媒体攪拌ミルは、比較的粉砕機の容積が小さいため、他の粉砕装置と比較すると、比較的高価で且つ消費電力も高い装置であるといえるが、これにより微粉砕処理を行っても不必要な微粒子を発生することなく、生成した粒子が凝集状態になったり、生成後に凝集する等の二次凝集の発生をも防止することができ、効率的な運転が可能となる。
なお、粉砕時間が6時間未満では3μmを超える粒子が増えることがあり、20時間を越えると1μm以下の粒子が48質量%を越えることがあるので好ましくない。粉砕時間は、磁石粗粉末の投入量や磁石粗粉末の濃度によって適宜調整することが望ましく、磁石粗粉末の投入量50kg以内の時は、360〜960分であることがより好ましい。
金属ボールとしては、例えばボール径が1mmを超え5mm以下のSUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)が使用される。
磁石粗粉末の濃度は、高すぎると粉砕効率が悪いので通常30質量%以下とする。このときの粉砕時間は、磁石粗粉末の投入量や磁石粗粉末の濃度によって適宜調整する。すなわち、磁石粗粉末の投入量が50kg以内の時は、60〜900分であることが好ましい。粉砕時間が、60分未満では、粉砕が不十分で後のセラミック粉砕媒体攪拌ミルの負荷が大きくなり、900分を超えると、本発明の特有な粒度分布を有する磁石粉末が得られにくくなる。ただ、磁石粗粉末の投入量が50kgを超え150kg以下の時は、前記と同様の理由によって粉砕時間が60〜1260分であることが好ましい。
粉砕された磁石粉末を含むスラリーは、引き続き、有機溶媒から磁石粉末を分離し乾燥する。乾燥条件は、特に制限されるわけではないが、磁石粉末を乾燥機に入れ、真空中あるいは不活性ガス雰囲気下に130℃以上、160℃以下で30〜480分間加熱するのが好ましい。
その後、引き続き徐酸化を行う。徐酸化は、燐酸塩皮膜の耐酸化性を補う処理であり、その条件は制限されないが、15%以下の酸素を含む不活性ガス雰囲気下で、0.5〜5時間かけて行うことが好ましい。例えば空気に窒素ガスを混合したガスなどが使用できる。混合ガス中の酸素濃度が15%を超えたり、処理時間が0.5時間未満であると、表面の酸化が進みすぎて磁気特性に悪影響を与える場合がある。
すなわち、保磁力iHcが1100kA/m以上、残留磁束密度Brが1.1T以上、残留磁束密度Brの90%に対応する磁場Hkが570kA/m以上、角形性Hk/iHcが0.52以上という優れた磁気特性を有する希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末を製造することができる。そして、前記粉砕条件を最適化すれば、保磁力iHcが1150kA/m以上、残留磁束密度Brが1.15T以上、残留磁束密度Brの90%に対応する磁場Hkが700kA/m以上、角形性Hk/iHcが0.58以上とさらに優れた磁気特性を有するものも得ることができる。
また、これら処理を施した磁石粉末に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム組成物などを配合して射出成形、押出し成形などを行えば、樹脂結合型磁石すなわちボンド磁石を容易に製造することができる。
ボンド磁石の製造の際、希土類−遷移金属−窒素系磁石には、フェライト、アルニコなど、各種の磁石粉末を混合してもよく、異方性磁石粉末だけでなく、等方性磁石粉末も対象となるが、異方性磁場(HA)が、4000kA/m以上の磁石粉末が好ましい。
日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、得られた磁石粉末の磁気特性を測定した。磁気特性として、保磁力iHcが1100kA/m以上、残留磁束密度Brが1.1T以上、残留磁束密度Brの90%に対応する磁場Hkが570kA/m以上、角形性Hk/iHcが0.52以上であれば磁石微粉末の磁気特性が充分であると判定できる。
(2)平均粒径(D50)、1μm以下の粒度、2.1〜3μmの粒度の割合
いずれも、HELOS粒度分布測定装置(SYMPATEC GmbH社製、商品名:レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS)を用いて、被測定粉末に3.0×105Paの圧力の窒素を噴射させて、凝集した磁石粉末を解凝して測定した。
磁石原料粉末として、粒径10〜70μmの粉末が全体の94%を占める鉄粉末(Fe純度99%)77.63kg、粒径0.1〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウム粉末(Sm2O3純度99.5%)31.73kg、および粒状金属カルシウム(Ca純度99%)12.75kgとをVブレンダーを用いて混合した。得られた混合物を円筒形のステンレス容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1180℃で6時間加熱処理を施した。
次いで、焙焼物を冷却して水素を吸蔵させた後、純水中に投じたところ、崩壊してスラリーが得られた。水素イオン濃度pHが10以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返し行った後、pHが5となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で10分間攪拌を行った。その後、脱酢酸洗浄として純水中で洗浄を行い、乾燥して粉末を得た。
次に、アンモニア分圧が0.5のアンモニア−水素混合ガス雰囲気下で昇温し、440℃で500分保持し、その後、同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持して冷却し磁石粗粉末を得た。磁石粗粉末の粒径は平均20μmであった。
得られた磁石粗粉末50kg、85%燐酸1326gおよびイソプロピルアルコール125kgを、直径3/16インチのSUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)が150kg充填された媒体攪拌ミルに入れて、180分予備粉砕を行った。その後、得られたスラリーを、直径0.5mmのSi3N4ビーズが3.71kg充填された媒体攪拌ミル(ビーズミル)に入れ、循環流量50L/min、ローター回転数1400rpmとして、ビーズミルでの粉砕時間を520分とした。回収したスラリーの一部をサンプリングして真空乾燥機により150℃で2時間保持して乾燥した後、窒素を20L/min、空気を4L/minで供給し、3時間かけて表面徐酸化して磁石微粉末aを得た。この磁石微粉末aは大気に晒しても安定であり、また微粉末a中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.60質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。
得られた磁石微粉末aに分散力を作用させて、HELOS Particle Size Analysisで平均粒径(D50)と1μm以下の粒度、2.1〜3μmの粒度の割合を測定するとともに、磁気特性を測定し、磁気特性のうち、保磁力iHc、残留磁束密度Br、残留磁束密度Brの90%に対応する磁場Hkを測定し、その結果を表1に示す。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。
実施例1において、ビーズミルでの粉砕時間を448分とした以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末bを得た。この磁石微粉末bは大気に晒しても安定であり、また微粉末b中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.62質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、ビーズミルでの粉砕時間を564分とした以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末cを得た。この磁石微粉末cは大気に晒しても安定であり、また微粉末c中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.63質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、ビーズミルでの粉砕時間を640分とした以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末dを得た。この磁石微粉末dは大気に晒しても安定であり、また微粉末d中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.62質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、ローター回転数を1200rpmとし、ビーズミルでの粉砕時間を1200分とした以外は、実施例1と同様にして磁石粉末eを得た。この磁石微粉末eは大気に晒しても安定であり、また微粉末e中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.63質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、予備粉砕を行わず、ローター回転数を1000rpmとし、ビーズミルでの粉砕時間を960分とした以外は、実施例1と同様にして磁石粉末fを得た。この磁石微粉末fは大気に晒しても安定であり、また微粉末f中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.61質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、直径0.1mmのSi3N4ビーズを用いた以外は、実施例1と同様にして磁石粉末gを得た。この磁石微粉末gは大気に晒しても安定であり、また微粉末g中のSmは23.3質量%で、Nは3.5質量%で、Pは0.63質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、Si3N4ビーズの代わりにZrO2ビーズを用いた以外は、実施例1と同様にして磁石粉末hを得た。この磁石微粉末hは大気に晒しても安定であり、また微粉末h中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.62質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、ビーズミルでの粉砕時間を500分とした以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末iを得た。この磁石微粉末iは大気に晒しても安定であり、また微粉末i中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.66質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、ビーズミルでの粉砕時間を397分とした以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末jを得た。この磁石微粉末jは大気に晒しても安定であり、また微粉末j中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.64質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、ビーズミルでの粉砕時間を570分とした以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末kを得た。この磁石微粉末kは大気に晒しても安定であり、また微粉末k中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.58質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。なお、3μmを超える粒度のものは、7%以下であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、平均粒径(D50)が0.98μmとなるまで粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末lを得た。この磁石微粉末lは大気に晒しても安定であり、また微粉末l中のSmは23.4質量%で、Nは3.5質量%で、Pは0.58質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、平均粒径(D50)が2.58μmとなるまで粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末mを得た。この磁石微粉末mは大気に晒しても安定であり、また微粉末m中のSmは23.3質量%で、Nは3.5質量%で、Pは0.70質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、平均粒径(D50)が3.61μmとなるまで粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末nを得た。この磁石微粉末nは大気に晒しても安定であり、また微粉末n中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.70質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、直径0.05mmのSi3N4ビーズを用いた以外は、実施例1と同様にして行ったところ、スクリーンの目詰まりによって粉砕を中断した。
実施例1において、ローター回転数800rpmとした以外は、実施例1と同様にして行ったところ、1200分を越えても所望の平均粒径まで粉砕できず中断した。
実施例1において、磁石粉末の平均粒径(D50)が2.08μmとなるまで粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末oを得た。この磁石微粉末oは大気に晒しても安定であり、また微粉末o中のSmは23.4質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.66質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、燐酸濃度を高めて2566g添加した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末pを得た。この磁石微粉末pは大気に晒しても安定であり、また微粉末p中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは1.20質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
比較例7において、燐酸濃度をさらに高めて2994g添加した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末qを得た。この磁石微粉末qは大気に晒しても安定であり、また微粉末q中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは1.40質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、媒体攪拌ミルで予備粉砕を780分行った後、得られたスラリーを、Si3N4ビーズを充填した媒体攪拌ミルに入れ、ビーズミルで420分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末rを得た。この磁石微粉末rは大気に晒しても安定であり、また微粉末r中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.60質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例12において、予備粉砕後、得られたスラリーをSi3N4ビーズ3.71kg充填した媒体攪拌ミルに入れ、ローター回転数を1500rpmに高めて、ビーズミルで420分粉砕とした以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末sを得た。この磁石微粉末sは大気に晒しても安定であり、また微粉末s中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.61質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例13において、真空乾燥後の磁石微粉末表面の徐酸化において、雰囲気ガスの供給量をN222L/min、空気2L/minに変更した以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末tを得た。この磁石微粉末tは大気に晒しても安定であり、また微粉末t中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.62質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例13において、燐酸濃度を低下させ85%燐酸1084g添加した以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末uを得た。この磁石微粉末uは大気に晒しても安定であり、また微粉末u中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.42質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、磁石粗粉末を80kg、85%燐酸1734g、イソプロピルアルコール200kgとし、媒体攪拌ミルで900分予備粉砕した後、得られたスラリーをビーズミルに入れローター回転数を1500rpmに高めて、480分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末vを得た。この磁石微粉末vは大気に晒しても安定であり、また微粉末u中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.42質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例1において、燐酸を添加せず、かつ乾燥後の徐酸化を行わなかった以外は、実施例1と同様にして行ったところ、得られた磁石微粉末wを大気に晒した瞬間に部分的に発火した。
実施例15において、真空乾燥後の磁石微粉末表面の徐酸化を行う際に、雰囲気ガスの供給量を窒素22L/min、空気2L/minに変更した以外は、実施例1と同様にして磁石微粉末xを得た。この磁石微粉末xは大気に晒しても安定であり、また微粉末x中のSmは23.3質量%で、Nは3.4質量%で、Pは0.40質量%(残部FeおよびCaやHなど不可避的不純物)であった。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
以上の結果から、実施例1〜17は、表1に示すとおり、磁石合金粉末の平均粒径(D50)や1μm以下の粒度の割合およびP含有量が本発明の範囲内であるために、磁気特性に優れている。
これに対して、比較例1〜3、6は、平均粒径(D50)や1μm以下の粒度の割合が本発明から外れているために、磁気特性も低下することが分かる。また、比較例4は、ボール径が小さい粉砕媒体を用いたために、スクリ−ンの目詰まりが生じ、比較例5は、ローター回転数が小さかったために、1200分を越えても所望の粒径まで粉砕できなかった。さらに、比較例7〜9は、燐酸を添加しないか、燐酸添加量が多過ぎたために、P含有量が本発明から外れ、耐酸化性が得られないか、保磁力iHcが950kA/m未満と低いことが分かる。
Claims (7)
- 希土類元素を23.0〜25.0質量%、Nを3.0〜3.6質量%含み、残りが実質的に遷移金属元素である希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末において、
該磁石微粉末は、平均粒径(D50)が1〜2μmで、1μm以下の粒度の割合が20〜48%であり、かつ表面に、P含有量が元素換算で1質量%以下の燐酸塩皮膜が形成されており、保磁力iHcが1100kA/m以上、残留磁束密度Brが1.1T以上、残留磁束密度Brの90%に対応する磁場Hkが570kA/m以上、角形性Hk/iHcが0.52以上の磁気特性を有することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末。 - 磁石微粉末は、2.1〜3μmの粒度の割合が5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末。
- 平均粒径(D50)が5μmを超える希土類−遷移金属−窒素系磁石の粗粉末を、燐酸を含む有機媒体および粉砕媒体とともに粉砕機の媒体攪拌ミルに入れ、高速で回転させて磁石粗粉末を微粉砕した後、粉砕物を乾燥させてから徐酸化する希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末の製造方法であって、
前記媒体攪拌ミルの粉砕媒体としてボール径が0.1〜1mmのセラミックスボールを用い、粉砕機の回転数を1000rpm以上とし、1200分以内の粉砕時間で磁石粗粉末を微粉砕することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末の製造方法。 - 前記磁石粗粉末の徐酸化が、15%以下の酸素を含む不活性ガス雰囲気下で、0.5〜5時間行われることを特徴とする請求項3に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末の製造方法。
- 前記磁石粗粉末が、前記セラミックスボールを粉砕媒体とした媒体攪拌ミルで粉砕される前に、粉砕媒体としてボール径が1mmを超え5mm以下の金属ボールを粉砕媒体とした媒体攪拌ミルで予備粉砕されることを特徴とする請求項3または4に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末の製造方法。
- 磁石粗粉末の投入量50kg以内の時に、前記予備粉砕の時間が60〜900分であることを特徴とする請求項5に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末の製造方法。
- 磁石粗粉末の投入量50kgを超え150kg以下の時に、前記予備粉砕時間が60〜1260分であることを特徴とする請求項5に記載の希土類−遷移金属−窒素系磁石微粉末の製造方法。
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