JP2013083001A - Cu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】希土類酸化物粉末もしくは希土類酸化物粉末および希土類金属粉末と、含鉄粉末、含硼素粉末からなる原料粉末に前記酸化物粉末を還元するのに十分な量の還元剤を混合し、還元拡散法によりCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末を製造する方法であって、原料粉末として、さらに含銅粉末を組成範囲がCu換算で0.003〜1.5重量%となるように混合し、該混合物を不活性ガス雰囲気下で900℃〜1200℃の温度で0.5時間以上保持して熱処理し、得られた反応生成混合物を湿式処理した後、乾燥することを特徴とするCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法;この製造方法により得られたCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末によって提供。
【選択図】図1
Description
溶解法は、構成成分となる金属や母合金を目的組成に調合し、溶解し、これにより得た合金塊を粉砕するものである。例えば、特許文献1には、R(Rは、Yを含む希土類元素の少なくとも1種である)、T(Tは、Fe、またはFeおよびCoである)およびBを主成分とする合金溶湯を、単ロ−ル法、双ロ−ル法または回転ディスク法により一方向または対向する二方向から冷却して製造する方法が記載されている。
さらに、特許文献3の実施例には、Ndと電解鉄とフェロボロンとBiとフェロタングステンとを出発原料とし、所望の組成となるように配合してア−ク溶解法によって合金化し、次に均質化熱処理、粗粉砕、微粉砕する永久磁石の製造例が記載されている。
しかし、これらの方法では粉砕工程が必要であり、しかも希土類金属は酸化に対して高活性であるため粉砕過程で酸化が進行し、合金品質が低下するという欠点がある。
還元拡散法は、溶解法に比べて原料が安価であり、熱処理温度が低く、得られた合金の組織が緻密で、かつ組成の調整がしやすく、その上合金塊の表面処理、粉砕工程などが不要であるなど、多くの利点を有する。この還元拡散法による合金の製造方法には、例えば、特許文献4があり、希土類の酸化物またはハロゲン化物をFe及びBの存在下でCa還元して、3wt%〜20wt%Fe、0.5wt%〜10wt%B、残部実質的に希土類金属よりなるFe−B−R中間原料合金を得ることが記載されている。
そして、本出願人も、28〜35重量%の希土類元素と、1.0〜1.5重量%のホウ素と、残部の鉄または鉄合金からなり、該鉄合金がニッケルとコバルトの少なくとも一種を含有する磁石用合金粉末を還元拡散法で製造するに際し、前記合金粉末を混合した後、100〜1000kg/cm2の圧力で成型し、次いで1000〜1200℃で還元拡散反応を起こさせてから粉末にすることを提案している(例えば、特許文献5)。
この問題を解決する方法として、Nd−Fe−B系合金粉末の粒度をより微細にするために、水素化−不均化−脱水素−再結合処理(HDDR)法による合金粉末の製造が開発され、0.3〜0.5μmの結晶粒径を有するHDDR磁粉を短時間ホットプレスすることで、Dyを含まない組成においても高い保磁力を発揮する可能性があると報告されている(非特許文献1参照)。しかし、このHDDR処理用の合金は、原料を溶解、鋳造した後、均熱化処理を行い、水素吸蔵崩壊の処理工程を必要とし、生産性が悪い。
また、本発明の第9の発明によれば、第7の発明において、前記Alが、主相Nd2Fe14B粒子内に散在していることを特徴とするCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末により提供される。
本発明は、希土類酸化物粉末もしくは希土類酸化物粉末および希土類金属粉末と、含鉄粉末、含硼素粉末からなる原料粉末に前記酸化物粉末を還元するのに十分な量の還元剤を混合し、還元拡散法によりCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末を製造する方法であって、原料粉末として、さらに含銅粉末もしくは含銅粉末および含アルミニウム粉末を特定量混合し、該混合物を不活性ガス雰囲気下で900℃〜1200℃の温度で熱処理し、得られた反応生成混合物を湿式処理した後、乾燥することを特徴とする。
本発明において用いられる希土類元素としては、例えばGd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Lu、Pm、Y、Scなどの希土類金属酸化物粉末や希土類金属粉末が、1種もしくは2種以上を組み合わせて使用される。なかでもNdを必須とする。純度は、99.9%以上のものが好ましい。使用量は、希土類元素の組成範囲が20〜30重量%となるようにする。
また、本発明において原料粉末には、さらに含アルミニウム原料は酸化アルミニウム粉末やアルミニウム粉を含むことができる。純度は、99%以上のものが好ましい。Alの使用量は、組成範囲が0.003〜1.5重量%となるようにする。0.003重量%以上使用すると主相Nd2Fe14B粒子の磁気的孤立化をより高めることができる。ただ、1.5重量%を超えると過剰のアルミニウムが阻害元素となって、磁気特性が低下することがある。
本発明において、還元剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種、例えば、Li、Na、K、Ca、Mg等、およびこれらの水素化物を、それぞれ単独または2種以上の組み合わせで使用する。これら還元剤の形状は、例えば粒状または粉末状で使用する。また、これらの還元剤は、反応等量(Nd2O3を還元するのに必要な化学量論量)の1.1〜2.0倍量となる割合で使用する。多すぎると、湿式処理後に残留量が増えるので1.1〜1.5倍量が好ましい。
以下、本発明における還元拡散反応を、Nd2O3粉末、Fe粉、FeB合金粉末、CuO粉末および金属カルシウムを使用して合金粉末を製造する場合を例にとって具体的に説明する。
本発明の方法によれば、上記原料成分の混合物を、Arガスなどの不活性ガス雰囲気中において、還元剤が溶融する温度以上、かつ合金が溶融しない温度まで昇温、保持して加熱処理する。
前記特許文献6には、工業的生産上不可避的不純物としてCuの存在が許容できると記載されている。ここには、Cuの具体的存在位置については記載がないが、CuがNdFeB系合金の主相に取り込まれたのでは磁気特性が低下する。本発明では、CuはNdFeB系合金の主相に取り込まれず、粒界に存在することを確認している。
還元拡散反応終了後、得られた反応生成物は湿式処理を行う。この湿式処理は、反応生成物を水中に投入することによって反応生成物を崩壊させる。
最後に、乾燥させ合金粉末から水を除去する。乾燥手段は自然乾燥でも真空乾燥でもよい。室温でもよいが、必要により30〜100℃に加熱することができる。また、必要により媒体攪拌ミルなどの粉砕装置で処理することができる。
本発明の製造方法によって得られたCu含有Nd2Fe14B合金粉末は、Cuが主相Nd2Fe14B粒子内に存在せず、Ndと共に主相間の粒界に存在し、高保磁力発現の組織となっている。
また、Cu含有Nd2Fe14B合金粉末はさらにAlを含むことが好ましく、図5〜9を参照すると、図9の写真から、Alが主相Nd2Fe14B粒子の全体に散在していることが分かる。
このCu含有Nd2Fe14B合金粉末は、平均粒径が1〜150μmであり、HDDR法による合金粉末の原料として使用することができる。
平均粒径5.1μmの純度99.9重量%の酸化ネオジム粉末4.34g、酸化銅粉末0.068g、粒径が10〜70μmの粉末が全体の94%を占める純度99重量%の鉄粉7.07g、および−330メッシュが全体の99.8%を占めるB含有量19.1重量%のフェロボロン粉末0.78gを自動擂潰機で10分混合し、この混合物にさらに粒度4メッシュ(タイラ−メッシュ)以下の純度99重量%の粒状金属カルシウム1.81gを添加して混合した。酸化銅粉末の量は、目的とする合金粉末に対してCu換算で0.5重量%となるようにした。
得られた混合物を鉄坩堝に入れ、ロータリ−ポンプで5分間減圧した後、Arガスを供給して大気圧まで復圧し、Arガス気流中で約3時間かけて1050℃まで昇温し、その温度で5時間保持し、その後室温まで冷却した。
反応生成物を反応容器から取り出し、純水中に投入して30分間攪拌して水中崩壊した。反応生成物中に含まれる残留金属カルシウム、CaOおよびCa(OH)2を除去するため、pH7〜8になるまでデカンテ−ションによる洗浄を繰り返し行った。次に、2Nの酢酸を用いて15分間洗浄した後、再度純水で上澄み液の伝導度が0.1mS/cmになるまでデカンテ−ションによる洗浄を繰り返し行った。その後、上澄み液を除去し、AP−2(変性アルコール)で置換してから真空乾燥を行い、合金粉末aを得た。
得られた合金粉末aは、平均粒径が11.7μmであり、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、図1〜図4に示すようにCuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、還元拡散時の反応温度を1025℃、保持時間を4時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る合金粉末bを得た。
得られた合金粉末bは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、還元拡散時の保持時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る合金粉末cを得た。
得られた合金粉末cは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、酸化銅の替わりに銅0.054g用い、粒状金属カルシウム1.78gとした以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る合金粉末dを得た。この銅粉末の量は、目的とする合金粉末に対してCu換算で0.5重量%となる。
得られた合金粉末dは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、酸化銅粉末0.077gとした以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る合金粉末eを得た。この酸化銅粉末の量は、目的とする合金粉末に対してCu換算で0.6重量%となる。
得られた合金粉末eは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、酸化ネオジウム粉末4.21g、粒状金属カルシウム1.76gとした以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る合金粉末fを得た。
得られた合金粉末fは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、さらに塩化カルシウム0.13gを添加した以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る合金粉末gを得た。
得られた合金粉末gは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、さらに塩化カルシウム0.20gを添加した以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る合金粉末hを得た。
得られた合金粉末hは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、酸化銅粉末の量をCu換算で0.007重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る合金粉末iを得た。
得られた合金粉末iは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、酸化銅粉末の量をCu換算で0.05重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして実施例10に係る合金粉末jを得た。
得られた合金粉末jは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、酸化銅粉末の量をCu換算で1.0重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして実施例11に係る合金粉末kを得た。
得られた合金粉末kは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、さらに酸化アルミニウム粉末0.103g(目的とする合金粉末に対してAl換算で0.6重量%)添加した以外は、実施例1と同様にして実施例12に係る合金粉末lを得た。
得られた合金粉末lは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、図8に示すようにCuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。一方、図9に示すようにAlは粒子全体に散在していることが確認された。
実施例12において、さらに無水塩化カルシウム0.22g添加した以外は、実施例1と同様にして実施例13に係る合金粉末mを得た。
得られた合金粉末mは、粉末X線解析の結果、主相がNd2Fe14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Nd2Fe14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
実施例1において、還元拡散時の反応温度を850℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る合金粉末nを得た。
得られた合金粉末nは、粉末X線解析の結果、Nd2Fe14Bの他に、Fe、Nd2O3に由来するピ−クが認められたことから、断面SEM像による組織観察を行わなかった。
実施例1において、還元拡散時の保持時間を10分とした以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る合金粉末oを得た。
得られた合金粉末oは、粉末X線解析の結果、Nd2Fe14Bの他に、Fe、Nd2O3に由来するピ−クが認められたことから、断面SEM像による組織観察を行わなかった。
表1から明らかなように、本発明によるCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法で製造されたCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末(実施例1〜実施例13)では、CuがNdと共に主相Nd2Fe14B粒子間の粒界に存在し、Alは粒子全体に散在していることが確認された。
一方、製造条件が本発明から外れた比較例1、2は、粉末X線解析の結果、原料のFe、Nd2O3に由来するピ−クが認められ、還元拡散不足が明らかである。
Claims (9)
- 希土類酸化物粉末もしくは希土類酸化物粉末および希土類金属粉末と、含鉄粉末、含硼素粉末からなる原料粉末に前記酸化物粉末を還元するのに十分な量の還元剤を混合し、還元拡散法によりCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末を製造する方法であって、
原料粉末として、さらに含銅粉末を混合し、該混合物を不活性ガス雰囲気下で900℃〜1200℃の温度で0.5時間以上保持して熱処理し、得られた反応生成混合物を湿式処理した後、乾燥することを特徴とするCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法。 - 前記の含銅粉末は、組成範囲がCu換算で0.003〜1.5重量%となるように混合されることを特徴とする請求項1に記載のCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法。
- 前記原料粉末として、さらに含アルミニウム粉末が添加されることを特徴とする請求項1または2に記載のCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法。
- 前記含アルミニウム粉末は、組成範囲がAl換算で0.003〜1.5重量%となるように混合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法。
- 前記熱処理の保持時間が、1〜5時間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法。
- 前記還元剤と共に、アルカリ金属塩化物およびアルカリ土類金属塩化物から選ばれる少なくとも1種のフラックスを使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られたCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末。
- 前記Cuが、主相Nd2Fe14B粒子内に存在せず、Ndと共に主相間の粒界に存在することを特徴とする請求項7に記載のCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末。
- 前記Alが、主相Nd2Fe14B粒子全体に散在することを特徴とする請求項7に記載のCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末。
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