JP2003059706A - 希土類ハイブリッド磁石用組成物、その製造方法及びそれから得られる磁石 - Google Patents

希土類ハイブリッド磁石用組成物、その製造方法及びそれから得られる磁石

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JP2003059706A
JP2003059706A JP2001244309A JP2001244309A JP2003059706A JP 2003059706 A JP2003059706 A JP 2003059706A JP 2001244309 A JP2001244309 A JP 2001244309A JP 2001244309 A JP2001244309 A JP 2001244309A JP 2003059706 A JP2003059706 A JP 2003059706A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性および耐湿性が良好であって、成形性
及びコストパフォーマンスにも優れた最大エネルギー積
が24〜74kJ/mである希土類ハイブリッド磁石
用組成物及びその製造方法の提供。 【解決手段】 希土類磁性粉末(A)、フェライト磁性
粉末(B)及び樹脂バインダー(C)を含有する希土類
ハイブリッド磁石用組成物において、希土類磁性粉末
(A)は、希土類元素と、鉄又は鉄及びコバルトと、窒
素とを主成分とするThZn17型結晶構造をもち、
かつその表面に亜鉛(Zn)処理及び/又は燐酸処理が
施され、さらに、該組成物中の希土類磁性粉末(A)の
含有率(重量%)をX、フェライト磁性粉末(B)の含
有率をYとすると、これらが下記の要件(1)〜(3)
を満たす希土類ハイブリッド磁石用組成物によって提
供。 (1)X≦80 (2)97.7−1.33X≦Y≦109.4−1.2
3X (3)X+Y≦92

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類ハイブリッ
ド磁石用組成物、その製造方法及びそれから得られる磁
石に関し、さらに詳しくは、希土類磁性粉末、フェライ
ト磁性粉末及び樹脂バインダーを含有し、耐熱性、耐湿
性が良好であって、成形性及びコストパフォーマンスに
も優れた最大エネルギー積が24〜74kJ/mであ
る希土類ハイブリッド磁石用組成物、その製造方法及び
それから得られる磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】永久磁石は、日用雑貨からモータやセン
サに至るまで様々な分野で活用されている。その種類を
材料で分類すると、フェライト、Sm−Co系やNd−
Fe−B系などの希土類系磁性材料、アルニコや鉄クロ
ムコバルトといった金属磁性材料などがある。一方、磁
石を製造方法によって分類すると、焼結磁石、磁性粉末
と樹脂バインダーからなるボンド磁石、鋳造磁石などに
なる。ボンド磁石は、成形方法によって、射出成形磁
石、押出成形磁石、圧縮成形磁石、圧延成形磁石などに
分類される。また磁石をNSに磁化する場合、着磁によ
り任意の方向に磁化できる等方性磁石と、磁石の製造時
に特定方向に磁化する異方性磁石とに分類される。
【0003】焼結磁石は、粉末冶金の手法を応用してい
るが、相対密度を90%以上に緻密化でき、材料の磁力
をそのまま引き出せるが、形状自由度が小さく、機械的
強度も比較的小さい。これに対してボンド磁石は、樹脂
を結合材として成形するため磁力が樹脂の体積分だけ弱
くなるものの、形状自由度、機械的強度に優れ、他の部
品と一体成形できるため、それぞれの特長に合った用途
で使用されている。
【0004】永久磁石の磁気特性は、材料と製造方法の
組合せによって、幅広く選択でき、例えば最大エネルギ
ー積が24kJ/mまではフェライトのボンド磁石
を、36kJ/m程度まではフェライトの焼結磁石を
選択できる。フェライト磁石は、材料のフェライト磁性
粉末が安価なため幅広く利用されているが、より高い磁
気特性が必要な場合は、フェライトよりも高価な希土類
磁性材料が用いられる。例えば95kJ/m程度まで
はSm−Co系、Nd−Fe−B系ボンド磁石が、43
0kJ/mまではSm−Co系、Nd−Fe−B系焼
結磁石が選択されている。
【0005】フェライトのボンド磁石を超える特性領域
(最大エネルギー積24kJ/m以上)では、磁気特
性を任意に調整でき、かつ低コストなフェライトと希土
類磁性材料とのボンド磁石、すなわちハイブリッド磁石
が提案されている。例えば、特開昭55−99703号
公報、特開昭57−39102号公報、特開昭60−2
23095号公報には、フェライト磁性粉末とSm−C
o系磁性粉末とからなるハイブリッド磁石が提案され、
また特開昭61−284906号公報、特開昭62−2
57703号公報、特開平10−223421号公報な
どでは、フェライト磁性粉末とNd−Fe−B系磁性粉
末とからなるハイブリッド磁石が提案されている。
【0006】ところが、Sm−Co系磁性粉末やNd−
Fe−B系磁性粉末を用いた従来のハイブリッド磁石で
は、希土類磁性粉末の量を多くしないと所望の磁気特性
が得られず、コストを低減できなかった。Sm−Co系
では磁性粉末の磁化が小さく、Nd−Fe−B系では磁
性粉末が等方性で磁化が十分大きくないためである。
【0007】菱面体晶系、六方晶系の結晶構造をもつ金
属間化合物に窒素を導入させたR−Fe−N(Rは希土
類元素)系磁性材料が、優れた磁気特性をもつ永久磁石
材料として注目されている。六方晶系あるいは菱面体晶
系の結晶構造をもつR−Fe−N−H(R:イットリウ
ムを含む希土類元素のうちの少なくとも一種)磁気異方
性材料(特開平02−57663号公報)などである。
【0008】本発明者らは、このR−Fe−N系磁性粉
末とフェライト磁性粉末とからなるハイブリッド磁石用
組成物(磁石)を開発し、特開2000−021615
号、特開2000−082611号、特願2000−2
13781号、特願2000−293757号、特願2
000−293758号、特願2000−293759
号などとして出願した。このようなハイブリッド磁石
(またはその用途)は、特開2000−124018号
公報、特開2000−260614号公報、特開200
0−298400号公報、特開2000−357606
号公報にも開示されている。しかしながら、これらのハ
イブリッド磁石は、耐候性の面では未だ十分とは言え
ず、すなわち高温度や高湿度の環境下で長時間放置され
ると、それらの磁気特性が低下する問題点が指摘されて
いた。
【0009】一方、特開平4−338603号公報、特
開平4−354105号公報、特開平5−230501
号公報、特開平5−234729号公報、特開平8−1
43913号公報、特開平7−268632号公報、特
開平9−190909号公報、Jpn.J.Appl.
Phys.35(1996)L894、J.Alloy
s Compd.260(1997)236、及びIE
EE Trans.Magn.35(1999)329
8には、磁性粉末の表面に気相成長、めっき処理、金属
塩、錯体の分解・還元などの手段によって金属皮膜を形
成する方法が開示されている。しかし、これらの方法
は、工業的生産性に乏しく、処理された磁性粉末は互い
に強く凝集しているため、異方性ボンド磁石を成形する
とき粉末配向が悪く、耐湿性が十分ではないなどの問題
があった
【0010】また、特公平6−17015号公報、特開
平1−234502号公報、特開平5−020676号
公報、特開平5−213601号公報、特開平7−27
8602号公報、特開平7−326508号公報、特開
平8−153613号公報、特開2000−26061
6号公報などには、無機燐酸、弗化金属化合物水溶液、
ポリシラザンなどでR−Fe−N系磁性粉末を表面処理
する方法が開示されている。しかしながら、これらの方
法、特に特開2000−260616号公報では、磁性
粉末を所望の粒径に粉砕した後に燐酸で表面処理するた
め、凝集によって接触した面には表面処理剤が十分に行
渡らない。また、これらの先行技術をハイブリッド磁石
に適用しても、耐熱性と耐湿性を両立させることができ
ないことから、必ずしも満足すべき磁石が得られていな
い。
【0011】所定の磁気特性をもつハイブリッド磁石を
得ようとする場合、希土類磁性粉末、フェライト磁性粉
末、樹脂バインダーの構成比率(含有率)の組合せは、
無限に存在する。フェライト磁性粉末に対して希土類磁
性粉末の割合を相対的に多くし、希土類磁性粉末、フェ
ライト磁性粉末の合計含有率を低くして、目標の磁気特
性を得ようとすると、高価な希土類磁性粉末が多くな
り、コストパフォーマンスが悪化する。逆に、フェライ
ト磁性粉末を希土類磁性粉末に対して相対的に多くし、
合計含有率を高めれば、磁石用組成物の流動性が悪化し
成形しにくくなる。上記の先行技術文献には、特定の磁
気特性を有するハイブリッド磁石を製造するに際し、コ
ストパフォーマンスと磁石の成形性の観点に基づく構成
比率の選択は開示されていない。
【0012】近年、小型モータ、音響機器、OA機器向
けの磁石には、機器の小型化に伴なって、磁気特性、耐
熱性、耐錆性に優れ、かつ形状自由度が高く、しかも用
途に応じた最大エネルギー積をもつ磁石用組成物が強く
要請されていたが、このような磁石用組成物は見当たら
ず、その出現が切望されていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前述
した従来技術の問題点に鑑み、希土類磁性粉末、フェラ
イト磁性粉末及び樹脂バインダーを含有し、耐熱性、耐
湿性が良好であって、成形性及びコストパフォーマンス
にも優れた最大エネルギー積が24〜74kJ/m
ある希土類ハイブリッド磁石用組成物、その製造方法及
びそれから得られる磁石を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、R−Fe−
N系などの希土類磁性粉末を表面処理し、これとフェラ
イト磁性粉末との構成比率を特定することによって、良
好な成形性とコストパフォーマンスを有する最大エネル
ギー積24〜74kJ/mのハイブリッド磁石組成物
が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】すなわち本発明の第1の発明は、希土類磁
性粉末(A)、フェライト磁性粉末(B)及び樹脂バイ
ンダー(C)を含有する希土類ハイブリッド磁石用組成
物において、希土類磁性粉末(A)は、希土類元素と、
鉄又は鉄及びコバルトと、窒素とを主成分とするTh
Zn17型結晶構造をもち、かつその表面に亜鉛(Z
n)処理及び/又は燐酸処理が施され、さらに、該組成
物中の希土類磁性粉末(A)の含有率をX(重量%)、
フェライト磁性粉末(B)の含有率をY(重量%)とす
ると、これらが下記の要件(1)〜(3)を満たすこと
を特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供さ
れる。 (1)X≦80 (2)97.7−1.33X≦Y≦109.4−1.2
3X (3)X+Y≦92
【0016】また、本発明の第2の発明は、第1の発明
において、希土類磁性粉末(A)の表面が、平均5〜1
00nmの燐酸塩皮膜で均一に被覆されていることを特
徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供され
る。
【0017】また、本発明の第3の発明は、第1の発明
において、希土類磁性粉末(A)の表面が、亜鉛(Z
n)処理の後に燐酸処理されていることを特徴とする希
土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0018】また、本発明の第4の発明は、第1の発明
において、80℃dry環境下に1000時間放置され
たときの不可逆減磁率が−6%未満であり、かつ80℃
90%RH環境下に300時間放置されたときの不可逆
減磁率が−10%未満であることを特徴とする希土類ハ
イブリッド磁石用組成物が提供される。
【0019】一方、本発明の第5の発明は、第1〜4の
発明のいずれかにおいて、希土類磁性粉末(A)は、予
め亜鉛(Zn)又は燐酸を添加後、所定の平均粒径に粉
砕、加熱処理されることで表面処理されており、これに
所定量のフェライト磁性粉末(B)を配合し、さらに樹
脂バインダー(C)を混合、混練することを特徴とする
希土類ハイブリッド磁石用組成物の製造方法が提供され
る。
【0020】また、本発明の第6の発明は、第1〜4の
発明のいずれかにおいて、希土類ハイブリッド磁石用組
成物を成形してなるボンド磁石が提供される。
【0021】
【発明の実施の形態】
1.希土類ハイブリッド磁石用組成物(原料) A 希土類磁性粉末 本発明で用いられる希土類磁性粉末(以下、R−Fe−
N系磁性粉末ともいう)は、希土類元素(R)と、鉄
(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)と、窒素
(N)とを主成分とする菱面体晶系または六方晶の結晶
構造をもつ磁性粉末である。
【0022】このような希土類磁性粉末は、ThZn
17型結晶構造をもつものであり、例えば特開平2−5
7663号公報、特開平3−16102号公報、特開平
3−101102号公報、特開平3−141608号公
報、特開平03−153852号公報、特開平03−1
60705号公報、特開平8−45718号公報、特開
平8−55712号公報、特開平8−144024号公
報で開示されるものがある。
【0023】これを製造する方法としては、窒素を含有
しない合金粉末を還元拡散法、溶解鋳造法、液体急冷法
などにより原料粉末を調製し、その後、窒素または窒素
原子を含む雰囲気中で熱処理することによって、窒素を
合金粉末内に導入する方法が挙げられる。希土類ハイブ
リッド磁石には、低コスト化が要求されることから、原
料粉末は還元拡散法で製造される合金粉末が好ましい。
還元拡散法による磁性粉末の製造例には、特開平5−1
48517号公報、特開平9−143636号公報が挙
げられる。希土類磁性粉末の平均粒径は、特に限定され
ないが、1〜10μm、なかでも1〜4μmが好まし
い。
【0024】本発明において、希土類磁性粉末の耐熱
性、耐湿性をともに向上させる第一の方法は、R−Fe
−N系磁性粉末の表面をZnで処理する方法である。Z
nによる表面処理としては、工業的生産性に富み、希土
類ハイブリッド磁石のコストパフォーマンスを向上し、
処理された磁性粉末が強く凝集しないで異方性ボンド磁
石を成形できるよう粉末配向を良好にしうる手段を選択
する必要がある。
【0025】希土類ハイブリッド磁石に好適なZn処理
としては、平均粒径が20〜100μmのR−Fe−N
系合金粉末に、平均粒径100μm以下のZn粉末を、
Znが0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%と
なるように添加した後、R−Fe−N系合金粉末が平均
粒径1〜10μm、好ましくは1〜4μmとなるよう
に、微粉砕する。微粉砕に要する時間は、粉砕装置や、
その運転条件にもよるが、例えば、媒体撹拌ミルであれ
ば、1〜2時間とするのが好ましい。その後、粉砕混合
物は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、20
0〜500℃、好ましくは350〜450℃で熱処理を
行う。Zn粉末の混合量が、0.1重量%未満では耐熱
性および耐湿性の改善効果が見られず、10重量%を超
えるとR−Fe−N系磁性粉末の磁化が小さくなりすぎ
るので、ハイブリッド磁石のコストパフォーマンスが低
下する。粉砕混合物の熱処理温度が200℃未満では耐
熱性と耐湿性の改善効果が見られず、500℃を超える
と、R−Fe−N系磁性粉末の保磁力が低下するので好
ましくない。この処理方法で得られたR−Fe−N系磁
性粉末は、凝集しているが、フェライト磁性粉末と樹脂
バインダーとを混合混練する際に凝集がほぐれる程度で
あるので、異方性ボンド磁石として成形するときの粉末
配向は良好である。さらに配向性を向上させるために、
反応生成物を再粉砕し、粉末同士の凝集を解くことがで
きる。本処理方法であれば反応生成物を再粉砕しても、
耐熱性や耐湿性は損なわれない。
【0026】本発明において、希土類磁性粉末の耐熱性
だけでなく耐湿性をも向上させる第二の方法は、R−F
e−N系磁性粉末の表面を燐酸塩皮膜で均一に被覆する
方法である。例えばR−Fe−N系合金粉末を、燐酸を
添加した有機溶剤中で、粉砕してから加熱処理を行う。
粉砕に要する時間は、粉砕装置や、その運転条件にもよ
るが、例えば、媒体撹拌ミルであれば、1〜2時間とす
るのが好ましい。この方法によれば、ボールミル等の媒
体撹拌ミルによって磁石合金粉を粉砕する際に、燐酸を
添加することにより、粉砕によって凝集粒子に新生面が
生じても、瞬時に溶媒中の燐酸と反応し、粒子表面に安
定な燐酸塩皮膜が形成される。また、その後、粉砕され
た磁性粉末が凝集しても、接触面はすでに安定化されて
おり、解砕により腐食は生じない。この点が強磁性粉末
へ燐酸で表面処理する従来技術とは決定的に異なる点で
ある。すなわち、従来技術のように、磁性粉末が所望の
粒径に粉砕された後に燐酸で表面処理するのでは、凝集
によって接触した面に表面処理が十分には行われず、そ
の結果、耐熱性と耐湿性を両立させることができない。
本発明の方法によれば、通常はR−Fe−N系磁性粉末
表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ま
しくは90%以上を燐酸皮膜で覆う(均一に被覆する)
ことができる。
【0027】燐酸としては、特に制限はなく、市販され
ている通常の燐酸、例えば、85%濃度の燐酸水溶液を
使用することができる。燐酸の添加量は、粉砕後のR−
Fe−N系磁性粉末の粒径、表面積等に関係するので一
概には言えないが、通常は、粉砕するR−Fe−N系合
金粉末に対して0.1〜2mol/kg、好ましくは
0.13〜1.5mol/kgであり、さらに好ましく
は0.15〜0.4mol/kgである。すなわち、
0.1mol/kg未満であるとR−Fe−N系磁性粉
末の表面処理が不十分で、耐熱性と耐湿性が改善され
ず、また大気中で乾燥させると酸化・発熱して磁気特性
が極端に低下する。2mol/kgを超えると、R−F
e−N系磁性粉末との反応が激しく起こって磁性粉末が
溶解する。有機溶媒としては、エタノール、イソプロパ
ノール、シクロヘキサン、トルエンなどが使用できる
が、特にエタノール、イソプロパノールなどのアルコー
ルが好ましい。
【0028】こうして表面処理されたR−Fe−N系磁
性粉末は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中または真
空中、100〜400℃の温度範囲で加熱処理する。温
度範囲は、110〜250℃、特に130〜200℃が
好ましい。100℃未満では、磁性粉末の乾燥が十分に
進まず安定な表面皮膜の形成が阻害され、また、400
℃を超える温度では、磁性粉末が熱的ダメージを受け、
保磁力が低くなる。この加熱処理条件も、燐酸系表面処
理に関する先行技術とは異なる重要なポイントである。
先行技術には、燐酸系表面処理液と反応させた磁性粉末
スラリを、脱液処理後に大気乾燥し、さらに大気中で3
00〜450℃に加熱する方法、同様に脱液処理した
後、大気中、常温又は70℃以下で加熱乾燥する方法、
更には真空中、60〜100℃で乾燥する方法がある
が、これらの方法では、磁性粉末への良好な耐熱性と耐
湿性を両立させることができない。R−Fe−N系磁性
粉末表面を保護するために必要な燐酸塩皮膜の厚さは、
平均で3〜150nm、好ましくは5〜100nmであ
る。皮膜の平均厚さが3nm未満では十分な耐熱性、耐
湿性が得られず、また、150nmを越えると磁気特性
が低下すると共にボンド磁石を作製する際の混練性、成
形性が低下する。
【0029】これらの処理方法は単独でも、また組み合
わせてもよい。Znで処理してから、次に燐酸で処理す
る方法を採用すれば、燐酸塩の皮膜が厚くなるだけでな
く、磁性粉末が均一に被覆されるため、相乗効果が得ら
れ、一層好ましい結果が期待できる。
【0030】B フェライト磁性粉末 フェライト磁性粉末は、本発明の希土類ハイブリッド磁
石の角形比μHcB/Br(μ:真空の透磁率、H
cB:保磁力、Br:残留磁束密度)を向上させるよう
に選択する。保磁力が310kA/m以上のフェライト
磁性粉末を選択することによって、角形比μHcB/
Brを65%以上にすることができる。希土類ハイブリ
ッド磁石の製造工程では、フェライト磁性粉末は剪断力
を受け、歪みによってその保磁力が大きく低下する。し
たがって原料のフェライト磁性粉末の保磁力が310k
A/m未満では角型性が上がらない。さらにフェライト
磁性粉末として、その比表面積が1.5m/g以上、
好ましくは2.0m/g以上、またその圧縮密度を
3.3g/cc以下、好ましくは3.1g/cc以下と
なるものを選択すれば、角形比μHcB/Brを70
%以上とすることができる。
【0031】フェライト磁性粉末の保磁力は、日本ボン
ド磁石工業協会発行「ボンド磁石試験方法ガイドブック
BMG−2002及び2005」に基づき評価される。
また、比表面積は、BET比表面積を一点法で測定する
ことで、さらに、圧縮密度は、金型に入れた磁性粉末を
98MPaで加圧したときの見かけ密度を測定すること
によって評価される。
【0032】フェライト磁性粉末はSrフェライト、B
aフェライトのいずれでも構わないが、Srフェライト
の方が角型性を高めることができる。特開2000−2
60614号公報に開示されているようなフェライト磁
性粉末(A1−x)O・n((Fe1−yCo
)(ここでAはSrおよび/またはBa、RはY
を含む希土類元素の1種または2種以上でありLaを必
ず含む、0.01≦x≦0.4、(x/(2.6n))
≦y≦(x/(1.6n))、5≦n≦6で表される主
成分組成を有する)も使用可能であるが、希土類元素及
びCoが含まれるためハイブリッド磁石としてのコスト
パフォーマンスは低下する。
【0033】本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物
を異方性ボンド磁石として製造する場合、フェライト粉
末は、個々の粉末が実質的に単結晶となっている異方性
磁性粉末から選択することが望ましい。その選択にあた
っては、磁界中成形工程での磁性粉末配向性を高めるた
めに、アスペクト比の大きい板状の磁性粉末よりも比較
的球状のものを選択することが望ましい。
【0034】C 樹脂バインダー 樹脂バインダーは、特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱
硬化性樹脂、ゴムのいずれかが採用される。
【0035】例えば熱可塑性樹脂であれば、6ナイロ
ン、6、6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、
6、12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を
一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂;直鎖型
ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレ
ンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルフ
ァイド樹脂;低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチ
レン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエ
チレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹
脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂;ポリ
スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
ン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹
脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポ
リ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビ
ニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタ
クリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化
塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピ
レン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹
脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエ
ーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、
ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチ
レンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート
樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエー
テルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、
ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹
脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、重
合脂肪酸系ポリアミドエラストマーをはじめとする各種
エラストマーや、ブチルゴムをはじめとするゴム類等が
挙げられ、これらの単重合体や他種モノマーとのランダ
ム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他
の物質による末端基変性品などが挙げられる。
【0036】また、これら熱可塑性樹脂の2種類以上の
ブレンド等も当然含まれる。これら熱可塑性樹脂の溶融
粘度や分子量は、所望の機械的強度が得られる範囲内で
低い方が望ましく、形状は、パウダー、ビーズ、ペレッ
ト等、特に限定されないが、磁性粉末との均一混合性か
ら考えるとパウダーが望ましい。
【0037】熱硬化性樹脂であれば、エポキシ樹脂、ビ
ニルエステル系エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹
脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ベン
ゾグアナミン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、
ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、熱硬化性ポリブ
タジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、
シリコーン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられ、他種モノ
マーや、これら樹脂の2種類以上のブレンド等も当然含
まれる。これら熱硬化性樹脂の粘度、分子量、性状等
は、所望の機械的強度や成形性が得られる範囲内であれ
ば特に限定されないが、磁性粉末との均一混合性や成形
性の面からパウダー又は液状が望ましい。
【0038】D 添加剤 本発明の組成物を製造するにあたり、添加剤としてカッ
プリング剤、滑剤、安定剤などを使用すると、組成物の
加熱流動性が向上し、成形性、磁気特性が向上する。
【0039】カップリング剤としては、シラン系カップ
リング剤、チタン系カップリング剤が使用できる。シラ
ン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキ
シシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシ
ラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシルエチルトリ
メトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−グリシドキシメチルジエトキシシラ
ン、N−β(アミノエチル)γアミノプロピルトリメト
キシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピ
ルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエ
トキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリ
メトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシ
シラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメト
キシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリ
エトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニル
トリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イ
ソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラ
ンなどが挙げられる。
【0040】チタン系カップリング剤としては、例えば
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプ
ロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネ
ート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェ
ート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチ
ルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルチタ
ネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルビス
(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピ
ルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデ
シルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ
(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオク
チルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプ
ロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、テト
ラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス
(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピ
ルトリクミルフェニルチタネート、ビス(ジオクチルパ
イロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソ
プロピルイソステアロイルジアクリルチタネートなどが
挙げられ、樹脂バインダーの種類にあわせて選択され、
それらの一種または二種以上を使用できる。
【0041】滑剤としては、例えばパラフィンワック
ス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロ
ピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイ
クロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−
オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレ
イン酸等の脂肪酸類;ステアリン酸カルシウム、ステア
リン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリ
ン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミ
ニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシ
ノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の
脂肪酸塩(金属石鹸類);ステアリン酸アミド、オレイ
ン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミ
チン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリ
ン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレ
ンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸ア
ミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオ
レイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ス
テアリルステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステ
アリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコー
ル、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテト
ラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリ
エーテル類;ジメチルポリシロキサン、シリコングリー
ス等のポリシロキサン類;弗素系オイル、弗素系グリー
ス、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物;窒化珪素、炭
化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二
硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。これ
らは一種または二種以上のブレンドとして使用できる。
【0042】また、安定剤としては、ビス(2,2,
6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリ
ジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第
三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキ
シ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,
2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−
7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,
2,3−トリアザスピロ(4,5)ウンデカン−2,4
−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テ
トラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−
ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6
−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−
(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,
3,5−トリアジン−2,4−ジイル}[{(2,2,
6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキ
サメチレン[{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピ
ペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ・第三ブチル
−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリ
ジル)等のヒンダード・アミン系安定剤のほか、フェノ
ール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の抗酸化剤
等が挙げられる。
【0043】2.希土類ハイブリッド磁石用組成物の製
造方法、及びボンド磁石 本発明において、R−Fe−N系磁性粉末の飽和磁化
は、1.2〜1.4Tであり、フェライト磁性粉末の飽
和磁化は、0.35〜0.47Tである。飽和磁化は、
パラフィンワックスと共に磁性粉末を加熱しながら磁界
配向させ、冷却し、3200kA/m以上でパルス着磁
した後、最大測定磁界1200kA/mの振動試料型磁
力計で測定する。飽和磁化を換算するときの粉末の真密
度は、R−Fe−N系磁性粉末で7.67Mg/m
フェライト磁性粉末で5.11Mg/mとする。
【0044】本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物
は、これを直径10mm、高さ7mmの成形体としたと
き、80℃dry環境下に1000時間放置した場合、
不可逆減磁率が−6%未満、好ましくは−4.5%未満
であり、また、80℃90%RH環境下に300時間放
置した場合、不可逆減磁率が−10%未満、好ましくは
−5%未満であることを特徴とする。80℃dry環境
下に1000時間放置した場合に、不可逆減磁率が−6
%を超えると耐熱性が不十分であり、また、80℃90
%RH環境下に300時間放置した場合に、不可逆減磁
率が−10%を超えると耐湿性の点で問題となる。
【0045】最大エネルギー積が24〜74kJ/m
である希土類ハイブリッド磁石用組成物においては、R
−Fe−N系磁性粉末の含有率をX重量%、フェライト
磁性粉末の含有率をY重量%とし、残部を樹脂バインダ
ー(及び添加剤)としたとき、これらの構成比率を (1)X≦80 (2)97.7−1.33X≦Y≦109.4−1.2
3X (3)X+Y≦92 の条件を満足するように適宜設定することにより製造で
きる。残部が樹脂バインダー(及び添加剤)であるか
ら、その含有率は8重量%以上となる。樹脂バインダー
(及び添加剤)の含有率が8重量%未満では、樹脂の種
類によっては成形できないことがあり、一方、27重量
%を超えると磁気特性に悪影響を与えるので好ましくな
い。
【0046】この範囲内でXを小さく設定すれば、樹脂
バインダーの含有率が小さくなるがフェライト磁性粉末
の含有率が大きくなるため、原料コストが低減できコス
トパフォーマンスが向上する。他方Xを大きく設定すれ
ば、樹脂バインダーの含有率を多くでき、組成物の流動
性が向上する。しかしながら、Xが80を超えるとフェ
ライトに比べて高価なR−Fe−N系磁性粉末の含有率
が多くなり、コストパフォーマンスが低下する。
【0047】Yの範囲は、(97.7−1.33X)重
量%以上、(109.4−1.23X)重量%以下であ
る。(97.7−1.33X)重量%未満では、最大エ
ネルギー積が24kJ/m未満となり、(109.4
−1.23X)重量%を超えると74kJ/mを超え
てしまう。本発明者らは、最大エネルギー積ごとに、数
多くの実験を重ね、XとYの関係をグラフ化するととも
に、磁性粉末の構成比率による磁気特性、成形性の関係
を詳細に検討し、上記Yが(2)の不等式で表されるこ
とを見出した。この範囲内でX+Yを小さく設定すれ
ば、磁性粉末全体の含有率が小さいので最大エネルギー
積が小さくなるが、流動性が向上する。逆にX+Yを大
きく設定すれば磁性粉末全体の含有率が多くなり、最大
エネルギー積は大きくなるが流動性は低下する。いずれ
の場合でも、X+Yが92を超えると、ボンド磁石を成
形するときの流動性が低下し、成形性が著しく悪化する
ので、92以下とする必要がある。
【0048】最大エネルギー積ごとに、X、Yの好まし
い組成範囲を示すと、次のようになる。すなわち最大エ
ネルギー積が24〜31kJ/mである希土類ハイブ
リッド磁石用組成物においては、Xが40以下、Yが
(97.7−1.33X)≦Y≦(101.2−1.3
0X)、かつX+Yが92以下である範囲が好ましい。
また最大エネルギー積が30〜42kJ/mである組
成物においては、Xが50以下、Yが(100.9−
1.30X)≦Y≦(103.2−1.27X)、かつ
X+Yが92以下の範囲が好ましい。また最大エネルギ
ー積が40〜50kJ/mである組成物においては、
Xが60以下、Yが(103.0−1.27X)≦Y≦
(105.7−1.27X)、かつX+Yが92以下の
範囲が好ましい。また最大エネルギー積が48〜58k
J/mである組成物においては、Xが70以下、Yが
(105.5−1.27X)≦Y≦(106.1−1.
25X)、かつX+Yが92以下の範囲が好ましい。ま
た最大エネルギー積が56〜66kJ/mである組成
物においては、Xが80以下、Yが(105.9−1.
25X)≦Y≦(107.2−1.23X)、かつX+
Yが92以下の範囲が好ましい。更に、最大エネルギー
積が64〜74kJ/mである組成物においては、X
が80以下、Yが(107.0−1.23X)≦Y≦
(109.4−1.23X)、かつX+Yが92以下の
範囲が好ましい。なお上記の最大エネルギー積は、組成
物を1600kA/m以上の配向磁界中で射出成形した
ボンド磁石で評価したときの値である。
【0049】本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物
を製造するには、R−Fe−N系磁性粉末、フェライト
磁性粉末と樹脂バインダーなどを、例えばリボンブレン
ダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキ
サー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混
合機、及びバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニ
ーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を
使用して混合・混練する。この組成物を射出成形、圧延
成形、押出成形、圧縮成形などから選択されたいずれか
の方法により成形すれば、本発明のボンド磁石が得られ
る。本発明において、特に有効なのは射出成形である。
【0050】なお、本発明で用いるR−Fe−N系磁性
粉末は、個々の粉末が実質的に単結晶となっている異方
性磁性粉末であるため、組成物を磁界中で成形するとR
−Fe−N系磁性粉末の磁化容易方向が揃い、高い磁束
密度をもつ異方性希土類ハイブリッド磁石が製造でき
る。フェライト磁性粉末についても同様で、異方性磁性
粉末を選択し、磁界中で成形するとフェライト磁性粉末
の磁化容易方向が揃い、高い磁束密度をもつ異方性希土
類ハイブリッド磁石が製造できる。したがって、異方性
のR−Fe−N系磁性粉末と異方性のフェライト磁性粉
末とから製造された組成物を磁界中で成形して、最も高
い磁束密度をもつ異方性希土類ハイブリッド磁石が得ら
れる。
【0051】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、
本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるもので
はない。
【0052】1 希土類磁性粉末の製造 磁性粉末A 純度99.9wt%、粒度150メッシュ(タイラー標
準、以下同じ。篩い目開き104μm)以下の電解Fe
粉と、純度99wt%で平均粒度325メッシュ(篩い
目開き43μm)以下の酸化Sm粉末と、純度99wt
%の粒状金属Caとを、Vブレンダーを用いて混合し
た。得られた混合物をステンレス容器に入れ、アルゴン
雰囲気下、1150℃で8時間加熱し還元拡散反応させ
た。次いで反応生成物を、冷却してから水中に投入し崩
壊させた。得られたスラリーを水洗し、さらに酢酸で酸
洗浄して、未反応のCaと副生CaOを除去した。得ら
れたスラリーを濾過し、エタノールで置換した後、真空
乾燥して150μm以下のSm−Fe合金粉末を得た。
この粉末を管状炉中に装填し、アンモニア分圧0.35
のアンモニア−水素混合ガス雰囲気中、465℃で6時
間加熱(窒化処理)し、その後、アルゴンガス中、46
5℃で2時間加熱(アニール処理)し、24.6wt%
Sm−3.6wt%N−bal.FeのSm−Fe−N
系合金粉末を得た。この合金粉末をX線解析すると、菱
面体晶系のThZn17型結晶構造の回折線(Sm
Fe17金属間化合物)を示した。このSm−Fe
−N系合金粉末を、フィッシャー平均粒径1.6μmま
で衝突板型ジェットミルを用いて微粉砕し、異方性のS
m−Fe−N系磁性粉末Aを得た。磁性粉末Aの飽和磁
化を測定すると1.37Tであった。
【0053】磁性粉末B 磁性粉末Aとは別に、上記Sm−Fe−N系合金粉末
に、3重量%のZn粉末を混合し、イソプロパノールを
粉砕溶媒としたボールミルで、Sm−Fe−N系合金粉
末が平均粒径1.5μmとなるように2時間かけて微粉
砕した。その後、Arガス気流中、430℃で10時間
熱処理し、室温まで冷却した後に取り出した。得られた
Sm−Fe−N系磁性粉末Bには、凝集して塊状になっ
た部分が見られたが、手で崩すことができる程度の固さ
だった。磁性粉末Bの飽和磁化を測定すると1.23T
であった。
【0054】磁性粉末C 磁性粉末AおよびBとは別に、イソプロパノールを粉砕
溶媒としたボールミルでSm−Fe−N系合金粉末が平
均粒径1.5μmとなるように、2時間かけて微粉砕し
た。なお、ここではSm−Fe−N系合金粉末1kgあ
たり燐酸0.30molとなるように、85%オルト燐
酸水溶液を粉砕溶媒に添加してから粉砕している。微粉
砕後、真空中、150℃で2時間乾燥し、Sm−Fe−
N系磁性粉末Cを得た。この磁性粉末Cの飽和磁化を測
定したところ1.35Tであった。また磁性粉末CをT
EM観察したところ、その表面には平均で6nmの燐酸
塩皮膜が均一に形成されていることが確認できた。
【0055】磁性粉末D 上記の方法で得た磁性粉末Bを用い、Sm−Fe−N系
合金粉末1kgあたり燐酸0.30molとなるよう
に、85%オルト燐酸水溶液を粉砕溶媒(イソプロパノ
ール)に添加してから、0.5時間かけて凝集が解砕さ
れる程度に粉砕した。微粉砕後、真空中、150℃で2
時間乾燥し、Sm−Fe−N系磁性粉末Dを得た。この
磁性粉末Dの平均粒径は1.4μmであり、飽和磁化を
測定すると1.26Tであった。また磁性粉末Dについ
てTEM観察すると、その表面には平均で10nmの燐
酸塩の皮膜が形成されていることが確認できた。
【0056】2 耐熱性、耐候性の評価 耐熱性・・・直径が10mm、高さが7mmのサイズに
成形した希土類ハイブリッド磁石を、3350kA/m
のパルス磁界で着磁した後、80℃dry環境下に10
00時間放置し、その後常温に冷却したとき不可逆減磁
率を測定し、耐熱性を評価した。この絶対値が小さいほ
ど耐熱性が良好である。 耐湿性・・・上記と同様に希土類ハイブリッド磁石を着
磁した後、80℃90%RH環境下で300時間放置
し、その後常温に冷却したときの不可逆減磁率を測定
し、耐湿性を評価した。この絶対値が小さいほど耐湿性
が良好である。
【0057】(実施例1)上記の方法により製造したS
m−Fe−N系磁性粉末B、C又はDと、異方性のSr
フェライト磁性粉末に、樹脂バインダーとして12ポリ
アミド樹脂を混合し、ラボプラストミル混練することに
よって希土類ハイブリッド磁石用組成物を得た。ここで
Srフェライト磁性粉末は、飽和磁化0.40T、保磁
力358kA/m、比表面積2.65m/g、圧縮密
度2.95g/ccのものである。Sm−Fe−N系磁
性粉末の含有率Xは40重量%以下、Yは表1に示す含
有率とした。なお残部は樹脂バインダーである。
【0058】混練温度は200〜220℃とし、混練後
に組成物を取り出し空冷した。これをプラスチック粉砕
機により粉砕し、組成物ペレットとした。この組成物の
磁気特性を評価するために、φ10×7mmの円柱状金
型キャビティの7mm方向に1600kA/mの配向磁
界をかけながら、組成物を射出成形してハイブリッド磁
石(ボンド磁石)を製造した。ここでシリンダー温度は
200〜220℃、金型温度は80℃とした。得られた
ボンド磁石を7mm方向に3350kA/mのパルス磁
界で着磁した後、その最大エネルギー積(BH)ma
x.を自記磁束計で測定した。その結果と密度を表1に
示す。さらにこれらの希土類ハイブリッド磁石について
耐熱性と耐湿性を評価した。結果を表1に併記した。
【0059】
【表1】
【0060】(比較例1)上記の磁性粉末B,C又はD
に代えて、表1に示した磁性粉末Aを用い、実施例1と
同様にして、希土類ハイブリッド磁石用組成物、ボンド
磁石を得た。磁性粉末Aの含有率Xは40重量%以下、
フェライト磁石の含有率Yは表1に示したとおりであ
る。磁気特性、耐熱性、耐湿性の結果も表1に示した。
【0061】(実施例2)実施例1と同様に、磁性粉末
B,C又はDを用いて、表2に示す本発明の希土類ハイ
ブリッド磁石用組成物を得た。磁性粉末B,C又はDの
含有率Xは50重量%以下、フェライト磁石の含有率Y
は表2のとおりである。磁気特性、耐熱性、耐湿性の結
果も表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】(比較例2)上記の磁性粉末B,C又はD
に代えて、磁性粉末Aを用い、実施例1と同様にして、
表2の希土類ハイブリッド磁石用組成物を得た。磁性粉
末Aの含有率Xは50重量%以下、フェライト磁石の含
有率Yは表2のとおりである。磁気特性、耐熱性、耐湿
性の結果も表2に示した。
【0064】(実施例3〜5)実施例1と同様に、磁性
粉末B,C又はDを用いて、表3〜5に示す本発明の希
土類ハイブリッド磁石用組成物を得た。磁性粉末B,C
又はDの含有率Xは60重量%以下(実施例3)、70
重量%以下(実施例4)、80重量%以下(実施例5)
とし、フェライト磁石の含有率Yは表3〜5に示したと
おりである。磁気特性、耐熱性、耐湿性の結果も表3〜
5に示した。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】(比較例3〜5)磁性粉末Aを用い、実施
例1と同様にして、表3〜5に示した希土類ハイブリッ
ド磁石用組成物を得た。磁性粉末Aの含有率Xは60重
量%以下(比較例3)、70重量%以下(比較例4)、
80重量%以下(比較例5)とし、フェライト磁石の含
有率Yは表3〜5に示したとおりである。磁気特性、耐
熱性、耐湿性の結果も表3〜5に示した。
【0069】実施例6 実施例1〜5で使用した電解Fe粉の10重量%を、粒
度150メッシュ(篩い目開き104μm)以下のCo
粉で置換した以外は同様にして、25wt%Sm−7.
2wt%Co−bal.Fe合金粉末(磁性粉末A’)
を製造し、これを窒化処理して、菱面体晶系のTh
17型結晶構造の回折線(Sm(Fe、Co)17
金属間化合物)を示す24.6wt%Sm−3.5
wt%N−7.1wt%Co−bal.FeのSm−
(Fe、Co)−N合金粉末を得た。
【0070】このSm−(Fe、Co)−N合金粉末
を、Zn表面処理又は燐酸系表面処理した磁性粉末
B’、磁性粉末C’を用いた以外は実施例1と同様にし
て、希土類ハイブリッド磁石用組成物のペレットを製造
し、φ10×7mmの円柱状希土類ハイブリッド磁石
(ボンド磁石)を得た。ここで得られたSm−(Fe、
Co)−N磁性粉末の飽和磁化は、磁性粉末B’で1.
23T、磁性粉末Cで1.36Tであった。また磁性粉
末C’についてTEM観察したところ、その表面には平
均で7nmの燐酸塩皮膜が均一に形成されていることが
確認できた。用いたSm−(Fe、Co)−N磁性粉末
の種類と、各磁性粉末の含有率XとYを表6に示す。ま
た磁石の最大エネルギー積(BH)max.と密度、お
よび耐熱性と耐湿性の評価結果も表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】以上の実施例すべてにおいて、80℃dr
y1000時間後の不可逆減磁率が−6%未満であり、
かつ80℃90%RH300時間後の不可逆減磁率が−
10%未満であることが分かる。さらに実施例1〜5に
よって、Xが80以下、Yが(97.7−1.33X)
≦Y≦(109.4−1.23X)であり、かつX+Y
が92以下となるように磁性粉末の構成比率(含有率)
を設定すれば、最大エネルギー積が24〜74kJ/m
の希土類ハイブリッド磁石組成物が得られることが分
かる。また実施例6によれば、Sm−(Fe、Co)−
N系磁性粉末でも目標の磁気特性が得られることが分か
る。これに対して、比較例1〜5では、すべてにおいて
耐熱性が低下するだけでなく、耐湿性が劣り、成形でき
ない場合もあることが分かる。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、R−Fe−N系磁性粉
末とフェライト磁性粉末とからなる希土類ハイブリッド
磁石用組成物において、耐熱性、耐湿性が良好で、最大
エネルギー積が24〜74kJ/mである希土類ハイ
ブリッド磁石(ボンド磁石)を製造することができる。
従来のSm−Co系磁性粉末、Nd−Fe−B系磁性粉
末を用いたものに比べて、同等の磁気特性を得る場合で
も高価な希土類磁性粉末含有量が少なくて済み、その工
業的価値は極めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01F 1/113 H01F 1/04 A Fターム(参考) 4K018 AA27 AA40 AB01 AB10 AC01 AC03 BA18 BA20 BC09 BC28 GA04 KA46 5E040 AA03 AB03 BB03 BC00 CA01 HB00 HB14 NN01 NN02 NN15

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類磁性粉末(A)、フェライト磁性
    粉末(B)及び樹脂バインダー(C)を含有する希土類
    ハイブリッド磁石用組成物において、希土類磁性粉末
    (A)は、希土類元素と、鉄又は鉄及びコバルトと、窒
    素とを主成分とするThZn17型結晶構造をもち、
    かつその表面に亜鉛(Zn)処理及び/又は燐酸処理が
    施され、さらに、該組成物中の希土類磁性粉末(A)の
    含有率をX(重量%)、フェライト磁性粉末(B)の含
    有率をY(重量%)とすると、これらが下記の要件
    (1)〜(3)を満たすことを特徴とする希土類ハイブ
    リッド磁石用組成物。 (1)X≦80 (2)97.7−1.33X≦Y≦109.4−1.2
    3X (3)X+Y≦92
  2. 【請求項2】 希土類磁性粉末(A)は、その表面に平
    均5〜100nmの燐酸塩皮膜が均一に被覆されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド
    磁石用組成物。
  3. 【請求項3】 希土類磁性粉末(A)は、その表面に、
    亜鉛(Zn)処理の後に燐酸処理が施されることを特徴
    とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成
    物。
  4. 【請求項4】 80℃dry環境下に1000時間放置
    されたときの不可逆減磁率が−6%未満であり、かつ8
    0℃90%RH環境下に300時間放置されたときの不
    可逆減磁率が−10%未満であることを特徴とする請求
    項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物。
  5. 【請求項5】 希土類磁性粉末(A)は、予め亜鉛(Z
    n)又は燐酸を添加後、所定の平均粒径に粉砕、加熱さ
    れることで表面処理されており、これに所定量のフェラ
    イト磁性粉末(B)を配合し、さらに樹脂バインダー
    (C)を混合、混練することを特徴とする請求項1〜4
    のいずれかに記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載の希土類
    ハイブリッド磁石用組成物を成形してなるボンド磁石。
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