JP2015195326A - 希土類−鉄−窒素系磁石粉末及びその製造方法とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末をマイルドに粉砕することにより、1μm以下の粒度の割合が減少し、かつ粉砕による磁粉表面のダメージを抑制することによって特に高い磁気特性を有する表面安定性に優れた希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末及びその安価な製造方法とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びに各種機器を小型化、高特性化し得るボンド磁石を提供する。【解決手段】希土類元素が23.0質量%以上25.0質量%以下、Nが3.0質量%以上3.6質量%以下、および残りがFeと不可避的不純物からなる還元拡散法で製造された磁石粗粉末を、ボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボ−ルを粉砕媒体として用いて粉砕して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末であって、平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満で、1μm以下の粒度の割合が10%未満で、5μm以下の粒度の割合が70%以上で、10μm以下の粒度の割合が95%以上であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末などにより提供する。【選択図】なし
Description
本発明は、希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末及びその製造方法とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石に関し、より詳しくは、希土類−遷移金属−窒素系磁石粗粉末をマイルドに粉砕することにより、1μm以下の粒度の割合が減少し、かつ粉砕による磁粉表面のダメージを抑制することによって特に高い磁気特性を有する表面安定性に優れた希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末及びその安価な製造方法とそれを用いたボンド磁石用組成物、並びに各種機器を小型化、高特性化し得るボンド磁石に関するものである。
SmFeNで代表される希土類−遷移金属−窒素系磁石は、高性能でかつ安価な希土類−遷移金属−窒素系磁石として知られている。
従来、この希土類−遷移金属−窒素系磁石は、希土類金属と遷移金属を溶解して合金を作製する溶解法や、希土類酸化物と遷移金属からなる原料にアルカリ土類金属を還元剤として配合し、高温で希土類酸化物を金属に還元するとともに遷移金属と合金化する還元拡散法によって製造されている。しかし、溶解法では、原料として使用する希土類金属が高価であるため経済的ではなく、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法が望ましい方法であると考えられている。
従来、この希土類−遷移金属−窒素系磁石は、希土類金属と遷移金属を溶解して合金を作製する溶解法や、希土類酸化物と遷移金属からなる原料にアルカリ土類金属を還元剤として配合し、高温で希土類酸化物を金属に還元するとともに遷移金属と合金化する還元拡散法によって製造されている。しかし、溶解法では、原料として使用する希土類金属が高価であるため経済的ではなく、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法が望ましい方法であると考えられている。
すなわち、還元拡散法では、先ず希土類酸化物粉末原料、遷移金属粉末原料、および上記希土類酸化物の還元剤であるアルカリ土類金属を配合した混合物を、非酸化性雰囲気中で焼成して希土類−遷移金属系合金を合成する。その後、得られた希土類−遷移金属系合金を水素吸蔵させてから湿式処理して粉末状にした後、この粉末状の希土類−遷移金属合金を窒化処理する方法、もしくは窒化処理と湿式処理の順番を入れ替えた方法により、所望の希土類−遷移金属−窒素系磁石が製造される。
この様にして得られた粉末状の希土類−遷移金属−窒素系磁石は、特定の粒度になるまで微粉砕処理される。この場合、希土類−遷移金属−窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、磁気特性の一つである減磁曲線の角型性、保磁力を高めるには、微粉砕された後の希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の粒度を揃えることが必要とされている。
磁石粉末の粒度を揃えるために、出発原料として微細な鉄粉や酸化鉄粉が用いられているが、例えば、特許文献1および特許文献2に記載のように、共沈法で微細水酸化物を作製してからM成分(Al、Ti、Mnなど)を添加し、焼成して得られた微細粉末を原料粉末として還元拡散法で合金化して窒化することで、粉砕することなく高性能磁石粉末を製造していた。
しかしながら、この方法では金属Caで還元拡散を行う前に沈殿生成物の洗浄、大気焼成および水素還元を行うために、プロセスが長く製造コストが高いという欠点を有していた。
磁石粉末の粒度を揃えるために、出発原料として微細な鉄粉や酸化鉄粉が用いられているが、例えば、特許文献1および特許文献2に記載のように、共沈法で微細水酸化物を作製してからM成分(Al、Ti、Mnなど)を添加し、焼成して得られた微細粉末を原料粉末として還元拡散法で合金化して窒化することで、粉砕することなく高性能磁石粉末を製造していた。
しかしながら、この方法では金属Caで還元拡散を行う前に沈殿生成物の洗浄、大気焼成および水素還元を行うために、プロセスが長く製造コストが高いという欠点を有していた。
一方、希土類−遷移金属系磁石粉末を粉砕する場合は、例えば、特許文献3には、不活性ガス雰囲気を保持したハンマーミル、ディスクミル、振動ミル、アトライター、ジェットミル、あるいはボールミルで効率的に行うことができるといった記載があり、その実施例1では湿式ボールミルと乾式ジェットミルで粉砕を行って微粉砕し、平均粉末粒径2.0〜3.0μmの磁粉を得ている。しかし、平均粉末粒径が2.0〜3.0μmになるまで粉砕する過程で、0.5〜30μmといった粉末粒径分布の広い粉末となる結果、粒子形状は不定形であり、1μm以下の粒度の割合が高く安定性に劣っていた。
このため、例えば、特許文献4では、SmFeN合金粒子を微粉砕する際、または微粉砕後の分級の際に、磁石粒子の温度を300〜650℃に保つようにして磁石粒子の凝集を防ぐ方法が提案されている。また、特許文献5では、SmFeN合金粒子の表面をフッ素化合物皮膜、ポリシラザン硬化皮膜、酸化ケイ素皮膜、窒化ケイ素皮膜のいずれかで被覆して保護層を形成することによって、耐酸化性を向上させ、微粉同志の凝集を抑制した高磁気特性の合金粉末が提案されている。
しかしながら、これらの方法では、製造時に温度調整や皮膜条件などをコントロールするのが難しく、製造工程も長くなり、バラツキが大きくなりやすいなどの問題があり、保磁力はいずれも10kOe未満であり、かつ表面安定性に優れた磁石粉末を得ることが困難であった。
しかしながら、これらの方法では、製造時に温度調整や皮膜条件などをコントロールするのが難しく、製造工程も長くなり、バラツキが大きくなりやすいなどの問題があり、保磁力はいずれも10kOe未満であり、かつ表面安定性に優れた磁石粉末を得ることが困難であった。
そこで本出願人は、上記課題を解決する方法として、磁石粉末を特定の粒度分布に揃えることで凝集度が低くなり、磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末、また、磁石粉末を特定の装置・条件で粉砕することによって効率的に製造する方法を提案した(特許文献6)。
この方法では、希土類−遷移金属−窒素系磁石の粗粉末を媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、次いで、粉砕機の中で0.1〜1mmの金属ボール又はセラミックスボールの粉砕媒体とともに回転させ、特定の条件で微粉砕して、磁石粉末の平均粒径(D50)が1〜4μmとなるようにしている。しかし、従来法と比較すると磁気特性は向上したものの平均粒径(D50)が小さく、微粉砕によって生じる1μm以下の粒度の割合が高いため、特に表面安定性に改善の余地が残されていた。また、粉砕媒体のボ−ル径が0.1〜1mmと小さくハンドリングの問題もあった。
この方法では、希土類−遷移金属−窒素系磁石の粗粉末を媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、次いで、粉砕機の中で0.1〜1mmの金属ボール又はセラミックスボールの粉砕媒体とともに回転させ、特定の条件で微粉砕して、磁石粉末の平均粒径(D50)が1〜4μmとなるようにしている。しかし、従来法と比較すると磁気特性は向上したものの平均粒径(D50)が小さく、微粉砕によって生じる1μm以下の粒度の割合が高いため、特に表面安定性に改善の余地が残されていた。また、粉砕媒体のボ−ル径が0.1〜1mmと小さくハンドリングの問題もあった。
このため、微粉砕に依存せず、1μm以下の粒度の割合が少ないことで表面安定性が高く、従来法と同等以上の磁気特性を有するとともに、比較的低い磁場中での配向性が優れた希土類−遷移金属−窒素系磁石が必要とされ、これを配合したボンド磁石用樹脂組成物を成形することで、低パーミアンスでも高温時の減磁を低減しうるボンド磁石の出現が望まれている。
本発明の目的は、このような従来の状況に鑑み、1μm以下の粒度の割合が減少し、特に高い磁気特性を有する表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末とその安価な製造方法及びそれを用いたボンド磁石用組成物、並びにボンド磁石を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、希土類−鉄合金を窒化した磁石粗粉末を媒体攪拌ミル中で、特定サイズのセラミックス製粉砕媒体を用いて粉砕することにより、粉末の平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満で、1μm以下の粒度の割合が10%未満と少なく、5μm以下の粒度の割合が70%以上、かつ10μm以下の粒度の割合が95%以上の希土類−鉄−窒素系磁石粉末が得られること、これによって磁気特性が改善され、残留磁束密度Br(以後、単に「Br」と記す。)、保磁力iHc(以後、単に「iHc」と記す。)、磁束密度がBrの90%に対応する磁場Hk(以後、単に「Hk」と記す。)、角形比Hk/iHc(以後、単に「Hk/iHc」と記す。)および最大エネルギー積(BH)max(以後、単に「(BH)max」と記す。)のいずれも高くなり、表面安定性に優れた磁石粉末を容易に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類元素が23.0質量%以上25.0質量%以下で、Nが3.0質量%以上3.6質量%以下および残りがFeと不可避的不純物からなる還元拡散法で製造された磁石粗粉末を、粉砕媒体としてボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボールを粉砕媒体として用いて粉砕して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末であって、平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満で、1μm以下の粒度の割合が10%未満で、5μm以下の粒度の割合が70%以上で、10μm以下の粒度の割合が95%以上であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、磁石粉末はその表面に元素換算でのP含有量が0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜が形成されていることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、Brが1.3T以上、iHcが880kA/m以上、Hkが360kA/m以上、かつ(BH)maxが260kJ/m3以上の磁気特性を有することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、さらに角形比(Hk/iHc)が0.45以上であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、さらに角形比(Hk/iHc)が0.45以上であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末が提供される。
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、原料粉末である鉄粉末および希土類元素の酸化物粉末と、前記原料粉末混合物中の酸化物を還元するに必要な化学量論量の1.1倍量以上のアルカリ土類金属を混合した後、950〜1200℃の還元拡散条件で加熱することで希土類−鉄合金を得た後、窒化して希土類−鉄−窒素系磁石とし、この粗粉末を有機溶媒および粉砕媒体とともに粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、粉砕物を乾燥させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
前記媒体攪拌ミルの粉砕媒体としてボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボールを用いて粉砕することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
前記媒体攪拌ミルの粉砕媒体としてボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボールを用いて粉砕することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記粉砕の際に、有機溶媒に燐酸を添加することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明において、前記原料粉末である鉄粉末の平均粒径(D50)が、50μm以下であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第5の発明において、前記原料粉末である希土類酸化物粉末の平均粒径(D50)が、10μm以下であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第5の発明において、前記セラミックスボールの材質が、ジルコニア又は窒化珪素であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石用組成物が提供される。
一方、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、熱可塑性樹脂を樹脂バインダーとして配合したボンド磁石用組成物を射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第10の発明において、熱硬化性樹脂を樹脂バインダーとして配合したボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第10の発明において、熱硬化性樹脂を樹脂バインダーとして配合したボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石が提供される。
本発明によれば、平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満で、1μm以下の粒度の割合が10%未満で、5μm以下が70%以上で、10μm以下の粒度の割合が95%以上の希土類−鉄−窒素系磁石粉末を提供することができ、かかる合金粉末は、Br、iHc、Hkおよび(BH)maxはいずれも高く、表面安定性に優れた磁石粉末である。
この磁気特性が改善された磁石粉末は、磁石粗粉末を媒体攪拌ミルなどの粉砕機に入れ、特定種かつ特定サイズの粉砕媒体を用いて粉砕することで、安定的に該磁石合金粉末を低コストで生産できることからその工業的価値は極めて大きい。
また、この希土類−遷移金属−窒素系合金粉末はボンド磁石や焼結磁石に成形されて、高い磁気特性が必要とされる一般家電製品、通信、自動車、音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする製品のモータなどの各種用途に適用することができる。
この磁気特性が改善された磁石粉末は、磁石粗粉末を媒体攪拌ミルなどの粉砕機に入れ、特定種かつ特定サイズの粉砕媒体を用いて粉砕することで、安定的に該磁石合金粉末を低コストで生産できることからその工業的価値は極めて大きい。
また、この希土類−遷移金属−窒素系合金粉末はボンド磁石や焼結磁石に成形されて、高い磁気特性が必要とされる一般家電製品、通信、自動車、音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする製品のモータなどの各種用途に適用することができる。
以下、本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末及びその製造方法について詳細に説明する。
1.希土類−鉄−窒素系磁石粉末
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、後述する還元拡散法で製造された磁石母合金を窒化して得られる磁石粗粉末を、特定種かつ特定サイズの粉砕媒体を用いて粉砕していることから、優れた磁気特性を有している。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、後述する還元拡散法で製造された磁石母合金を窒化して得られる磁石粗粉末を、特定種かつ特定サイズの粉砕媒体を用いて粉砕していることから、優れた磁気特性を有している。
希土類元素には、Sm、Gd、Tb、Ceの内の少なくとも一種、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの内、一種以上を含むものが好ましい。中でもSmが含まれる場合、本発明の効果を著しく発揮させることが可能となる。
希土類元素は、単独若しくは混合物として使用でき、その含有量は、23.0質量%以上25.0質量%以下とすることが好ましい。希土類元素の含有量が23.0質量%よりも少ないと、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになって高い保磁力が得難くなり、25.0質量%を超えると主相となる合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下するため好ましくない。
希土類元素は、単独若しくは混合物として使用でき、その含有量は、23.0質量%以上25.0質量%以下とすることが好ましい。希土類元素の含有量が23.0質量%よりも少ないと、合金中に軟磁性相であるα−Feが多く存在するようになって高い保磁力が得難くなり、25.0質量%を超えると主相となる合金相の体積が減少してしまい飽和磁化が低下するため好ましくない。
さらに、窒素Nの含有量は、磁気特性の観点から3.0質量%以上3.6質量%以下とすることが好ましい。窒素が3.0質量%未満では9eサイトに窒素がすべて入らないため高い磁気特性が得られず、窒素が3.6質量%より多く入ってしまうと結晶構造が壊れ磁気特性が下がってしまう。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満で、1μm以下の粒度の割合が10%未満と少なく、5μm以下の粒度の割合が70%以上で、かつ10μm以下の粒度の割合が95%以上のものである。平均粒径(D50)の範囲、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合が前記範囲を外れると、いずれの場合でも所望とする磁気特性と表面安定性が得られない。好ましいのは、平均粒径(D50)が2.8〜3.5μmで、1μm以下の粒度の割合が10%未満、5μm以下の粒度の割合が75%以上で、かつ10μm以下の粒度の割合が95%以上のものである。
平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合は、HELOS粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
HELOS粒度分布測定装置は、粒度分布を測定する際に、被測定粉末に一定の圧力の窒素を噴射させて凝集した粉末を解凝して測定するものである。そして、このときの窒素圧を分散力と呼んでいる。ここで、平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合は、いずれも窒素圧力を3.0×105Paで噴射して測定したものである。
HELOS粒度分布測定装置は、粒度分布を測定する際に、被測定粉末に一定の圧力の窒素を噴射させて凝集した粉末を解凝して測定するものである。そして、このときの窒素圧を分散力と呼んでいる。ここで、平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合は、いずれも窒素圧力を3.0×105Paで噴射して測定したものである。
本発明の磁石粉末は、表面安定化成分としてP(燐)を含有することができる。P(燐)含有量は元素換算で0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。前記範囲外では、所望とする磁気特性が得られないことがある。好ましい含有量は、0.3質量%以上0.7質量%以下である。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満であり、1μm以下の粒度の割合が10%未満と微細な粒子が少なく、5μm以下の粒度の割合が70%以上で、10μm以下の粒度の割合が95%以上と、粒が比較的揃っているので凝集が少ない。
本発明の磁石粉末は、Brが1.3T以上、iHcが880kA/m以上、Hkが360kA/m以上、(BH)maxが260kJ/m3以上という優れた磁性特性を有している。しかも、平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満と比較的大きいものの、1μm以下の粒度の割合が10%未満と極めて少なく、表面安定性に優れていることから大気中に暴露しても発火しない。
さらに、磁石粉末のHk/iHcが0.45以上であると、比較的低い磁場中での配向性が優れ、かつ成形してボンド磁石とした時には低パーミアンスでも高温時の減磁が少なくなりより好ましい。
さらに、磁石粉末のHk/iHcが0.45以上であると、比較的低い磁場中での配向性が優れ、かつ成形してボンド磁石とした時には低パーミアンスでも高温時の減磁が少なくなりより好ましい。
2.希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、還元拡散法によって希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を製造した後、特定種かつ特定サイズの粉砕媒体を用いて、希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕して、平均粒径(D50)と1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合が特定範囲の粉末となるように粒度を揃えることによって製造される。
すなわち、本発明では、前記粉砕媒体としてボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボールを用いて、前記粗粉末を少なくとも平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満となり、かつ1μm以下の粒度の割合が10%未満となる条件で粉砕する。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、還元拡散法によって希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を製造した後、特定種かつ特定サイズの粉砕媒体を用いて、希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を粉砕して、平均粒径(D50)と1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合が特定範囲の粉末となるように粒度を揃えることによって製造される。
すなわち、本発明では、前記粉砕媒体としてボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボールを用いて、前記粗粉末を少なくとも平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満となり、かつ1μm以下の粒度の割合が10%未満となる条件で粉砕する。
(1)希土類−鉄−窒素系磁石粉末の調製
原料の希土類粉末としては、通常希土類酸化物粉末が使用される。希土類酸化物粉末の粒径は、反応性、作業性等の面から平均粒径(D50)が10μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、7μm以下、特に好ましくは、5μm以下である。10μmを越えると、還元拡散法で得られる合金生成物中に、希土類元素が拡散していない未反応鉄部が多くなる。
原料の希土類粉末としては、通常希土類酸化物粉末が使用される。希土類酸化物粉末の粒径は、反応性、作業性等の面から平均粒径(D50)が10μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、7μm以下、特に好ましくは、5μm以下である。10μmを越えると、還元拡散法で得られる合金生成物中に、希土類元素が拡散していない未反応鉄部が多くなる。
原料として用いる鉄粉末は、一般的にアトマイズ法、電解法等により製造されるが、粉末状のものであれば、その製法は限定されない。鉄粉末の粒径は、反応性、作業性等の面から平均粒径(D50)が50μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、10μm以下、特に好ましくは、5μm以下である。50μmを越えると、還元拡散法で得られる合金生成物中に、希土類元素が拡散していない未反応鉄部が多くなる。
還元剤としては、Caなどのアルカリ土類金属が用いられる。上記還元剤は、粒状もしくは粉末状のものが用いられるが、粒度は最大粒径5mm以下のものが好ましい。
還元剤としては、Caなどのアルカリ土類金属が用いられる。上記還元剤は、粒状もしくは粉末状のものが用いられるが、粒度は最大粒径5mm以下のものが好ましい。
希土類元素を含む希土類酸化物粉末と鉄粉末を秤量して反応容器に入れて混合し、さらに希土類酸化物を還元するのに十分な量の還元剤を添加し混合する。この場合の反応当量は、少な過ぎると希土類酸化物のまま残留し、合金内部に未反応鉄が生じるため1.1倍量以上とする。一方、多過ぎると洗浄時間が長くなり生産性が低くなるため、1.1〜2倍量が好ましく1.2〜1.7倍量がより好ましい。
上記原料混合物の入った反応容器を還元拡散炉に移し、不活性ガス雰囲気中、例えば、Arガスを流しながら還元拡散炉で上記還元剤が溶融状態になる温度まで昇温し加熱焼成する。
加熱温度は950℃〜1200℃として3〜10時間処理することが好ましい。さらに好ましくは、1000〜1200℃、特に好ましくは、1100〜1200℃である。還元剤として上記したようにCaを選定した場合、Caの融点が838℃、沸点が1480℃であるため、950℃〜1200℃の温度範囲であれば還元剤は溶融するが、蒸気にはならずに処理することができる。また、加熱時間は、3〜9時間がより好ましく、3〜8時間がさらに好ましい。
加熱温度は950℃〜1200℃として3〜10時間処理することが好ましい。さらに好ましくは、1000〜1200℃、特に好ましくは、1100〜1200℃である。還元剤として上記したようにCaを選定した場合、Caの融点が838℃、沸点が1480℃であるため、950℃〜1200℃の温度範囲であれば還元剤は溶融するが、蒸気にはならずに処理することができる。また、加熱時間は、3〜9時間がより好ましく、3〜8時間がさらに好ましい。
この加熱焼成により、上記混合物中の希土類酸化物が希土類元素に還元されるとともに、該希土類元素が鉄粉中に拡散し、希土類−鉄母合金が合成される。この還元拡散反応が起きる際、原料混合物が圧縮処理されていると、原料混合物が炉内の温度分布の小さい範囲に置かれ、均一に熱がかかることになる。これにより場所による反応のばらつきが小さくなり、組成ばらつきが小さい希土類−鉄母合金粉末が得られ、ひいては磁気特性の高い粉末が得られることになる。さらに原料が適度に圧縮処理されており、各原料粒子間の距離が短いため熱伝導がよく、短時間で反応し昇温時間も短くなる。還元拡散時間が長い場合、蒸気圧の高い希土類元素は高温部で揮発し、低温部に濃縮し組成のばらつき原因になる。したがって、このように短時間で還元拡散反応できることは特性を向上させる大きな要因となる。
次に、この希土類−鉄系合金に対して、必要により水素吸蔵を行う。希土類−鉄合金は、少なくとも水素を含有する雰囲気の温度が500℃以下となるように冷却する。500℃を越えると消費エネルギーが大きくなり、しかも、目的の希土類−鉄母合金が分解したり、副反応生成物が生じたりすることがあるからである。反応生成物に水素を吸蔵させることは室温でも十分行うことができる。反応生成物が水素を吸蔵すると自己発熱を起こし、材料温度が上昇するため、500℃を越えないように留意する。
水素吸蔵では、還元拡散処理を行った後、冷却した反応生成物を炉内に入れたまま、還元拡散処理で用いた不活性ガスを水素雰囲気ガスに置換し、この水素を含む雰囲気ガスで加圧するか、あるいはガスを流しながら一定時間吸蔵処理することにより行う。この時、次工程の窒化処理に悪影響を与えない範囲で加熱しても構わない。水素ガスの置換は、炉内にある不活性ガスを脱気し、真空に引いてから水素ガスを導入した方が短時間で水素ガスに完全に置換できるので好ましい。この時の真空度は、大気圧に対して−30kPa以下が好ましく、−100kPa以下がさらに好ましい。
アルゴンガスは、水素ガスよりも比重が大きいため反応生成物の底部まで完全に水素ガスで置換しきれないと、水素吸蔵が効果的に行えず、水素吸蔵後も大きな塊のまま存在することがあるから、注意を要する。
次に、水素を含む雰囲気ガスで置換後、水素の吸蔵を促進するために炉内の圧力を大気圧に対して+5kPa以上に加圧しておくことが好ましい。加圧は大気圧に対して+10〜50kPaがより好ましい。加圧した状態で放置し、反応生成物が水素を吸蔵していくと、初期加圧圧力から徐々に低下することで水素吸蔵の進行が確認できる。
アルゴンガスは、水素ガスよりも比重が大きいため反応生成物の底部まで完全に水素ガスで置換しきれないと、水素吸蔵が効果的に行えず、水素吸蔵後も大きな塊のまま存在することがあるから、注意を要する。
次に、水素を含む雰囲気ガスで置換後、水素の吸蔵を促進するために炉内の圧力を大気圧に対して+5kPa以上に加圧しておくことが好ましい。加圧は大気圧に対して+10〜50kPaがより好ましい。加圧した状態で放置し、反応生成物が水素を吸蔵していくと、初期加圧圧力から徐々に低下することで水素吸蔵の進行が確認できる。
反応生成物では、主相であるSm2Fe17相の周りにSmリッチ相で覆われている状態が通常である。上記水素吸蔵を行うことにより、水素はSmリッチ相等の結晶格子内に入るが、Smリッチ相は主相よりも膨張率が大きいためにSmリッチ相と主相の粒界から割れて崩壊する。また、強固に凝集している反応生成物の周りにある未反応還元剤や酸化カルシウム等が水素と反応して、凝集がほぐれて崩壊していく。
取り出した崩壊物の粒径が10mm以下、好ましくは1mm以下になるように反応温度と時間を設定することが好ましい。崩壊物の粒径が10mmを越える状態では、窒化処理工程で均一な窒化が困難になり、磁気特性の角形が低下してしまい、水素吸蔵の効果がない。
このように、水素吸蔵させた反応生成物は、該水素処理後、容器から取り出した時点で既に崩壊しており、引き続き行われる窒化工程での崩壊性も向上している。そのため、生成したSm2Fe17相が主相である磁性粉末の凝集が小さく、崩壊して、該磁性粉末の表面が活性となっており、その後の窒化処理において該合金粉末内の窒素の分布が均一になり、結果として、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が良好なものとなる。
また、水素吸蔵で崩壊した後、窒化処理して得られる希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、窒素の分布が均一となるので、磁気特性を低下させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末が少なくなるので収率が高くなる。
取り出した崩壊物の粒径が10mm以下、好ましくは1mm以下になるように反応温度と時間を設定することが好ましい。崩壊物の粒径が10mmを越える状態では、窒化処理工程で均一な窒化が困難になり、磁気特性の角形が低下してしまい、水素吸蔵の効果がない。
このように、水素吸蔵させた反応生成物は、該水素処理後、容器から取り出した時点で既に崩壊しており、引き続き行われる窒化工程での崩壊性も向上している。そのため、生成したSm2Fe17相が主相である磁性粉末の凝集が小さく、崩壊して、該磁性粉末の表面が活性となっており、その後の窒化処理において該合金粉末内の窒素の分布が均一になり、結果として、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が良好なものとなる。
また、水素吸蔵で崩壊した後、窒化処理して得られる希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、窒素の分布が均一となるので、磁気特性を低下させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末が少なくなるので収率が高くなる。
窒化ガスには、窒素、またはアンモニアを用いることが好ましい。特に、アンモニアは希土類−鉄合金粉末を窒化しやすく、短時間で窒化できるため好ましい。本発明では、窒化ガスが少なくともアンモニアと水素とを含有していることが好ましく、反応をコントロールするためにアルゴン、窒素、ヘリウムなどを混合することができる。アンモニア−水素混合ガスを用いるとアンモニアだけで窒化した場合と比較し、アンモニア分圧が下がり、表面付近が過窒化になり難く粉末内部まで均一に窒化できる。窒化ガスの量は、磁石粉末中の窒素量が3.0〜3.6質量%となるに十分な量であることが好ましい。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.1〜0.7、好ましくは0.2〜0.6となるようにする。アンモニア分圧がこの範囲であると、母合金の窒化が進み、十分に磁石粉末の飽和磁化と保磁力を向上できる。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.1〜0.7、好ましくは0.2〜0.6となるようにする。アンモニア分圧がこの範囲であると、母合金の窒化が進み、十分に磁石粉末の飽和磁化と保磁力を向上できる。
窒化反応を行う反応装置は、特に限定されず、横型、縦型の管状炉、回転式反応炉、密閉式反応炉などが挙げられる。何れの装置においても、本発明の希土類−鉄−窒素磁石粉末を調製することが可能であるが、特に窒素組成分布の揃った粉体を得るためにはキルンのような回転式反応炉を用いるのが好ましい。
窒化処理は、該希土類−鉄母合金粉末を含窒素雰囲気中で、例えば、200〜700℃に加熱する。加熱温度は、300〜600℃が好ましく、さらに好ましくは350〜550℃とする。200℃未満では十分に母合金の窒化速度が遅く、700℃を超える温度では希土類の窒化物と鉄とに分解してしまうので好ましくない。加熱時間は処理量に応じて適宜選択すればよいが、例えば1〜10時間とする。
窒化処理は、該希土類−鉄母合金粉末を含窒素雰囲気中で、例えば、200〜700℃に加熱する。加熱温度は、300〜600℃が好ましく、さらに好ましくは350〜550℃とする。200℃未満では十分に母合金の窒化速度が遅く、700℃を超える温度では希土類の窒化物と鉄とに分解してしまうので好ましくない。加熱時間は処理量に応じて適宜選択すればよいが、例えば1〜10時間とする。
窒化を効率よく行うためには、通常80μm程度以下の希土類−鉄合金粉末を用いることが好ましい。粒子の大きさは特に制限されないが、凝集・融着部を実質的に含まない平均粒径3〜20μmの粉末であればさらに好ましい。このため、希土類−鉄母合金粉末の凝集・融着部をなくすために、必要により解砕しておくことができ、粒径の大きな希土類−鉄合金粉末をさらに微粉砕(解砕を含む)して製造してもよい。粒径が1μmよりも細かいと発火や表面酸化し易く取り扱いが難しくなる。また、粒径が80μmよりも粗いと粒子表面から内部まで均一に窒化し難く、磁気特性が低くなってしまう。
その後、窒化処理した希土類−鉄−窒素系磁石粉末を純水中に投じ、水素イオン濃度pHが11以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返す。その後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で攪拌を行う。その後、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末をアルコール置換し、次に乾燥することで、所望の希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末が製造される。
ここで、前記の通り水素吸蔵工程後の窒化処理工程と水中デカンテーション工程との順番を逆にしてもよい。
ここで、前記の通り水素吸蔵工程後の窒化処理工程と水中デカンテーション工程との順番を逆にしてもよい。
(2)磁石粉末の粉砕
得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、有機溶媒中で粉砕媒体によって粉砕する。磁石粉末を、その平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満、1μm以下の粒度の割合が10%未満、5μm以下の粒度の割合が70%以上、10μm以下の粒度の割合が95%以上となるように粉砕することで、優れた磁気特性を有する磁石粉末を製造することができる。
得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、媒体攪拌ミルの粉砕機に入れ、有機溶媒中で粉砕媒体によって粉砕する。磁石粉末を、その平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満、1μm以下の粒度の割合が10%未満、5μm以下の粒度の割合が70%以上、10μm以下の粒度の割合が95%以上となるように粉砕することで、優れた磁気特性を有する磁石粉末を製造することができる。
本発明で用いる磁石粉末の粉砕機は、その種類によって特に限定されるわけではないが、中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で媒体攪拌ミルが好適である。
媒体攪拌ミルは、有機溶媒と磁石粉末を混合して形成されたスラリーを微粉砕するものであり、例えば、ボール等の粉砕媒体を充填したミルを、攪拌棒、回転ディスク等によって強制的に攪拌することにより、粉砕を行う装置が挙げられる。
有機溶媒を装置内に入れておき、これに磁石粗粉末を加えてから装置を回転させてもよいし、予め有機溶媒と磁石粉末を混合機によりプレミキシングしてスラリーを形成しておき、これをポンプにより媒体攪拌ミルに送って粉砕処理してもよい。
媒体攪拌ミルは、有機溶媒と磁石粉末を混合して形成されたスラリーを微粉砕するものであり、例えば、ボール等の粉砕媒体を充填したミルを、攪拌棒、回転ディスク等によって強制的に攪拌することにより、粉砕を行う装置が挙げられる。
有機溶媒を装置内に入れておき、これに磁石粗粉末を加えてから装置を回転させてもよいし、予め有機溶媒と磁石粉末を混合機によりプレミキシングしてスラリーを形成しておき、これをポンプにより媒体攪拌ミルに送って粉砕処理してもよい。
有機溶媒は、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等のいずれかを使用できるが、特にイソプロピルアルコールを用いた場合、好ましい磁石微粉末を得ることができる。
この媒体攪拌ミル内では、有機溶媒によって磁石粉末とボールがスラリー状態となって攪拌による攪拌作用を受ける。そして、磁石粉末同士あるいはボールとの摩擦により、磁石粉末は粉砕される。
この媒体攪拌ミル内では、有機溶媒によって磁石粉末とボールがスラリー状態となって攪拌による攪拌作用を受ける。そして、磁石粉末同士あるいはボールとの摩擦により、磁石粉末は粉砕される。
このとき有機溶媒には、表面安定化剤として燐酸やその化合物を添加することができる。燐酸などを添加することで、磁石粉末が粉砕されるとともにその表面には燐酸塩の被膜が形成される。燐酸の添加量は、長時間大気に晒したり、特にボンド磁石用樹脂と混練する環境下や実用上重要な温湿度環境下に晒しても安定で磁気特性に優れた磁石が得られるように、磁石微粉末への被膜が平均1〜20nm程度となる量が好ましく、微粉末中の元素換算でのP含有量は0.2質量%以上1質量%以下とする。
所望とする粉末粒度や処理量に応じて、媒体攪拌ミル1台で循環処理したり、あるいは複数台を設置して連続処理を行うこともできる。媒体攪拌ミルを複数設置する場合、ミルの型式や運転条件(メディア径、主軸回転数、吐出量等)を変化させてもよい。
上記粒度の磁石粉末を得るためには、希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を、媒体攪拌ミルの粉砕機の中に、粉砕媒体としてジルコニアや窒化珪素などのセラミックスボールを入れて粉砕する。その際、ボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボールで粉砕する。
粉砕媒体が、密度7.0g/cm3を超える高炭素クロム鋼などの剛球では、所望とする粒径まで粉砕する際に、粉砕エネルギーが強過ぎて、1μm以下の粒度の割合が10%以上となって微粉末が過剰に多くなったり、磁石粉末表面や内部への歪の導入が多くなって所望とする磁気特性が得られない。一方、密度が7.0g/cm3未満のセラミックスボールでは粉砕がマイルドであるため、1μm以下の粒度の割合を抑制できる。また、セラミックスの方が高硬度で耐摩耗性を有するため物理的に安定であり、かつ耐食性、耐薬品性など化学的性質にも優れている。
ボール径が1mm以下だと、粉砕能力が落ちたり、ハンドリングの問題がある。また、上限は所望とする粒径までの粉砕を考慮すると10mm以下、好ましくは8mm以下、さらに好ましくは3〜7mmとする。また、ボール充填率は、粉砕機の種類や粉砕能力などによっても異なるが容積の40〜70%とすることが好ましい。
粉砕時間は、装置の種類、大きさ、あるいは処理量などによって異なり一概に規定できず、従来公知の範囲内で適宜選択すればよい。
粉砕時間は、装置の種類、大きさ、あるいは処理量などによって異なり一概に規定できず、従来公知の範囲内で適宜選択すればよい。
(3)乾燥
粉砕された磁石粉末を含むスラリーは、引き続き、有機溶媒から磁石粉末を分離し乾燥する。乾燥条件は、特に制限されるわけではないが、磁石粉末を乾燥機に入れ、真空中あるいは不活性ガス雰囲気下、50℃以上160℃以下で、30〜480分間加熱するのが好ましい。
粉砕された磁石粉末を含むスラリーは、引き続き、有機溶媒から磁石粉末を分離し乾燥する。乾燥条件は、特に制限されるわけではないが、磁石粉末を乾燥機に入れ、真空中あるいは不活性ガス雰囲気下、50℃以上160℃以下で、30〜480分間加熱するのが好ましい。
本発明の方法により、平均粒径が2.5μmを超え4μm未満で、1μm以下の粒度の割合が10%未満と少なく、5μm以下の粒度の割合が70%以上で、10μm以下の粒度の割合が95%以上に粉砕され、Br、iHc、Hk、Hk/iHcおよび(BH)maxの各磁気特性が高く、表面安定性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造することが可能となる。
すなわち、Brが1.3T以上で、iHcが880kA/m以上で、Hkが360kA/m以上で、(BH)maxが260kJ/m3以上という優れた磁性特性を有し、かつ大気に暴露しても安定で発火しない希土類−鉄−窒素系磁石粉末を低コストで生産性良く製造することができる。
さらに、磁石粉末のHk/iHcが0.45以上であると、比較的低い磁場中での配向性が優れ、かつ成形してボンド磁石とした時には低パーミアンスでも高温時の減磁が少なくなる。
すなわち、Brが1.3T以上で、iHcが880kA/m以上で、Hkが360kA/m以上で、(BH)maxが260kJ/m3以上という優れた磁性特性を有し、かつ大気に暴露しても安定で発火しない希土類−鉄−窒素系磁石粉末を低コストで生産性良く製造することができる。
さらに、磁石粉末のHk/iHcが0.45以上であると、比較的低い磁場中での配向性が優れ、かつ成形してボンド磁石とした時には低パーミアンスでも高温時の減磁が少なくなる。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石は、フェライト、アルニコなど、通常ボンド磁石の原料となる各種の磁石粉末と混合してもよく、異方性磁石粉末だけでなく、等方性磁石粉末も対象となるが、異方性磁場(HA)が3979kA/m(50kOe)以上の磁石粉末が好ましい。
3.ボンド磁石用組成物
本発明のボンド磁石用組成物(以下、単に組成物ともいう)は、上記希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したものである。すなわち、前記した本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、バインダー成分として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを配合し、混合することにより、優れた特性を有するボンド磁石用組成物となる。
本発明のボンド磁石用組成物(以下、単に組成物ともいう)は、上記希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したものである。すなわち、前記した本発明の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、バインダー成分として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを配合し、混合することにより、優れた特性を有するボンド磁石用組成物となる。
熱可塑性樹脂としては、4−6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどを用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型フッ素樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂などを用いることができる。
さらに、バインダー成分の種類にもよるが、重合禁止剤、低収縮化剤、反応性樹脂、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、変性剤、増粘剤、滑剤、カップリング剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、無機充填剤や顔料などを添加することができる。
本発明のボンド磁石用組成物を調製する際に用いられる混合機としては、特に制限がなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサー、フラッシュミキサー、ナウターミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウェットミル、ジェットミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いることができる。各成分を粉砕しながら混合する方法も有効である。
本発明のボンド磁石用組成物を調製する際に用いられる混合機としては、特に制限がなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサー、フラッシュミキサー、ナウターミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウェットミル、ジェットミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いることができる。各成分を粉砕しながら混合する方法も有効である。
4.ボンド磁石
本発明のボンド磁石は、上記ボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石である。すなわち、上記希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石用組成物は、混練後、下記の要領で成形してボンド磁石とすることができる。
本発明のボンド磁石は、上記ボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石である。すなわち、上記希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石用組成物は、混練後、下記の要領で成形してボンド磁石とすることができる。
上記熱硬化性樹脂を含むボンド磁石用組成物を用いる場合は、圧縮成形または射出成形によることが好ましい。圧縮成形の場合は、得られるボンド磁石全重量に対する樹脂量としては1〜5質量%、射出成形では樹脂粘度の調整や金型の温度等の最適条件を選択する必要があるが、7〜15質量%が好ましい。
圧縮成形する場合は、前記組成物を混合機で混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用い、金型に796kA/m(10kOe)以上の磁界を印加しながら、3〜5ton/cm2の圧力でプレス成形する。
また、射出成形の場合では、前記組成物を加熱加圧ニーダー装置により混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用いて成形する。組成物を、例えば、30〜80℃の成形温度に加温したシリンダー中で溶融し、796kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形して、樹脂の硬化温度まで加熱し、一定時間保持して硬化させる。
圧縮成形する場合は、前記組成物を混合機で混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用い、金型に796kA/m(10kOe)以上の磁界を印加しながら、3〜5ton/cm2の圧力でプレス成形する。
また、射出成形の場合では、前記組成物を加熱加圧ニーダー装置により混合し、金型に磁界を印加するための電磁石を具備したプレス装置を用いて成形する。組成物を、例えば、30〜80℃の成形温度に加温したシリンダー中で溶融し、796kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形して、樹脂の硬化温度まで加熱し、一定時間保持して硬化させる。
一方、熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物を用いる場合は、射出成形によることが好ましく、樹脂量としては5〜20質量%が好ましい。
熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物は、溶融温度以上(ポリアミドであれば、例えば210℃)に加温したシリンダー中で組成物を溶融し、796kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形し、冷却後、固化した成形物を取り出せばよい。
熱可塑性樹脂を配合したボンド磁石用組成物は、溶融温度以上(ポリアミドであれば、例えば210℃)に加温したシリンダー中で組成物を溶融し、796kA/m(10kOe)以上の磁界が印加された金型中に射出成形し、冷却後、固化した成形物を取り出せばよい。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)磁石微粉末の磁気特性
日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、得られた磁石粉末の磁気特性を測定した。
(2)平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合は、いずれもHELOS粒度分布測定装置(SYMPATEC GmbH社製、商品名:レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS)を用いて、被測定粉末に3.0×105Paの圧力の窒素を噴射させて、凝集した磁石粉末を解凝して測定した。
(3)磁石微粉末の表面安定性
得られた磁石粉末の一部(5g)を大気中に30分放置し、発火しない場合を良好(○)、発火する場合を不良(×)と評価した。
(4)ボンド磁石の磁気特性
ボンド磁石の磁気特性は、BHトレーサー(玉川製作所製)により測定した。
日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、得られた磁石粉末の磁気特性を測定した。
(2)平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合は、いずれもHELOS粒度分布測定装置(SYMPATEC GmbH社製、商品名:レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS)を用いて、被測定粉末に3.0×105Paの圧力の窒素を噴射させて、凝集した磁石粉末を解凝して測定した。
(3)磁石微粉末の表面安定性
得られた磁石粉末の一部(5g)を大気中に30分放置し、発火しない場合を良好(○)、発火する場合を不良(×)と評価した。
(4)ボンド磁石の磁気特性
ボンド磁石の磁気特性は、BHトレーサー(玉川製作所製)により測定した。
(実施例1)
磁石原料粉末として、表1に示す平均粒径(D50)4μmの鉄粉末(Fe純度98%)1050.2gと、平均粒径(D50)3μmの酸化サマリウム粉末(Sm2O3純度99.5%)424.8gをヘンシェルミキサーで混合した。得られた混合粉末から960gを分取し、そこに粒状金属カルシウム(Ca純度99%)123.9g添加してロッキングミキサーを用いて60分混合した。
得られた混合物を円筒形のステンレス容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1100℃で5時間加熱処理を施し、SmFe合金を含む還元拡散生成物を得た。この還元拡散生成物を室温まで冷却した後、アルゴンガスを排出しながら水素ガスを供給し、ガス圧力約0.01MPaとして水素を吸蔵させた。これにより、還元拡散生成物が崩壊し、粒度が1mm以下になった。
次に、水素を吸蔵した還元拡散生成物をアンモニア分圧が0.2のアンモニア−水素混合ガス雰囲気下で昇温し、465℃で200分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて60分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて60分保持して還元拡散生成物中の合金を窒化後、冷却し磁石粉末を得た。
次に、窒化処理した磁石粉末を純水中に投じたところ、崩壊してスラリーが得られた。水素イオン濃度pHが12以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返し行った後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で15分間攪拌を行った。その後、脱酢酸洗浄として純水中で洗浄を行い、真空乾燥機を用い50℃で5時間保持して乾燥して磁石粉末を得た。
得られた磁石粉末15gをイソプロピルアルコール100mlとともに、粉砕媒体として直径が5mmの部分安定化ジルコニア(密度:6.0g/cm3)を230g充填した振動式ボ−ルミルに入れて150分粉砕を行った。その後、濾過して真空乾燥機で50℃で5時間保持して乾燥して磁石粉末aを得た。
該磁石粉末aは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末aの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末a中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%(残部FeおよびCa、以下同じ。)であった。
得られた磁石微粉末aに分散力を作用させて、HELOS Particle Size Analysisで平均粒径(D50)と1μm以下の粒度、5μm以下の粒度、10μm以下の粒度の割合を測定するとともに、Br、iHc、Hk、(BH)maxを測定した。得られた磁石粉末の物性などの結果を表2に示す。
磁石原料粉末として、表1に示す平均粒径(D50)4μmの鉄粉末(Fe純度98%)1050.2gと、平均粒径(D50)3μmの酸化サマリウム粉末(Sm2O3純度99.5%)424.8gをヘンシェルミキサーで混合した。得られた混合粉末から960gを分取し、そこに粒状金属カルシウム(Ca純度99%)123.9g添加してロッキングミキサーを用いて60分混合した。
得られた混合物を円筒形のステンレス容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1100℃で5時間加熱処理を施し、SmFe合金を含む還元拡散生成物を得た。この還元拡散生成物を室温まで冷却した後、アルゴンガスを排出しながら水素ガスを供給し、ガス圧力約0.01MPaとして水素を吸蔵させた。これにより、還元拡散生成物が崩壊し、粒度が1mm以下になった。
次に、水素を吸蔵した還元拡散生成物をアンモニア分圧が0.2のアンモニア−水素混合ガス雰囲気下で昇温し、465℃で200分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて60分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて60分保持して還元拡散生成物中の合金を窒化後、冷却し磁石粉末を得た。
次に、窒化処理した磁石粉末を純水中に投じたところ、崩壊してスラリーが得られた。水素イオン濃度pHが12以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返し行った後、pHが約6となるまで水中に酢酸を添加し、この状態で15分間攪拌を行った。その後、脱酢酸洗浄として純水中で洗浄を行い、真空乾燥機を用い50℃で5時間保持して乾燥して磁石粉末を得た。
得られた磁石粉末15gをイソプロピルアルコール100mlとともに、粉砕媒体として直径が5mmの部分安定化ジルコニア(密度:6.0g/cm3)を230g充填した振動式ボ−ルミルに入れて150分粉砕を行った。その後、濾過して真空乾燥機で50℃で5時間保持して乾燥して磁石粉末aを得た。
該磁石粉末aは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末aの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末a中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%(残部FeおよびCa、以下同じ。)であった。
得られた磁石微粉末aに分散力を作用させて、HELOS Particle Size Analysisで平均粒径(D50)と1μm以下の粒度、5μm以下の粒度、10μm以下の粒度の割合を測定するとともに、Br、iHc、Hk、(BH)maxを測定した。得られた磁石粉末の物性などの結果を表2に示す。
(実施例2)
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が5mmの部分安定化ジルコニアに替えて、直径が7mmの部分安定化ジルコニアを用いて140分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末bを得た。
この磁石粉末bは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末bの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末h中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が5mmの部分安定化ジルコニアに替えて、直径が7mmの部分安定化ジルコニアを用いて140分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末bを得た。
この磁石粉末bは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末bの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末h中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(実施例3)
実施例1において、表1に示すように、アルゴンガス雰囲気下、1150℃で5時間加熱処理し、振動式ボールミルに入れて160分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末cを得た。
この磁石粉末cは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末cの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末c中のSmは23.3質量%、Nは3.4質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、アルゴンガス雰囲気下、1150℃で5時間加熱処理し、振動式ボールミルに入れて160分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末cを得た。
この磁石粉末cは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末cの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末c中のSmは23.3質量%、Nは3.4質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(実施例4)
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて5μmの鉄粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして磁石粉末dを得た。
この磁石粉末dは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末dの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末d中のSmは23.3質量%、Nは3.4質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて5μmの鉄粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして磁石粉末dを得た。
この磁石粉末dは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末dの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末d中のSmは23.3質量%、Nは3.4質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例1において、表1示すように、直径5mmの部分安定化ジルコニアに替えて直径3mmの部分安定化ジルコニアを用いた以外は、実施例1と同様にして磁石粉末eを得た。
この磁石粉末eは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末eの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末e中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1示すように、直径5mmの部分安定化ジルコニアに替えて直径3mmの部分安定化ジルコニアを用いた以外は、実施例1と同様にして磁石粉末eを得た。
この磁石粉末eは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末eの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末e中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(実施例6)
実施例1において、表1に示すように、さらに85%燐酸0.22g添加して振動式ボールミルを行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末fを得た。
この磁石粉末fは、大気に晒しても安定であり、また、80℃湿度90%の恒温恒湿槽内に1時間暴露しても磁粉表面の変色もなく安定であった。磁石粉末fの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末f中のSmは23.2質量%、Nは3.2質量%、Pは0.4質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、さらに85%燐酸0.22g添加して振動式ボールミルを行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末fを得た。
この磁石粉末fは、大気に晒しても安定であり、また、80℃湿度90%の恒温恒湿槽内に1時間暴露しても磁粉表面の変色もなく安定であった。磁石粉末fの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末f中のSmは23.2質量%、Nは3.2質量%、Pは0.4質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(実施例7)
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が5mmの窒化珪素(密度:3.2g/cm3)を123g充填した振動式ボールミルに入れて235分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末gを得た。
この磁石粉末gは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末gの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末g中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が5mmの窒化珪素(密度:3.2g/cm3)を123g充填した振動式ボールミルに入れて235分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末gを得た。
この磁石粉末gは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末gの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末g中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(実施例8)
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて、平均粒径(D50)50μmの鉄粉末を用い、かつアルゴンガス雰囲気下、1180℃で5時間加熱処理して還元拡散を行い、さらに190分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末hを得た。
この磁石粉末hは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末hの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末h中のSmは23.3質量%、Nは3.3質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて、平均粒径(D50)50μmの鉄粉末を用い、かつアルゴンガス雰囲気下、1180℃で5時間加熱処理して還元拡散を行い、さらに190分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末hを得た。
この磁石粉末hは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末hの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末h中のSmは23.3質量%、Nは3.3質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(比較例1)
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼、密度:7.8g/cm3)を300g充填した振動式ボールミルに入れて50分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末iを得た。
この磁石粉末iは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末iの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末i中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼、密度:7.8g/cm3)を300g充填した振動式ボールミルに入れて50分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末iを得た。
この磁石粉末iは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末iの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末i中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体による粉砕を行わなかった以外は、実施例1と同様にして磁石粉末jを得た。
この磁石粉末jは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末jの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末j中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体による粉砕を行わなかった以外は、実施例1と同様にして磁石粉末jを得た。
この磁石粉末jは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末jの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末j中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1において、表1に示すように、アルゴンガス雰囲気下、900℃で5時間加熱処理した以外は、実施例1と同様にして還元拡散反応を行い、SmFe合金粉末を得た。該合金粉末の断面観察を行った結果、粒子の中心部に多数の未反応鉄が観察されたため、窒化処理を行わなかった。
実施例1において、表1に示すように、アルゴンガス雰囲気下、900℃で5時間加熱処理した以外は、実施例1と同様にして還元拡散反応を行い、SmFe合金粉末を得た。該合金粉末の断面観察を行った結果、粒子の中心部に多数の未反応鉄が観察されたため、窒化処理を行わなかった。
(比較例4)
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて、平均粒径(D50)14μmの鉄粉末を用い、粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボ−ルミルに入れて105分粉砕した以外は実施例1と同様にして磁石粉末kを得た。
実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。この磁石粉末kは大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末kの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末k中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて、平均粒径(D50)14μmの鉄粉末を用い、粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボ−ルミルに入れて105分粉砕した以外は実施例1と同様にして磁石粉末kを得た。
実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。この磁石粉末kは大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末kの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末k中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例1において、表1に示すように、アルゴンガス雰囲気下、1050℃で5時間加熱処理し、還元拡散を行い、さらに粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボールミルに入れて80分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末lを得た。
この磁石粉末lは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末lの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末l中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、アルゴンガス雰囲気下、1050℃で5時間加熱処理し、還元拡散を行い、さらに粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボールミルに入れて80分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末lを得た。
この磁石粉末lは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末lの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末l中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(比較例6)
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて、平均粒径(D50)50μmの鉄粉末を用い、かつアルゴンガス雰囲気下、1180℃で5時間加熱処理し、さらに粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボ−ルミルに入れて105分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末mを得た。
この磁石粉末mは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末mの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末m中のSmは23.3質量%、Nは3.3質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、平均粒径(D50)4μmの鉄粉末に替えて、平均粒径(D50)50μmの鉄粉末を用い、かつアルゴンガス雰囲気下、1180℃で5時間加熱処理し、さらに粉砕媒体として直径が3/16インチ(4.76mm)のSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボ−ルミルに入れて105分粉砕した以外は、実施例1と同様にして磁石粉末mを得た。
この磁石粉末mは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末mの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、磁石粉末m中のSmは23.3質量%、Nは3.3質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(比較例7)
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が2mmのSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボールミルに入れて150分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末nを得た。
この磁石粉末nは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末nの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、また磁石粉末n中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
実施例1において、表1に示すように、粉砕媒体として直径が2mmのSUJ2(高炭素クロム鋼)を300g充填した振動式ボールミルに入れて150分粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして磁石粉末nを得た。
この磁石粉末nは、大気に晒しても安定であり、また、磁石粉末nの粉末X線回折を行った結果、Sm2Fe17N3単相であった。さらに定量分析の結果、また磁石粉末n中のSmは23.2質量%、Nは3.5質量%であった。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
(実施例9)
実施例8で製造した磁石粉末h90.5重量%に対して、熱可塑性樹脂12ナイロンを7.5重量%、シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)1.0重量%、離型剤(ステアリン酸亜鉛)1.0重量%の割合で混合し、ボンド磁石用組成物を調製した。
次に、このボンド磁石用組成物をナカタニ混練機(ナカタニ製)で190℃−1パス行い、その後、シリンダー温度210℃、成形圧力1tonでφ20×13mmの形状に射出成形することによって成形体1を得た。
得られた成形体1の磁気特性を測定したところ、Brが0.7Tで、iHcが861.8kA/mで、Hkが483.0kA/mで、Hk/iHcが0.56で、(BH)maxが101.6kJ/m3であった。実施例9の成形体1の磁気特性を表3に示す。
実施例8で製造した磁石粉末h90.5重量%に対して、熱可塑性樹脂12ナイロンを7.5重量%、シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)1.0重量%、離型剤(ステアリン酸亜鉛)1.0重量%の割合で混合し、ボンド磁石用組成物を調製した。
次に、このボンド磁石用組成物をナカタニ混練機(ナカタニ製)で190℃−1パス行い、その後、シリンダー温度210℃、成形圧力1tonでφ20×13mmの形状に射出成形することによって成形体1を得た。
得られた成形体1の磁気特性を測定したところ、Brが0.7Tで、iHcが861.8kA/mで、Hkが483.0kA/mで、Hk/iHcが0.56で、(BH)maxが101.6kJ/m3であった。実施例9の成形体1の磁気特性を表3に示す。
(比較例8)
実施例9において、比較例6で製造した磁石粉末mを用いた以外は、実施例9と同様にして比較例8に係る成形体2を得た。
得られた成形体2の磁気特性を測定したところ、Brが0.7Tで、iHcが763.9kA/mで、Hkが325.5kA/mで、Hk/iHcが0.43で、(BH)maxが88.3kJ/m3であった。比較例9の成形体2の磁気特性を表3に示す。
実施例9において、比較例6で製造した磁石粉末mを用いた以外は、実施例9と同様にして比較例8に係る成形体2を得た。
得られた成形体2の磁気特性を測定したところ、Brが0.7Tで、iHcが763.9kA/mで、Hkが325.5kA/mで、Hk/iHcが0.43で、(BH)maxが88.3kJ/m3であった。比較例9の成形体2の磁気特性を表3に示す。
[評価]
以上の結果を示す表2から、実施例1〜8は、平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合が本発明の範囲内であり、Br、iHc、Hk、Hk/iHc、(BH)maxといった磁気特性が高いことが分かる。これらの磁石粉末は、表1に示す条件で低コストで製造でき、表面安定性に優れている。
これに対して、比較例1、2、4〜7は、平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合のいずれかが本発明から外れているために、Br、iHc、Hk、Hk/iHc、(BH)maxのいずれかが低いことが分かる。また、比較例3は還元拡散温度が低過ぎて多数の未反応鉄が観察されたことから、窒化処理するに至らなかった。
さらに、表3から明らかなように、本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末から製造したボンド磁石の実施例9は、本発明外の磁石粉末を用いて製造したボンド磁石の比較例8に比べてiHc、Hk、Hk/iHc、(BH)maxといった磁気特性が高いことが分かる。
以上の結果を示す表2から、実施例1〜8は、平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合が本発明の範囲内であり、Br、iHc、Hk、Hk/iHc、(BH)maxといった磁気特性が高いことが分かる。これらの磁石粉末は、表1に示す条件で低コストで製造でき、表面安定性に優れている。
これに対して、比較例1、2、4〜7は、平均粒径(D50)、1μm以下の粒度の割合、5μm以下の粒度の割合および10μm以下の粒度の割合のいずれかが本発明から外れているために、Br、iHc、Hk、Hk/iHc、(BH)maxのいずれかが低いことが分かる。また、比較例3は還元拡散温度が低過ぎて多数の未反応鉄が観察されたことから、窒化処理するに至らなかった。
さらに、表3から明らかなように、本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末から製造したボンド磁石の実施例9は、本発明外の磁石粉末を用いて製造したボンド磁石の比較例8に比べてiHc、Hk、Hk/iHc、(BH)maxといった磁気特性が高いことが分かる。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、保磁力が高く、表面安定性に優れているので民生用あるいは産業用の各種機器に組み込まれるボンド磁石の原料として使用できる。
Claims (12)
- 希土類元素が23.0質量%以上25.0質量%以下、Nが3.0質量%以上3.6質量%以下、および残りがFeと不可避的不純物からなる還元拡散法で製造された磁石粗粉末を、ボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボ−ルを粉砕媒体として用いて粉砕して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末であって、
平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満で、1μm以下の粒度の割合が10%未満で、5μm以下の粒度の割合が70%以上で、10μm以下の粒度の割合が95%以上であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末。 - 磁石粉末は、その表面に元素換算でのP含有量が0.2質量%以上1質量%以下の燐酸塩被膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末。
- Brが1.3T以上、iHcが880kA/m以上、Hkが360kA/m以上、かつ(BH)maxが260kJ/m3以上の磁気特性を有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末。
- さらに、角形比(Hk/iHc)が0.45以上であることを特徴とする請求項3に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末。
- 原料粉末である鉄粉末および希土類元素の酸化物粉末と、前記原料粉末混合物中の酸化物を還元するに必要な化学量論量の1.1倍量以上のアルカリ土類金属を混合した後、950〜1200℃の還元拡散条件で加熱することで希土類−鉄合金を得た後、窒化して希土類−鉄−窒素系磁石とし、この粗粉末を有機溶媒および粉砕媒体とともに粉砕機の媒体攪拌ミルに入れて粉砕した後、粉砕物を乾燥させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
前記粉砕媒体としてボール径が1mmを超え10mm以下のセラミックスボールを用いて、前記粗粉末を少なくとも平均粒径(D50)が2.5μmを超え4μm未満となり、かつ1μm以下の粒度の割合が10%未満となる条件で粉砕することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。 - 前記粉砕の際に、有機溶媒に燐酸を添加することを特徴とする請求項5に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 前記原料粉末である鉄粉末の平均粒径(D50)が、50μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 前記原料粉末である希土類酸化物粉末の平均粒径(D50)が、10μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 前記セラミックスボ−ルの材質が、ジルコニア又は窒化珪素であることを特徴とする請求項5に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれかを樹脂バインダーとして配合したことを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石用組成物。
- 請求項10に記載の熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用組成物を射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石。
- 請求項10に記載の熱硬化性樹脂を含むボンド磁石用組成物を圧縮成形または射出成形してなる希土類−遷移金属−窒素系ボンド磁石。
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