JP6489073B2 - 希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法 - Google Patents

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本発明は、希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法に関し、さらに詳しくは、還元拡散時の熱処理パターンを調整することで主相比率および粒子の均一性が高まり、優れた磁気特性が得られる希土類―鉄―窒素磁石粉末の製造方法に関する。
Sm−Fe−N磁石で代表される希土類―鉄―窒素系磁石は、高性能かつ安価な磁石として知られている。このSm−Fe−N系磁石粉末は、SmFe17Nxであればx=3の組成で構成されることによって最大の飽和磁化を示すとされている(非特許文献1参照)。
この希土類―鉄―窒素系磁石は、従来、FeとSm金属を用いて高周波炉、アーク炉などにより希土類―鉄合金を作製する溶解法や、FeあるいはFe、Sm等とCaを混合加熱処理により希土類―鉄合金を作製する還元拡散法によって得られた母合金を窒化することで得られている。このようにして得られた粉末状の希土類―鉄―窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、次の工程において平均粒子径が数μmから5μm程度になるまで微粉砕処理される。
溶解法では原料粉末の1500℃以上での溶解、粉砕、組成均一化のための熱処理が必要であり(特許文献3参照)、工程が極めて煩雑であるとともに、各工程間において一旦大気中に曝されるために酸化により不純物が生成し、湿式処理後に窒化を行うが、湿式処理時に表面が酸化しているため窒化が均一に進行できなくなり、磁気特性のうち飽和磁化、保磁力、角形性が低下し、結果として最大エネルギー積が低くなってしまう。また、原料として必要とされる希土類金属が高価であるという理由から、希土類―鉄―窒素系磁石の製造方法としては、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法に比べてコスト的に劣ると考えられている。
還元拡散法では、通常出発原料に数十μmの鉄粉末を用い、希土類金属もしくは希土類酸化物とアルカリ土類金属を混合ののち、還元熱処理を行うことで母合金を作製するが、この方法の場合、最終的な窒化処理の後で数μmに機械粉砕するため、逆軸の核となり得る破断面の突起や結晶歪みが発生し、磁気特性を低下させる。
これに対し、出発原料として用いる粉末の粒子径を小さくすることにより、母合金を粉砕せずに磁石粉末を得る方法が検討されてきた。
例えば、特許文献1では、希土類元素原料として平均粒径が5μm未満の希土類酸化物を使用し、遷移金属原料として平均粒径が5μm未満の遷移金属酸化物、もしくは加熱すれば容易に酸化物を生成する平均粒径が5μm未満の遷移金属化合物を使用し、還元剤として遷移金属は還元できるが希土類元素は還元できないものを使用して、遷移金属原料を還元する第一還元を行い、次に還元剤として希土類元素を還元できるものを使用する第二還元を行い、平均粒径が5μm未満である希土類遷移金属合金粉末を得る希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提案されている。これにより希土類遷移金属系の磁製材料が粉砕工程を一切用いないで製造できるとしている。
また、特許文献2は、酸化鉄粒子粉末と酸化サマリウム粒子粉末とを混合した後、還元反応を行って鉄粒子と酸化サマリウム粒子との混合物とし、次いで、30〜150℃の温度範囲、酸素含有雰囲気下で安定化処理を行って前記鉄粒子の粒子表面に酸化被膜を形成した後、Caを混合して800〜1200℃の温度範囲、不活性ガス雰囲気下で還元拡散反応を行い、次いで、300〜600℃の温度範囲で窒化反応を行うことが提案されている。この発明においては、鉄粒子と酸化サマリウム粒子との混合物に安定化処理を行って、鉄粒子の粒子表面に酸化被膜を形成することが肝要であり、鉄粒子の粒子表面に酸化被膜を形成することによって、窒化反応を均一に進行させることができ、粒子間の焼結を抑制することができるとしている([0026])。
さらに、特許文献3は、希土類元素の少なくとも一種の陽イオンと、Fe、Co及びNiの中から選ばれる少なくとも一種の陽イオンと、これら陽イオンと不溶性の塩を生成する物質である炭酸イオンとを溶液中で反応させて沈殿物を析出させる工程、乾燥された沈殿物を酸素リッチ雰囲気、かつ800〜1300℃の温度で焼成して金属酸化物を得る工程、該金属酸化物を還元性ガス雰囲気で加熱し遷移金属の酸化物中に存在する酸素全量の40%以上を還元して除去する工程、前記還元性ガス雰囲気で加熱した後、金属状態まで還元された遷移金属元素と希土類元素酸化物とを含む混合状粉末に、粒状または粉末状のカルシウムを混合して還元拡散し、希土類−遷移金属系合金を含む多孔質塊状の生成物を得る工程、を含む方法が提案されている。しかし、このようにSmとFeの共沈水酸化物を製造する方法では、使用する希土類塩が高価で製造コストに問題がある。
ところで、還元拡散時の熱処理は、通常、1000〜1250℃まで昇温し、その範囲の温度で保持し還元している(例えば特許文献4参照)。しかしながら、このように1段で加熱還元を行えば、工程管理はしやすいので、出発原料の粒子径が大きく原料の比表面積が小さい場合には問題ないが、出発原料の粒子径が3μm以下と小さい場合には、金属カルシウムの溶融に伴う拡散が不十分なうちから還元が開始されてしまい、粒子毎のSmとFeの組成均質性を損なうほか、テルミット発熱の大きさの偏りが生じて局部的粒成長を起こし粒子径の大きさも不揃いになることがある。
以上のことから、原料による製造コストの上昇を抑制しながら、主相比率の向上、粒子の均一化による優れた磁気特性を有する希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法の確立が強く望まれていた。
特開平11−310807号公報 特開2003−297660号公報 特許3698538号公報 特開2012−164905号公報
T.Iriyama IEEE TRANSAACTIONS ON MAGNETICS,VOL.28,No.5(1992)
本発明は、このような従来技術の状況に鑑み、還元拡散時の熱処理パターンを調整することで主相比率および粒子の均一性が高まり、優れた磁気特性が得られる希土類―鉄―窒素磁石粉末の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、かかる従来の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、希土類―鉄合金を得る還元拡散処理時の熱処理パターンを検討したところ、この熱処理温度領域は、金属カルシウムの溶融拡散段階と粒成長段階の2段階に分けることができ、前段の金属カルシウムの溶融拡散を特定の温度、時間で保持することで、窒化、微粉砕後の粒子内のSmとFeの組成の均質性および粒子の均一性が高まり、これにより磁気特性が非常に高い磁石粉末が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類酸化物粉末の還元拡散法により得られる母合金を窒化処理して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造する方法であって、希土類酸化物粉末と鉄粉末の混合物もしくは、これに希土類鉄複合酸化物や酸化鉄の少なくとも一つをさらに含む混合物を出発原料とし、金属カルシウムを混合後、800〜900℃の温度で4時間〜20時間保持し、その後さらに昇温し950℃〜1200℃の温度で所定時間保持を行い還元拡散処する第工程と、得られた還元拡散反応生成物に窒化ガスを供給し、この気流中で該反応生成物を所定の温度で窒化処理する第2工程と、得られた窒化処理生成物の塊を水中に投入して湿式処理し崩壊させ、さらに得られた磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化して、磁石粉末を得る第3工程とを含む希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、第1工程の出発原料は、鉄粉末または酸化鉄の平均粒子径が3μm以下であることを特徴とする希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、第1工程で添加される金属カルシウムは、平均粒子径が4メッシュ以下であり、添加量が酸化物を全て還元するのに必要となる金属カルシウム量を1当量としたときに、1.5〜3.0当量であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、第3工程後の磁石粉末は、5μm以上の累積個数百分率が20%未満かつ0.5μm以下の累積個数百分率が4%未満であることを特徴とする希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、第3工程後の磁石粉末は、SEMにより観察される主相単相からなる粒子が、総粒子数に対して90%以上であることを特徴とする希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、磁石粉末がSm−Fe−Nであることを特徴とする希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
本発明によれば、還元拡散処理時の熱処理パターンにおいて、従来は所望の温度まで昇温した後に保持するだけの1段パターンであったところ、これを2段パターンに変更し、低温側では金属カルシウムの溶融拡散を、また高温側では粒成長を別々に制御することで、粒子内のSmとFeの組成の均質性および粒子の均一性を高めることが可能となるため、高性能な磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造できる。
希土類酸化物と遷移金属粉末、および還元剤(Ca粒)の混合粉末を加熱し還元拡散する際の反応メカニズムを模式的に示した説明図である。 本発明により、特定の温度で二段加熱することで、溶融Caの中に均一に粒成長したSm−Fe合金粉末が分散して得られることが分かる写真である。 従来の一段加熱では、溶融Caの中に不均一に粒成長したSm−Fe合金粉末が得られることが分かる写真である。
以下、本発明の希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法について説明する。
本発明は、希土類酸化物粉末の還元拡散法により得られる母合金を窒化処理して希土類−鉄−窒素系合金粉末を製造する方法であって、希土類酸化物粉末と鉄粉末の混合物もしくは、これに希土類鉄複合酸化物や酸化鉄の少なくとも一つをさらに含む混合物を出発原料と、金属カルシウムと、を800〜900℃の温度で4時間〜20時間保持し、その後さらに昇温し950℃〜1200℃の温度で所定時間保持を行い還元拡散処する第1工程と、得られた還元拡散反応生成物に窒化ガスを供給し、この気流中で該反応生成物を所定の温度で窒化処理する第2工程と、得られた窒化処理生成物の塊を水中に投入して湿式処理し崩壊させ、さらに得られた磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化して、均質で粒子の揃った磁石粉末を得る第3工程とを含むことを特徴とする。
1.希土類―鉄母合金の製造方法
(1)原料粉末(混合粉末)
まず、磁石原料(出発原料)として、希土類酸化物粉末と鉄粉末の混合粉末もしくは、これに希土類鉄複合酸化物や酸化鉄の少なくとも一つをさらに含む混合粉末を用意する。
鉄粉末としては、金属鉄、酸化鉄、あるいは希土類鉄複合酸化物が使用される。その粒子径は、後に生成される希土類―鉄母合金を小さくするため、平均粒子径で3μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。これは、平均粒子径が3μmを超えると後に生成される希土類―鉄母合金がその粒子径以上となるため、大きな粒子ができやすく保磁力が低下するほか、窒化処理の際に粒子内の窒化不足が起きる要因となるためである。また、上記と同じ理由で鉄粉以外に鉄を含有する酸化鉄(Feのほか、FeOやFeなど)、更にサマリウムを含有するサマリウム鉄複合酸化物(SmFeO3など)についても、粒子径は平均粒子径で3μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。
希土類酸化物としては、特に制限されないが、Sm、Gd、Tb、Ceから選ばれる少なくとも1種類の元素、あるいはさらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる少なくとも1種類の元素が含まれるものが好ましい。中でもSmが含まれるものは、本発明の効果を顕著に発揮させることが可能になるので特に好ましい。Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類元素全体の60質量%以上、好ましくは90質量%以上にすることが高い保磁力を得るためには好ましい。その粒子径は、固相内拡散がしやすく、不均一な拡散が起こらないように平均粒子径で5μm以下、さらに酸化鉄の粒子径より小さいとより好ましい。
混合粉末を得る方法としては、各粉末を水やアルコールを溶媒としたボールミル、ビーズミル、アトライターといった湿式混合後に乾燥する方法あるいは、リボンブレンダー、タンブラー、S字ブレンダー、V字ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、振動ミルといった乾式混合のほか、反応晶析による共沈法によって、すでに混ざり合った状態の水酸化物あるいはオキシ水酸化物を製造し、熱処理によって酸化物を得るなどが挙げられ、その混合方法によって制限されない。本発明では、水溶媒を使用するのが好ましく、その際には、乾燥凝集を防止するため、真空凍結乾燥や噴霧乾燥、気流乾燥、パドルドライヤーなどを使用するとよい。
これら直接的方法のほか、所望の物質の比率を得るために、一度高温で熱処理しイグロス成分を除去することや、サマリウム鉄複合酸化物を製造する、あるいは水素還元によって鉄粉を製造することを工程内に含ませるなどの方法も行うことができる。本発明では、上記の水溶媒を使用した混合の後で、水素還元によって鉄粉を製造するのが好ましい。
(2)還元拡散
次に,上記混合原料粉末に還元剤として,さらに金属カルシウムを混合する。金属カルシウムは、取り扱いの安全性とコストの点で、4メッシュ以下に分級した粒状金属カルシウムが好ましい。そして、混合物を不活性ガス雰囲気中、所定の温度で熱処理し、還元拡散法でThZn17型結晶構造を有する希土類―鉄系母合金を製造する。
還元拡散法は、前記したように還元剤である金属カルシウムと原料粉末との混合物を反応容器に充填し、一度真空に引いてから不活性ガスを導入することで不活性ガス雰囲気に置換し、例えばアルゴンガス雰囲気中にて950〜1200℃で加熱することによって、合金粉末を得る方法である。
金属カルシウム使用量は、酸化物を全て還元するのに必要とする金属カルシウムの量を1当量とした場合、1.5〜3.0当量が好ましく、1.5〜2.0当量がより好ましい。これは、1.5当量より少ないと熱処理時の蒸発水分や金属カルシウムの蒸発による利用量の低下および比表面積から量が不足し、3.0当量より多いと過剰に存在する金属カルシウムが粒成長を阻害する要因となって本焼の温度を上げても大きくなりにくいほか、還元拡散後の窒化の際のガスの吸収が余剰の金属カルシウムによって阻害され窒化が不均一になりやすい欠点があるためである。還元剤は上記原料粉末と混合するか、金属蒸気が原料粉末と接触しうるように分離しておくが、混合して還元拡散されれば反応生成物が多孔質となり、引き続き行われる窒化処理を効率的に行うことができる。
原料粉末や還元剤とともに、窒化処理後の湿式処理工程において反応生成物の崩壊を促進させる添加物を混合することも効果的である。崩壊促進剤としては、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩や酸化物を用いることができ、原料粉末などと同時に均一に混合する。ここで不活性ガスは、アルゴン、ヘリウムから選ばれた1種類以上が用いられる。
本発明においては、熱処理を仮焼と本焼の2段階で行い、仮焼温度は800〜900℃、本焼温度は950〜1200℃の範囲とすることが必要である。還元剤仮焼において、800℃未満では、テルミット発熱による温度上昇が起こらず、カルシウムの溶融に伴うサマリウムの拡散が不十分となるため、全体が不均一となり、得られる希土類―鉄―窒素系磁石粉末の保磁力や角形性が低下する。仮焼温度は830〜900℃が好ましく、850〜900℃の範囲とすることがより好ましい。また、本焼温度は950〜1180℃が好ましく、950〜1150℃の範囲とすることがより好ましい。
さらに仮焼時の保持時間は、4時間〜20時間とする。これは、仮焼時の保持時間において、鉄系原料の粒径が3μm以下と小さい場合、比表面積が高いため金属カルシウムの融体が全体に広がるのに多くの時間を必要とし、1時間より短いと金属カルシウムが全体に行き渡っていないうちに本焼に入り、金属カルシウムによって広がり固相内拡散していくサマリウムが粒子毎に不均一になるためである。逆に20時間よりも長い場合は、これ以上長くしても既に金属カルシウムが全体に行き渡っており、これ以上の時間保持する必要がないため最大を20時間と規定している。そのため、5時間〜15時間が好ましい。
また、本焼においては、高温での粒成長をさせる効果があるが、950℃未満であると粒成長が非常に遅く、残された微粉末が成形品を製造する際の加熱に弱く保磁力が急激に低下したり、また樹脂との混練時に流動性が悪くなって成形自体が出来なくなる問題が発生する。また、1200℃を超えると粒成長が激しくなり、5μmを超える粗粉末が非常に多くなり保磁力の大幅な低下を引き起こすほか、Smの蒸発量も非常に多くなり過剰な量が必要となり高コストにも繋がる。
本焼の時間については、狙いの粒子径にするために保持時間を制御することとなるため規定しにくい。0.5時間以上であれば時間の粒径への影響が少ないので、省エネルギーの観点から0.5〜2時間が好ましい。
ここで、図1を参照して反応メカニズムを説明する。混合粉末は、比較的微細な希土類酸化物(Sm含有物)と遷移金属粉末(Fe含有物)、これらよりも粗大な還元剤(Ca粒)が均一に分散しているが、上段のように800〜900℃で仮焼すると、CaとSmが均一に拡散し、またテルミット発熱が小さいので還元が緩やかなため粒成長も均一になる。そのため、次に本焼温度で加熱すると、右図のように溶融Caの中に均一に粒成長したSm−Fe合金粉末が分散した状態が得られる。これが図2の写真からも分かる。
なお、800℃未満では、テルミット発熱による温度上昇が起こらず、カルシウムの溶融に伴うサマリウムの拡散が不十分となるため、図示しないが、全体が不均一となり、得られる希土類―鉄―窒素系磁石粉末の保磁力や角形性が低下する。
一方、図1の下段のように900℃超では、CaとSmの拡散が不均一で、テルミット発熱が大きい領域で還元が不均一に進むため、局所的に還元が急速に進行し、粒成長が大きい部分(図では左下と右側)が生じる。また、900℃を超えると還元とともに金属が粒成長を始めて同時進行する事となり、粒子径を制御することが出来なくなる。これにより、右図のように溶融Caの中に大きく粒成長したSm−Fe合金粉末と、CaとSmの拡散が遅れ粒成長の小さいSm−Fe合金粉末とが分散した状態、すなわちSm−Fe粒にばらつきが生じてしまう。これが図3の写真からも分かる。
(3)反応生成物の冷却
本発明では、還元拡散反応後の反応生成物に対して、雰囲気ガスを不活性ガスとしたまま変えずに、引き続き、300℃以下、好ましくは50〜280℃、より好ましくは100〜250℃に冷却する。
冷却後の温度が300°Cを越えていると、窒化の際に反応生成物との窒化反応が急激に進んでしまい、α−Fe相を増加させてしまうことがあるので、300°Cよりも低い温度まで冷却するのが望ましい。これは、300°Cを越える温度では、反応生成物が活性であるために合金が急激に窒化されて、ThZn17型結晶構造を有する金属間化合物がFeリッチ相とSmNとに分解すると推測されるからである。
冷却後に、多孔質の塊状混合物である反応生成物を湿式処理しないで、雰囲気ガスを不活性ガスから、窒化ガス、例えば少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスに変えて、次の窒化工程に移る。
このとき反応生成物が大気中に曝されると、反応生成物中の活性な希土類−鉄母合金粉末が酸化されて反応性が失活し、結果として窒化の度合いをばらつかせるので、大気(酸素)に曝されることのないように窒化工程に持ち込むことが必要である。
2.希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法
(1)窒化処理
窒化工程では、雰囲気ガスの不活性ガスを排出してから、窒化ガスに変えて昇温し、反応生成物を特定温度に加熱する。
窒化ガスとしては、窒素、アンモニアなど少なくとも窒素元素を含むガスであれば特に限定されないが、反応をコントロールするためにアルゴン、ヘリウムなどを混合することができる。窒化ガスの量は、磁石粉末中の窒素量が3.3〜3.7質量%となるに十分な量であることが好ましい。また、アンモニアと水素とを含有する混合ガスであれば、より好ましい。
アンモニアと水素とを含有する混合ガスを用いる場合、全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.2〜0.6、好ましくは0.3〜0.5となるようにする。アンモニア分圧が0.2未満であると、長時間かけても母合金の窒化が進まず、窒素量を3.3〜3.7質量%とすることができず、磁石粉末の飽和磁化と保磁力が低下する。
アンモニアと水素とを含有する混合気流は、窒化温度である350〜500°C、好ましくは400〜480°Cで供給して、母合金を窒化熱処理することが好ましい。温度が350°C未満であると、反応生成物中の希土類−鉄母合金に3.3〜3.7質量%の窒素を導入するのに長時間を要するので工業的優位性がなくなる。一方、500°Cを超えると、主相であるSmFe17相が分解してα−Feが生成するので、最終的に得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が低下するので好ましくない。なお、冷却温度から窒化温度までは、毎分4〜10℃の速度で比較的急速に昇温することが生産効率を高める上で望ましい。また、冷却温度での保持時間は、特に必要はない。保持しても窒化に対する効果はないからである。
窒化処理の保持時間は、窒化温度にもよるが、100〜300分、好ましくは、140〜250分とする。100分未満では、窒化が不十分になり、一方、300分を超えると窒化が進みすぎるので好ましくない。
本発明においては、窒化処理に引き続いて、さらに水素ガス、または窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で合金粉末を熱処理することが望ましい。特に好ましいのは、水素ガスで熱処理した後に窒素ガスおよび/またはアルゴンガスで熱処理をすることである。
これにより、磁石粉末を構成する個々の結晶セル内の窒素分布をさらに均一化することができ、角形性を向上させることができる。熱処理の保持時間は、30〜200分、好ましくは60〜250分が良い。
(2)湿式処理
本発明では、窒化後の処理生成物を湿式処理して、そこに含まれている還元剤成分の副生成物(酸化カルシウムや窒化カルシウムなど)を希土類−鉄−窒素系磁石粉末から分離除去する。
窒化終了後の磁石粉末に対して湿式処理を行うのは、前述したとおり、窒化する前に、反応生成物を湿式処理すると、この湿式処理過程で母合金表面が酸化されて窒化の度合いをばらつかせるからである。
また、窒化後に処理生成物を長期間大気中に放置すると、カルシウムなどの還元剤成分の酸化物が生成し除去しにくくなったり、磁石粉末の表面の酸化によって、窒化が不均一になり主相の比率の低下とニュークリエーションの核の生成によって角形性が低下したりする。したがって、大気中に放置された窒化処理生成物は、反応器から取り出してから2週間以内に湿式処理するのがよい。
湿式処理は、まず崩壊した生成物を水中に投入し、デカンテーション−注水−デカンテーションを繰り返し行い、生成したCa(OH)の多くを除去する。さらに必要に応じて、残留するCa(OH)を除去するために、酢酸および/または塩酸を用いて酸洗浄する。このときの水溶液の水素イオン濃度はpH4〜7の範囲で実施するとよい。還元拡散時に過剰に投入したSmの影響で主相の周りに磁気特性の飽和磁化を低下させる非磁性相が存在している場合があり、Sm量が23.2〜23.6質量%になるように酸洗を行うことが好ましい。
上記酸洗浄処理の終了後には、例えば水洗し、アルコールあるいはアセトン等の有機溶媒で脱水し、不活性ガス雰囲気中または真空中で乾燥することで希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を得ることができる。
(3)微粉砕、乾燥
得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、粒子径が小さい多数の粒子が集って、ブドウ状に焼結し2次粒子のほか、単独の1次粒子の2種類から形成されている。このような磁石粗粉末を溶媒とともにビーズミル、媒体撹拌ミル等の粉砕機に入れ、2次粒子からなる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の焼結部が外れる程度に弱く解砕し、その後ろ過、乾燥する。
本発明で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を解砕するには、固体を取り扱う各種の化学工業において広く使用され、種々の材料を所望の程度に粉砕できる粉砕装置であれば、特に限定されるわけではない。その中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で優れた、媒体撹拌ミルまたはビーズミルによる湿式粉砕方式によることが好適であるが、一次粒子が壊れるほどに強い粉砕をしてはならない。
粉砕に用いる溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。粉砕後所定の目開きのフィルターを用いて、ろ過、乾燥して希土類−鉄−窒素系磁石微粉末を得る。
3.希土類−鉄−窒素系磁石粉末
本発明では、上記の方法で得られ、磁石粉末がSm−Fe−Nであるものが好ましい。特に、Sm量が磁石粉末全体に対して23.2〜23.6質量%のものが一層好ましい。SEMによって観察すると、図2のように、1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が見てとれる。
磁石粉末Sm−Fe−Nにおいて、主相単相からなる粒子の累積個数百分率が90%以上であることが望ましい。これは95%未満になると飽和磁化、角形性が低下するためである。
また、得られた粗粉末中の1次粒子の長軸粒子径をSEMによって確認し測定した際、5μm以上を有する1次粒子径が累積個数百分率で20%未満であることが好ましく、15%未満であるとより好ましい。これは、1次粒子径が5μmを超えるような粒子が増えると、断面を確認した際に窒化不足を起こしている粒子が存在しているほか、粒子が大きいため、飽和磁化、角形性、保磁力を低下させる要因にもなるからである。また、0.5μm以下の累積個数百分率は4%未満が好ましい。4%以上では微粉末が多いため、成形品を製造する際の加熱に弱く保磁力が急激に低下したり、また樹脂との混練時に流動性が悪くなって成形自体が出来なくなる問題が発生しうるからである。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。得られた窒化粉末は次の方法で測定した。
(1)磁気特性
合金粉末の磁気特性は、日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、1600A/mの配向磁界をかけてステアリン酸中で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を配向させ試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁して測定した。
磁石合金粉末の比重を7.67g/cmとし、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化:4πIm(T)、保磁力:iHc(kA/m)、角形性:Hk(kA/m)を測定した。Hkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが残留磁化4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。
(2)粒子形状
粉砕前の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の粒子表面、形状を走査型電子顕微鏡(SEM:株式会社日立製作所製、S−800)で観察した。
(3)粒度分布
平均粒子径は、粒度分布測定器にて測定した。粒子長軸径は、SEM像から1次粒子の粒径を1000倍で撮影した写真を2倍に拡大して、最小メモリ1mmの定規で長さを測定し、粒子の累積個数百分率を求めた。
(4)化合物存在比率計算
XRDによる粉末X線回折装置を用いて、測定したデータをもとに化合物の同定を行い、それら化合物の存在比率についてリートベルト解析を使用し、半定量値を算出することで、各化合物の割合を求めた。
(5)主相単相粒子比率の算出
フェノール樹脂中に粉末を埋め込み、研磨紙で#2000番まで研磨後SEMによる反射二次電子像観察を行い、1000倍で5視野撮影し、主相単相である粒子の数を総粒子数で割り算し百分率を求めた。
観察時の主相は灰色であり、その他Fe単独相や未窒化相は濃い灰色ないし黒色を、Smリッチ相や過窒化相,Sm単独相については薄い灰色ないし白色となるため、観察写真から目視で判断可能である。
(実施例1)
磁石原料粉末として、反応晶析法で製造された、平均粒子径が0.7μmの酸化鉄Fe粉末(純度99%)100.0gと、平均粒子径が2.8μmの酸化サマリウムSm粉末(純度99.5%)31.8gを秤量し、次に500ccのポリ容器中にて秤量した酸化鉄を純水130gに分散させスラリー化したところに、さらに酸化サマリウムを投入し、これにSUJ2製の直径5/32inchの金属ボールを追加して20時間ボールミル混合を行った。その後、ポリ容器からスラリーを排出し、金属ボールと分離した後定置式真空凍結乾燥器にて40℃設定で20時間乾燥した。
乾燥した混合粉末100.0gを箱型雰囲気炉にて水素を25ml/(min・g)流し、昇温速度5℃/minで700℃まで加熱して4時間保持した後、室温まで冷却し、内部を空気に置換して水素還元物を回収した。
このときの水素還元物の一部をXRDにて同定を行い、リートベルト解析でその存在比率を半定量値として算出した。このときの存在比率は、α―Fe:Sm:SmFeO=65.9:25.0:9.1(質量%)であった。
この水素還元物16gに粒度4メッシュ(タイラーメッシュ)以下の金属カルシウム粒(純度99%)3.6gを、コンデショニングミキサー(MX−201:シンキー製)で30秒間混合した。
これをステンレススチール反応容器に装入し、容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながら、表1に示すように850℃まで昇温し10時間保持後、さらに1050℃まで昇温し1時間保持し還元熱処理した後、250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。次に、Arガスをアンモニア分圧が0.33のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて昇温し、420℃で200分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて30分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて30分保持し冷却した。
取り出した多孔質塊状の反応生成物を直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。このスラリーから、Ca(OH)懸濁物をデカンテーションによって分離し、純水を注水後に1分間攪拌し、次いでデカンテーションを行う操作を5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを攪拌しながら希酢酸を滴下し、pH5.0に7分間保持した。その後、純水で6回掛水洗浄し、さらにイソプロピルアルコールで溶媒置換した後、合金粉末をろ過し、150℃で真空乾燥することによって、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子からなるSm−Fe−N磁石粉末を得た。
この粉末組成は、Sm:23.4質量%、N:3.41質量%、O:0.17質量%、残部Feだった。
この合金粉末をエタノール中で振動式ミル(マルチミル:ナルミ技研製)を用い、SUJ2ボール5/32インチ、振動数:30Hz、30分間イソプロピルアルコール中で解砕し、常温真空乾燥した。
得られた磁石粉末の磁気特性は、日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、1600A/mの配向磁界をかけてステアリン酸中で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を配向させ試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁して測定した。磁石合金粉末の比重を7.67g/cmとし、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化:4πIm(T)、保磁力:iHc(kA/m)、角形性:Hk(kA/m)を測定した。
分析組成とThZn17型結晶構造の格子定数から算出された粉末のX線密度は7.67g/cmで、この値で飽和磁束密度4πImを換算した。iHcは保磁力である。またHkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。結果を表2に示すが、Br:1.31T、iHc:903kA/m、Hk:449kA/mであり高特性が得られた。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ1.9%、13.2%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、98%であった。得られた磁石粉末表面のSEM写真を図2に示す。
(実施例2)
実施例1の要領で原料粉末などを混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように800℃まで昇温し20時間保持後、さらに950℃まで昇温し2時間保持と変更し、それ以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.27T、iHc:958kA/m、Hk:447kA/mであり高特性が得られた。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ2.6%、10.9%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、94%であった。
(実施例3)
実施例1の条件で原料粉末などを混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように900℃まで昇温し4時間保持後、さらに950℃まで昇温し2時間保持と変更し、それ以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.29T、iHc:940kA/m、Hk:445kA/mであり高特性が得られた。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ2.2%、12.1%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、96%であった。
(実施例4)
実施例1の条件で原料粉末などを混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように800℃まで昇温し20時間保持後、さらに1200℃まで昇温し0.5時間保持と変更し、それ以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.33T、iHc:877kA/m、Hk:444kA/mであり高特性が得られた。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ1.7%、14.4%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、95%であった。
(実施例5)
実施例1の条件で原料粉末などを混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように900℃まで昇温し4時間保持後、さらに1200℃まで昇温し0.5時間保持と変更し、それ以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.34T、iHc:863kA/m、Hk:444kA/mであり高特性が得られた。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ1.6%、15.2%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、96%であった。
(比較例1)
実施例1の条件の混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように800℃まで昇温し24時間保持と変更した以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.14T、iHc:974kA/m、Hk:390kA/mであった。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ7.1%、8.1%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、94%であった。
(比較例2)
実施例1の条件の混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように950℃まで昇温し5時間保持と変更した以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1と同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.19T、iHc:875kA/m、Hk:410kA/mであった。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ1.9%、21.0%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、91%であった。
(比較例3)
実施例1の条件の混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように1200℃まで昇温し2時間保持と変更した以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.08T、iHc:716kA/m、Hk:378kA/mであった。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ1.3%、29.2%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、78%であった。
(比較例4)
実施例1の条件の混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように750℃まで昇温し24時間保持後、さらに1050℃まで昇温し1時間保持と変更した以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.11T、iHc:950kA/m、Hk:386kA/mであった。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ5.3%、10.5%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、83%であった。得られた磁石粉末表面のSEM写真を図3に示した。
(比較例5)
実施例1の条件の混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように950℃まで昇温し3時間保持後、さらに1050℃まで昇温し1時間保持と変更した以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.21T、iHc:811kA/m、Hk:409kA/mであった。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ1.6%、21.9%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、89%であった。
(比較例6)
実施例1の条件の混合後、ステンレススチール反応容器に装入し容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながらの還元熱処理温度・時間を表1に示すように850℃まで昇温し10時間保持後、さらに1300℃まで昇温し0.5時間保持と変更した以外は同様にして還元熱処理を行い、継続して窒化処理、湿式処理により、Sm−Fe−N粗粉末を得た。得られた粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、Br:1.34T、iHc:767kA/m、Hk:402kA/mであった。
また、解砕した磁石粉末における長軸径0.5μm未満、および5μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、それぞれ1.3%、23.8%であった。さらに、SEMによる粒子断面観察から求めた主相単相粒子比率については、98%であった。
「評価」
以上の結果を示す表1より、実施例1〜5では、還元熱処理を2段とし、温度パターンを規定範囲内とすることで微粉・粗粉を抑え、かつ主相単相粒子比率を向上させ、磁気特性を良好にすることが可能なことがわかる。
また、比較例1〜3は、還元熱処理パターンを1段としているが、800℃では金属カルシウムの溶融によるサマリウムの拡散は十分行われるが、粒成長するには低温であるため、0.5μm未満が7.1%と高く凝集しやすいほか、結晶性が低いためBr、Hkが低くなっている。950℃では粒成長が溶融拡散とともに起こるため、5μm以上が発生しやすく、21.0%と高くなってしまい、粒子内部組成が不均一となり、主相単相粒子比率が91%と下がることでiHc、Hkが特に大きく低下している。さらに1200℃では粒成長が初期から促進されるため、5μm以上が29.2%と非常に高く、主相単相粒子比率も78%と下がるため、Br、iHc、Hk全てが大きく低下している。
比較例4〜6では還元熱処理は2段であるが、1段目を750℃と範囲外に下げすぎると、2段目に1050℃まで上げても微粉が多く残るほか、1段目でSmの拡散がより進みにくくなり主相単相粒子比率が下がるため、Br、Hkが共に大きく低下している。逆に1段目を950℃と上げると、比較例2より保持時間は短いものの、1050℃に次に上げることで、粗粉の量が増え、主相単相粒子比率が89%と下がるため、iHc、Hkが特に大きく低下している。さらに2段目を1300℃と上げて範囲外にすると、粗粉の量が比較例3ほどではないが増加し、iHcが低下した。ただし、比較例3とは異なり主相単相粒子比率は1段目によって確保されるため、実施例同等の数値が得られている。
本発明によって得られる射出成形用組成物は、ボンド磁石の材料として使用でき、小型で薄くかつ高強度の電子部品の製造に有用である。

Claims (6)

  1. 希土類酸化物粉末の還元拡散法により得られる母合金を窒化処理して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造する方法であって、
    希土類酸化物粉末と鉄粉末の混合物もしくは、これに希土類鉄複合酸化物や酸化鉄の少なくとも一つをさらに含む混合物を出発原料とし、金属カルシウムと混合後、800〜900℃の温度で4時間〜20時間保持し、その後さらに昇温し950℃〜1200℃の温度で所定時間保持を行い還元拡散処する第工程と、
    得られた還元拡散反応生成物に窒化ガスを供給し、この気流中で該反応生成物を所定の温度で窒化処理する第2工程と、
    得られた窒化処理生成物の塊を水中に投入して湿式処理し崩壊させ、さらに得られた磁石粗粉末を粉砕機に装入し解砕・微粉末化して、磁石粉末を得る第3工程と
    を含む希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法。
  2. 第1工程の出発原料は、鉄粉末または酸化鉄の平均粒子径が3μm以下であることを特徴とする請求項1記載の希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法。
  3. 第1工程で添加される金属カルシウムは、平均粒子径が4メッシュ以下であり、添加量が酸化物を全て還元するのに必要となる金属カルシウム量を1当量としたときに、1.5〜3.0当量であることを特徴とする請求項1記載の希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法。
  4. 第3工程後の磁石粉末は、5μm以上の累積個数百分率が20%未満かつ0.5μm以下の累積個数百分率が4%未満であることを特徴とする請求項1記載の希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法。
  5. 第3工程後の磁石粉末は、SEMにより観察される主相単相からなる粒子が、総粒子数に対して90%以上であることを特徴とする請求項1記載の希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法。
  6. 磁石粉末がSm−Fe−Nであることを特徴とする請求項1記載の希土類―鉄―窒素系磁石粉末の製造方法。
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