JP2007129151A - 希土類系磁石粉末の製造方法 - Google Patents

希土類系磁石粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた磁気特性および耐食性を有するHDDR粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の希土類系磁石粉末の製造方法では、まず、R−Fe−B相を有する合金の粉末を用意する。そして、希土類金属元素を実質的に含まない非希土類層を前記合金粉末の表面の全体または一部に形成した後、水素を含む雰囲気中において750℃以上900℃未満の温度で熱処理を行う。この熱処理により、合金粉末に対して水素化・不均化処理を行う工程と、合金粉末に対して脱水素・再結合処理を行う工程とを行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、HDDR法を用いて希土類系磁石粉末を製造する方法に関する。
高性能永久磁石として代表的なR−Fe−B系希土類磁石(RはYを含む希土類元素、Feは鉄、Bはホウ素)は、三元系正方晶化合物であるR2Fe14B相を主相として含む組織を有し、優れた磁石特性を発揮する。このようなR−Fe−B系希土類磁石は、焼結磁石とボンド磁石とに大別される。焼結磁石は、R−Fe−B系磁石合金の微粉末(平均粒径:数μm)をプレス装置で圧縮成形した後、焼結することによって製造される。これに対して、ボンド磁石は、通常、R−Fe−B系磁石合金の粉末(粒径:例えば100μm程度)と結合樹脂との混合物(コンパウンド)を圧縮成形したり、射出成形することによって製造される。
焼結磁石の場合、比較的粒径の小さい粉末を用いるため、個々の粉末粒子が磁気的異方性を有している。このため、プレス装置で粉末の圧縮成形を行うとき、粉末に対して配向磁界を印加し、それによって、粉末粒子が磁界の向きに配向した成形体を作製することができる。
一方、ボンド磁石において、磁気的な異方性を発現するためには、用いる粉末粒子内の硬磁性相の容易磁化軸(R2Fe14B相の場合はc軸)が一方向に配向していることが必要である。また、実用上必要な保磁力を得るためには、粉末粒子を構成する硬磁性相の結晶粒を単磁区臨界粒径程度まで小さくすることが必要となる。従って、優れた異方性ボンド磁石を作製するためには、これらの条件を両立した希土類合金粉末を得なければならない。
異方性ボンド磁石用の希土類合金粉末を製造するため、現在、HDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)処理法が一般的に採用される。「HDDR」は、水素化(Hydrogenation)および不均化(Disproportionation)と、脱水素化(Desorption)および再結合(Recombination)とを順次実行するプロセスを意味している。公知のHDDR処理によれば、R−Fe−B系合金のインゴットまたは粉末をH2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって、上記インゴットまたは粉末に水素を吸蔵させた後、例えばH2分圧13Pa以下の真空雰囲気またはH2分圧13Pa以下の不活性雰囲気になるまで温度500℃〜1000℃で脱水素処理し、次いで冷却することによって合金磁石粉末を得る。
HDDR処理を施して製造されたR−Fe−B系合金粉末は、大きな保磁力を示し、磁気的な異方性を有している。このような性質を有する理由は、金属組織が実質的に0.1〜1μmと非常に微細で、かつ容易磁化軸が一方向にそろった結晶の集合体となるためである。より詳細には、HDDR処理によって得られる極微細結晶の粒径が正方晶R2Fe14B系化合物の単磁区臨界粒径に近いために高い保磁力を発揮する。この正方晶R2Fe14B系化合物の非常に微細な結晶の集合体を「再結晶集合組織」と呼ぶ。HDDR処理を施すことによって、再結晶集合組織を持つR−Fe−B系合金粉末を製造する方法は、例えば、特許文献1乃至特許文献6に開示されている。
HDDR処理によって作製された磁性粉末(以下、「HDDR粉末」と称する)を用いて作製された異方性ボンド磁石は、高いエネルギー積と形状自由度の大きさから、さまざまな製品への応用展開が期待されている
特公平6−82575号公報 特公平7−68561号公報 特開2000−96102号公報 特開2002−93610号公報 特開2005−97711号公報 特開2005−15918号公報
通常のHDDR粉末には、耐熱性が十分でなく、例えば80℃以上の温度環境における不可逆熱減磁や、磁束の経時劣化が大きいと言う問題がある。従来、この問題を解決するためには、保磁力向上に寄与するDyやAlを出発合金中に添加することが提案されている。しかし、DyやAlが出発合金中に含まれると、HDDR反応の進行が阻害され、HDDR処理後における主相の配向度が低下し、磁化の低下が顕著に生じる問題がある。
特許文献3〜5は、HDDR処理を行う前、途中、または後の合金粉末に対して希土類化合物を混合し、加熱することを開示しているが、この技術には、酸化しやすい希土類金属の濃度が粉末粒子の表面で高くなるため、耐食性が大きく低下するという問題がある。また、HDDR処理の前後に、希土類化合物を拡散させるための熱処理が必要になり、生産性も低下してしまう。
特許文献6は、HDDR後の粉末粒子表面をAlで被覆し、加熱することを開示しているが、この方法も、上記の方法と同様に付加的な熱処理工程を必要とするため、生産性が低下する。また、HDDR粉末の粒子表面に対するAlによる被覆が不十分であると、吸着水分などの影響により、熱処理時に磁気特性が劣化する可能性もある。
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、優れた磁気特性および耐食性を有するHDDR粉末の製造方法を提供することにある。
本発明による希土類系磁石粉末の製造方法は、R−Fe−B相を有する合金の粉末を用意する工程(A)と、希土類金属元素を実質的に含まない非希土類層を前記合金粉末の表面の全体または一部に形成する工程(B)と、水素を含む雰囲気中において750℃以上900℃未満の温度で熱処理を行うことにより、前記合金粉末に対して水素化・不均化処理を行う工程(C)と、前記合金粉末に対して脱水素・再結合処理を行う工程(D)と、工程(A)および工程(C)の間において750℃以上900℃未満の温度まで昇温する工程(E)とを含む。
好ましい実施形態において、前記工程(B)では、前記非希土類層として、非希土類金属元素の単金属、合金、および/または化合物の層を形成する。
好ましい実施形態において、前記工程(E)の昇温過程中における雰囲気は水素を含んでいる。
好ましい実施形態において、前記工程(E)の昇温は、前記工程(B)における前記非希土類層を形成した後に開始する。
好ましい実施形態において、前記工程(E)の昇温は、前記工程(B)における前記非希土類層を形成する前に開始し、前記非希土類層は前記昇温の途中で溶解する材料から構成されている。
好ましい実施形態において、前記工程(A)における前記合金の粉末は、非希土類金属の単金属、合金、および/または化合物からなる非希土類粉末粒子を含み、前記非希土類粉末粒子の少なくとも一部は、前記工程(E)の昇温過程で溶解し、それによって前記非希土類層を形成する。
好ましい実施形態において、前記非希土類粉末粒子は融点が700℃以下の材料から形成されている。
好ましい実施形態において、前記材料は、アルミニウムおよびガリウムの少なくとも一方を含む。
好ましい実施形態において、前記非希土類粉末粒子の50%中心粒径は0.5μm以上20μm以下である。
好ましい実施形態において、前記R−Fe−B相を有する合金は、10原子%≦R≦14原子%、5原子%≦B≦10原子%の関係を満足する組成を有している。
本発明による異方性磁石の製造方法は、上記いずれかに記載の希土類系磁石粉末の製造方法によって作製された希土類系磁石粉末を用意する工程と、配向磁界中で前記希土類系磁石粉末を成形する工程とを包含する。
本発明では、HDDR処理が行われているとき、R−Fe−B系合金粉末粒子の表面の全部または一部が非希土類層によって被覆されており、この非希土類層が水素に対するバリアとして機能する。一般に、水素化反応の反応速度が過剰に高くなると、HDDR処理後の主相(R2Fe14B相)の結晶配向度が低下することが報告されているが、このようなバリア層の存在は、R−Fe−B系合金粉末粒子表面への水素の到達速度を低減することができる。その結果、水素化反応の速度が適切な範囲内に制御されるため、HDDR処理後の主相(R2Fe14B相)の配向度が向上すると考えられる。また、HDDR処理後においても、大気中高温雰囲気などの使用環境雰囲気と希土類合金との接触を粉末粒子表面の非希土類層が抑制するため、耐食性および耐酸化性が向上する。
なお、HDDR処理のための昇温工程を水素雰囲気で行うことにより、吸着水分に起因する磁気特性の低下を抑制できる。
本発明では、R−Fe−B相を有する合金の粉末に対してHDDR処理を行う前に、希土類金属元素を実質的に含まない非希土類層を合金粉末の表面の全体または一部に形成する。
本発明におけるHDDR処理は、水素を含む雰囲気中において750℃以上900℃未満の温度で熱処理を行うことにより、合金粉末に対して水素化・不均化処理を行う工程を行った後、この合金粉末に対して脱水素・再結合処理を行うことにより実行される。本発明では、この水素化・不均化処理に際して、上記合金粉末の個々の粒子表面が非希土類層に覆われているため、過度の水素供給が行われず、最終的に優れた磁石特性を発揮するように水素化・不均化処理が進行する。
非希土類層は、HDDR処理中に合金粉末と反応しても磁石特性を劣化させない材料から形成される必要がある。本発明者の検討によれば、Al、Ti、V、Cr、Ga、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、W、および/またはCuなどの非希土類金属を含む材料から形成されるときに、優れた効果が発揮されることがわかった。非希土類金属元素の形態は、単金属に限定されず、これら非希土類金属の合金であってもよいし、他の元素を結合した化合物であってもよい。
非希土類層は、HDDR処理を開始する前に種々の方法により粉末粒子表面上に堆積することができるが、融点が充分に低い材料から形成する場合は、そのような材料の粉末を出発合金粉末に混合し、HDDR処理のための昇温過程で溶解させるようにしてもよい。そのような溶解が生じると、液相状態の非希土類層が粉末粒子表面を被覆し、水素供給のバリアとして機能することになる。
以下、本発明による希土類系磁石粉末の製造方法の実施形態を説明する。
<出発合金>
まず、鋳造合金を粉砕して得られたR−Fe−B相を有する合金を用意する。具体的には、R−T−B系合金(出発合金)のインゴットを用意する。ここで、Rは、Ndおよび/またはPrを50原子%以上含む希土類元素である。TはFe、Co、Niの1種または2種以上から選ばれ、Feを50原子%以上含む遷移金属元素であり、Bはホウ素である。このR−T−B系合金は、Nd2Fe14B型化合物相を体積比率で50%以上含む。
Rの組成比率は、合金全体の10〜20原子%が好ましく、11〜15原子%であることがより好ましく、12〜14原子%がさらに好ましい。保磁力を向上させるためには、Rの一部にDyまたはTbを含有させることが有効である。ただし、Dyおよび/またはTbの濃度が増加すると、HDDR反応の進行が阻害されるため、その置換量はR全体の30原子%以下とすることが好ましい。
Bの含有量は、4〜15原子%が好ましく、5〜9原子%がより好ましい。Bの一部をC(炭素)で置換してもよい、その際は、(B+C)の総量を4〜15原子%に設定することが好ましい。
Tは残余を占める。磁気特性の向上などの効果を得るため、Al、Ti、V、Cr、Ga、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、W、および/またはCuなどの元素を適宜添加しても良い。ただし、添加量の増加は、特に磁化の低下を招くため、総量で10原子%以下とすることが好ましい。
出発合金は、公知の合金作製方法、例えば、ブックモールド法や、遠心鋳造法、ストリップキャスト法、アトマイズ法、拡散還元法などによって得られる。これらの方法によって作製された出発合金に対しては、マクロ偏析の解消や結晶粒の粗大化、α−Fe相の減少などを目的として、均質化熱処理を行なっても良い。均質化熱処理は、例えば窒素以外の不活性ガス雰囲気中で1000〜1200℃、1〜48時間行うことが好ましい。この熱処理によってR−T−B系合金インゴット中の元素の拡散が生じ、成分が均質化される。より詳細には、R−T−B系合金インゴットは主相であるR2Fe14B相とR−rich相とから主として構成されているが、R2Fe14B相の他にα−Fe相およびR2Fe17相などの強磁性相が存在していることが多い。そのため、熱処理によって、R−T−B系合金インゴット中のα−Fe相およびR2Fe17相等を拡散してできるだけ消滅させて、実質的に強磁性相がR2Fe14B相のみからなる組織にする。このような均質化処理によってR2Fe14B相の平均結晶粒径は約100μm以上に粗大化する。平均結晶粒径の粗大化は、HDDR処理磁粉が大きな磁気的異方性を有するために好ましい。
不活性ガス雰囲気として窒素を用いない理由は、窒素がR−T−B系合金と反応するためである。1000℃未満の温度では、R−T−B系合金中の元素拡散に時間がかかりすぎるため製造コストを引き上げ、また、別の相が形成されるために好ましくない。一方、熱処理温度が1200℃を超えると、合金の融解が生じるため好ましくない。より好ましい熱処理温度範囲は、1100℃〜1150℃の範囲で合金組成などに応じて適宜設定される。 なお、熱処理時間が1時間未満の場合には元素拡散が不十分になるが、逆に48時間を越える長時間の処理を行う意義はない。
次に、出発合金を公知の方法で粉砕することにより、出発合金粉末を作製する。粉砕は、ジョークラッシャーなどの機械的粉砕法や、水素吸蔵崩壊法を用いて行うことができる。本実施形態における出発合金粉末の平均粒径は10〜500μmが好ましく、30〜150μmがより好ましい。水素吸蔵崩壊法による場合は、上記の出発合金を0.05〜1.0MPaの水素雰囲気で5分〜10時間保持することによって合金に水素を吸蔵させ、合金を脆化させればよい。出発合金は水素を吸蔵すると、自然崩壊を起こし、亀裂が生じる。このような水素粉砕は、R−T−B系インゴットを圧力容器中に入れた後、純度99.9%以上のH2ガスを50〜1000kPaまで導入し、次いでその状態を5分〜10時間保持することによって行うことができる。こうして、粒径1000μm以下の原料粉末を得る。水素粉砕後に行う機械粉砕は、例えば、フェザーミル、ボールミル、またはパワーミルなどの粉砕機を用いて行うことができる。
こうして得た粗粉砕粉は、略単一の結晶方位を有する粒子から構成されており、各粒子の中では磁化容易軸が一方向にそろっている。この結果、HDDR処理によって得られる永久磁石用希土類系合金粉末が異方性を示すことが可能になる。本実施形態で使用する出発合金は、結晶方位が同一方向に揃ったNd2Fe14B型化合物相が20μm以上のサイズを有している。このことは、最終的に高い磁気特性、特に飽和磁束密度Brを得る上で重要である。
<出発合金粉末への非希土類金属粉末の被覆>
次に、上記の合金粉末の個々の粉末粒子表面を非希土類層で被覆する工程を行う。非希土類層は、非希土類金属の単金属、合金、および/または化合物から形成される。非希土類層の形成は、HDDR処理を開始する前に行ってもよいし、後述するように、HDDR処理のための昇温過程中に行っても良い。
HDDR処理の開始前に非希土類層で粉末粒子を被覆する場合、公知の薄膜形成方法を採用できる。ただし、出発合金粉末が活性な希土類元素(R)を含んでいるため、スパッタリング法やイオンプレーティング法などの気相成膜法を採用することが望ましい。成膜条件は、成膜方法や成膜する材料によって異なるが、個々の粉末粒子表面に堆積される層の平均厚さは1μm以下に設定することが好ましい。非希土類層の厚さが1μmを超えると、HDDR反応の進行が過度に妨げられるからである。非希土類層の厚さが0.01μmよりも薄くなると、本発明の効果が充分に得られない。このため、非希土類層の厚さは0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.05μm以上0.5μm以下が更に好ましい。
次に、HDDR処理のための昇温工程を利用して非希土類層を形成する方法を説明する。
まず、前述の出発合金粉末を用意し、これに非希土類粉末を混合する。非希土類粉末としては、金属の単金属、合金および/または化合物の粉末を用いることができる。非希土類粉末の平均粒径は0.1〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
非希土類層によって粉末粒子の表面を被覆することによってHDDR反応を制御するためには、HDDR処理の温度(750℃以上900℃未満)よりも低い温度(例えば750℃以下)で溶融する材料から非希土類粉末を形成することが好ましい。具体的には、Al、Sn、Zn、Gaなどの非希土類金属を用いることができる。これらの金属のなかでも、AlまたはGaは、磁粉粒子内への拡散等により保磁力HcJを向上する効果を発揮するため、特に特に好ましい。Gaは、室温付近に融点を有するため、出発合金粉末と混合する過程で溶融し、出発合金粉末の個々の粒子表面を被覆する可能性がある。ただし、この場合でも本発明の効果が発揮されることは言うまでもない。
なお、非希土類粉末の50%中心粒径は0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。50%平均粒子径が0.5μm未満の場合は、発火などの問題により取り扱いが困難となる。一方、50%平均粒子径が20μmを超えると、出発合金粉末との均一混合が困難になり、本発明の効果が得られなくなる可能性がある。より好ましい範囲は1μm以上10μm以下である。
<HDDR処理>
HDDR処理は、前述のように、水素化・不均化処理(HD処理)と脱水素化・再結合処理(DR処理)とに分けられる。水素化・不均化処理および脱水素化・再結合処理は、同一の装置内で行うこともできるが、別の装置を用いて行うこともできる。水素化・不均化処理および脱水素化・再結合処理を連続的または不連続的に行うことにより、HDDR処理を完結することができる。
水素化・不均化処理は、H2ガス、またはH2ガスと不活性ガス(ArやHeなど)中、750℃〜950℃で行なわれる。水素化・不均化処理時の水素分圧は、出発合金粉末の組成によって適宜最適化され得るが、通常、10kPa以上500kPa以下の範囲に設定される。水素化・不均化処理に要する時間は、通常10分〜10時間であり、典型的には20分〜5時間の範囲内に設定される。昇温時の雰囲気については、特段限定しないが、水素分圧50kPa以上で昇温させることが好ましい。
本実施形態によれば、少なくとも水素化・不均化処理を行っているとき、粉末粒子表面が非希土類層で被覆されているため、水素化・不均化反応が適切な速度で進行することになる。
なお、HDDR処理工程を開始する前、あるいは、HDDR処理のための昇温過程の比較的初期段階で出発合金粉末の粒子表面が非希土類層で覆われると、出発合金粉末中の希土類元素(R)と吸着水分との反応を抑制する効果も得られる。非希土類層が存在しなければ、出発合金粉末中の希土類元素(R)と吸着水分とが反応し、最終的に磁気特性が劣化する可能性がある。なお、昇温過程における吸着水分との反応を更に抑制するためには、水素を含有する還元雰囲気で昇温を行うことが好ましい。
水素化・不均化処理を行なったあと、脱水素化・再結合処理を行う。脱水素化・再結合処理時の雰囲気は不活性雰囲気(Ar、Heなど)や真空にすればよい。なお脱水素化・再結合処理における雰囲気制御(雰囲気ガス種、圧力、温度、時間)については、公知の方法を適宜採用すればよいが、処理温度は通常750℃〜900℃、処理時間は10分から5時間である。なお、雰囲気を段階的に制御する(例えば水素分圧を段階的に下げたり、減圧圧力を段階的に下げたりする)ことができると言うことは言うまでもない。
脱水素化・再結合処理を終了した後、冷却工程を実行し、本実施形態による合金磁石粉末を得ることができる。冷却工程においては、そのまま減圧状態を維持してもよいが、冷却効率を高めるため、真空排気を停止し、炉内にアルゴンガスを供給し、炉内圧力を大気圧に復帰させる。また、さらに大きな冷却速度を達成するため、アルゴンガスやヘリウムガスで加圧してもよい。その後、HDDR処理を終えた粉末は水素処理装置の外部に取り出される。
こうして得た合金磁石粉末は、HDDR処理の結果、正方晶R2Fe14B型化合物の再結合集合組織を有しており、この再結合集合組織の平均結晶粒径(1次粒子径)は、約0.1〜約0.5μmまでの範囲にある。この大きさは単磁区粒子の大きさに近いため、再結合集合組織を持つ各粉末粒子は高い保磁力を発揮することができる。また、再結合集合組織の結晶方位は一定の方位にそろっているため、磁化容易軸も一定の方位にそろっており、その結果、再結合集合組織を持つ粉末粒子は高い磁気異方性を示すことになる。
<解砕、粉砕>
脱水素化・再結合処理が終了した後、室温まで冷却された材料は弱い凝集体となっている場合がある。この場合には、公知の方法で解砕を行えばよい。また、最終的な目的に応じてさらに粉砕による粒度調整を行なってもよい。粉砕方法は、公知の粉砕技術を使用することができるが、粉砕時の磁石粉末の酸化を抑制するために、Arなどの不活性ガス雰囲気で粉砕を行うことが好ましい。
<磁石粉末の応用>
得られた磁石粉末に対しては、必要に応じ、公知の方法による表面処理を行った後、ボンド磁石や熱間成形磁石の製造に用いる。ボンド磁石を製造する場合、主として圧縮成形、射出成形、押出し成形などにより成形される。本発明によって作製される磁石粉末は、非希土類層が耐酸化性被膜として機能するため、混錬や成形を比較的高温で行う必要のある射出成形や押出し成形への適用に適している。得られたボンド磁石には、さらなる耐食性や耐酸化性の付与を目的として、樹脂塗装やめっきなどの方法で、被膜を形成しても良い。
[実施例1]
公知の鋳造方法によって、表1に示す組成(A〜F)を有する合金を作製し、1100℃、24時間、Ar雰囲気中で焼鈍した。得られた鋳隗を酸素濃度が0.5%以下に制限されたAr雰囲気中で粉砕し、平均粒径150μmの粉末を作製した。
得られた粉末をX線回折装置で評価した結果、いずれの合金もNd2Fe14B型結晶相を有していた。以下、この粉末を「出発合金粉末」と称する。
Figure 2007129151
なお、表1における数値の単位は質量%である。
上記の出発合金粉末の表面に以下の表2に示す金属の層(非希土類層)を形成した。金属層の形成は、高周波スパッタリング法により行い、形成した金属層の厚さは約0.1μmに設定した。スパッタリング条件は、個々の金属において適性化した。ただし、粉末粒子表面の広い範囲(可能ならば全体)を被覆するため、粉末の攪拌と成膜を繰り返して行なった。
こうして表面に金属被膜が形成された出発合金粉末を管状炉に投入し、100kPa(大気圧)の水素流気中で840℃まで昇温した後、840℃×3時間保持して水素化・不均化した。昇温速度は13℃/minであった。その後、5kPaに減圧したAr流気中で840℃×1時間保持し、脱水素・再結合反応を生じさせた。その後、大気圧Ar流気中で室温まで冷却した。このようにしてHDDR処理を完了した後、得られたHDDR粉末を解砕し、実施例1〜5のサンプルを得た。
得られた磁石粉末の磁気特性を振動試料型磁束計(VSM:装置名VSM5(東英工業社製))で測定した。VSM測定用のサンプルは、得られた磁石粉末を円筒形のホルダーに投入した後、800kA/mの磁界中で配向しながらパラフィンで固定し、その後、3.2MA/m以上のパルス磁界で着磁したものを用いた。いずれのサンプルについても、密度を7.60g/cm3としてBrおよび(BH)maxの値を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2007129151
金属被覆を行なっていない出発合金粉末についても、同様のHDDR処理および評価を行った(比較例1、2)。表2に示すように、出発合金粉末粒子の表面に金属被覆を形成した場合、HDDR処理後の磁気特性が向上することがわかる。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で得られた出発原料粉末(組成は表1に示す)に対して、50%中心粒径が約3μmのAl粉末を表3に示す割合で混合した。なお、粉末の平均粒径はレーザー回折式流度分布測定装置で評価した。
Al粉と混合された出発合金粉末を管状炉に投入し、100kPa(大気圧)の水素流気中で昇温速度13℃/minで840℃まで昇温した。その後、840℃で3時間保持し、水素化・不均化処理を行った。その後、5kPaに減圧したAr流気中において840℃で1時間保持し、脱水素・再結合処理を行った。大気圧Ar流気中で室温まで冷却した後、解砕し、実施例6から9のサンプルを得た。
得られたサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、Alが磁粉の個々の粒子表面の一部を被覆していることを確認した。このAlは、出発合金粉末と混合したAl粉がHDDR処理のための昇温過程で溶融し、最終的に凝固したものである。
得られた磁石粉末の磁気特性を振動試料型磁束計(VSM:装置名VSM5(東英工業社製))を用い、実施例1と同様の方法で測定した。評価結果を表3に示す。
Figure 2007129151
表3からわかるように、Al粉を混合した出発合金粉末に対してHDDR処理を行うことにより、磁気特性が改善した。本実施例でも、HDDR処理中に合金粉末の表面に存在するAl層が水素に対するバリアとして機能したと考えられる。
なお、上記の実施例が含有するAlの量と同じ量のAlを原料合金に配合して鋳造した出発合金C〜Fを用いて同様の処理を行った(参考例1〜4)。その結果、Al量の増加に伴って保磁力HcJは向上したが、残留磁束密度Brの顕著な改善は見られない。これに対して、本発明の実施例では、保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの両方が向上した。
本発明の希土類系磁石粉末の製造方法は、優れた磁気特性および耐食性を有するHDDR粉末の製造に用いられる。

Claims (11)

  1. R−Fe−B相を有する合金の粉末を用意する工程(A)と、
    希土類金属元素を実質的に含まない非希土類層を前記合金粉末の表面の全体または一部に形成する工程(B)と、
    水素を含む雰囲気中において750℃以上900℃未満の温度で熱処理を行うことにより、前記合金粉末に対して水素化・不均化処理を行う工程(C)と、
    前記合金粉末に対して脱水素・再結合処理を行う工程(D)と、
    工程(A)および工程(C)の間において750℃以上900℃未満の温度まで昇温する工程(E)と、
    を含む、希土類系磁石粉末の製造方法。
  2. 前記工程(B)では、前記非希土類層として、非希土類金属元素の単金属、合金、および/または化合物の層を形成する、請求項1に記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  3. 前記工程(E)の昇温過程中における雰囲気は水素を含んでいる、請求項1または2に記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  4. 前記工程(E)の昇温は、前記工程(B)における前記非希土類層を形成した後に開始する、請求項1から3のいずれかに記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  5. 前記工程(E)の昇温は、前記工程(B)における前記非希土類層を形成する前に開始し、前記非希土類層は前記昇温の途中で溶解する材料から構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  6. 前記工程(A)における前記合金の粉末は、非希土類金属の単金属、合金、および/または化合物からなる非希土類粉末粒子を含み、前記非希土類粉末粒子の少なくとも一部は、前記工程(E)の昇温過程で溶解し、それによって前記非希土類層を形成する、請求項5に記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  7. 前記非希土類粉末粒子は融点が700℃以下の材料から形成されている、請求項6に記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  8. 前記材料は、アルミニウムおよびガリウムの少なくとも一方を含む、請求項7に記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  9. 前記非希土類粉末粒子の50%中心粒径は0.5μm以上20μm以下である、請求項6から8のいずれかに記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  10. 前記R−Fe−B相を有する合金は、10原子%≦R≦14原子%、5原子%≦B≦10原子%の関係を満足する組成を有している、請求項1から9のいずれかに記載の希土類系磁石粉末の製造方法。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載の希土類系磁石粉末の製造方法によって作製された希土類系磁石粉末を用意する工程と、
    配向磁界中で前記希土類系磁石粉末を成形する工程と、
    を包含する異方性磁石の製造方法。
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